aklib_story_画中人_WR-ST-3_答え

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画中人_WR-ST-3_答え

ロドスに到着したシーは、過去のとある出来事を思い出していた。しかし彼女が今最も気にしているのは「ケルシー」と「ドクター」が何者かということだった。


……秋になった。

子供たちの大好きなサンザシが、甘く実った頃だろうか。

......

……また一日。

あとどのくらい生きられるのだろう?

目を閉じると、過去の色んな出来事を思い出して……

……一晩中眠れない。

[レイ] ……シー?

[レイ] どうしてここへ……?

[シー] ちっとも驚かないのね。

[レイ] この歳まで生きれば、驚くことなんて減るわ……。ゴホゴホッ――だけど歳のことを言ったら、あなたには敵わないわね。

[レイ] 私たち……何年ぶりに会ったのかしら?

[シー] さぁね。数十年ぶりでしょう。

[レイ] ……やっぱりあなた、シーだわ。

[レイ] でもまさか、まだ私のことを覚えてたなんて。

[シー] 私の絵の中で一生を過ごしたかもしれないとは考えないの?

[レイ] いいえ、あり得ないわ。

[シー] 随分自信があるのね。

[レイ] シー。あなたは私を救ってくれた……あなたの絵の中であんなにも長い時間を過ごしたんだもの。はっきり分かるわ。

[レイ] ゴホゴホッ……

[レイ] これはあなたとの賭けよ。私がいつか一目であなたの絵、あなたの天地、そしてあなたを見破れるかどうかを賭けた。

[レイ] でもあの日別れてから、あなたは二度と私に会いに来なくなった。だからもう二度と……あなたとは話せないのだと思ってたわ。

[シー] ……もともと、私とこんな風に話せる人自体が珍しいのよ。

[レイ] ……長い長い時間の過ぎゆく中で、あの日々をよく思い出したわ。あの東屋……天災や飢饉がなく、難民もいない、普通の東屋。

[レイ] まるで夢を見るみたいに……ゴホゴホッ。

[シー] 私は、あなたは素晴らしい画家になるものだと思ってたわ。でもあなたは一生筆を持たなかった。それって私の指南を無駄にしてるんじゃないかしら?

[レイ] 画家なんて気軽に言うけど……あなたに会った後、自信満々で画家を名乗れる人なんているかしら?

[シー] いくらかはいるわよ。まぁみんな……ちょっと変わってるけど。

[レイ] ……じゃあ私はあなたをがっかりさせちゃったかしら?

[シー] さぁね。

[シー] もしかしたら……あなたこそが唯一私を驚かせた人かもしれない。

[レイ] …………

[シー] …………

[レイ] 久しぶりに会ったのに……あまり言葉が出てこないものね。私は年老いて、一生を走り終えた。けれどあなたは、まだあの時のまま……

[シー] 何か言いたいことがあるの?

[レイ] いいえ……私は……今とっても安らかよ。

[レイ] あなたは私の命を救ってくれて、生き延びるチャンスをくれた……そして今際の際にも、こうして会いに来てくれた。

[レイ] 私は十分満足してるわ。シー、顔を見せてちょうだい……やっぱりあの時のままね。

[シー] あなたの目……

[レイ] 私は年老いたわ、シー。長いあいだ病魔に苦しめられた……

[レイ] 今になって訊きたくなったんだけど……知り合いが一人、また一人と死んでいくのを見送るのは、寂しくないの?

[シー] バカなことを。

[レイ] 教えて。あなたはどう思っているの?

[シー] ……たまに名残惜しいと思うときもあるわ。時々、感慨も覚える。

[レイ] ……まぁ、あなたにしては、正直に話してくれた方ね。

[レイ] 前に話した、天災で壊滅した私の故郷のことを覚えてるかしら?

[レイ] 今思い返すと、もう遠い遠い昔のことね……あれは私の記憶の影。だけど、もう私の背中に貼り付いてはいないわ。遠く遙か彼方へと過ぎ去ってしまった……

[シー] …………

[レイ] 私は……あなたの言う通り、一度も筆を取らなかった。

[レイ] もし私が、人生で絵を描くとしたら、私に描けるものといえば――ゴホゴホッ……自分の故郷だけだもの。

[シー] 故郷のことなんて、もう何も覚えてないでしょ。

[レイ] ……そうよ。思い出そうとしても、「婆山町」という名前以外は、何も思い出せないわ。

[レイ] いい思い出なんて何一つないわ。だけど、いつも夢に見るのよ……色んな故郷の姿をね……ねえ、人が一生の終わりに戻りたいと願う場所は、いったいどこだと思う?

[シー] …………

[レイ] ……シー。

[シー] うん?

[レイ] 私に、あの婆山町を描いてくれない?

[レイ] 私は、自宅の側に質屋があったことしか憶えていないのよ。質屋の女将さんはいつも綺麗な服を着ていて、気品に溢れていた。小さい頃、私もあの女将さんみたいになりたいと思っていたの。

[レイ] 村には、変な移動する地面なんかなくて、農地や憩いの場が、まるで好き勝手に生える菜の花みたいにそこら中に連なってた……

[レイ] うっかり遠くまで行ってしまった時は、遠方に山が見えた……

[レイ] あの山……私はよくそこで道に迷う夢を見るの。そこには恐ろしい怪物がいて……天災の雲も、あの山の頂から浮かび上がったわ……私がはっきりと覚えている風景はこれくらいよ。

[レイ] ……私が多くを語らなくても、あなたは感じ取れるんでしょう?

[シー] 当然よ。一つ残らずね。

[レイ] 月日を若い頃に留めておけたらいいのにね。そしたらずっと一緒に山に住んで、私はあなたから絵を教わって、時々あなたに墨を磨ってあげるの……

[シー] …………

[レイ] ねぇ、シー。

[シー] ええ。

[レイ] あなたは多くの変わった出来事や人、それに世の中の移り変わりを見てきたでしょう……?

[レイ] あなたのその目で見てほしいの。私の……ゴホゴホッ!

[レイ] ――私の一生は……幸せだったかしら?

[シー] …………

[ニェン] お、目が覚めたか?

[シー] ……ロドス。

[シー] どうしてあんたが私をここに連れて来たのか、やっとわかったわ。

[シー] ……変な人たちばかりだけどね。

[ニェン] それより麻雀やらねえか? 一人足りねぇんだよ。

[シー] あんたねぇ……早く出てって。私はやらないわ。

[ニェン] はぁ? お前よぉ、昨日は興味津々で一晩中映画を見てたくせに、まだクールな奴を装おうってのか?

[ニェン] でもまぁ、映画が気に入ったなら良かった。私のコレクションはまだたくさんあるからな。

[シー] ……あれは何なの? 適当に貼り付けただけの表紙に、無駄に長いタイトル……目に入るだけでうんざりだわ。早く持って帰って!

[ニェン] そんな言い方はねーだろ!

[シー] ……いくらかプロファイルも見たわ。このドクターって何者なの?

[ニェン] あ? 盗んできたのか? クロージャに見つかってないだろうな?

[シー] あの若い魔族のこと? 彼女なら何も言わなかったから、そのまま通り過ぎたわ。

[ニェン] え……なんで……もしかしてアイツ私にだけ?

[シー] ……ロドス。

[シー] 監察官とロドスはどういう関係なの?

[ニェン] それはまた別の話だ。大丈夫だ、心配するな。レイズは辺境の地へ左遷された身だし、しかも今は基本的にロドスへは来ない。

[ニェン] そんなにあいつが気になるのか? あそこの官僚たちと揉めでもしたのか?

[シー] フッ、あんな小物の監察官なんて気にしてないわ。気にしてるのはあの雷術の大元よ……彼女の師匠、それといつも私たちに睨みを利かせてる老いぼれども。面倒なやつらばっかりよ。

[シー] あいつらは私の絵巻に火をつけ、山河を焼き貫いてまで私を懲らしめようとしたのよ。私はあんたみたいな困り者じゃないのに、誰の邪魔になったか知らないけど、こっぴどくやられたんだから。

[シー] 死ぬほど煩わしかったし、為す術もなかったわ。

[ニェン] ははっ! そんなことがあったのかよ?

[シー] ……ドクターとケルシーがどんな人物か、まだ教えてもらってないわよ。この二人は、あんたがここにいる理由と関係があるの?

[シー] それと、二人は今どこにいるのよ?

[ニェン] ……分かった。全部教えてやるよ。

[ニェン] そうすりゃ……私がどうしてここが好きなのかも分かるはずだ。

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