aklib_story_潮汐の下_SV-2_歌い手_戦闘前

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潮汐の下_SV-2_歌い手_戦闘前

ほとんど廃墟と化した都市には、奇妙な住民が住んでいた。滅多に訪れないよそ者を彼らは警戒し、冷遇し……そうして、双方が衝突し合う。


p.m. 3:23 天気/曇天

イベリア サルヴィエント

とうの昔に息絶えた都市が、潮風香る塵の中埋もれている。

[スカジ] 地図にある場所は……ここね。

[スカジ] ……嫌な臭い。それに、気持ちいいとは言えない空気だわ。

[スカジ] こんにちは。

[男性住民] ……

[スカジ] すみません――

[別の男性住民] …………

声に答える者はなく、振り返る者すらない。彼らは項垂れて、ひたすら黙りこくっている。そうして一様に目を開いたまま、微動だにしなかった。

彫刻と見紛うばかりの光景だ。けれど、彼らは間違いなく息をしていた。ゆっくりと。

[スカジ] ……

[スカジ] ……ここには怪物がいる、ですって?

彼らは皆、人にしか見えない姿をしていた。ひどく痩せこけ、ぼろを身に纏っていることを除けば、道中で出会ったイベリア人と何ら違いはない。彼らがホセの言う「怪物」だとは到底思えなかった。

[スカジ] 人しかいないみたいだけど。

[スカジ] (イベリア語)

[スカジ] 今はこんな言い方しないのかしら?

[スカジ] (発音を少し変えたイベリア語)

[スカジ] ……

答える者はいない。

スカジは思わず、ケースの紐を強く握った。

寡黙な人間をお喋りにさせる方法くらい、彼女はいくらでも持っている。しかし何をするにも、そもそも相手が彼女の言葉を理解していなければ意味がなかった。

[スカジ] ……それに、今の私は歌い手だもの。

[スカジ] ホセさんが言ってたわ。歌い手はそんなことしないって。

[???] 九十九……

小さな影が一つ、通りを走り抜けていった。

[スカジ] 今、何か言ってたわね。

彼女は足を速め、人影を追う。

[???] 九十九。

[スカジ] 子供……?

[スカジ] 間違いない……数字を数えてるみたいね。

[スカジ] あっ――

[スカジ] 私からネックレスを盗っていくなんて……

[スカジ] 待ちなさい!

子供は彼女の手をすり抜けると、くるりと向きを変え、路地の奥へと走り出した。

[幼い住民] 九十九、九十九……

[スカジ] もう逃げられないわよ。

[幼い住民] う……あぅ~……

[スカジ] なぜ私の物を盗ったの? ここへおびき寄せるためかしら?

[スカジ] そう……

目の前の子供を見咎めるスカジ。そして彼女は、地面に仕掛けられた罠を踏み潰した。

[スカジ] 落とし穴に、縄まで仕掛けて……残念だけど見え見えよ。三流バウンティハンターの待ち伏せの方が、まだサマになってたわね。

[スカジ] 出てきなさい。

[スカジ] 私もあなたたちに用事があるの。さっさとして。

物陰に潜む「彫刻」が、数体動き出した。彼らはゆっくりとスカジに歩み寄る。

[男性住民A] 妙な奴だ。

[男性住民B] そうだな、トタン。こんな奴、見たことない。

[男性住民A] 俺も、見たことがない。

[スカジ] あなたたち、言葉を話せたのね。

[男性住民A] お前は何者だ?

[スカジ] さすらいの歌い手よ。

[男性住民A] さすらいの歌い手? それは何だ。

[男性住民B] トタン、こいつと話すな。

[男性住民A] 知らない顔だ。妙な服を着ている。よそ者だな。何をしに来た?

[スカジ] 聞きたいことがあるの。

[男性住民A] お前……新品の服を着ているな。

[スカジ] 私の仲間を見なかった?

[男性住民A] それに、強そうだ。腹いっぱい食えているんだろう。

[スカジ] 彼女は私より先にここへ来たはずなの。

[男性住民A] その箱も、重そうだ。

[スカジ] ……楽器なんてどれも重たいものよ。

[男性住民A] 持っているものだって、おかしい。

[スカジ] ここのハープも、これと似たようなものでしょ。

[スカジ] ほら、ちょっと弾いてあげるわ……

[男性住民A] ……ッ! 耳がおかしくなりそうだ。武器に、違いない。

[スカジ] 武器以外の使い方もあるわよ。

[男性住民B] トタン、こいつ、変だ。もう構うな。話すの、疲れた。

[男性住民A] おい。ベンチを放せ。

[スカジ] ベンチ……この子のことかしら?

[スカジ] この子に危害を加えるつもりなんてないわ。ネックレスを持って行かれたから、追いかけたの。大事な物なのよ。

[男性住民A] お前は、何か奪いに来たのか。

[スカジ] ……

[スカジ] 違うわ。私は自分の物を取り返して、それから話の通じる相手を見つけたいと思っただけよ。

[幼い住民] あぅ……う~……

[男性住民A] 俺たちの子供に、触ることは許さない。

[男性住民A] 俺たちの物を、奪うことも許さない。

[スカジ] 何を……

[男性住民A] 俺たちのルールを、破ることも許さない。

[男性住民B] トタン、あまり近付くな。どうするつもりだ。

[男性住民A] あいつは俺たちの子供を傷つけ、俺たちの物を奪い、俺たちのルールを破ろうとしている。

[男性住民B] あいつは、俺たちの姉妹ではないのか? 姉妹には、分け与えてやるべきだ。

[男性住民A] あいつは、違う。

[スカジ] ……話が通じる相手じゃなさそうね。

[スカジ] なら、他をあたるわ。

[男性住民A] 駄目だ。行かせない。

[男性住民B] 待て、トタン……

[男性住民B] うわっ!

[男性住民B] あ、穴が、ある……

[男性住民A] 木枠の穴だ。忘れたのか。

[スカジ] あら、それ本当に役に立つのね。

[男性住民A] よそ者、ここは俺たちの場所だ。お前が来ていい場所ではない!

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