aklib_story_我が眼に映るまま_その全てを忘れず

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我が眼に映るまま_その全てを忘れず

航路前方で突然天災が発生した。ドクターはそれを予知したかのようにブリッジに姿を現し、ロドスを率いて危機を乗り越える。ケルシーの判断によると、ドクターはほとんどのエピソード記憶を失ってはいるものの、源石の本質に関する基本的認識はまだ残っているとのことだった。

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p.m. 4:11 天気/曇天 視界：10km

ロドス本艦 医療室

[ケルシー] もう電極パッドを外しても構わない。

[ドクター選択肢1] 所見はどうだ？

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 熱っぽいし……ぼーっとして気持ちが悪い。

[ケルシー] 検査の結果に、新たな進展はなかった。

[ケルシー] 少し休めば、いずれの症状も落ち着くことだろう。

[ケルシー] Dr.{@nickname}。この一か月余りで、君の脳を七回スキャンしたが……結果は毎回大差がない。

[ケルシー] 内側側頭葉には全く問題がなく、脳内の他の領域におけるニューロンも若者と比べても遜色ない状態……

[ケルシー] つまり、私の判断によれば……君はもうこのように頻繁に医療室を訪れ、不快感を伴う検査を受ける必要はないということだ。

[ドクター選択肢1] それなら、なぜ自分の記憶は戻らないんだ？

[ケルシー] 確かに、君が多くの記憶を失っているということは疑いようがない事実だ――いくら君でも、すべての検査結果を偽装することなど不可能だからな。

[ケルシー] 君が失っているのは、いわゆるエピソード記憶と呼ばれるものだ。君自身の身元に関する主観的な認識、そして、チェルノボーグの石棺で眠りにつくより前に経験したすべてが欠落している。

[ケルシー] しかし、それとは対照的に……いわゆる手続き記憶の回復は極めて早い。

[ケルシー] アーミヤやドーベルマンの報告、そして私自身の目で見ても、その結果は明白だ。

[ケルシー] 君がチェルノボーグで見せた戦場における指揮能力は、以前と遜色ないものだった。

[ドクター選択肢1] どうしてこんなことに？

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] つまり、自分はまだ役に立てる……と？

[ケルシー] 記憶障害を引き起こす要因は多種多様だ。不可抗力といえるケースもあれば、主観的要因によるケースも存在する。

[ケルシー] 医学的検査手段を用いたところで、できることはせいぜい、原因の候補から器質的病変を除外するくらいのものだ。

[ケルシー] 君は、以前に比べ沈黙を選ぶことがはるかに多くなった。

[ケルシー] 君の言語中枢に損傷がないことを考慮すると、エピソード記憶の欠陥が君の性格に変化を引き起こしたと推測する他あるまい。

[ケルシー] ロドスにとって、君の存在意義は「役に立つ」などという小さなものには留まらない。

[ケルシー] 仮に君が本当にすべての記憶を失い、無知な一般人になったとしても……アーミヤは君を救ったことを後悔しないだろうし、ロドスにはいつまでも君の居場所があるだろう。

[ケルシー] いずれにせよ私は、過去そうであったように……君の持つ能力が重要な役割を果たすことを信じている。

[ドクター選択肢1] ケルシーの力になりたい。

[ドクター選択肢2] アーミヤの力になりたい。

[ケルシー] ……分かっているさ。

[ケルシー] それに、私も君の努力は目にしている。

[ケルシー] 龍門を後にして以来、我々はここしばらく荒野を進み続けている。オペレーターたちには休養が必要だ。そうすれば、アーミヤも適度な休息を取ることができるだろうしな。

[ケルシー] そして君もまた、彼らと同様に一息つく必要がある。違うか？

[ドクター選択肢1] 少し、現状に慣れる時間がほしいんだ。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] まだここで立ち止まりたくはない。

[ケルシー] PRTSが君の補助を行う。じきにロドスでの仕事にも慣れることだろう。

[ケルシー] だが、あまり無理はするなよ。

[ケルシー] 巨大な災難から辛うじて帰還したのは、ロドスだけではない。君もまたそうなのだ、Dr.{@nickname}。

[ケルシー] 君の身体は概ね正常通りに回復しているが、その記憶はまだ損傷している状態だ。精神状態も、安定しているとは言い難い。

[ケルシー] 過労は君の健康を害するぞ。一人の患者として覚えておいてくれ。

[ドクター選択肢1] ケルシーも病人だろう。

[ドクター選択肢2] アーミヤも病人だろう。

[ケルシー] 私か？ 気遣いには感謝する。

[ケルシー] 鉱石病に慣れたとは到底言えないが……私の心配は一番最後で構わない、ということだけは保証しておこう。

[ケルシー] 君が彼女を心配していることくらい、彼女自身も知っているさ。最近のアーミヤは、以前より自分の身体に気を配るようになったからな。

[ケルシー] しかし、私から伝えるより君から言ってもらう方が、内容によっては効果的であることは認めざるを得ない。

[ケルシー] Dr.{@nickname}。君はたった一ヶ月の間に、艦内各部門の人員配置業務を引き継いだ。

[ケルシー] それだけでなく、オペレーターと共に過去の戦闘を振り返り、更なる戦術最適化の可能性を探る君の姿も、しばしば目にしている。

[ケルシー] ついさっき……検査を受けていた時でさえ、何かを読んでいたな。あれは数日前加入したばかりのオペレーターが書いた日報だろう？

[ケルシー] 加えて、私は君のノートも確認した。

[ケルシー] オペレーターたちに関する非常に詳細な記録、戦術考案中に偶然ひらめいたであろうアイデア……

[ケルシー] そしてロドスの業務効率に関する計算式、更には私にすら理解不能の落書き。これらはすべて、君が仕事に打ち込んでいることを立証している。

[ケルシー] そのほとんどがPRTS頼りでも終わらせられる仕事だが……これが君にとって好ましいやり方なのだろう。

[ドクター選択肢1] 単なる思考整理にすぎない。

[ドクター選択肢2] PRTSのデータでは少し人間味に欠ける。

[ドクター選択肢3] 君についての愚痴まで読んでないだろうな！？

[ケルシー] ノートの厚みが増すほどに君の思考も進歩する、というわけか。

[ケルシー] PRTSはただのツールにすぎない。それに依存せず仕事を進めるのは、いい習慣と言えるだろう。

[ケルシー] あれは愚痴だったのか？ まあ、「褒め言葉」として受け取るとしよう。

[ケルシー] とにかく、君の持つ能力はそれぞれが急速に回復しつつある。これは君の手続き記憶が残っているからだけではなく、君自身が並外れた努力をしているからこそだ。

[ケルシー] 意識的に鍛錬を行うことは、君の脳を石棺で眠りにつく以前の状態へといち早く回復させるための助けになるだろう。私の予想よりも早く回復する可能性も十分にある。

[ドクター選択肢1] ケルシーも、自分の回復を望んでくれているのか？

[ケルシー] 私は君の担当医だ。患者の早期回復を望まない医者などいないさ。

[ケルシー] ただ、もし君が過労で倒れでもしたら、アーミヤの状態にも影響が及ぶことは留意しておくように。

[ドクター選択肢1] 結局、アーミヤを心配しているだけ、ということか？

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 分かってる。気にかけてくれてありがとう。

[ケルシー] 時折見せるその感情表現は、過去の君とは随分異なっているな。非常に興味深いことではあるが、私に向ける必要はない。

[ケルシー] 何度も言ってきたように、君の心身の健康を確保することは私の職責の一つなのだ。

[ケルシー] 故に……そうだな。たとえ戦場ではなく、この場においても、私は君を気にかけていると覚えておいてくれ。

[ドクター選択肢1] 珍しい。ケルシーがそんなことを言うとは。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 分かった。

[ケルシー] では、今日の検査はこれで終了だ。

[ケルシー] 先ほども述べた通り、来週のこの時間は、ここに来る必要はない。

[ケルシー] だが、毎日朝と夜に行っている定期検査はしばらく継続する。そしてこれからは、私ではなくLancet-2が検査担当となる。

[ケルシー] それと……もし現在の健康状態では職務続行が不可能と判断された時は、ただちに医療室に戻って来るように。

[ケルシー] では、ドクター。仕事に戻って構わないぞ。

p.m. 4:32 天気/曇天 視界：7km

ロドス本艦 ブリッジ外廊下

[ナビゲーターA] あれ、アーススピリットさん。どうしてこちらに？

[アーススピリット] 午前中に提出した地質モニタリングレポートの更新をしにね。

[ナビゲーターA] こんなに早くですか？ あなたらしくもないですね。

[アーススピリット] データというのは、移り変わりが激しいものなの。お陰で昼寝もできなかったくらいよ。

[アーススピリット] ……っと、そうだ。このレポートを、あなたたちのリーダーに渡しておいてもらえるかしら。一番下に私の意見を書いておいたから。

[ナビゲーターA] 分かりました。強風警報ですよね？

[ナビゲーターA] そのくらいなら、問題ありませんよ。エンジニア部が数日前、防風板を強化してくれましたし……支援部もすでに、甲板の危険区域には近づかないよう各オペレーターへ通達してくれましたから。

[アーススピリット] それだけじゃないの。ほら、レポートの下の方を見て。

[ナビゲーターA] どれどれ……「航路前方に嵐が出現する可能性あり」……「低速運行あるいは迂回を推奨する」？

[ナビゲーターA] アーススピリットさん、この嵐って……災害レベルはどのくらいですか？

[アーススピリット] ……分からないわ。

[アーススピリット] 前方に複数のサイクロンが発生し、予想を超える速度で勢力を増しているのを確認したの。私はただ、その異常なデータに基づいて可能性を提示しただけよ。

[ナビゲーターA] そうなると……少し説得力に欠けますね。

[ナビゲーターA] このルートは一ヶ月前に策定されたものです。各方面の承認と確認を経て進行しているので、今から急遽変更となると影響範囲は大きくなります。

[ナビゲーターA] 前回の会議には、あなたも参加してましたよね？ 今回のルートはリスクが極めて低いですし、過去十年間、龍門からリターニアへ向かう公式のキャラバンも、いつもここを通っているんですよ。

[アーススピリット] そうね。天災多発エリアを避けているんだから、理論上は危険に遭遇する確率なんて極めて低いはず……

[ナビゲーターA] ということは……あなたも、そこまで自信がないということでしょうか？

[ナビゲーターA] 上からのリクエストは、なるべく早くウルサス及び龍門から離れることなんです。もし緊急迂回することになれば、遅延に繋がってしまいます。

[アーススピリット] ……まあ、いいわ。私の警告をあなたが受け取ったことさえ確認できれば、お仕事完了なわけだし。

[アーススピリット] それに、これ以上は職責の範疇を超えてるしね。私にはあなたたちの判断にまで干渉する権利はないもの。

[ナビゲーターA] では、少し待っていてください。手順に従いリーダーに報告を行います。それから話し合いましょう……

[ドクター選択肢1] いや、それでは間に合わない。

[ナビゲーターA] えっ、ドクター！？ どうしてこちらに？

[ナビゲーターA] いつもなら、通常運行時はご自分の執務室にいるじゃないですか。

[ドクター選択肢1] ちょうどブリッジに上がろうと思っていたところだ。

[ナビゲーターA] それは……なんというか、偶然ですね。

[ナビゲーターA] レポートはすでに受け取っていますが、リーダーに直接状況説明をなさいますか？

[ドクター選択肢1] 嵐は目の前だ。彼もすぐに気が付くだろう。

[ドクター選択肢2] 緊急事態だ。アーミヤに直接話そう。

[ナビゲーターA] えっ、そこまで深刻なんですか？ 嫌な予感がしてきたな……

[アーススピリット] ドクター、私を信じてくれるの？

[ドクター選択肢1] 自分が信じるのは、目の前の事実だ。

[ドクター選択肢2] 自分のオペレーターを信じるのは、当然のことだ。

[アーススピリット] それなら、一緒にブリッジに行くわ。サイクロンの状況を引き続き観測して、あなたとアーミヤにリアルタイムで伝えるべきだもの。

[ドクター選択肢1] それが最善策だな。

[ドクター選択肢2] 残業代はいらないのか？

[アーススピリット] ええ。これも、私の職責の内よ。

p.m. 4:39 天気/曇天 視界：4km

ロドス本艦 ブリッジ

[航行制御員] 報告！ 航路前方の風速が、急速に上昇しています！

[航行制御員] 視界不良、可視範囲が狭まっています！ この風速では、あと数分で範囲1kmを下回ります！

[アーミヤ] 対砂嵐用の補助運転機能は起動しましたか？

[航行制御員] 手筈通り、事前に起動させています。

[航行制御員] でも、アーミヤさん、これって普通の砂嵐じゃないんじゃ……

[ナビゲーターB] なんてこった！

[アーミヤ] パービルさん、何が見えたんですか？

[ナビゲーターB] センサーが、航路前方に雷を伴う積乱雲群を探知しました！

[アーミヤ] ――！

[アーミヤ] 放送をオンにしてください！ ……全艦に告ぎます！ ロドスはまもなく雷雨の中へ突入します――警戒レベルを一つ、上げてください！

[アーミヤ] 航行制御員さん、すぐに減速を！

[アーミヤ] うっ……すごい揺れですね……

[アーミヤ] 状況はどうですか？

[航行制御員] 側面外板の圧力が急速に上昇しています！

[航行制御員] 最外部の防風板、損傷率70%！ 基本機能、喪失状態です！

[航行制御員] 加えて……船体近くに異常熱源を多数感知しました！ エネルギー強度、警戒限界値に迫っています！

[アーミヤ] これは、まさか……

[ドクター選択肢1] ああ――天災だ。

[アーミヤ] あっ、Dr.{@nickname}！

[アーミヤ] 一体、何が……？

[ドクター選択肢1] 説明している時間はない。

[ドクター選択肢2] この雷雨は、スーパーセルによるものだ。

[アーミヤ] ――分かりました。

[アーミヤ] 全艦に、天災非常警戒宣言を発令します！

[アーミヤ] 甲板の一層にいる人員は、ブリッジのメンバーを除いて退避！ 二層から六層については、エンジニア以外の人員全員で中央エリアに避難してください！

[アーミヤ] 航行制御員さんは、ひとまず最低速度を保って航行を……

[アーミヤ] ナビゲーターさん、この嵐はいつまで続きますか？

[ナビゲーターB] この手の突発的な嵐であれば、恐らく一、二時間で通過できるかと……

[ナビゲーターA] リーダー、そうとも言い切れません。ここは一度、ドクターとアーススピリットさんの意見をお聞きしましょう。

[ドクター選択肢1] アーススピリット、皆に観測結果を伝えてくれ。

[アーススピリット] 分かったわ、ドクター。

[アーススピリット] パービル、ドクターがあなたに渡したそれは、一時間前に私が作成したレポートよ。

[ナビゲーターB] ……「二キロ圏内に複数の小型サイクロン」……！？ いい兆しとは思えませんね……

[ナビゲーターB] どうやら、この天災は普通の嵐とは違うらしい……最高危険度の風災にすら発展するかもしれないってことか。

[アーススピリット] ブリッジのセンサーを借りてもいいかしら？

[ナビゲーターB] もちろんです、アーススピリットさん。俺も気付くべきでした……

[アーススピリット] 負い目を感じる必要はないわ、パービル。今回の現象は極めて異常だもの。これは天災予測の常識を超えている……ベテランの天災トランスポーターでも、兆候を事前に見抜くことは難しいでしょう。

[アーススピリット] ドクターの後押しがなければ、私だってこの異常をエラーとして見落とすところだったわ。

[ドクター選択肢1] まだ、事態を好転させるだけの時間はある。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] なんだか、とても嫌な予感がする。

[アーススピリット] ドクター、アーミヤ。前方のサイクロン群が収束しつつあるわ。

[アーススピリット] つまり……収束したサイクロン群によって、多重渦サイクロン・コアが形成されようとしている、ということよ。

[アーススピリット] 一度コアが形成されたら、サイクロンの直径は二キロにまで達し……少なくとも七、八時間は勢力を維持することが予測されるわ。

[アーミヤ] もし、ロドスが速度を維持したままコアに接近した場合は……どうなりますか？

[航行制御員] 万が一サイクロンと接触しようものなら、ロドスの船体は巻き上げられた活性源石の粉塵と高速で衝突するでしょう。源石爆弾――それも最大規模のものが数百、船体で同時に起爆するのと同じです。

[航行制御員] それでどうなるかは……想像したくありません。

[アーミヤ] 方向転換は、まだ間に合いますか？

[航行制御員] やれるだけやってみますが……

[ナビゲーターB] サイクロン・コアは急速に方向転換するんです。最高速度は時速千キロ近くに達しますし……

[航行制御員] ……それじゃ、やったところで意味はなさそうですね。

[航行制御員] アーミヤさん、たとえ全速で撤退したとしても……誤った方向を選べば、ロドスがこの暴風から逃れることはできません。

[アーミヤ] となると……この場に留まるしかなさそうですね……

[アーミヤ] パービルさん、船体損傷率の予測をお願いします。

[ナビゲーターB] 過去の経験に基づいて……同規模の嵐の中で七時間過ごすと仮定すると、一層から六層の甲板は平均15%程度損傷しますね……

[ナビゲーターB] 中でも一層の甲板の被害が最も深刻になります。死傷者が出る可能性も捨てきれません。

[アーミヤ] ……ロドス本艦がここ一年で受けた中でも、最大規模の被害になりそうですね。

[アーミヤ] ですが、他に方法はないようです……

[ドクター選択肢1] 方法ならある。

[アーミヤ] ドクター？

[ドクター選択肢1] そこまでの被害を受ける必要はない。

[ドクター選択肢2] 修理で一ヶ月も立ち往生したくないだろう？

[アーミヤ] はい。荒野での停泊を余儀なくされたら、別のリスクに遭遇する可能性もありますから……

[ドクター選択肢1] だからこそ、もう一つ選択肢がある。

[ドクター選択肢2] 撤退と停止以外に――もう一つだけ。

[アーミヤ] ドクター、もしかして……前進するつもりですか？

[航行制御員] む、無理です！ 視界が悪すぎます！

[航行制御員] 仮に補助運転を使ったとしても、これじゃどう進めばいいかなんて分かりません。こんな砂嵐に頭から突っ込んでも死ぬだけだって、俺たちサルゴン人なら誰でも知ってますよ！

[アーミヤ] カマルさん、あなたの懸念は理解できます。

[アーミヤ] ですが……私は、ドクターを信じます。

[アーミヤ] Dr.{@nickname}、ロドスを率いて天災エリアを突破する自信はありますか？

[ドクター選択肢1] アーススピリットの座標計測さえあれば。

[ドクター選択肢2] 自信ならある。

[ドクター選択肢3] PRTSの補助が必要にはなるが。

[アーミヤ] 分かりました。みなさん、ドクターに協力してください。

[航行制御員] こんな短時間で安全なルートを算出するなんて……冗談みたいに聞こえますけど……

[アーミヤ] でも、ドクターならきっとできます。

[航行制御員] ドクターがすごい腕前だってのは聞いてますが……それでも、船の運行は戦場の指揮とは訳が違うんですよ。

[ナビゲーターB] 俺も……ちょっと不安です。もちろん、ドクターの能力は疑ってませんが、こんなリアルタイムで計算するなんて、聞いたことありませんよ……

[アーススピリット] ……いいえ、もしかしたら……本当に可能なのかも。

[ナビゲーターB] アーススピリットさん、ドクターがものすごい速さで書き出したこの公式……何だか分かるんですか？

[アーススピリット] 読み取れはしないけれど……

[アーススピリット] でも、見覚えがあるの。

[アーススピリット] そうだわ……似たような公式について、数日前、新入りの天才が言及していたのよ。ドクターが書いているものは、それより複雑で変化に富んだものだけれど……

[ドクター選択肢1] 算出したルートは、ナビゲーターに渡した。

[ドクター選択肢2] 急な方向転換の際は、航行制御員に協力を頼もう。

[ドクター選択肢3] アーミヤ、準備は整った。

[アーミヤ] では、前進しましょう！

[ドクター選択肢1] アーミヤは指揮を頼む。自分がサポートする。

[ドクター選択肢2] 指揮は任せてくれ。

[アーミヤ] いいえ、ドクター。それでは非効率的すぎます。

[アーミヤ] 今のロドスに必要なのは、ただ一人の指揮官だけですから。

[アーミヤ] 分かりました、ドクター。

[アーミヤ] ……Dr.{@nickname}。あなたがブリッジに現れた瞬間から……間違いなく、事態は好転すると信じていました。

[アーミヤ] ブリッジのみなさん、聞いてください――

[アーミヤ] 現時点を以て、ロドス本艦の全指揮権をDr.{@nickname}に移行します！

[ドクター選択肢1] クロージャに通信を！ 各船室、省エネモードに移行！

[ドクター選択肢2] エネルギー供給はエンジンに集中させてくれ！

[ナビゲーターB] はい、ドクター！

[アーミヤ] クロージャさんから通信がありました。エンジンの準備ができたそうです。それと、もう一つ。この「クレイジーな奇策」が成功するよう祈っている、と……

[アーススピリット] そう。まあ、たまにはクレイジーな奇策を楽しむのもいいんじゃないかしら。

[航行制御員] しかし、こんな風に船をカッ飛ばすことになると知ってたら、いくらか酒でも入れたかったんですがね。

[ドクター選択肢1] ロドス、全速前進！

[航行制御員] ぐっ……速度のせいか、鼻血が出そうだ！

[ナビゲーターB] 悪い、多分俺のひじが当たったからじゃねぇかな……こんだけ揺れてちゃ、手足をコントロールできなくてさ。

[航行制御員] この振動は……制震ダンパーがダメになったのか？

[ナビゲーターB] 揺れでバラバラになりそうなのは俺だけじゃなく船全体ってことらしいな……

[ナビゲーターB] ってか、アーススピリットさん、すごいですね……この状況でもモニターから視線を外してないなんて……

[アーススピリット] サイクロン二号、南東三十度に向けて移動中。サイクロン三号は……ここね。四号は……

[アーミヤ] ドクター、私の手に掴まってください！

[ドクター選択肢1] ああ、掴んだ。

[アーミヤ] あっ、すみません……今、ドクターの足を踏んでしまったような……

[ドクター選択肢1] 大丈夫。しっかり掴まってるし、転ばないさ。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] アーミヤの耳、顔に当たってくすぐったいな。

[アーミヤ] 船体の揺れ、少しは収まったでしょうか？

[ドクター選択肢1] 右へ方向転換だ！！

[航行制御員] まさか……こんな強い風が来るなんて！ もし巻き込まれてたら、船が保ったか怪しいな……！

[ナビゲーターB] ……今の風、ダウンバーストか？

[アーススピリット] サイクロン・コア形成まで、残り二分よ。

[ドクター選択肢1] 現在の方向を維持して、前進！

[航行制御員] 待ってください――サイクロンが見えます！

[航行制御員] 左に一つ、右にもう一つ！

[航行制御員] これは……挟まれてます！ あと二、三分で激突しますよ！

[ドクター選択肢1] いや、前進だ。他に道はない。

[航行制御員] あんな狭いとこ通れませんって！

[ドクター選択肢1] ――信じてくれ。

[航行制御員] ドクター、俺もあなたを信じたいとは思ってますよ！！！

[航行制御員] でも俺は……俺自身をそこまで信じられない……！

[航行制御員] ……でも……四の五の言ってられませんよね。アーミヤさんもあなたの指示に従ってるんだし、それなら俺だって当然従います。操縦桿に手を縛り付けてでも目いっぱい押し続けてやりますよ！

[航行制御員] あーあ、ジョージの野郎と勤務交代なんてするんじゃなかった……今さらですけど、めちゃくちゃ後悔してます……

[アーススピリット] 距離七十五メートル、五十メートル、三十メートル……

[ナビゲーターB] う、わあ……天災級サイクロンをこんなに近くで観察するなんて、初めてだ……

[アーミヤ] ドクター……

[ドクター選択肢1] 怖いのか？ アーミヤ。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] ……アーミヤ、手を強く握りすぎだ。

[アーミヤ] 少し緊張していますが、怖くはありません。

[アーミヤ] 私、少し緊張しちゃってるみたいです。でも、安心してください。怖くはありませんよ。

[アーミヤ] あっ、ごめんなさい、ドクター。少し緊張してしまって……でも、怖くはありませんので。

[アーミヤ] これまでにも、ドクターと一緒に……似たような状況を、何度も目にしてきましたから。

[アーミヤ] 絶望へと近づくほどに、希望を抱いて臨む光景は、より美しく雄大になる。

[アーミヤ] ドクター、これはあなたが教えてくれたことですよ。

[ドクター選択肢1] 最後まで諦めずに努力することで希望は訪れる。

[アーミヤ] ……前にも、同じ言葉をかけてくれましたね。

「緊急警報、緊急警報……」

「全乗員、衝突に備えてください！」

[アーミヤ] 大丈夫。この危機だって、一緒なら乗り越えられます！

[ドクター選択肢1] ああ。我々は無事……乗り越えた。

[ドクター選択肢2] 見てくれ。

[ドクター選択肢3] 自分の計算に狂いはなかったようだ。

[アーミヤ] 風が収まってきました……空の色も変わりつつあります。

[ナビゲーターB] 報告！ 本艦は天災エリアを突破しました！！

[ナビゲーターB] 全甲板、損傷率は5%未満に留まっています。その上、ケガ人はいません！

[アーミヤ] ふぅ……本当に、よかった……

[航行制御員] いてて、鼻が……おいパービル、お前また俺の鼻にひじでもぶつけたな？

[ナビゲーターB] ぶつけたくらいでなんだってんだ！ 俺たち、生きてるんだぞ！

[航行制御員] やれやれ。一つ貸しだからな？ 後で一杯奢れよ。

[ナビゲーターB] おうとも、一杯と言わず何杯でも奢ってやるさ！ 俺は危うく、大きな間違いを犯すところだったんだからな。

[ナビゲーターB] これもすべて、ドクターが来てくれたおかげですよ！

[アーススピリット] ええ、本当に見事な計算だったわ、ドクター。

[航行制御員] ドクター……あなたの指揮って、いつもこんなにスリリングなんですか？ だったら悪くありませんね。今度からは俺も連れて行ってくださいよ！

[ナビゲーターA] ドクター、一体どうやったんですか？ まるで未来が見えてるみたいでしたよ。天災との衝突前に、突然ブリッジへ現れるなんて！

[ドクター選択肢1] 実は、自分もとても緊張していた。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 皆でお祝いでもしようか。

[アーミヤ] ドクター……

急に、アーミヤがあなたへ抱きついた。腰の辺りを抱きしめる両腕には、嵐に突っ込んだ瞬間よりも強い力が込められていた。

[アーミヤ] ありがとうございます……私のそばにいてくれて。

[ケルシー] よくやった、ドクター。

[ドクター選択肢1] 当然のことをしたまでだ。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] お褒めにあずかり光栄だ。

[ケルシー] 源石の自己複製速度とエネルギー増加の関係――この知識を応用し……風災の軌道を計算する。

[ケルシー] 君は過去にも今回と似た能力を披露したことがある。それにより、災害が当時の同僚にもたらす損害を低下させたのだ。以来、一部の者は君を天災専門家と呼ぶようになった。

[ケルシー] だが今ここにいるのは、君と私の二人だけだ。我々は、君の専門分野が本来何であるかを知っている。

[ドクター選択肢1] 自分の専門は何なんだ？

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] またか。自分には分からないんだが。

[ケルシー] あの公式を……君はまだ覚えていた。

[ドクター選択肢1] 覚えていたわけじゃない。記憶にはなかった。

[ドクター選択肢2] あれは頭の中から勝手に飛び出してきたんだ。

[ケルシー] あれはかつて……君が自ら作り上げた公式だ。

[ケルシー] 君はこの一ヶ月で源石と天災に関する多くの資料を収集していた。また君のノートには大量の計算式も残されている。

[ケルシー] これは推測だが……危機が訪れたことにより、君の脳が深層にある記憶を引き出したのかもしれない。あるいは、君が自分で書き残した知識の中に、再びそれを見出したのかもしれないが……

[ケルシー] この公式を思い出すことができた以上、君にはまだ源石の本質に関する基本的な認識が確かに残っているのだろう。

[ケルシー] 言い換えれば――君は決して、源石研究者たる自分自身まで忘れてはいないということだ。

[ドクター選択肢1] この研究を続けたいと思っている。

[ドクター選択肢2] これは自分の使命のようなものだ。

[ケルシー] 君は源石研究を己が使命と見なしているようだが、我々の行動は使命のみによって束縛されるべきではない。

[ケルシー] Dr.{@nickname}。君をそれほどまでの強い意志で突き動かすものは……源石研究へと打ち込ませるものは一体何だ？

[ドクター選択肢1] ケルシーやアーミヤも、鉱石病を患っている。

[ドクター選択肢2] 大地は、源石に起因する苦しみで満ちている。

[ドクター選択肢3] この災いを終わらせたい。

[ケルシー] 過去にも一度、同じ問いを投げかけたことがある。

[ケルシー] しかし、その時の答えは、今日君が口にした言葉とは似て非なるものだった。

[ケルシー] ……そしてその答えを口にした者は、未知の真理に対する本能的な渇望を持っており、一方で命を救うためなら危険を顧みない一面もあった。

[ケルシー] 救いは時に破壊をも意味する――これは、その人物が私に告げた言葉だ。

[ケルシー] ……ドクター。その答えは、今も君の頭の奥深くに残っているのだろうか？

[ドクター選択肢1] 記憶になくとも残っていると言えるのか？

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] 君がそう思うなら、そうかもな。

[ケルシー] アーミヤが言うには、今日君がブリッジで見せた活躍は、まるで本当の「予言者」のようだったそうだな。

[ドクター選択肢1] 予習が功を奏しただけだ。

[ドクター選択肢2] ……

[ドクター選択肢3] どうしてそう見つめてくるんだ？

[ケルシー] Dr.{@nickname}。私はな、科学は信じるべきものだと考えている。

[ケルシー] 初めて君の脳検査の結果が出た時、私はまず、検査過程でのエラーを疑った。だから二回、三回……さらには七回の検査を行うに至ったのだ。

[ケルシー] しかし途中で、理性がこう訴えてきたんだ……三度同じ結果が出た以上、その正確性は十分に証明されている。君は嘘などついていない、とな。

[ケルシー] 君は実に多くの記憶を失った。君がテレジアに何をしたのか、君自身がなぜここに立っているのかを忘れてしまった。

[ケルシー] このすべてが、君と、過去私がよく知っていたあの人物との間に……大きな差異を生んだのだ。

[ケルシー] 君に七回の検査を行った時のように、今この瞬間、私は再び疑問を抱いている。私の目の前に立っているのは一体誰なのか、と。

[ケルシー] 今の君にはどれだけの過去が残っている？ そして、どれだけの新たなものが芽生えている？

[ドクター選択肢1] また感情的になっているようだが。

[ドクター選択肢2] 七回の検査は本当につらかったよ。

[ケルシー] 否定はしない。君のこととなると、私は容易に感情を煽られてしまうからな。

[ケルシー] しかし、一方でこれは……極めて理性的な理解に基づいてのことでもある。

[ケルシー] 君にも理解しておいてもらいたいのだが……検査にはエラーがあっても構わない。だが、君自身のことについては、一つのエラーも受け入れることはできないのだ。

[ケルシー] それについては、申し訳ないと思っている。

[ケルシー] だが、君の記憶の回復状況を把握しておくことは、君の身体にとっても有用なことだ。

[ドクター選択肢1] ずっと聞きたかったんだが。担当医としてではなく――

[ドクター選択肢1] 個人としての君は、記憶の回復を望んでくれるのか？

[ケルシー] ……物事にはしばしば、二つの側面が存在している。人の感情もまた然りだ。

[ケルシー] 私は、過去の君に対する憎しみを隠しはしない。だが……どれだけ認めたくはなくとも、憎しみだけがすべてではないのだ。

[ドクター選択肢1] 過去の自分の能力、そのすべてが必要なのか。

[ドクター選択肢2] 憎い相手でも、懐かしく思うものか？

[ドクター選択肢3] 過去の出来事……真実を知りたいから、か。

[ケルシー] 欲するものが単に能力だけならば、今の君は既にそれを持ち合わせている。いや、それどころか……今の君こそ、より望ましい成果を上げることができるだろう。

[ケルシー] ……「懐かしく思う」？

[ケルシー] その言葉では、あまりにも単純すぎる。この大地において言語は数千年もの間、開拓され続けているが……私は未だに、君をどう思うかを表現するのに適切な言葉を選ぶことができない。

[ケルシー] ああ。無論、私はその真相を欲している。

[ケルシー] 君の口から聞くことが最善と言える手段だが……他の方法で真相を追うことも諦めてはいない。

[ケルシー] さて、今度は私が質問する番だ。

[ケルシー] Dr.{@nickname}。記憶を取り戻したいと思うか？

[ドクター選択肢1] 取り戻したい。

[ドクター選択肢2] 取り戻したくない。

[ケルシー] どう答えようとも、君に躊躇いの色が見えたのは明らかだ。

[ケルシー] 記憶を取り戻せば、君の持つ多くの疑問は解消されることだろう。だが、すべての答えが君を満足させるとは限らない。

[ケルシー] 今の君に向けられているあらゆる感情の出所は何なのか。私とWが持つ憎しみにせよ、アーミヤの全幅の信頼にせよ、あるいは……より昔のものであるにせよ、君はすべてを知ることになる。

[ケルシー] 大量の記憶、強烈な感情が、瞬時に君の脳全体を埋め尽くすことだろう――

[ケルシー] そして、恐らくその時に感じるのは疲労だけではあるまい……

[ケルシー] 君をより恐怖へと陥れるであろうものは、一つの事実だ。過去が君を訪ねてきた時――君は、選択しなければならない。

[ケルシー] もし蘇った記憶があまりにも強烈で、現在の君の努力すべてをいともたやすく覆し――どれほどの年月をかけても、決して抜け出せなかったあの深淵に再び引きずり戻されたとしたら？

[ケルシー] 今の君が一度でも打ち負かされたなら、君が懸命に築き上げたすべてが崩れ去り……恐らく今の君ではない君へと成り果てるだろう。

[ケルシー] 故に、私はもう一度問う――

[ケルシー] Dr.{@nickname}。思い出す準備はできているか？

[ドクター選択肢1] ......

[ケルシー] もし我々が十分な幸運に恵まれていれば、この問いに短期間で答えを出す必要はない。

[ケルシー] 感謝する、Dr.{@nickname}。この一か月余りで、君は私に新たな可能性を見出させてくれた。

[ケルシー] 特に今日、君がまだあの公式を覚えていると知ったことは大きい。

[ケルシー] どうやら来たるその日のために準備をしていたのは、君と私だけではないようだな。

[ケルシー] 私は早くから疑っていた。家庭用生理機能修復マシンが、使用者の記憶を消すなどというエラーを起こすことはないだろう、とな――

[ケルシー] 特に、君の選択に最も影響を与えるであろう部分だけを選択的に削除し、君にとってより意味のある部分を残しておくような挙動はあり得ない、と考えている。

[ケルシー] Dr.{@nickname}……

[ケルシー] 思うに、彼女は……私が過去把握していた以上に、君を信頼していたのだろうな。

[ケルシー] であれば我々も、懸命に努力し続けるべきだ。

[ケルシー] 幾度となく口にしてきた通りだが――我々が共に立ち続ける限り、私は君の助けになろう。

p.m. 7:43 天気/曇天

ロドス本艦 司令室

[？？？] 先輩、いますか？ お邪魔してもいいですか？

[ドクター選択肢1] エイヤフィヤトラ？ 構わないぞ。

[エイヤフィヤトラ] 失礼します。あの、私に用事があるって聞いたんですが……

[ドクター選択肢1] ああ、これを。

[エイヤフィヤトラ] これって……私の行動部門加入申請書……？ えっ、承認されたんですか？

[エイヤフィヤトラ] よかったぁ。私の病状を考えたら、先輩とアーミヤさんはきっと同意しないだろうってみんな言ってたので……てっきりダメかと……

[ドクター選択肢1] アーミヤは説得しておいた。

[エイヤフィヤトラ] 先輩が承認を進めてくれたんですか？ ありがとうございます……

[ドクター選択肢1] 今朝くれたレポートが、ロドスの危機を救ったんだ。

[エイヤフィヤトラ] それって……午後に遭遇した、あの天災のことでしょうか？

[エイヤフィヤトラ] 先輩、私の分析レポートを読んでくれたんですか？

[ドクター選択肢1] 源石鉱脈拡大の兆候に対する観測はとても正確だった。

[ドクター選択肢2] 地表の源石活発化現象を通して天災を予測するとはな。

[エイヤフィヤトラ] そんな……私はただ、一つの推測を行っただけですよ。

[エイヤフィヤトラ] みんなは、この一帯の地表付近では、源石鉱の密度は低いと言ってましたけど……実はリターニア南部の火山周辺で、同じような状況に遭遇したことがありまして……

[エイヤフィヤトラ] 条件さえ整っていれば、たとえ少量の源石であっても、短時間で急速に増殖することもあるんです。

[エイヤフィヤトラ] えっと……数日前のことなんですが、日課の治療を終えた後に、いつも通り宿舎の近くをお散歩していて……ふと船窓に付着した砂ぼこりを観察してみたら、似たような現象が起きていたんです。

[エイヤフィヤトラ] 砂地では、源石エネルギーの爆発が地面の温度を急激に上昇させ、大型の風災に発展する可能性が大幅に高まりますから……

[エイヤフィヤトラ] あっ……すみません。この手の話になると、止められなくて……

[ドクター選択肢1] 続けて。

[エイヤフィヤトラ] でも、残りはもうレポートで見てますよね？

[エイヤフィヤトラ] 正直……思ってもみませんでした。先輩はこんなに忙しいのに、私たちのレポートまで見てくれてるなんて……

[ドクター選択肢1] 君の論文も読んだ。

[ドクター選択肢2] 君の研究は、とても興味深いな。

[ドクター選択肢3] 努力の結果だが、それをアーツの一種と言う人もいる。

[エイヤフィヤトラ] 先輩、私の研究に興味を持ってくれてるんですか？

[エイヤフィヤトラ] えっ！ そんな不思議なアーツ、本当にあるんですか？

[エイヤフィヤトラ] ……

[エイヤフィヤトラ] …………

[エイヤフィヤトラ] あっ！ ふふ……そういうことですか。今のは冗談ですね？

[エイヤフィヤトラ] そうだ！ もしお忙しくなければ、もう少しお話ししていきたいんですけど……いいですか？

[ドクター選択肢1] この仕事が終わるまで待ってくれ。

[ドクター選択肢2] じゃあ、手が空くまでは楽にしていてくれ。

[エイヤフィヤトラ] はい。それにしても先輩の机、たくさんの本が置いてありますね……

[エイヤフィヤトラ] 『大炎風情志』『伝説なき塔』『クルビア司法観察ノート』『征服と同化』……先輩、これ全部、普段から読んでる本なんですか？

[エイヤフィヤトラ] その、バラエティに富んでいるというか……私の知ってる教授さんたちの本棚とは、全然違いますね。

[ドクター選択肢1] 君が興味を持ちそうなのはこれだろうな。

[エイヤフィヤトラ] これは……先輩の天災研究ノート？

[ドクター選択肢1] 読書の途中でメモを取っただけのものだが。

[ドクター選択肢2] 単なる推測をいくつか並べただけだ。

[ドクター選択肢3] まだ草稿段階だけど。

[エイヤフィヤトラ] わあっ……ありがとうございます、先輩！ しっかり勉強させてもらいますね！

[エイヤフィヤトラ] あの、疑問点があった時は、また先輩の所に来てもいいですか？

[ドクター選択肢1] いつでも来るといい。

[ドクター選択肢2] 喜んで。

[ドクター選択肢3] 他の仕事が早く片付いたらな。

若き学者はあなたから手渡されたノートを大事そうに抱え、そして顔を上げると、まっすぐにあなたを見つめた。

[エイヤフィヤトラ] 先輩……私にとって、ロドスに来てからの毎日は、驚きでいっぱいです。

[エイヤフィヤトラ] 鉱石病が安定化したことで、自分の未来を心から信じられるようになりました。先輩のような人たちが、私に……まだ歩き続けるための希望を与えてくれたんです。

[エイヤフィヤトラ] それに……先輩がこんなに努力してくれているんですから。私たちが諦める理由なんて一つもありません。

[エイヤフィヤトラ] あの――先輩。

[エイヤフィヤトラ] どうかこれからも、ロドスを導いてくださいね。