aklib_story_喧騒の掟_CB-EX1_集団戦の秘訣_戦闘後

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喧騒の掟_CB-EX1_集団戦の秘訣_戦闘後

茶番の裏では、廃墟と化したバーに役者が集まっていた。 日の出が昇る頃、旧友たちは肩を並べ、新しい物事がゆっくりと前に進んでいくのを見守るのだった。


[執事] ——こちらでお待ちくださいませ。

[執事] 鼠王様。

[鼠王] ご苦労じゃったな。お主は先に戻りなさい。

[鼠王] 先ほどの腕前、なかなかのものだったのう。

[執事] お褒めにあずかり光栄でございます。失礼ですが、本当にお怪我はされなかったのでしょうか?

[鼠王] まさか。だが、もしお主が本当にワシを殺そうと考えていたのなら——。

[執事] でしたら、そもそも私にトリガーを引くチャンスはございませんでした。ご謙遜いただかなくとも、旦那様と私はかつての貴方様を存じているのですから。

[鼠王] それがどうした。時の流れとは無情なものだ。今夜この事実を再認識したわい。

[鼠王] 他人を恐れさせる力というのはな、自身も消耗するものじゃよ。つい駆け出しの子供たちと戯れたら、ワシの宝物のコートをダメにしてしもうた。

[執事] コートだけ、でございますか?

[鼠王] 針仕事はな、ワシにとってかなりキツいのじゃよ。

[鼠王] お主はもう自分の任務を果たしたのだ。トランスポーターよ、先に行きたまえ。そしてお主の主人に、安心して自分の仕事をするよう伝えるのじゃ。

[執事] ——かしこまりました。ですが旦那様は自ら貴方様に会いに行かれるかもしれません。それでは、失礼いたします。

[鼠王] ……ふむ、ここは本当に散らかっとるのう。もったいない。流石はあのペンギンだ。

[鼠王] ……ここにまだ無事な酒があるな。うむ、なかなか良さそうじゃないか。

[鼠王] 一杯どうじゃ?

[ウェイ] 鼠王が自ら腰を折り、拾い上げた酒を断るなんて、とんでもない。

[鼠王] ご冗談を。ウェイ長官。

[ウェイ] 長官。あなたの口からその呼び名を聞くのは久しいですね。

[ウェイ] あなたが自らこの茶番に参加するなんて。私が思うにあなたはただペンギン急便の手を借り——。

[鼠王] 老人は老人らしくいるべきだ。温和で、子供たちの遊びに付き合ってやるような。

[ウェイ] フフ、私はあなたが老いたという実感はまるでありませんよ。あなたのご令嬢が、日を追う毎に若かりし頃のあなたに近づいてきているからかもしれませんね。

[鼠王] あの子がどこまで進めるかは分からぬが、時として、ワシらも手放して見守るべきじゃろうな。ふむ、上手く行かないものよのう。

[ウェイ] たとえ選んだのが先の無い道だとしてもですか?

[鼠王] だとしてもだ。

[鼠王] フッ。それでいつまでも続く道なんぞ、本当に存在するのかのう? それを誰が決めるのだ? 天災か?

[ウェイ] ……あなたは本当に老いたのかもしれませんね、リン。

[鼠王] 何故ワシがあの若いトランスポーターを気にかけるのか知っとる? ワシが思うに、彼女たちには共通点があるかもしれぬのじゃ。

[鼠王] ――話を戻そう。お主はこんなところに現れるべきではなかったかもしれぬな、長官。

[ウェイ] 口にせずとも分かっておいでかと、近くに「偶然通りがかった龍門市民」は誰なのかを。

[鼠王] はぁ……。

[ウェイ] 鼠王でもため息をつく時があるのですね。

[鼠王] ワシがため息をつくようなことは多いのじゃよ。ただその中でも感慨深いものを選んでいるだけじゃ。

[鼠王] ……ひょっとしたら、引退する日が来たのかもしれないのう。

[ウェイ] それはいけませんよ。龍門はまだ鼠王を失うわけにはいきません。

[鼠王] リンなら、失ってもよいがな。ワシらはどちらも過去とは大違いなのじゃ。

[鼠王] 大丈夫だ。少なくとも、龍門が鼠王を必要としなくなるその日が来るまで、ワシは続けるつもりじゃ。

[鼠王] ワシの娘が真に成長したその日までな。

[ウェイ] 本当にそう思っているのですか?

[鼠王] ワシはあの子の父親であり、スラムの鼠王でもある。そしてかつてはお主の友であった、灰色のリンだ。

[鼠王] ワシがあのとき決心をつけられなかったばかりに、多くの間違いを犯してしまった。

[ウェイ] ……あなたはまだあの時のことを引きずっている、リン。

[鼠王] お主がワシらに龍門を取り戻した時、ワシはお主に約束をしたな。ワシはお主の影の中に生きる、お主はもうこの薄汚れた暗い路地裏に触れる必要はない、と。

[鼠王] ——そうだ、あれからもうだいぶ経ったな。お主との約束があったこそ、鼠王というものが生まれたのじゃ。

[ウェイ] あなたは多くの犠牲を払ってきたのです。

[鼠王] そんな白々しい話はよせ。ワシが潔白じゃないのは分かっておる。ワシらもな。

[ウェイ] ……あなたは約束をきっちり守っています、旧友よ。それでもあなたは不満を否定していません。

[ウェイ] 理由はご令嬢ですか?

[鼠王] ワシがここまで手間かけてあのシラクーザ人どもを追い払ったのは何のためだったのか、お主が一番よく知っておるのじゃろう?

[ウェイ] 世の中厄介な相手は数多くいますが、少なくとも私はあなたのことを信頼していますよ。

[鼠王] 信頼も利用も同じことじゃ。その地位があるからこその職務であろうに。ワシらはもう少し現実的になるべきじゃな。

[ウェイ] ……以前のあなたなら、こういう話を毛嫌いしていましたよね。

[鼠王] 何故じゃろうな。今夜は久々の再会が多いというのに、ワシが満足できたのは一件もないのう。

[ウェイ] そんなことは言わないでください。今はただ旧友二人で、安魂夜の余韻を語り合っているだけですから。お互いもう少し肩の力を抜いたらいかがですか?

[鼠王] 確かにお主の言う通りじゃな。ふぅ、冷えてきたのう。お主には古き戦友たちのためのロウソクに火を灯す時間もなさそうだ。

[ウェイ] そこまで時間の掛かることではないですからね。あなたがあそこを離れてから、ずっといましたよ。

[鼠王] ……ウェイ長官ともあろう人が、一人で墓の前に花を手向けている姿など、ワシは想像もできんな。

[ウェイ] あなたの葬儀には参列しませんが、墓前には花を備えるかもしれません。その時になれば分かります。

[鼠王] ……お主を救うために、一生まともに歩けなくなった奴がおる。まだ覚えているかのう?

[ウェイ] そんな人間を挙げたらキリがありませんよ。我々と肩を並べて戦った人、そして我々のために躊躇いなく命を投げ出してくれた人。

[ウェイ] 私はそういう人々を忘れたことなど、ただの一度もありませんよ。

[鼠王] ——お主の眼は変わらないな。もしかしたら、お主は長生きできるかもしれん。

[ウェイ] ええ、秘訣があるんですよ。

[鼠王] まぁ、そうしてくれないと困るんじゃのう。

[ウェイ] フフ、安魂祭の祝福として受け止めておくよ。

[エンペラー] この! クソ! ネズミ!

[鼠王] うおっ!?

[ウェイ] ——。

[???] 鮮やかな跳び蹴りですね、エンペラーさん。ですが鼠王さんにはもう少し丁重にして頂きたいのですが。

[???] こんばんは、あるいは、おはようございます。ウェイ長官。

[ウェイ] 実に盛り上がった一晩でしたな、ピーターズさん。意外なことも多くありましたが、つまるところ各自の目的は果たせたというところですかな。

[ウェイ] あなたは事態が全て収拾されるまで、VIPルームで待っているだけかと思いましたが。

[ピーターズ] 息子を地獄に叩き込んでおいて、自分だけぬくぬくとVIPルームでウェイ長官の連絡を待つというのはさすがに気が引けますよ。

[エンペラー] どこが地獄だって?

[鼠王] 落ち着くのじゃ、エンペラー。

[エンペラー] 良くやってくれたな、この腐れネズミが!

[鼠王] 何をそんなに怒っておる。腹に穴が開いただけではないか。

[エンペラー] だけ!?

[鼠王] 絆創膏を貼るだけで済んだではないか。お主があれぐらいで死ぬタマだったか? ならば、何をそんなにカリカリしておるのじゃ?

[エンペラー] *弾を装填する音*俺の一番のお気に入りのTシャツをボロボロにしやがってよ。俺はお前の茶番にも金を出しまくってやったのに、お前は平気で恩を仇で返すってのか? あぁ?

[ピーターズ] ご安心ください、エンペラーさん。本日の出費は全てわが社が持ちますので。

[エンペラー] お前は黙ってろ、これは金の問題じゃない。

[エンペラー] ピーターズ、お前の手下が鼠王を撃ったのはただの戯れ合いだったのに、俺がクソネズミに刺された時はマジだったんだよ。

[鼠王] ついな……。

[鼠王] ……こら危ないぞ、エンペラー。

[エンペラー] 手が滑った。

[ピーターズ] こらこら、ウェイ長官がまだ見ているんですから、そんなに殺気立つのはおやめください、二人とも。

[ピーターズ] 今回の損害と言っても、一度の天災による経済損失に比べると安いものです。我々にとって、何の問題もありませんよ。

[鼠王] ペンギン急便は確かに鍛錬の場には向いておるな。あの自称トランスポーターのお嬢さんたちは、皆一筋縄ではいかんからな。

[鼠王] だがワシからはやはり一言忠告しておこう。その身に引火せんよう気をつけるんじゃぞ。

[ピーターズ] ハハッ、勿論ですとも。だがあれは私の息子! フェンツは決して挑戦を恐れぬのです!

[エンペラー] お前はモスティマと龍門の奴らを家庭教師に使うし、クソネズミは俺たちを道具みたいにこき使う。そのギャラ、お前たち払えるの?

[鼠王] 道具みたいに? とんでもない。

[鼠王] ワシもあのシラクーザの二人が、あそこまで分からず屋だとは思わなんだ。少しヒントを与えば、すぐ気づくと思ったが——。

[エンペラー] 馬鹿言え、お前は一目で奴らの底を見抜いてただろ。

[鼠王] 濡れ衣じゃよ。濡れ衣。

[ウェイ] ……フッ。本当に陽気な人たちだ。

[ウェイ] たまには早朝の郊外でこういう空気を吸うのも、乙なものだ。

[ウェイ] あのシラクーザ人たちのことなら、たとえ盤上がいかに混乱していようとも、あなたは「悪手」をことごとく「妙手」に変えていくでしょう。

[鼠王] そういうことにも限界はある。お主はワシよりも色々知っておるだろう。彼奴らは、まだウェイ長官の手を煩わせるところまで来ていないというだけじゃ。

[鼠王] それでもお主は、シラクーザの動向を気にかけておくべきかもしれぬな。

[ウェイ] 分かっていますよ。

[エンペラー] 実に残念だが、このクソネズミは今回もお前に尻尾を掴ませなかったな、ウェイよ。

[ピーターズ] ……エンペラーさん、そんなこと言うから気まずくなるんですよ。

[ピーターズ] しかし、鼠王にご不快な思いをさせた件に関しては、計画通りだったとはいえ、やはりお詫びをさせてください。

[鼠王] 彼の射撃はとても巧妙じゃったよ。まことに真に迫っていた。彼の過去に深い興味を持たせるほどにな。

[エンペラー] 本当に残念だ。ウッカリ死んでくれても良かったのによ。

[鼠王] ……お主は本当に不穏なことが好きじゃのう。

[ウェイ] ピーターズさん、龍門が次に御社と提携する案件を考慮すれば、ご子息をしばらく中心から遠ざけておくのは賢明な判断でしょうな。

[ピーターズ] ハッハッハ、この茶番劇の本当の意義に比べたら、あの程度は面倒事のうちに入りませんよ。

[ウェイ] そしてエンペラーさん、できればあなたにも、龍門が終始ペンギン急便に見て見ぬふりを続けている理由を分かっていただきたい。

[エンペラー] そら、俺たちの人並外れた業務能力と俺の抜群の魅力に惚れ込んるからだろう?

[ウェイ] ……フッ、仰る通りですな。貴方が実は誰よりも分かっていると信じていますよ。

[エンペラー] チッ! 次にまたこんなことがあっても俺を呼ぶなよな! 請求書と賠償品リストは、必ずお前たちの手元に届けてやるよ。安心しろよ、みっともない金額じゃ済ませねぇから。

[ピーターズ] ハッハッハ、さすがはエンペラーさんだ。人をゆする機会を少しも見逃しませんね。私も勉強させていただくべきかもしれません。

[鼠王] この龍門をゆすろうとする輩は多くはないし、学べもせんぞ。

[ピーターズ] では、ウェイ長官。

[ウェイ] そうですね。ですが一旦場を改めましょうか。皆さんもそれぞれのご都合がありますから。

[エンペラー] あぁ? お前たち、また何かめんどくせぇこと企んでるのかぁ?

[ピーターズ] あなたも出資しますか? 我々なら共に物流業界を新たなステージへと導くことができますよ。龍門から、この大地の全域へと。

[エンペラー] 結構だ。正直に言うと、俺はお前の会社のネーミングセンスをマジで酷いと思ってんだぞ。

[ピーターズ] ハーッハッハ――ッ! まさかそんな理由ですか! それは残念ですよ!

[ピーターズ] ですが、あなたがそれを言う資格があるのですか?

[ウェイ] ご苦労でした、リン。

[鼠王] まだそんなことを言われる時でないぞ。

[ウェイ] 今日のことだけではありませんよ。歳月とは長いものですから。

[鼠王] ……ああ、日が昇ったな。

[ウェイ] 初めてここで日の出を見た時、こうして肩を並べて立っていて、みんな血を流してましたっけ。

[鼠王] スラムは、家がごちゃごちゃと重なり合って、影が幾重にも交差しておる。お主はここに慣れるべきではない。

[ウェイ] それでこの長い歳月に、あなたはここで何を見てきたのですか?

[鼠王] ……変遷、だよ。ウェイさんや。

[鼠王] ワシらが歩いてきた道——

[鼠王] 後ろに続く者はとっくにいないのじゃ。

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