aklib_story_この炎が照らす先_FC-5_祝福の歌_戦闘後

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この炎が照らす先_FC-5_祝福の歌_戦闘後

フィッシャーが流民たちを制圧し、リードに尋問を行う。アルモニは自らの二重スパイとしての身分が露呈するリスクを知りつつも、救出に向かうことを余儀なくされた。


[ターラーの流民] ダメ、早く逃げて! こっちにもいるわ!

[ターラーの流民] くそっ、奴らこのキャンプを取り囲んでいるのか?

[ヴェン] ううっ……

[特別行動隊兵士] 動くな。

[ヴェン] わ、わかりました。う、動きませんから……この刀、少し近すぎやしませんか……手が滑ったりしませんよね?

[ヴェン] ……

[ヴェン] (小声)た、助けてくれリードさん、どうすればいい!?

[リード] ……これだけの大人数が相手では、強行突破は難しい。

[ターラーの流民] うっ……あぁ……棍棒が叩き切られた?

[リード] ……彼らは、腕に自信があるみたい……

[リード] 焦って無闇に暴力を振るうんじゃなくて、たしかな力で私たちの抵抗を抑えようとしている。

[バグパイプ] うん、この人たちなかなかやるよ……

[バグパイプ] それにしても、こんな所まで追ってくるなんて……この人たちは何者なの?

[バグパイプ] あれ……あの人! うちあの人を見たことがある。

[バグパイプ] 数日前、うちらがあの「亡霊兵」たちに遭遇した時だよ。

[特別行動隊隊長] ……

[バグパイプ] ってことは、おめーさんたちトレント郡の駐屯軍じゃないってことでしょ。だったらここの人を逮捕するのは越権行為だよ。

[バグパイプ] おめーさんたちが規則を守らないってんなら、うちらも本気になるしかないからね。

[特別行動隊隊長] 「規則を守らない」のは、お前も同じだろう。その破城矛から弾薬がすでに取り除かれているのなら、お前は戦場から離れるべきではないのか? 元兵士よ。

[バグパイプ] でも、ここはそもそも戦場じゃないよ? 焚き火だってまだ消えてないし……

[リード] ──危ない!

黒い短刀が音もなく抜き放たれた。鋭い刃は光を反射せず、ただ煙のような残像が尾を引くのみだった。

短刀は威嚇するようにバグパイプの喉に向けられただけで、それを握る者の視線は最初から最後まで、リードから離れなかった。

リードは相手のその鋭い目から、この状況のすべてが自分を目的とするものだということを明確に読み取った。

[フィッシャー] 貴方の槍は、燃えているべきではありませんか?

[リード] ……

[フィッシャー] 無駄な抵抗をするより、もっと賢い選択を──武器を下ろし、私の来訪の理由を尋ねた方がいいと思いますが。

[フィッシャー] 私はターラー人に対する敵意はありませんし、報復として民間人を傷つけるつもりなんてもっとありません。みなさんを災いから守るという立場において、私と貴方は同じ側に立っているはずです。

[フィッシャー] こちらは政府の公的文書です。

[バグパイプ] えっ……これって――市議会の調査命令?

[バグパイプ] ……

元ヴィクトリア兵は構えていた武器を下ろした。

[フィッシャー] 私はトレント郡市議会の決定に従い、例の放火事件において、見落とされた疑問点に関する調査を行っています。

[リード] ……私に他の選択肢はないということ?

[幼いターラーの流民] うっ、うう……

[監視兵] ──何だ? 静かにしろ。

[幼いターラーの流民] ……(すすり泣く)

[ヴェン] ……

[ヴェン] はぁ、なんてことだ。

[ヴェン] これまでずっと、死ぬならせめて遺書くらいは書かなきゃいけないと思っていたのに……

[ターラーの流民] お前とっくに書いてたはずだろ。

[ヴェン] 逃げ出したばかりの頃には書いていたさ。でもここ数日は嬉しいことばかりだったもんで、そいつを破り捨てちゃったんだ。本当に後悔してるよ。

[セルモン] 黙れ、ヴェン。アタシらはまだ終わってねぇ。

[ヴェン] 一人残らず拘束されて、武器も全部奪われたんだぞ。死を待つ以外に何ができる?

[ヴェン] ハァ……尋問か、なんて恐ろしい。尋問を受けたターラー人が生きて帰ってきたなんて話、聞いたことがあるか?

[ヴェン] リードさんはとてもいい人だけど……彼らは彼女から何を聞き出そうとしているんだ?

[ヴェン] 私たちはお互いのことを知り尽くしてる、でもリードさんについては……彼女がどこから来たのか、前は何をしていたのか、私たちは誰一人それを知らない。

[セルモン] なんだよ、アンタあいつを疑ってるのか?

[ヴェン] 違う違う、そんなつもりじゃなくて……私はただ……

[ヴェン] ハァ……セルモン、怖がるくらいは許してくれ。

[ヴェン] ここからまだ焚き火の明かりが見える……私たちは一体どれくらいの間、夜に火を見ていなかったんだろうね?

[ヴェン] ……私は本当に逃げ切れたと思ってたんだ。

[ターラーの流民] 俺たちゃ何を勘違いしちまったんだか……お前ときたら、商売の元手になるものを貸してくれなんて相談までしてきてさ。そんで俺は……羽獣肉の燻製でも作ってやろうかって約束したんだっけ?

[セルモン] ったく……いつまでごちゃごちゃ言ってんだよ。どうにかして様子を見に行くぞ。

[ヴェン] え、どうやって? それに、見てどうなるっていうんだ?

[セルモン] ……アタシは悔しいんだ。

[セルモン] アンタのため息ばっか聞くのはもう嫌なんだ。ターラー人居住区の交差点にいる時も、村の脱穀場を通る時も……そこら中でため息ばかり……もううんざりだ。

[セルモン] ……いや、もういい。とにかく、どうするかなんていちいちアタシに訊くんじゃねぇ、自分の頭で考えることくらいできるだろ?

[セルモン] 今からアタシがあの見張りの奴らの注意を引く。アンタが何をすべきかは、自分で考えろ。

[フィッシャー] リラックスしてください、「リード」さん。これは、ただの雑談にすぎませんから。

[フィッシャー] 暖かな焚き火に、夜の羽獣の鳴き声……こんな環境は実際の尋問室よりもずっと心地がよいものだと思いませんか。

[リード] ……

[フィッシャー] 沈黙ですか? 沈黙を選ぶのも結構ですよ。貴方のお好きなようになさってください。

[フィッシャー] 今までの近隣地域の駐屯軍による無礼な行為が、貴方を警戒させているのかもしれませんね、彼らに代わってお詫びを申し上げます。

[リード] ……キミはダブリンの調査をしたいの? ここの人たちは、誰一人ダブリンとは関係が──

[フィッシャー] 釈明は不要です、そういった事情は当然把握しておりますので。

[フィッシャー] 片田舎の駐屯軍が、一度受けた襲撃に対し過度に執着し、適当な十数人のターラー人に「ダブリン反乱軍」というレッテルを貼ったのは事実です。

[フィッシャー] ですが、駐屯軍が犯したその過ちも、この分厚いファイルの中では取り立てて言うほどの価値はないのですよ。もちろん、貴方の状況は他の方々とは少々異なりますが……

[フィッシャー] ……私は、貴方がこういったトラブルから抜け出すための手助けができます。

[フィッシャー] ここまでの逃亡は、きっと容易ではなかったでしょう。

[リード] ……もしあんな厳しい規則さえなければ、彼らが逃げる必要なんて最初からなかった。

[フィッシャー] いえ、彼らの話ではありません。貴方ご自身のことについて語っていただきたい。もっと以前からの逃亡についてお聞かせください。今は私たち二人だけですから。

[リード] ……何を言ってるかわからない。

[フィッシャー] 私は──

[フィッシャー] かつての貴方の身分について訊いているのです。

[フィッシャー] 一人の一般人が、いかなる記録にも名前が載っていないのですよ。身体検査、移動都市の出入り、税金の納付等のいかなる記録にも。

[リード] ……ターラー人はいつも迫害される。ヴィクトリアの記録に私たちの名が見つからなくても、不思議じゃないでしょう。

[フィッシャー] では、昨年の秋に起きたヒロック郡における動乱の際、貴方はその現場にいらっしゃいましたか?

[フィッシャー] 昨年五月に起きたペニンシュラ郡襲撃の際は?

[フィッシャー] 私が訊いているのは貴方の行動についてのみです。

[リード] ……

[フィッシャー] もし一人の人間が、自身の本名、自分がどこからやってきたのか、どんな人なのか言えないのならば……

[フィッシャー] それはまるで、「影」のようではありませんか?

[バグパイプ] チェンちゃん、この人たちが何者か大体予想ついてるんじゃない?

[チェン] ああ。先ほどの戦い方からして普通の兵士ではない。尋問も非常に特殊なやり方だった。

[チェン] それに、こいつらを率いている者は多くのことを知っているはず。だから我々に……私にこれほどまで遠慮している。

[バグパイプ] やっぱりそうだよね。うちらはここで見張りをつけられてるだけなのに、ターラー人たちは腕を縛られてるなんて不公平だよ……

[バグパイプ] でも彼はなんでチェンちゃんのことがわかったんだろう?

[チェン] ……諜報部門だからだろう。まさか連中が動くとはな。

[バグパイプ] 諜報部門? 諜報部門がどうしてリードを訪ねてきたの?

[チェン] 恐らく彼女の身分が特殊だからだ。

[チェン] だから彼女はこれまでずっと単独行動にこだわり、誰も巻き込もうとしなかったんだ。

[バグパイプ] あぁ〜! なんだか嫌な予感がするべ……彼らは本当にターラー人とまともに話をしてくれるのかな? 暴力を振るったり、本心と違うことを言うよう脅したりしないかな?

[チェン] 声を落とせ。

[チェン] ……まぁ、ヒロック郡に関するキミの報告書にどう書いてあったかは覚えている。

[バグパイプ] そうでしょ? あの人は市議会の調査命令を持ってたし、平和的な交渉をするとも、ターラー人に対して敵意はないとも言ってたべ。でも……

[バグパイプ] ……いや、やっぱり信じるべきだよね。彼は議会で決められた執行者なんだし、無茶苦茶なことはしないはず。

[チェン] しかし尋問のプレッシャーは、一般人では耐え切れない。

[チェン] ……学生時代、私たちが組んでいた頃の動きを覚えているか?

[バグパイプ] あっ、そのサインは……

[バグパイプ] 覚えてるべ。危険な源石製品を回収しに行ったあの時、そのサインでやり取りしたよね。

[チェン] 覚えているなら問題ない。

[チェン] リードの身分がどんなに特殊なものであれ、他人の手に落ちて駒となれば、現在の情勢に多くの波乱をもたらすことになるはずだ。

[バグパイプ] うん、それはリード自身もすごく辛いと思う……あの子はなんだか自分の中にある「何か」を必死で振り払おうとしてるみたいだったべ。

[バグパイプ] おめーさんの言いたいことはわかったよ、チェンちゃん。彼女が無事ロドスに戻れるように手助けしよう。

[アルモニ] あら……轍がはっきりと残ってるわね。

[「将校」] どうやら君のお相手が、再び君を招待しようとしているらしいな。

[アルモニ] からかわないでちょうだい。

[アルモニ] だけど残念ね。恐らく今回、私は「招待」という言葉には値しない立場だもの。彼は自分の客人がどんなダンスを踊るかなんて気にもしないわよ。

[アルモニ] 私たちが姿を見せるだけで、その立場を物語るには十分だから。

[アルモニ] ダブリンが哀れなラフシニーを救出に行けば、彼女の正体を白日の下に晒すことになる……私がどちら側なのかを、いよいよ証明することにもなるわ。

[アルモニ] そして彼は知っている……もう一人のドラコが彼の背後にいる公爵の手に渡れば、リーダーの影響力は地に落ちる……それを阻止するために、必ず私が現れるってことをね。

[「将校」] 構わん。私が奴の野心を一掃してやろう。

[フィッシャー] おや……羽獣の鳴き声が止みました。これが何を意味するかわかりますか?

[リード] ……(首を横に振る)

[フィッシャー] そうですか。では、まずは貴方がここ最近関わった事件についての話をしましょう。

[フィッシャー] 貴方は他人に対して深刻な危害を加えたことはありません。駐屯地で起きた火災の時でさえ、備蓄物資の一部が焼き払われただけで、死傷者はいませんでした。

[フィッシャー] ヴィクトリア駐屯軍に対するターラー人の憎悪犯罪は、通常こんな程度のものではありません。それに比べて、貴方のやり方はとても生ぬるい。

[フィッシャー] 貴方がダブリン兵を追い返そうとしていたと供述する目撃者さえもいます。

[フィッシャー] これらについて、貴方自身は認めますか?

[リード] 私が認めるのは、自分が他人を傷つけたくないと思っているということだけ。

[フィッシャー] いいでしょう。貴方がとても良識的な方であるということを、私は信じます。

[フィッシャー] では、先ほどの羽獣の鳴き声が止んだ件ですが……

[フィッシャー] ……どうやらダブリンのご友人が貴方を助けに来たようです。

[リード] ……

[リード] いいえ……だめ。

[リード] 私は戻れない……

[フィッシャー] 戻る? あぁ、それは、影としての生活に戻るということですか?

[フィッシャー] 焼かれた死体に囲まれ、死者の灰を都市へまき散らす生活に戻るということですか?

[フィッシャー] 一人の良識的な人間からすれば、そのような生活は非常に耐え難いことに違いありません。

[フィッシャー] 今、貴方の目の前にはチャンスがあります。貴方自身の選択をすることができるのです。

[フィッシャー] 我々の庇護を受け入れてくだされば、貴方が過去に犯した罪は追及されません。

[リード] ……

[リード] 私は……

[リード] 断る!

逃げなきゃ。みんなの視線から逃げないと。

でもどこまで逃げればいいの?

[チェン] 今だ!

[バグパイプ] りょーかい!

[バグパイプ] 悪いけどおめーさんたち、もっぺんうちの破城矛の力を味わってもらうから!

[チェン] ──

バグパイプは、振りかぶった破城矛で一瞬視界が遮られ、テントが見えていなかった。しかし彼女の背後に立っていたチェンは、その瞬間目を大きく見開いた。

尋問者を覆っていたテントは、音もなく灰と化した。

炎が闇夜に噴き上がり、そしてすぐに消え去った。

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