aklib_story_午後の逸話_本日のキッチン

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午後の逸話_本日のキッチン

マッターホルンはシルバーアッシュの言いつけにより、クリフハートの昼食を用意する。 お腹を空かせてやって来たイーサンにも料理を作ってやったマッターホルンだったが、イーサンからお返しがあるとは想像もしていなかったようだ。


a.m. 9:50 天気/晴天

ロドス艦船 第二艦室 公共食堂

[マッターホルン] 北イェラグ風のガーデンクレス炒めに、ロドス特製のスパイスを少し振って……

[マッターホルン] これで完成です。

[グム] わぁ! 美味しそう!

[マッターホルン] そんな、大げさですよ。

[マッターホルン] イェラグ――雪境(ヒーラ)はロドスと違い資源が不足していますから、こういった葉野菜は、お金があってもなかなか手に入りません。料理する機会もないので、完成しただけでも大成功です。

[マッターホルン] でもここは移動艦船の割に物資が充実していて……珍しいですね。

[グム] 物資かぁ……そのへんのこと、クロージャお姉ちゃんが何か言ってた気がする。

[グム] たしか、ロドス専用の仕入れルートがあって、仕入れ担当者が定期的に送ってくるとかなんとか。

[グム] ロドスはたーくさんの場所に拠点があるから、色んな場所の食材が手に入るんだってー。

[マッターホルン] なるほど。ですが、たくさんの拠点とは?

[グム] うん……たしか、なんだっけ? 事務所みたいなのがあるって言ってた気がする。詳しくはグムも知らない!

[グム] そうだ、食堂の外のボードに欲しい食材リストが貼ってあるから、もし食べたいものがあったら書いてね!

[グム] 仕入れ担当のお兄ちゃんもお姉ちゃんも、参考にしてくれてるみたいだから!

[仕入れ担当A] グムちゃんは口が上手いわねえ。もう一回お姉ちゃんって言ってくれたら、今度キャンディ持ってきてあげる。

[グム] あ、仕入れのお姉ちゃん!

[仕入れ担当A] あら、いい子いい子。

[仕入れ担当B] こら、ふざけるな……

[仕入れ担当B] マッターホルンさんですね。お話の通りですが、何か欲しい食材があれば、ボードに記載しておいてください。機会があれば仕入れますから。

[マッターホルン] 分かりました。必要なものがあれば書いておきます。その時はよろしくお願いします。

[仕入れ担当B] どうかご遠慮なさらず、これは私たちの業務の一つですから。

[仕入れ担当A] 二人共そんなかしこまっちゃってどうしたのよ? 同じ船にいる仲間なんだから、リラックスしてフランクに話したらどう?

[仕入れ担当B] お前はフランクすぎるだろ!

[仕入れ担当B] マッターホルンさん、こいつには構わないでください。では私たちはまだ任務がありますので、失礼します。

[グム] へへーん、ロドスの人ってみんないい人だよね~。前に都市の近くに停泊した時はね、クロージャお姉ちゃんが仕入れに連れてってくれたんだよ!

[グム] お姉ちゃんは変なものも買ってたけど……でも面白かったよ!

[マッターホルン] ハハ、噂には聞いています。たしか巨大な陶土の仮面を買ってきたとかで、あのケルシー先生を怒らせたんでしたっけ?

[グム] アハハハ、そうだよ! グムもつけてみたけど、今まで見たことないすごく変な仮面だった!

[マッターホルン] ひと目で怪しいと分かるものは、安易に試さないほうがいいと思いますよ。

[マッターホルン] よし、粗熱がとれて丁度良くなった。味見を……

[マッターホルン] うっ、少ししょっぱいな。ちょっとクドすぎるかも……

[グム] 大丈夫だよ、絶対美味しいと思うよ。

[グム] グムが確認してあげる。 ねえねえ、一口食べていい? マッターホルンおじさん!

[マッターホルン] お、おじさん……

[マッターホルン] (このくらいの歳の子からすれば、俺はもうおじさんなのか……)

[マッターホルン] もちろん構いません。試食していただければ大助かりです。

[グム] やったー!

[グム] へへへ、じゃあ一口……あれ?

[マッターホルン] うん? どうされましたか?

[グム] この料理、なんかさっきよりちょっと減ってない?

[グム] 変だなぁ、気のせいかな?

[マッターホルン] ……

[グム] まぁいいや、いただきまーす!

[グム] あーん、あむあむあむ。

[グム] (むぐむぐ)

[マッターホルン] どうでしょうか?

[グム] もぐもぐ、ゴクン。

[グム] 美味しい!!

[グム] 野菜がシャキシャキでみずみずしいし、味付けもスッキリしてて全然濃く感じないよ! とにかくすっごく美味しい!

[マッターホルン] そ、そうですか? 褒めていただきありがとうございます、これで安心しました。

[マッターホルン] ですが、そこまでのものではありませんよ。作り方も簡単ですし、ご家庭で手軽に作れる一品です。後ほどレシピをキッチンに貼っておくので、よかったら試してみてください。

[グム] わーい!

[グム] じゃあマッターホルンおじさんもグムの栄養満点ウルサス特製野菜冷製スープのレシピを見てね! 交換だよ!

[マッターホルン] 名前だけでも美味しそうな料理ですね。では今度お嬢様たちに夜食を作る時に試してみます。

[グム] えへへ。プラマニクスお姉ちゃんもクリフハートお姉ちゃんも絶対好きになるよ~。

[マッターホルン] (エンヤお嬢様とエンシアお嬢様か……)

[マッターホルン] そうだ、グムお嬢さん。あのカツの卵とじ、早く持って行かなくていいんですか?

[マッターホルン] ドクターに作ったものですよね? このままだと冷たくなって口当たりが悪くなってしまいますよ……大丈夫ですか?

[グム] あっ! 忘れてた!!

[グム] じゃあグムは行くね! マッターホルンおじさん! ガーデンクレス炒め美味しかったよ、レシピ忘れないでね!

[マッターホルン] 本当に元気なお嬢さんだ。

[マッターホルン] ……

[マッターホルン] ……

[マッターホルン] 出てくるんだ。

[マッターホルン] ……出てこないつもりか。

[マッターホルン] ふぅ。

[マッターホルン] では、恨むなよ――

[???] わぁ!

[???] おー怖ぇ怖ぇ。

[???] そんないきなり物騒なもんを振りかざすなって。というか、そいつはどこから取り出したんだよ? キッチンにまで武器を持ってくるなんて危ねーったらねぇぜ。

[???] それより、どうして俺に気付いたんだ? 完璧に隠れてたつもりなんだけど、おかしいな。

[イーサン] (リンゴをかじる)

[マッターホルン] ……君か。

[マッターホルン] またキッチンでつまみ食いですか。そんなことしなくても、小腹が空いたのなら直接食堂に行けばいいでしょう?

[マッターホルン] 前回のことをもうお忘れですか? 支援部の方に何度も言われているでしょう。もし特殊能力を使って料理や食材を盗めば、それなりの罰が課せられると。

[イーサン] 罰? そういえばなんか言ってたな。……ああ、「捕まえるたびに顔に亀の絵を描く」ていうあれか?

[イーサン] それが何の罰になるんだよ、冗談で言ってるのかと思ったぜ。

[イーサン] いや、そうじゃねぇ。あんたがなんで俺に気付いたか、まだ教えてもらってねえぞ。

[マッターホルン] もし君が俺の料理をつまみ食いしてなければ、気付くことはなかったでしょうね。

[イーサン] あー、あれかぁ。ミスったな。

[イーサン] ホントは朝飯の残りでもねーかなって来てみたんだけどさ。あんたの作ったやつがとんでもなくいい香りだったもんで、どーしても我慢できなくてな。

[イーサン] 悪かった、マジで悪かったよ。心から謝るからさ。あー、それともあれか、謝っても無駄ってやつか? そんな気にしてんのか?

[マッターホルン] その通りです。

[イーサン] あーよかった、許してくれて……ん?

[イーサン] いや待て、なんだ? なんて言った?

[イーサン] まさか……

[マッターホルン] 気にしていると言ったつもりですが。

[イーサン] ……

[イーサン] おいおいおい。

[イーサン] (嘘だろ、こいつ認めたぞ!?)

[イーサン] (なんて奴だ、こんなヤバイことを認めるなんて! 肝が座ってやがる! 裁判沙汰も辞さねぇってわけか!)

[マッターホルン] 君は……

[イーサン] あ、あぁ? なんだよ?

[マッターホルン] ――食器を使わずに直接手づかみで食べたでしょう! しかも手も洗わずに!

[マッターホルン] あまりにも不衛生です! そんなことは許されません!

[イーサン] ……ああ?

[イーサン] 気にしてるって……そんな小せぇことか?

[マッターホルン] 衛生面を気にするのは小さいことではありません! 人が作った食べ物には敬意を払わないといけないんです。どんなものにも、料理人の心が詰まっているんですから!

[マッターホルン] いや、待ってください。まさかそのリンゴも洗ってないなんて言わないでしょうね? 戦士として、自分の身体の健康にはもっと責任を持たないといけませんよ!

[イーサン] お、おう。わかったわかった。

[マッターホルン] そのいい加減な態度……そんな風だからいつもドーベルマンさんに怒られるんです。……あっ。

[マッターホルン] ……やめておきましょう、これ以上は俺が言うべきことじゃありませんね。

[イーサン] そんな風に言うなって、俺はマジで反省してるぜ。

[イーサン] ただあれだ、クセってもんはなかなか変えられねぇんだよ。これまではマナーなんてもんは知らなかったからさ。

[イーサン] でもな、あんたは一つ間違ってる。今回俺は手を洗ったぞ。

[マッターホルン] 水で一秒流しただけでは、手を洗ったとは言えません。

[イーサン] いや厳しすぎるだろ、あんた。

[イーサン] あーもういいもういい。次は絶対忘れねぇ、それでいいだろ?

[マッターホルン] まったく締りのない……

[マッターホルン] そうだ、さっき食べたあの料理ですが、どうでしたか?

[イーサン] どうでしたかって、あの野菜炒めの感想か?

[イーサン] グムって嬢ちゃんがすっげー褒めてただろ? なのに俺にも言ってほしいのか? まあいいけどよ。美味かった! 最高! 流石!

[マッターホルン] これ以上ないほどいい加減な言い方ですね。

[イーサン] じゃあこれ以上の言い方をしてやろうか。

[マッターホルン] いいえ、結構です。思わず「指導」をしてしまいたくなるかもしれないので。

[イーサン] ハハハ、真面目な話、本当の感想を聞きたいか?

[マッターホルン] ……?

[イーサン] まあいい、遠慮なく言うぜ。あんたの料理は確かに美味かったが、何て言うかな、どこか迷いが伝わってきた。

[マッターホルン] またいい加減なことを。元から俺の料理は感情が伝わる程のレベルには達していませんよ。

[イーサン] ちぇっ、つまんねー奴だな。

[イーサン] わかったよ、本当に本当のことを言う。俺はあんたが何回もため息をつきながら料理してるのを見てたんだよ。

[マッターホルン] ……

[イーサン] まぁー、そりゃあ分かりやすかったぜ。ボーっとしたかと思えば手を動かして、かと思えばため息ついて。あんな状態でよくこんな美味いメシを作れたもんだ。

[マッターホルン] それは……

[イーサン] いや、ストップストップ。

[イーサン] やめよーぜ、大将。言いたくないことは無理して言わなくていい。俺はホントに何とも思ってないからよ。

[イーサン] ただ何に悩んでるかは知らねぇが、あんまり塞ぎ込んだりしない方がいいぜ。

[マッターホルン] ……

[イーサン] 俺を見てみろ、昔はヒデーもんだったけど、吹っ切れた今はなんてことねぇ。くよくよしてたって何にもならねぇからな、考えねぇ方が良いんだ。ロドスでの生活だって悪くねぇしな。

[イーサン] まぁ、話は変わるが、あの鍋で煮てるのは何だ? いい香りが漂ってくるから、さっきから気になってるんだ。

[マッターホルン] ……あれは仕込みを終えた獣肉の煮込みです。最後にチーズをかけて完成です。

[マッターホルン] イェラグの郷土料理で、雪境人は皆、小さい頃からあれを食べて育ちます。それを元に俺が少しだけ改良を加えて、肉がよりきめ細かくなるようにしました。

[イーサン] おー! 聞いただけでもよだれが出てくるぜ!

[イーサン] あれも食わせてくれよ、いいだろ?

[マッターホルン] 待ってください、あれはダメです。あれは――

[???] ここにいたのか、ヤーカ。

[マッターホルン] 旦那様! いつロドスにいらっしゃったんですか。一言ご連絡をくださればよかったものを。

[マッターホルン] 少々お待ちください。お茶を淹れてきますので。

[シルバーアッシュ] いや、必要ない。ただ通りがかっただけだ。

[クーリエ] 今回はイェラグのことで、ドクターに急用があってロドスに来たんです。かなりバタバタしていたので、ヤーカ兄貴に伝える余裕もありませんでした。

[クーリエ] かなり厳しいスケジュールで……まったく、ご無理をなさって。

[マッターホルン] そうだったんですか……

[シルバーアッシュ] それよりもヤーカ。最近エンシアはどうしている。

[マッターホルン] エンシアお嬢様はお元気ですよ。病状も安定しています。

[マッターホルン] 旦那様のお申し付けの通り、お嬢様の身体状況は私もクーリエも気にかけています。ロドスの慣れない食事ばかりにならないように、お嬢様には後ほど、私が作った昼食をお出しする予定です。

[シルバーアッシュ] そうか。ついでにバター茶も出してやってくれないか。エンシアの好物だ。

[クーリエ] 食の好みは昔と少しも変わっていませんね。旦那様もエンシアお嬢様も。

[マッターホルン] はい、全て旦那様のお申し付け通りに。

[シルバーアッシュ] ああ、ではこれで。

[シルバーアッシュ] ご苦労だった。

[マッターホルン] この鍋物は我が主のお申し付けで、お嬢様にお出しするものです。もしまだ食べ足りないのなら、別に何か作りますよ。

[イーサン] よしよし、そういうことなら感謝感激雨あられだ。俺もあの柔らかそうな肉が食いてぇ。

[マッターホルン] あれは貴重な食材で、生産地付近の拠点を通るオペレーターにわざわざ持って来ていただいたものです。あの鍋のもので全てですよ。

[マッターホルン] それに、煮込み料理は時間がかかりすぎますので、普通の獣肉炒めで我慢してください。

[イーサン] ひでぇ! 待遇格差だ!

[マッターホルン] 自分の手を動かさない者に恨み言を言う資格はありませんよ!

[イーサン] そうだな! 俺はタダで食べれて儲けもんってもんだ!

[イーサン] ……

[イーサン] あのよ、あんたの言う我が主って、あんたらのボスのことだろ。

[イーサン] あのたまーに現れて、ドクターとしか話さねぇシルバーアッシュの旦那さんで間違いないか?

[マッターホルン] ええ。会ったことがあるんですか?

[マッターホルン] というか、会ったことがあろうがなかろうが、もう少し相手を尊敬した話し方を学ばれたらどうですか。悪いことは言いませんから。

[イーサン] 尊敬だったらしてんだろうが、敬称をつけただろ。

[イーサン] 真面目な話、あんたらのボスにゃ妹が二人いるって噂だが本当か?

[マッターホルン] ええ。それがどうされましたか?

[イーサン] あのエンシアってフェリーンの子が、あんたが言ってた「お嬢様」だろ?

[イーサン] いい兄ちゃんだよな、ここのメシが食べ慣れないって心配して、わざわざあんたに郷土料理を作らせるなんて。

[イーサン] でもどうしてそっちの「お嬢様」にばかり気遣うんだ? もう一人はどうした?

[マッターホルン] ……何が言いたいんですか。

[マッターホルン] 二人のお嬢様に関しては旦那様の家族の事情です。それ以上は聞かないほうがいい。

[イーサン] なんて怖え顔してんだよ。安心しな、俺だって金持ちの家庭の事情に口を出すほど暇じゃねぇし、馬鹿でもねぇ。

[マッターホルン] では……

[マッターホルン] おっと、そこの調味料を取ってもらえますか。

[イーサン] これか? ほらよっ。

[マッターホルン] 感謝します。

[イーサン] いいっていいって。おー、いい香りだな。

[マッターホルン] 普通の獣肉炒めとは言え、調味料は特製のものです。味は悪くないはずですよ。

[マッターホルン] あちらのカゴにパンがあります。その隣の釜にはご飯も残っているはずなので、好きなように食べてください。俺はお嬢様に料理を届けてきますので。

[マッターホルン] そうだ、食べる前には必ず手を洗うように。

[イーサン] わかったわかった。さっさと行けよ。あんたは俺のおふくろか?

[マッターホルン] そうでなくて幸いでしたね。では。

[イーサン] ……行っちまったよ。

[イーサン] あーあ、残念だったな。あの煮込みはマジでいい香りだったんだけどな。

[イーサン] ……

[イーサン] 手を洗うとするか。

[イーサン] おかしなもんだぜ、この俺が真面目に従ってるとはな。

[イーサン] ハンドソープも使って、両手を三十秒ずつ……三、二、一っと。これでいいだろ。

[イーサン] (手を振るう)

[イーサン] へへっ、完璧だな。

[???] パンを食べるなら手を拭いてからだろう?

[イーサン] ああ?

[イーサン] 誰だよ?

[???] ……なんてことのないただの鍛冶師だ。

[???] ふむ。マッターホルンはいないのか?

[???] ありがとう、ヤーカ。いただきますね。

[???] うん、いい香り。このお茶にはオイルも入っていますね? フフ、小さい頃の飲み方です。まだ覚えていたなんて流石ですね。

[マッターホルン] 流石だなんて大げさですよ、エンヤお嬢様。

[マッターホルン] では、お二人はごゆっくり。私はこれにて失礼いたします。

[マッターホルン] ……

[マッターホルン] (お茶の中にオイルを入れるのは、旦那様の好みだったはずだ。)

[マッターホルン] (ヴィクトリアから戻られた後、旦那様は一度もそうやってバター茶を飲んでおられない。お忘れになったのだろうか。)

[マッターホルン] (エンヤお嬢様……)

[マッターホルン] はぁ。

[マッターホルン] (エンシアお嬢様はまたピーマンを残しておられる。これは小さい頃から変わらないな。)

[マッターホルン] (旦那様も、一言注意してくだされば……こんな好き嫌いを続けられていたら、栄養が偏ってしまうのに。どうにかしないと。)

[マッターホルン] ……あれ?

[マッターホルン] そう言えば、旦那様も昔は同じように……

[マッターホルン] ……

[マッターホルン] (いや、やめろ。)

[マッターホルン] (深入りしてはいけない危険な問題だ。何もなかったことにするのが吉だ。)

[???] おいおいおいそこの大将――

[マッターホルン] 何だ? 誰だ!

[イーサン] 俺だよ! おーれ! 物が宙を漂ってたら俺しかいねーだろ! わざととぼけてんのか?

[イーサン] まあいいや。ほら、これをあんたに。ちゃんと受け取れよ。

[マッターホルン] 何ですか、これは――

[イーサン] そういうことで、俺は忙しいから行くぜ。

[マッターホルン] 待て!

[マッターホルン] ……行ってしまった。

[マッターホルン] 全く何のつもりだ、これは……サンドイッチか?

[マッターホルン] パンは焼き過ぎで耳も切り落としてない。中は――ハダカウロコトカゲの肉か。それにしても厚く切りすぎだ。彼の好みなのか? しかしこれは一体……

[???] そんなに厳しく評価してやるな。

[ヴァルカン] えらく真剣に作っていたよ。何か柑橘系フルーツのスライスも入れていたようだ。味は悪くなさそうだった。

[マッターホルン] ……ヴァルカンさん。

[マッターホルン] すみません、盾を受け取りに来てくれたのでしょう? 修理が必要なものは全てキッチンに置いてありますので、すぐに持ってきますね。

[ヴァルカン] いや、気にするな、一緒に取りに行こう。

[ヴァルカン] そうだ、さっきの奴だが、サンドイッチを作りながら不思議なことを言っていたな。

[マッターホルン] イーサンが何か不快なことを言いましたか? そうであれば俺が彼に代わって謝罪します。言動はいささか失礼ですが、彼に悪意はないはずです……

[ヴァルカン] いや違う。何をそんなに慌てて説明しているんだ、私はただ不思議に思っただけさ。奴はこう言っていた――

[ヴァルカン] 「マッターホルンのおじさんに、身勝手な最近の若者が適当に作った料理を食わせてやるのさ。心のこもった仕返しってやつだ。」とな。

[ヴァルカン] それからキッチンにあった料理を二皿全部持っていったぞ。

[マッターホルン] ……

[マッターホルン] まったく人騒がせな、メチャクチャなことをする。

[ヴァルカン] 確かにメチャクチャだが、君はどこか嬉しそうに見えるな。

[マッターホルン] 気のせいですよ。

[ヴァルカン] それは鏡で自分の顔を見てから言ったほうがいい。

[マッターホルン] コホン。

[マッターホルン] ……そういえば、イーサンの年齢はいくつだ?

[マッターホルン] どうして彼まで俺をおじさんと呼ぶんだ?

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