ディーヴァ(インド神話)

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登録日:2018/11/08 Thu 23:52:56
更新日:2024/03/26 Tue 11:30:08NEW!
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ディーヴァ(天)

『ディーヴァ(deva)』とは、インド神話で信仰されている神々のこと。
この為、ディーヴァ(デーヴァ)神属(神族)と紹介される場合もある。
元来は、紀元前15世紀頃より同地へ侵入した遊牧民族アーリヤ人が持ち込んだ外来の神々のことを指していたようだが、後にアーリヤ人が同地の支配者となっていったことから、土着のアスラ神属を抑えて信仰の中心となった。


この為、他地域のアーリヤ人の信仰している神と重なった神性が多いのも特徴。


……尤も、ヒンドゥー時代以降の主神格であるシヴァヴィシュヌは、元来は共にインダス文明以前の現地の土着信仰から生まれた黒い肌をした神=アスラであり、こうした根強い信仰や人気の高い土着の神性が都合よくディーヴァとして扱われるようになっている例も多い。


シヴァやヴィシュヌが青白い色をしているのは、本来の肌の色を灰で覆った姿であり、信仰から外れたアスラ達は悪魔として扱われるようになっていった。


同じくインドで誕生した仏教では天部(devatā)と訳され、仏法を守護する護法善神の一氏族として天竜八部衆に数えられている。
天部の梵語はデーヴァターの為、本来のデーヴァ(ディーヴァ)とは別の亜神的存在を指すとも説明されていたが、現在での説明は天部はそのままディーヴァの仏教化した存在としてヴェーダ~ヒンドゥーまでの神話毎に取り込まれて紹介されている。


仏尊の内の“◯◯天”と付いている尊格は、皆「天部」に属するインド出身のディーヴァ(及び、そこに組み込まれたアスラ、ヤクシャ)である。
これらには仏教の伝来と共に経由した土地の信仰や伝承と交ざり合い本来の姿や性格から変わった尊格も多く、日本でも仏教由来の神々ながら、単独で神社に祀られたりと、日本のカミと合体して、すっかりと土地に馴染んでしまったりもしている。



【語源】

ラテン語で神を意味するデウス(deus)と同一起源の語であり、日本語だと輝く者と訳されたりする。
ディーヴァは男性形であり、女性形はディーヴィ(女神)となる。
元来は天然自然の事象を神格化した原始的な自然神信仰群であったが、時代が下るにつれてバラモン→ヒンドゥーの教義に沿った、宇宙の創造主や信仰上の精神的な教義の人格化といった宗教的な概念に基づく神性が誕生していった。
ディーヴァが住む世界をデーヴァ・ローカと呼び、これはヒンドゥーに於ける天界の名前である。


尚、ディーヴァと表記されるのが一般的だったが、近年では同一起源のラテン語由来の語で神々しいものを意味し、プリマドンナや歌手、WWEの女性アスリートの名称として使われるディーヴァが日本でも一般的に用いられるようになったことからか、インド神話での神々はデーヴァとして表記を分けられたりもしている。


元々は古代インド地域でも信仰され、主神であった天空神ディヤウス(ギリシャ神話のゼウスと同起源の様々な地域にも伝播した多神教的信仰の最高位の神格)を指した語であったようだが、神々の役割が細分化し、別の神々(後にはディヤウスの属性をも吸収したインドラ等のこと)に信仰が移る中で、神々全般を指す語になっていったようである。
因みに、語源を等しくするラテン語のデウス(deus/Deus)は、神的な存在全般を指す言葉から唯一神のみを指す様になっていったと云う、反対の経緯を辿っている。


隣国ペルシャ地域で発生したゾロアスター教ではデーヴァ=ダエーワは悪魔(悪神)を指す語となっている。


これは、インド地域では土着信仰が外来の信仰に呑み込まれる形になったのに対し、ペルシャ地域では外来の信仰と対立する構図がそのまま信仰体系となって残されたからで、それを推し進めた宗教改革者ゾロアスターにより、アスラ(アフラ)神属が明確に信仰の主体とされたから(=ゾロアスター教の誕生)である。


このダエーワが、古代スラヴ語でも悪魔を示す名前(divu)として用いられたことから、ディーヴァを悪魔(devil)の語源として紹介している場合もある。



【主な神々】

以下に、主な神性を挙げる。
由来的に「ディーヴァじゃねーじゃねーか!」な神様も多いが気にしないように。


●ヴェーダ時代の神々●


■ディヤウス

天空、或いは天空その物や天の光となる大神。
ディヤウシュ・ピトリで「父なる天空」の意味。
他地域のゼウスやテュールといった主神格と同じ神性だが、インド神話では現代までに名前が殆ど残っていない忘れられた神となっていた。
その属性の多くは、息子とされた雷神インドラに奪われたばかりか、彼に地に投げ落されたとする説話まである。
どうやら主神の癖に人気が出なかったらしい。
古代オリエントの他地域の主神と同じく牡牛としても顕される。


■プリティヴィー

インドラやアグニも生んだディヤウスの妻で神々の母。
プリティヴィーマーターで「母なる大地」の意味。
『聖典(リグ・ヴェーダ)』ではディヤーヴァープリティヴィーとして、夫婦で1セットの天地両神として扱われている。
元々、単体での人気(信仰)が少なかったためか、ディヤウスの失墜と共に役目を失った。
仏教での地天とは彼女のことであり、取り込まれなかった夫に比べると恵まれているか……?
此方は牝牛として顕される。


インドラ

『聖典』ではディヤウスの子で、天の相の内の古代では神そのものとも考えられていた雷の神。
自由に稲妻を放てるヴァジュラを手にした、古代アーリヤ人の英雄神であり、後にはディヤウスの役目をも吸収し、彼が神々の王として扱われる様になった。
中国でも天を司る天帝と同一視されて宇宙の王となり、日本でもその属性を持ったまま伝来したので帝釈天(雷帝)は天部諸尊の王である。
ヴェーダ時代には父母を含め、殆ど讃歌を捧げられない神も居る中で、一人で数百もの讃歌を獲得している。
アスラ王ヴィローシャナとの問答の他、無理矢理レイプして拐った嫁さん(シャチー)を巡る因縁からアスラ達と敵対したりと、ディーヴァとアスラの関係悪化を象徴する時期に多くの神話を残している。
……一方、時代が仏教の誕生等を経てバラモンからヒンドゥーの時代へと移るとインドラも失墜し、思想信仰上の象徴としての役割を担った三大主神に地位を明け渡した。
また、神々の王とされつつも『聖典』の頃より傲慢な性格を諌められたり、自信が崩れ去って臆病を見せる神話もある等、人気があり過ぎて遂には人間臭くさせられ過ぎてしまったのは某雷神を思い起こさせる。


■アグニ

アーリヤ人が持っていた拜火信仰に象徴される火の神。
犠牲とした供物を火に焼べるのは、アグニを仲介して天に届けて貰う為であり、この行為が仏教にも取り入れられて護摩行(ホーマ)となった。
『聖典』ではインドラの兄弟とされているが、当然の様に発生はそれよりも遥かに古く、独自の信仰を持っていた神である。
生活を支える火の神として家庭にも近しい一方、火と熱の神であることから戦闘神としての信仰も見られる。
戦闘神としての性格がより強い、アジ・ダハーカと対立した隣国ペルシャの火神アータルとは同じ神性として見られる他、密教の明王が火焔を背負うのも邪悪を灼き浄めるアグニから来ていると考えられる。
仏教では、アグニ自身は火天として伝えられる。
火の熱は太陽の熱とも考えられたことから、スーリヤとも関係が深い他、様々に変化する火の神として『聖典』では他の神の御名に準えて真っ先に讃歌が捧げられている。
水神アパーム・ナパートと並び称され、アパーム・ナパート(アパム・ナパート)は隣国ペルシャでは単体の水神として名を挙げられているが、インドでは水中でのアグニの姿……といった程度の扱いである様だ。


■スーリヤ

ヴェーダ以前より同地で信仰されてきた太陽神であり、その威光は他地域にまで伝わる。
月神チャンドラ同様に、単に太陽を示す語としても使われる。
七頭立ての戦車を駈る、インドラにも並ぶ戦闘神である。
同地の自然神群のグループであるアーディティヤ神群(無限を意味する大女神アディティの子等)に数えられる程の有力な神格だったが、アーリヤ人が編んだ『聖典』では自分達の信仰に取り込む為かインドラとは兄弟で、共にディヤウスの子とされていた。
また、単にアーディティヤと云うと太陽の無限の光のことであり、スーリヤの異名となる。
ヴァーダ時代では他にもサヴィトリやプーシャンといった太陽の作用を示す神の名が挙げられているが、多くはヒンドゥーの時代までに失墜した。
太陽その物であるスーリヤ以外では、それらの太陽の一作用を司る神の中で信仰が残るばかりか、地位を上げられたのはヴィシュヌ位の物である。
後に『聖典』でも改めてアーディティヤ神群に加えられており、そこまでしても自分達の神話に取り込もうとした程の力のある神であった様だ。
ヒンドゥーに於いても単独での信仰が残る他、シヴァ派とヴィシュヌ派の双方から自分達の主神の化身であると主張されている程である。
また、インドの元祖世界創造神話では、原初の巨人プルシャの目から生まれたとする説話もあり、これは巨人や龍の瞳から日と月が埋まれたとする他地域の神話とも共通している。
元来はアスラ神属であり、ヴィローシャナ(遍照)とも呼ばれたと云う。
後にラーマ王子を生む、日王朝(スーリヤ・ヴァンシャ)のイクシュヴァークに繋がる系譜の祖ともされる。
仏教では日天と呼ばれ、観世音菩薩の化身としても扱われる。
勢至菩薩の化身ともされる月天(チャンドラ)とは対になっている。


■ウシャス

夜明けの光の神格化で、御名はオーロラと語源を等しくする。
『聖典』ではスーリヤの姉だが、太陽神である彼とは以前より因縁のある関係らしく、恋人や母親であるとの記録も残る。
ウシャスの後をスーリヤが追いかけるのを“若い娘を男が追いかける”構図に例えられたりしていて姉弟設定でも意味深な感じである。
『聖典』ではスーリヤの妻はサンジュヤニーとされるが、本来はウシャスがスーリヤの妻であり、設定改変してまで取り入れたかった程に力のあった女神だったのかもしれない。
後のバラモン~ヒンドゥーでは、インドを含め砂漠地域に根付いた古代オリエントに共通する価値観から、生命の象徴たる河川の女神が重要視されたこともあってか、地位が失墜していった。
仏教では、日本でも楠木正成や毛利元就が信仰したことで戦神として名高い、陽炎の神格化である摩利支天*1の原型ではないか?と考えられており、摩利支天がスーリヤである日天に従うのも、その証明と言われている。


■ラートリー

星々の光を眼としており、暗い夜道の守護者としての信仰を受けた。
太陽の母ともされる。
インド神話では姉妹で属性が別れた場合、片方は負の面を背負うことになる例が多いが彼女は特に邪悪な女神では無い。


■ヴァーユ

原初の巨人プルシャの生気(プラーナ)から生まれた風の神。
駿馬と競争出来る程に足が速い。
インドラやスーリヤと並ぶ戦闘神としても知られており、インドラと共に空界を支配してマルト神群を率いる。
『聖典』にはヴァータという風神も登場しているが、ヴァーユの方が魅力的な性格付けをされており人気があり、現在ではヴァーユの異名として扱われる。
『ラーマーヤナ』で知られるハヌマーンの父神としても知られる。
隣国ペルシャでは風神ワユとして知られるが、ゾロアスター教が興って以降はダエーワともされた。
仏教に於いては風天である。


ヴァルナ

天則を司る宇宙の主宰神にして天空神であり水神。
契約の神ミトラとは対になる存在であり、共にアーリヤ人が入り込むまでの古代インド地域に於ける最高神格であったようだが、アーリヤ人の流入後は他のディーヴァ神属に役割を奪われ、最高神のままではあったが影が薄くなり、ヒンドゥーまでには水神としての属性を残すのみになった。
隣国ペルシャに於ける最高神アフラ・マズダと同じ神であると見られており、ミトラと共に他地域にまで名を轟かせていた程の神であったが、インドではブラフマーの台頭に伴い目立つ神では無くなっていった。
尤も、ディーヴァとなってもアスラ神属の最高位の神としての威光は伝わり、アーディティヤ神群の首魁として長く名前を残している。
仏教でも水天としてのみ伝わったが、嘗ての最高神であることを反映してか天之御中主神と習合しており、水天宮に神道の最高神格である天之御中主が奉られる理由になっている。
アフラ・マズダは密教の大日如来の原型とも考えられる神性である。
また、水神であることからか水の流れの象徴たると関連付けられ、ヴァルナを龍王としても伝えている。


■ソーマ

ソーマとは、雷帝インドラが好んだ神々の酒(酒ではなく興奮剤の類と考えられる)である。
ソーマ神とは、この神酒を人格化した神性のこと。
神々に不死やその他の祝福を得させた霊薬アムリタ(甘露)とも同一視され、蜜(マドゥ)とも呼ばれる。
何らかの植物より抽出した液とも、ある種の幻覚作用を持つキノコより取れたのでは?……とも研究されている。
隣国ペルシャの神酒ハオマとは同じもののようで、一種の麻薬であったのかもしれない。
元々は天界にあったが、霊鳥に奪われ地に運ばれた、との神話が伝わる。
ヒンドゥーでは月が神々の酒杯であると考えられた為、月神チャンドラと同一視される。


■アシュヴィン双神

美しく瓜二つの容姿の双子の男神で、太陽神*2や河川の女神の中でも代表格のサラスヴァティーと関係が深い。
医術の神とされ、行く先々で蜜の滴る鞭を振るう優しいSMプレイで人々を癒しては奇跡を起こしていった。
名前は「馬を持つもの」という意味で、スーリヤの妻が変身した馬から生まれたとする神話が残る他、双神は優れた御者でもあると云う。
それぞれにナーサティヤとダスラという名前を持つとも云われるが、ナーサティヤは双神の異名としても使われるので詳細は不明。
人気のある神格ながら『聖典』が記された頃には既に正体不明だったらしく、現在では明星の神格化とも考えられたりしている。
また、兄弟は瓜二つだが異母兄弟……らしい。
ゾロアスター教ではダエーワのノーンハスヤにされていたが、癒しの神話から、後にはイスラムにも取り入れられたアムシャ・スプンタのアムルタートとハルワタート姉妹の原型になったとされる。
長らく地上に居たために他の神から軽んじられたとする神話も残る。
特に有名な、年老いた聖仙チャヴァナの妻スカニヤーに横恋慕して彼女を手に入れる為に、チャヴァナを若返らせて自分達と瓜二つにして三択クイズをさせるも失敗しチャヴァナを若返らせてイケメンにしただけとなってしまった神話では、感謝したチャヴァナに不死の源であるソーマを与えて神々の仲間に戻すように天に祈りを捧げるもインドラが強固に反対*3、遂には自らチャヴァナの元に出向き、チャヴァナの祈りを邪魔して危害まで加えた。
これに対して、チャヴァナは怒りのままに火中に供物を捧げてインドラの打倒を願うと、世界を呑み込める程に巨大な悪神(アスラ)マダが創造され、その姿を見たインドラは恐れを為して逃げ出し、無事に双神は不死を手に入れられたと云う。


■パルジャニヤ
雨神
植物の保護者と語られている。


■アーパス
水の女神
生命の本質たる水の象徴であり、滋養や医療のならず幸福や反映の源であると云う。
ソーマ(月)やアニラ(風)=ヴァーユと共にヴァス神群を構成しているとも云われる。


■アラニヤーニー
森の女神
森の精との表記もされる。


ヤマ

太陽神ヴィヴァスヴァット、またはスーリヤの子であり、世界で最初の死者。
妃は双子の妹のヤミーで、イメージは兄貴だがロマサガ3で世話になった人も居る筈。
故に死の国の王となり、後にはヴァルナに代わり死を盾に人々に規律を迫る司法神ともなった。
仏教では閻魔様。


■トヴァシュトリ

インドラにヴァジュラ(金剛杵)を創り与えた神として知られる。
神々の工匠としてヴァジュラを始めとした神々の武器を創造し、ソーマの守護者ともされていた。
また、人間や動植物の形を望むままに形成させる神ともされていた。
古くは原初の巨人プルシャと同一視されていた他、世界を創った神、転じて工匠神とされたヴィシュヴァカルマンから生まれた神とも呼ばれ、のちにはヴィシュヴァカルマンとも同一視された。
その属性の多くは後代には創造主プラジャーパティに吸収されたしまった。
また、ヴァジュラを創ったとされる一方でインドラがそれを以て打倒した悪龍ヴリトラを生み出したとも伝えられる等、非常に多くの属性を持っていた神だったようだ。


■ルドラ

モンスーンが神格化された神性で、息子達である暴風神マルト神群を率いる。
マルト神群はインドラやヴァーユに仕える、若く、美しくも勇猛な男子達からなる戦闘神群で、他の神格との併記もあるとはいえ『聖典』では40もの讃歌が捧げられる等、有力な神格であった。
ルドラは暴風雨が吹き荒れた時の泣き叫ぶような声から名付けられた勇猛な戦闘神である一方、安寧を保証する神性でもあった。
『聖典』の中でルドラは一度ずつだがアスラ(魔神)やシヴァ(吉祥)と呼び掛けられ、後にはシヴァの名前が添えられる様になった後に完全に同化。
ルドラはシヴァの前身であると考えられるようになり、ルドラの神話もシヴァの物とされるようになった。


■アーディティヤ神群

「無限」を意味する大女神アディティの子である自然神群。
元々、アーリヤ人の流入前より信仰を集めていた土着の重要な神々が多いが、インドラ等も含まれている。
また、後にメンバーが増やされておりスーリヤやヴィシュヌも加えられた。
ここでは、最初の八柱の御名を記す。


  • ヴァルナ

天の司法神


  • ミトラ

契約の神。


  • アリヤマン

歓待の神。
ミトラの従者。
御名の類似性から、隣国ペルシャの暗黒神アーリマンの原型と記述されていた時期もあったが、流石に現在では分けられるようになった。
ただし、従者ではあるが重要な立ち位置の神格である。


  • バガ

幸の分配の神。
ミトラの従者。
ローマ神話のテルミヌスと同一起源。


  • アンシャ

配当の神。


  • ダクシャ

意志の神。
シヴァの最初の妃のサティーの父であり、ヴィシュヌ信仰によりシヴァと対立したダクシャ仙とは別の神と思われるが同一の神(聖仙)として扱われる。
一方、このダクシャの娘がアディティであり、神仙カシュヤパの妻となり火神アグニとアーディティヤ神群を生んだとする混乱するような記述もある。


  • インドラ

雷神。


  • ヴァーユ

風神。
※この時点でスーリヤとする記述もある。


ヴァルナとミトラは同格の天然宇宙の主宰神であり、寧ろこの二大神の為に親神をも含めて創設されたグループなのかもしれない。
母神のアディティへの讃歌も特に重要なミトラ、アリヤマン、ヴァルナへの助力を請う内容である。


■プラジャーパティ

元々は子孫や家畜の反映と保護を祈るための神であり、この御名も「子孫の主」といった意味合いであったが、ヴェーダ時代の終盤から万物の創造主と呼ばれるようになり讃歌を捧げられた。
ただし、インドラやソーマ、サヴィトリといった神に捧げられた名であるとされて単体の神の名では無いとも取れ、後のプラーナ文献以降は創造神ブラフマーにより世界を生み出す為に誕生させた10人の聖仙(神)とされるようになった。
数についても異説があり、ブラフマー自身のことであるとされる等、重要な神とされる一方で設定が安定していない。




●ヒンドゥー時代の神々●


ブラフマー

ヴェーダ後期に纏められた、個体真理アートマン(我)と対応する宇宙真理ブラフマン(梵)が人格化された神格。 それ以前にも存在していた世界創造譚を越えた宇宙の創造神として考え出された神性であり、それ以前の同地域の神格を越える設定で登場したが、アートマンをブラフマンにまで到達させるのは修行の果ての果ての悟りの段階なので、一般人には全く理解不能で人気が出なかった。
仏教では梵天。
宇宙の創造神なのは変わらないが、所詮は神も生まれては滅びるのを繰り返す宇宙を生み出す役割を持っただけの法則(輪廻)の内の一つなので、そこからの解脱(モークシャ)を成し遂げた釈迦の弟子となり天部の主の地位を得た。
インドラである帝釈天とは同格で、共に釈迦の脇持に付けられた。


ヴィシュヌ

『聖典』にも僅かに名前が見える、太陽光線の光が遠くまで届く作用を人格化した神性。
御名はヴィローシャナ等と同じく遍満といった意味合いとなる、太陽光線の作用の一つを顕す光明神=アスラである。
ヴェーダの頃には凡ての世界を三歩で渡ることが語られる位だったが、信徒が広めた自らを化身させるとの信仰から様々な神話を吸収していく中で、徐々に最高神格としての地位を獲得していった。
十、乃至はそれ以上の数*4のアヴァターラ(化身)を持ち、特に民衆でも一番人気のクリシュナやラーマ王子を取り込めたのはヴィシュヌ人気を決定付けることになった。
また、ガルーダハヌマーンといった人気者をファミリーとする等、ゴージャス感漂う構成で富裕層からの支持を集める。
仏教では異名の那羅延天(ナーラーヤナ)やヴィシュヌの音写の毘紐天と呼ばれているが、東洋では余り有名にならなかった。


シヴァ

強大な力により畏れと尊崇を集める破壊を司る最高神。
また、舞踏の神でもあり、躍りながら悪魔(アスラ)も滅ぼされれば、踊りから世界は滅び、また宇宙も生まれる。
『聖典』にも記された暴風神ルドラを前身とする最高神格で、三位一体(トリムールティ)では破壊を司る。
一方で、シヴァ単体としても破壊と創造を司る神性としての信仰を集めている。
ヒンドゥー時代ではインドラに代わり、最強の戦闘神として数々の神話を残す。
ヴィシュヌ同様に、最高神格に至るまでに多数の地方神の神話を吸収したらしいのだが、ヴィシュヌと違いマイナーな神様が多かったのか、シヴァの異名とされたりする代わりに単独でも信仰されるような化身としては扱われず、神話に登場しても余り有名にならなかった。
ただし、多数の地方の女神が妃とされており、別の神の子がシヴァの子とされるようになった例も多い。
光明神だったヴィシュヌに対し、元来は暗黒神として負の属性を持っていた神性だったと想像されている。
青白い身体は灰に覆われているからで、理想の苦行者として貧民層に支持を受けている。
象徴はリンガ(ち○こ)で、インドではそこら中に創られ、あらゆる場所にシヴァが居ることを信じている。
仏教では大自在天として仏法に従わないコマッタちゃんとして描かれる一方、インドやスリランカ、タイでは仏法の守護者として、東洋ではシヴァより生まれた大黒天不動尊がシヴァの属性を吸収し、重要な尊格となった。*5
棲処はカイラース山(ヒマラヤ)で、これは不動尊の座す磐石としても顕される。


■ガネーシャ

シヴァ神の子で妃のパールヴァティーが風呂に入ったときに自らの垢で作って門番とした息子で、帰って来たシヴァと押し問答になった末に首をはねられるが、妃が泣いたので遠くに投げ捨てた首を探すが見つからず、仕方なく最初に見つけた象の頭を付けて復活させて、ファミリーの長男とした神格。
富を呼ぶ神様として有名で商人に信仰され、民衆にも人気のある神格だが、元来は強烈な祟り神としての信仰も合わさった神格であり、東洋では歓喜天/聖天として、ヒンドゥー以前の祟り神としての属性も持った扱いの難しい尊格となっている。


■カーマ

心に愛欲を発心させる弓矢を持つことからギリシャ神話のエロース等と同一起源の神性と考えられる。
カーマ(愛)はそのまま、愛を意味する語として扱われる為、混乱を避ける為か神格としてのカーマはカーマ・ディーヴァと呼ばれて区別される。
様々な出自が語られてているが、最も有名なのは正義の神ダルマ(法)の息子としてのカーマで、苦行によりブラフマーから「シヴァの子以外に殺されない」という祝福を得たアスラのターラカに神々が苦しめられていた時の神話である。
当時のシヴァは最初の妻サティーを失った後に長い瞑想に入っていた時期で、サティーが転生したパールヴァティーが生まれてシヴァに懇想していたのに全く気付かない状態だった。*6
そこで、神々はカーマを派遣してシヴァに愛欲を起こさせる矢を放つが、それにより気を乱されたシヴァはカーマを額の第三の眼からの炎(光線)により焼き尽くしてしまった。
こうして、大惨事にカーマの妻ラティが泣き叫ぶ影で生まれたのが軍神スカンダであり、他の神話とは食い違う出自ながらシヴァとパールヴァティーの子として誕生したスカンダは無事にターラカを倒したと云われる。
割を食う形となったカーマだが、後にクリシュナの子として転生し、同じく転生したラティと結ばれたとされる。
異名の内で最も知られているのはアナンガ(身体の無い者)で、これは上記の神話から。
また、異名の一つにマーラ(破壊者)がある。
仏教では直接の変身とはされておらず、梵名にも共通点は無いものの愛染明王が、同じく弓矢を持つことや共通した神性から、カーマが元となった神格である、と予想されている。


スカンダ

以前は火神アグニの子とされ、彼に恋慕する女神スヴァーハーが、彼が恋慕する聖仙の妻達に順に化けていって交わり、その時に六度に分けて集めた精液をアシュベータ山の黄金の穴に溜めて誕生させたとされていた。
しかし、誕生四日にして少年(童児)ながら雷帝インドラとその手下共を圧倒して新たな軍事指揮官となるとされる等、有力な神であったことから、シヴァ派にシヴァの息子として組み込まれてしまった。
先の神話の場合だとアグニにシヴァが宿っていた代理セクロスにより誕生したと解釈される他、カーマの神話の様に素直にシヴァとパールヴァティーの子とする神話も生まれた。
または、パールヴァティーではなく彼女の妹であるガンガー女神(シヴァが天界より降下を受け止めたガンジスの化身)との子とされる解釈もある。
何れにせよ、出自や時系列に食い違いがあるものの、現在はシヴァファミリーの次男として扱われ、これは仏教に取り込まれても同じである。
よく知られた異名をカルティッケーヤ(昴星団)、クマーラと云い、仏教では俗説から俊足の神として知られる様になった韋駄天となった。
異名とされる鳩摩羅天は、異名のクマーラを音写した尊名である。


サラスヴァティー

元々は古代オリエントに於ける、生命の象徴たる河川の女神であり、隣国ペルシャのアナーヒター女神とは同じ神性と考えられている。
アナーヒター女神はギリシャのアフロディーテやバビロニアのイシュタル女神と習合し、或いはキュベレやアルテミスとも同一視された神性である。
流れるものの共通項から、言葉や音楽の女神としての信仰を集めるようになり、至上のマントラ(真言)の神格化であるガーヤトリー女神と同一視されるようになった。
ブラフマー神妃であり、彼の娘ともされる。
仏教では弁才(財)天となり、学芸に加えて河川や海の運航を司る女神、何よりも七福神の一つとして代表的な福の神となった。


■パールヴァティー

シヴァ神妃の中でも中心となる神格であり、他の神妃は凡てパールヴァティーの化身とも考えられる程の大女神(マハーディーヴィ)。
シヴァの棲むカイラースのあるヒマラヤの神格化であるヒマヴァットの娘で、前のシヴァの妻であるサティーの生まれ変わりとされる。
非常に慈愛に満ちた美しくナイスバディな娘とされる一方で、シヴァ同様に暗い面があり、それがカーリーやドゥルガーといった恐ろしい性を持つ黒い女神達だとされている。
仏教では単独の女神としては信仰されなかったが異名のウマーを音写した烏摩妃と呼ばれ、仏法に逆らって断罪された大自在天(シヴァ)と共に降三世明王に踏みつけられている。


■ドゥルガー

苦行の末にブラフマーより「男と神には負けない」という祝福を受けて無敵を誇った、強大なアスラ(魔王)のマヒシャースラに神々が苦戦を強いられていた時に、神々は力を合わせてパールヴァティーの内より、若く美しい女ながら神々に与えられた武器を使いこなすドゥルガーを生み出した。
男では無いドゥルガーは、マヒシャースラの軍勢を押し返し、十日目の半月の夜にシヴァより受け取った三叉戟で魔王を討ち取ったと云う。
ドゥルガーの異名はチャンディーといい、
ドゥルガーとは、同名のアスラを破った後で頂戴した御名だと云う。


■カーリー

数ある美しいインド神話の女神、中には邪悪な一面や狂暴な一面を見せることもある女神達の中でも、最も恐ろしい姿をした女神。
現在の神話では恐るべきアスラ兄弟のシュンバ、ニシュンバがマヒシャースラの恨みを晴らすべくブラフマーの祝福というチートコードも無しに三界を征服した時に再びドゥルガーが向かうが、今度はドゥルガーの力すら通じず、神々が劣勢に追い込まれた時に、更なる怒りからドゥルガーの額から生まれ、アスラ兄弟を打倒したとされている。
よって、ドゥルガーやパールヴァティーとは同一の女神の別の相として扱われる。
余りにも血腥い神話と信仰を受けたことから、中世ヨーロッパでは悪魔とされ、カーリーへの供物の為に殺害を続けた暗殺集団タギーが尾ヒレも付いた部分があるとはいえ数々の伝説を生んだ。


■ラクシュミー

現在はヴィシュヌの神妃とされる美しい女神で、ヒンドゥーの第二の創世神話である乳海攪拌の際に誕生したというアフロディーテの様な女神。
移り気な性格ともされ、その時々の有力な神の素を渡り歩くとされ、ヴィシュヌ以前にもアスラやインドラが彼女を手元に置きたがったが敵わなかったともされる。
仏教では鬼子母神(ハリティー)の娘で毘沙門天(クベーラ)の妻とされているのも同じ理由か。
双子の姉にアラクシュミーが居り、彼女はラクシュミーとは真逆で醜く、不幸や貧困を司ると云われる。
姉妹仲は悪くなく、ヴィシュヌに求婚された際にラクシュミーは姉にも連れ合いを見つけることを条件にしたと云う。
仏教では吉祥天の名で、同じく幸運の女神。
アラクシュミーは黒闇天の名で閻魔の妃、また逆輸入されてドゥルガーと同一視された他、ヤマ(閻魔)神の妹とされた。






追記修正や追加はソーマを飲んでハイになってからお願いしますアヒャヒャヒャヒャ


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  • こうしてみるアバタールチューナーはほぼオールスターで登場しているな -- 名無しさん (2018-11-09 00:27:07)
  • みんなで楽しくダエエヴァ♪みんなで楽しくダエエヴァ♪ -- 名無しさん (2018-11-09 11:12:22)
  • ディーヴァって言うと歌姫と被るからデーヴァと呼びたい派 -- 名無しさん (2018-11-09 16:11:15)
  • ↑3 そんな古き時代の化身たちがより後進であるはずのブラフマーに一言物申しに行くって考えるとなかなか凝ったテーマじゃんって感じるわ -- 名無しさん (2018-11-09 17:32:25)
  • やっぱり幸平ソーマは神だったんだな。勝ち続けるわけだ -- 名無しさん (2018-11-10 02:19:59)

#comment

*1 戦神としてのイメージから男神としても顕されるようになったが、本来は女神である。
*2 特にスーリヤ。彼の娘のスーリヤーと恋仲であるとも云われ、彼女は双神の旅に付き従うとも云う。
*3 自分達で願ってはいけないというルールがあるのかも知れない。
*4 10とされるのは代表的な物といった程度の意味で、それ以上の化身が神話にも登場している。
*5 上座部仏教の伝わった地域ではヒンドゥーの神々がそのまま守護神となり、東洋では当地の文化を吸収して変身したものが日本まで伝わったようである。
*6 尚、この時にカーマとその配下が地上に降りただけで聖者や苦行者以外の人間達は愛欲にとらわれセクロスしまくったとかなんとか。

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