主なケイオス・スペースマリーンの戦闘集団一覧(ウォーハンマー40K)

ページ名:主なケイオス_スペースマリーンの戦闘集団一覧_ウォーハンマー40K_

登録日:2022/09/15 (木) 20:43:27
更新日:2024/06/27 Thu 10:28:44NEW!
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“渇きたる神々の咆哮が帳の彼方から轟く時、我ら戦いに赴かん。神々の憤怒が我らの艦を襲う時、我ら生贄を捧げん。魂の飢え襲い来る時、我ら汝が元へと赴かん。”



画像出典:ゲーム「warhammer 40000 Eternal Crusade」より


主なケイオス・スペースマリーンの戦闘集団一覧とは、ウォーハンマー40Kに登場する超人兵士「ケイオススペースマリーン」の戦闘集団(ウォーバンド)をまとめたものである。
公式で設定されている戦闘集団は数多くあるので、本記事はその中でも有名なものを中心として紹介していく。本記事でいう"有名なものという定義"は、コデックスを初めとしたルールブックや、雑誌である月刊ホワイトドワーフに掲載されているものとする。


概要

〈帝国〉の歴史上、どれほど多くのスペースマリーンが背信者となったのか、またその堕落に至る無数の理由はいかなるものか、正確に知るものなど皆無である。銀河系は実に広大であり、信頼に足るデータのみを入手するのは不可能だ。
そして背信者たちが最初にその兆候を見せ始めるのは、〈帝国〉領諸惑星を、大抵は自らとは異なるアイデンティティの下で餌食にする時だ。それは背信の真の規模を覆い隠す。
【堕落に至る道】
〈帝国〉領内では「背信」を口にする事すら非常に危険を伴う。大半の〈帝国〉臣民にとって、伝説の〈戦闘者〉たるスペースマリーンがステンドグラスやそびえ立つ巨像のモチーフとしてしか知らぬ、栄光に満ちた高貴なる戦士たちが、皇帝を裏切るなどとは考えも及ばない。
原初の大逆兵団に関する事実に気づきはじめ、厳密な監視下に置かれた研究者たちでさえ、それを恐るべき太古の逸話として片付け、もはや誰も実態を知らぬ遠い過去の神話、神と聖人が共に歩んでいた時代の言い伝えとしておかねばならない。だがそれでもスペースマリーンたちは反乱し、大逆者となり、厳かなる誓いを無造作に切り捨てる。
スペースマリーンが堕落した時、皇帝の授け給いし力の数々、高められた能力、遺伝種子レベルで刻まれた強固な意志といった美徳は、すべて人類を攻撃対象として再設定されるのだ。そのような許されざる背信を警戒する〈帝国〉の識者たちは、そうした事例がことのほか稀であることに深い感謝の念を抱く。
高いカリスマ性を持つ指揮官の多大なる影響力が浸透したことで、あるいは戦団の遺伝種子に生じた致命的な欠陥が一斉に芽吹いて、あるいは単なる独善的な自己正当化を通じて、戦団自体が神聖なる誓いを破ったこともあるが、多くの場合、反逆は個人や小規模な部隊によって行われる。例えば、惑星「ガラーラ」でディーモンの侵攻から要塞〈固陋なる砦〉の防備についていた「ゴールデンブレイド戦団」の一個駐屯部隊は、後の背信戦団「ブレイズン・ビースト」の中核となった。
奇怪なる狂気に取り憑かれた彼らは、戦闘兵器を冒涜し、流血の儀式によって襲いかかるディーモンを従属させ、穢された戦闘車両の内部に閉じ込めたのだ。
【〈歪み〉の脅威】
渾沌のエネルギーである〈歪み〉(ワープ)の力による穢れの危険性は、決して過小評価してはならない。それは戦士の肉体であれ精神であれ確実に影響を及ぼし、しかもその侵食経路は実に巧妙で分かりにくいのだ。
グレイナイト戦団が、彼らと共に戦った忠実なるスペースマリーンの生存者に精神洗浄措置を行ったと信じられているのは、これが理由である。それはまた、戦団が戦場でディーモンとの会敵を経た後、戦闘同胞たちに及ぼされた穢れの除去儀式を多大な労苦と共に執り行う理由でもある。
だが、これだけでは不十分である場合もしばしばだ。ディーモンの憑依した武器で傷ついた者、物理法則を超越した妖術によって呪われた者たちが戦った相手は姿も見えず音にも聞こえない。
だが、〈歪み〉の穢れは戦士を蝕み、検出されることなく残り続け、心と魂を堕落させるまで広がり続けるのだ。異端者となった戦士は、戦団を脱走し、時にその渦中でかつての同胞を殺しさえし、自らの手で行く手を見出さなけらばならない。
彼らは意識していてもいなくても、〈渦〉や〈恐怖の眼〉といったケイオススペースマリーンたちの拠点へと赴き、あるいは長大な〈大亀裂〉に沿って移動し、身を隠す。堕落した脱走者たちがこれらの不浄なる銀河の一角に続々と集結することで、背信のスペースマリーンの戦闘集団は必然的に成長を重ねるのだ。
【悪行の戦闘者】
たとえ小規模であれ、ケイオススペースマリーンの戦闘集団は比類なき戦闘能力を誇る。鈍重な交易船を移乗攻撃によって制圧したり、前哨基地の人員を皆殺しにしたりすることも、施設ごと略奪することも、あるいは経験豊富な兵士たちで構成された偵察部隊を奇襲することも容易い。
こうした戦闘集団を構成するこのは、多種多様な背景を持つ戦士たちだ。かつて固守していた信条も、皇帝の名の下に従っていた戦術も、今や新たな戦闘同胞たちとの関係性に埋没している。
これらの戦闘集団は、暗黒神の名の下に略奪や殺戮、捧げる犠牲などにおいて独自の様式を積み重ねてゆく。ある者は血に飢えた屠殺者に、ある者は神秘の業に長けた戦士になり、あるいは強奪した敵の要塞に君臨する暴君や、堕落した愉悦と興奮のために獲物を狙う狩人になる者もいる。
またある者は熱狂的と言えるほどの謹厳さを保ち続ける。例えば“削られし鬣”の戦闘集団は〈帝国〉の価値観では屈辱と見なされるような事象を執拗に崇拝する。
彼らはかつて自分たちが裏切られ、見捨てられ、弱者に従属していたのだと信じている。その心は頑なになり、どれほど傷を受けようとも、自分たちを下位に貶める事を是とするあらゆる存在を打破しようとしている。
【組織の分離、離反】
異端戦闘者の戦闘集団が全て忠誠派戦団からの直接的な離反者とは限らない。「ヴァラドカール」が率いる戦闘集団である“影の眷族”(シャドウキン)は、アバドンの第十二次〈黒き征戦〉以降にブラックレギオン兵団から分離したが、分離の理由は不明である。
彼らを束ねる戦将“血に塗れし屍鬼”ことヴァラドカールは、彼の首を大元帥に捧げようと目論むアバドン派の戦闘集団の追撃をかわし続けている。シャドウキンらは〈皇帝の憤怒の嵐〉と呼ばれる〈歪み〉の亀裂付近で観測された不安定な軌道の小惑星から出撃している。
戦闘集団のケイオスソーサラーは、この光なき小惑星を「ドラカガン」と名付けている。この天体が定期的に消失と別の場所への出現を繰り返す原理は理解し得ぬが、シャドウキンは小惑星と共に転々と移動している。
それはあたかも銀河系を通過する経路を辿りつつあるかのようであり、出没の度に銀河北部の〈帝国途絶領域〉へと接近している模様だ。シャドウキンは、暗き小惑星が通過する航路の近隣にあるあらゆる星系を攻撃対象にするが、ドラカガンは二度と同じ場所に留まらないため、戦闘集団が報復から逃れるのは容易い。
その他戦略上の理由から、複数の大逆兵団と同盟関係を結んでいる戦闘集団は数多く存在する。シャドウキンのような対膣的な離反によって生まれる戦闘集団もあれば、畏怖の念から崇拝対象を模倣したり、追随したり、あるいはより不吉なる関係として対象になりすますことから形成される戦闘集団も存在する。
また、大逆兵団の奉ずる暗黒神を同様に崇拝することによって、時間と共に戦闘集団の内容も変化してゆく。そうした戦闘集団は、大逆兵団が神々へ捧げる供物や生贄に匹敵する献身を行い、大逆兵団に匹敵する、あるいはそれらを上回る恩寵を授かろうと目論んでいる可能性もある。
だが、彼らがどれほど自らの行為を正当化しようとも、いかに長きに渡って〈栄光への道〉を歩もうとも、あらゆる点で呪われた存在であることに変わりはない。


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大逆の兵団

かつて彼らは、第42千年紀(西暦41000年)から一万年以上前の〈大征戦〉の時代に活躍した原初のスペースマリーン兵団であった。皇帝の名の下に彼らは銀河中で戦い、人類に新たなる光輝をもたらしたのである。
しかし彼らは渾沌の神々による策略によって次々と〈帝国〉を離反し、銀河系最大の内戦である〈ホルスの大逆〉を勃発させて父たる皇帝に叛逆したのであった。18にも及ぶスペースマリーン兵団の中でも9つの兵団は皇帝忠誠派と激戦を繰り広げたが、大逆派の総大将であるホルスが戦死し〈ホルスの大逆〉は忠誠派の勝利で幕を閉じた。
後に〈大逆の兵団〉は〈恐怖の眼〉へと敗走し、今でも皇帝の築き上げた〈帝国〉を破壊しようと目論んでいるのだ。



「ブラックレギオン」


「これでもなお、貴様の心が偽りの皇帝への憎悪に啓かれぬのであれば、我らが偉業をことごとく唾棄し、破壊せしめ、嘘偽りを告げたか奴の正体を曝け出させてくれようぞ。ゆっくりとな。」



プライマーク(総主長):総主長ホルス
現指導者:“強奪者”アバドン
サイカー(異能者)の採用:強者に限り不問
傾倒する渾沌神:なし(“強奪者”アバドンを崇拝)
【概要】
一万年にもわたって繰り広げられている〈帝国〉と渾沌の軍勢による果てしなき戦争。その中心となっているのがブラックレギオン兵団であり、異端審問庁の秘蔵する膨大でかつ戦慄すべき記録においてのみならず、他の大逆兵団の擁する無数の強大な戦闘集団と比較しても遥かに卓越した存在として知られている。
彼らは“強奪者”アバドン自らが率いる禍々しき漆黒の殺戮者にして〈恐怖の眼〉から放たれる最大最凶の兵団に他ならない。〈恐怖の眼〉に潜む無数の凶悪な軍勢や戦闘集団が如何なる規模を誇ろうとも、そのいずれもがブラックレギオンとは比較にならない。
彼らは、居並ぶ大逆兵団の規模でとらえた場合でも圧倒的な兵数を擁しているのだ。この兵団は星系規模の侵攻作戦を行えるのみならず、銀河系全体で同様の作戦を無数にかつ同時に遂行できるだけの軍事力を有している。
それは同時に〈帝国〉に対する執拗にして無慈悲なる脅威なのだ。この兵団の古参兵は何千年もの間、あらゆる〈黒き征戦〉の最前線に立ち、幾度となく〈帝国〉の贅肉を貫く槍の如き攻撃を繰り返してきた。
その際精鋭たる戦士たちは、悪名高き戦闘集団の一人一人はアバドンへの揺るがぬ忠誠を誓っている。現在より数えてはるかに以前のこと、兵団は彼に“大元帥”(ウォーマスター)の称号を贈った。兵団に誇りと力を取り戻させ、その称号を持つ前任者の苦痛に満ちた記憶を斬り捨てさせたのは、他ならぬアバドンだったからである。
【ホルスの伝説】
ブラックレギオンの起源は、その流血と背信の歴史を総主長「ホルス」にまで遡る。今日、ホルスの遺伝種子を受け継がぬ他兵団との戦いは無数に繰り広げられているが、それらは〈帝国〉から見ればことごとく異端の扇動者、大逆の首魁の末裔に過ぎず、等しく堕落の体現であることに変わりはない。
大逆者であるという事実は、それだけで三重の呪いに値する。だがこの兵団の生え抜きである戦士たちは、彼らが率いる総主長と同様、渾沌信仰と背信の道に深く沈んでいることに疑いの余地はない。
真偽のほどは定かではないが、第42千年紀(西暦41000年代)から約11000年前に皇帝によって遂行された〈大征戦〉のさなか、最初に再会した総主長がホルスであったという。総主長は皇帝が造り出した人造人間であり、赤子の頃に何者かの手によって銀河中の居住惑星へと散り散りに飛ばされてしまった。
皇帝は銀河中を転戦しながら我が子である総主長たちを捜索し続けていたのだ。皇帝と再会を果たしたホルスは、「ルナーウルフ」と呼ばれる兵団の指揮官として迎えられたのであった。
ホルスは指揮官としての天賦の才能を発揮し、数多くの征戦で多くの勝利を〈帝国〉にもたらした。異種族「オルク」の大帝国を相手に激戦を繰り広げた名高き「ウラノール征戦」の勝利の後、ホルスの功績は大いに讃えられ、この兵団は「サン・オヴ・ホルス」と改名された。
兵団は敬愛する総主長に対して深い尊崇と誇りを抱いていたが、これは同時に他の兵団に対する優越感を、恐らくは後々に訪れる破滅の遠因を育ませたのだ・・。
【破滅への道、大逆への道】
極秘のプロジェクト遂行のために惑星ウラノールを後にした皇帝は、自らの代わりに〈大征戦〉を進めさせるために、ホルスに〈帝国〉の「大元帥」(ウォーマスター)、すなわち〈帝国〉軍と18あるスペースマリーン兵団を指揮する権限を有する称号を与えたのだ。それは同時にホルスの兄弟でもあった他の総主長との間には、彼がそのような優れた位階へと昇格したことに対する、父たる皇帝への忠誠心を競わせられているような緊張を生むに至った。
サン・オヴ・ホルス兵団の戦士たちは、兵団やそれを率いる総主長と皇帝を除けば銀河系で最も偉大な将軍と兵士である自らに向けられる敵愾心を侮辱と見なした。彼らは居並ぶ18人の総主長たちの中でも最もホルスが卓越していることを、自らが他兵団の戦士たちよりも優れている事と同一視するようになった。
自らを皇帝の最も寵愛深き選ばれし子らとして讃え、非難の声を唾棄すべき嫉妬の産物と見なしたのである。しかし実際には、ホルス自身は大元帥という重大な責務を負っており、今まで以上の負担と重圧は想像以上のものであった。
時には同じ総主長であるローガル・ドルンやロブート・グィリマンといった兄弟や戦友であるサングィヌスたちに度々相談を持ち掛ける事も珍しくなかった。しかし、その陰では渾沌の神々とその崇拝者による策略によってホルスは皇帝を憎み、後に銀河系規模の大内乱である〈ホルスの大逆〉を引き起こすに至った。
そしてホルスに全面的に従った〈大逆の兵団〉は堕落への道を辿り、大元帥のため、そして暗黒神らのために嬉々として戦った。だが、ホルスの息子たちであるサン・オヴ・ホルスの戦士たちにとって何よりも重要であった父たるホルスが倒れた際、反乱の要として戦っていた兵団の役割は終わりを告げた。
ホルスの遺体を皇帝忠誠派の手から奪還するために多大な犠牲を強いられたものの、兵団の戦士たちは遺体を取り戻すことに成功し、当時第一中隊長であった「アバドン」は地球からの熾烈な撤退戦を指揮した。
【敗走せし賊軍】
他の大逆兵団の中には、地球からの撤退を最初に開始したサン・オヴ・ホルス兵団を非難した者たちもいたが、生き残った異端者たちは彼らの後に続き、最終的に銀河北部に存在する巨大なる〈歪み〉の亀裂である〈恐怖の眼〉へと落ち延びた。サン・オヴ・ホルスの一員として戦った異端戦闘者の大半は第42千年紀(西暦41000年代)における〈揺るがざる時代〉(エラ・インドミトゥス)を生き延びているが、そのような古参兵であれ、当時の記憶や知識は完璧とは程遠い。
彼らの増強された記憶想起能力でさえ、一万年の歳月を耐え抜くことは不可能であった。というのも、彼らが晒されてきた歳月は、嘘と偽装、欺瞞によって歪んでるからだ。
さらに言えば、それらの大半は彼ら自身が絶え間なく撒いてきたものであった。かつて維持されていた完璧な記憶は、苦闘と憤懣での果てに穢され、ねじれ、影の如く朧に遠ざかってしまった。
絶望的な余波の混乱は言うに及ばず、忌まわしき大逆時代のさなかに関しても、何が起こったのかを正確に述べる事の出来る者はもはや皆無に等しい。〈恐怖の眼〉内部の領土を巡って異端者同士が戦わざるを得なくなった事もその一因だったと言えよう。
ホルスを偶像視していた勢力の領域では、多くの息子たちは父たる彼の死を嘆き、ホルスを神として崇拝さえしていた。だが、この信仰は長く続かず、何世紀もの間サン・オヴ・ホルス兵団は執拗で徹底的な蹂躙を受ける事となった。
〈恐怖の眼〉の中で苦闘の果てに獲得した領土は他勢力によって奪われ、破壊され、他者に対する優越心は見る影もなく蝕まれた。その結果、兵団の残党は第一中隊長アバドンに大元帥すなわちウォーマスターの称号を捧げ、彼に忠誠を誓ったのであった。
【ブラックレギオン兵団の誕生】
アバドンはホルスの名を拒み、サン・オヴ・ホルス兵団の名と称号を打ち捨て、忠誠を誓った者たちに装甲を黒く塗りつぶすように命じたのであった。これは彼らの犯した失策を思い出させるのみならず、彼らに対し敵意と侮蔑を向けた者たちに対する報復の誓いをも意味していた。
アバドン率いる戦闘集団は漆黒の兵団、すなわち「ブラックレギオン」の名で知れ渡ることとなり、新たなる大元帥のもとに歪んだ栄光を取り戻すべく、熾烈な戦いを開始したのであった。
【おびただしき軍団】
“強奪者”アバドンの面前で選んで忠誠を述べ、服従を誓う限り、戦士はブラックレギオンの一員となる事ができる。〈ホルスの大逆〉以来数千年に渡る無数の戦争と報復の抗争が行われる間に、数十に達する戦団といくつかの大逆兵団からアバドンの麾下にケイオススペースマリーンたちが加わっている。
今やブラックレギオンは、無数の強大な戦将、あらゆる階層から異端思想、戦略的専門性、〈禍つ神々〉への信仰に至るまで構成された戦闘集団を誇るまでになった。通常、これらの戦闘集団は独立行動を展開し、惑星侵攻や〈帝国〉領の略奪をそれぞれの戦将の名の下に繰り広げ、独自の目的を追求している。
〈帝国〉の管理官と記録従僕は、ブラックレギオンの繰り出す苛烈な強襲パターンの照合と分析を行う試みにおいて一定の成果を出した。それによると、彼らは迅速に敵を近接戦闘へと持ち込み、退路を断って殲滅する戦術が顕著であるとの指摘がなされている。
彼らは敵戦列に対峙すると、執拗に前進し、邪悪な誓言を吠え猛りつつ、一斉射撃を展開していく。敵が露出させた弱点は何処であれ、直ちにブラックレギオンの餌食となる。敵は精鋭兵力を送り込まれて側面を瓦解させられ、筆頭戦士は虐殺されてその死体が戦場を飾るのだ。
指揮官たちの中には、ブラックレギオン固有の遺伝種子の優越性を主張する者もいる。だが実態は、他の遺伝種子系統を持つスペースマリーンたちが大挙して兵団に加わった事、そして〈歪み〉の腐敗による影響により、その重要性にはもはや根拠はない。
それよりも遥かに重要なのは、アバドンに対する忠誠心である。事実、ブラックレギオンの戦闘集団は変異を称揚し、積極的に己が肉体をディーモンへ捧げようとしているのだ。
【歴戦の猛者たち】
ブラックレギオンは、あらゆる脅威に対する反撃を実行可能な、極めて多様性に富んだ能力と専門性とを兼ね備えた膨大な種類の戦闘集団を擁している。彼らは戦年単位で〈永年の抗争〉を戦い抜いてきた歴戦の猛者たちであり、それに加えて〈歪みの嵐〉がもたらす狂気と恐怖の中で生き延びつつ勝利を飾ってきた古参兵たちが持つ、膨大な戦闘経験を活かすことが可能だ。
数え切れぬほど存在する戦士たちやその分隊、諸部隊は磨き上げた特異な能力の数々を暗黒神への奉仕に用いている。そのためブラックレギオンの大半の戦闘集団は、他の大逆者たちに比べれば半分程度の力で必要な目的を達成する事ができるのだ。
ブラックレギオンを構成する部隊はアイアンウォリアー兵団から加わった戦士たちを含む戦闘集団であれば、敵の防衛拠点を攻略する際、間違いなくこの攻城戦の専門家たちから恩恵を得るだろう。またケイオスロードの中にはかつてサウザンドサン兵団の一員であった妖術師に神秘的な叡智とディーモンを駆使する業による支援を要求するかもしれない。
一方、アバドンの麾下に集う狂信的で熱狂的なワードベアラー兵団の戦士たちは、しばしばディーモンとの盟約に基づく武器や兵器を戦闘集団に支給し、あるいはカルティストの大群を前線へと送り込む。近年背信者へと生まれ変わったスペースマリーンならば、新たな主の前で〈帝国〉の最新戦力配置情報や、ブラックレギオンの戦闘集団が〈帝国〉の警戒ラインを易々とすり抜けるためのアクセスポイントと〈歪み〉経由航行の暗号を開示する。
【巨大なる異端の軍勢】
この兵団の戦闘集団の規模は、数十人の異端戦闘者たちで構成される少数のものから、数百もの兵が終結する大部隊に至るまで実に多様だ。そうした戦闘集団はそれぞれ専用の輸送機関、強襲戦艦、重巡洋艦、重武装の強襲降下艇や魔導兵器などの戦闘兵器を保有しており、さらに狂信的なカルティストの一大軍団を従えている。
単独の戦闘集団であっても、敵の前哨基地を殲滅させる事は造作もない。高軌道上からの爆撃で敵の防衛態勢に大いに揺さ振りをかけた後、得意とする近接戦闘による殺戮を地上で展開するからだ。
これにより、暴虐を繰り返すケイオスロードは配下の将兵に好きなように略奪を行わせ、心ゆくまで殺戮と勢力圏の拡大を重ね、無用な同盟関係に縛られずに済むのである。だが、アバドンが召集命令を下した際は別だ。
戦闘集団は大元帥への誓いに従って、統一された軍勢となって戦うのである。だがそれでも、ブラックレギオンを構成するのがあらゆる点で「背信者」であることは事実である。
戦将たちは自身は常に競争相手の裏をかこうと陰謀を巡らし、確執を深め、自らの優位と栄光の獲得を目指して争い、他社の功績を貶める事に汲々している。“強奪者”に対する集合的な恐怖に、アバドンの怒りを買った者に訪れた破滅に、まつわる戦慄のみが、ブラックレギオンの諸軍勢に協力体制を強いるのだ。


画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P17イラストより


【主要キャラクター】

  • 「ホルス」

【概要】
「サン・オヴ・ホルス」兵団を率いて〈帝国〉を二分する戦争を皇帝に仕掛けた大逆派の総主長。本名は「ホルス・ルペルカル」。
人間心理に通じ、指揮官としての才能を持つ彼は、一時期は皇帝の代わりに帝国軍の総司令官である〈大元帥〉(ウォーマスター)としての役割を担っていた。
かつては皇帝の寵愛を一身に受け、最も優れた「皇帝の息子」と評されてかつ皇帝の右腕として活躍する。しかし、〈大元帥〉としての任を引き受けた後、渾沌の神々にそそのかされて皇帝を裏切り、帝国を引き裂く内戦〈ホルスの大逆〉を引き起こしてしまう。


画像出典:イラスト集「Visions of Heresy」P101より


総主長ホルスに関して詳しくはこちらを参照されたし。


  • 「エゼカイル・アバドン」

渾沌の大元帥



【概要】
数多くのケイオススペースマリーン統べる者にて〈大元帥〉(ウォーマスター)の異名を持つ強奪者。その禍々しい悪名は〈帝国〉内でも名状し難い冷酷無惨なる者として知られている。
優れた指揮能力と統率力、そして圧倒的な戦闘能力はまさにホルスの後継者と言っても過言ではない。〈大逆〉後のホルス亡き後、〈大元帥〉としての地位を引継ぎ、崇敬せしホルスの代わりに〈帝国〉を滅ぼすことを心に誓い、一万年たった現在でも〈永遠の抗争〉を続けているのである。
彼はまさにホルスの意志を受け継ぐ後継者でもあり、アバドンの片腕に装備されているパワークロー「ホルスの鈎爪」は、かの大元帥ホルスが使用していたとされる伝説の武器だ。
【ホルスの右腕】
かの〈大征戦〉の時代、ホルス率いる第16兵団「ルナー・ウルフ」の第一中隊長の地位まで昇りつめ、彼の右腕である「四君子」の一人として武功を挙げた。その性格は武闘派で、かのホルスよりも強硬な姿勢で聖務に取り組んでいたという。
また、アバドンはホルスを父のように崇敬し、その並外れた高い能力を持っていることから彼はホルスの遺伝種子から生み出されたクローンではないかと噂されている。〈ホルスの大逆〉が勃発した際も、アバドンの忠誠心は皇帝よりもホルスに向けられていたのは明らかであったのだ。
「ルナー・ウルフ」兵団が「サン・オヴ・ホルス」兵団に改名した後、〈ホルスの大逆〉の内戦においても彼は精鋭部隊である「滅殺者分隊」(ターミネイター・スカッド)を率いて数多くの戦果を上げていった。惑星「イシュトヴァーン」、惑星「ヤラント」、そして地球へと血に塗れた戦役の数々を渡り歩く。
そしてホルスの討死を知ったアバドンは、それまでいかなる定命の者も経験したことの無い、深く暗い憎悪と狂気の淵へと叩き落されたのである。だが、大逆軍が撤退しようとしている直前、アバドンは決死隊を率いてホルスの亡骸を奪還し、忠誠派の猛迫撃の中に血路を開くと、その亡骸ともども兵団を見事〈恐怖の眼〉へと脱出させたのである。
【大元帥を継ぐ者】
アバドンは〈恐怖の眼〉で拠点を構えた後、第31千年紀の781年(西暦30781年)にケイオススペースマリーンと渾沌の悪魔の大軍勢を率いて大侵攻を仕掛ける。〈恐怖の眼〉周りの星系全てに荒廃がもたらされ、〈帝国〉はこの大軍勢を食い止めるために苦戦を強いられた。
彼に率いられた「サン・オヴ・ホルス」兵団は「ブラックレギオン」すなわち黒き兵団と名を改め、侵攻の先陣を切って行く手を阻む者を破壊し尽くしたという。後に第一次〈黒き征戦〉と呼ばれるこの戦いは、〈帝国〉と〈大逆の兵団〉の長きにわたる闘争の始まりを示唆するものであった。
そしてホルスは同時期に渾沌の神々との血の契約をいくつも取り交わした。そして彼は、惑星「ウララン」の“沈黙の塔”地下にある墓所で、破滅の力を秘めた強大なるディーモンブレイド“ドラクニィエン”を見い出したのである。
吠えたける悪魔の剣を手にしたアバドンを止められる者など、まず存在しえないだろう。都市という都市はディーモンたちの果てしなき飢えを満たすための生贄として捧げられ、そのたびにアバドンには惜しみない恩寵の数々が授けられていった。
【大元帥の野望】
この頃からアバドンは「紅蓮の炎をあげて燃え盛る〈帝国〉の廃墟の上に、渾沌の帝国を築く。」という夢を追い始めるようになった。そして〈黒き征戦〉が繰り返し敢行される度に〈帝国〉の賢者でさえも理解不能な暗黒の目的が達成されていくのだ。
そして、彼一人によって〈大逆の兵団〉が束ね上げられ、一万年前にホルスによって始まった背信劇の新たなる幕引きがもたらされるのでは、という恐怖が広まっている。今やアバドン率いる第十三次〈黒き征戦〉によって惑星「ケイディア」は陥落した。
しかし、今現在でも惑星ケイディアが堕とされたとはいえど〈ケイディアの大門〉周辺の支配権をめぐる戦いが続いている。もしもアバドンの軍勢が大門にて勝利を収めたならば、かの大門は大きく開かれ〈恐怖の眼〉から渾沌の軍勢か止め処なくあふれ出てくるだろう。
そして〈帝国〉の中枢である地球へと総攻撃をかけ、銀河は渾沌勢力によって勝利を収めるのだ。



画像出典:マジックザギャザリング「強奪者、アバドン」イラストより


  • 「ハールケン・ワールドクレイマー」

破滅の先触れ



【概要】
あらゆる破滅の前には予兆が存在し、あらゆる厄災の前には前触れが存在する。ハールケン・ワールドクレイマーは生ける禍々しき破滅の予兆である。
彼が先導するこの世のものとは思えない破滅とはすなわち、ブラックレギオンを率いる統べる者“強奪者アバドン”の到来である。ハールケン・ワールドクレイマーは惑星の死を宣言する、アバドンの代弁者としての役割に凶悪な悦びを感じている。
ワールドクレイマーはありふれた脅威や実体の伴わぬ壮語を発しているのではなく、市民にも兵士にも等しく、心胆に恐怖と混乱をもたらす先駆けを担うのである。そのような方法でハールケン・ワールドクレイマーは、ブラックレギオンの襲来を準備し、ワールドクレイマーのラプター部隊は炎の舌を吹き上げ、残虐な襲撃によって混乱と絶望をもたらす。
【恐怖を武器にせよ】
かつて〈大逆の兵団〉は恐怖の価値を学んだ。疑念によって弱体化し、あるいはさらにうまくいけば麻痺した惑星は、すでに半ば征服されたようなものである。
ワールドクレイマーは、人類の指導者たちと同様に暗黒の知識の学者ないし収集者であり、丹念に選ばれた言葉の力を知悉している。ハールケン・ワールドクレイマーは総主長「コンラッド・カーズ」の貴き血で記された書物の中で最も邪悪な“姦計の魔術書”を研究した。
凝固した血で書かれた巻物を紐解き、ワールドクレイマーは兵団に“世界を喰らいし者”としての名声を与えたアングロンのバーサーカーの憤怒に駆り立てられた後、アングロンによって叫ばれた恐怖について学んだ。ワールドクレイマーは自らの正気の中に眠る良心を対価にする事で、恐るべき“マグヌスの書”さえも徹底的に研究した。
これにより、彼は更に恐怖について深く学んだ。ハールケン・ワールドクレイマーが残忍な言葉を発する時、通信は拡声器のみならず、ヴォックス通信網や無数の狂信者の腐敗した喉からも発され、音節毎から滴る剥き出しの満たされた憎悪が団結を粉砕し、大量の投降者を発生させ、そして人々を絶望の底に突き落として自殺に追いやりさえもするのだ。
【破滅の降下】
多くの先導者は、自らの主が到着した時には任務が果たされたと考えるだろう。だがハールケン・ワールドクレイマーは彼方から破壊をもたらすのと同様に、直接行う事にも大いなる悦びを感じる。
ワールドクレイマーは惑星の住民が防衛を配備している場所や取り巻く補給線、作戦指令室や遠隔司令壕へと急行し、急襲する。轟音と共にハールケンは、眼下の敵に対して破滅の時が訪れた事を告げ、地上が敵の血の最期の一敵によって清められるまで虐殺を止める事は無い。
そしてこの虐殺は入念に計画された暴威なのである。敵はワールドクレイマーを阻止しようと足掻き、襲撃を押し返すために前線から戦力を抽出するが、地上に展開する渾沌の軍勢は混乱に乗じて進軍し、統率の乱れた敵の側面を引き裂き、再編中の陣形を噛み砕くのである。
ハールケンが大地に降り立った時、彼はすぐさま虐殺に加わる。ハールケンが闘争の中を切り進む時、彼の残虐さは鳴り響く騒音のみを確実にもたらす。
敵の士気に対する攻撃は、ハールケンが大胆な指揮官や闘士を見つけ出した時にさらに激化する。ハールケン・ワールドクレイマーは自ら敵へと向かい、それらを効率よく串刺しにする。
このようなおぞましい光景は、アバドンの意志からは決して逃れられないことを示し、包囲された惑星の最も強力な戦士の大虐殺は惑星全体からいかなる希望の残滓をも抹殺するのである。
【穢れし魔槍】
ディーモンに祝福された遺産「ヘルスピアー」は“強奪者”の先駆者として長きに渡り仕える過程で数多くの君主や異種族の暴君、そしてケイオスロードの血すらも啜ってきた。そして敵に混乱をもたらす殺害の度にハールケンは歓喜し、自らを更なる流血の行為へと駆り立てていった。
だが、ハールケンの槍は人類や異種族の胸にのみ突き立てられる物ではない。惑星降下に際して、槍を惑星の地殻へと深く突き刺し、八日八晩の間の陥落の約束を轟かせる事は、ハールケンにとっての象徴的な行為となっている。
ハールケン・ワールドクレイマーはその都度それを実現させている。



画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P92イラストより

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「ワードベアラー」


「汝の叫びを抑えるべからず、舌を噛み切るべからず、死の抱擁を受け入れるべからず。我らが汝を真なる神を称える生贄に捧げる時、汝は苦悶の朗誦を捧ぐるべし。それを耳にするは、神々のみ。」



プライマーク(総主長):総主長ローガー
現指導者:総魔長ローガー
サイカー(異能者)の採用:あり
傾倒する渾沌神:分かたれざる渾沌
【概要】
総魔長ローガーの息子たちは暗黒神の熱烈な崇拝者にして渾沌の信仰に身を捧げる狂信的な戦士たちである。彼らは不浄なる瀆神的な対話によってのみならず、ボルトガンやチェーンソードのノコギリ刃状の刃によって、改宗と言う名の堕落…いや狂気を蔓延させる。
そしてしばしば熱狂的な同調者よりも、反意を示す犠牲者たちをより執拗に求めていることは明らかだ。あらゆる大逆兵団の中で、誰よりも信仰心篤く教条主義的な兵団であるワードベアラーは、“言葉を運ぶ者”として渾沌の神々からの信条を広布すべく奮闘する。
それ故に、彼らは皇帝への信仰に背を背けたのみならず、渾沌崇拝を積極的に拡大してゆく。ワードベアラー兵団の戦士たちは、凶悪なる成果を朗誦し、不浄なるルーンと禁断の呪文が刻まれた真紅のパワーアーマーを身にまとい、戦場へと赴く。
ローガーの弟子たちと暗黒神が時宜を得て悍ましき殺戮の儀式に魔力を注ぎ込む時、ディーモンたちの囁きは大気を満たし、、彼らの敵は生贄として捧げられるのである。
【真理を求める者たち】
呪われた渾沌崇拝へと完全に堕落する以前でさえ、ワードベアラー兵団の信仰心はほとんど狂信的な域に達することが知られていた。〈大征戦〉の時代、総主長ローガーとその配下は〈帝国〉の盟主である皇帝を唯一無二の神として崇拝していた。
「ヘラの要塞」に刻まれた断片的な文言は、人類の盟主たる皇帝を祝福して止まぬこのこの兵団の歓喜と称賛が、やがて崇拝へ、そして偶像賛美へと深まっていったかを示している。ローガーと彼の息子たちは、自分が征服した惑星に〈帝国〉の理想を組み込んでゆくことこそが自らの義務であると考えるようになった。
皇帝ほど偉大なる存在は皆無であり、皇帝こそが唯一神である。勝利を重ねるたびに彼らは征服した惑星に皇帝を称える記念碑を打ち立て、その威光を示す神殿を建設していった。
それを知った皇帝は、兵団の所業を非難し、自らを崇拝の対象とした姿勢を公式に糾弾した。皇帝自身は宗教そのものに嫌悪感を抱いており、自らを神として崇められる行為そのもの自体がもってのほかと考えていた。
彼は人類は宗教や信仰に頼るのではなく、知識と理性に基づいた判断を行うべきと考えていた。皇帝は〈帝国公理〉と呼ばれる思想を〈帝国〉に広め、人類における迷妄や狂信を徹底的に排除した。
そんな中、ローガーが行った皇帝信仰は〈帝国公理〉に反する行為として糾弾されるのは当然の結果であった。ワードベアラー兵団が丹精込めて築き上げた記念碑や神殿はことごとく破壊され、捧げたる献身や真摯なる崇拝も完全に拒絶された。
やがて兵団は、全く別のより不吉なる存在へと彼らの関心を向けていった。彼らは〈歪み〉の奥深くで“神”、すなわち渾沌の神々を見出したのである。
新たなる“神”は空前の価値を見出しており、崇拝者を欲していた。そして彼らは皇帝を偽りの神として見なし、秘密裏に皇帝の築き上げた王国を転覆させようと画策した。
そしてワードベアラー兵団は大元帥ホルスをそそのかし、悲惨なる〈ホルスの大逆〉が勃発したのだ。
【渾沌の使途】
ローガー自身の信念が浸透したワードベアラー兵団は、信仰が全てに優先する時代を先駆けた恐るべき存在だ。兵団内では渾沌におけるそれぞれの暗黒神と、その他の無数の〈歪み〉に潜む少数の神格への崇拝は、渾沌の暗黒神全体に対する崇拝と同様に行われている。
ワードベアラーはディーモンを神々に仕える天使と見なしているが、彼ら自身は天使たちよりも高位の存在であると自負している。兵団の戦士たちは、ディーモンの憑依を崇拝行為の一つに挙げており、ディーモンの力を宿した武器や妖術を駆使することを神聖なる行いと見なしている。
ワードベアラー兵団は、魔障惑星「サイカルス」より銀河系全域に向けて虐殺と奴隷狩りの遍歴に赴く。〈帝国途絶領域〉では、惑星「ヴォラキス」の多層都市がそのような虐殺の轍に呑み込まれた。
ワードベアラーが惑星の生存者に力づくで行わせた改宗は、まず渾沌の神々を讃える要塞神殿を建立するための強制労働を行わせたことから始まった。それは短時間だったが、いずれはローガーの息子たちが儀式を完成させるための生贄として捧げられることの予兆でもあった。
【悍ましき印章】
兵団の指揮官たちは、ローガーや暗黒神の神聖なる託宣を無数の神秘的な手法によって解釈する。奴隷の身に落ちぶれた〈帝国〉の聖職者からえぐり出した内蔵、星々の位置を見定める占星術、ディーモンの囁き荼毘に付された骨を投じた位置や形などを通じて最良の航路や仕留めるべき標的、実施の必要な儀式やその他の不浄なる叡智を獲得するのだ。
暗黒の使途、ダークアポスルはいかなる時にいかなる場所へ流血をもたらすかを宣言し、兵団の戦士たちは疑うことなくその宣言に従う。そのことごとくが血に染まり、邪悪なるルーンによって祝福された武器と兵器を携えた彼らは、揺るがぬ信仰を胸に〈禍つ神々〉の紋章を頭上に掲げ、粛々と進軍する。


画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P39イラストより


【主要キャラクター】

  • 「ローガー」

【概要】
「ワードベアラー」兵団を率いる大逆派の総主長。〈最賢者〉(コルヒジアン)の異名を持つ彼は、狂信的なる神学者であると同時に、比類なき哲学者でもある。
布教を得意とし、〈大征戦〉時代では皇帝を神として崇めて宗教活動を行っていた。しかしある日を境に彼は、渾沌の狂信者への道を歩むこととなる。


画像出典:小説「Lorgar: Bearer of the Word」表紙イラストより


総主長ローガーに関して詳しくはこちらを参照されたし。
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「ナイトロード」


「お前自身の計画を台無しにしたお前の目には、何の使い途がある?我らにことごとく嘘を告げようとするその舌に、なんの使い途がある?だが、耳だけは残してやろう。決してお前を我が声より切り離す事はするまいぞ。」



プライマーク(総主長):コンラッド・カーズ
現指導者:不明
サイカー(異能者)の採用:あり
傾倒する渾沌神:なし(忠誠心は殆ど無い)
【概要】
残酷で嗜虐的、苦痛と恐怖を自在に操り、戦術として駆使することに長けたナイトロード兵団は、一万年以上に渡ってその業を磨き続けた。彼らの好む攻撃とは、本格的な戦闘の開始以前に悲嘆と苦悶とを敵にもたらし、その後は連続した強襲作戦と心理的圧迫作用を通じて敵にそうした負の感情を与え続け、どれほど謹厳なる敵の戦意をも奪ってしまうのだ。
''大半のナイトロードは、他の大逆兵団に比べ、特定の渾沌神に対する際立った忠誠を見せる事は無い。むしろ彼らは、自らの悦びと物質的な利益のために戦う。''
彼らは独善的な協議の虜となっている者たちを、偽りの皇帝に従う熱烈な忠誠派であれ、狂信的なケイオススペースマリーンであれ侮蔑している。信仰や献身の代わりに彼らは単純な強さのみを尊重し、敵に恐怖と破滅を与えるべく暗躍している。
通信網を遮断し、反撃を試みる者にいかなる血生臭い破滅がもたらされるという見せしめを効果的に用いる事に関して、彼らほど入念でかつ情熱的な兵団は存在しない。恐怖戦術の達人であったナイトロード兵団の総主長コンラッド・カーズによって洗練され、教授されてきたこれらの戦略のいくつかは、現在は禁書として封印されている。
他にも断片的な噂によれば、殺人や無軌道な暴力を是とする苛烈な社会から本来の資質に欠けたことに起因するこの兵団固有の遺伝的、心理的劣化の可能性も示唆されている。
【恐怖の化身】
理由はどうあれ、不完全ながら厳重に封印された上で残されている審判記録が示す事実は、ナイトロード特有の残虐で過剰な暴力性が〈ホルスの大逆〉の以前から顕著であった事を指摘している。西暦29000年代に勃発した〈大征戦〉の名の下に獲得された彼らの勝利の数々は、しばしば臣民たちの大量の犠牲、捕虜の虐殺、〈帝国〉に対する報復を容易に誘発する無数の非道を代償としていた。
無慈悲なる効率性として許容されてきた所業は、他の兵団よりも遥かに凶悪なものとなり、到底許容のおよばぬ残虐非道なものへと堕落していった。〈ホルスの大逆〉は、カーズのあるいは故郷の惑星「ノストラーモ」では恐怖と共に「夜の化身」(ナイトホーンター)と呼ばれた者の率いる兵団が罪を糾弾される以前に勃発した。
弁明や隠蔽に明け暮れる必要性から自由になったカーズとナイトロードは、他の大逆兵団と共に公然と反旗を翻して戦ったのであった。
しかし、ある噂ではナイトロードを率いたカーズ自身は渾沌に堕ちておらず、自らの宿命や〈帝国〉に対する奉仕、そして何よりも渾沌崇拝に対して疑問を抱いていたという。カーズは自らの行為や兵団の戦士たちが渾沌崇拝に堕ちること自体に嫌悪感を抱いており、〈帝国〉に対して反旗を翻してはいるものの、彼自身は渾沌とは無縁だったという。
〈ホルスの大逆〉が敗北を喫する以前に、兵団の体制は既に瓦解状態であった。幻視に苛まれていた総主長のカーズは兵団から距離を置き、狂気に取り憑かれた人物へと変貌していた。
そして〈ホルスの大逆〉後、カーズは帝国暗殺局の刺客に粛清されたと言われており、その存在は歴史から抹消されたのだ。伝説によれば、彼が帝国暗殺局の刺客によって最期を迎えるという運命は幻視を通じてあらかじめ知っており、彼の人生は最後まで幻視に苛まれながら悲痛な最期を迎えたという・・。
銀河系全域の征服計画に一度も資することの無かったナイトロード兵団は、無数の戦闘集団へと分裂していった。彼らは、それを率いる恐るべき戦将の利己的で邪悪なまでに無軌道な気質に仕えている。
戦将自身も嗜虐癖に満ちた殺人狂である配下たちの動向に目を光らせている。彼らの意識を略奪と殺戮に向けておかねば、指揮官に対する叛意と殺意によって容易に自らが生皮を剥がされることになるからだ。
【見えざる狩人】
ナイトロードの戦闘集団が繰り広げる残虐行為は、魂を病的な恐怖に陥れる。彼らの征戦は武勇に乗っ取った神聖なるものではなく、ただ己が欲望を満たすためだけに殺戮と悲嘆を撒き散らし、堕落した喜びに浸るための非道に他ならない。
手ごろな獲物の居場所が判明すると、戦闘集団は獲物を孤立無援の状態に追い込み、その後から長期にわたる心理的な拷問にかける。これには交易者や星間巡礼者の失踪、大陸中を走る電力網の遮断、前哨基地の人員や星辰感応通信の合唱者が殺戮の犠牲となる可能性も含まれている。
ナイトロードは一貫性や信頼にかけ、臆病者だと断じる者たちは、彼らの執念深き監視から逃れる事は出来ない。実に忍耐深く獲物の恐怖を高めてゆくのがナイトロードのやり方なのだ。
彼らの中でも精鋭たるキルチームは、厳重な防備の施された部屋の中ですら、標的に定めた高位の事物を惨殺してのける。召集されたカルティストたちは、一夜にして書き殴られた壁面を披露する。
通信システムは乗っ取られ、終わる事なき絶叫と超低周波のつぶやきが絶え間なく流れ出す。それらを完璧に仕立て上げるのは戦闘集団のソーサラーとダークアポスルである。
一歩一歩、逃れようのない恐怖が敵を締め付けてゆくのだ。ナイトロードは一度限りの徹底的、圧倒的な強襲によって勝利を得ようとする代わりに、威力偵察や攪乱を目的とする奇襲を繰り返し、敵を混乱させ、焦燥感で苛まんでゆく。
暗闇は彼らの盟友であり、惑星の夜の半球、人工的な影、電力の遮断された宇宙船内の漆黒の回廊で凶悪な狩りを繰り広げる事は彼らの大いに好むところだ。公然と突撃を行う際、しばしばこの異端者たちは仕留めたばかりの獲物から剥いだ生皮を身に纏った姿を晒す。
真夜中を思わせる青黒い装甲には血みどろの戦利品と嘲笑めいた容貌の髑髏の紋章、そして稲妻のペインティングが施されている。同様の事例は幾度となく繰り返されているが、これはナイトロードが獲物に決して慈悲も容赦も与えぬことを示している。
彼らに降伏を願い出る憐れな者たちには、無残極まりない死が待つのみなのだ。
【貪欲なる軍勢】
ナイトロードは、ジャンプパックを装備したラプターなどの兵を幅広く投入し、迅速なる戦闘を行う。この残虐な兵士たちは、虫けら同様の獲物を神の如き視座から見下ろす感覚に酔いしれている。
地上へ急降下し、夢中で殺戮を繰り広げる彼らは、亡霊の如き悍ましき叫び声とともに犠牲者目がけて猛然と迫る。ラプターと並んで闘うのは〈歪み〉の魔焔に身を包んで襲いかかるワープタロンだ。
彼らはディーモン化した鉤爪で現実空間と彼らの間を塞ぐ障壁を切り裂き、〈歪み〉を通じて前触れもなく敵の近くへと姿を現す。ナイトロードの指揮官たちの大半は空挺作戦を選択するが、しばしば大規模な戦闘集団を率いて自らも降下強襲に加わる。
こうした恐るべき空の戦士たちは、ヘルドレイクなど航空魔導兵器を投入し、敵の対空攻撃能力を無効化する。ナイトロードは敵が戦慄と共に破滅するのを大いに楽しむ。
彼らの犠牲者は、神話に語られる報復の天使の群れに襲われ、肉を引き裂かれ、魂を啜り取られる恐怖に喘ぐのだ。


画像出典:Warhammer Community記事「The Road to Thramas – Part 5: The Lion (posted 4/5/2020)」(2022/09/15閲覧)画像より


【主要キャラクター】

  • 「コンラッド・カーズ」

【概要】
「ナイトロード」兵団を率いる大逆派の総主長。「夜の化身」(ナイト・ホーンター)の異名を持つ彼は、自らの正義に憑りつかれた迷える殺戮者として数多くの敵を屠ってきた。
敵を恐怖に陥れ、目的を達成するためなら手段を択ばない残忍さを持つ。しかし、彼は人生を通して恐ろしい未来を予言する白昼夢に襲われる悩みを持っており、彼を苦しませていた。
また、悪や犯罪者を憎む心を持っているが、先ほどの白昼夢の予言によってその良心を狂わされる呪われた生涯を歩むこととなってしまう。


画像出典:オーディオドラマ「Konrad Curze A Lesson in Darkess」カバージャケットより


総主長コンラッド・カーズに関して詳しくはこちらを参照されたし。
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「アイアンウォリアー」


「我が魂は鋼鉄、我が肉体は鋼鉄」



プライマーク(総主長):総主長パーチュラーボ
現指導者:総魔長パーチュラーボ
サイカー(異能者)の採用:基本認めない
傾倒する渾沌神:分かたれざる渾沌(但し総魔長パーチュラーボを崇拝する)
【概要】
銀河系で最も包囲戦術に長けた軍勢の一つ、アイアンウォリアー。〈帝国〉の宮殿であれ、異種族の城塞であれ、冷徹な計算に基づいて彼らはあらゆる標的を塵に変えてゆく。
彼らの総主長パーチュラーボは、攻城戦、塹壕戦の計画と実行に関して卓越した戦略家としてその資質を大いに評価されている。大逆者となった彼らの息子もまた、今日までその叡智と知見を体現する。
アイアンウォリアー兵団は、自らを宇宙の法則に縛られること無き悠久の巨人と見なしている。彼らにとって、人間の作りし法であれ自然法則であれ、自らの智慧を思うがままに駆使する彼らを拘束することは叶わぬ道理なのだ。
彼らは渾沌神を万神殿の最上位として敬うものの、崇拝者としての献身や忠誠心を捧げる者は数少ない。彼らの忠誠心の対象は、偽りの皇帝に対する服従から彼らを解放した存在であると彼らが信ずるところの総魔長パーチュラーボなのだ。
【栄光無き兵士たち】
1万年以上前の〈大征戦〉の時代、皇帝に仕えていたアイアンウォリアー兵団の戦士たちはある事実を確信した。皇帝は、自分たちを誰よりも過酷で不愉快極まる任務の遂行にのみ投入しているのだと。
事実、長年にわたる消耗戦や栄光も名誉もなき撤退戦、籠城戦の数々でアイアンウォリアー兵団は勝利を獲得してきた。彼らの誇る徹底的な効率性と無感情なまでの実践本意な姿勢は、他のより尊大な兵団に共有される事は無かった。総主長の命により戦果の乏しい者10名に籤引きを行い、当たりを引いた一名を残りが総がかりで虐殺するという無慈悲な間引き を行っていた。その行き過ぎた合理性は他戦団からも非難を受けた。名誉に浴したのは他の兵団であり、悪評のあまり兵団を奴隷や元犯罪者で統一した彼らアイアンウォリアーには一切施されなかった。そうした彼らを蔑ろにする事例がいくつも積み重なるうち、猜疑心は肉を貪る蛆虫の如く、アイアンウォリアーの冷徹さをも侵食していった。
もはや敵対者への闘争、やがては殺戮しか彼らの拠り所がなく、兵団の謹厳なる姿勢が衰えてゆくのも時間の問題だった。彼らは無数の惑星上でむなしく血を流すようになってゆき、彼らの資質を侮辱するかのごとき使命のみが課されるものと映るようになった。こうしてアイアンウォリアーはホルスの示した約束に心動かされ、募らせていた〈帝国〉への憤懣を解放するに至ったのだ。
それ以来、何千年という期間を、彼らは人類に対する殺戮と破壊をもたらすための戦争に捧げてきたのである。
【包囲戦の名手】
アイアンウォリアーは、大逆兵団の中でも最も重武装の戦士たちである。包囲戦の専門家を自負する彼らは、敵を一掃する圧倒的な火力を用いた射撃戦に熟達している。
威容を誇る自軍の要塞に人員を配置するにせよ、忠誠派の防衛拠点の壁を穿つにせよ、彼らの姿勢は一貫している。重視すべき内容は、入念な火力運用計画であり、標的の配置であり、精密な一斉射撃なのだ。
彼らは、難攻不落の要塞を戦場で迅速に建設することに長けており、敵の動きを封じる攻撃拠点を固め、それによって戦場のどこであれアイアンウォリアー自身の予備戦力を優位に立たせてゆく。彼らは剃刀を思わせる鋭き知性と計算高い精神の持ち主だ。
それらはパーチュラーボの遺産の一部であり、氷の如き怜悧な論理性は行き届いた戦略を立てるために用いられる。それはいかなる敵の防御も嘲笑する攻撃力となり、いかなる敵の攻撃もあっけなく無効化させるだろう。
この大逆者たちは体系的でかつ徹底的であり、一斉射撃によって敵の全勢力を一掃できる瞬間が来るまで消耗戦に持ち込み、敵が隙を見せるたび、確実にその力を削いでゆくのだ。
【破れる事なき反撃】
アイアンウォリアーの敵対者たちは致命的な錯誤に陥っている。この大逆兵団は、遠距離攻撃に重きを置くために、迅速な強襲突撃によって脆弱性をさらけ出すと信じているのだ。
その認識は真実からほど遠い。本来、包囲戦の定義とは、いかなる暴虐や無慈悲なる戦闘の想像をも超えた長期間にわたる集中的な作業であり、止む事なき砲撃である。
敵が隙を見せた瞬間に、アイアンウォリアーの分隊は正確な砲撃によって敵の防壁を貫き、その突破口に弾避けがわりのカルティスト太刀を津波の如く送り込む。強大なターミネイターアーマーに身を包み、あるいは迅速な突入を可能にするパワーアーマーをまとった大逆戦闘者たちは、防御施設が破壊されるまでその突入経路を拡大することに務める。
戦局の転換点に至ったアイアンウォリアーたちがただちに無慈悲なる苛烈さで鉄鎚の如き連打を繰り出すと、敵は見るも無惨に叩き潰されてゆくのだ。
【黄色の宿敵】
アイアンウォリアーの中には、かのパーチュラーボこそが皇帝が座す〈帝殿〉の包囲作戦を立案したのだと主張する者たちもいる。彼らはまた、対照的に皇帝の誇る黄色き〈戦闘者〉、「インペリアルフィスト兵団」が地球における防衛戦の中心であったと見なしている。
異端者の歴史を紐解く者たちの中には、この二大兵団の得意とする戦闘分野が「競い合うお互いの自尊心から発生した強い敵愾心の産物ではないか」と推測する意見もある。武勇における妬み、個人的な裏切り、あるいは第三者によって植え付けられた猜疑心の可能性もあるが、いずれにせよアイアンウォリアーはインペリアルに対する根深い敵意を抱き続けている。
この大逆者は、総主長ローガル・ドルンの息子たちが築き上げた物を破壊し、包囲戦における自らの優位を示し続ける事に至高の悦びを感じるのである。
【鋼鉄の魔城】
アイアンウォリアーが何処を戦場に選ぶにせよ、彼らはそこに強大な要塞を築く。周囲の地域を圧してそびえ立つのは、鋸歯状の凶悪なシルエットと高火力の武器を配備した無数の塔だ。
そうした塔の一つ一つは、いわば兵団の悪意と尊大な自我の記念碑めいた存在である。戦闘兵器の技術者、また〈歪み〉のテクノロジーの匠としての彼らの評価は揺るがぬものだ。
アイアンウォリアーの要塞は現実宇宙とその彼方とを貫く杭の如き存在であり、生きた有刺鉄線とディーモンの憑依した塹壕網に囲まれている。そうした砦の中でも最も悪名高きものは、〈恐怖の眼〉の内の魔障惑星上にアイアンウォリアーが建設した「メドレンガルド」のあり得べからざる城塞だ。
物理法則の枷から解放されたメドレンガルドは、惑星の中心核を貫く迷宮から、何マイルもの螺旋を描いて到達するその頂に至るまで、目も眩むような狂気の構造物が絡み合った、一種の複合施設である。アイアンウォリアーはまた、「アルビックの坩堝」や「ゾラフォージ」、膨大な軍勢を放つ〈永劫の憎悪の要塞〉など、〈帝国途絶領域〉の奥深くにもその勢力を拡大している。
【組織編制】
数え切れぬほど多くのアイアンウォリアーの戦闘集団が敵を、その大半はインペリアルフィスト戦団を意味するのだが、殲滅するための、あるいは拉致して連行するための拠点基地として、メドレンガルドを使用している。兵団の中核は前時代の階級や編成をある程度保っており、兵団そのものは個々にかなりの規模を有する大集団に分かれている。
各集団は無数の砲撃部隊、轟音を立てて戦場を蹂躙する魔導兵器の大群、また〈歪み〉の力を宿した戦車部隊を擁している。それぞれの大集団は、古来の称号を持つ筆頭戦士たちが指揮官を務める。
それらの中には「戦匠」(ウォースミス)、「砲総主」(キャノンマスター)、「築城師」(アーキシーアージ)などが含まれている。彼らはしばしばディーモンの憑依した生体強化義体を自らの肉体に融合させているが、それは歪んだ機械付属肢を生やしたオブリタレイターを彷彿させる姿でもある。
独自の行動を取る戦闘集団も数多く存在するが、彼らはもっぱら自らの集団を私利私欲のためにのみ活動する。いずれにせよ、アイアンウォリアーが推進する戦役や征戦には暗黒機械教団の異端技術司祭団、大逆の巨兵団、戦慄の渾沌騎士宗家との間に結ばれた誓約により、鋼鉄と不浄なる妖術の産物である巨大な怪物たちが伴われることは確実だ。


画像出典:小説「Tallarn Executioner」表紙イラストより


【主要キャラクター】

  • 「パーチュラーボ」

【概要】
アイアンウォリアー兵団を率いる大逆派の総主長。〈オリンピアの鉄鎚〉、〈鉄の王〉の異名を持つ彼は、冷徹な戦士であると同時に、科学や論理、合理性を追い求めていく。
両親などの影響で他人の感情に対しては無関心でかつ、徹底的な合理主義を貫き通す性格を持つ。それ故に彼の冷徹な態度は、他の総主長からも衝突の原因となっていた。
そして、合理性や無感情さを過剰にまで追い求める姿勢が後に渾沌への堕落につながってしまうこととなる。


画像出典:小説「Perturabo: The Hammer of Olympia」表紙イラストより


総主長パーチュラーボに関して詳しくはこちらを参照されたし。
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「アルファレギオン」


「皇帝は屍と化してなお、お前たちを見守っている。皇帝に対する背信は破滅を招く。皇帝を偽る事は大罪となる。お前たちはそう言われ続けて来た。それらは全て、嘘だ。」



プライマーク(総主長):アルファリウス&オメゴン
現指導者:情報不足により詳細不明
サイカー(異能者)の採用:情報不足により詳細不明
傾倒する渾沌神:情報不足により詳細不明
【概要】
迷宮の如き策略を通じて、アルファレギオンは狡猾に動き、勝利を掴む。彼らの戦略や組織体制、そして目的もほとんど謎に包まれている。
しかもその謎は、陽動作戦と偽装の罠に満ちた迷路の中で秘密の帳に包まれている。彼らの影響力は、いかなる大逆兵団よりも秘密裏に広範囲にわたる効果を及ぼす。
何百もの惑星の至る所に潜伏して活動を続けている工作員たちは、今この時も、密かに直接攻撃の指示を待っているのだ。アルファレギオンの悪辣さは他の兵団よりも比類ないものだ。剥き出しの暴力で、神聖なる熱狂で、あるいは圧倒的な存在感によって全てを支配する他の大逆兵団に比べ、アルファレギオンは知性と隠蔽術を駆使して自らの意思を実現するのだ。
彼らが価値ある武器と認めるのは、いずれも陽動や混乱、背信や二重工作だ。だが獲物を仕掛けた罠に落とすべき時至れば、彼らは本来の戦闘力を惜しみなく発揮し、集中砲火その他の手段で一時間もあれば惑星一つを火の海へと変えてしまう。
この兵団の多様な戦闘集団と特務兵小隊は、自らを他のあらゆる戦力よりも優れていると自負し、敵の裏をかいて圧倒するための力と精密性、技量や知識を兼ね備えた存在であることを確信している。肥大した自我に駆り立てられた彼らのこの自信は、彼らが自分たちよりもはるかに劣ると見なしている者たちが「機知さえあれば、アルファレギオンがいかに他者よりも優れているかを理解可能である」という信念を育ませるに至った。
一般的に彼らの総主長は「アルファリウス」として知られているが、実は彼は双子の兄であり、弟の「オメゴン」と共に〈大征戦〉や〈ホルスの大逆〉を戦い抜いていた。
【謎多き存在】
〈ホルスの大逆〉以前のアルファレギオン兵団に関する貴重な記録はほとんど現存していない。わずかに現存する断片的なものはみな矛盾しているか、肝心な部分が検閲されていたり、存在しない資料への言及がなされ、真偽のほどが怪しいものばかりだ。
厳密な検証を続ける記録官たちによれば「ホルスが暗黒神との契約を結んだ際、アルファレギオン兵団自体が有していた戦士としての誇りは薄れつつあった」という点では見解が一致しているという。発掘されたごくわずかな記録、あるいは何らかの意図により流出した記録の中にも、ある程度一貫性のある者は〈大征戦〉周辺でかつてのアルファレギオン兵団に関する表記を認める事ができる。
彼らの勝利は主要な戦場で獲得されたわけではなく、英雄的な兵の活躍もなく、祝福の対象とされることもなく他兵団の勝利の間を通り過ぎてしまうこともしばしばであったという。出展の定かならぬ歴史の執筆者たちの中には、“讃えられるに値する”戦争の必要性が、兵団とその父である遺伝種子の祖にして悪名高き総主長「アルファリウス」を消耗させ始めたことを示唆する内容を残している者もいる。
信じ難い成功を収めた戦役の指揮と組織化におけるこの総主長の名声は、型破りな戦術をあまりにも多用したことによってもさらに、他の偏狭で硬直した兵団から反発を招いたという。アルファレギオン兵団の特異にして高い戦闘能力を大いに評価したのは、誰であろう大元帥ホルスのみであったとも伝えられている。
そして、背信がその素顔を露わにした時、惑星「イシュトヴァーンV」における恐るべき「降下地点の虐殺」において、アルファレギオンは異端者と並んで闘っていたのだ。
【影の兵団】
〈ホルスの大逆〉以来、アルファレギオンは〈人類の帝国〉に対する隠密作戦を展開している。彼らの本拠惑星として知られている場所はどれ一つとして明らかになっていない。
彼らは銀河系全域に無数の秘密基地を持っており、それらは〈帝国〉の中心部にさえも存在するのだ。隠された要塞から出撃する強襲部隊や鈍重な交易船に偽装した高速機動艦隊は、帝国基地への秘密工作、交易路への攻撃、小規模な前線基地の破壊などを、無慈悲なまでの効率性を以て実行する。
彼らの諜報ネットワークと二重スパイは数限りなく〈帝国〉領内に潜伏しているため、人類居住惑星におけるアルファレギオンの情報網は比類なきものとなっている。信仰とも呼べるほどにアルファレギオンが確定的に用いる戦術は、多方面からの同時攻撃である。
更に無数かつ相互に矛盾しているかに見える特異な戦略の選択も可能だ。ゲリラ戦、暗殺、人心操作、幾重にも冗長性を備えた戦力、異種族や非スペースマリーンで構成される様々な戦力資産を持つ。こうしたアルファレギオンの毒牙は、彼らの敵である〈帝国〉から非常に穢らわしく不名誉なものとみなされており、彼らの同盟者である他のケイオススペースマリーンからも、乏しい信頼をさらに薄れさせている戦法なのである。
【変幻自在の戦士たち】
アルファレギオンの戦闘集団は、統率下にある現地部隊の指揮官たちを重視する。彼らには、あたかも作戦目的が千変万化するかのような機動によって敵の裏をかき、異端戦闘者たちの戦力を最大化し、従来以上の戦果を挙げさせるという使命がある。
彼らは、そうした彼らならではの技量を忠誠派のスペースマリーンたちに対して披露する機会を歓迎している。要はバカにしてる兵団の中には、そうした状況において自らの力をさらに徹底して試すべく、あえて総戦力を投入せずに戦う者たちもいることが知られている。
謎に包まれた総主長の逸話をなぞろうとするアルファレギオンの筆頭戦士たちの中には、暗殺者を混乱させるためにわざと下級兵士に変装したり、戦闘中に失踪して指揮系統に突如生じた空白に対する戦闘集団の対応を評価の対象にする者もいるという。
【多頭蛇は全てを支配せり(ヒドラ・ドミナートゥス)】
最初から自らの旗印を秘匿しておく場合でない限り、アルファレギオンの戦士たちは多頭蛇を象った兵団の紋章を掲げる。この無数の頭を象ったドラゴンの如き古代神話の怪物「ヒドラ」は、精神と身体において統一がなされていることを示している。
戦場でこの兵団が見せるのは、その恐ろしいまでの統一性だ。多方面から執拗に繰り返される攻撃によって絶え間なく圧迫された敵が弱点を露わにすると、そこを目がけて多頭蛇の牙が突き立てられる。
だが、一見するとこの統一性は、即座に消滅する可能性もある。敵が優位に立つや否や、アルファリウスの息子たちは一斉に逃散する。
密かに少人数に分かれ、一度に無数の方向へと姿を消すのだ。傷口に入った破片の如く、単独の工作員や独立行動を行う分隊は大規模な破壊工作を継続し、もしも敵が何か月の戦線を拡大し、破壊工作を阻止しようとする場合、アルファレギオンの増援が敵を牽制し、陽動作戦によって暗躍する工作員から監視の目を引き剥がすのである。
【おびただしき多頭蛇の教団】
大逆兵団の中でも、アルファレギオンほどカルティストの兵士たちを最大限に活用している者たちはいない。彼らの戦闘集団は〈帝国〉の奥深くで自律行動する傾向が多い。
そのために彼らは現地の支援勢力を利用して自らの活動範囲を拡大し、情報を収集し、通常ならば異端戦闘者の存在などは直ちに露見するはずの〈帝国〉の社会に深く潜入するのである。反乱と混乱を引き起こすための扇動工作を準備するために、アルファレギオンはかなりの努力を重ねる。
社会の暗部でただちに暗黒神崇拝を促し、熱狂的な渾沌信者の集団に加えて破壊工作員やテクノロジーを操す教団を増員してゆく。アルファレギオンの“細胞”として活躍する特務兵は、しばしばカルティストを訓練し、その能力を高める事がある。
他兵団はカルティストに対し、滅多にこのような活動を行わない。〈帝国途絶領域〉の惑星「フラノス」では、単独で行動していた数十人のカルティストが、皮膚の下に電子処置で施された刺青のみを頼りに互いを認識し、連携し、無秩序な下層階級者では及びもつかぬ戦術を駆使して〈帝国〉諸施設に侵入し、一斉蜂起を行った事例がある。


画像出典:小説「Sons of the Hydra」 表紙イラストより


【主要キャラクター】

  • 「アルファリウス&オメゴン」

【概要】
「アルファレギオン」兵団を率いて大征戦を戦った大逆派の総主長。総主長の中でもその素性は謎に包まれており、彼らについての確実な情報は非常に少ない。
彼は自らの考えや情報は一切他人に教えず、他人に対しては冷笑的でどこかあざ笑うような態度を取る。他の総主長とも距離を置いており、秘密主義的で協調性に欠けている。
彼には多くの秘密を抱えているが彼の最大の秘密は”二つの身体に一つの魂”を持つ総主長であり、双子で外見がそっくりな弟である「オメゴン」が居ることである。


画像出典:小説「Alpharius: Head of the Hydra」 表紙イラストより


総主長アルファリウス&オメゴンに関して詳しくはこちらを参照されたし。
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「ワールドイーター」


「“殺せ!壊せ!燃やせ! 殺せ! 壊せ! 燃やせ! 殺せ! 壊せ! 燃やせ!”」



プライマーク(総主長):総主長アングロン
現指導者:総魔長アングロン
サイカー(異能者)の採用:不許可(収奪した遺物のみ可)
傾倒する渾沌神:"髑髏の収奪者"コーン神
【概要】
ワールドイーターは原初のスペースマリーン兵団が創設された〈大征戦〉の最中である〈第一期創設〉において12番目に設立されし兵団であり、彼らに言わせれば、その信念は設立当初から一切揺らぐことなく現在まで続いている。〈ホルスの大逆〉勃発以前より、ワールドイーターはその血生臭い戦いぶりと、野蛮極まりない訓練、儀式、そして戦闘教条によって知られていた。
元奴隷剣闘士であった総主長アングロン率いるこの兵団は新規入団者に精神外科手術を施していることについて皇帝から叱責を受けた。この措置が禁じられている事には理由があり、この脳内に特殊なインプラントを埋め込む手術を受けたものは、高いストレスにさらされると血に飢えた狂人と化してしまうからである。
総主長アングロンは出身の惑星で奴隷剣闘士として戦っていた時期があり、その闘技場の習わしとして脳内に攻撃性を高めるインプラントを剣闘士たちに埋め込むという習慣があった。アングロンもまたこの習わしに沿ってインプラントを脳内に埋め込んでおり、後に皇帝の下でスペースマリーン兵団を率いる事になった際に、兵団にこの習わしを導入することによって兵団員の攻撃性をより凶暴化させる事に成功したのだ。
しかしそのインプラントは、兵団員を危険な狂人や殺人鬼にしてしまう恐るべき欠陥を抱えていた。にも関わらず、ワールドイーター兵団は〈大征戦〉には欠かせない恐怖の兵団として敵味方から恐れられた存在として知られていた。
ホルスにとって、ワールドイーターの血塗られた兵団の儀式を渾沌信仰へとすり替えることなど造作もないことであった。ホルスの堕落的な影響力の下、ワールドイーターを率いる総主長アングロンは、間もなくしてコーン神に忠誠を捧げるようになる。
ひとたび堕してしまえば、後は彼の無類なる戦闘技量と強さへの圧倒的な誇りによって彼がディーモンプリンスへと生まれ変わるのは時間の問題であった。かつてワールドイーターの名は皇帝への忠誠の代名詞だった。
しかし〈ホルスの大逆〉が勃発すると、その名はすぐに殺戮と恐怖の代名詞と化した。あらゆる強襲作戦において彼らは先陣を切って戦い、兵団の記録には地球の〈帝殿〉の城壁を最初に突破したのは「サン・オヴ・ホルス兵団」ではなく「ワールドイーター兵団」であったと記載されている。
【血の神への帰依】
ホルスが戦死し、ワールドイーターは地球からの撤退を不承ながらも決定し、立ち塞がるもの全てを切り倒しながら〈恐怖の眼〉への撤退を退却戦を行った。〈恐怖の眼〉内部において、彼らは兵団に古来から存在した血の儀式を発展させることで、コーン神とその眷族をより近くに感じようとした。
バランスの取れた戦術部隊を編成するという建前は、ワールドイーターがチェーンアックスとチェーンソードを好んで用いるようになるにつれ廃れていった。彼らにとって、先陣を切って戦いに身を投じ、〈血の神〉のために最初に殺しを行う事の方が遥かに重要だったのである。
【内紛からの分裂】
兵団の士官がことごとくコーン神の代理戦士になっていくにつれ、兵団のあらゆる規律は崩壊していった。最終的に、凄惨なる「スカラックス戦役」の終盤において、コーン神の恩寵深き代理戦士であった“裏切者”カーンが良血の衝動のままに同胞を手にかけたことがきっかけとなり、兵団全体が激しい内戦に陥ったのだ。
戦いの煙が晴れるころには、ワールドイーター兵団は狂乱せし殺戮鬼からなる無数の戦闘集団へと分裂していった。こうした戦闘集団の中には今なお数百人もの兵を抱えているものもあれば、たった一人の“統べる者”が配下のバーザーカーを率いて殺戮の旅を続けているといった事例もある。
赤、黒、真鍮で飾られた鎧に身を包んだ彼らコーン神の代理戦士は、いかなる戦いにも真っ先に飛び込み、そして戦場を去るのは常に最後である。流血と死をもたらす事への渇望があまりにも強いがゆえ、彼らは自らを生贄に捧げるべくチェーンソードの刃に倒れ込むことすらしてしまう事で知られている。
ワールドイーターの戦闘集団は、いかなる渾沌の“統べる者”の征服群にも喜んで加わり、流血と髑髏をコーン神に捧げることの他には何も対価を求める事は無い。しかしそのケイオスロード自身の髑髏もまた彼らの勘定に加わっているという事を忘れてはならないのだ。つまり裏切り
【血の神の兵器】
コーン神は妖術を軽蔑し、そうした小細工を戦士にあるまじき愚行と見下しているが、しかし剣と斧のみで髑髏を狩れと命じているわけではない。テクノロジーや神秘的な太古の遺物もまた、堕落せし者どもが骸骨をかき集めるために用いる事の出来る祭具である。
コーン神が使役する兵器の中でも最も強力なのは、魔術と技術の融合体である魔導兵器に他ならない。黒鉄の装甲板と、真鍮で形作られた骸骨のルーンに覆われた、この悪夢の如き戦闘兵器は、荒れ狂う巨獣や堕落せし巨人を思わせる。
その歩みや履帯によるものであれ、節に分かれた多脚であれ、あるいは棘の生えたタイヤによるものだとしても、その進撃を止める事は不可能に近い。
【怒り狂いし総魔長】
この銀河において総魔長と化したアングロンは今なお活発に戦いを続けている。第38千年紀(西暦37000年代)の中ごろ、この血塗られし天使は5万ものコーン・バーザーカーからなる軍勢の先陣を切って〈恐怖の眼〉から進撃し、30を超える星系で激しい殺戮を繰り広げられた。
しかし、アングロンがもたらした惨禍はそれで終わりではなかった。戦いの火の手は70を超える星域へと燃え広がり、2世紀半に渡る内乱が繰り広げられたのだ。
数多くの〈帝国〉司令官が皇帝による支配をかなぐり捨て、切り離されし惑星の支配権を確立すべく卑小なる独裁者が次々と勃興した。最終的にスペースマリーン4個戦団、巨兵団2個、30を超える帝国防衛軍連隊が、これらの堕落せし惑星を浄化するために送り出された。
全体で7世紀にも及ぶ激しい戦いの末、離反した惑星のうち9割以上が再び〈帝国法〉の支配下に戻ると、アングロンによる〈炎の軛〉はようやく終結したのである。


画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P45イラストより


【主要キャラクター】

  • 「アングロン」

【概要】
「ワールドイーター」兵団を率いる大逆派の総主長。〈赤き天使〉の異名で呼ばれるほど獰猛でかつ怒りに支配された性格を持っている。
脳内にはアドレナリンが増強されるインプラントが埋め込まれており、白兵戦においては総主長の中でもトップクラスの実力を持つ。
常に抑圧と怒りに晒され、大切な仲間よも失う悲惨なる運命を辿った結果、最後は渾沌へと堕ちることとなってしまう。


画像出典:Warhammer Community記事「Tremble Before the Rage of Angron, Daemon Primarch of Khorne(posted 7/22/2022)」(2022/09/15閲覧)画像より


総主長アングロンに関して詳しくはこちらを参照されたし。


  • 「“裏切者”カーン」

スカラスラックスの呪い



【概要】
元総主長「アングロン」に仕えていたスペースマリーンの狂戦士で、「ワールド・イーター兵団」にて途方もない虐殺を繰り広げてきた。カーンは数千年紀にも及ぶ生涯の中、ありとあらゆる場所で、そしてありとあらゆる者に対して、血染めの大虐殺を引き起こすことにのみ全身全霊を捧げてきた。
彼はまるで、血肉の臭いを嗅ぎつけて現れた飢えし猟犬の如く、戦争の臭いに引き寄せられて襲来する。もはや彼の手で虐殺された者の数を数えることなど、誰もできはしない。
〈大征戦〉の時代、カーンは「ワールド・イーター兵団」によって敢行される強襲作戦の最前線に立ち続け、優れた白兵戦の戦士として名を馳せていた。〈ホルスの大逆〉が勃発した時、カーンは嬉々として自らの戦士たちを率いて、同胞であるスペースマリーンたちを血祭りに上げたのである。
中でも悪名高いのは、イシュトヴァーン降下作戦での虐殺であった。
【コーン神への帰依】
帝殿包囲戦においても、カーンは急襲の最先鋒に立った。ホルスが壮絶な戦死を遂げた時、カーンもまた、無数に積み上げられた死体の上に横たわり、無残な姿で果てていたという。
彼に従うワールド・イーター兵団の狂戦士たちは、行く手を阻む敵と激しい白兵戦を続けながら、すでにこと切れたカーンの亡骸を艦艇へと運んだ。なんとか乗船を果たした瞬間、彼らはカーンにまだ息があることに気づく。
コーン神がこの狂気の代理戦士に息を吹き込んだのか、カーンの不屈の魂がこの世界を離れることを拒んだのか、真実は不明だ。だが、今日までカーンは流血を愛する神の加護を受けている事もまた確かな事実なのだ。
【〈裏切者〉の名を受けて】
カーンが〈裏切者〉の異名で呼ばれるようになったのは、悪魔の惑星「スカラスラックス」で起こった、ある恐るべき事件に由来する。そこでワールド・イーター兵団は、「エンペラーズ・チルドレン兵団」と戦闘を繰り広げていたが、この惑星をコーン神の名の下に支配するには、敵側の軍を率いる総魔長フルグリムの戦士たちからもう一度勝利を収める必要があったのだ。
そして、惑星スカラスラックスに勝者も敗者も区別なく凍死させる、過酷なる冬の季節が到来するまでに決着を付けなければならない。しかし、ワールド・イーター兵団は手に対して決定打を与えることができず、敵が放つ音波兵器の前に、何度となく後退を強いられていた。
カーンは敵の攻撃に戸惑う手勢の姿に苛立ち、呪いの言葉を吐き捨てると、おもむろにフレイマー(火炎放射器)を握った。そして彼らに対する侮蔑の印として、手短な建物を燃やし尽くしたのだ。
彼は制止ししようとする者を斬り捨てながら、暗闇の中へと進み続けた。やがて彼のフレイマーから吐き出される炎は、市街地全体を焼き尽くし、彼は目に付く者を敵味方の区別なく殺戮したという。
これに触発されたのか、ワールド・イーター兵団の同胞たちも無秩序状態に陥り、取り返しのつかない同士討ちを始める。そして、兵団は数百もの戦闘集団に分裂してしまったのだ。
この血染めの日以来、カーンはコーン神が抱える従者の中で、最も熱烈なる闘士となった。彼はただ〈髑髏の大君〉たるコーン神の名において殺戮する事、ただそれだけのために今日という日を生きている。



画像出典:小説「Khârn: The Red Path」 表紙イラストより

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「エンペラーズ・チルドレン」


「魂の飢え、命の渇きが暗黒神を育むのだという。神々は我らに恩寵を賜われた。我らは神々が決して忘れ得ぬほどの饗応を捧げようではないか!」



プライマーク(総主長):総主長フルグリム
現指導者:総魔長フルグリム
サイカー(異能者)の採用:あり
傾倒する渾沌神:"快楽の王"スラーネッシュ神
【概要】
エンペラーズ・チルドレンほど、強迫観念と過剰なまでの壮麗さによって完全性の追求を執拗に主張する者たちはいない。この戦闘集団は至高の剣技の達人ぞろいであり、電光石火の高速機動と圧倒的火力の精密射撃の実践者に他ならない。
兵団の威風堂々たる筆頭戦士たちは、自らがどれほど他者よりも武勇が優れ、精密なる戦技の持ち主であるかを決定しようと鎬を削っている。
【皇帝の栄光なる息子たち】
かつて完全性の追求に全精力を捧げた兵団であったエンペラーズ・チルドレン。彼らは禁断の知識がもたらす誘惑に屈し、堕落と頽廃の魔道に堕ちてしまった。元来持ち合わせていた限りない上昇志向が、過剰なまでの逸脱を志向する、倒錯へと変り果ててしまったのだ。
〈ホルスの大逆〉の最中でも、それが終焉を迎えた後も、エンペラーズ・チルドレンは無限の感覚的興奮と不浄なる経験を可能とする、知覚の活性化を促す謎めいた外科的な拡張強化措置を受けていた。多くの者たちは、すでに強化が施された感覚に更なる強烈な刺激を呼び込む危険な調合薬の摂取を始めたが、その一方でごく基本的な感覚は鈍ってゆく一方だった。
大逆兵団の一翼となったエンペラーズ・チルドレン兵団は、大逆戦争の最高潮であった地球侵攻作戦にも参戦したが、彼らが皇帝の宮殿周辺で戦っていた記録はほとんどない。仕事しろ伝説によれば、彼らは広大な〈帝国〉のために尽力してきた地球の住人達、複合工業施設の人員、官僚や研究者、あるいは単純労働者たちを狙って襲いかかったのだという。
戦場から逃げ延びてきた実直な書記官や尊大な総督たちの家族は無慈悲に狩り殺され、あるいは捕らえられてさらに悪しき運命の待つ牢獄へと投じられた・・。兵団が味わっていた単純な興奮は、やがて可能な限り多種多様な刺激の入り混じった複雑な悦びへと堕落していった。同盟者たちが戦って死んだ後、エンペラーズ・チャンピオン(筆頭戦士)は、率直に言えば自らの快楽のためにのみ、何千何百という数の死者を作り出したのだ。
【堕落と頽廃の権化】
兵団がかつて掲げていた高貴なる理想の倒錯は、大元帥ホルスに端を発したものとみなされていたが、最終的には兵団を統べていた総主長、不死鳥と称されていた「フルグリム」によって拡散された。〈ホルスの大逆〉の余波において、彼はある慣行を実施した。
それは、兵団に所属しているそれぞれに高いカリスマ性を誇った司令官たちとその近衛部隊に、大いなる自治権を授けるというものであった。この慣行はやがて兵団が見る間に分裂してゆくきっかけとなった。
分裂した諸軍は、独自の目的を達成するために行動し始め、銀河系のあらゆる惑星を奴隷狩りと快楽の狩場にするために荒らし回り、凶暴な感覚器官を満足させるべく不浄なる悦びに耽った。己が技量を、大逆者の中でも卓越したものである事を証明したいという衝動に駆られた結果、彼らは他の大逆兵団や背信戦団の戦闘集団に対して戦いを挑む頻度が最も高かった。
そうした戦いで敵を破り、然る後に敵の奴隷や従僕を奪ったのである。
【下劣な美的感覚】
エンペラーズ・チルドレンの感覚はあまりにもねじ曲がってしまったため、その精神が認識できる色合いは他にないほどの強烈な色彩や対照色同士のパターンだけだ。アーマーの各部、あらゆるボルタ―とチェーンソードは、彼らが崇拝するスラーネッシュ神を讃える豪華な装飾が施されている。
エンペラーズ・チルドレンのあらゆる兵たちは、やや毒々しい、あるいはごく彩色の豪奢な色彩で自分のアーマーを飾り、また強化措置を施す。
その装飾にあしらわれるのは激しい対照色、目にも綾なシルク、黄金の鎖、邪悪な眼差し、悍ましき戦利品に至るまで多種多様だ。兵団の武器職工たちは、肩当や胸当てに比類なき戦士が堕落した場面を彫刻し、それらを身に纏う者たちの歪んだ美的感覚を満足させる。
己が手でもたらす破壊と、己が身に負うであろう傷をともに悦びとする彼らは、スラーネッシュ神に捧げるための新たなる奴隷を得る事と引き換えに、いかなる渾沌の戦将にも仕えるであろう。スラーネッシュ崇拝は兵団全体に広がり、そこに所属する無数の戦闘集団にも埋め込まれている。
悦楽神の霊言ありし印は至る所に見られ、例えば神の印章を象った骨質の角、両性具有であることを示す肉質の突起や瘴気めいた妖力を湛える光輪などは、全てこの印である。エンペラーズ・チルドレンの大半はスラーネッシュに仕えるノイズマリーンへと変貌してしまった。
黙示録的な死の反響によって、肉体であれ鋼鉄であれ等しく引き裂く音波の力への強迫観念に憑かれた戦士であり、彼ら自身は自らを特異にして祝福されし存在と認識している。その他の兵団の戦士たちは、かつてない興奮と刺激を求めて異なる道を辿っている。
敬虔なる皇帝の崇拝者たちの前で、神聖なる増を冒涜し、神聖不可侵とされてきた太古の要塞を破壊し、英雄たちを捕らえ、彼ら彼女らの面前で生きたまま前身の皮を剥ぐといった、邪悪で非道なる所業を繰り返した。
こうした悪行の全てにおいて、エンペラーズチルドレンは敵が希望を打ち砕かれ、あるいは名誉をことごとく失ってゆくことに病的な快楽と愉悦を覚えるのだ。
【フルグリムの消息】
異端審問庁〈鉄槌の団〉の諸組織も、総主長フルグリム自身に関する確かな情報はほとんど把握していない。帝国暗殺局からの刺客によって彼はとうに粛清されたという噂もあれば、競合する無数の大逆兵団との戦いにおいて戦死したとも言われている。
あるいはディーモンプリンスへと昇格したという伝聞もあるが、これも他の情報同様、信憑性が高いものではない。兵団の戦闘集団の大半は、名高き遺伝種子の父が如何なる運命を辿ったかについて、何一つ知らぬ可能性もある。
というのも、エンペラーズ・チルドレンの兵団員たちは、永遠の悦楽に耽るためにフルグリムの宮廷が置かれた伝説の惑星を未だに探索中であるという噂があるからだ。だが、〈ホルスの大逆〉終戦から一万年を経た後も、たとえ大逆の総主長の存在を示す根拠が希薄であろうと、異端審問庁はこの噂の真相を究明すべく編成された相当規模の軍事力を維持している。


画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P46イラストより


【主要キャラクター】

  • 「フルグリム」

【概要】
「エンペラーズチルドレン」兵団を率いて大征戦を戦った大逆派の総主長。整った美しき顔立ちと銀髪が特徴で、あらゆる分野に対して完璧さや美しさを追求する。
大逆前は〈不死鳥の君〉の異名を持ち、他の総主長に対しても温和な態度を取っていた。特に大元帥ホルスとも親密な関係を築いている。
完璧主義者として帝国に尽くしてきたが、ある出来事を境に渾沌へと堕ちてしまう・・。


画像出典:小説「Fulgrim: The Palatine Phoenix」表紙イラストより


総主長フルグリムに関して詳しくはこちらを参照されたし。


  • 「“久遠なる”ルシウス」

永劫の刃



【概要】
現在のエンペラーズ・チルドレンを率いるサディスティックなる加虐者であり、特殊な能力を用いて何千年も銀河を渡り歩いている。何千年前も前のこと、ルシウスは「エンペラーズ・チルドレン兵団」の一同胞として、総主長フルグリムに仕え、皇帝の名の下に銀河を転戦していた。
もはや芸術の域にまで達した自らの戦闘技術をさらに高めるべく、ルシウスはありとあらゆる分野を切り捨てていたという。彼は数え切れないほどの戦傷をその体に負い、それを何よりの誇りとしていた。もはや彼にとって苦痛と成功は分かちがたい同一のものだった。
【狂気の剣士】
エンペラーズ・チルドレン兵団がホルスの起こした反乱に挑むべく派遣される頃、ルシウスは自らの顔、頭、そして胸に無数の傷を刻んでいった。全身に刻まれ続けた傷跡は、複雑な迷宮のように入り乱れており、彼の要旨を著しく崩し歪めていた。
その後、ルシウスは少しずつ狂気に陥っていく。彼の内なる声が更なる非道な行為へと彼を狩り立て、完全無比なソードマンたるべき強烈な執念にますます取り憑かれていった。
己が所属する兵団が渾沌信奉の道へと堕落した後も、ルシウスは総主長への忠誠を示し続ける。兵団が無防備な惑星を襲いながら移動していた間、フルグリムが開催した死の闘技会で、彼は信じがたいほどのスピードと格闘技術をもって勝ち続けた。
彼はいかなる敵も寄せ付けず、ほぼ無敵と言って差し支えない。もはや自然界に存在する者の力では、彼を打ち倒すことはできないのではないかとさえ思われたが、かの悪名高き大令卿「シリウス」との決闘で遂に倒れ、死を遂げたのである。
しかし、これほどまでに前途有望な従者の魂が、やすやすと死者の国へと落下していくのを、かのスラーネッシュ神が快く許すはずはあるまい。
【奪われし身体】
それから数週間後、大令卿シリウスが身に着けていた「アーティファイサー・アーマー」の表面が変容をきたし、歪み始めた。やがて、シリウスの毛髪は次々と抜け落ち、その肌の奥底には黒い模様が現れ始める。
そして徐々に、彼の全身は迷宮のような瘢痕組織で覆われてゆく。そこに現れたのは、なんと甦ったルシウスであった。
かつてルシウスを殺した者の名残はもはやなく、苦痛に歪んだシリウスの顔が、ルシウスの鎧に浮き上がり永遠の絶叫を浮かべる以外、そこに立つのはルシウスそのものだったのである。
【苦痛なる変身】
ルシウスはもはや何者を恐れる事無く尊大に銀河を渡り歩き、サディスティックな虐殺を繰り返してきた。ルシウスを殺した者は、勝利の栄光に酔うであろうが、それも一時の夢だ。
その者は苦痛に満ちた変身を味わいながら、次第にルシウスに取って代わられるのだから。現在ルシウスが纏っているアーマーには、かつて彼を殺した者の顔が浮かび上がり、苦悶の表情をゆがめ、わなわなと震えている。
彼らの合唱を聞くたび、ルシウスは最高の充足感に満たされるという。彼の装飾華美なサーベルと、〈歪み〉で穢れた鞭は、銀河のあらゆる場所で、数え切れないほどの英雄たちの血を味わってきた。
彼は、圧倒的なまでの自身に満ち溢れながらエンペラーズ・チルドレン兵団を率い、敵を殺めるのと同じぐらい心地よい苦痛に満ちた自身の死を熱望しているのだ。


画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P87イラストより

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「サウザンドサン」


「ティーンチ神に栄光あれ!」



プライマーク(総主長):総主長マグヌス
現指導者:総魔長マグヌス
サイカー(異能者)の採用:必須
傾倒する渾沌神:"大いなる策謀者"ティーンチ神
【概要】
サウザンド・サンはティーンチ神に仕えし〈歪み〉の妖術師たちから構成される、恐るべき〈戦闘者〉たちだ。構成員はほとんどがサイカー、すなわち異能者で構成されており、この世ならざる超常現象による肉体強化や火花を散らす稲妻を呼び出すなどの神秘の業を駆使する。
彼らと同じ戦場に立つことは、正気と魂をも危険に晒すことと同義である。それはすなわち、彼らの扱うサイキック能力の源である〈歪み〉の汚染を受けてしまい、不安定なエネルギー故の肉体変異や精神を蝕む病に侵されてしまう可能性が高いということだ。
魔焔に包まれたボルト弾や〈歪み〉の炎、そして邪悪なるサイキック攻撃や妨害によって敵は、サウザンド・サンの圧倒的な力に成す術もなく滅するだろう。
【赤の王と1000人の息子たち】
彼らの運命はまさに数奇でかつ悲劇的なものであった。サウザンド・サンも他の大逆兵団と同様、皇帝に仕えし栄光なるスペースマリーン兵団の一つであった。
サウザンド・サンを率いる総主長マグヌスは、他の兄弟に比べてサイキック能力の扱いに長け、努力と研鑽を惜しまない博識な人物として知られていた。赤い肌と髪、そして大きな体格を持つ彼は「変異者」(ミュータント)に対しても理解を示し、いつの日か異能力を人類に役立てて見せようと惜しみない努力を続けた。
初期の第15兵団はマグヌスの持つ遺伝種子の影響によって変異が生じ、最初は全く使い物にならなかった。適合が確認された僅かな者たちは、地球のヒマラヤ山脈地下にある研究所でスペースマリーンへと変身させる事に成功した。
そうして編成された第15兵団は地球で起こった反乱を鎮めるために投入され、その際に兵団は皇帝自身によって「千人の息子」の意味を持つサウザンド・サンと名付けられた。後に〈大征戦〉へと正式に参加したサウザンド・サンは、マグヌスの指揮下でサイキックを駆使した戦術によって多大なる成果を挙げた。
しかし彼らは、突然変異の危険に晒され、同胞から常に疑いの眼差しを向けられる呪われし存在として知られていた。後に皇帝はマグヌスと兵団に彼らが有するサイキック能力の使用、研究を禁止し、謹慎処分を言い渡した。
【マグヌスの愚行】
謹慎処分によってマグヌスは、惑星プロスペローで兵団と共に待機していた。そしてマグヌスは、ある恐るべき幻視を視るようになった。
それは、大元帥ホルスが皇帝を裏切り〈帝国〉で内戦を起こすという内容であった。この時マグヌスは皇帝側に付いたのか、ホルス側に付いたのか、自らの運命に関しては全く視えなかった。
既にホルスは〈渾沌の神々〉に忠誠を誓っており、着々と裏で大逆の準備を進めていたのだ。マグヌスはすぐに皇帝へと知らせるために、禁じられたサイキックを使用してその魂を地球へと向かわせた。
しかし、地球全体にはサイキックを防ぐ障壁が貼られており、マグヌスは地球へ侵入する事ができなかった。その時、マグヌスは突如“謎の存在”から力を貸そうと助力を申し立てられ、その者と共に地球を覆う障壁を破壊した。
マグヌスの魂は地球へと侵入ができたが、それはあまりにも愚かしい行為であった。皇帝は銀河系に張り巡らされたワープ通路である〈網辻〉(ウェブウェイ)を開通させようと計画を進めていた。
だが、マグヌスが地球に張られたサイキック障壁を破壊したことによって〈網辻〉に大量のケイオスディーモンが侵入してしまい、皇帝の計画は失敗に終わった。この行為に大激怒した皇帝はマグヌスを叛逆罪のために身柄拘束の命を出したのだ。
【プロスペロー陥落】
その後マグヌスはおとなしく命に従い、本拠惑星「プロスペロー」で〈帝国〉の艦船が来るのを待っていた。しかし、プロスペローに到来したのはサウザンド・サンとプロスペローの惑星住人を抹殺する指令を受けた「スペースウルフ」兵団と近衛兵団「カストーデス」の艦隊であった。
プロスペローは彼らの放つ砲撃による炎に焼かれ、マグヌスは惑星と住民を守るために必死の抵抗を続けざるを得なかった。惑星が破壊される最中、サウザンド・サンは愛すべき首都「デイツカ」を見捨てなければならない状況に追い込まれてしまう。
元々皇帝はサウザンド・サンが犯した罪に対してスペースウルフと近衛兵団、そして沈黙の姉妹団(シスターオヴサイレンス)を派遣し、総主長マグヌスと配下の異能者に対して釈明と逮捕を行うつもりであった。しかし、その情報をいち早く察知したのは渾沌に堕ちてしまった大元帥「ホルス」であった。
この時ホルスは総主長「ローガー」の策略によって渾沌の神々に忠誠を誓い、密かに大逆の準備を進めていた。それをいち早く察知したマグヌスは、サイキック能力を利用して皇帝にその旨を伝えようとしたが、皇帝が進めていた秘密の計画を台無しにしてしまう。
激怒した皇帝はホルスにマグヌスの逮捕命令を下したが、この時ホルスは自分の計画を皇帝に察知されないよう、マグヌスを潰すように仕組んだ。サウザンド・サン及びマグヌスと一番仲の悪いスペースウルフ兵団とそれを率いる総主長「レマン=ラス」及び近衛兵団と沈黙の姉妹団に、マグヌス抹殺命令を下したのだ。
こうしてプロスペローは炎に包まれ、サウザンド・サンとマグヌスは圧倒的に不利な状況で戦わざるを得なかったのだ。
【敗走の魔術師】
侵略してきたスペースウルフ側の軍は難解な技術を有していたため、サウザンド・サン側はそれに対抗できずにいた。追い込まれたマグヌスはティーンチ神の奴隷となる契約を交わし、サウザンド・サンとマグヌスは〈歪み〉の力によって〈恐怖の眼〉の魔術師の惑星「ソーティアリウス」へと敗走した。
生き残った1242人のサウザンド・サン(1242という数字は各桁を足すとティーンチの聖なる数値である9になる(1+2+4+2=9))はソーティアリウスへと逃走できたが、禁忌の力に接触したことによる対価は恐るべきものであった。数十年にも渡る超常的なサイキックエネルギーの利用も相まって、〈歪み〉の力を行使した影響はサウザンド・サンのスペースマリーンたちに大きな被害をもたらし始めた。
同胞たちの変異が急速にかつ歯止めのきかないまま兵団全体に広まったのだ。サウザンド・サンの「主席司書官」(チーフ・ライブラリアン)である「アゼック・アーリマン」は、後に"アーリマンの朱書き"として知られる事になる強力な呪文を解放することによって、この衰退過程の抑止を試みた。
ディーモンの契約を結び、仲間の「司書官」(ライブラリアン)のエネルギーを繋ぎ止める事によって、アーリマンはサウザンド・サンの全てに永続的な魔法を掛け、渾沌の堕落の影響から永久に守ることを企図した。しかし、“道を捻じ曲げる者”の異名を持つティーンチ神は、アーリマンの祈りに応じたが、それは本来の意図から最も捻じ曲げた方法によるものだった。
サウザンド・サン兵団の妖術師の中には、その肉体を完全に破壊されてしまった者たちもいたが、“アーリマンの朱書き”を生き延びた者たちは、その知識と魔力が以前よりも遥かに増強されていた。しかし、サイキックパワーをごく僅か、あるいはまったく持ち合わせていなかった多くの同胞たちには、永久的な、そして絶対的な変化が待っていたのだ。
彼らの着装しているパワーアーマーは、関節や接合部分が溶接されたかのごとく体と融合し、外気と完全に隔絶され、その身を封印されてしまったのである。アダマンチウム鋼とセラマイト合金で作られた重装甲の鎧の内部に存在したスペースマリーンの肉体は、乾ききった骨質の塵へと変わり果てていた。
これによって確かに彼らは変異の脅威にさらされる事は無くなった・・。しかし、彼らの肉体はもはや存在せず、その魂だけが永遠に鎧の内部に囚われの身となってしまったのだ。
マグヌスは激怒し、アーリマンを殺そうとしたが、ティーンチ神に止められて彼を追放処分で済ませてしまう。悲しみに包まれたマグヌスはティーンチ神への忠誠を誓い、〈帝国〉に復讐を誓うケイオス・スペースマリーンを率いる事になったのだ。
【朱書きの兵団】
サウザンド・サンを構成する部隊のほとんどは〈朱書かれし者〉、すなわち「ルブリックマリーン」たちだ。彼らは自律行動が取れないためソーサラーに率いられて戦場へと赴く。
だが、かれらは言い渡された命令は絶対従い、その一挙手一投足において精確な戦闘を行う事が可能だ。彼らは生前の戦技を一切失っておらず、恐るべき妖術の武器によってさらに戦力が増強されている。
また彼らは時に、貴重な宝物庫や書庫の番兵を任されることもあり、無謀にも至宝を奪いに来た者たちを容赦なく返り討ちにするのだ。
【狂信者の群れ】
サウザンド・サンの妖術師たちは、自らの隷属部隊の大半を使い捨て可能な無数の奴隷や従者で構成している。そこには〈帝国〉全域に散らばるティーンチを奉ずる教団員が無数に含まれている。
正気を失った者、野心家、変異者などが皆、ティーンチ神を崇拝し、その身を武装して戦場へとなだれ込む。彼らはサウザンド・サンの軍艦の船倉に満載され、一度戦闘開始すればまるで生きた弾丸の如く使い捨てされるのだ。
【上級の魔術師たち】
その他、サウザンド・サンには強力な同盟が存在する。変異者である怪物「ツァーンゴール」は妖術師たちに生身の兵力を供給する。人間と鳥類が合体したような彼らは、驚くべき技能で魔力が込められた武器を振るう。
その一方で「シャーマン」らは、サウザンド・サンの支配者たる妖術師の副官であり、自身の力で獰猛な襲撃隊を率いるのに十分な魔力を駆使するのである。


画像出典:コデックス「サウザンド・サン第8版」(codex:Thousand Sons) P4,5イラストより


【主要キャラクター】

  • 「マグヌス」

【概要】
「サウザンドサン」兵団を率いて大征戦を戦った大逆派の総主長。強力なサイキック能力を持ち、知識の探求と自己研鑽に磨きをかけているサイカー(超能力者)であり、後に数奇な運命をたどることとなっていく。
他の総主長に比べて体は大きく、歪みの影響による変異によって真紅の肌を持っている。また、片目が見えていない。
変異に苦しんでいるミュータントやサイカーに対しては理解を示しており、総主長として戦っていた際は、サイキック能力で人類に奉仕することがサイカーが救われる道だと信じて戦い続けていた。
しかしある起点を境に、〈帝国〉を裏切らなければならない状況に陥ってしまう。今現在は、ケイオス・スペースマリーンの総魔長となり、「スペースウルフ」戦団と〈帝国〉に復讐を果たすべく戦っている。


画像出典:コデックス「サウザンド・サン第9版」(codex:Thousand Sons) P6イラストより


総主長マグヌスに関して詳しくはこちらを参照されたし。


  • 「アーリマン」

「朱書きの創案者」


【概要】
悪魔となり果てしかの遺伝子祖を除けば、アーリマンはサウザンド・サンの中で最も優れた妖術師である。彼の驚異的な力の全ては、ただ一つの目的に注がれている。
それは、永遠の断罪を受けた兵団の救済である。ただ、アーリマンが妖術、全能の知力、そして何千年もの探求を捧げたにもかかわらず、それらの試みがただ事態を悪化させるのみである、非常にティーンチ的な皮肉だと言えよう。
【呪われし大地】
サウザンド・サンが惑星プロスペローから惑星ソーティアリウスへと転移した時、彼らはそこが安住の地であると信じた。彼らは異空間の潮流に浸り、己らの望むままに呪文を実践したが、間もなくその地が呪われている事に気が付いた。
破滅的な物理的変異、サウザンド・サンが恐れを込めて「肉体変化」と呼んだ疫禍に冒されていた彼らは、その脅威の発現が加速していることに気づいたのだった。この呪いが始まらなければ、兵団は狂気と怪物化に呑み込まれてしまうだろう。
そのことを疑う者はほとんどいなかった。だがマグヌスは、限りなき知識の探求にかまけ、何の行動も起こさなかった。
代わりに、彼の同胞を救うことを自ら進んで引き受けたのが、兵団の元主席司書官であるアゼック・アーリマンだったのだ。
【放逐されし盟主】
アーリマンと彼の共謀者たちが創り上げた呪文は、〈朱書き〉(ルブリック)と呼ばれ、それはサウザンド・サンを永劫なる呪いを閉じ込める、最後の一撃となった。確かに呪文は肉体変化を阻止したが、その代償は実に途方もないものだったのである。
罰として、マグヌスはかつて寵愛した遺伝子末裔の一人であるアーリマンを追放した。ティーンチ神の本質を理解するという不可能な任務を終えるまで戻る事は許さぬと告げて。しかし、アーリマンは後悔していなかった。
そして彼は、一つの目標に努力を集中させた。兵団をかつての真の光輝満ちたる姿に復興させる事に。
自信の妖術が与えた恐ろしい変化を元通りにするだけでなく、皇帝がスペースウルフ兵団を仕向けてきて以来失われた、力ある地位へとサウザンド・サンを導くことに。
【呪われし道】
それ以来、アーリマンは星々に破滅の道を切り開いてきた。彼は駒として仕える者であればなんでも従える。
〈朱書かれし者〉、つまりルブリックマリーンの隷属部隊、「変異体」(ミュータント)のティーンチ崇拝者、あるいは冤罪の名の下にアーリマンが使い捨てに出来る主無き反逆者たちが彼の元に集う。同胞を元に戻すという難問を解くことが、自分の才幹の内にあると確信しているこの大妖術師は、いかに暗く、残酷で、あるいは禁じられし事であったとしても、それが最終的な目標に役立つのであれば、どのようなことも厭わない。
敵にとって、アーリマンの暴力行為や冒涜行為は狂気の沙汰といえるほどの行き当たりばったりなものに見える。実際、アーリマンの陰謀は、かの総魔長のたくらみと同じくらい無秩序に広がっているのだ。
【妖術師の奇妙なる武器】
戦闘においてアーリマンは、「黒き杖」と呼ばれる〈歪み〉の中に燃え盛る光無きものとして具現化する忌まわしきフォースステイヴを振るう。アーリマンは自らの杖を拵えた。
杖の先端にはティッカの遺跡から発掘された「隠された真実の石」が埋め込まれている。そして、その武器を飾るのは「“破壊者”ヴァドアカール」と呼ばれるディーモンプリンスの切断された角であり、その柄は、スペースウルフの侵略の際に惑星プロスペローで黒焦げになった、アーリマン自身の邪術杖の破片を元に仕上げている。
一方、黒き杖の刃は、残骸となったアエルダリの「先見司」(ファーシーア)の杖から鋳造されている。杖に新たに加えられたものは、どれも妖術の力に富み、運命に満ち、アーリマン自身の妖術の力をさらに増幅するものなのだ。


画像出典:小説「Ahriman: Eternal」表紙イラストより

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「デスガード」


「全ては腐りゆく・・。」



プライマーク(総主長):総主長モータリオン
現指導者:総魔長モータリオン
サイカー(異能者)の採用:不許可
傾倒する渾沌神:"腐敗の尊父"ナーグル神
【概要】
ナーグル神の御使いであるデスガードは、恐るべき防御力と忍耐強さ、そして疫病と毒を駆使した恐怖の戦術であらゆる敵を粉砕する。〈尊父〉を奉じる彼らは体が腐っており、傷口から膿汁を滴らせ、腐食性の毒煙を撒き散らして尊父の祝福を撒き散らして苦痛と絶望を銀河に広めるのである。
彼らの肉体は腐って見るからに貧弱そうに見えるが、強力な耐久力を持ちつつも全ての痛みを無視してしまうのだ。総魔長モータリオンが率いる死の軍団は、今日も銀河に偉大な尊父の疫病と絶望を与えるために戦い続ける。
【忍耐強き兵団】
西暦29000年代に勃発した〈大征戦〉の時代、モータリオンと皇帝との再会を果たして以降、デスガードは休むことなく激戦を繰り広げた。デスガードは元は「ダスクレイダーズ」と呼ばれる重装歩兵の兵団であり、高い生存能力と耐久力で頑強な防衛を得意とする部隊であった。
ダスクレイダーズの指導者がモータリオンになった際、兵団名はデスガードと改名され、構成させる兵団員もモータリオンの母星「バルバラス」の退役軍人を中心とする編成へと変更された。彼らは人類を異種族や圧政を敷く支配者から解き放ち、自由にすることを是とし、自らを熱狂的なまでに追い込んでいった。
そして彼らは決して休みを取らず、物資の補給や人員の確保も移動しながら行われたほどだ。どの戦場も兵団員を駐屯させず要塞も建設せずに、彼らは銀河系を転戦して破壊と殺戮をもたらしていった。
移乗攻撃、塹壕戦、攻城戦と様々な場面で彼らは活躍し、それらを特異とせぬ者はいなかった。
【モータリオンと皇帝の確執】
モータリオンは惑星バルバラスで育ち、この惑星には異種族によって専制政治で民を統治していた。モータリオンは異種族の将軍に育てられ、過酷なる有毒の環境にも耐えられるよう鍛え上げられた。
後にモータリオンは君主による圧政の現状を知ってしまい、彼は義父のもとから離脱した。これらの異種族に対するモータリオンの憎悪は決して消えず、後に兵団を率いる際にはあらゆる形の暴君を探し出しては徹底的に葬り去ったのだ。
モータリオンがバルバラスを支配した君主たちを憎んでいたのは圧政だけではなく、彼らが使っている“異能力(サイキック)”を使って人々を苦しませていたからである。彼はそれが理由で常に異能者を嫌っており、兵団に異能者がいた場合にはそれを使わぬように誓わせるか、あるいはその者を殺してしまうぐらいであった。
モータリオンはそのような疑似科学的なもの事態を使うことが邪悪であると考えていたのだ。彼は後に圧政を敷く君主と戦うために農民や平民を集めて反乱を起こし、バルバラスを専制政治から解放しようと戦った。
それは自分の義父とも戦う事を意味しており、自らを育ててくれた恩人との決闘は避けられないものとなった。モータリオンは義父との壮絶なる死闘を繰り広げたが、あまりにも強い毒の大気によって彼は息を切らし、隙を晒してしまった。
彼が最後に見たのは義父が自分にとどめを刺そうとした場面であった。しかしその時、見知らぬ人物が現れ、義父を剣の一振りで切り裂いてしまった。
その人物こそが皇帝であり、自らがモータリオンの親の父であることを明かし、モータリオンに〈大征戦〉へと協力するように頼んだ。彼は皇帝に膝を曲げ、奉仕を誓ったが、彼の中には育ててくれた義父を殺めた恨みも募らせていたのだ・・。
【ナーグル神への帰依】
モータリオンはホルスに組して皇帝に叛旗を翻した最初の総主長たちの一人であった。惑星「イシュトヴァーンIII」で起こった降下地点の虐殺を機に〈帝国〉を裏切り、デスガードは銀河系の各地でその猛威を振るった。
そして〈ホルスの大逆〉が最終局面を迎えようとし、デスガード兵団が地球へと艦隊で移動している時に、大いなる転機が訪れる。地球へ向けて進軍中であった艦隊は、突如予想外の〈歪みの嵐〉に囚われてしまった。
デスガード兵団の第一中隊長であった「カラス・タイフォン」、後の「ティファウス」はモータリオンが異能者嫌いであったことを利用し、この停滞を咎めて艦隊の感応通信官たちを皆殺しにしてしまう。
感応通信官たち無くしては〈帝国〉製の艦船は〈歪み〉の中を航行することは不可能だ。しかし、タイフォンは、彼自らがこの艦隊を率いて〈歪み〉の中を進む事ができると宣言する。
しかし、それは彼の巧妙な罠であった。デスガード兵団の艦隊は〈歪み〉の嵐の中で立ち往生する中、兵団員に「崩壊病」という病人を肥大化した変異者へと変えてしまう疫病が発生してしまう。
この病は肉体が急速に肥大化し、鉤爪や棘、触手などが体中から生えるだけでなく、体中が激痛に襲われてしまう恐るべきものであった。いくら高い耐久力と強壮さを誇るデスガードでさえも、この時ばかりは崩壊病に対しては全く対抗できない。
そんな中、モータリオンは他の誰よりも重い崩壊病にかかり、彼はそれに屈した。そして彼は救いを求めるべく、〈尊父〉ナーグルに彼と兵団の魂を差し出して、この病を止めようとしたのだ。
彼の願いは通じ、モータリオンとデスガード兵団員は崩壊病の苦痛から解放されたが、変わり果ててしまった醜悪な肉体はそのままであった。こうして、デスガード兵団は〈病の父〉ナーグル神に仕えるケイオス・スペースマリーンとして永遠の奉仕を約束したのであった。
【腐りし兵団】
〈大征戦〉の後もモータリオンはデスガード兵団の編成を変えようとはしなかった。基本的にデスガードは高耐久を活かした近距離射撃を得意とする。
各中隊はディーモンプリンスを中心に、数十の主力艦、と無数の支援艦からなる疫病艦隊や、戦車、銃砲、その他機動兵器、魔導兵器、戦闘機を保有し、百億とも言われる使い捨ての歩兵を駆使する権限を持つ。さらにデスガードは様々な専門家を有する。
兵団員の病原菌の面倒を見る「プレーグサージョン」や病毒や病原菌を研究する「ファウル・ブライトスポーン」、戦場で作り上げた毒や病を振りまいて実験を行う「バイオロガス・ピュートリファイヤー」などの凶悪なるスペシャリストが彼らの屋台骨を支えている。デスガードの各組織は配下のロードを監視するために「デスシュラウド」を派遣して組織の統率を保つようにしている。
部隊が散らばっている状況では兵団に内部抗争や反逆が生じる可能性がある事をモータリオンはよく把握しており、デスシュラウドによってお気に入りの部下を守り、危険なものは排除し、疑わしき者は脅迫して組織の反逆を防ぐ。彼の者たちは元はモータリオンの護衛であり、全員がその献身、忠誠、そして比類なき戦闘力で選ばれたエリート戦士たちだ。
強力な専門家と容赦なき組織運営によってデスガードは、盤石な体制を敷く戦闘集団としてその名を轟かせているのだ。


画像出典:コデックス「デスガード第9版」(codex:Death Guard) 表紙イラストより


【主要キャラクター】

  • 「モータリオン」

【概要】
「デスガード」兵団を率いる大逆派の総主長。〈蒼白き王〉、〈死を統べるもの〉、〈病魔の公子〉の異名を持つモータリオンは、かつては〈大征戦〉を戦い抜いたが、皇帝の配慮の欠いた行動と大元帥ホルスの誘いによって総魔長へと堕ちることとなる。
陰鬱な性格で他人とも距離を置いているが、不屈の忍耐力を持ち、辛抱強さはどの総主長よりも優れている。更に、常人では即死するような毒の霧の中でも生きられる超人的な耐久力を持つ。


画像出典:マジックザギャザリング「総魔長モータリオン」イラストより


総主長モータリオンに関して詳しくはこちらを参照されたし。


  • 「ティファウス」


【概要】
テルミヌス・エストの主、長き旅をする者、ナーグルの御使い、デスガードの第一中隊長、ティファウスはこれらの異名を持ち、それ以上の存在だ。彼は巧みな戦術家であり、危険な戦士であり、強力な魔術師であり、デスガードの疫病艦隊の司令官の中でも最も恐れられる存在である。
兵団の誰もが、彼がとりわけナーグルに愛でられている事を疑わない。ティファウスは大逆以前より生き続けている、デスガードにおける歴戦の古参兵だ。
デスガードにおいても、強き意志、持続力、鍛えられた戦闘力においてティファウスに肩を並べる者は少ない。彼が新兵であった時、対毒試験に誰よりも長く耐えたのは彼であったし、無限耐久訓練を誰よりも長く続けたのも彼であった。
加えて彼には異能力の才能があり、兵団の書記官となる事を望んでいたが、これは総主長であるモータリオンが兵団の異能者を扱う部署である「蔵書院」を廃止してしまったために叶わなかった。ティファウスは持って生まれた才能を使えぬままとなったのだ。
【崩壊病の番人】
デスガードが地球への旅の途上で〈歪み〉に捕われ、彼らの間を崩壊病の恐怖が席捲した時、ティファウスはこの病気の持つ力を隅々まで我が物にした。今の彼は、あたかも歩く培養器の如き存在だ。
彼の体内に巣食っているのはナーグルの最も致命的な病の一つであり、ティファウスの肉体はもはやその病原菌に喰い尽くされているものだと信じている者も居る。彼の鎧は、もはや彼の意志のみによって動いているというのだ。
真実がどうであれ、この病気を体内に取り込んだことによってティファウスの肉体は法外に膨れ上がった。彼の装甲は全て溶接され閉じられているが、止んだ触手がそこかしこを破って突き出し、息を詰まらせ肺を腐らせる瘴気を吐き出している。
その時以来、ティファウスは崩壊病の原蟲の宿主となった。今では彼のそばにいるだけで、この肉食性のウイルスに感染し、苦痛を極めるこの病に苦しむ可能性がある。
彼の周囲では疫病蠅が飛び回り、このウイルスをせっせと拡散してゆく。
【ティファウスの旅路】
〈ホルスの大逆〉に敗北したデスガード兵団は〈恐怖の眼〉へと敗走して以降、モータリオンは〈病の星〉を改造し、その惑星を第二のバルバラスとして扱おうとしているが、ティファウス個人としてはこれは惨めな感情として軽蔑している。彼に言わせれば、〈尊父〉に仕えしデスガードはナーグル神の祝福を銀河全域に広めねばならず、そもそも〈恐怖の眼〉に引き籠っているべきではないと考えている。
彼は旗艦「テルミヌス・エスト」を駆り、大部隊を率いて繰り返し銀河各地へと侵攻を行った。モータリオンは決してそれに手を貸しはしなかったが、彼を引き留めようともしなかった。
モータリオンとティファウスは時には協力することもあるが、それは双方に利益がある場合のみである。総魔長たる存在に対してこれほど対等な関係を持ちうること自体が、ティファウスがどのような人物かを物語っている。
モータリオンはなぜこれほどまでにティファウスを自由にさせているのかは、多くの者が疑問に思うところだ。ナーグルの祝福が広まる事を是しと考えているのだというものもいれば、兵団な内乱状態になる事を避けるためだという者もおり、もっと奇怪な説を唱える者も居る。
しかし、真実はモータリオンのみぞ知る。
【疫病の台頭】
一万年以上に渡り、ティファウスはナーグルの腐れ病を、そして崩壊病を、無数の惑星にもたらせてきた。ナーグルの聖なる数字である“7”という数にちなんで7の7倍の7倍(7の三乗)の数の「タリーマン」が送り出され、そのh窓外を掛けて、数十億の死亡者を数えた。
しかしこれらの者たちがその全人生を捧げたにも関わらず、ティファウスの遠征三千年分の被害者が、まだ記録されずに残っており、数えられねばならぬものの数は年々増え続けている。しかし崩壊病の死者は、使者として数えられたとしてもじっとしてはいない。
渾沌に汚染された彼らは立ち上がり、「プレーグゾンビ」として彷徨い、彼らに咬まれるか、あるいはその声を聞くだけでも、周囲の者に感染が広がる。銀河に〈大亀裂〉が生じた第42千年紀(41000年代)に入り、荒れ狂う魔力によってゾンビウイルスは無数の新たな病毒へと突然変異し続けている。
新種のゾンビが無数に生まれ、〈帝国〉を苦しめている。「ロットシャンブラー」、「ファウルクリーパー」などが新種として分類されるが、いやらしい「ボクスウォーカー」の数がやはり一番多い。そのよろめく群れに滅ぼされた大都市圏、多層都市は数知れず、時には惑星が丸ごと滅びた例もある。
【終末の船テルミヌス・エスト】
テルミヌス・エストはティファウスの旗艦であり、デスガードの疫病艦隊において最も強力な宇宙戦艦の一つである。その艦内の玉座からティファウスは指令を下し、惑星「スランヤ」の緑深き海を汚染させて触手を持つ巨大生物が蠢く有毒の粘液の大海へと変え、ヨナの惑星全土に広がった疫病を送り出し、過密惑星「メントティアス」に対して疫病蠅を解き放ち、その全人口を飢えて密集する歩く死者に変えた。
テルミヌス・エストの歴史は古く、その建造は〈大征戦〉よりさらに以前に遡るという説を出す者さえいる。この船が〈帝国〉が誇る輝ける戦艦であった頃には、それは滑らかで力強い攻撃の主力であり、軌道爆撃を行いつつ、強襲降下部隊としてデスガードを送り出した。
第41千年紀(西暦40000年代)においては、この船は耐えきれぬ悪夢以外の何物でもない。デスガードがナーグルに帰依した時、彼らは肉体のみならず、艦内の戦車や艦船などの全てが汚染され堕落したのだ。
今のテルミヌス・エストはねばねばした汚物に分厚く覆われ、半ば生物と化した機械が成長して、ぶつぶつと膿を流す外骨格となっている。それは宇宙空間を移動する時ですら有害な分泌物を撒き散らし、腐り病の瘴気が雲のようにその周囲を取り巻いている。
もしその航跡を他の船が横切れば、外壁が汚染され、溶け落ちてしまうほど強力なのである。長年に渡り、ティファウスはこの旗艦を駆ってケイディアの大門に出没していたが、〈大亀裂〉が生じて以降は、それまでよりも遥か遠くへ長征する姿が確認されており、至る所に恐怖と死をもたらしている。


画像出典:コデックス「デスガード第8版」(codex:Death Guard) P5イラストより


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その他の戦闘集団(ウォーバンド)

「クリエイション・オヴ・ファビウス」(ファビウス・バイルの創造物)


プライマーク(総主長):フルグリム
現指導者:ファビウス・バイル
【概要】
元エンペラーズチルドレンに所属していた医術官(アポシカリー)ファビウス・バイル率いる戦闘集団。彼は基本的に独立した勢力で活動しており、報酬次第で支援を提供する生体工学の匠として暗躍している。
彼はしばしば、他の大逆兵団から「創造主の間近でその神秘の技術を学ぼうとやってきた」従弟団がバイルを失望させて悪夢の如き実験体へと変えられてしまうまで、従弟団の目からバイルの実験を隠し通すために不浄なる「手術助従」(サージョン・アコライト)が付き従う。
【悍ましい創造物たち】
バイルの創造物は最終的に報酬を支払う渾沌の戦将たちのために完成されるが、彼は引き渡しの前に、創造物たちを自分の目的のために用いられる事で知られている。彼の創造物は単体でも十二分に脅威となるが、時として集団で運用する必要がある事を彼も認めている。
実験に適した多様な生物種で満ちた惑星や、遺伝子工学の施設、実験船などは厳重に警備されている。同様に彼は、報復の念に燃えた軍勢に殺到され、彼が悍ましき犯罪と見なした者の代償として首を狙われた経験がある。
こうした状況に直面したバイルは、自らの手で生み出した無数の様々な異形の戦士たちを惜しげもなく、彼らの生命すら気に掛ける事無く、身の安全、あるいは脱出路の確保のために投入する。
【起源不明の怪物たち】
ファビウス・バイル直属であれ、その尖兵として銀河系全域で活動中であれ、彼の手で生まれ変わった悍ましき奇形児には多様な機変が存在する。戦闘集団全員が肉体強化手術を求め、施術された結果、一時的に指揮権をバイルに委ねる事でその代償を渋々ながら支払っている背信戦団、例えば「シュリウン」(告解者)のような者たちは少ない。
その他もっぱらバイル自身の秘密の研究所に集められ、強化措置を施された戦士たちの集団だが、その実態は培養層で育成されたクローンや、他の大逆兵団や忠誠派戦団から拉致され、強制的に改造された者たちである。さらに、その他にも大逆兵団から大規模な兵員の戦闘能力を依頼されて預けられた集団や、医療機関から脱走した者たちなども含まれている。
実際、バイルの工作員はそのような場所に潜入し、古来の貴重な医療装置を穢し、その結果誕生する悍ましき怪物によってそうした施設を破壊され、脱走させることが知られている。そうした脱走者たちは、何らかの生体工学的誘導措置を介してバイルのもとへと戻る方法を見つけるのだ。


【主要キャラクター】

  • 「ファビウス・バイル」

人間が、己が一生を善行のみに捧げたならば、いかなる記憶にも留められぬまま死に逝くのみ。己が天賦の才を数兆の悲劇と死をもたらすために行使したのならば、その名は数百世代もの長きに渡って鳴り響くであろう。



【概要】
戦闘集団「クリエイション・オヴ・バイル」率いる銀河系全域でその悪名を轟かせしマッドドクター。彼はかつて所属していた兵団からも裏切者と呼ばれているのである。
バイルは「万物の始祖」を自称しているが、それは彼が“かつて皇帝が総主長を創造した技術の秘密を暴く者”であるという自負を意味するものに他ならない。遥か昔、「エンペラーズ・チルドレン兵団」に所属する「医術院長」(チーフ・アポシカリー)だった頃から、バイルが興味を寄せる分野は常に死ではなく生命にあったからである。
〈ホルスの大逆〉によって無差別虐殺が横行する最中、バイルはエンペラーズ・チルドレン兵団を支援し、スラーネッシュ神の抱擁を求める彼らが必然的に至る堕落へと導いた。彼は兵団の戦士たちの脳内化学反応を改変させ、近くを鋭敏化し、さらに快楽中枢を中枢神経系と直結させたのである。
この改造手術により、エンペラーズ・チルドレンにとってあらゆる刺激は不浄なる悦びへと変貌したのだ。
【穢れし狂科学者】
ホルスが打倒される前に、バイルは地球を離れていた。改造手術を受けた従者たちを引き連れながら、バイルは戦火に引き裂かれた〈帝国〉の版図を巡る。
そして、実験材料として使う囚人や遺伝子サンプル、あるいは古の科学技術などと引き換えに、行く先々で反乱軍の指揮官に手を貸したのだ。これらの野心的な君主たちは、いざバイルが彼の兵に改造手術を施す段階になると、自らの決断に大いに後悔したようだ。
如何に狂気じみた暴君であろうと、バイルが起こす集団殺戮や残虐行為の数々を目の当たりにすると、例外なく吐き気を催したのである。バイルは最終的に〈恐怖の眼〉へと赴き、ここで最も高い報酬を支払ってくれる雇い主を探し、競争心をむき出しにしてしのぎを削る“統べる者”たちに、彼らが抱える問題を解決するための不浄なる解決策を約束して回ったのだ。
彼はアエルダリの〈老婆の惑星〉の一つに実験拠点を置いた。この惑星はアエルダリ文明の中で最も輝かしい栄光に満ちた都市が建っていたが、今や暗黒に包まれ、狂気だけがうごめく歪んだ場所へと変わり果てていた。
この惑星が、バイルの新たな家となる。
【不浄なる芸術】
バイルの遺伝子操作の知識は、彼が接触した全ての惑星で証明されている。なぜなら、彼の戦艦が錨を下した惑星の全てに、おぞましい改造生物や歪んだ被験体たちの痕跡が残されてきたからだ。
バイルの実験のほとんどは、被験体の死、または彼らが死を望むほどのおぞましい変容という形で終わる。だが、バイルの実験によって生まれ変わった種族は、通常の人間たちに比べ何倍もの力を持つことが明らかとなっているのだ。
これらのバイルが誇るべき創造物、“新人類”は、まさにバイルの“不浄なる芸術”の頂点に位置する最高傑作と言えよう。
【クローンの父祖】
潰走し、自らの根拠地を〈恐怖の眼〉の中に定めた〈大逆の兵団〉はファビウス・バイルの能力を特に必要とした。バイルの強化された戦士と生体魔術はウォーバンドに再生の起点を与え、クローンの戦士と奴隷は無数の戦場において大いに用いられる。
だが、この芸術はファビウス・バイルがかつてエンペラーズ・チルドレンの医術官として学んだ物であり、渾沌の主たちによって最も貴重な技術であったのだ。〈大逆の兵団〉は新たなケイオススペースマリーンを作り出すために戦死者の遺伝種子を抽出する能力を欲しており、ファビウス・バイルはこの奇妙な技に関しては疑いようもなく第一人者である。
この抽出技術なしには、〈永年の抗争〉は緩慢なる消滅を余儀なくされ、ホルスが灯した大逆の焔も永久に消え失せる事になるだろう。自らの命令に絶大な影響力を有するファビウス・バイルは、総魔長との取引が損なわれることがあれば、自らの秘技を一方には売り付け、他方には援助を拒絶するといったやり方で狡猾に交渉を行うのである。
このようにして“万物の始祖”は〈恐怖の眼〉の内外に広がる影響の網目の中枢部における地位を確かなものとしている。近年、バイルは自らの影響力をある一つの目的のために用いている。
すなわち、銀河の至る所で目撃される新型の「プライマリス・スペースマリーン」を捕獲する事である。バイルの偏愛的な欲望は、総主長「グィリマン」自身の遺伝子を与えられた物を刈り取ることに注がれている。



画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P88イラストより

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「レッド・コルセア」


「赤き水兵」



プライマーク(総主長):不明
現指導者:ヒューロン・ブラックハート
【概要】
ヒューロン・ブラックハートが憎悪に満ちた自らの王国を建設を開始した時点で、彼の率いる背信者たちはかつての紋章や戦団色を鮮血を思わせる赤で塗りつぶした。それにちなみ、彼らは〈赤き水軍〉、すなわちレッド・コルセアとなったのである。
この略奪者たちの中心を構成していたのは、もともとバダブ戦役を生き延びた異端者たちであった。それらの中には、ヒューロン麾下の「アストラル・クロウ戦団」のみならず、ヒューロンの圧倒的なカリスマ性に戦慄し、彼の軍門に下った背信者とその戦団の者たちもいた。
「マンティスウォリアー」、「ラメンター」、「エクセキューショナー」の各戦団所属のスペースマリーンは、自らの同胞たちが懲罰征戦へと赴くことで贖罪に機械が与えられたにも関わらず、ヒューロンと共に〈渦〉(メイルシュトローム)の宙域へと逃げ延びたのである。その間にも、忠誠派戦団の無数の戦闘同胞たちが背信者となってレッド・コルセアの一員へと加わっていった。
【略奪の名手】
ヒューロンに忠誠を誓った戦士たちは、それぞれが自らの豊富な戦闘経験をヒューロンに提供し、またレッド・コルセアが得意とする迅速な急襲作戦に速やかに適応する。彼らの催眠学習内容は、忠誠派の戦闘教条や戦闘位置、機密暗号などに関わる戦闘集団の共有知識を拡大する。
直近で背信者となった者たちがもたらす情報は更に〈帝国〉の指揮系統へ侵入して戦略計画を盗み出したり、要人の暗殺などに利用されている。大規模侵攻作戦は多々あるが、戦闘集団が行うのは基本的にもっと小規模な強襲作戦となる。
それらは敵を撹乱し、貴重な物資を強奪し、あるいは肋骨の間を滑らかに貫く短剣のように重要人物を粛清する迅速で苛烈な作戦として立案される。移乗攻撃、テレポート強襲、高速機動攻撃も彼らの得意とする分野だ。
【敵艦を拿捕せよ】
レッド・コルセアの個々の艦隊には戦利品が数多く存在し、忠誠派から鹵獲した艦艇、また競合相手である他の大逆兵団から奪い取った艦艇がある。戦闘集団は改造された揚陸艦や駆逐艦、火力を強化された巡洋戦艦や秘密兵器を運搬する大型輸送艦を意のままに運用できる。
「ウルフ・オヴ・フェンリス」は忠誠派スペースマリーン戦団の一つ「スペースウルフ戦団」に所属していた打撃巡洋艦であり、これまでのところヒューロンの下に鹵獲されてきたものの中では最高の戦利品となっている。だが、威信と権力の象徴としては、ヒューロンが〈帝国〉に対して行う叛逆の成果としてアバドンから授かられた巨大な宇宙要塞「ブラックストーン・フォートレス」が最大最強の威容を誇っている。
これほどの破格の進物は、銀河系規模での戦いを企てているアバドンに対するレッド・コルセアの忠誠心を一気に高めた。“強奪者”の目には、レッド・コルセアが卓越した存在であると映っているのだ。


画像出典:小説「Tyrant of the Hollow Worlds」表紙イラストより


【主要キャラクター】

  • 「ヒューロン・ブラックハート」

力とは、それ自体が最も強き力なのだ。



【概要】
ヒューロン・ブラックハートはかつて、スペースマリーン戦団の「アストラル・クロウ」の戦団長であった。反旗を翻して長い時が経っているが、今や彼は“バダブの暴君”という異名で広く知れ渡っている。
悪名高き戦闘集団「レッド・コルセア」を率いる彼は、“海賊国家”の長であり数十の艦隊を率いて〈帝国〉に反旗を翻す襲撃者なのだ。
【バダブ戦役】
〈極限の宙域〉には現在、〈渦〉(メイルシュトローム)として知られる星域があり、第38千年紀(西暦37000年代)と第39千年紀(西暦38000年代)に〈帝国〉はその内部に重要な拠点をいくつも設立していった。第41千年紀718年(西暦40718年)、ルフグト・ヒューロンは「アストラル・クロウ」戦団を率いる戦団長として〈渦〉の秩序を守る番人の役割を〈帝国〉から与えられていた。
彼は傑出した戦士としての実力を持ちながらも、指揮官としての才能も併せ持ったカリスマ的指導者であった。しかし彼は、強硬手段をためらいもなく取る非情な性格を持っており、彼が戦団長の座に就くと冷酷無惨なる行動に出る。
この時、惑星「バダブ・プライマリス」ではクーデターによる内戦が勃発し、アストラル・クロウ戦団とヒューロンの活躍によって速やかに惑星内の秩序を回復させた。そして惑星における支配階級をほぼ全員処刑し、叛徒に同情的な者たちも粛清するなどの情け容赦無き仕打ちを施した。
ヒューロンはバダブ・プライマリスの統治者となり、自らを「バダブ総統」と称して、バダブ星系周辺の可住領域の有人惑星を戦団の領土と宣言する。さらにヒューロンは自らの地位を盤石なものとするため、バダブ星区内における支配体制の強化や私設軍隊の創設が行われ、もはやバダブ星区はヒューロンが統治する小規模星間国家となったのだ。
〈渦〉における秩序安定のためには、〈渦〉とその周辺領域を完全に掌握する事が必要不可欠だとヒューロンは考えており、ひいてはそれが〈帝国〉ためになると信じていた。彼の私設軍隊とアストラル・クロウ戦団によって〈渦〉内部の反乱分子や異種族を一掃し、ヒューロンは自らの有能さを証明し続けた。
しかし、〈渦〉における独裁的な体制の現状を知った〈帝国〉は〈渦〉に対して厳しい制裁を加え、ヒューロンと〈帝国〉の行政との対立が深まっていく。生涯をかけて戦ってきた目標を否定されたヒューロンは、自分が主人と呼ばねばならぬ相手によって自らの積み重ねた努力を無意味にされてしまうとこの頃から考えるようになったのである。
その後、ヒューロンは遂に〈渦〉の領域の支配領域を拡大し、分離独立を宣言。この宣言をきっかけに勃発したのがかの悪名高き「バダブ戦役」であった。
【反逆者ヒューロン】
バダブ星系におけるバダブ包囲戦が終わりを迎えようとする頃、ヒューロンは“棘の王宮”のなお部で熱線爆発の一撃によって致命傷を被る。アストラル・クロウ戦団は「自らの戦団長と惑星を守り、死ぬまで戦い抜く」という誓いを立てていたが、もはや誰の目から見てもバダブの陥落は免れない状況であった。
そこで彼らは瀕死の身体となったヒューロンを抱いて数隻の船に乗り込み、〈帝国〉の防衛線を突破したのである。かくしてバダブ星系を脱出したアストラル・クロウ戦団は、追いすがる〈帝国〉側の艦艇を振り切るべく、〈渦〉の中へと逃げ込んだ。
信じ難い事であったが、バダブの暴君は死ななかった。アストラル・クロウの艦隊が〈渦〉の中を航行する間、彼の半身は大半が機械への置き換え措置を受けていた。十日余りのうちにヒューロンは自力で立ち上がり、禍々しき決意を胸にパワーアーマーを装着したのであった。
彼の配下の者たちは、この脅威的な回復を見て、「これぞまさに奇蹟」と口々に讃えたという。ヒューロンの戦力は全盛期に比べれば劣るものの、最初に発見した宇宙海賊の要塞を圧倒し、ものの数時間で海賊たちを殺戮するには十分に強大であった。
僅かに残った海賊の残党は、暴君の激怒がいかに恐ろしいものであるかを間を置かずに思い知ることとなり、忠誠を新たにして奴隷となった。そしてさらに多くの〈渦〉に潜む者たちからの忠誠を得るやいなや、恐るべき「ヒューロン・ブラックハート」がここに誕生したのである。
彼の力はますます増大し、異端者と〈背きし者〉を束ね上げ、〈渦〉に“海賊国家”を築き上げてゆく。以来、ヒューロンに従うスペースマリーンは「レッド・コルセア」、すなわち〈赤き水兵〉と呼ばれるようになった。
これは、彼らが自らの装備に塗られた〈帝国〉の紋章やシンボルを、血のような赤で跡形も残らぬほどに塗りつぶしたことに由来する。
【近況】
近年では、レッド・コルセアの攻撃はそれほど頻繁にみられない。まるで何かが起こるのを待ち構えているようだ。
しかし、ヒューロンが襲撃を指揮する場合は、レッド・コルセアは更なる凶悪さを露わにし、入念に守りを固めた護送艦隊すらも悠々と標的にする。彼らは迅速さを武器に敵を制圧し、手早く略奪を完了するのだ。
レッド・コルセアの勢力は日に日に拡大しており、ヒューロン・ブラックハートの名は、近年数々の星区で恐怖と共に囁かれるようになってきている。
【装備】
数十の艦隊を意のままに用いる洗練された襲撃者として、ヒューロン・ブラックハートは数百光年にも渡る〈大渦〉内部のいかなる将よりも財産を有している。ブラックハートの持つ“暴君の鉤爪”は一塊の爪を組み合わせた生体兵器の傑作品であり、各々の爪は破裂音と共を鳴らす「ディスラプション・フィールド」で包まれており、そしてブラックハートの機嫌を損ねた者を焼き尽くす「ヘヴィフレイマー」を内蔵している。
ブラックハートの影に潜む四つ足は「ハマドリア」として知られており、主人に強力なサイキック能力を付与する奇妙な、恐らくはディーモンの使い魔である。いかに豪奢で難解な装飾を見に就けようとも、暴君たるブラックハートは〈バダブ戦役〉の最中に重傷を負って以来、破壊的な苦痛からは決して逃れる事が出来ないでいる。
恐らく、ブラックハートの魂に憤怒の炎を燃え上がらせるのは、この終わること無き苦痛、そして恐らくこの憤怒は純粋な憎悪であろう。いぜれにせよ“破壊の主”ブラックハートはおそらく歴史上最も恐るべき背信者の一人であろう。
【大渦のうねり】
〈恐怖の眼〉は単なるケイオススペースマリーンの隠れ家となる銀河の瑕に留まらない。数光年に渡る虚無をあらゆる方角へと蔓延させる〈大渦〉から現れる襲撃者の中でも最悪のものは、ヒューロン・ブラックハートによって率いられるレッド・コルセアである。
アバドン率いる第十三次〈黒き征戦〉の初期に、ヒューロンは自らも同時に〈帝国〉への襲撃を行い、ケイオススペースマリーンを奈落へと押し返すべく激戦を繰り広げるスペースマリーンの資源を消耗させた。〈大亀裂〉が開いたことによって、〈大渦〉はさらに巨大で超常的な特異点の一部となり、〈帝国〉を南北二つに分断した。
ほぼ常に行われている〈帝国〉領の略奪を通じて、ヒューロン・ブラックハートとその部下の襲撃者は非物質空間内部と現実空間の周縁部に同時に存在する場所を通り抜ける術に熟達するようになった。すでにレッド・コルセアは〈大渦〉の周囲から遥か遠く離れた場所で目撃されている。
バダブの暴君が〈歪み〉の中に住まう悪魔の契約を交わしたのはほぼ確実であり、〈帝国〉の作戦報告書を信じるならば、ヒューロンは二つの宙域で同時に発見されているのだ。



画像出典:コデックス「ケイオス・スペースマリーン第8版2nd」(codex:Chaos Space Marines) P89イラストより

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「フォールン」


「堕ちし天使たち」



プライマーク(総主長):ライオン=エル・ジョンソン
現指導者:サイフェル
【概要】
堕ちし天使として知られているスペースマリーンたちは忠誠派兵団「ダークエンジェル」から分裂していった戦闘集団で、渾沌の神々の信奉者の中で最も謎めいた者らであり、そもそも渾沌神に帰依しているかどうかですら確かではない。フォールンの起源は〈ホルスの大逆〉の最中、ダークエンジェルの総主長「ライオン=エル・ジョンソン」が本拠惑星「キャリバン」を滅ぼした時に遡る。
第31千年紀15年(西暦30015年)、ジョンソンとダークエンジェルは〈ホルスの大逆〉の激戦を生き残り、本拠惑星キャリバンへの帰路へとついた。ジョンソンの艦隊の無防備な艦船がキャリバンの衛星軌道上に侵入した時、艦隊は何者かによって操作された惑星上に配備された防衛レーザーの猛烈な砲撃を浴びた。
艦隊は爆発四散し、巨大な彗星のように惑星地表へと激突した。この攻撃によって衝撃を受けたジョンソンは艦隊を退き、己の本拠惑星の起きた事件の調査を試みた。
【失望と嫉妬に蝕まれし戦友】
拿捕された商船がすぐに衝撃の真実をもたらした。それは数百年前の〈大征戦〉の最中、ライオン=エル・ジョンソンがキャリバンを発ち、ダークエンジェルを率いて銀河規模の征戦へと参加した時、ジョンソンの副官であり終生の戦友であった「ルシエル」がキャリバンに残ったダークエンジェルの管理を任されていた。
その昔、まだダークエンジェル兵団を立ち上げる以前の時代、ルシエルはジョンソンと共に惑星キャリバンの騎士として活躍した。口数の少ないジョンソンを高い話術と統率力で補い、支えたルシエルはまさに騎士団にとって欠かす事の出来ない存在として重宝された。
ルシエルの地位の重要性にもかかわらず、その地位は彼の野心的な性格に見合ったものではなかった。はんば忘却された辺境惑星の惑星総督としての役割を、ルシエルは程なくして自らに対する侮辱さえ思うようになっていったのだ。
遠い地で戦友のジョンソンが戦果を挙げた朗報がキャリバンへと運ばれてくる度に、ルシエルはさらに自らが疎外されている孤独感と失望に苛まれていった。嫉妬の種が芽吹くにつれ、ルシエルは親友ジョンソンに対する憎悪の念に取り憑かれたようになっていく。
ルシエルの神経症は自らを限界へと追い込み、想像を超えた危険を犯させた。ルシエルは自らの持つ卓越した弁舌術によって、彼はキャリバンに駐屯する指揮下のダークエンジェル兵団に、自らの嫉妬と激怒の感情を〈大征戦〉の間に吹き込んでいった。
そうすることで、ルシエル指揮下のダークエンジェル兵団員は彼らが屈辱され、皇帝は彼らから顔を背けたのだという事を信じ込ませた。そして、ジョンソンがキャリバンへと帰還した際、裏切られたという失望が総主長への反乱を起こさせたのである。
【キャリバンの内戦】
ジョンソンと彼に忠実なダークエンジェル兵団員は、この恐るべき裏切りに抱いた怒りは留まる事を知らなかった。ジョンソンらは銀河の果てからは手に至るまで転戦し、〈帝国〉の諸惑星から渾沌の呪いを拭い去ったと考えていた。
彼らは今や、自らの本拠惑星や同胞が渾沌へと堕落し、裏切りを行っているのを目の当たりにしたのである。すぐさまジョンソンは、惑星上にあるダークエンジェル兵団最大の修道院要塞に対する攻撃を指揮した。
ジョンソンは、この要塞こそがかつての友であり、今や最大の敵として退治するルシエルと出会う場所となろうことを確信していた。総主長の超人的な力をもってしても、二人は互角に戦った。
ルシエルは既に、〈渾沌の神々〉による恩寵を受け取っており、多くの能力が強化されていたのだ。ダークエンジェルの指導者が互いに戦い合う決闘の余波によって、周囲の要塞院は崩壊し、戦闘によって巨大な建造物が更地になるまで続いた。
一方で、ジョンソンに忠実なダークエンジェルの宇宙艦隊は、衛星軌道爆撃によってキャリバンの地表が裂けて隆起し始めるまで、集中砲撃を行った。惑星そのものが崩壊し始める中、ルシエルとジョンソンの戦いは頂点に達した。
渾沌の力を得たルシエルは荒れ狂うサイキックパワーの波動を放ち、ジョンソンに膝を折らせ致命的な傷を与えた。瀕死の総主長が立ち上がろうとし、彼にとどめを刺そうとしたその時、あたかもルシエルの目から雲が晴れたかのように高貴なる魂が苦痛を押しとどめた。
ルシエルは己が犯した行いの全てを理解した。彼は三つの裏切りを犯し、友を裏切り、ダークエンジェル兵団を裏切り、そして皇帝を裏切ったのだ。
この真実はルシエルの狂気を破壊し、彼はジョンソンの傍らに崩れ落ちた。最早彼に戦う意思は無くなっていた。
【岩牢の誕生】
ルシエルが発した苦痛と絶望のサイキックの叫びは〈歪み〉を通じて反響した。〈渾沌の神々〉は、ルシエルらが敗北したことを知り怒りと憤懣を吹き上がらせた。
その時〈歪み〉の嵐が現実宇宙に吹き荒れ、ルシエル側のダークエンジェル兵団員は惑星キャリバンから突如として姿を消したのだ。そして裏切り者のダークエンジェルたちは様々な空間と時間に散らばってしまったのである。
ジョンソンに忠実なダークエンジェルが行った軌道爆撃によって惑星キャリバンは爆発四散し、その残骸の大部分は〈歪み〉へと吸い込まれて消え去ってしまった。後にダークエンジェルはキャリバンの破片の中で最も大きな岩石を利用して、移動式の修道院要塞として再建しその超巨大要塞を〈岩牢〉(サ・ロック)と名付けて兵団の新たな拠点とした。
この要塞は今日に至るまで、ダークエンジェル戦団が兵団時代に犯した過ちを偲ばせる物としての役割を果たしているのである。ジョンソンとルシエルはその後、ジョンソンに忠実なダークエンジェル兵団に回収されたが、ジョンソンは深き眠りへとついていた。
ジョンソンはその後、〈岩牢〉の秘匿されし部屋に安置され、〈ホルスの大逆〉が終結した1万年たった今現在でも目覚める兆候はない。一方のルシエルはダークエンジェル兵団に監禁されており、彼は一万年もの間、終わりなき尋問にかけられている。
【堕ちし天使】
この背信と裏切りの物語は、ダークエンジェル戦団の秘匿されし恥辱である。ダークエンジェル戦団とその後継戦団、そしておそらくは〈黄金の玉座〉に座す皇帝以外にこの真実を知る者はいない。
戦団内部でさえも、この運命の日に何が起きたのかを正確に知る者は非常に少ない。ダークエンジェル戦団内でも「死翼」(デスウィング)の地位に達した者だけに、ルシエルに関する真実が明らかとなるのである。
そしてさらに恐るべき事に、ルシエルに付き従った裏切り者のダークエンジェル兵団員の多くは未だに銀河系のどこかで生存している事も知る。ジョンソンを裏切った唾棄すべき戦士たちは〈堕ちし天使〉(フォールン)と呼ばれている。
全てのフォールンが渾沌の神々に忠誠を誓ったわけではない。フォールンの多くは渾沌の力に屈してケイオス・スペースマリーンとなった。
しかしながら、他の多くのフォールンは、キャリバン陥落の際の自らの行動が完全な過ちであったことを悟っている。彼らは〈渾沌の神々〉への堕落の影響を嫌悪し、ダークエンジェルとの関係修復も不可能なフォールンは、他者との接触を断って過ごす。
多くの者が傭兵や海賊となり、主無き者として銀河を徘徊する。自らの罪を償う事を望み、その試みの中で人類の社会に戻り、定命の者の役割を担う者も居る。
【堕天使を狩れ】
しかしながらフォールンが後に取った行動が如何なるものであったとしても、ダークエンジェルからすればフォールンは最悪の罪人である。もし、この背信の真実が〈帝国〉の政府に見つかってしまった場合、大逆の罪で自らの戦団が潰されてしまう可能性があるからだ。
ダークエンジェルが自らの恥辱を完全に取り除き、名誉と皇帝の信頼を回復させる唯一の手段は、〈帝国〉の中央政府に見つかることなく、全てのフォールンを見つけ出し、彼らに罪を償わせるか殺害するかである。これは決して容易な任務ではない。
フォールンは一人で孤立している場合もあれば、小規模な戦闘集団を率いている場合もあり、あらゆる空間と時間に散らばっている。また場合によってフォールンは、その高い能力を活かして〈帝国〉の上官や貴族などの高い地位に就いていることも珍しくなく、そういったフォールンを狩るのは困難を極める。
だが、それを行ってこそ、フォールンを捕縛し、〈岩牢〉へと連れ戻すという任務が成功するのである。〈岩牢〉の深部では、「尋問教戒官」(インタロゲーター・チャプレイン)が贖罪を行うように試みる。
しばしばこれらの捕虜は贖罪を行い、そして苦痛のためにすぐさま死亡してしまう。さらに多くの場合、捕らえられたフォールンは贖罪を拒否し、彼らの魂を救うであろう者の手により、延々と続く苦痛に満ちた死を遂げる事になる。
フォールンが銀河に散らばってから1万年経った現在でも彼らは、〈帝国〉の政府に見つからないよう秘密裏に堕天使を探し出して狩り続けている。


画像出典:オーディオドラマ「The Ascension of Balthasar」 カバーアートより


【主要キャラクター】

  • 「サイフェル」

「堕ちし天使を統べる者」


【概要】
ダークエンジェルのマスター達が、他のフォールンよりも躍起になって追う者がおり、それが堕ちし天使を率いる「サイフェル」だ。その者は影に包まれた存在であり、彼の動機と手段は不可解である。
名前すらも仄めかされる程度であり秘匿されているが、それさえも隠喩なのか、あるいは謎かけなのか不明である。彼はダークエンジェルの中で最も唾棄すべき存在であり、多くの謎を秘めた戦士なのである。
彼は戦闘時においては「プラズマ・ピストル」と「ボルトピストル」の二丁拳銃で敵を確実に射殺する。そして、彼が背負っている長剣は誉れ高き「ライオンソード」だ。
かつて総主長ライオン=エル・ジョンソンが用いた武器であり、〈大征戦〉と〈ホルスの大逆〉において彼の相棒として活躍した。しかし、キャリバン陥落の際にライオンソードは失われ、現在ではサイフェルの手の内にある。
彼は決してこの剣を抜く事は無く、来たるべき時にその刃を振るうと噂されている。
【災厄を連れし者】
キャリバン陥落は〈ホルスの大逆〉の血濡れの期間中に〈帝国〉を襲った、最後の大破壊の一つであった。この時以来、サイフェルは逃亡を続け、ほぼ1万年以上にも渡り、逃げおおせているのである。
その間、サイフェルは5つの宙域それぞれで、あたかも彼方から来るかのように突如実体化し、姿を表している。サイフェルはあらゆる場所で死と破壊をもたらしたが、彼が罪人であるか、あるいは単に悲哀の先導者でもあったかは不明である。
この説明はしばしば偏見に塗れているが、サイフェルが居るところで常に発生する残虐行為に、彼自身はほとんど手を染めてないなのである。むしろサイフェルは憎悪を煽るように振る舞い、己の周囲で止めどなき炎を燃え上がらせる者達に不信感を抱いているように見える。
いずれにせよ、サイフェルは彼が事件の現場に到着するや否やただちにその場を去る。サイフェルの現れた惑星は炎に包まれるが、彼が次の場所へと赴く時、いかなる痕跡をも残さないのである。
【サイフェルの痕跡を追え】
破壊や荒廃と共にサイフェルはもう一つの痕跡を残す。それはすなわち、この謎に包まれたロープ姿の男が去った後で囁かれる伝説と噂である。
サイフェルが速やかに立ち去ったことに関する関心は、必然的に相次ぐ疑問によって更に誇張される。しばしば異端審問庁とエージェントによって尋問が行われる一方、ケイオス・スペースマリーンは自らの要塞に出入りする、個の謎めいた人物に関する更なる知識を求めるであろう。
他の勢力がサイフェルを追うか否かに関わらずダークエンジェルは秘密裏で常に彼の痕跡を追っている。自らの目的に関して不気味な表情で沈黙を貫きながらもダークエンジェルは、サイフェルと接触を持ったものや彼と言葉を交わした可能性のあるものを問いただす。
サイフェルに関する何らかの知識を有する者や、あるいは知識を有する可能性がある者は黒いアーマーに身を包んだ尋問教戒官によって連行され、ほとんどの者は二度と戻って来る事は無い。
【衣に身を包みし堕天使】
サイフェルが実際に何者であるか、何を行おうとしているのかを説明できる者はいない。だが、サイフェルとダークエンジェルの関係は広く噂されている。
サイフェルを目撃した者は、彼がダークエンジェルに酷似した簡素な儀礼用のローブを身に着けており、ローブの下には重厚な黒いパワーアーマーが覗いていたことを報告している。さらにサイフェルは銀河のどこに姿を現そうとも、間を置かず相手ダークエンジェルの追っては姿を現すのである。
尋問教戒官が多くの質問を行うが、彼ら自身が他者からの質問に答える事は決してあり得ない。
【華麗なる逃亡】
サイフェルは常に追われ続けているが、これまでのところ彼の捕縛や打破に成功した者はいない。あるいは、サイフェルを目撃したと思わしき者すらも存在しないのである。
ダークエンジェルは幾度となくサイフェルは殺害されたと判断したが、その都度サイフェルは再び姿を現すのだ。惑星「エスコヴァン」における一連の作戦行動の最中にレッド・コルセアの信頼を裏切ったサイフェルに対して憤懣やるかたないヒューロン・ブラックハートは、逃亡を続けるサイフェルが打撃巡洋艦「レイピア」に乗船していることを突き止めた。
深宇宙にてレッド・コルセアはレイピアを停泊させたが、彼らが発見したのは取るに足らない渾沌崇拝者のみであった。狂信者が全て殺害される前に、彼らの中に先般まで混ざっていた謎めいたスペースマリーンの行方を確認できたものは誰一人としておらず、サイフェルが如何にしてレイピアから脱出したのかもわからなかった。
サイフェルの行動を収集したデータを調査したごく少数のダークエンジェルの司書官にとって、サイフェルは幾つかのパターンや他人が知り得ぬ目的に従って行動しているように見える。サイフェルはもしかして〈帝国〉のために行動しているのか、あるいは敵対しているのか、裏切ったダークエンジェルの味方なのか、あるいは敵なのかを推測することさえも困難である。
唯一確かなことは、サイフェルの通った跡には災厄と闘争が残されるという事実である。


画像出典:雑誌「月刊ホワイトドワーフ第464号」表紙イラストより

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「クリムゾンスローター」



プライマーク(総主長):不明
現指導者:クラーノン
【概要】
禍つ神々全体を崇拝する〈分かたれざる渾沌〉に傾倒している大逆戦団。「無慈悲なるクラーノン」に率いられた戦団は、赤い鎧を身にまとう。
元は「クリムゾンセイバーズ戦団」として〈帝国〉にたゆまぬ奉仕を続けていたが、謎の「幻覚」や「幻聴」による「狂化」に襲われてしまう。その結果、敵味方関係なく虐殺を何度も繰り返してしまったために異端審問官から「反逆戦団」として認定され、やむを得ず〈恐怖の眼〉へと逃亡しケイオススペースマリーンへと堕ちてしまった。
謎の「幻覚」や「幻聴」の呪いを解くといわれている遺物「ヘルファイアストーン」を求めて銀河中を渡っている。今現在、彼らは第十三次〈黒き征戦〉の先鋒の一つを率いており、惑星「ケイディア」への攻撃にも参加している。


画像出典:コデックス「クリムゾンスローター」(Codex: Crimson Slaughter) 表紙イラストより


【主要キャラクター】

  • 「セヴァスタス・クラーノン」

【概要】
クリムゾンスローターを率いるケイオスロード。元々は「クリムゾンセイバーズ戦団」の戦団長であったが、ある日を境にケイオス・スペースマリーンとしての魔道を歩まざるを得なくなった。
クラーノンは皇帝に仕えていた時代から、過激で残忍なる戦士として知られていた。自らの戦闘集団を〈恐怖の眼〉へと逃亡した際に、彼自身が渾沌に堕してしまう。
彼は自らを「無慈悲なるクラーノン」を自称し、コーン神の呪いによって苦しめる内なる狂気の声を黙らせるために、より多くの血に塗れた残虐行為を続けていく。後にクリムゾンスローターはヘルファイアストーンを探す中でダークエンジェル戦団との熾烈な戦いを繰り広げる事となる。
彼はダークエンジェル戦団を撃退することに何とか成功するが、その過程で自分と配下の組織が誰かによって利用されているのではないかと疑うようになる。彼は〈恐怖の眼〉の奥深くでその元凶を見つけ出して、その者の腕を斬り落としたのだ。


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追記・修正は〈帝国〉を裏切り、〈禍つ神々〉に忠誠を捧げてからお願いします。


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