aklib_story_潮汐の下_SV-7_守護者_戦闘後

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潮汐の下_SV-7_守護者_戦闘後

スカジは心を決め、司教の招待を受けて教会へと向かう。その頃、審問官は教会を爆破することを決めていた。

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[アニタ] 今日はいっぱい拾えたんじゃない？ 私とペトラおばあさんの分、それからベンチの分に……

[アニタ] うん、歌い手さんの分も。歌い手さん、きっと帰ってくるよね？ お腹すかせて帰ってきたら、可哀想だもん。

[アニタ] 残りは……まだ、こんなにいっぱい！ 箱に入れておこうっと。

[アニタ] えっ、暖炉おじさんも欲しいの？ んー、それじゃ先に、おじさんにあげるね。

[アニタ] わあっ、おじさんの腕に絡まってるのって海藻でしょ！ それ、私にちょうだい！ 歌い手さんから教わった……えっと、お酒！ 海藻のお酒を作ってみたいの。

[アニタ] ……あれ、ベンチは？ またどこかに行っちゃった？

[幼い住民] あぅ……あぅ～……

幼い子どもの目の前に、赤い人影が現れる。

[幼い住民] うぁ……うた……あぅ～？

[スカジ] ……そうやって掴んじゃダメよ。

[スカジ] これ、あげるわ。

[幼い住民] んわぅ……

[スカジ] ……かじるのもダメ。それは食べ物じゃないのよ。

[幼い住民] きわく、きわく……

[スカジ] ……彼女を呼ぶのはやめて。

[スカジ] 私の代わりにハープを持っていって。彼女に渡してほしいの。

[スカジ] 彼女に伝えて……ううん、あなたじゃ伝えられないわね。

[スカジ] それに……これはまだ、お別れじゃない。

[スカジ] 聞きたいことがあるから行くの。戻ってきたら、自分で言うわ。

スカジは視線を高所の教会へと向けた。残りの道をどう歩けばいいのか、彼女ははっきりと理解していた。

[審問官アイリーニ] 上官、我々は今から山に爆薬を設置しに行く、ということでよろしいですか？

[大審問官] ああ。

[審問官アイリーニ] ……先ほど向こうで、何者が教会に入っていくのを見ました。

[審問官アイリーニ] この都市で出会ったあのよそ者に……よく似ていましたが……

[大審問官] ……

[審問官アイリーニ] あの……上官、彼女は一体何者なのでしょう？

[大審問官] エーギルだ。

[審問官アイリーニ] 彼女は恐魚と戦っていました。

[審問官アイリーニ] ……私たちの他に、あの怪物を知っていて、あれとの戦いを専門とする人がいたなんて……

[審問官アイリーニ] もし教会を爆破すれば……彼女も巻き込まれてしまうのでは？

[大審問官] 元凶を解決することなく、この場所を破壊したところで無意味だ。だが、あの場所が奴らの温床となる以上、選択肢などない。

[審問官アイリーニ] そう……でしょうか？ ならば我々は、ここに異常をもたらした元凶を知る必要があると思うのですが……上官にも、確証がお有りでないのですか？

[大審問官] 自分の任務以外のことは尋ねるな。

[審問官アイリーニ] ……わかりました。

[審問官アイリーニ] それと、上官はお気になさらないと思いますが、それでも言わせてください……この都市の耐久構造では、爆発の威力に耐えることはできません。

[審問官アイリーニ] 街の南半分は崩壊する危険性がありますが、ここの住民はそれを知らないのです。

[大審問官] 続けろ。

[審問官アイリーニ] わ、私は……

[審問官アイリーニ] ……

[審問官アイリーニ] 私は、彼らを避難させたいと思っています。

[審問官アイリーニ] たとえ、上官にとっての彼らが、奇妙で、問題があり……

[審問官アイリーニ] ……浄化されるべき存在だったとしても。

[大審問官] 審問官！

[審問官アイリーニ] ひっ……！

[大審問官] お前の職責は何か、言ってみろ！

[審問官アイリーニ] はい！

[審問官アイリーニ] 「イベリアの国家存続のため、イベリアの敵と戦うため、イベリアの潔白と美徳を守るため、私は剣と灯りを高く掲げる！」

[大審問官] ならばお前は、彼らに判決を下さねばならない！

[審問官アイリーニ] 判決？ 彼らに……死刑を言い渡すのですか？

[審問官アイリーニ] 上官、昔あった歌を、最後に聞いたのはいつですか？ あのレコードはすべて壊れていますよね？ あなたの機械も、長い間ほこりを被っていますよね？

[審問官アイリーニ] 私はあの歌を聞きました。あのエーギルが、彼らのために歌うのを聞いたのです。

[審問官アイリーニ] あのような歌こそ、本来イベリアにあるべきものだと……私は思います。

[審問官アイリーニ] だからこそ、彼らを殺す前に真実を知りたいのです。上官が黒幕を見つけ出したいとお思いになるのと同じように。

[審問官アイリーニ] 確かに彼らはまだ変異する可能性を秘めていますが……その時は、必ず私の手で彼らを浄化してみせます。ですが今は……今は、彼らを避難させてやりたいんです。

[審問官アイリーニ] 上官、もしご許可をいただけるのなら、私は今すぐ彼らの避難誘導に向かいます！

[大審問官] それがお前の判決か？

[審問官アイリーニ] わかりません、上官！

[大審問官] アイリーニ、お前の判決は、目の前の人々だけに下されるものではない。それは同時に、他の人々への判決にもなりうるのだ！

[大審問官] お前が怪物に生の判決を下せば、人々には死の判決が下されることになる！

[審問官アイリーニ] 承知しております！ そうした判決を、私はこれまで何度も下してきました！

[大審問官] お前の判決は、災いを阻止するものかもしれない。しかし同時に凶兆をもたらす可能性もあると忘れるな！ 一人を救うため百人を殺すことも、一人を殺して百人を救うこともありうるのだ！

[審問官アイリーニ] ……承知しております、上官！

[審問官アイリーニ] 判決がもたらすであろう利害も、道徳と経典の間にある矛盾も……私はすべてわかっています！

[大審問官] 私は、お前にそんなことを尋ねたか？

[審問官アイリーニ] ……

[大審問官] お前に訊いていることは一つだ……アイリーニ、お前はこの責任を背負うことができるのか？

[大審問官] お前が苦しみをもたらすならば、お前もまた苦しみを受けなければならない。お前が下した罪悪の判決よりも、多くの苦しみをだ。

[大審問官] お前にその度胸があるのか？ 精神的な苦痛を受けた時、お前の信仰は揺らぎはしないか？ もし、失敗して悪い結果をもたらしたとしても、もう一度立ち上がることができるのか？

[審問官アイリーニ] ……私は……私は揺らぎません。私には、背負う覚悟があります。

[審問官アイリーニ] 裁判所の一員となった時、既に覚悟をしていました。私には、できます。もし間違いを犯すことがあれば、処罰を受けましょう。私にはその義務があるのですから。

[審問官アイリーニ] 上官！ 私は――

[大審問官] もう十分だ。

[審問官アイリーニ] で、ですが……

[大審問官] 十分だと言ったはずだ。お前の職責を果たせ、アイリーニ。

[審問官アイリーニ] ――はい、上官！ 直ちに地域住民の避難誘導へ向かいます！

[審問官アイリーニ] それから、上官……残りの爆薬は、サルヴィエント全体を爆破するのに十分な量ですよね。

[大審問官] ああ。

[審問官アイリーニ] つまり……

[大審問官] その必要が生じた場合、お前の判決は私が取り消す。

[審問官アイリーニ] ……はい。

[審問官アイリーニ] では、行って参ります、師匠。

アイリーニは風のように走り去っていった。

大審問官の姿が、海辺の岩礁の如くそこに佇む。

疑うことを知った時、審問官は初めて、その答えを探求する機会に恵まれる。しかし、醜い悪意や幻惑をほとんど経験してこなかったうら若き少女には、すべてが未だ時期尚早だった。

彼女は現実に打ちのめされ、その中で鍛えられる必要がある。失敗と挫折を経験しなければならないのだ。

苦しみを知り、現実離れした理想を捨て去ってこそ、彼女は忍耐を学ぶことができるのだから――

......

……待て。

[大審問官] 誰だ？

[？？？] ごきげんよう、大審問官殿。

[司教] おや、誰かと思えば。

[司教] ようこそ、吟遊の歌い手よ。