ダグとデイブ

ページ名:ダグとデイブ

登録日:2016/07/19 (火) 19:37:00
更新日:2024/01/25 Thu 13:54:23NEW!
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ダグ・バウワーとデイブ・チョーリーとは、イギリスのおじいちゃんコンビであり、そのスケールがでかすぎるイタズラによって20世紀末の大衆文化に計り知れないほどの影響を与えた英霊である。
日本では「ダグとデイブ」、英語圏では「バウワー&チョーリー」と呼ばれることが多い。





ミステリーサークル


のどかな田園の麦畑に、人知れず出現する謎の幾何学模様……
こんな話は誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
この「ミステリーサークル」は、20世紀末のイギリスをはじめ世界を震撼させた謎の現象だった。


最も有名な説は、「異星人の乗り物の着陸跡」というものであろう。
出現した夜にUFOらしきものを見たという目撃例があったり、サークル内から放射線が検出されたりと、多くの傍証もあって広く信じられていた。
しかし、なぜわざわざ麦畑にだけ現れるのか、また金曜日に、他の曜日よりも有意に多く現れるのは何故か
といった疑問があった。


一方、一部の物理学者らが唱えたのがプラズマ説である。
プラズマは物質の高温で特殊な状態のことだが、条件によってはそれによってミステリーサークルができるとされた。
この説の延長として「プラズマ兵器を用いた軍の秘密実験説」も唱えられた。
しかしこの説でも上記の2点は説明ができない上、本当にプラズマでこんな現象が起きるのかは疑問という意見もあった。




果たしてその原因は異星人(UFO)か、プラズマか。
新しいサークルが出現する度、両陣営の論争は激しさを増していった。
そして1991年、ついに真相が判明する。


その真相は……




二人組のおじいちゃんが、夜な夜な行っていたイタズラ



であった。



サークルの作り方は理論としては非常に簡単で、大まかには
①板と棒をロープで結びます
②棒を畑の中に建てます
③ロープで棒とつながった板を足で踏みながら歩けば、綺麗な円が書けます


以上。
と書くと簡単なようだが、人目につかず、現場にほとんど痕跡も残さずに最初の9年間だけで38個も作ったのである(同じ場所に同時に出現したサークルは円の数に限らず一個と数えるとして)。
これがどれほどのことかは想像できるだろう。
(一応以前から人為的悪戯説はあったが、たった二人の老人が作っているとは誰も思っていなかった)





ダグとデイブのサークル作り


もともとダグは画材店の経営者で、デイブはその店を利用する画家だった。
いつしか友人同士になっていた二人が世紀のイタズラを始めたのは1978年のこと。
最初のきっかけについては、「謎のサークルが現れる」という新聞記事を見たことだとも、当時メガヒットしていた映画「未知との遭遇」に触発されたからとも言われる。
デイブは絵が売れないことで落ち込みがちなことが多く、それを励ますためにダグが二人で大きな悪戯をしようと誘ったのだとも言われる。



最初は彼らの試みは全く世間の注目を浴びなかったが、二人は数年間ひっそりこんなことを続けた。
……その時間と労力は画業のほうに発揮するべきでは?



なお回数をこなすごとに彼らは手法を改良し、円や直線を幾何学的に綺麗に曳くための道具を開発したり、足跡を草で隠したり、棒高跳びの要領を使って足跡を残さず移動するなどの
「ルパンかなんかですか、あんたら?」というレベルのアビリティを発揮する。
ちなみに彼らは光源は使用せず、月明りだけで作業を行ったらしい。
……だからその労力は本業のほうに(ry



新聞に彼らの作成したサークルが掲載されるようになったのは1980年のこと。
彼らは大いに喜び、ますますサークル作りに精を出すようになった。



ちなみにサークルが出現するのが金曜日に集中していたのは、二人の休みが合うのが金曜日だったから
ただしダグは、毎週毎週夜な夜などこかに出かけることから奥さんに浮気を疑われ、真相を白状したという。
まあ、そりゃあそうだろう。
なお告白を聞いた妻は二人の悪戯を面白がって喜んだという。



また他人の土地である麦畑に無断で侵入した上で作目に手を加えるのは、もちろん褒められた行為とは言い難い。
しかし、彼らが狙ったのは収穫直前の麦畑であり、麦が倒されてしまっても収穫そのものにはあまり影響が無かったという。
実際、彼らの告白後も彼らに損害賠償を求めたりする所有者はいなかったようだ(それどころか、サークルを見に来た野次馬から見物料を取って儲かった人までいる)。



要するにサークルの大きな謎であった「場所」と「曜日」の問題の真相は、単なるおじいちゃんたちの都合であった。



なお、1987年になるとサークルの正体はいたずらだと気付いた者たちの中から、二人を模倣してサークル作りのいたずらを始めるグループがまずは全英に、やがて世界中に出没し始める。
これにおじいちゃんコンビは喜び、新作のサークルの傍に「我々は孤独ではない」というメッセージを刻んだ。
これは異星人説を取る研究者によって、「異星人からの地球人へのメッセージだ!!」と解釈された。
……いや、異星人が英語を使ってる時点でおかしいと気付くべきでは



真相の告白



しかし、サークルがイギリスどころか全世界的な話題になると、おじいちゃんコンビたちも流石に「やりすぎたかな……」と思えてきた。
決定打となったのは、サークルの調査に税金が投入されるというニュースを読んだことだという。
いよいよシャレにならなくなったと判断したおじいちゃんコンビは、1991年、遂に真相告白に至る。



一部の人は「ちょwwwwwなんだよそのオチwwwwww」という感じで受け取ったこのニュースであるが、異星人説・プラズマ説を唱えていた研究者たちは一斉に反発した。
何しろ異星人説派は
「サークルは偉大な異星人からのメッセージである!!」
と主張してきたわけだし、プラズマ説派にしたって、
「異星人とか非科学的過ぎだろwwwwwこれはプラズマという物理現象だからwwww」
というノリで、異星人説派をしばしば笑いものにしながら、自分たちの「科学的な説明」を広めていた。
ただのおじいちゃんのいたずらであったとなれば、双方面目丸つぶれである。



そんなわけで、「お前らみたいなただの爺さんにこんなすごいものが作れるわけないだろ!!」という猛反発が、双方の陣営から巻き起こったのである。
その中には、「いたずらだとしたら、このような事実は説明できない」という主張もあったのだが……




  • 「サークルが出現した時に、近くでUFOを目撃したという証言がある!! 異星人が関わっている証拠だ!!」

→UFOの目撃例というのは世界中でほぼ毎日報告されているもので、9割以上は見間違いとされている。


  • 「サークルから放射線が検出された!!」

→そんなもん自然界からでもいくらでも検出される。


  • 「倒された麦は茎が三つ編み状に編まれていた。板で麦を押し倒したなら、もっと単純に折れる筈だ!!」

→板を踏むときに少し回転を加えれば、人力でも簡単に三つ編み状にできる。




とまあ、こんな感じで説得力ある反論は無かった。
またUFOがサークルを作る様子を撮影したと称する映像はトリックだったし、UFOがサークルを作る瞬間を目撃したという目撃報告は捏造だった。


ダグとデイブの証言内容は、実際のサークルの出現状況とほぼ一致しており、矛盾はほとんど無かった。
それでも異星人説・プラズマ説を支持する多くの人は二人の証言を信じようとせず、それどころか二人に「嘘つき」「売名行為」というレッテルを張ろうとした。



おじいちゃんコンビの反撃



ダグとデイブはこの世間の反応に最初はショックを受けたらしいが、やがて自分たちの証言の正しさを証明する手段を手に入れる。


二人にそれを提案したのは、サークル研究者のジョン・マグニッシュ。
最初はマグニッシュもおじいちゃんコンビの証言に懐疑的だったが、二人に直接インタビューをしたことで「彼らは嘘をついていないのでは」と思うようになったという。
そこで懐疑的な研究者のケン・ブラウンとも協力し、おじいちゃんコンビと一緒に次のような一芝居を打つことに。



まずダグとデイブは、公式には「もうサークル作成からは手を引く」と宣言する。
しかし実際にはまだサークル作成を辞めていなかった。
ただし今度はサークルを作る前に、新しいサークルが出現する日時・場所・サークルの形状などを、前もってマグニッシュに知らせておいたのである。


そして、新しいサークルは彼らが予告した通りに出現した。
マグニッシュは他の調査結果も踏まえて、「サークルはダグとデイブを始めとする人間の手で作られた」と確信する。



一方、異星人説・プラズマ説を唱えていた陣営はというと……


「ダグとデイブはもう引退したんだから、新しくできたサークルは本物だ!!」


「確かに中には人間が作ったものもあるかもしれない。しかし、こんな複雑で綺麗な形のサークルは人の手によるものではありえない(ダグとデイブが新しく作ったサークルを目の前にして)


と、絵にかいたような釣られっぷりを発揮。


結局マグニッシュが全ての真相を告白したことにより、彼らの発言の信憑性は地に落ちた。
おじいちゃんコンビの完勝である。




その後


ミステリーサークルについては現在でもオカルト番組などでしばしば異星人などと絡めて語られることもあるものの、研究者の間ではすでに決着はついているといっていい状況である。
むしろ近年では「人が作ったもの」ということを前提とした上で、企業の広告に使用するなどの方向に進んでいる。



なお、ダグとデイブはその功績により、1992年にイグノーベル賞物理学部門を受賞している。



ここまで大勢の人を振り回したおじいちゃんコンビであるが、デイブ・チョイリーは残念ながらサークル論争の終結を見ること無く、1996年に死去した。
一方のダグ・バウワーは2015年時点で健在で、91歳という高齢ながら、世界中のサークル製作者から尊敬を集め続けている。
ダグは病床のデイブと、「サークルを作成したのは自分たちだと必ず証明して見せる」と約束したという。




サークル研究に時間を費やした研究者や、異星人がやってきたと思って夢を見た人にとっては迷惑だったかもしれないが、
二人の稀代の発想力と行動力、そして世間を手玉に取ったという偉業は、永遠に語り継がれるにふさわしいものだろう。





追記・修正はミステリーサークルを発見してからお願いします。






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  • なんとまあ、人騒がせなじーさんたちである(笑) -- 名無しさん (2016-07-19 20:12:35)
  • 学者の目の前で作れば良かったんじゃ -- 名無しさん (2016-07-19 20:30:20)
  • それじゃ意味無いんだよ目の前で再現出来てもUFOやプラズマによって作られていない証拠にならない、だから人知れず作成して後に完璧な証明をする事にしたんだろう -- 名無しさん (2016-07-19 20:40:34)
  • 学者の目の前で作っても「これは爺さんのだけど、他のはプラズマだ!」って話になるからね。学者がお墨付きを与えた物が、実は爺さん作だってことを証明したからこうなったわけで… -- 名無しさん (2016-07-19 21:04:04)
  • つーか、この爺さん達が宇宙人からのメッセンジャーの可能性はどうなの? -- 名無しさん (2016-07-19 23:31:22)
  • ダグとデイブ〜世界を驚かせたいあ -- 名無しさん (2016-07-20 01:31:57)
  • 下手すりゃ画家より有名になってるな・・・ -- 名無しさん (2016-07-20 12:34:06)
  • この話好きだなー -- 名無しさん (2023-01-02 23:09:14)

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