aklib_story_火山と雲と夢色の旅路_SL-1_お耳を垂らせる?_戦闘後

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火山と雲と夢色の旅路_SL-1_お耳を垂らせる?_戦闘後

ドリーがエイヤフィヤトラを連れて黒い羊たちの深夜のパーティーに参加した。シエスタでなくした三つのものを探してほしいとドリーが彼女に頼むと、報酬として答えを約束した。一方、地域の再建を巡り、バイソンとスワイヤーは互いに一歩も譲らず、各々力を注ぐのだった。


[アデル] 誰ですか……?

[???] わたしだよ、わたし。

[???] はぁ、わたしがいることに慣れたものだと思っていたけど、そういえばキミにこうやって話したことなかったね。いや、話したことはあったっけ、はぁ、忘れちゃったよ。

まるで、分厚い雲が夜空の中からふわふわ降ってくるように――

もこもことした生物が、ゆっくりと体を回転させながら、アデルの目の前に現れた。

それから軽やかに、そしてどこかコミカルに、道端のポストの上へと降り立った。

[アデル] わぁ――

[奇妙な形の生物] やぁ! こんばんは。

[アデル] ……ちびめーちゃん?

[奇妙な形の生物] ちびめーちゃんってわたしのことかな? うーん、まあそれでもいいや。

[奇妙な形の生物] どうしてそんなに驚いてるの? 一応は会ったこともあるよね。確かあったはずだよ。

[アデル] ごめんね……ごめんなさい、てっきり話せないものかと思ってました……

[奇妙な形の生物] うん、普段はあんまりしゃべらないよ。というより、こうやって話せるのはわたしだけで、分身たちは人とコミュニケーションを取りたくないんだと思う。それか、まだ話せない可能性もあるかな?

[奇妙な形の生物] まっ、重要なことじゃないし、どうだっていいや。今はキミに会えたから、直接キミに話せばいいんだ。

[アデル] あなたは……私を知ってるんですか?

[奇妙な形の生物] どう言えばいいかなぁ。これでも、わたしはキミの成長を見守ってきたんだよ?

[奇妙な形の生物] いやいやいや、わたしにのぞき見の癖はないからね。つまり、単純で純粋な、付き添いと言うか、お供と言うか。とにかく、当然キミのことは知ってるよ。

[奇妙な形の生物] ここでキミに会えたのが偶然にあたるのかは分からないけど、これがめったにない機会なのは確かさ。

[アデル] ごめんなさい……ちょっと状況が飲み込めてなくて……

[奇妙な形の生物] 分かるよ。もちろん、分かるさ。人間というちっぽけな者たちは、いつだって数え切れないほどの質問があるよね――焦らなくていいよ、全部答えてあげるから。

[奇妙な形の生物] 一緒にお話ししようよ、今時間はある? キミくらいの子って何時までに家に帰らなきゃいけないとかあるのかな。

[アデル] 私はもう、そんな子供じゃありません……!

[奇妙な形の生物] それはよかったよ。なら時間があるってことだよね。どうかな? わたしとお散歩に行かない?

[女の子] 大っきな水たまりに、すごく広い温泉、それと真っ白な煙。

[男の子] 描き間違ってるよ! 火山から出るのは灰色の煙だよ、シエスタはそんなんじゃないよ。

[女の子] でも、あっちはもうシエスタじゃないよ。

[女の子] あたしたちが今いるのがシエスタだもん。大きな建物の方は、白い煙ばっかだもん!

[男の子] ここはシエスタだけどさ、前のシエスタも、やっぱりシエスタなんだぞ。

[男の子] うーん、そうだ! じゃあパパシエスタって呼ぼう。

[女の子] じゃあ今のシエスタは、パパシエスタの子供だね。

[女の子] パパシエスタは父ちゃんみたいに、遠くにいるけど……いつか帰ってきてくれるし、プレゼントだってくれるよね!

[エニス] どんなプレゼントが欲しいんだ?

[男の子] エニス!

[女の子] お仕事終わったの?

[エニス] シーッ――大きな声出すなよ、ヘイリーがもう寝てるんだぞ。

[エニス] チビども、前に兄ちゃんが何て言ったか覚えてるか?

[男の子] 夜に走り回らない、移動都市の外のコンテナ区画に行っちゃだめ……

[女の子] それと画用紙以外の場所に落書きしちゃだめ……

[エニス] そんじゃ聞くけど、レストランの裏側の壁で見た大作『ヘルマンは貝殻頭』を描いたのは誰だ?

[男の子] でも、大人はみんなそう言ってるよ。

[エニス] んー……正直なとこ、大人もいっつも正しいわけじゃないんだ。だから俺たち三人の探検隊には意味があんだよ。そういう奴らには見つけられない宝物も俺たちなら見つけられるからな。

[エニス] けどその前に、明日壁をきれいに掃除するんだぞ?

[男の子] はーい……

[エニス] じゃー、お前たちが素直に間違いを認めたことに免じて――

差し出された手の平には、三体の小さな泥人形が載せられていた。精巧な作りの人形の表情は、いきいきとしていて、それはテーブルの上に置かれた家族写真に映った笑顔そのものだった。

[エニス] これは俺たち探検隊の新しい証だ、一人一つずつだぞ!

[女の子] どこで手に入れたの?

[エニス] 自分で作ったんだよ。言っただろ、兄ちゃんは魔法が使えるって。

[エニス] うーん……気に入らないか?

[女の子] (リーベリ、フェリーン、ペッロー……)

[女の子] (どうしてみんな違うんだろう……)

[男の子] 僕は「D32鋼戦士」の方がいい。

[エニス] 前にも言っただろ。貴重なプレゼントは記念日とかに取っておくもんなんだよ。欲しいもんはいつか手に入るから焦らずに待っとけ!

[エニス] ほら、もう部屋に戻って寝る時間だぞ。

[男の子] なぁーエニス、僕たちいつになったらパパシエスタに戻れるの?

[エニス] 今はまだダメだな。もしパパシエスタが起きちまったら、かんかんに怒って――恐ろしい火を噴き出しちゃうんだぞ!

[エニス] 戻るなら、もうしばらく経ってからかな? パパシエスタのご機嫌が良くなって、すぐにキレなくなったら、また連れてってやるからな。

[男の子] 僕も父ちゃんみたいに、登山探検家になりたい!

[エニス] あのな、俺たちは探検家よりもすごいんだぞ、俺たちは三人いて、探検隊だからな。

[男の子] そうだ! 探検隊だ! エニス、火山に行く日が来たら「黒い石」を掘りに連れてってね!

[エニス] おいおいおい……兄ちゃんが「黒い石」を掘りに行ってることは話しちゃダメだって! 頼むから秘密は守ってくれよ。

[女の子] なら、パパシエスタのビーチランドに連れてってくれる?

[エニス] もしかしたらその頃には、ビーチランドはもうボロボロになってるかもな……けど、だとしても他の遊園地に連れてってやるさ。

[エニス] ウォーターパークは他の場所にもあるんだ。父ちゃんが送ってくれた写真にもあっただろ?

[男の子] 分かった! じゃあ火山とウォーターパーク、どっちも行く! エニス、約束だよ!

[エニス] ああ! これは俺たち探検隊メンバーの約束だ!

[バイソン] クルビアの協力会社に輸送する商品は全て送った。あとはリターニアかな……

[バイソン] それと、博覧会会場のレイアウトも確認しないと……

[バトラー] バイソン様、本日はもう遅いです、お休みください。全ての事項をバイソン様が自ら行う必要はございません。

[バイソン] じっとしていられないんだよ……

[バイソン] ここの住民の人たちは物流センター建設に対して前向きだとは言えないから、今回の国際商品展覧会の開催を通じて、なるべく考えを変えてもらいたいんだ。

[バイソン] 独立都市として、各地への交通の中継地点になるという属性をうまく利用すれば、シエスタの発展は大いに期待できるからね。

[バトラー] 変化が起きている時には、自分がどのような位置にいるのか認識することが難しいのです。皆様が未だ未知なる新生活に不安を感じているだけだというのは、バイソン様もご存じでしょう。

[バイソン] もちろん理解できるよ。子供の頃に、父さんと一緒にミノスを離れた時、一度大泣きしたことは今でも覚えてる。

[バイソン] 生活は型が出来やすいから、変化を受け入れるのはそう簡単じゃない……ぼくだって、みんなに幸せになってほしいんだ。

[バトラー] 本日はスワイヤー様ともお会いしたと伺いましたが。

[バイソン] ……うん。

[バイソン] 何の同意も得られなかったし、合意にも至らなかったけど、彼女の言葉に改めて気付かされたよ。

[バイソン] トランスポーターにしろ、ビジネスマンにしろ、他人の生活に大きな影響を与える力を持つのであれば、その責任の重さを認識しないといけないんだ。

[バトラー] 私から申し上げるなら、バイソン様が自発的にその責任を担う必要はないように思われます。

[バトラー] 確かに旦那様はバイソン様に厚い期待を寄せられていますが、これほどまで大きな責任を、早くから担うようバイソン様に求めたことはございません。

[バイソン] いつまでも父さんの望む範囲内だけで動くなら、ぼくは永遠に父さんの庇護から離れることはできないよ。

[バイソン] 父さんはこのプロジェクトをとても重視している。もしかしたら、このチャンスは、今までの仕事で一番フェンツ運輸設立当初の父さんの理想に近いかもしれない。

[バイソン] それに、フェンツ運輸の基盤は龍門にあるからね、普段は一挙一動すべてが商業連合会によって制限を受けるんだ。シエスタの子会社の件については、父さんも難しいところがあったんだろうね……

[バトラー] 旦那様は常々、バイソン様が完全に引き継ぐまでにはまだ五年ほどかかるだろう、と仰っています。それまでに、レム・ビリトンでの隠居生活をゆっくりと計画されるそうですよ。

[バトラー] ですがこうしてみるに、旦那様が計画を練れる時間は思いのほか短くなるかもしれませんね。

[バイソン] からかわないでよ……

[バイソン] でも父さんが早く引退して、母さんの療養に付き添ってあげられるようになるのもいいことかもね。

[バイソン] ありがとうバトラー。だけどぼくの心配はいらないよ、やる気がある今のうちに、急いで仕事を終わらせよう。

[スワイヤー] どう? 楽しめているかしら?

[スノーズント] 現地のグルメをたくさん食べて、人工温泉にも入りました。以前の火山温泉の効能と全く同じらしくて、本当に気持ちよかったです!

[スノーズント] 噂の黒曜石祭――オブシディアンフェスにはお目にかかれませんでしたが、ここの情熱的な雰囲気を感じることができて、とっても楽しいです!

[スワイヤー] いいじゃない、確かにニューシエスタもビジネスチャンスが転がってる場所みたいね。

[スワイヤー] ところで、今日は外で誰かの視線を感じたりしたかしら?

[スノーズント] 視線ですか……?

[スワイヤー] 聞いてみただけだから、怖がらなくていいわよ。

[スワイヤー] 一般人に追跡対策を意識するよう求めるのは無理があるわね……

[スノーズント] スワイヤーさんが今回シエスタに来たのは、何か極秘の任務があるからですか……?

[スワイヤー] 任務? 任務なんて何もないわよ。言ったじゃないの、アタシはただ単にバカンスに来ただけだって。

[スノーズント] わたしは近衛局とはあまり接点はありませんが、スワイヤーさんの話はいくつか聞いたことがありますし、近衛局に入ったきっかけも耳にしました。それに……

[スノーズント] スワイヤーグループについても……あんな決断をすることが、スワイヤーさんにとって、どれだけ大変なことかは、それなりに想像できます。

[スワイヤー] やっぱり記者の前であのことを言うんじゃなかったわ……

[スワイヤー] 結局はいつもあの話題になるのよね。子供の頃テロリストに誘拐されたことの何が面白いのか、まーったく理解できないわ。

[スノーズント] それと、チェン隊長が去ってからの二年、スワイヤーさんがずっと近衛局の舵を取っていると聞きました。

[スノーズント] だからよく分からないんです。どうして今さらスワイヤーさんは一族のグループの投資家としてシエスタに来たんですか?

[スノーズント] それに……今日わたしたちを追跡してた人たちも、多分龍門人ですよね……

[スワイヤー] ……そう真っすぐ来られると、回答に困るわね。

[スワイヤー] スノーズンドは、龍門が良い所だと思うかしら?

[スノーズント] うーん……龍門はわたしの故郷です。

[スノーズント] 学業のために龍門を離れてクルビアに行って、また戻ってきて暮らし始めて。その間の龍門の変化はすごくはっきりしています。

[スノーズント] なんと言うか、毎日新たに建っていく頑丈な高層ビルを見て、工学者として、とても嬉しい気持ちでした。

[スワイヤー] 確かに頑丈ね。ただ少し……頑丈すぎるわ。

[スワイヤー] 高いビルが空を覆って、生まれたばかりのものは成長に必要な日光と養分を得るのが難しくなったもの。

[スノーズント] スワイヤーさん、それってつまり……

[スワイヤー] まあいいわよ、独り言を言ったとでも思っておいて。

[スワイヤー] 今聞いたことは、ほかの人に言っちゃダメよ。

随分と長い道のりを歩いたような気がする。

大きなふわふわの生物は何も言わずに前を歩き、ゆっくりと進んでいた。アデルはその後ろについていきながら、時折目をこすった。

一歩、二歩、アデルは自分の影を踏みながら前進する。近くにいる通行人は突如現れた巨大なものに気付いたそぶりすらない……これは本当に夢ではないのだろうか?

[奇妙な形の生物] ねぇ、何見てるの?

[アデル] な、何でもないです……

[アデル] ただ、これってお散歩なんですよね? 私たち……どこへ行くんですか?

[奇妙な形の生物] 焦らないで、もうすぐ着くからね。

[奇妙な形の生物] 顔を上げて、あっちを見てみてよ。

一匹、二匹、三匹……街灯の下で、小さな獣が歩みを止め、静かに彼女を見上げる。

月明かりの下で、もこもこの生き物たちが建設中の区画で跳ねたり転がったりしている。

四匹、五匹、六匹……

鮮やかな光の中、柔らかい毛が雲のように、空中に溶けていく――

あるいは、火花のように、この誰も知らない夏の夜に散っていく。

七匹、八匹、九匹……

ふわふわが列を作って、コンテナを飛び越えたり、ひづめでトタンに落書きを残したりしている……

[アデル] これ全部、ちびめーちゃんなの……?

[アデル] ちびめー……いえ、でかめーさん。

[アデル] あの聞いてもいいですか……

[奇妙な形の生物] おおっと、自己紹介がまだだったね。

[奇妙な形の生物] 遠慮することはないよ。わたしはキミよりずっと年上だけど、直接名前を呼んでくれて構わないからね。ドリーって呼んでよ。

[アデル] ドリーさん……

[アデル] 子供の頃に聞いたおとぎ話の中に、人は死ぬ間際、不思議なものを見るというのがありました……

[ドリー] ん? そんなことあるの? 今の大人たちは、子供にどんなセンスのないおとぎ話をしてるんだか。

[ドリー] 安心しなよ、まだその時じゃないから。

[ドリー] 最近調子はどう? んー……聞くべきじゃなかったかもね。可哀想なキミの日常が、あんまり順調じゃないのは見てて分かるよ。少なくともあまり健康じゃないね。

[ドリー] でもそれはどうにもできないことだ……本当にそれが残念に思う。

[アデル] お母さんが、私のそばにいるちびめーちゃんたちは、お母さんからのプレゼントだって言ってました。お母さんがあなたに、私のそばにいてくれるようお願いしたんですか?

[アデル] ドリーさん……あなたは私の両親を知ってるんですか?

[ドリー] このチビたちは、説明しようと思うとちょっと複雑なんだ。わたしの分身だと思ってくれればいいよ。

[ドリー] でも一匹一匹がこの世界と特殊な繋がりがあって、性格もそれぞれ違うんだよね。彼らがキミのそばにいるってことは、少なくともキミは好かれてる子ってことだよ。

[ドリー] そして、キミの両親については、もちろん知ってるよ。

[ドリー] よーく覚えてる。リターニアから来たあの若者二人は、世界中の火山を全部征服しようとせっせと頑張ってたね。

[ドリー] 人間の立場で、世界という範囲内で「すべて」っていう目標を達成しようとするなんて、愚かだと言わざるを得ない。

[ドリー] だけど、あの二人の目標は火山だったんだ。そうなると話が変わってくるよ。とってもセンスのある理想だよね。

[ドリー] とても頑固だったけど、すごく賢くて、しかも素晴らしい美的センスだった! 特にキミのお母さんはわたしが見てきた中でも、類まれな知恵の持ち主だったよ。

[アデル] では二人が亡くなった時も……あなたはそばにいたんですか?

[ドリー] はぁ、それこそホント簡単には語れない重い話題だよ……

[ドリー] あれは確実に予想外の出来事ではあったよ。火山があの時に噴火するなんて誰も知らなかったんだ。というか、小さな人間が世界に関するすべてを解明できるわけないでしょ?

[アデル] あなたも二人のことを残念に思いますか……

[ドリー] あー、ありがたいや。「どうして、二人を助けてくれなかったんですか」とかそういう質問をされなくて良かったよ。

[ドリー] もちろん残念さ。そりゃあ、火山は好きだけどね。ぐつぐつしたマグマの中でサーフィンをするのは、この世界で二番目に楽しいことだから。

[ドリー] でも火山はわたしの友人二人の命を奪ったんだ。これはここ数年で起きた中で十一番目に嫌な出来事だよ。

[ドリー] 嫌な出来事が起こるのは、誰だって避けたいものさ。けど、わたしは見た目ほど強い力があるわけでもなくて、できることもそんなに多くないんだ。

[ドリー] キミが本当に辛いなら、わたしの毛をなでてもいいよ。一般的に、こうすると気持ちを和らげるのに有効だからね。

[アデル] ありがとうございます……

[ドリー] とにかくさ、アデル。

[ドリー] 過去に起きた出来事は過ぎたら消えるわけじゃなくて、別の形でキミのそばにいるものなんだよ。

顔に当たる海風にはわずかな温もりがあり、一人と一匹が海岸沿いに座って、無言で波の音を聞いている。

もこもこの獣の群れは、それを邪魔することなく、思い思いに遊んでいた。コンテナやフレームの上を飛び跳ね、時折満足そうに鼻を鳴らす。

一匹の小さな獣が、目の前のもふもふに続いてコンテナに登ろうと一生懸命にジャンプを繰り返したが、何度やっても成功できなかった。

[小さい生物] (落ち込んだ鳴き声)

[ドリー] 申し訳ないけど、こうやってキミたち人間とゆっくりおしゃべりをするのは随分と久しぶりなんだ。わたしはうまく言葉を選べないから、社交辞令はできるだけ省かせてもらうよ。

[ドリー] 一目見て答えのわかる質問をしたいわけではなくて、聞きたいのは別のことなんだよ――ねぇ、キミは今楽しい?

[アデル] その……私は両親の研究を頑張って完成させようとしています。とても大変ですが、自分の今の生活はすごく意味のあるものだと信じています。

[ドリー] つまり、今のキミはやっぱり楽しくないってことだね。

[アデル] ……

[ドリー] せっかくシエスタで会えたんだ、取引をしようよ。

[ドリー] 待てよ。ちょっと考えさせて。キミたちの言葉では、「取引」っていうのはこうやって使ったっけ? それとも、もっと親しみやすい単語があったかな……そうだ、「ゲーム」だ。

[ドリー] 簡単に言うと、わたしの代わりにいくつか探し物をしてほしいんだよね。たぶんシエスタでなくしたんだと思う。まっ、宝探しゲームみたいなものかな?

[アデル] 手伝いが必要ならしますよ……何をなくしたんですか?

[ドリー] えっとね。北風と、種と、毛皮だよ。

[アデル] な……何ですかそれは?

[ドリー] 答えを先に教えちゃったらゲームじゃなくなっちゃうでしょ? 急いで結果を知りたがるんじゃなくてさ、もっと探す過程を楽しんでほしいな。

[ドリー] 苦労するかもしれないけど、無駄な努力にはならないから。全部見つけてくれたら、それなりのご褒美をあげる。

[ドリー] うーん、そうだね……ご褒美は「キミがずっと探しているもの」とかはどうかな?

[アデル] 私が探しているもの?

「だから私は、二人の犠牲が得体の知れない影で覆われうやむやになるなんて、絶対に受け入れられない。」

[ドリー] うん。だからさ、北風、種、毛皮、この三つをわたしの代わりに見つけてきて。

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