aklib_story_ウォルモンドの薄暮_TW-8_月光の零落_戦闘前

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ウォルモンドの薄暮_TW-8_月光の零落_戦闘前

市民が焼死する様子を目撃したタチヤナは平静を失い、容疑者の死によりフォリニックは再び失意のどん底に落ちた。しかしそれでも、戦場は彼女を待ってはくれない。今ロドスの前に立ちはだかるのは、レユニオンのサルカズ部隊「マドロック小隊」なのだから。


[住民A] タチヤナ! 最後の「蓄音機」も破壊されちゃったわ! もうあの巨人に対抗するすべがない!

[住民B] まずい! 暴徒たちが家を燃やし始めた! クソッ……火が広がってる!

[住民B] おい、タチヤナ、セベリンはどうした! こんなときに出てこないなんて、何をやってんだ!?

[タチヤナ] セベリン憲兵長は……負傷して、休んでおられます……

[住民A] 負傷!? 休んでるですって!? 私たちはみんな命がけで――

[住民B] 黙れ! 今は言い争ってる場合じゃない。こちらが劣勢なんだぞ、わからないのか!

[住民A] じゃああんたのアーツが役に立ってるとでもいうの!? ちっとも使い物にならないじゃない!

[タチヤナ] 喧嘩はやめてください! 皆さんそれぞれの管轄エリアを守って、少なくとも防御性のアーツだけは維持――

[住民B] 東だ! 東を守ってる術師がやられた! 早く他の奴でカバーを……

[タチヤナ] 危ない――!

[住民A] 火よ! 火が来るわ!

[住民B] た、助けて――ああああ――

[住民A] は、早く火を消して! 消火できる術師はいないの!?

[住民B] 助け――痛え、痛えよお――

[住民B] タチヤナ――助けて――くれ――

[タチヤナ] ああ……ああああ……

意味を持った言葉は、すぐに悲鳴にかき消された。

皮膚の焼ける臭い。どんな下劣な悪ふざけよりも、ゾッとする。

炎に包まれた人々は次第に形を失い、黒い影のようになった。

焼け焦げた肉と血の塊が、苦しみの声を上げる――

苦しい、助けてくれ――それはそう言った。

そうだ――

そうだ――トールも、同じ苦しみを味わったのだろうか?

[住民] タチヤナ!! ぼんやりするな! 離れ過ぎだ! 気をつけろ!

[タチヤナ] ……えっ?

[武装した感染者] チャンスだ! 一緒に焼け死ね! 貴族のペットが!

[タチヤナ] ――

[マドロック] ……

[サルカズ戦士] すごい混乱だな。この街は一度だって一致団結したことはないんだろう、バラバラに切り分けられたケーキみたいに。

[サルカズ戦士] そして最後に残った一切れも、もうすぐペチャンコになる……無力だな。

[サルカズ戦士] もし仮に、俺たちが今撤退したら、彼らは生き残れると思うか?

[サルカズ戦士] リターニアは、きっと彼らを見捨てて放置するだろうな。

[サルカズ戦士] この近くにある二つの移動都市にも、二十四の塔にも、冬霊山脈の中で野垂れ死ぬ小さな街のことを気に留める権力者はいない。

[マドロック] ――哀れだな。

[マドロック] 私たちは、かつてのそんな悲しみに嫌気が差して、今ここに立っているんだ。それを忘れるな。

[マドロック] 独りよがりに憂うことに、意味はない。

[サルカズ戦士] ……もちろんだ。それにしても、珍しい物言いだな。俺はただ愚痴をこぼしただけさ。

[サルカズ戦士] これだけ耐え忍んでも、結局なんにも変えられず、事態は悪化の一途をたどるばかりだ。

[サルカズ戦士] それがちょっと悔しいって……そんな愚痴さ。

[住民] 奴らが突っ込んでくるぞ!

[スズラン] ――うっ!!

[スズラン] わ、私がサポートします!

[武装した感染者] クソッ! やっとの思いで開いた突破口が!

[武装した感染者] あのヴァルポはどこから来たんだ!? どうして九本も尻尾が?

[武装した感染者] いやそうじゃない! 君も感染者だろ! どうしてそっちの味方をするんだ!?

[武装した感染者] そんな歳で――君のこれまでの不幸や苦しみを考えれば、貴族どもに復讐すべきだと思わないのか!

[スズラン] ――

[武装した感染者] 同胞よ! 奴らに抗え! 騙されるな!

[武装した感染者] 奴らこそが俺たちを弾圧してきた罪人なんだ!

[スズラン] あなたは――

[武装した感染者] えっ?

[スズラン] あなたは――何を言ってるんですか!

[住民] あ、あいつらを吹き飛ばした?

[住民] あ、あの子の周りのアーツの流れが鈍くなってる? あれはどこの国のアーツだ、学校でも習ったことない……

[スズラン] 不幸や苦しみ? そんなものありません! 勝手に人の人生を決めないでください。ロドスの先輩たちも、お母さんもお父さんも、みんな優しくしてくれてます!

[スズラン] それとあなたたち! こっそり逃げようとしないで!

[武装した感染者] くっ――!? か、身体が……!

[スズラン] ううう――!

[スズラン] そんなふうに――

[スズラン] ――結果を考えずに動くから、最悪の事態を招くんです!

[グレースロート] ……これからどうするつもり?

[フォリニック] ビーダーマン……犯人はもう死んだんでしょう。

[グレースロート] エアースカーペとカシャが帰ってくるまでは、彼が犯人かはわからない。確かな証拠はまだないから……

[フォリニック] ……じゃあ真犯人はいったい誰なの? 今私たちの目の前で起きてることは何だと言うの?

[グレースロート] それを議論する前に、まずはこの暴動を鎮圧しないと。

[フォリニック] ……

[グレースロート] ――フォリニック?

[フォリニック] 私は……私はもうどうしたらいいかわからない……

[グレースロート] ……気持ちはわかる。

[グレースロート] 感染者を助ける医者が、感染者の暴動に巻き込まれて命を落とすなんて不条理さと無力さは……

[グレースロート] 私も……昔は誰より……そんなことを憎んでいた。

[スズラン] ううう――!

[スズラン] どうして、どうしてこんなことをするんですか? 皆さん今の状況がわからないんですか?

[スズラン] 殺し合いでは何も生まれません! 辛い思いをするだけです!

[武装した感染者] どけ! いつまでも邪魔するつもりなら、子供だからってただじゃおかねぇぞ!

[スズラン] ――どきません!

[スズラン] 私の話を聞いてください――

[武装した感染者] 誰が正しくて誰が間違ってるか、言って聞かせようってのか?

[武装した感染者] 何が俺たちをここまでさせたか、君は知っているのか? 時代も、国も、人の心も、何もかもクソだ。理想論を語る奴らはみんな君みたいなことを言うが……

[武装した感染者] だが、もし君が道を歩いてる途中で、ナイフを持った暴徒が道を塞いできて、そいつにどうやって生きていけばいいかって聞かれたら――

[武装した感染者] 君はどこから説明するつもりだ? リターニアの腐った制度か、それともレム・ビリトンの血で覆われた事業開拓か?

[武装した感染者] 違うだろ!?

[スズラン] うう――! もう――抑えきれな――!

[武装した感染者] そいつは、君を目にした時点で、どうやって君を殺して活路を開くしか考えてないんだ。君は君で、すぐにでもそいつを撃ち殺すか、それともなんとか距離をとってから撃ち殺すかなんて考える――

[武装した感染者] 生きたいって気持ちは、たいていそんなふうに単純なものなんだ。

[武装した感染者] そしていつも犠牲になるのは俺たちみたいにちっぽけな存在さ、君たちじゃない。

[武装した感染者] あいつらは高枕で眠り、理想を語る。時代を非難して騒ぎ立てるくせに、俺たちみたいな「敵」は遠ざけ、すぐ近くにある問題も見て見ぬ振りをするんだ――はぁっ!

[武装した感染者] ――効いたか!? 休まず防衛線に突っ込め!

[スズラン] ……でも私は、皆さんに罪はないって思ってます……あなたたち感染者だって、きっとやりたくてやってるわけじゃ……!

[武装した感染者] クソが、同情なんていらねぇんだよ。俺たちはみんな罪人さ。

[武装した感染者] 俺たちはただ生き延びようとしてるだけだ、それで他の奴らが死ぬ結果になってもな。自分の命がかかってんのに、慈善家なんてやってられねぇんだよ!

[スズラン] ――!

[武装した感染者] おい! あのヴァルポ、もうキツそうだ。ほら、九尾のあいつ!

[武装した感染者] 今すぐあいつを狙え!

[武装した感染者] うっ――アーツユニットが折られた? この矢はどこから!?

[グレースロート] 助けに来た。

[グレースロート] エアースカーペとカシャは、巻き込まれた住民の避難をサポートしてる。私たちは――

[グレースロート] ――フォリニック?

[フォリニック] ……レユニオンを。

[フォリニック] 人波の中で、誰かが叫んだのを確かに聞いた。レユニオンが感染者を解き放ったって。

[グレースロート] 彼らは……

[フォリニック] 違う――!

[フォリニック] 主導者を倒してしまえば、この暴動は崩壊するわ!

[フォリニック] アントだって、彼らがいなければあんな――!

[グレースロート] フォリニック!

[フォリニック] ――

[グレースロート] 冷静になって。

[フォリニック] ……ごめんなさい。

[フォリニック] あなたにとって、こんなことは初めてじゃないのよね。私も……。

[フォリニック] だけど……どうしたらいいかわからなくて。

[フォリニック] ……でも、私たちがこの暴動を止めないといけないのよね。

[サルカズ戦士] ……あれがロドスか。あんたが待っていたのは、わずか数人の子供たちに過ぎなかったというわけだ。

[サルカズ戦士] 未熟な奴らめ、ここまで何も阻止できなかったくせに、今さら出てきても遅い。

[マドロック] ……だが、彼らは戦士だ。

[サルカズ戦士] ほう――?

[マドロック] 戦士が、戦場に足を踏み出した。

[マドロック] 他の者たちを撤退させてくれ。

[マドロック] 私たちが行くぞ。

サルカズがレユニオンのシンボルを引き剥がし、手を天に掲げた。岩石は崩れ、再び形を成した。

戦場は静寂に包まれた。反乱者たちは自ら道を譲り、抵抗していた者たちも怯えから後ずさった。

サルカズは、一歩を踏み出した。

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