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喧騒の掟_CB-1_6:44P.M._戦闘前
若きトランスポーター・バイソンはシラクーザのマフィアに襲われるも、ペンギン急便のエクシアとクロワッサンによってギリギリのところで助け出された。 そして廃墟と化した路地で、敵はエンペラーの傲慢なる罠に陥ってしまう。
p.m.6:44 天候/晴天
龍門環状道路 車内
[執事] バイソン様?
[執事] バイソン様、お休みでございますか?
[バイソン] うぅん……ごめん……。いまどの辺り?
[執事] 間もなくお約束の場所に到着いたします。バイソン様、どうかお気をしっかりお持ちください。ペンギン急便の皆様は既にご到着かと存じます。
[バイソン] うん、わかった。
[執事] 私にはお疲れのように見えますが……。
[バイソン] そんなことないよ。
[執事] 差し出たこととは存じますが…。旦那様の今回の決定はあまりにも性急でございます。もし、御心に沿わぬということであれば、遠慮せずお声をあげられるべきかと思います。
[バイソン] ……父さんには、父さんの考えがあるんだ。
[バイソン] それに、ペンギン急便さんのところで成果をあげさえすれば、父さんの周りの人たちだって、二度とぼくに口出しできなくなるかもしれない。
[執事] バイソン様は当家の中でも歴代最年少でトランスポーターになられた御方。十分な職務遂行能力を持つ優秀な人物であることは、この私が保証いたします。
[バイソン] かもね。でも、あの大人たちは、まだそう思ってくれていないと思うよ。
[執事] バイソン様……。
[バイソン] 外を見てよ。この龍門では、民間のトランスポート業務の大半が父さんの掌中にあるよね。
[バイソン] そして、最後に残ったのが、どこにも属さず、最も奇妙な噂が多い会社——ペンギン急便。
[バイソン] 父さんとエンペラーさんの関係は良好みたいだけど、ぼくたちはこれからだからね。これからペンギン急便さんを理解していかないといけない。
[執事] 私としてはバイソン様の御身が心配でございます。ペンギン急便はあまりにも特殊なところだと聞き及んでおりますゆえ。
[バイソン] そんな顔をするのはやめてよ。このぐらい自分で何とか出来るさ。
[執事] それは私からも申し上げたい事でございます。今のお顔を鏡でお見せしたいぐらいです。貴方様には、もっと同じ年頃の皆様と同じように笑って頂きたい。
[執事] 今宵は安魂夜です。本来でしたら貴方様も、ご友人らと街に出ても良いかと存じます。
[バイソン] ……いま、ぼくに友達がいないってバカにした?
[執事] フッ、お戯れを。まさか私がそのようなことを。
[執事] ところでバイソン様、お手元に盾はお持ちでしょうか?
[バイソン] どうしたの?
[執事] 狙われております。
[ガンビーノ] ターゲット発見。おい、準備はいいか?
[マフィア] おう、起爆装置の導火線が少し短いようだが……。
[ガンビーノ] 問題ねぇ。やれ!
[バイソン] うっ――爆発!?
[執事] バイソン様、しっかりお掴まり下さい——。
[マフィア] ターゲットを確認。まだ生きてるな。
[ガンビーノ] 奴を連れていくぞ、急げ。
[バイソン] (まさかこんな公道を爆破するなんて…… いったい誰が……。)
[バイソン] (まずい、視界が……何も見えない……。)
[ガンビーノ] 状況はどうだ?
[マフィア] 野次馬が多いな。だが他のターゲットが見当たらねぇ。
[マフィア] 待て、煙の中にまだ人がいる!
[ガンビーノ] まだ生きてる奴がいんのか? なら一緒に——。
[マフィア] うぁッ——!
[ガンビーノ] おい? おいっ! どうした?
[ガンビーノ] ケッ、こんなに簡単にやられんなよ。
[ガンビーノ] こんな古くせぇ映画みたいな展開には虫唾が走るぜ。
[ガンビーノ] なあ、ペンギン急便さんよォ。
[???] ありゃ、バレちゃってたか。
[エクシア] いやでもさぁ、道路の真ん中にバリケードを置いてから爆弾付けるなんて、そっちのやり方もだいぶレトロな感じじゃない?
[ガンビーノ] 爆破はただの俺の趣味だ。それよりお前、周りを見てみな。それだけじゃねぇんだぜ。
[カポネ] クソ、あのバカ、よりによって源石爆弾をこんなに使いやがって。もし鼠王にでも知られたら、俺たちもタダじゃ済まねぇってのに。
[マフィア] ペンギン急便のトランスポーターを発見。あれはエクシアですね。奴が爆破チームを全員……。
[カポネ] 俺だって馬鹿じゃねぇ。あいつらはもういい。あのテキサスとかいう狼は?
[マフィア] いえ、確認できていません。
[カポネ] フン。ならいい。奴らを包囲しろ。速攻で片づけるぞ。
[エクシア] やっぱりまだ伏兵がいるんだね。ずいぶん徹底してること。
[エクシア] ねぇ、動けそう? 手足をガクガクさせてるみたいだけど。
[バイソン] ……な、なんとか頑張りま…す…。あなたは……もしかして、エクシア……さん?
[エクシア] ウン、そうだよ! キミは、えっと、誰だっけ?
[バイソン] バイソンです。
[バイソン] ここは危険です。まずは離れましょう。ただ……。
[エクシア] そんな険しい顔しなくても大丈夫。あの執事さんなら無事だよ。
[バイソン] 本当ですか!?
[エクシア] とりあえず、道路脇までいったん退避してもらったよ。あの様子なら手助けは要らなそうだけどね……。ま、大丈夫っしょ!
[カポネ] ペンギン急便のエクシア! それからそこの小僧! 投降しろ。俺たちと一緒に来てもらうぞ。
[エクシア] この辺じゃ見ない顔ばっかだね。みんなキミのシラクーザの親戚かなんか? 龍門でのシノギのルールって教わってないの?
[カポネ] テメェにゃ関係ねぇ。今回こそお前らを徹底的に潰してやる!
[エクシア] う~ん……龍門に来て長くなるけど、キミたちの縄張り争いって、いつまで経っても一番単純で荒っぽいことしかしないんだね。
[エクシア] だけど、シラクーザのマフィアもただバーで喧嘩ごっこしてボコられるだけじゃないってことか~。
[カポネ] あぁそうさ……シチリア人を甘く見たこと後悔するぜ、この*龍門スラング*野郎! やれ!
[クロワッサン] ハイハ~イ。お待ちどおさ~ん。で、ウチ間におうた?
[エクシア] クロワッサン! ナイス・タイミーング!
[クロワッサン] なんや敵さんたち、攻撃やめるつもり無さそうやね。さて、どないしよか?
[エクシア] 決まってるでしょ。そっちが道を開く、あたしがシンガリ。ボーナスは山分けね!
[クロワッサン] よっしゃ、ほな決まりやな。ハイハイ、ちょいとソコ通らせてもらうさかい、退いてもらうで——。
[マフィア] な、なんだあの怪力イカレ女! 無理矢理周りを吹っ飛ばして道を作りやがった。
[カポネ] ……先に行け。深追いはしなくていい。ボスの支援を待て。
[マフィア] は、はい!
[ガンビーノ] テメェ、みすみす逃すつもりか、このクズ野郎が。
[カポネ] 知るかボケ。そもそも誘拐なんざ得意じゃねぇ。それにペンギン急便のほかの連中の顔を見るまで、迂闊に市街地に入ったら不利になるのは俺たちなんだよ。
[ガンビーノ] いつもながら減らず口だけは達者だな。オープンカーが一台、そっちに向かった。嫌なほど見覚えがあるメンツだぜ。
[カポネ] ……チッ、やけに早くねぇか?
[エクシア] ええっ! ここも行き止まりなんだ? もう何回目?
[クロワッサン] どうせ周りなんて全部、建設途中のまんま放置されとる廃墟やろ。壁にドッカーンと穴開けたらええんちゃう?
[バイソン] ちょ、ちょっと待ってください、お二人とも! ぼくたちはいったいどこに向かっているんですか?
[マフィア] 奴らがいたぞ! まさかこんな袋小路に迷い込んでるとはな。奴らを囲め!
[バイソン] こ、これじゃ逃げ道が断たれちゃうじゃないですか!?
[エクシア] あっ、そうだ!
[バイソン] 何か打開策が!?
[エクシア] あたしたち、まだちゃんと挨拶してなかったよね?
[マフィア] 奴ら全員やっちまえ!
[バイソン] ええっ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょう! それいま重要なんですか!?
[???] いや。
[???] とても重要、非常に重要、か・な・り重要だ。
[???] ウチの会社は「企業文化」ってやつを大切にしてるんだ。そして今日の標語は「人と接するときは礼儀正しく格式を持て」だ。
[エンペラー] まぁ、いま適当に決めたことだけどよ。
[マフィア] エ、エンペラーだ! 早くボスに連絡を!
[マフィア] 待て、後ろにもう一人いる!
[テキサス] 敵は餌を食わなかった、エクシア。
[エクシア] そっか、さすがのシラクーザの奴らだって、みんなバカって訳じゃないもんね。また次の機会があるっしょ。気にしない気にしない。
[エクシア] それよりも、みんなに紹介するよ。こちらが、我らペンギン急便の臨時メンバー、バイソンく~ん!
[マフィア] あの野郎退路をふさぎやがったな。や、やるしかねぇ!
[テキサス] 死に急ぐな。今はそこで大人しく寝ていろ。
[マフィア] チッ! 慌てるな、ボスの支援が来るまで持ち堪えれば——!
[エンペラー] 持ち堪えれば?
[エンペラー] ライト! オン!
[マフィア] まっ、眩しい! 何なんだこのスポットライトは!?
[エンペラー] ヘイ! ようこそペンギン急便へ、子猫に子犬たち!
[エンペラー] まず大切なコトを言っておくぜ。俺の視界ってやつこそが、俺たちペンギン帝国の領土なんだけどよ。お前ら、俺の視界にいるよな?
[エンペラー] 悪りぃけど、俺の帝国にいられるビザは持ってんの?
[エンペラー] まぁ、持ってねぇよな?
[エンペラー] じゃあ仕方ねぇ、強制送還ってやつだな。ママのところに泣きながら逃げ帰る準備でもしてもらおうか。
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