aklib_story_保護者の本能

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保護者の本能

カーネリアンは妹の前では、あえて本性を出さないようにしている。だが、影のように後を追いかけて来る伯爵の詮索者たちに関しては、早急に手を打つ必要がある。


[カーネリアン] もしもし、ケルシー? 聞こえているかい?

[カーネリアン] 前回の治療はとても効いているようで、ホーエンローエ伯爵の容態はかなり良くなってきている。今回も君たちにお願いするよ。

[カーネリアン] ああ、ちょっと失礼。

[ケルシー] 戦闘中にお喋りとは感心しないな。

[カーネリアン] こんなの戦闘の内に入らないよ。大丈夫、すぐに終わるから。

[カーネリアン] さて、本題に戻ろうか……今回は少し長くロドスに留まるつもりだけど、問題はないかな?

[ケルシー] ロドスがオペレーターの駐留を拒否することはない。

[カーネリアン] 素直に「歓迎する」と言ってくれていいんだよ。

[ケルシー] それが君の聞きたい言葉であれば、「歓迎しよう」。

[カーネリアン] うーん……君は素直なのか回りくどいのか、よく分からないね。

[カーネリアン] まあいい、次の治療について話そうか。

[ケルシー] 医療部は君が提供してくれた検査データに基づき、次の治療に使う薬剤を配合する。少し時間は必要だが、そう長くはかからない。

[ケルシー] だが私は依然として、伯爵本人に定期的な精密検査を受けさせるべきだと考えている。でなければ、より効果的な治療計画を組み立てることができないからな。

[カーネリアン] 可能なら本人を君たちのところに連れて行って検査を受けさる……ということだね?

[カーネリアン] 伯爵の立場上、それをするリスクはあまりにも大きすぎる。誰かさんたちがそこまで頑固じゃなければ、すべての物事はもっと簡単に運ぶんだけどね……本当に残念だよ。

[カーネリアン] とにかく、そちらが薬を準備している間、私はアンケセナーと……コホン、うちのおチビちゃんと行動するつもりだが、問題はないかな?

[ケルシー] 君には行動の自由がある。

[カーネリアン] それはよかった。

[カーネリアン] おっと、そうだ、もう一つ……

[カーネリアン] どうやら害虫が何匹か、匂いを嗅ぎつけて追って来たようだ。伯爵閣下は相変わらず人気者だね。おかげで私のようなちっぽけな護衛までしょっちゅう付け狙われる。

[カーネリアン] だけど心配はいらないよ。こちらで適当に処理しておくから、ロドスが巻き込まれることはない。それじゃあまた。

[カーネリアン] さて、君たちをどうしてくれようかな?

[カーネリアン] ロドスの生ぬるいやり方よりも、私は直接黙らせる方が得意なんだ……その方がみんな手っ取り早く楽になれるしね。

[乱暴な略奪者] な、何をするつもりだ!

[カーネリアン] 二人ともなんで、震えているのかな? 略奪の道を選んだのなら、いつかこうなる覚悟なんてとっくにしてるでしょ?

[カーネリアン] 心配いらないよ。痛いのはほんの一瞬――

[ビーズワクス] お姉ちゃん、こっちの任務は終わったよ。

[カーネリアン] ……

[ビーズワクス] お姉ちゃん?

[カーネリアン] アンケセナー、どうしてこっちに来たの? 向こうの処置はもう全部終わった?

[ビーズワクス] うん。

[ビーズワクス] 今は医療オペレーターが、怪我人の手当てをしているの。私は薬を配るのを手伝ったよ。

[カーネリアン] そう、よくやったね。

[ビーズワクス] ううん、大したことじゃないよ。

[ビーズワクス] お姉ちゃんは何してるの?

[カーネリアン] いや、特に何も……

[カーネリアン] ただみんなと仲良くお喋りしていただけさ。

[乱暴な略奪者] (この女、デタラメこきやがって!)

[利口な略奪者] (*流暢なクルビアのあいさつ*ってなるか! お喋りなんて、クソ食らえってんだ!)

[乱暴な略奪者] グハッ。

[ビーズワクス] ……仲良くおしゃべり?

[カーネリアン] そう、仲良くね!

[ビーズワクス] うーん、そっか……

[ビーズワクス] 初めまして。

[利口な略奪者] ……俺たちに話しかけてんのか?

[ビーズワクス] はい、今回のことでよーく分かったでしょう?

[ビーズワクス] これからはもう開拓隊に迷惑をかけないようにしてくださいね。ここのみんなはすごく頑張っているんです。お二人もどうか見習ってちゃんとお仕事してください。

[乱暴な略奪者] はあ? 仕事だ? この小娘は一体何を言って……

[カーネリアン] (おや? もう一度言ってごらん?)

[乱暴な略奪者] ヒッ……

[利口な略奪者] (バカ! 黙ってろ!)

[乱暴な略奪者] (あいたっ! 何で殴るんだよ……)

[利口な略奪者] あ、安心してくれ! これからは開拓隊に迷惑もかけないし、その……ちゃんと頑張って働くよ! 約束する!

[ビーズワクス] ……本当に?

[利口な略奪者] もちろんさ! お二人の厳しい言葉のおかげで、俺らはもう十分に反省して心を入れ替えたのさ!

[カーネリアン] そんな話、信じるられるはず――

[ビーズワクス] はい、それならよかったです。

[カーネリアン] ……アンケセナー!?

[カーネリアン] 本当にそれでいいのかい?

[ビーズワクス] うん……まだダメだった?

[ビーズワクス] じゃあ、もうちょっと考えてみるね……

[カーネリアン] (はぁ……)

[カーネリアン] いや、アンケセナーの思った通りにやればいい。君が下した判断なら何であれ、お姉ちゃんは応援するよ。

[カーネリアン] ――

ショートヘアのキャプリニーは口を閉じると、先ほどから妹に向けられていた視線を、そばの略奪者へと移した。素早く掠める血のような色をした瞳からは、一切の温もりすら感じられない。

[ビーズワクス] お姉ちゃん、どうかした?

[カーネリアン] ん? ああ、いや。

[カーネリアン] 何でもないよ。問題も解決したのなら、戻るとしようか。

[ビーズワクス] ……うん。

[利口な略奪者] ……ほんとに見逃してくれた。

[乱暴な略奪者] どうすんだ、お頭? マジでこれから真面目に働くってのか?

[乱暴な略奪者] だけど、俺たちにまともな仕事なんてできんのかな?

[利口な略奪者] この! バカ言ってんじゃねぇ!

[利口な略奪者] まだ伸びてる奴らを叩き起こして来い! ひとまず撤退するぞ!

[乱暴な略奪者] へ、へい! はぁ、なんでいつも殴るんだよ……

[医療オペレーター] よし、これでしばらく大丈夫よ。

[医療オペレーター] そこまで傷が深いわけではないけど、しばらくは重い物を運んだりするのは控えて、しっかり体を休めてね。

[負傷した開拓者] だけど、ここら一帯の建設工事を早く終わらせないと、またあいつらが襲って……

[タフな開拓者] いいから! お前は自分の体だけ気にしてろ! きっと何か方法はあるはずだ!

[負傷した開拓者] ……

[タフな開拓者] 心配すんな、先生。怪我人がちゃんと安静にしてるよう、しっかり見張っとくからよ。

[カーネリアン] 負傷者の手当ては済んだのかい?

[カーネリアン] 襲撃してきた奴らは私とアンケセ……ビーズワクスでしっかりと警告しておいたから、しばらくは大丈夫なはずだよ。他に手伝えることはあるかな?

[医療オペレーター] カーネリアンさん! 今回はビーズワクスさんと一緒にここまで護送してくださって、本当にありがとうございます!

[医療オペレーター] 開拓者の方々の治療はとりあえずはひと段落つきました。重傷者はおらず、隊の感染者に関しても、特に危険な状態の患者さんはいませんでした。

[医療オペレーター] 任務自体は完了したと言ってもいいでしょう。ですが……

[カーネリアン] さっきの奴らが戻ってくるのを心配しているんだね?

[医療オペレーター] はい……

[医療オペレーター] あの人たちがこの周辺に現れるようになったのは、昨日今日のことではありません。一度や二度こらしめた程度で、大人しく手を引くはずがないです。

[カーネリアン] だけど、私たちは任務で来ているだけ。ずっとここに留まって手を貸し続けるわけにもいかない……そう言いたいのかな?

[カーネリアン] まったく……誰にでも分かる理屈なのに、うちのおチビちゃんはまだ理解できないとはね。あんなうわべだけの言葉をあっさりと信じるなんて。

[カーネリアン] ほんと、心配だよ。

[医療オペレーター] あはは……ビーズワクスさんはもう十分に頑張っていますよ! 初めて任務で一緒になった時なんて、迷子になってしまって三日後にようやく、野営地に戻ってきたんですから……

[カーネリアン] へぇ? そんな話、あの子から一言も聞いたことがないな。よければ都合のいい時に食事でも一緒にどう? 妹が世話になったお礼のついでに、ぜひ詳しい話を聞かせてほしいな。

[医療オペレーター] もちろんです! 私もカーネリアンさんにロドスの食堂のおススメ料理を紹介したかったんですよ!

[医療オペレーター] そういえば、ビーズワクスさんはどこですか?

[カーネリアン] まだやることがあると言って、一人で行動しているよ。

[医療オペレーター] えっ、単独行動ですか!? ま、また迷子にならないといいんですけど……

[医療オペレーター] でも、少し意外でした。てっきりカーネリアンさんなら、心配でついていくものだと思っていたのに。

[カーネリアン] なんでもかんでも私が手を挟んでは、あの子が成長できなくなるからね。

[カーネリアン] アンケセナーは己の成長のために出て来たんだ。色々経験させるのは大切なことだし、過保護すぎても嫌われる――まあ、心配なのも事実だけれど。

[カーネリアン] だから襲撃者の件は……よければ、私に任せてくれないかな?

[医療オペレーター] 何かいい方法を思い付いたのですか? 私にできることがあれば、なんでも言ってください……

[カーネリアン] ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ。

[カーネリアン] 私のやり方は……ロドスのみんなの気分を害してしまうかもしれないからね。

[医療オペレーター] そ、それはどういう……

[カーネリアン] フフッ、気にしないで。私に任せてくれれば大丈夫だ。

カーネリアンがロドスに加入したのは、その場しのぎのためにすぎなかった。

幼い伯爵閣下は、不名誉な病を患いながらも、感染者であることを隠し、リターニアの華やかな上流階級の人々と交流を深めていた。

まだ年端も行かぬ子供だというのに、その立ち振る舞いすでに成熟しきっていた。

だがカーネリアンからすれば、その姿は立派からは遠くかけ離れている。むしろ記憶の中にある、親を失い全身傷だらけになっている野獣の子にしか見えなかった。

最後まで気高い獣であり続けようと、狩人に向かって牙を剥き、全身の毛を逆立てている。

そんな姿を哀れに思い、少し出しゃばって手を貸したにすぎなかったのだ。

そしてロドスと協定を結んだのも、当時のやむを得ない数々の選択の中のほんの些細な一部でしかない。

[利口な略奪者] おい、こんな夜中に外で何フラついてんだ?

[乱暴な略奪者] 痛くて眠れねぇんだ――いててっ、あいつ手加減なしに思いっきりやりやがって!

[利口な略奪者] あの女のせいで、今回はとんだ無駄足だったな。

[利口な略奪者] ロドスとかいうお節介な連中が帰ったら、開拓隊どもをきっちりこらしめなきゃな。もう二度と俺らにさから――

[???] 二度と俺らに、何だって?

[利口な略奪者] 誰だ!?

[カーネリアン] こんばんは、諸君。

[カーネリアン] 何やらとても楽しそうな話をしていたみたいだね。よければ私も混ぜてくれないかな?

[乱暴な略奪者] お、お前は、昼間のイカレ女!

[カーネリアン] ずいぶんと失礼な呼び方だな。

[カーネリアン] ……だけど、それくらいがちょうどいい。君たちが、突然礼儀正しくなってしまったら、私もやりづらくなるし。

[利口な略奪者] 何をする気だ!?

[利口な略奪者] お、俺たちを見逃してくれるって、昼間約束したろ……

[カーネリアン] おや? そうだったっけ?

[カーネリアン] アンケセナーを応援するとは言ったが、君たちを見逃すって?

[カーネリアン] おかしいね、そんなこと一言でも言ったかな?

[乱暴な略奪者] ……

[利口な略奪者] この……*下品なクルビア語*!

[カーネリアン] お二方、そう興奮しないで。

[カーネリアン] 汚い言葉でわめき散らかしたって何も変わらないよ。だけど、君たちを片付ける前に、少し聞きたいことがあるんだ。

[利口な略奪者] ……聞きたいこと?

[利口な略奪者] 質問に答えてやってもいい。その代わりに、俺たちの命は奪わないと約束してくれ。

[利口な略奪者] ぐはっ!!

[カーネリアン] 悪いが交渉は受け付けない。

[カーネリアン] どうやら二人はまだ状況を上手く飲み込めていないようだね。これもすべて、私が昼間に手加減しすぎたせいだ。

[利口な略奪者] 俺の手が……! た、頼む、もう勘弁してくれ! なんでも話すから見逃してくれよ!

[カーネリアン] よろしい――

[???] 待って!

[カーネリアン] (……またか!)

[利口な略奪者] えっ?

[医療オペレーター] カーネリアンさん! よかった、間に合って……

[ビーズワクス] お姉ちゃん、待って。乱暴なことしたらダメだよ。

[カーネリアン] コホン……アンケセナー、君は何か誤解をしているようだね。私はただ彼らと友好的におしゃべりを……

[ビーズワクス] お姉ちゃん。

[カーネリアン] ん?

[ビーズワクス] 私、バカじゃないよ。

[カーネリアン] ……

[ビーズワクス] お姉ちゃんの戦い方はよく知ってる。だから、もう隠さなくてもいいよ。

[ビーズワクス] 長老のおじいちゃんたちから聞いたよ。お姉ちゃんが初めての狩りから帰った時は、全身血だらけで獲物もボロボロだったって……

[ビーズワクス] お姉ちゃんはやり方がストレートで、乱暴すぎるよ!

[カーネリアン] ……長老たちは本当になんでも君に話しちゃうんだね。

[カーネリアン] 分かった、手を引こう……だけど、彼らをどうするつもりなの?

[カーネリアン] きちんと働くことを期待するのは現実的ではない。かと言って、このまま見逃して放置したら、何をしでかすか分からないよ……私たちはずっとここに留まっていられるわけじゃないんだ。

[ビーズワクス] うん、それは分かってる。

[ビーズワクス] でもね、お姉ちゃん、ここはクルビアなんだよ。

[カーネリアン] まさか……

[ビーズワクス] だから私たちも、クルビア人のルールを拝借しちゃえばいいんじゃないかなって思ったの。

[医療オペレーター] ふふ、ビーズワクスさんってすごく抜かりないんでよ。午後にはもう一人で街へ出かけて、手続きを全部済ませてたそうなんです。

[クルビア警察] クルビア警察です。遅くなって申し訳ございません。

[クルビア警察] この者たちが通報にあった、開拓隊を何度も襲撃し、周辺の通行人にまで暴力を振るったという略奪者集団ですか?

[利口な略奪者] クソ……どうしてサツが……

[クルビア警察] フン、やはり貴様らロクデナシどもが面倒事を起こしていたのか!

[医療オペレーター] まだ他にも仲間がいます! 警官さん、ついて来てください!

[ビーズワクス] 開拓隊のみんなに聞いたの。この人たち、前から悪いことばっかりしてたから、逮捕されればしばらくは出て来られないだろうって。

[ビーズワクス] そうすれば、もう悪いこともできないでしょう?

[カーネリアン] 確かに……そんな方法、よく思いついたね。

[ビーズワクス] 部族だと、警察に頼るって考えはあまり一般的じゃないもんね。でも郷に入っては郷に従えって、ドクターが言ってたから。

[ビーズワクス] それと、借りられる力はとにかく全部借りる……これもドクターが教えてくれたことだよ。

[カーネリアン] ……

[カーネリアン] そうか、あの人はそんなことも教えてくれたんだね……

[カーネリアン] フフッ。

[カーネリアン] アンケセナー。

[ビーズワクス] なに?

[カーネリアン] ロドスは好きかい?

[ビーズワクス] うーん……

[ビーズワクス] うん、好きだよ。

[カーネリアン] 理由を訊いてもいいかな?

[ビーズワクス] みんな優しい人ばかりだし、ロドスにいれば、見たことのないものにいっぱい出会えて、たくさん学べるから。

[ビーズワクス] これが私たちが旅に出た目的だよね、お姉ちゃん……?

[カーネリアン] ああ、その通りだよ。

[カーネリアン] 部族の伝統は、外の世界を知る機会を私たちに与え、興味を持った知識を吸収させ、見たことのない物事に触れさせるためにある……

[カーネリアン] 私もそうやって歩んできた。今度はアンケセナーの番。

[カーネリアン] ああ……分かっていたつもりなんだけどね。

[ビーズワクス] お姉ちゃん、どうしたの? なんだか……悲しそうな顔してる。

[カーネリアン] いや、むしろ嬉しいくらいさ。

[カーネリアン] まったく、私の足にしがみついて離れようとしなかったおチビちゃんが、こんな立派な理屈を話せるようになったなんてね。本当に時間が過ぎるのは速いものだよ。

[カーネリアン] でもね、こんなに頼もしくなったアンケセナーを見ると、やっぱりお姉ちゃんとしては少し悲しくも感じてしまうね。

[カーネリアン] よし、帰ったらドクターをお喋りにでも誘ってみるとしよう。アンケセナーの興味深いエピソードも色々知っていそうだし。

[ビーズワクス] お姉ちゃん!

[カーネリアン] ふふっ、冗談だよ。

[カーネリアン] よくやったね、アンケセナー。君が自分なりの方法で困難を解決できるところをみられて、本当に嬉しいよ。

[カーネリアン] だけど、前に話した言葉も本当だよ。アンケセナーの下した判断ならば、お姉ちゃんは絶対に応援する。だから何があっても怖がらずに、思った通りにやってごらん。

[ビーズワクス] うん、分かってるよ。

[ビーズワクス] お姉ちゃんはまたすぐどこかへ行っちゃうんだよね?

[カーネリアン] ……すまないね、ずっと一緒にいてやれなくて。

[ビーズワクス] 大丈夫だよ。

[ビーズワクス] 大丈夫。お姉ちゃんがいない間も、ロドスと一緒に旅を続けるよ。まだまだ学ばなきゃいけないものはたくさんあるし……

[ビーズワクス] もっともっと頼もしくなって、次会えた時は絶対にお姉ちゃんの力になるんだ。

[カーネリアン] ……

[カーネリアン] はぁ……これでようやく安心して君をロドスに預けられるよ。

[カーネリアン] もし「向こう」で本当に何かが起きたとしても、ロドスにいれば危険が及ぶこともないだろうし……

[ビーズワクス] お姉ちゃん……?

[ビーズワクス] ……

[ビーズワクス] いつも私に内緒で危ないことばっかりするんだから……お姉ちゃんのバカ!

[カーネリアン] おや? ついに寝言を起きている時に言ってくれたね?

[ビーズワクス] (頬っぺたをふくらませる)

[カーネリアン] ほらほら、そうむくれないで。アンケセナーだって分かっているはずだよ。君が徐々に自分なりのやり方を見付けていっているように……

[カーネリアン] 私にも私のやり方があるんだ。

ロドスは多種多様な者たちを受け入れている。志を同じくして集った者も少なからずいるが、大半は様々な事情により一時的に身を寄せているに過ぎない。

アンケセナーがこの場所で視野を広げ、思考することを学び、ロドスの理念を理解し受け入れられたことに、カーネリアンは心より安堵を感じていた。

己の心の赴くままにしか行動しない自分ではあるが、ロドスの可愛らしい者たちのためなら、少しだけ自身を抑え、彼らに協力してもいいと、カーネリアンは思った。

そうして長い時間をかけて擦り合わせていけば、自分ですらロドスの影響を受けて、少し性格が丸くなるのだろう?

その日が来るのが楽しみでもあるが、その前にまずは……

[乱暴な略奪者] (間違いねぇ……あのキャプリニーの女は、ホーエンローエ伯爵の護衛だ。)

[乱暴な略奪者] (リターニア伯爵のそばにいる人間が、鉱石病関連の製薬会社と親しくしているなんてよ……)

[乱暴な略奪者] (ロドス……どっかで聞いたことある会社の名前だな。)

[乱暴な略奪者] (とにかく、まずはこのことを上に報告し――)

[???] こんばんは、害虫さん。また会ったね。

[乱暴な略奪者] き、貴様はあの護衛――

[カーネリアン] シー……

[乱暴な略奪者] くっ……!

[カーネリアン] なかなか賊の変装が上手いじゃないか。危うく本物かと騙されるところだったよ。

[カーネリアン] 貴族のお偉い方も、ずいぶんと面倒なことをするね。たかが護衛である私にまで監視をつけるなんて。

[カーネリアン] アンケセナーの目を盗んで戻ってくるのは大変だったんだよ。子供だましはもう見抜かれてしまうみたいだから。

[乱暴な略奪者] クッ、ま、まさか……やっぱりお前らは……

[乱暴な略奪者] 感染しゃ――ガハッ!

[カーネリアン] 沈黙も一種の美徳だよ、ミスター。

[乱暴な略奪者] ぐっ、ぐああぁぁ!! 俺の足がぁ!

[カーネリアン] ああ、すまない。うっかり痛くしてしまったかな?

[カーネリアン] 君の後ろにいる黒幕を教えてくれさえすれば、楽にしてやろう。悪い条件じゃないだろう?

[カーネリアン] 自称文明人たちが考え出した陰湿な拷問の数々は、まだあまり使い慣れてはいないけれど、相手があまりにも頑固だったら、試してみるしかなさそうかな?

[カーネリアン] 体験してみるかい? お勧めはしないけど。

[乱暴な略奪者] ひっ! あ……ああ……!

[カーネリアン] ……これでしばらくは大丈夫だね。

[カーネリアン] ここの状況を、すぐにでも伯爵に報告しないとな……しかし、最近のちびっ子はみんな扱いにくいったらありゃしない。

[カーネリアン] ふぅ……急いで戻らないと。遅くなったら、またアンケセナーに怪しまれてしまう。あの子は昔から勘が鋭かったけれど、今ほど冴えてはいなかった。まったく、誰に影響を受けたのやら。

[カーネリアン] はぁ、本当に、子供が大きくなるのは一瞬だ。

[カーネリアン] 私も、もう少し頑張らなきゃいけないね。これじゃ、胸を張って帰れやしないよ、まったく。

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