aklib_story_マリアニアール_MN-1_エレンズチョイス_戦闘前

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マリア・ニアール_MN-1_エレンズチョイス_戦闘前

怒ったゾフィアはマリアを訪ね、騎士競技を諦めさせようとする。しかし逆にマリアのコーチになるよう説き伏せられるのだった。


[老職人] マリア! どうだ!?

[マリア] 待って――もうちょっと! ……あとネジ一本!

[老職人] しっかり締めろよ!

[マリア] うん……あ、待って! 接触不良の原因がわかった気がする――

[老職人] 早くしろ! このジュークボックス重いんだよ、これ以上は持ち上げてられねえ――!

[禿頭マーティン] ほら、チーズ盛りお待ちどおさん、フォー。

[老騎士] ……おい、今回は爆発せんじゃろうな?

[禿頭マーティン] たかがジュークボックスの修理で爆発するわけないだろ?

[老騎士] そうとも言えぬ。源石と関係があるものなら、コーヴァルはやりかねんぞ。

[老職人] 俺の悪口を言ってるのは誰だ?

[マリア] コーヴァル師匠! き、気を付けて、あんまり動かさないで!

[老職人] おお――すまねえ、マリア。

[老職人] フォー! 俺の手が空いたら覚悟しとけよ!

[老騎士] いいだろう、待っておるぞ――

[禿頭マーティン] 賑やかなのはかまわないが、うちのバーでケンカはやめてくれよ。グラスを割ったら弁償だからな。

[老騎士] ふん、あやつはもう何十年もああしてグダグダぬかしておるが、あやつがわしに勝ったのを見たことがあるか?

[禿頭マーティン] 前回だな。

[老騎士] あー……前回わしはだいぶ酔っておったからな。それに、関節炎も出とったじゃろ……だからあれはノーカウントじゃ。

[老騎士] ゴクゴクゴク――プハーッ! ……昔、あやつがわしにくっついて辺境を駆け回っておった頃は、あんな口の利き方はさせなかったんじゃがな……

[老職人] フォー! またあんた大ぼら吹いてんじゃないだろうな!

[老騎士] 昔、お主はわしの従者の一人だったくせにという話よ! どうじゃ間違っておるなら言うてみい!

[老職人] いつまで過去の栄光に酔いしれてんだよ。今やあんたにヘコヘコしてた従者たちが、スーツを着込んであんたや俺の上に立つ時代だろうが――

[???] マリア!!

[マリア] ひゃいっ!?

[老職人] 痛っ――! 痛てて……この馬鹿、急に手を放すんじゃねぇ!

[マリア] ご、ごめん。でもちょっと隠れさせて……

[禿頭マーティン] ゾフィア、頼むからそっと開けてくれ。今月だけで何回ドアを交換したことか。

[禿頭マーティン] はぁ……これだから自動ドアに替えたくても躊躇するんだよ。

[老騎士] どうしたゾフィア? そんなすごい剣幕で怒鳴り込んできて。

[ゾフィア] ……

[ゾフィア] そこにいるんでしょ?

[ゾフィア] マ・リ・ア!!

[マリア] ひぃ――!

[老職人] おい嬢ちゃん、バレてるぞ。というか、そもそも隠れられてないからな。

[マリア] うぅ……このジュークボックスどうしてこんなに小さいの……

[マリア] ねぇ師匠、今あの人どんな顔してる?

[老職人] ヤバいな……酔っぱらって暴れたガキの騎士を追い払った時以来、あんな怒った姿は見たことねえ。

[老職人] ――あっいや、微笑みながらこっちに来るぞ。

[マリア] それはもっとヤバい時のやつだよ!

[ゾフィア] コーヴァル?

[老職人] ゴホンッ――フォー! 酒でも飲もうぜ! あんたさっき俺の悪口を言ってたよな? 今日はあんたを酔い潰してやる。

[老騎士] ケッ、逃げ出してきおったか腰抜けめ。

[禿頭マーティン] じゃああんたはどうしてマリアを助けに行かないんだい?

[老騎士] わ、わしは何があったか知らぬからな! 他人の家の問題にむやみに口出しせぬ方がよかろう!

[ゾフィア] マ、リ、ア、どうして隠れてるの?

[マリア] え、えーっと……

[ゾフィア] 君ね……何か私に隠してるでしょ? ていうか私もう全部知ってるんだけどね。

[マリア] あは、あははっ……

[ゾフィア] ……はぁ。

[ゾフィア] マリア、騎士競技に出ることが何を意味するかわかってるの?

[禿頭マーティン] ……

[老騎士] なるほど……ゾフィアがあんなに怒っとるのはそういうわけか。

[ゾフィア] どうして私に相談してくれなかったの?

[マリア] だ、だってゾフィア姉さん絶対怒るでしょ?

[ゾフィア] 怒るに決まってるでしょ! だって君、自分が向き合ってるのがどういうものなのか、全く理解してないじゃない!

[マリア] うぅっ……

[マリア] で、でも私だって少しくらいはわかってるつもりだよ……

[ゾフィア] へえ、それは実の姉を見てわかったつもりになってるのかな? カジミエーシュの耀騎士、メジャー最年少の奇跡の一人に習って? それは良かったわね。

[ゾフィア] でもね……君は、マ・ー・ガ・レッ・ト・じゃ・な・い・の・よ!

[マリア] 痛い痛い! み、耳をつねらないで――

[マリア] で、でもうちの家の経済状況はどんどん酷くなってるんだよ!

[マリア] ……お祖父ちゃんが死んじゃった後も、叔父さんは相変わらず騎士協会と関わろうとしないし――

[マリア] 冗談抜きで、来年には寝るためのベッドすらなくなっちゃうかもしれないの! 家具を全部売り払うしかなくなっちゃうよ!

[ゾフィア] ……もしそうなったら、うちに住めばいいじゃない。お風呂場は大きいし、庭だって二つあるわ。

[ゾフィア] どんな理由があろうと、軽率に競技騎士になんてなるもんじゃないわよ。

[マリア] 首席のいない騎士一族は、貴族騎士として認められないんだって。協会からもう何度も催促が来てるの……どうしようもないんだよ。

[マリア] お姉ちゃんがカジミエーシュから追い出されてずいぶん経ったし、私がなんとかするしか……

[ゾフィア] ……はぁ。

[ゾフィア] たとえそうだとしても、私に相談するべきでしょ……君一人で勝手に突っ走り過ぎよ。

[マリア] うう……それは本当に申し訳ないと思ってるよ……でも相談したらゾフィア姉さんはきっと私を止めたでしょ? だから――

[ゾフィア] 当然止めたでしょうね。

[マリア] ……じゃあ今はどう思ってるの?

[ゾフィア] ……「耀騎士再び!? ニアール家から新たな騎士がデビュー。貴族の栄光奪還なるか」

[ゾフィア] 今日の競技新聞のトップ記事よ。

[マリア] あははっ……やっぱりお姉ちゃんって有名人なんだねぇ。

[ゾフィア] 笑い事じゃないでしょ!

[ゾフィア] メディアは手段を選ばないから、きっと変な見出しとデマでさらに盛り上げようとするだろうけど……今辞退すればまだ間に合うわ。

[マリア] でももし私が出なかったら、ニアール家は破産して貴族騎士の資格を剥奪されちゃうよ。

[マリア] 自分が何をしてるかはわかってるつもりだよ。ゾフィア姉さん……私……やらなきゃダメなの。

[ゾフィア] マリア、君ねぇ……ちょっと、マーティンおじさん! 騎士競技がどんなものか詳しいでしょ、何か言ってやってよ!

[禿頭マーティン] そうだな、うん……だったらやらせてみればいいんじゃないかな。

[ゾフィア] ――はぁ!?

[マリア] マーティンおじさん! ありがとう!

[ゾフィア] いやいやいや! 今のマリアじゃ私の腕一本、いや、指一本にすら敵わないかもしれないわ。本気で言ってるの?

[マリア] 言い過ぎだよ!

[老騎士] そう言うてやるなゾフィア。お主はメジャー十六強入りした騎士。お主の腕一本に勝てさえすれば、それで合格ラインじゃよ。

[老職人] そうそう、今のフォーもゾフィアの腕一本には勝てないしな。

[老騎士] 何じゃと? もういっぺん言うてみい!?

[老職人] ふぅ……まあここの常連客はみんな引退した年寄りばかりで、実力も昔ほどじゃない。だが人を見る目に関しては食えないジジイたちだ。俺もマリアは見込みがあると思うがな。

[老騎士] 何を言うか! 食えないジジイなど、誉め言葉ではなかろうが!

[老職人] 意味が通じてんだからそれでいいだろ! ……ったくあんたらお騎士様たちは、そんな気取った話し方してよく疲れねえな。

[禿頭マーティン] ゴホンッ――フォーの言う通りだな。

[禿頭マーティン] 私はマリアの才能を信じている。この子のアーツと剣の素質は悪くないはずだ、幼い頃からの剣の練習を見てきた君ならわかるだろ?

[ゾフィア] ……でもここ数年、マリアは機械に夢中だったし、てっきり職人にでもなりたいんだろうと思ってたわ。

[マリア] 機械いじりはただの趣味だよ。別にやめたいとは思わないけど、今はそれよりもやらなきゃいけないことがあるから――

[マリア] 痛っ!?

[ゾフィア] ……私はまだ君が勝手に決めたことを許してないわ。今回ばかりは冗談じゃ済まされないのよ。

[禿頭マーティン] ……その点に関しては私もゾフィアに賛同するよ。

[禿頭マーティン] 一族のために身を投げ出し、それでも前向きでいられる君の心意気は賞賛に値する。しかし騎士競技は、君や観客たちが思っているような華々しいものとは違う。

[禿頭マーティン] いや、華々しいだけではないというべきかな。

マーティンは片腕を上げて見せた――その腕は大半が機械に置き換えられ、関節からは精巧な駆動音がする。

[マリア] あっ……

[禿頭マーティン] これはちょっとした不注意がもたらした結果だ。

[老騎士] そうじゃな……わしも覚えておる。相手は双剣使いのヴィクトリア人じゃったな。

[老騎士] じゃが、最終的にお主は勝ちおったな。

[禿頭マーティン] そうだ、それでも私は勝った。

[禿頭マーティン] これがいわゆる栄光の代償ってやつだ。今じゃグラスを拭くのさえ一苦労だがね。

[老騎士] 騎士競技か、ふんっ。

[禿頭マーティン] 競技場には本物の哀れみも敬服も有りはしない。滴り落ちる血だけが本物なんだ。

[禿頭マーティン] 観客が歓声を上げるのは、単に刺激によって満足したというだけ。スポンサーの厚い待遇なんてのも、ただの利益目的さ。

[禿頭マーティン] よく覚えておくんだ。リスクをしっかりと見定めた上で攻める。これこそ真の騎士に必要とされる素質だ。

[マリア] わ……わかってるよ。

[ゾフィア] ……マリア。

[マリア] ……うん。私、本気だから。

[マリア] 叔父さんはいつも「たとえ貴族の身分が剥奪されたとしても、紋章が無くなったとしても、金輪際『ニアール』が存在しなくなるわけじゃない」って言ってるけど……

[マリア] でも私はやっぱり守りたいの。お祖父ちゃんやお姉ちゃんがずっと守り抜いてきたものを。

[マリア] お姉ちゃんはもうここにはいない……私は、ニアール家最後の世代として、自分の家が没落していくのをただ見てるなんてできない!

[マリア] もしそんなことしたら……私は自分で自分が許せなくなるよ。

[ゾフィア] ……

[老騎士] 過酷な現実を知ってなお、茨の道に足を踏み入れる……これこそが騎士じゃ、時代がどう変わろうとな。

[老騎士] マリアよ……わしはお主ならできると信じておる。この一杯はお主に捧げよう。

[老職人] ハッ、俺もだ、マリアに捧げるぜ。

[禿頭マーティン] (無言でグラスを掲げる)

[ゾフィア] はぁ……私はみんなに説得して欲しかったんだけど。次から次へとほだされちゃって……

[マリア] あの……ゾフィアおばさん、お願いだから――

[ゾフィア] その呼び方はやめて! 君より五歳年上なだけなんだから!

[ゾフィア] ……私だってニアール本家に仕えてきたんだもの。もちろんマリアの気持ちもわかるわ。でもやっぱり――

[マリア] 私ちゃんと剣術を磨くから! ちゃんと言うことも聞くから、私のことを信じて!

[マリア] そうだ! だったらゾフィア姉さんが私の教官になってよ!

[ゾフィア] へぇ……?

[マリア] (あれ? マズった――かな?)

[ゾフィア] そういえば、最後に私たちが剣の稽古をしたのって、いつだったかしらね?

[マリア] ……お姉ちゃんがカジミエーシュを去るより前だっけ?

[ゾフィア] じゃあその時君に教えた剣術はどんな技だった? どの国の? どういう時に使うもの?

[マリア] えーと……あはは……ど……どの技だったかな?

[ゾフィア] ……うん、いいわ。

[ゾフィア] 明日の朝、うちの庭の訓練場に集合よ。遅れたりしないわよね? 騎士のマリアさん?

[マリア] え? う……うん、遅れない、絶対遅れないから!

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