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喧騒の掟_CB-ST2_龍門深夜
ガンビーノとカポネの決闘は、再びワイフーとジェイによって中断された。龍門の若者二人は、やりたい放題のマフィアに絶対に対価を払わせなければならない。 一方、鼠王は墓地で旧友と会っていた。
a.m.00:00 天候/砂嵐
龍門市街 商店街
[ジェイ] ——。
[ワイフー] ちょっと、あなたの今の顔、どれだけ怖いか分かってます?
[ジェイ] ……戻りやしたか。連中のこと、何か分かったんで?
[ワイフー] わずかな手がかりはありました。あの悪逆非道の奴らに法の裁きを下したいところですが、私一人で解決できることではなさそうでした。
[ワイフー] こうなると、事務所の皆さんに頼る必要があるかもしれません。
[ワイフー] 相手は強そうですし、アさんだって勿体ぶってばかりで、素直に教えてくれないですし……。
[ジェイ] どいつだって?
[ワイフー] アさん。
[ジェイ] あ?
[ワイフー] ……彼は「ア」という名前なんです。
[ジェイ] おぉ……つまりそんな単純な一件ってワケじゃねぇってこったな。
[ジェイ] なら俺に行かせてくんな。
[ワイフー] ……あなた今の話聞いてました? ただの不良集団であれば、まだ私たちで何とかできます。しかしもし組織的で大規模なマフィアだとしたら、軽率な行動は慎むべきです。
[ジェイ] 「軽率な行動は慎むべき」だけど、全く方法がないわけじゃねぇってこったな。
[ワイフー] まさかあなたがそんなところに気づくとは。
[ジェイ] 冗談で言ってるわけじゃねぇぞ。
[ワイフー] ……おじさんは無事ですよね?
[ジェイ] ああ、傷は浅せぇさ。でもそれはもう重要じゃねぇ。
[ワイフー] ——ええ、確かに重要ではありません。もしただ闇組織同士の潰し合いなら、私もこんなにしゃしゃり出ようとは思いません。
[ワイフー] ですが私の目の前で罪もない一般人を傷つけました。奴らの身勝手で不埒な振る舞いを、このまま野放しにしておくことなど、私にはできません。
[ジェイ] ……そいつは、ありがてぇ。後で魚団子を奢らせてくんな。
[ワイフー] 別にいりませんが……。
[ワイフー] そうだ。
[ワイフー] 今夜の事件ですが、ペンギン急便も関係しています。あの方々は元より何かを隠して動くような人たちではないですからね。
[ジェイ] ああ、あの連中は悪人じゃねぇよ。どうせまた、巻き込まれたクチだろうな。
[ワイフー] それにしても、今年に入ってからもう何十回巻き込まれてるんですかね? あの方々には一層注意すべきです。すぐにいざこざを起こしますから。
[ワイフー] もしあの方々に会うチャンスがあれば、これは注意する必要がありますね。
[カポネ] 砂にアーツ、か。フン。
[カポネ] ま、そりゃそうだ。龍門の闇を牛耳ってる怪物が、単なるお飾りのワケねぇわな。
[マフィア] まさかカポネさんが仰っているのは?
[カポネ] 当然最も敵に回しちゃいけないあの人のことだ。わかるだろ?
[マフィア] 鼠王? まさか俺たち、同時にこれだけの勢力とやり合うことになるなんて。ボスにペンギン急便、それから……。
[カポネ] それから龍門の半分。そうさ、楽観視なんて全くできねぇ状況なんだよ。こっから先は一歩でも踏み間違えるとヤバい。
[マフィア] か、カポネさん、何するんですか? 武器を下ろしてください!
[カポネ] なぁ、ファミリーへの裏切りは大したことじゃない……と、お前は本気で思ってんのか?
[カポネ] 俺はな、俺が龍門に根を下ろすのに付いてきて、生き抜くためにはガンビーノさえも裏切ることを決意した連中の顔を、一人残らず覚えてんだよ。
[カポネ] だがお前ぇのそのツラは知らねぇな。ガンビーノの犬め、死ね。
[カポネ] おい、いるんだろ。出てこい。
[ガンビーノ] 俺は、お前はただの恩知らずのロクデナシだと思ってたけどよ。まさか人を篭絡する方面で才があるなんて知らなかったぜ。
[カポネ] そいつはお前から教わったけどな。
[ガンビーノ] ほぉ。身に覚えがねぇな。
[カポネ] お前はかつてこの俺の忠誠心を勝ち取ったが、俺を地の底まで失望させた。俺は決して同じ轍は踏まねぇ。
[ガンビーノ] お前なぁ、裏切りってやつが何を意味するのか、分かってるよな。
[カポネ] 裏切りはシラクーザで最も汚らわしい罪名だ。だが惜しいことに、お前が望む栄誉は、この龍門では一ミリの価値もない。
[ガンビーノ] コイツを受け取れよ。
[カポネ] ——スペードのジャック?
[ガンビーノ] お前のカード捌きは遅すぎるって言ったんだろうが!
[カポネ] お前こそ剣が鈍ってるぜ、ガンビーノ。ペンギン急便とのやり合いで傷でも負ったのか? それとも古傷が開いたか?
[ガンビーノ] お前のビビりにはがっかりだぜ。裏切り者に相応しい血生臭い死に様を考えてやるよ。
[カポネ] この龍門だと、お前こそがその余ったカードだぜ。
[カポネ] それで? お前は何をするつもりだ? ペンギン急便を潰して、鼠王に近衛局、ウェイまでも倒すつもりか?
[カポネ] そんな夢物語が見てぇなら、永遠に寝かしつけてやろうか?
[ガンビーノ] 安心しろ、お前の骨灰はちゃんとシラクーザに戻してやるからよ。それとも、故郷そのものに轢かれて粉々になる方が好みか?
[マフィアA] 止まれ、お前らは——!?
[ガンビーノ] ——なんだ?
[カポネ] 邪魔が入ったようだな。
[ガンビーノ] ……すぐにお前を殺さなかったのは俺のミスだ。だがよ、まずはよそ者を歓迎してやろうぜ。
[マフィアA] 奴らを止めろ! うぐっ! 俺のつま先を踏むなんて……。
[マフィアB] この野郎、炎国のカンフーだと!? 全然太刀打ちできねぇ!
[マフィアA] 拳ひとつでどうやって——ぐはっ!
[ワイフー] ——ふぅ。
[ワイフー] それで、あなた方なの?
[ガンビーノ] 俺も誰彼なしに罪もねぇ奴を殺そうと思ってねえよ。だがな——。
[ガンビーノ] お前は俺のチームを突っ切って俺の目の前に来た、服にホコリひとつ付けずにな。
[ガンビーノ] 鼠王の一派か?
[ジェイ] ……アンタら、さっきスラムにいたか?
[カポネ] ハッ、シチリア人のタイマン邪魔して、そのうえ質問までするとはいい度胸だな。
[ジェイ] ……そっか、やっぱアンタらみてぇだな。
[カポネ] ——!?
[カポネ] この野郎、うっ、どういうことだ——!
[ワイフー] そうやって見てるだけですか?
[ガンビーノ] 勘違いするなよ。人の手を借りるのも悪くねぇけど、アイツだけは必ずこの手で地獄に送ってやるからよ。
[ガンビーノ] だが俺の見立てだと、お前も融通が利く人間じゃなさそうだな。
[ワイフー] 投降をオススメしますよ。
[ガンビーノ] 馬鹿言うんじゃねぇ!
[ガンビーノ] お前とあの狼の腕は同等だ。あの鼠王がお前のような隠し玉を持っていたとはな!
[ワイフー] 何が隠し玉なのか、あなたが何のことを言ってるのか、全く分かりませんが。大人しく降伏して私と警察に同行なさい——!
[ガンビーノ] ぐっ!
[カポネ] チッ、思い出したぞ。お前ぇのツラは見たことがある。あの食いもん屋に偽装してた手先か。
[カポネ] しくじったぜ。お前ぇのことは、気に掛けておく必要はないと思ってたのによ。
[ジェイ] いや、そいつは誤解なんじゃあ……まぁいいか。
[ジェイ] 今はそういうことにしといてやらぁ。
[ワイフー] はぁあっ!
[ガンビーノ] フン!
[カポネ] 小娘ひとりにひどいやられようだな、ガンビーノ。
[ガンビーノ] お前を殺すのは後回しだ。だが喜ぶのはまだ早い。
[ジェイ] ……アンタ、隙を狙って不意打ちしようとしてやがったな。ゲス野郎が。
[ワイフー] 不義の拳を振るう者に勝機なし!
[ワイフー] あなた方が傍若無人に暴行を働いた代償、払ってもらいます。
[董] ……おい、俺をこんなに待たせやがって、わざわざここに連れてくるためか?
[董] どういうつもりだ? 俺の墓を選ぼうとしてんのか? それともなんだ、死んだらご近所さんにでもなってくれるつもりか?
[鼠王] お主は長年商売しとるくせに、どうしてそう口が悪いのかの。
[董] 客にはこんな態度取らねぇよ。でもアンタは客じゃねぇんだ。
[鼠王] そう言うな。傷つくじゃろ。
[鼠王] ——。
[董] ……これはファーの墓だ、アンタは知らねぇだろうが。
[董] これはハゲ陳、こっちは偽閻魔の。
[董] あと後ろには呉さんと鉄狂人、それと安八だが、家が金持ちでな、そいつを山腹に安置した。
[鼠王] 知り合いが多いのじゃな。
[董] まぁな、みんなご近所さんだ。俺らもここに入る時のことを、少しは考えるべきかもな。
[鼠王] いま考えるのはまだ早いじゃろう。それとも、実は不治の病でも抱えておるのか?
[董] 早くはないだろ。俺たちはまだまだこれからだ、若いうちはちょっとしたことがあっただけで波乱万丈に感じるもんだ。
[董] 俺みたいな奴はよ、仲間たちが命がけで救ってくれて、それから平穏な暮らしができている。今になってふと人生を振り返ってみれば――
[董] 別に大したことなかったなって思うわけよ。本当に大したことを成し遂げる奴ってのは、平穏な暮らしなんかとは無縁だろうからな。
[鼠王] 何を言っとるんじゃ。魚団子をこねすぎて、悟りでも開いたのか?
[董] そうかもな。正直に言うとな、マフィアなんかよりも食材の値上がりの方がよほど大変だぜ。
[董] ……なぁお頭、本当に俺とご近所さんにならねぇか? ここは風水が上等だし、聞くところによると、墓地も「まとめ買い」の方が安くなるらしいじゃねぇか。
[鼠王] まだ言うか?
[董] 冗談さね、冗談。全く、アンタにはちゃんと娘がいるだろう。俺なんか寂しい独り身だぞ。
[鼠王] スラムの子供たちが、お主になついているではないか? それからあのジェイ坊とか言う若者もおるじゃろ。
[董] 血筋の違いはどうにもならねぇよ。この歳になると、ようやく実感するもんだぜ。
[董] ——だからアンタには俺より長生きして欲しいんだ。けどな、長すぎるのはダメだ。少しだけぐらいがちょうどいい。俺は下で待ってるからよ。
[鼠王] ……お主、どうしてもこの話がしたいんだな?
[鼠王] そういえば、後でもう一人の旧友に会いに行くのじゃが、一杯飲みに来ぬか?
[董] いや、止めておくさ。ジェイの小僧が面倒事に首を突っ込んでないか気になってな、ちっとばかし見に行ってやらねえと。
[鼠王] 心配せんでよい、ワシが見ておいてやろう。
[董] 俺に生きてる旧友なんてまだいると思うか? みんなここで眠ってるよな?
[鼠王] なに、まだ一人おるじゃろ。
[董] ——俺はウェイの奴とは相性悪ぃんだよ。あいつと長く付き合ってると、本当に寿命が縮む。
[鼠王] だがあの時ウェイを流れ弾から守り、一生まともに歩けなくなった奴は、お主自身じゃろうが。
[董] 俺がしたくてやったと思ってるのか? クソッ、あれを思い出させるなよ。俺は今でもずっと損したと思ってんだ。
[董] ……まぁ、でもよ。この龍門がちゃんと歩けるようになったことを考えれば、この損も悪くねぇな。
[鼠王] お主は少しも変わらぬな。それがお主の良いところでもあるが。
[鼠王] 本当に奴に会いたくないのなら、先に行ってくれて構わぬぞ。
[鼠王] まぁ、奴とてお主に会ったところで、話すことは何もないのかもしれぬな。
[董] やっと俺を解放する気になったか? 俺はこう見えてもな、一応負傷兵なんだぜ、リンさんよ。
[鼠王] ……。
[鼠王] 董や。
[董] 聞こえねぇよ。
[鼠王] お主は少しでも長く生きて、ちゃんと商売をするのだぞ。
[鼠王] まずこの龍門で店舗を買って店を開け。そして弟子を取るのだ。棺桶をどこにしまうか、そんなコトはまた後で考えればいい。
[鼠王] ワシがまだ死んでおらん限り、お主らもちゃんと生きるんじゃ。
[董] ……へいへい、分かったよ。
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