aklib_story_この炎が照らす先_FC-3_引火_戦闘後

ページ名:aklib_story_この炎が照らす先_FC-3_引火_戦闘後

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この炎が照らす先_FC-3_引火_戦闘後

負傷者を落ち着かせ、皆は村でそれぞれ夜を過ごす。バグパイプとリードはそれぞれの過去について話す。その頃、アルモニはリードの仕業と思しき放火の情報を偶然耳にする。フィッシャーは彼女のその一瞬の反応を見逃さなかった。


[ヴェン] ふぅ、こんなに何日も逃げ回ってる最中に、屋根の下でゆっくりと温かい食事を取れるなんて思ってもみなかったよ。

[ヴェン] あのバグパイプって子は本当にいい子だね。さっきも彼女が作った料理が美味しいとみんなで絶賛していたところなんだ。

[チェン] ああ、彼女の料理の腕は確かだ。

[チェン] ところで、ここに留まることについて、キミたちの中で話し合いはうまくいったのか?

[ヴェン] うん。道を急ぐのが難しい人たちはみんなここに残る。数日の間はまず倉庫をいくつか借りて身を潜めてもらうことになるね。

[ヴェン] 逃亡者がキャラバンを襲って、結局何も奪えなかったなんていう話はよくあるからね、警察も気にしないよ。

[ヴェン] 数日経って、ラジオで何も報道されなければ……もう隠れる必要もなくなって、ここで自分たちの家を建てられるようになる。

[ヴェン] うーん、でも鉱石病の人たちは、集落から少し離れて住まなくちゃならないかも。

[チェン] ここの住民はとても親切だな。

[ヴェン] ハァ、本当だよ。私たちが逃げ出した時、すぐにここみたいに受け入れてくれる人がいたら、今みたいなことにはならなかったのに。

[ヴェン] だけど誰も恨めないよ。以前だったら、集落に逃げてきた人を少し受け入れるくらい全然大したことじゃなかったけど、今はみんなの暮らしもますます厳しくなってきたからね。

[ヴェン] セルモンだって、もしあの子たち兄妹を受け入れる場所があれば、彼女も集落の間を行き来して、各地で問題を起こすこともなかったはずなんだ。

[ヴェン] 今晩、私たちは村に泊まれるけど、セルモンは村の外に隠れるって言い張ってるだろ? 彼女はこの村の住民から牧獣を奪ったことがあって、そのお爺さんと顔を合わせるのが気まずいんだ……

[ヴェン] ……ハァ、今のは聞かなかったことにしてくれ。彼女に知れたら、またプライバシーの侵害なんて言われてしまうからね。

[モラン] こんばんは……

[ヴェン] あれ、モラン? もう外は暗くなってるのに、どうしたんだい? まだ明かりがあるうちに送るよ……

[モラン] ありがとうございます。でももう暗闇の中を歩くのには慣れているので……

[モラン] ……あの、リードさんは?

[チェン] リード? 彼女は一人で外に出ているが。

[ヴェン] リードさんも何か思うところがあるんだろうか……ここに来てからセルモンは彼女と話そうとしないし。

[チェン] バグパイプが様子を見に行っているから心配はいらないだろう。

[チェン] いや……言い直そう。リードが煙たがらないかが心配だ。

[バグパイプ] わぁ、ごめん!

[リード] ……気にしないで。

[バグパイプ] いやぁ、ちゃんと見てなかったよ。まさかここに人がいるだなんて思わなかったべ。鐘が鳴るとすぐに辺りが真っ暗になるし、目が慣れるまで時間がかかるんだ。

[バグパイプ] ぶつかったのがおめーさんで良かったべ。これがもし他の人なら、突き飛ばしちゃってたかもしれないし。

[バグパイプ] でも、今日の夜は見張りは必要ないってみんな言ってなかった?

[リード] 私はただ……外の空気が吸いたくて。

[バグパイプ] ああ、干し草のいい香りがするもんね。

[リード] ……干し草?

[バグパイプ] そう、あっちに干し草の山があるんだべ。うちもこの香り久しぶりに嗅いだから、もっと近くで嗅ぎたくて外に出てきたんだ。

[バグパイプ] 昔、軍学校の受験勉強で、理論とか知識を詰め込もうとしてたら、頭が痛くなってきてさ。でも干し草の山に寝っ転がると、気持ちが楽になったんだべ。

[バグパイプ] お母ちゃんには、そんなのはサボりだ、勉強が辛いからって逃げるのは良くないって言われたよ……でも頭にたくさん詰め込みすぎると疲れちゃうべ。

[リード] ……そうだね。

[バグパイプ] だからさ、ほら手を出して?

[リード] えっ……

[バグパイプ] ほらほら、一緒に寝っ転がるべ! 少しだけだからさ!

[バグパイプ] うちは考えるのが苦手だから、おめーさんの力にはなれないかもしれないけど、干し草ならきっと力になってくれるよ!

[バグパイプ] よいしょっと──!

バグパイプは、体を投げ出すようにして干し草の上に横たわると、先ほど農家の人から教わったばかりの民謡を軽く口ずさんだ。

温かく湿り気のある夜風が吹き抜けてゆく。リードはバグパイプの言う通りに、深く息を吸った。

しかし彼女が感じたのは干し草の香りではなく、湿っぽい泥と埃の匂いだった。

[バグパイプ] 三年も故郷に帰ってないと思うと、なんだか不思議な気分だべ。

[バグパイプ] 一年家に帰らないだけで、大切な物事を丸々逃しちゃうんだべ。こうしてる間にも、うちの畑は耕されるのを、麦は刈り取られるのを待ってるだろうし……

[バグパイプ] 家からの手紙だって、次ロドスに戻った時じゃないと受け取れないんだよ。

[リード] キミは……家が恋しいの?

[バグパイプ] もっちろんだべ。おめーさんは? つーかおめーさんはヒロック郡の人?

[リード] ……違う。

[リード] でも以前はヒロック郡と似たような都市に住んでいた……濃い赤色のレンガの壁、灰色の歩道、窓の外まで蔓に覆われた二、三階建ての家……

[リード] 私は……あの平穏な歳月がとても懐かしい。

[リード] あの頃、家にはたくさんの古い本があって、その中には写本なんかもあったんだ。他の人の話を聞かなくて済むからって、私はいつも書斎に隠れて扉を閉めていた。

[バグパイプ] へぇ〜、おめーさんの家には人がたくさんいてうるさかったの? それともよくお客さんが来てたとか?

[リード] ……違う。ただ隠れていれば多くのトラブルを避けられたから。

[リード] 書斎の窓からは通りが見えて、仕事を終えた両親が帰ってくるのも見えた……

[リード] できることなら、私はあそこに戻りたい。

[バグパイプ] あっ、もしかしてその場所はもう……

[リード] うん。

[バグパイプ] ごめん……つらいこと思い出させちゃったかな?

[リード] 大丈夫、ずっと昔のことだから。

[リード] 私は生活を壊されたヒロック郡の人たち、あるいは今ここにいる故郷を追われた流民たちと、それほど変わらないのかもしれない。

[リード] みんな、ここで落ち着くことができれば、また家を建てられるかもしれない……でも、彼らの真の故郷はどこにあるの?

[リード] それと、もっと遠くへ行こうとしている人たちもそう……彼らはどこまで逃げなければならないの?

[バグパイプ] うーん……そんなの一人で考えても答えは出ないべ?

[リード] うん……

[バグパイプ] あ、でも別に考えても意味がないって言ってるわけじゃないよ!

[バグパイプ] 一人で考えても答えが出ないんなら、うちらで一緒に考えようよ。うちは昔、わからない問題があるといつもチェンちゃんにしつこく訊きに行ってたべ。

[バグパイプ] その後も、しょっちゅう隊長に面倒かけちゃって……みんな口じゃめんどくさいって言うけど、毎回話に付き合ってくれて、問題解決の力になってくれたんだべ。

[バグパイプ] おめーさんはどう? 本音を言える相手とかはいる? 例えば姉妹とか同級生とか戦友とか……

[リード] ……

[リード] 私には……姉がいる。

[リード] だけど……

[バグパイプ] あんまり仲良くないの?

[リード] ……いいえ、なんでもない。こんなこと話すべきじゃなかった。話すべきじゃ……

[バグパイプ] おめーさん、「いいえ」とか、否定する言葉が口癖になってるってのはセルモンの言ってた通りみたいだね。

[バグパイプ] でも、おめーさんが否定するのは、自分のことだけなんだよね。まるで……うーん、うまくは言えないけど、何かから必死に逃れようとしてるみたいだべ。

[リード] ……前に、似たようなことを言われた覚えがある。

[バグパイプ] え、そうなの?

[リード] 彼女は……私を救った後で、私は死を求める必要なんかないし、自分の運命から逃れられるはずだって言ったんだ。

[バグパイプ] Outcastだね、確かにあの人が言いそうなことだよ。

[リード] どうして彼女ともっと言葉を交わそうとしなかったのか……私は今でも後悔してるんだ。

[リード] なぜ私を助けたのか、ずっと訊きたいままで。

[リード] 彼女は……私の中に何を見たんだろう。

[バグパイプ] ハァ……Outcastがどう答えるかはうちにもわかんないべ。

[バグパイプ] でもリード、人に尋ねる前に、おめーさんは自分に尋ねたことはあるの? おめーさんは自分の中に何があったんだと思う?

[リード] 自分の……中に?

[バグパイプ] あっ、あそこ。誰か出てきたよ。

[リード] あのおどおどした歩き方は、きっとモランだ……彼女は夜目がきかないから。

[バグパイプ] ええっ、じゃあどうして外に出てきたんだろ?

[バグパイプ] モランさん! 手伝おうか?

[バグパイプ] あっ、そこで待ってて、うちらが行くから。

[モラン] ……ありがとうございます。

[モラン] あの、リードさんはどこですか? 外にいると聞いたのですが。

[リード] ここにいるよ。

[モラン] ……すみません。あの……私もあなたたちと一緒に行ってもいいですか?

[モラン] どこだろうと構いません。仕事ならできますし……戦うことだってできます。

[リード] ……

[リード] キミは……戦いたいの?

[モラン] はい。みんなが私はもう長くはもたないと言います。どこかの片隅でひっそりと死ぬしかないと。

[モラン] でも、私はそんなの嫌なんです。

[モラン] 「ターラー人であるお前が生き延びたいのなら、仕事を変えて低い賃金を受け入れろ」、「鉱石病患者のお前が生き延びたいのなら、ここから出て行って、感染者地区へ行け」……

[モラン] こんな言葉はもう聞きたくありません。

[モラン] リードさん、以前の私であればこんなふうには思いませんでした。ですが、私はあなたに出会って変わったんです。

[モラン] ……あなたも感染者だと聞きました。それに、あなたがセルモンや他の人を説得して、私たちをここまで連れて来てくれたのだと。

[リード] キミも……ヴェンと同じように、私を信じるの?

[モラン] もちろんです。だからどうか私のことを重荷だなんて思わないでください。私は……私はあなたやみんなの足手まといになりたくないんです。

[モラン] 私にできることなら、何でも任せてください。私のような者は、もう失うものなど何もありませんから。

[モラン] もし他のターラー人のために少しでも何かの役に立てるなら、私はやりたいんです。私の足がまだ前へ進むことができるなら、あなたたちと歩きたいんです。

[リード] ……

[バグパイプ] うちはいいと思うよ。リード、とにかく、まずは一緒に歩こうよ、いい?

その質問は、赤毛のヴイーヴルにとってリードの回答を要するものではなかったのだろう。なぜなら彼女は、答えを聞く前にリードの手を引いて歩き始めていたからだ。

リードは後ろを振り返った。モランは夜盲症で、夜は誰かの案内が必要であることを彼女は知っていた。

ためらう暇もなく、リードはモランに手を差し伸べた。

[リード] ……一緒に歩こう。

[情熱的な商人] アルモニさん、ようやくおいでになりましたか。ひょっとしたら、本日はお会いできないのかと思っていましたよ。

[アルモニ] 子爵様主催のパーティーですもの。欠席するはずがないでしょう?

[情熱的な商人] それは間違いない。あなたはトレント侯爵のご友人であり、子爵様の賓客ですからね。

[情熱的な商人] あなたのご紹介のおかげで、私の例の商売はうまくいったのです。あなたにお礼を言う機会をずっと待っていたのですよ。

[アルモニ] お気になさらず、ホールさん。

[アルモニ] 私は貴族の身分でもなければ、大した資産も有してはおりません。ただ御偉方に代わって駆け回るトランスポーターにすぎませんよ。

[フィッシャー] (グラスを掲げる)

[アルモニ] あの方は……

[情熱的な商人] 市政部門のお偉方のお気に入り、フィッシャー氏ですよ。

[アルモニ] あら? これまで彼の話はあまり耳にしませんでしたが。

[情熱的な商人] フィッシャー氏がこの郡に異動してきたのはここ最近のことです。彼のような若者がスピード出世するチャンスを得るには、人一倍の努力が必要でしょうね。

[アルモニ] フフッ、誰しもそういうものですよ?

[情熱的な商人] いやいやご謙遜を。

[情熱的な商人] そうそう、何人かの友人に聞いたのですが、最近は大公爵たちの軍が頻繁に動員されていて、各大公爵領の中枢都市いずれもが戒厳令を敷いているとのことです。

[情熱的な商人] あなたはそういった情報によく通じておられますからな……教えていただけませんか、戦争は目前なのでは?

[アルモニ] 各新聞社はいずれもそう予測しているのでは? 公爵たちの艦隊はすでにロンディニウムの城壁外に到着しているわけですし。

[情熱的な商人] 私の関心はサルカズの動向ではありませんよ。私が言っているのは大公爵同士の……ウォッホン、まあ聞いた話、ただの噂ですがね。

[情熱的な商人] ここ最近、大量の源石燃料がトレント郡に流れています。侯爵様はかねてよりカスター公爵と友好関係を築いていますが、トレント郡は鉄公爵の領地とも隣接している……

[アルモニ] あら、ホールさん、都市をまたぐ燃料取引には審査が必要ですわ。あなたはきっと市政の上の方にとても仲の良いご友人がいるのですね?

[情熱的な商人] ハ……ハハッ、単なるビジネスの関係にすぎませんよ。

[情熱的な商人] アルモニさん、戦争にはさほど興味がないようですな……ところであなたは今日、他の都市から駆けつけた──そうでしょう?

[情熱的な商人] 幸い、来られる時には何事もなかったようですが、お帰りの際は、引き続きお気を付けください。

[情熱的な商人] 移動都市の外の集落はとても治安が悪化しており、時折反乱分子が出現すると聞きました。数日前も、何者かによる放火事件があったばかりです。

[アルモニ] あなたが注目するほどの反乱分子とは、一体どんな人でしょうか?

[情熱的な商人] 注目というほどじゃありません。田舎者のいる場所では似たような話なんていくらでもありますからな。

[情熱的な商人] 妙なのは火なんです……ハハッ、本当かどうかわかりませんので、田舎の珍しい噂話だと思ってお聞きいただければと。

[情熱的な商人] 目撃者によると、その火は普通の火とはどこか異なっており、爆発のような威力であったにも関わらず、現場に源石爆発物の痕跡などはなく、消し止めるのも極めて困難だったと言うのです……

[アルモニ] ……

特別な火。

ただの偶然である可能性は高い。しかし似たような特徴の火を彼女はよく知っている。

まさか……ラフシニー?

アルモニは愕然とした。

「将校」の忠告が、彼女の心の奥底に眠るわずかな懸念を呼び起こした。あのロドスという名前の艦船がヴィクトリアに入ってから、彼女はしばらくラフシニーに関する消息を得られていなかった。

ロドスの隠密行動の裏には間違いなく協力者がおり、彼女の当初の想定を上回る相手であることは明らかだった。

そしてそれは、ラフシニーがロドスに身を置く限り、ヴィクトリアの他の勢力にも容易に見つからないということを意味していた。

しかしそのラフシニーが姿を現わした――つまり、彼女はあの船を離れたのだ。

なぜラフシニーはあの船を離れたのか? そしてなぜエブラナからこんなにも近い場所に現れたのか? その理由は――

アルモニの背中に、一つの視線が向けられた。

アルモニがこの宴会場に足を踏み入れてから、彼女の一挙手一投足は当然ながら注目されていた。

しかしこの瞬間初めて――その視線ははっきりと彼女に焦点を定めたのだ。

[情熱的な商人] アルモニさん?

[アルモニ] ……え?

[アルモニ] すみません……今夜のダンスパーティーについて考えていました。何色の耳飾りをつけていけばいいと思いますかしら?

[フィッシャー] ……関連書類、および私のすべての報告は、すでにご覧になられたことと思います。

[フィッシャー] 我々はすぐに行動を開始すべきかと……

[衝立の向こうの女性の声] 精が出るわね、若者よ。ところで、卓上にあるウイスキーボンボンはもう味わったかしら?

[フィッシャー] ──!

[フィッシャー] ……ごきげんよう、カスター公爵殿。まさか貴方がこのパーティーにお越しになるとは思いませんでしたよ。その上わざわざこちらでお待ちになっているなんて。

[カスター公爵] こんな盛大なパーティーを見過ごせるはずないでしょう。仕切りの奥で演奏を聞いているだけでも、愉快な気持ちになるもの。

[カスター公爵] あなたも楽しんでくれると良いのだけど。

[フィッシャー] 私は……まだ仕事がございますので、気を緩めるわけには──

[カスター公爵] 私たちが行う一切の努力は、つまるところ皆に安らかな生活を謳歌してもらうため。

[カスター公爵] 諜報員は監視役として、平和な時代でも神経をとがらせておく必要がある。でもいつかは安らかな日々が得られるものよ。

[カスター公爵] そういえば、身体の具合はいかがかしら?

[フィッシャー] ……公爵殿のお気遣いに感謝いたします。まさか私のような一介の諜報員の感染状況にまで関心を払っておられるとは。

[フィッシャー] ですがどうか──

[カスター公爵] 緊張しなくてもいいわ、何かを疑っているわけではないの。さっき私が言ったように、あなたはよくやっているわ。

[カスター公爵] 今回の任務が無事終わった後、その褒美としてあなたが望むのは、昇進かしら、それとも引退かしら?

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