aklib_story_ドッソレスホリデー_DH-2_第一ラウンド_戦闘後

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ドッソレスホリデー_DH-2_第一ラウンド_戦闘後

チェンとユーシャのコンビネーションはとてもいいとは言い難い。それを理解している二人は、別行動をとることにした。


[D.D.D.] 強い、強すぎるー! 3チームが手を組んで包囲したにも関わらず……『龍威鼠心』はいともたやすく彼らを片付けてしまったー!

[D.D.D.] それにしても、リン選手がバトル中に使っていたのは一体どんな能力なんだろう?

[D.D.D.] ってわけでディレクター、リプレイよろしく!

リン・ユーシャは軽く頷くと、そばにあった家のガラス窓をさらりと撫でた。すると、ガラスは溶けるようにゆっくりと消えていく。

――そして、彼女の手に鋭いナイフが現れた。その刃は無色透明に近く、太陽の光を反射する僅かな煌めきだけがナイフの存在を証明していた。

[D.D.D.] なるほど! わかったぞ! リン選手はなんと、ガラスを武器に変えられるようだーっ! これは予想外の能力っ!

[D.D.D.] まさか彼女があのずば抜けた武術の腕前だけでなく、アメイジングなアーツの技量まで持ち合わせているなんて!

[ホシグマ] ところで、お嬢様。リンお嬢さんのあれは、一体どういう原理なんでしょう?

[スワイヤー] 鼠王と同じよ。実はユーシャも砂を操るアーツが使えるの。まあ、方向性は違うけどね。

[スワイヤー] アイツは小さい頃から、その辺の砂をガラスに変えたりしてたわ。アタシはそれで遊びたくて、作ってってよくせがんでたものよ。

[ホシグマ] なるほど。確かに、ガラスも砂でできているわけですからね。

[ホシグマ] そういえば、鼠王は砂嵐をも生み出すことができる、と聞いたことがありますが、リンお嬢さんにもそれが可能なんでしょうか?

[スワイヤー] さあね。たとえできたとしても、そういうのは好きじゃなさそうだけど。

[ホシグマ] ああ、確かに。彼女は、そういう派手な技がお好きなタイプには見えませんね。

[D.D.D.] リン選手の持つ無敵のアーツに、チェン選手の精確な銃撃。そしてエルネスト選手がそれをカバーする……これはまさに、パーフェクト・パフォーマンスと言えそうだね!

[D.D.D.] どう思う? パンチョさん。今回勝つのは、やっぱりこのチームかなあ?

[パンチョ] 『龍威鼠心』は個人の能力こそ高いが、チームワーク不足が否めないな。

[D.D.D.] なるほどなるほど。確かにこういう試合では、個人の能力頼りで目立ちすぎると、ほかの人たちから狙われてドッカーン! なーんてこともあるよね。

[D.D.D.] 団結こそが最終的な勝利の鍵だと、歴史も繰り返し証明してるわけだし!

[ホシグマ] あの人、鋭いですねぇ。チェンとリンお嬢さんの持つ、最大の問題点を一目で見抜くなんて。

[スワイヤー] 確かにね。チェンはアンタと組むのに慣れてるし、共闘に連携が必要なのは分かってるだろうけど、ユーシャの戦い方を知らない上、得意の剣術を封じてるから、思うようには動けてないようね。

[スワイヤー] で、ネズ公の方はどうかって言えば、そもそも、「連携」の二文字をどう書くかすら知らないでしょ。

[スワイヤー] っていうか、もう何回もチェンを巻き添えにしかけてるじゃない。まあ、アイツの反応が早いお陰で今のところ問題にはなってないけど。

[スワイヤー] 笑えるわね。知らない人から見たら、息ぴったりに見えそうだわ。

[スワイヤー] ふぅん、あのエルネストとかいうチームメイトも賢いじゃない。少しも二人に近づこうとしてないわよ。

[スワイヤー] そうでもしなきゃ命がいくつあっても足りないってこと、わかってるみたいだし。

[ホシグマ] 素晴らしい観察眼です、お嬢様。本当に目覚ましい成長ぶりです。私がご説明を差し上げなければと思っていたのですが、必要ありませんでしたね。

[スワイヤー] 当然でしょ。チェンのポジションを引き継ぐために、アタシだって精一杯努力してるのよ。

[ホシグマ] その点について疑ったことなどありませんよ。ただ、お嬢様がこんなに速く成長されるとは思ってもいなかったのでね、いやあ、素晴らしい。

[スワイヤー] 大先輩ぶって感心するのはやめなさい。給料減らすわよ。

[ホシグマ] おっと、お嬢様は非常に寛大なお方でいらっしゃるはずだ。小官のような下っ端なんかと張り合わないでくださいよ。ね、この通りですから。

[スワイヤー] ふん、仕方ないわね。許してあげましょう。

[ホシグマ] それにしてもですよ、彼女たちが戦っている姿を見ていると、確かに知り合ったばかりの頃のチェンのことを思い出しますね。

[スワイヤー] アイツ、昔からこんな感じだったの?

[ホシグマ] いえ、むしろ真逆です。当時の彼女は、今のリンお嬢さんと似たようなものでした。

[ホシグマ] もし当時のチェンと、今のリンお嬢さんで組んだりしたら……そのうち本当に仲間割れして戦い始めるんじゃないですかね、ははは。

[チェン] ――おい、リン・ユーシャ。さっきからお前のナイフに何度も切られかけているんだが。

[ユーシャ] そう。あなたの狙撃こそ、大して精確じゃないみたいだけど?

[チェン] どうやら、個人的な感情のみならず戦術の上でも、我々はチームを組むのに適していないようだな。

[ユーシャ] 説得力に満ちた結論ですこと。じゃあ、やっぱり別行動しましょ。

[エルネスト] いやいや、ちょっと待って、二人とも。

[エルネスト] ……えーっと、こうしよう。

[エルネスト] 二人の馬が合わないのはわかってるんだけどさ。チームを組んだからには、できるだけチームらしく行動しない?

[エルネスト] 前も言ったけど、試合中は通信ができないんだ。それに、二人は金塊を探すだけじゃなくて、きっと存在するだろう危険分子のことも調査しようとしてるでしょ。

[エルネスト] 確かに、二人は個々の能力としてなら、すっごく高いものを持ってるけどさ。ほら、炎国にもこういう言葉があるじゃない――備えあれば憂いなし、って。

[エルネスト] だから金塊を手に入れたかどうかに関わらず、一時間ごとに一度ここに集まるっていう作戦を提案したいんだけど……どうかな?

[エルネスト] もしその時に片方が来なければ、もう一方は臨機応変に行動するってことで。

[チェン] わかった。異論はない。

[ユーシャ] まあ、悪くはないわね。

[エルネスト] ふぅ、よかった。それじゃ決まりだね。助かったよ、二人が協力してくれるならそれに越したことはないからさ。

[ユーシャ] じゃあ、私は行くわ。

[エルネスト] うわ……リンさん、行動速いな。もう行っちゃったよ……

[エルネスト] チェンさんも単独行動する? それとも、俺もついていった方がいいかな?

[チェン] 私たちのことで、気を回しすぎるのはやめてくれ。我々も、意地のためにすべてを顧みないというわけではないからな。正しいことを間違いだとは言わないし、するべきことはきちんとするさ。

[エルネスト] うーん……まあ、合う合わないの問題がなかったとしても、第一ラウンドでの別行動はよく見る戦法なんだよ。

[エルネスト] ただ、俺たちは三人しかいないってことを考慮すると、全員でバラける必要はないと思うんだ。

[エルネスト] だから、やっぱり俺はチェンさんと行動しようかな。

[チェン] そういうことなら、いいだろう。行こうか。

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