aklib_story_怒号光明_R8-8_無情に傾く人心_戦闘前

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怒号光明_R8-8_無情に傾く「人心」_戦闘前

一部の感染者が隊から抜けることをタルラは許可した。そのことでパトリオットと口論になってしまう。そして、隊を抜けた感染者は、ウルサス軍の目を欺くため、タルラたちを囮にしたのだった。


フェイゼへ:

私たちは南へ向かった。

遊撃隊は、各採掘場の感染者根絶計画が始動する前に、できるだけ多くの感染者を救いたいと考えている。

駐屯軍はひたすら後退し、私たちはその分前進していた。

一見すると、私たちがウルサスの部隊を追撃しているように見えるかもしれないが、それは間違いなく錯覚だ。

私たちはウルサスの正規軍を避けながら、感染者の救出を行なっているのだ。

なぜそんなことをするのかと問われれば、「こうするべきだから」としか言えない。

だが、より多くの感染者を吸収することで、他の部隊の行動範囲を広げていくことも、ミスター・パトリオットの戦略計画の一部なのだろう。

彼の中では既に、やるべきこと、やらざるべきことの境界線がはっきりと引かれているように思う。

その線を越えるということは、私たちが――これに関しては絶対に不可能だが――ウルサス駐屯軍と正面から戦うか、身を隠す必要に迫られることを意味している。

つまり、私たちが雪原を離れるならば、必然的にウルサス領――厳格な法律によって管理された移動領土に潜伏することになる。

そうなれば遊撃隊は、私たちが再び立ち上がる機会を見つけるまで武器を収めるだろう。

荒野ではウルサスの軍艦が活動し、街は感染者に対してより残忍になる一方だ。そこでの生活は困難な日々であるに違いない。

この一歩を踏み出すことは、本当に難しい。

しかし西北凍原にあるのは……雪だけだ。

雪しかない土地では食っていけない。

11月3日

X年目

[ペトロワ] 兄弟姉妹たち、みんな無事か!?

[ペトロワ] 無事ならいいんだ。

[ペトロワ] ……厳しい戦いだったな。

[タルラ] ありがとう、スノーデビル。私と一緒に先鋒を務めてくれて。いい戦いぶりだった。

[ペトロワ] 私たちも、タルラがそばにいるといい感じに戦える気がする。連係も上手くできていた。どうりで姐さんが安心して私たちの指揮を任せたわけだ。

[ペトロワ] それに、タルラのアーツはどんどん威力を増している。あの寒気の塊を火で貫いて爆発させるなんて、思いもしなかった。

[タルラ] あれは火じゃなくて……まぁ、説明すると複雑なんだ。

[ペトロワ] 姐さんもきっと喜ぶだろうよ。私たちが姐さんに頼ってばかりいる必要がなくなったからな。

[ペトロワ] ところでタルラ……ここではもっと多くのウルサス軍に遭遇することになるんだろうか?

[タルラ] さあ、どうだろうな? だが心配はいらないと思うぞ。この都市はもともと、三年前のウルサスによる立ち退き計画の一部だった。

[タルラ] お決まりの汚職、もしくは違法行為が捏造され、軍が街を占拠……住民を追放するか奴隷にした。普通の住民相手に、精鋭部隊を投入することはないはずだ。

[タルラ] 少なくとも私たちの前に現れた連中はかなり弱かっただろう?

[ペトロワ] 言うほど弱くはなかったが。

[タルラ] ウルサスの正規部隊と比べれば、だ。パトリオットも、お前たちをそれほど厳しい戦闘には参加させていないだろう?

[ペトロワ] あぁ。確かに……大旦那は私たちではまだ力不足だと思っている。でも今なら大丈夫だ。姐さんとの共闘にも慣れてきたしな。

[タルラ] だが本物のウルサス軍は、さっきの規律を欠いて訓練も足りない、すでに編制から外されているかもしれないような分遣隊に比べたら格段に強いぞ。

[タルラ] そんな底辺のウルサス軍相手に、戦術に頼ってやっと少し上回る。それが私たちの現状だ。

[ペトロワ] ……では私たちには喜ぶべきことなど何もないと?

[タルラ] そうでもない。生きるのに必要な物は手に入れられた。

[タルラ] この都市の資源がなければ、私たちは冬を越せない。これは絶対に勝ち取らねばならなかった物だ。

[タルラ] それに、たとえこの移動都市が古く、ボロボロで、小さくても……

[ペトロワ] 私たちにとっては十分大きな戦果だな。

[ペトロワ] これまで移動都市に住んだことなんて一度もなかったよ。

[感染者] タルラ!

[タルラ] どうした?

[タルラ] お前は……カール村の感染者だったな。

[感染者] ただの感染者じゃない、俺たちだって大部隊だ! 君たち遊撃隊と変わらない活躍をしたぞ。

[タルラ] 残念ながら、私は遊撃隊ではないんだがな。

[感染者] とにかく、今回俺たちは、君たちよりも多くの人員を割いて作戦に当たったってことだ。

[タルラ] ……で、私に何の用だ?

[感染者] ここで別れよう、タルラ。

[タルラ] どういうことだ?

[感染者] 我々は君たちと共に何度も戦い、たくさん貢献をしてきた。

[感染者] この街の資源は折半しよう。そちらの取り分が多少多くなっても構わない。

[感染者] しかし、この都市は俺たちに譲ってくれないか?

[感染者] これがあれば……我々は色んな場所へ行ける。氷原をあちこち移動できれば、監視隊やウルサス軍をかわし続けることだってできる。

[タルラ] これ以上戦いたくないということか?

[感染者] これ以上戦ったら、間違いなく死んでしまう!

[感染者] 俺たちには……もう無理だ……

[感染者] 敵は、どんどん強くなってきている。

[タルラ] こんなものは、パトリオットの遊撃隊がかつて直面したどんな強敵にも及ばない。

[感染者] でも、俺たちには無理なんだ!

[感染者] タルラ、反対しない……よな?

[ペトロワ] お前は何を言っているんだ?

[感染者] スノーデビル……!

[感染者] ……体温のない君たちなら死は怖くないだろうが、こっちは――

[ペトロワ] お前――!

[タルラ] (手でペトロワを制す)

[ペトロワ] タルラ……

[タルラ] なら資源は多めに貰っていくとしよう。この都市はそちらに譲る。

[感染者] あ、ありがとう……助かるよ。

[タルラ] だが、戦士を侮辱するのは許さない。スノーデビルに謝れ。

[感染者] ……

[感染者] ゴホンッ……悪かった。

[感染者] これでいいか?

[タルラ] ……ペトロワ、戦士を召集してくれ。資源を確認しに行く。

[タルラ] (それと、奪ったウルサスの通信端末をオンにしておいてくれ。)

[ペトロワ] (なぜだ……?)

[タルラ] (彼らはパトリオットの遊撃隊がいないことを知っている。)

[パトリオット] どこへ行く?

[タルラ] ミスター・パトリオット、ちょうど合流しようと思っていたところです。

[パトリオット] 都市を譲ったのか?

[タルラ] もう知らせを受けたようですね。

[パトリオット] ――彼らの行為は裏切りともいえる。君の許可が彼らに正当な理由を与えた。君は規律を反故にした。

[タルラ] 離脱すると言われた時点で、引き留めるのは無理でした。

[パトリオット] 信念のない者、忍耐力のない者は、最初から戦うべきではない。

[タルラ] その基準に従えば、戦闘に参加する資格がある人間なんてほとんどいないでしょう。

[パトリオット] だが規律は絶対だ。

[パトリオット] 彼らを殺し、都市を奪回しろ。これは君の小隊と同胞のため、君が為すべきことだ。

[タルラ] 荒廃した移動都市一つのために行き場のない仲間を殺し、同胞の血を都市の歯車の潤滑油にしていいと、皆に知らせるのですか?

[パトリオット] 彼らは規律に違反した。

[タルラ] 彼らは最初から規律のために戦っていません。

[パトリオット] ……初めて君に会って以来、私は君に正式に命令したことはない。君の方針に協力するか、拒否するかの二つに一つだった。

[パトリオット] あれから四年経ったが、今の君は以前より成長したのか、それとも軟弱になったのかわからん。

[タルラ] 私があなたの考えに反対したからですか?

[パトリオット] 今ほかの感染者に、彼らが規律に背いたことを公表すれば、彼らはすぐに処刑されるだろう。

[パトリオット] 彼らの行いを公にすべきだ。

[タルラ] ……できません。

[パトリオット] ためらったな。彼らが感染者だから、君は躊躇した。

[パトリオット] それが不名誉だと思うからか?

[パトリオット] 君が人を殺すことを嫌い、権力にも執着しないのは、もちろん悪いことではない。ならば君は、この始末をほかの誰かにつけさせる義務がある。

[タルラ] ミスター・パトリオット……私はそうする勇気がないわけでも、人より道徳的だと自負しているわけでもありません。

[パトリオット] では私と遊撃隊が行くとしよう。

[パトリオット] 君が彼らと仲違いしたくないというのなら、遊撃隊がやる。

[パトリオット] どうした、その顔は? 私が噂されているような……純粋で崇高な者だとでも思っていたのか?

[パトリオット] そんな者はこの戦争が始まる前に死んでいる。

[パトリオット] 戦争で勝利することと、勝ち取った成果を守るよりほかに名誉なことなどあるか? 憎い敵に打ち勝つことは名誉かもしれないが、そのために支払う多くの犠牲を誇りに思ったことはない。

[パトリオット] 私たちが勝利することで、たとえ数人でも死にゆく同胞を減らせるのならば、それは正しいことだ。

[タルラ] 整備が行き届いていないあの都市は、あと何年もしないうちに崩壊するでしょう。人間に奉仕した時間が、設計された耐久年数を遥かに上回っていますから。

[タルラ] お互いにわかっているはずです。彼らの最終的な運命は、未だ氷原の上にあり、活路は依然として彼ら自身で見いだす必要があると。しかしこの三年で、彼らは自らの手で希望の火を灯したのも事実。

[タルラ] 私はそんな希望を摘み取りはしません。

[パトリオット] 裏切り者のせいで、私たちの部隊が崩壊してもよいのか?

[タルラ] 違います。言ったはずです……彼らは最初から私たちの隊に属していません。

[タルラ] 私はあなたのように「立ち上がって戦えないのは弱い人間だ」とは考えません。「まだ私たちの考えを理解できていないのだ」とだけ考えます。

[タルラ] この先も、私たちは多くの同行者を抱えるでしょう。しかし、誰もが私たちと最終目標を同じにできるわけではありません。

[タルラ] 私たちはあくまで彼らの力を借りるだけです。徴用するのではありません。徴用では、彼らを彼ら自身の目標から遠ざけてしまいます……

[タルラ] そうなると、彼らの猜疑と離心を防ぐことは、より一層難しくなるでしょう。

[パトリオット] ……

[パトリオット] 部隊の純潔さか。

[タルラ] その言葉を使いたいのならどうぞ。私は好きではありませんが。

[パトリオット] 君は正直者だな。

[パトリオット] だが、この近くには訓練された交易ルート防衛軍が駐屯している。移動都市を手に入れた彼らも、普通に運行して切り抜けられるとは考えていまい。不幸は必ず起きるだろう。

[タルラ] そうですね。認めたくはありませんが、彼らがやりそうなことも想像はつきます。こちらもしっかり備えておく必要があります。

[タルラ] スノーデビルが……通信を傍受しました。

[タルラ] その通りになったようです。あの移動都市からこの区域のウルサス駐在軍に情報が発信され、私たちの位置が暴露されました……

[タルラ] ……彼らは私たちを利用して、ウルサス軍を引き離そうとしているようです。

[タルラ] これ以上の戦いは、誰も望んでいないというのに。

[パトリオット] 彼らはその愚かさゆえに、少しずつ破滅へと向かっているのだ。

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