aklib_story_また会えたね_左に右に

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また会えたね_左に右に

龍門にやってきたシャオヘイは、不幸にもシャオバイやアグンたちと離れ離れになってしまった。ウンの家に一時的に泊めてもらっていた彼は、迷子のペット捜索の任務を受けることとなった。


一日中降り続いていた雨は夜には止んだが、空気は依然として湿り気を帯びていた。

空には分厚い壁のような雨雲が立ち込め、美しい月の光を無情にも覆い隠してしまっていた。街の暖かな灯りも、空を照らすには心もとない。

[シャオヘイ] 嫌な天気だなぁ……

[シャオヘイ] クシュンッ――

[シャオヘイ] 屋上も水浸しだ……ここで居眠りしたかったのに……

[シャオヘイ] あれ? あの箱の中は濡れてないかも。

[シャオヘイ] よいしょ、っと……

[シャオヘイ] ふぅー……こんな空の下で寝るのもたまにはいいね。

[階下の店員] さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 安い、旨い、新鮮の三拍子揃った大特価セール開催中だよ! そこのお兄さん、今ならおまけも付けるから見てってよ!

[シャオヘイ] うーん……スゥ――

[階下の隣人] 何度言ったら分かるの! ご飯食べたらすぐ宿題っていつも言ってるでしょ! 全くもう、あんたみたいなぐーたらなペッローはどこの家にもいやしないよ!

[シャオヘイ] はぁ……ふぅ――

[階下のテレビ] 近頃はジメジメと湿度の高い日が続いております。湿気により電化製品がショートし火災事故が起きる危険もありますので市民の皆様におかれましては電化製品の扱いに注意し安全にはくれぐれも――

[シャオヘイ] あーもーうるさい! 早口すぎてわけわかんないよ!

[シャオヘイ] ……

頭上には厚い雲に覆われた夜空が広がり、耳元には街の喧噪が絶えず響いてきていたが、期待している内容は聞こえてこなかった。

[シャオヘイ] シャオバイ……アグン……どこにいるの……?

[???] シャオヘイくーん! 屋上ですかー? 雨上がりにそんなところで寝ていたら風邪引きますよ! そろそろ夕飯にするので戻って来てくださーい!

[シャオヘイ] (無造作に目をこする)

[シャオヘイ] 分かった! 今行く!

[シャオヘイ] ウン、お椀出すの手伝うよ。何人分出せばいい?

[ウン] いいよいいよ。ワイフーがもう持ってったから。

[シャオヘイ] じゃあ他にやることある?

[ウン] 他には……ってあれ?

[ウン] シャオヘイ、全身びしょ濡れじゃないか!

[ウン] しばらく姿が見えないと思ったら、また屋上に行ってたな? ったく……おいア、タオル持ってきてくれ! 髪までびっちょりだ。

[ア] ほらよガキんちょ。礼はいらねぇぜ!

[シャオヘイ] お礼するつもりもないけどね!

[ウン] ほらほら、ケンカはよせって。早く頭拭いてご飯にしような。

[ワイフー] シャオヘイ君、おっきなスペアリブを取り分けておいたので、アツアツのうちに食べちゃってください! 育ち盛りのフェリーンなんですから、目いっぱい栄養とらないと。

[シャオヘイ] おっと……ワイフー、開けてくるからちょっと待ってね。

[リー] おおっと、シャオヘイか。

[リー] ハハッ、廊下にまで良い香りが漂ってきてたぞ。今日のメインは宮保肉丁(ゴンバオロウディン)だな?

[シャオヘイ] そうだよ。ウンが朝早くからお肉を準備してたんだ。

[ワイフー] リーおじさんは鼻が利くみたいですけど、私の鼻も甘く見ないことですね。さあ、後ろに隠している瓶を出してください!

[ア] 素直に白状すれば命だけは助けてやるってさ。

[リー] いやぁ、仕事終わりにソンさんの酒屋を通りかかったら、お礼に黄酒を四両くれるって聞かなくてね。

[リー] 断るのも悪いし、こりゃ不可抗力ってやつだろう?

[ウン] そりゃあソンさんに感謝しなきゃいけないな。ちょうど料理酒を切らしてたから助かるよ。シャオヘイ、そいつをかまどの下の棚に置いといてくれ。

[シャオヘイ] 分かった、任せて!

[リー] おいおい、真面目すぎるのも大概にしとけって。まだ一口も手ぇつけてないんだぞ! しかもこの坊主まで結託しやがって……

[ワイフー] あははっ、さすがシャオヘイ君!

[リー] おーおー、この坊主ときたら、ちっこいくせしてメシだけは人一倍食いやがる。まっ、大メシ食らいに悪ガキはいないって言うし、おれも嫌いじゃないがねぇ。

[シャオヘイ] はむっ、んぐんぐ……もぐもぐもぐ……!

[リー] 美味そうに食うなぁ……ああそうだ、なぁシャオヘイ……

[シャオヘイ] ……!

[シャオヘイ] もしかして何か分かったの!?

[リー] いや、お前さんに頼まれた件は今んとこさっぱりさ……

[シャオヘイ] んー、そっか……

[ウン] (小声)リー先生、食事中にわざわざそんな話しなくてもいいじゃないか!

[リー] 違う違う、実は別件でシャオヘイの力を借りたいんだよ。

[シャオヘイ] なになに、言ってみて!

[リー] いやね、実は袁(ユァン)家のお嬢様がペットに逃げられちまったそうなんだ。んで、あちこち当たった末に、うちに依頼を出してきたのさ。

[リー] だがおれぁ最近ちょっとごたついてて、手伝ってやれそうにないんだよ。そこで代わりにお前さんに頼みたいというわけさ。引き受けてくれるか?

[シャオヘイ] いいよ、僕に任せて。

[リー] よし。これがそのペットの写真だ。南坪(なんへい)湾のグルメ街で見かけたって噂もあるらしい。

[シャオヘイ] こ、これ何て動物なの? 初めて見た……

[リー] 初めて? 妙な話もあるもんだ……

[リー] こりゃあ「雲獣(うんじゅう)」ってやつさ。この辺の連中は、金があろうとなかろうと、みーんなこいつを飼いたがる。

[ウン] どれどれ……真っ黒だね……烏雲獣(ううんじゅう)とは珍しい。

[シャオヘイ] 烏雲獣?

[ウン] ああ、炎国特有の言い回しなんだ。ここじゃ雲獣を飼ってる人が多いから、色で名前を分けてるのさ。

[ウン] 白いやつは雪雲獣(せつうんじゅう)で、赤いやつは朱雲獣(しゅうんじゅう)って感じだね。まだら模様のはまた別の呼び方があったりするけど……

[シャオヘイ] ふーん……ありがとう、覚えた!

[リー] ……シャオヘイ、初めて見たって言ってたが、お前さんの故郷じゃあ誰もこいつを飼ってなかったのか?

[シャオヘイ] ち、違うよ! 僕がど忘れしちゃってただけ!

[リー] へぇ――

[シャオヘイ] ごちそうさま! 今日は疲れたから先に休むね、おやすみ!

[リー] おーい、そんなに慌ててどうしたんだよ。明日は南坪湾(なんへいわん)のグルメ街に連れてってやるから、早起きするんだぞー。

[シャオヘイ] 分かった!

[リー] ……ウン、なんだそのしかめっ面は。

[ウン] リー先生……どうして事務所の仕事を客人に押しつけるんだよ?

[リー] まぁ、助っ人は多い方が心強いだろ?

[ウン] リー先生!

[リー] あらま、所長の威厳もあったもんじゃないねぇ。

[リー] ……あの坊主、今日も屋上に出てたんじゃないか?

[ウン] ……そうだけど、何で分かるの?

[リー] 部屋に入った途端、あいつの身体から湿っぽいにおいが漂ってきたんでね。家ん中で雨は降らないだろう?

[リー] あの坊主とは出会ってまだ間もないが、気が晴れない時に一人になりたくて屋上に出てるのは一目瞭然さ。お友達が見つからなくて、ずっとモヤモヤしてるんだろう。

[リー] あとは、家ん中で一日中何もしないでいるもんだから、おれたちと一緒にいるとバツが悪いってのもあるだろうな。

[ウン] でもまだ子供だよ。仕事の手伝いをさせるなんて……

[リー] ハハッ、あれが子供ねぇ。ウン、あいつと手合わせしたことは?

[ウン] ないけど……まさかあの子、カンフーの心得が!?

[リー] ああ、それも大人顔負けのだ。あの坊主に出会った日、ずいぶん警戒してたみたいでな。ちょっくらやりあうことになっちまったんだが、そりゃあとんでもない気迫だったぜ。

[ウン] 信じられないな……あんな子供にカンフーを叩き込むなんて、どんなところで育ったんだか……

[リー] ハハッ、そりゃおれも聞きたいよ。

[アナウンス] 入境者の皆様、こんばんは。白線の後ろに並んでお待ちください。ただいま深夜二時四十五分――龍門へようこそおいでくださいました。

[ロックロック] ここが龍門かぁ。こんな夜中なのにまだそこら中に灯りがついてて綺麗だね。わざわざ遠くまで来た甲斐があったよ。

[スズラン] ロックロックお姉さんも龍門は初めてですか?

[ロックロック] そうだよ。私の故郷とはまるっきり違うなぁ……

[スズラン] 違う……どんな風に、ですか?

[ロックロック] なんていうか……こっちの方が若々しくて、生き生きしてるって感じがする。

[ロックロック] こんなにたくさんの人が行き交ってるなんて想像もしてなかった……まるで数年前の惨劇の影響なんて何も残ってないみたいに。

[スズラン] 街にも、人と同じように自然治癒力があるのかもしれませんね。

[ロックロック] ……そうだね。これだけ急速に発展を続けてる都市だし、大きな傷を負っても、すぐに新しい血液が流れ込んでくるってことだろうね……

[ロックロック] ただ、外側の傷は癒えたように見えても、内側の傷は……

[スズラン] きっと……いつかはすっかり良くなると思います。人は忘れっぽいですから。

[ロックロック] ……本当にそうなればいいんだけどね。だけど、消したくても消えない記憶だってあるでしょ? 誰も昔のことを蒸し返そうとはしないだけでね。

[スズラン] はい、私にも分かります。大人の皆さんはいつも言えないことをお腹の中に抱えて、少しずつ消化していくんですよね。

[ロックロック] スズラン……ちょっと色々達観しすぎなんじゃないの。

[???] ロックロックさーん! 待ってくださいよー!

[???] (小声)お兄ちゃん、すっごく不思議なとこだね。移動する都市なんて初めて見たよ……

[???] (小声)うん、僕もビックリ……まさかこんな都市にお目にかかれる日が来るとはね。まるで生き物みたいだよ。

[ロックロック] シャオバイ! アグン! どこ行ってたの? もうすぐあたしたちの番だよ。証明書はちゃんと持った?

[アグン] ごめんなさい。シャオバイがトイレに行きたいって言うからずっと探してて……

[ビジュー] ビュウ!

[シャオバイ] それにしても、ほんとに人がいっぱいだね。さっきだって――

[アグン] その話は後にしよう。早く並ばなきゃ。

[ロックロック] ……何かあったの?

[スズラン] 危険な目に遭ったりしてませんよね?

[アグン] いやいや大丈夫です! 心配しないでください。

[ロックロック] ……アグン、危険な目に遭ったんなら言ってくれなきゃこっちは余計に心配しちゃうよ。

[ロックロック] まぁ、君はしっかりしてるしアーツも得意だから、あたしたちの心配なんて要らないんだろうけどさ……

[アグン] そんな風に言わないでください! ロックロックさんたちには助けられてばかりだし、すっごく感謝してるんですから。

[アグン] あの時だってそうです……もし二人に助けてもらえなかったら、あの凶暴な「こんじゅう」からは逃げられなかったと思います。

[スズラン] 「こん」獣?

[シャオバイ] あー、また言い間違えてる。あれは「鉗獣(かんじゅう)」って言うんだってば。

[アグン] ははっ、冗談冗談。……とにかくこれまでたくさん助けてもらったので、もうこれ以上心配かけたりしませんから。

[ロックロック] ……わかった。それで、龍門ではどこに住むかもう決まってるの?

[アグン] うーん……今のところはまだ……

[ロックロック] だと思った。なら、しばらくはロドスの事務所で過ごすといいよ。すぐに住むところ見つけるのも難しいだろうし。

[アグン] それじゃあ……またお世話になるしかないのかな。何かしてほしいことがあれば言ってください。

[ロックロック] まったくもう。知り合ってからもうけっこう経ってるのに、まだそんなに遠慮しちゃってさ。

[スズラン] そうですよ、アグンお兄さん。困ったことがあればどんどん頼ってください! 私たちの任務も、龍門の患者さんをロドス本艦に移送するだけのもので、そんなに大仕事ではありませんから。

[ロックロック] フフッ、スズランはこんな小さいのに、ロドスに入ったのはあたしより先で頼れる先輩なんだよ。意外でしょ。

[アグン] そうなんだ……人助けのためだけにあちこち駆けずり回るなんて、ロドスは本当に素晴らしい会社なんですね……

[シャオバイ] 病院のお医者さんとか看護師さんも、いつも忙しそうだよね。注射は怖いけど、いつもすごいなって思ってるよ。

[スズラン] 私たちの仕事は実はそれだけじゃないんですよ。他には……あっ、順番が来たみたいです。事務所についたらまた紹介しますね。

[ロックロック] よし。シャオバイ、アグン、行くよ。

[ヴィクトリア商人] なんだなんだ? 急に近衛局の連中が集まってきたぞ。

[ボリバルの観光客] さっきの見てねぇのか? 指名手配中の密入境者が氷のアーツで柵にくっつけられてたぜ。

[ヴィクトリア商人] なんだそりゃ? そんなバカなことあるか?

[ボリバルの観光客] おい、それよりお前の番だぞ。お喋りはいいから早く行けよ。

[ヴィクトリア商人] へっ? ああ……チッ、珍しいこともあるもんだ。

[シャオバイ] お兄ちゃん、ここがロックロックお姉ちゃんが働いてるとこ? あのおじさん、胸から石が生えてる……すごい痛そう……

[アグン] シャオバイ、あんまりじろじろ見ちゃダメだよ。失礼だって。

[シャオバイ] あ……おじさん、ごめんなさい! わざとじゃないよ……

[患者] ははっ、いいってことよ嬢ちゃん。変な目で見られんのは慣れてっから。悪気がないのは分かってるぜ。

[アグン] 本当にごめんなさい。あの、ロックロックさんに会うにはどこへ行けばいいか分かりますか?

[患者] ああ、沅(ユアン)ちゃんの病室にいると思うぜ。まっすぐ行って最初の角を左に曲がったとこだ。

[アグン] ありがとうございます。

[シャオバイ] ばいばいおじさん、早く治るといいね。

[患者] 治るだって? ……あははっ、ありがとな嬢ちゃん。俺もそう願ってるよ……

[シャオバイ] (小声)お兄ちゃん、私なんか変なこと言ったかな? おじさん、顔が引きつってた……

[アグン] 別におかしなことは言ってないと思うけど……とにかくまずはロックロックさんを探そう。

[???] お姉ちゃん、わたし行きたくない。まだ元気だからここにいさせて……お願いだから……

[ロックロック] ユアン、良い子だから言うこと聞いて。事務所の医療物資だけじゃ君の症状の対処ができないの。

[スズラン] ユアンちゃん、ロドス本艦にはユアンちゃんくらいの子もたくさんいるから、きっとお友達だってたくさんできるよ!

[ユアン] でも……ロクナナがまだ帰ってきてないの……わたし、あの子と一緒じゃなきゃやだよぉ、ひっく……

[ロックロック] ロクナナ?

[ユアン] うん……いなくなっちゃったから……帰ってくるまで待っててあげたいの。

[ロックロック] ピン、まさか失踪した患者さんがいるの!?

[事務所オペレーター] いやいや誤解です! ロクナナってのはユアンちゃんのペットなんですが、去年いなくなっちゃって……ずっと見つかってないんですよ。

[ユアン] お姉ちゃん、お願いだからここにいさせて。もう少ししたら、きっと戻ってくるはずだから……うっ……ひっく。

[ロックロック] ほらほら泣かないの。涙拭いてあげるから。

[事務所オペレーター] 当時も探したんですが、龍門みたいなデカイ街でペットを見つけるのは骨が折れますからね……人手不足もあって、捜索も一旦打ち切りになってます。

[ロックロック] そっか……うーん、どうしよう。無理やり連れて行くってわけにもいかないし……

[ユアン] ぐすん、ううっ……うわーん!

[ユアン] やだ! 絶対行かない! ここにいるもん!

[スズラン] ユアンちゃん……ロックロックお姉さん、私たちが捜索を手伝うのはどうでしょう?

[ロックロック] でも、ここだって人手が足りてないわけでしょ……まだ本艦に移送しなきゃいけない患者さんだって残ってるし。

[ロックロック] それに、もし来週までに戻れなかったら、患者さんたちの治療も遅れちゃうよ。

[スズラン] どうしましょう……他に何か方法は……

[シャオバイ] お兄ちゃん、手伝ってあげられるかな?

[アグン] うーん、どうだろう……僕らだってこの場所にあんまり詳しくないからね。

[シャオバイ] むう……

[アグン] ……力になってあげたいの?

[シャオバイ] うん……助けてもらった分、お返しがしたいと思って。

[アグン] そうだね、確かに今度は僕らが助けてあげる番だ。じゃあちょっと聞いてみようか。

[アグン] ロックロックさん。僕とシャオバイに捜索を手伝わせてもらえませんか?

[ロックロック] えっ……

[アグン] やるだけやってみたいんです。

[シャオバイ] お兄ちゃんはすごいから、お姉ちゃんも心配しないで。

[支援オペレーター] すみません、ロックロックさんはいらっしゃいますか? 診察室の現像装置が故障してしまったようで……ちょっと見てもらえないでしょうか?

[ロックロック] わかった、すぐ行く!

[ロックロック] ……じゃあ、お願いしてもいいかな。でも、もし何かあったら、絶対すぐに連絡すること。いい?

[アグン] はい、約束します。

[アグン] ユアン、はじめまして。僕はアグン。こっちは、いとこのシャオバイだよ。

[ユアン] ぐすんっ、ひっく……

[アグン] ほらほら、もう泣かないで。

[シャオバイ] 元気出して……私たちが力になるから!

[ユアン] ……わ……わがまま言ってごめんなさい。みんな忙しいのに、ずっと探すの手伝ってくれて……こんな迷惑かけるの、よくないのに……

[シャオバイ] そんなことないよ! 友達と別れるのは誰だってさびしいから……

[アグン] そうそう、だから僕たちに手伝わせてよ。

[ユアン] ほ、ほんと!? じゃあ、これ……あの子の写真だよ。とってもかわいくておりこうな子だから、どこかに隠れてるんだと思う……

[アグン] よし、じゃあしばらく借りるね。それから……僕たちも全力で探すけど、絶対に見つかるとは限らないってことは覚えていてほしい。

[ロックロック] そうだよ、ユアン。出会いがあれば、いつか別れも訪れる。どんな結果になっても、勇気を持ってそれと向き合うように。間違っても自分を責めちゃダメだからね、いい?

[ユアン] ぐすんっ……うん……もうこれで最後にするから。ダメだったら……あきらめる。言われた通り……お姉ちゃんと一緒に行くよ。

[アグン] よし、じゃあ明日シャオバイと探しに行ってくるよ。

[ロックロック] 頼んだよ。ひとまず今日のところはゆっくり休んで。じゃあまた。

[シャオヘイ] おとなしくしてろよー。

[???] ミャオ!

[シャオヘイ] 暴れるなって!

[???] シャー!

[シャオヘイ] こんな時に……もしもし――

[???] ミャア……

[シャオヘイ] リー? ちょうどよかった。例の烏雲獣だけど、もう捕まえたから事務所に戻る――

[シャオヘイ] ……え?

[シャオヘイ] もう見つかった!?

[シャオヘイ] じゃあこいつは……あ、うん。すぐ戻る。

[シャオヘイ] おかしいなぁ……写真とそっくりなのに。じゃあお前はどこから来たんだ?

後ろ首を掴まれた烏雲獣は嫌そうに暴れ出し、爪と牙をむき出しにしてもがいた。すると、痩せて浮き上がったあばら骨がシャオヘイの前にさらけ出された。

[シャオヘイ] お前、しばらく何も食べてないんだな。うーん……連れて帰って、お腹いっぱい食べさせてあげよう。

[シャオバイ] にぎやかな街だねー。ここから探すの?

[アグン] うん、商店街の近くなら食べ物が多いから、迷子の動物がけっこう流れ着くんじゃないかと思ってね。

[シャオバイ] でも動物が人間のご飯を食べて大丈夫なの?

[アグン] あんまり良くはないけど、そんなこと動物たちには分からないだろうし、お腹を満たそうとして食べちゃうと思う。

[シャオバイ] ……シャオヘイ、お腹空かせてないといいなあ。

[アグン] 大丈夫だよ、あの子なら自分で何とかできるって。

[アグン] あんまり悩んでもしょうがないよ。それより、朝も早かったからお腹減ってるんじゃない? ロックロックさんがたっぷりお金をくれたから、先に何か食べよっか。

[シャオバイ] うん……

[アグン] 豆乳二つ、持ち帰りでお願いします。

[露店商A] はいよっ、ほら。

[アグン] ところでおばさん、この辺って迷子の動物は多いですか?

[露店商A] ああ、毎日街中を飛び回ってるねぇ。汚らしいし、うっとうしいったらありゃしないよ。

[アグン] ……最近、黒い雲獣を見かけませんでしたか?

[露店商A] うーん、覚えてないねぇ。忙しくてじっくり見てる暇もないから……ごめんよお坊ちゃん。

[露店商B] ほんと、奴らときたらどんなバイ菌やら寄生虫が身体についてるんだか分かりゃしねぇ。あんまり人様に迷惑かけてっと始末しちまうぞってな!

[シャオバイ] し、始末って……お兄ちゃん……

[露店商A] あんた! 子供の前で物騒なこと言うんじゃないよ!

[アグン] ……気にしないでください。シャオバイ、行こう。他の人にも聞いてみようか。

[露店商C] 搾りたてのフルーツジュース、今なら20%オフだよー。気になったんなら買っていきな!

[アグン] すみません。最近黒い雲獣を見かけませんでしたか?

[露店商C] はぁ? 知らん知らん。買わないんならどいとくれ。商売の邪魔になる。

[アグン] あ、ごめんなさい……ちなみにいくらですか?

[露店商C] 一瓶で百二十龍門幣だよ。

[アグン] うっ……ちょっと高いかな。

[シャオバイ] お兄ちゃん、もういいから次に行こ。

[露店商D] 蒸し立ての肉まんはいかがですかー! 色んな餡を豊富に取り揃えてますよー!

[シャオバイ] こんにちは。あの、この辺で烏雲獣を見てませんか?

[露店商D] 見たことねぇな。お嬢ちゃん、悪いけど別んとこに聞いた方がいいと思うぜ。

[シャオバイ] うー……邪魔してごめんなさい。はぁ……

[アグン] シャオバイ、まぁそんな落ち込まないで。次いってみよ。

[露店商D] あー、ちょっと待った! スラム街んとこに動物の保護施設があるんだよ。あそこの奴が前によくこの辺りの動物を保護してたから、行ってみるといいぜ。

[シャオバイ] ほんと? 行ってみよ!

[露店商D] そういや、最近あいつを見てねえなぁ……

[アグン] ありがとうございます。おじさん、肉まんはいくらですか? 肉のやつを二つください!

[露店商D] ははっ、二つで七龍門幣だ。毎度どうも。

[アグン] ……あれ、なんで肉まんの皮だけ食べてるの?

[シャオバイ] お腹を空かせた動物さんがいるんじゃないかと思って……

[アグン] そういうことか。ならもう一個買ってくるから、そいつは食べちゃいなよ。

[シャオバイ] いいよ、お兄ちゃん。あとでもっとお金がかかるかもしれないし、できるだけ節約しないと。

[アグン] 分かった。

[シャオバイ] お金が余ったら、シャオヘイに会えた時にもいっぱい食べ物を買ってあげられるからね! 今だってお腹空かせてるかもしれないし……

[シャオヘイ] クシュンッ――うう、何で急にくしゃみが……

[???] ウニャー!

[シャオヘイ] こら、暴れるな! こっちはお前を捕まえるために朝ご飯も食べずに飛び出してきたんだから……早く戻ってご飯にするぞ。

[アグン] もしかしたら僕たちよりずっと運が良くて、今頃ご馳走を食べてたりして! ははっ!

[シャオヘイ] もうすぐお昼だから……帰ったらきっとウンがご馳走を用意してくれてるよね。

[シャオバイ] だといいね!

[シャオバイ] 早く見つけてあげたいなぁ……

[シャオヘイ] シャオバイ……アグン……どこにいるのかなぁ……

[アグン] そうだね……シャオヘイもきっと僕たちを探してるよ。

[シャオヘイ] 早く会いたいなぁ……

[シャオバイ] うん! 早く会えるといいねっ!

[シャオヘイ] ……悩むのはやめやめ! きっとまた会えるよね!

[烏雲獣] (きょろきょろ)

[烏雲獣] ウミャ……

[シャオヘイ] 何探してるの?

[烏雲獣] ミャオ!!

[シャオヘイ] 僕だよ僕。匂いとかでわからない? これはもう一つの姿なんだ。

[シャオヘイ] どこかに行きたいなら、そこの非常階段から降りられるけど……

[烏雲獣] (不安げにしっぽを振る)ミィー……

[シャオヘイ] にしても不思議だな。別世界の生き物同士なのに、僕にもお前が外に出たいって思ってるのがなんとなくわかる。

[シャオヘイ] リーは文句ばっかりだけど、お前のこともちゃんと面倒見てくれると思うよ。ずっとここにいてもいいと思うけど……

[烏雲獣] (首を横に振る)ミミッ。

[シャオヘイ] 外じゃご飯も食べられないし、追いかけて意地悪してくる人だっているよ。外に出てどうするの?

[烏雲獣] ミィ……ミィ……

[シャオヘイ] なーんだ……お前も人を探してるのか。

[シャオヘイ] こっちに来なよ。イジメたりしないから。

[烏雲獣] (伏せる)

[シャオヘイ] 人捜しなら、僕も手伝ってあげるよ。

[烏雲獣] (見上げる)

[シャオヘイ] 気にしないで。僕も探してる人がいるから、そのついでだよ。ずっと秘密にしてたけど……僕、この世界の住人じゃないんだ。

[シャオヘイ] 元の世界じゃ良い師匠や友達と一緒に暮らしてたんだ。でも、ここに来たせいで会えなくなっちゃっててさ。

[シャオヘイ] ……二ヶ月くらい前かな。森の中で変な生き物を見つけたんだ。今ならわかるけど、あれはここじゃオリジムシって言われてるやつだね。

[シャオヘイ] それで、アグンが二手に分かれて追いかけようって言ったから、しばらく一人で追いかけてたんだけど……変な感じがして振り返ってみたら、来た道が消えてたんだ。

[シャオヘイ] それからもう一歩踏み出したら、白い光の中へすーっと落ちていって……

[シャオヘイ] 目を開けたら、ここにいたってわけ。

[シャオヘイ] アグンとシャオバイはどうなったかわからないけど、二人もこの世界に来ちゃってたらって思うと、いてもたってもいられなくてさ……

[烏雲獣] ミィ?

[シャオヘイ] ここは危険すぎるでしょ? 僕とアグンなら自分の身は守れるだろうけど、シャオバイは……それに身体から石が生える病気もあるし……この世界に来てても、安全なところにいてほしくて……

[烏雲獣] (前足をシャオヘイの背中に伸ばそうとする)

[シャオヘイ] 慰めてくれてるの?

[烏雲獣] ミィ!

[シャオヘイ] ……ありがとう。

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