aklib_story_空想の花庭_HE-3_徒手では天へ還られぬ_戦闘後

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空想の花庭_HE-3_徒手では天へ還られぬ_戦闘後

耳元に響くチェロの音は、脳が作り出した幻覚だろうか、それとも……誰かが修道院のために奏でているのだろうか?


[レミュアン] いつもだったら、客人を銃でもてなすなんてことはしないわよ。特殊な状況を除いては、ね。

[レミュアン] もしおもてなしが足りてなかったら、許してちょうだいね。

[うごめく化け物] (意味のない雄たけび)

[レミュアン] (私の言葉に何の反応も示さない。意思疎通は完全に不可能な状態なのかしら?)

[レミュアン] (見たところ、身体に人の特徴はほとんど残っていないみたいね。全身を覆っているあれは、ウロコ?)

[レミュアン] (……この変異、確かイベリアの資料に言及があったはず……)

[レミュアン] ……

[レミュアン] まさかあなた、本当に……?

[レミュアン] くっ……

[レミュアン] 車椅子じゃ、やっぱり不便ね。

[レミュアン] (……妙ね……何かがおかしいわ。)

[レミュアン] (攻撃対象が、私じゃないみたい。)

[レミュアン] (何を狙っているというの? 標的は一体──)

[レミュアン] 危なかった……!

[レミュアン] (……ダメだわ、今はそんなこと構ってられない!)

[レミュアン] 足の不自由な怪我人だからって、見くびってもらっちゃ困るわね、お客さん!

[うごめく化け物] (鋭い雄たけび)

[レミュアン] 待ちなさい──!

[レミュアン] ダメよ、このまま逃がすわけにはいかないわ!

老人たちの世間話には、いつもラテラーノが登場する。

あの地は輝いていて、豊かで、争いもなく、人々は皆、安らかに暮らしているのだと、そう語り合う。

あの地こそが、この世の真の楽園だと。

実のところ皆が分かっていた。修道院が荒野に数十年も留まった結果ラテラーノを直接見た者など、ほとんど残っていないことに。せいぜい数人、いや、司教のステファノ以外はいないかもしれない。

それでも、人々がラテラーノについて語るのは、とうに覚めるべきであった夢を懐かしんでいるからだ。

夢の中は暖かな陽光に満ち、辺りには花々が咲き乱れている。

遥か昔、かつて修道院が見せてくれたあの光景のように。

[クレマン] ……もうすぐ枯れてしまいます。

[クレマン] 今年は例年よりも開花が早かったので、おそらく枯れるのも早まるだろうとは思っていました。しかし、まさかこれほど早いとは……

[アルトリア] 先ほどあなたが摘んでいたものは、とても美しく咲き誇っていて、まだ枯れそうになかったけど。

[アルトリア] 綺麗ね。誰かへの贈り物かしら?

[クレマン] ……もう遅いんです。もはや贈っても意味がない。

[クレマン] この花たちは、誰一人救えやしない……

[アルトリア] 悲しみ。苦しみ。絶望。

[アルトリア] とても複雑な音色ね……そしてあなたの中にはまだ、別の感情が秘められている……

[アルトリア] 怒りを感じているの?

[クレマン] いえ、アルトリアさんは司教のお客人ですから。そんな方の前では怒りませんよ。

[アルトリア] 私の前では、ね。正直な回答だわ。

[クレマン] ……

[アルトリア] 私の直感はけっこう当たるのよ。ガーデナーさん、あなたは何だか私のことを嫌っているような感じがするわ。

[クレマン] そんなことはありません。気のせいですよ。

[アルトリア] 何か悩みがあるのなら、力になれると思うわ。

[クレマン] ……力? その、おっしゃる意味がよく分かりませんが。

[クレマン] 何について力を貸して下さるのですか?

[アルトリア] それは私が決めるんじゃなくて、あなた次第ね。

[アルトリア] もちろん、あなたは助けなんて必要としてないかもしれないけど。私をお節介焼きと責めてくれても構わないし、悪意があると思ってくれても構わないわ。全てはあなたが決めることよ。

[アルトリア] 私はただ、あなたの考えが聞きたいだけ……あなた自身のね。

[クレマン] ……

[クレマン] 変わった方ですね。アルトリアさん。

[アルトリア] 誉めくれてありがとう。

[クレマン] ……力になるとおっしゃってましたが……

[アルトリア] もちろん、必要ならの話だけど。

[クレマン] いえ、必要などありません。

[クレマン] あなたは……多くの人の力になることができるのかもしれません。でも私相手では無理です。

[アルトリア] ふむ……

[クレマン] アルトリアさん、あなたは死者を蘇らせることができますか?

[アルトリア] できないわ。

[クレマン] では作物を実らせ、寒風を止めることができますか?

[アルトリア] 残念ながら、それもできないわ。

[クレマン] ならば、我々を元の生活に戻し、すでに生じてしまったわだかまりをなかったことにすることができるでしょうか?

[クレマン] そんなこと、できやしませんよね。

[アルトリア] あなたはどうだったのかしら、クレマンさん?

[アルトリア] 今話したことすべてを、自分の手で成し遂げようと考えたことがあるでしょう?

[クレマン] ……かつては、そう試みたこともあります……

[クレマン] ですが、どうにもならなかった。何度となく試しましたが、私にはできませんでした。

[クレマン] 努力すればするほど、事態はますます悪化していくのです……

[クレマン] 状況を好転させることは誰にもできませんでした。司教にも、ジェラルドにも……私にも。

[クレマン] あなたでは私の力にはなれません。

[クレマン] 私も、あなたのような方の助けは必要ありません。どうか……二度とそのような話はなさらないでください。

[クレマン] 私の考えを聞きたいとおっしゃいましたね? 私に考えなどないのですよ。

[クレマン] 他に何を考えるというんです。これからの冬はますます寒く、冷たくなっていくというのに……

[アルトリア] ……

[アルトリア] 冷たい。そうね。あの心臓は、まるで氷に閉ざされた土壌のよう……

[アルトリア] だけど、私はその凍土の下に秘められた音符に触れることができる……それは一体どれほど、人の心を動かすかしら?

[アルトリア] ……まだその時ではないわ。この楽曲を完成させる時では……

[アルトリア] なんて耐えがたい時間でしょうね……うん……こういう時は、とてもじゃないけど自分を抑えられないわ。

[アルトリア] さて、どうなるかしら……

[アルトリア] ああ、この旋律は、まさに今この瞬間にピッタリね。

[???] フェデリコ。

[???] 言ったでしょう? ……あなたの演奏は規則的で整然とし過ぎているの。理論通りの旋律というものは人を揺さぶる感情に欠けるものよ。そこには温かみもなければ、激情もない……

[???] 時々、ふいに興味を抱いてしまうの。

[???] フェデリコ、あなたは一体いつになったら気づくのかしら……自分が何のために追い求めているのかということに。

[フェデリコ] ……

[フェデリコ] (……チェロの音?)

[フェデリコ] (いや、これは単なる音ではない。アーツも使われている。)

[フェデリコ] (このアーツ、それにこの音色。まさか……)

[フェデリコ] ……

[フェデリコ] (こちらの方か。)

[フェデリコ] (……上か?)

[修道院住民] 今日弾いてるのは何て曲なんだろうな? 綺麗な曲だ……

[フェデリコ] ここでは毎日このような音楽が流れるのですか?

[驚く住民] えっ! あ、あんたは……?

[フェデリコ] 公証人役場の執行人、フェデリコです。質問にお答えください。

[驚く住民] 公証人……役場? 何だそりゃ……あっ、そうか、皆が言ってたラテラーノからの客人って、あんたのことか?

[驚く住民] この音楽は、えっと、最近たまーに聞こえてくるって感じかな。俺も詳しくは知らないんだ。

[驚く住民] そういえば、確か聖堂の辺りで誰かがチェロを弾いてるって言う話を聞いたっけ……

[フェデリコ] その聖堂はどちらにありますか?

[驚く住民] 最上階だよ。外の階段を上ればすぐ──ってちょっと、あんた!?

[驚く住民] 行っちまった……変わった人だったな。

[慎重なサルカズ住民] ボス、おかえり。

[ジェラルド] ああ、出発の準備はどうだ?

[慎重なサルカズ住民] 大方整った。みんな荷物もそこまで多くないしな。多すぎても動きづらくなるだけだ。

[慎重なサルカズ住民] ただ、外の様子を見に行った連中からの連絡がまだなくて……明日の朝に間に合うかどうか。

[ジェラルド] もう少し待とう。

[ジェラルド] 俺たちが出て行くってことは、ステファノにもう話してある……今さら止めることもないだろうから、焦って動く必要はないさ。夜になっても音沙汰なければ、俺が直接隊を率いて探しに行こう。

[慎重なサルカズ住民] 了解。後で皆に声をかけておく。

[慎重なサルカズ住民] そうだ、ボス! もう一つ……

[ジェラルド] 何だ?

[慎重なサルカズ住民] ハイマンがまだ戻ってないんだ……この辺は一通り探したんだが、どこにも見当たらなかった。

[ジェラルド] ……ライムントの奴もまだ戻らないのか?

[慎重なサルカズ住民] ああ。

[ジェラルド] そうか、その件は俺に任せろ。

[慎重なサルカズ住民] 分かった。

[慎重なサルカズ住民] だが、もしハイマンが姿を現さなかったらどうする? ……あいつのこと、ずっと待つつもりなのか?

[ジェラルド] ……

[ジェラルド] 遅くとも明日の朝までだ。朝会の後もまだ戻って来ていなければ、お前とライムントで計画通り皆を連れて出発しろ。

[慎重なサルカズ住民] しかし、ボスは……

[ジェラルド] 俺は残る。ハイマンは、生死を問わず必ず見つけ出してやる。

[ジェラルド] 安心しろ。お前らの誰一人として、見捨てたりはしない。

[慎重なサルカズ住民] ……俺たちは、あんたのそういうとこが心配なんだよ。

[慎重なサルカズ住民] *はっきりしない発音*、いつも背負いすぎなんだ。

[ジェラルド] ……その名で呼ぶのはよせ。

[ジェラルド] お前らが俺をボスって呼ぶなら、俺はお前らのために活路を切り開いてやる責務があるんだよ。

[慎重なサルカズ住民] 自分で自分を追い詰めてるだけだと思う。

[ジェラルド] はははっ、心配するな。そこんとこは俺だってわきまえてるさ。

[ジェラルド] さあ、いつまでもそんな顔してないで、さっさと行って準備を終わらせろ。

[スプリア] 交代に来たよ~。

[リケーレ] うおっ……!

[リケーレ] びっくりした……! スプリア、お前か。

[スプリア] 私じゃなかったら誰が来るっていうの? フェデリコのやつがこんな仕事引き受けるはずないでしょ?

[スプリア] 中にいる子はどんな感じ? ……だいぶ参っちゃってるかな?

[リケーレ] 元気だとは言えないな。ずっと一言も喋ってない。相当ショックが大きいみたいだ。

[スプリア] 私は現場を見てきたわけだけど、何があったのか訊かないの?

[リケーレ] まぁ……大体予想がつくからな。

[リケーレ] 銃の威力に関しちゃ、俺たちは痛いほどよく分かってるあろ。あの出血量じゃ……もう間に合わなかったんだろ?

[スプリア] ……

[リケーレ] その顔は、当たりみたいだな。

[スプリア] そのこと、彼女に話したの?

[リケーレ] 何をだ? ああ、怪我した子はもう助からんだろうってことか? 話すはずないだろ。

[リケーレ] 向こうは情緒不安定なんだ。本当のことを話したら、かえって問題になる……

[スプリア] じゃあなんて伝えたわけ? きっと大丈夫だ、とか何とか言って、ひとまずお茶を濁したってとこかしら?

[リケーレ] お前なぁ、そんな人聞きの悪いことを……まあ反論の余地もないわけだが。

[リケーレ] スプリア、何だか機嫌が悪そうだが、何かあったのか?

[スプリア] ……あなたには関係ないでしょ。私はすこぶる好調よ。

[リケーレ] そうか。お前がそう言うなら、そういうことにしておくよ。

[リケーレ] じゃあスプリア、ここはお前に任せたぜ。

[スプリア] ふん、どいつもこいつも、頼りにならない役立たずばっかりね。

[スプリア] ……

[スプリア] (銃の暴発が引き起こした事故、ね……)

[スプリア] (はぁ、なんでこんなことに。)

[スプリア] (もしあの時、私が手を貸さなければ……)

[スプリア] ……!

[スプリア] 何よ。手短にお願い。

[スプリア] ……待って、どういうこと? 外縁地帯にサルカズが出現した上、封鎖を突破しようとしてるって?

[スプリア] 数人だけ? 道を確認しにきた人たち?

[スプリア] 分かった……え? オレン?

[スプリア] ……

[スプリア] いや、オレンには私が連絡しておくから心配しなくていい。

[スプリア] よく聞いて。これからあなたたちがすべきことは……

[レミュアン] ……ほんと……逃げ足が速いわね!

[レミュアン] ふぅ……

[レミュアン] ……

[レミュアン] 見失っちゃったか……

[レミュアン] (このくらい……昔だったらとっくに片付いてるはずなのに。)

[レミュアン] (……)

[レミュアン] (やっぱりこういう時……どうしても苛立ちを感じるわね。)

[レミュアン] そこ……!

[レミュアン] どうやら、まだ自分のことを可哀想だと思う時じゃないわね。

[フェデリコ] (チェロの音色がどんどん鮮明になっていく。徐々に音の発生源に近付いている証拠だ。)

[フェデリコ] (だがアーツの力は逆に弱まっている。アーツの行使を諦めたか、それとも……ん?)

[フェデリコ] 何者ですか?

[クレマン] フェデリコさん? どうしてこちらに……?

[フェデリコ] あなたに言ったのではありません。

[クレマン] えっ、それはどういう……?

[クレマン] 道に迷ったのですか? 差し支えなければ、私が──

[フェデリコ] お静かに。

[クレマン] なっ!? うっ、うわああ!!

[クレマン] あれは……今のは何ですか!? あの化け物は……

[フェデリコ] 分かりません。

[クレマン] 下に逃げました! まずい……あちらはジェラルドたちが住んでる場所です!

[フェデリコ] ……

[フェデリコ] 動かないでください。

[クレマン] !?

[フェデリコ] 誰か来たようです。

[???] ……こっちから銃声が聞こえたから、一か八か来てみたの。

[フェデリコ] 枢機卿補佐官レミュアン。スプリアの報告では、あなたには外出の意志なしとのことでしたが。

[レミュアン] スプリアのことは責めないであげてちょうだい。実際、本当に外に出ようとは思ってなかったの。

[レミュアン] ただ、ちょっと予想外の事態が起こっちゃってね……

[レミュアン] そのあたりの経緯はひとまず置いとくとしましょう。フェデリコ、あなた一人だけ? 他の人は一緒じゃないの?

[フェデリコ] 今は私一人です。

[レミュアン] じゃあ端的に話すわね。私は今、突然現れた……お客さんを追っていたところなの。

[レミュアン] あなたにもこれ以上時間を取らせたくないし……

[レミュアン] 教えてちょうだい。

[レミュアン] 私の探してる「お客さん」はどっちへ向かったのかしら?

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