ウルトラセブンとタロウ(ウルトラ兄弟物語)

ページ名:ウルトラセブンとタロウ_ウルトラ兄弟物語_

登録日:2016/06/13 Mon 20:49:07
更新日:2024/01/23 Tue 13:56:19NEW!
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ウルトラ兄弟物語 かたおか徹治 コロコロコミック ウルトラマンタロウ ウルトラセブン ウルトラの父 ウルトラの母 アイスラッガー ドラ息子



ウルトラセブンとタロウとは、かたおか徹治による漫画作品『ウルトラ兄弟物語』のエピソードの一つである。
初出は月刊コロコロコミック1979年11月日号。
正式なタイトルは「ウルトラセブンとタロウ ウルトラヒルの激闘」で、雑誌掲載時のタイトルは「秘録ウルトラセブンとタロウ」。
小学館のてんとう虫コミックス版には未収録だったが、双葉社から刊行されたアクションコミックス版第3巻にて単行本初収録された。


『ウルトラ兄弟物語』では、若き日のウルトラセブンの慢心と挫折、成長を描いた「ウルトラセブン物語」というものもあるが、
このエピソードはそれより時を経て、立派なウルトラ戦士となったセブンが、今度はウルトラマンタロウを導くという展開となっている。
描かれているテーマは2作で共通している面もあるが、セブンがあくまで自分自身で過ちを見つめ直し、独力で成長を果たしたのに対し、
タロウの場合はどちらかといえば「目指すべき“指針”たる大人と出会った不良少年」という印象になっているのが、
セブンとタロウ、両ヒーローのイメージの違いみたいなものを現しているようで興味深い。
実際の雑誌掲載はおよそ半年ほど離れているのだが、双葉社の単行本では「ウルトラセブン物語」の次に本作が来る順序になっており
両作を読者に対比してもらおうという編集サイドの意図が感じられる。


時系列は前作同様、「決闘ウルトラ兄弟」よりも前に相当すると思われる。
ただし、当該エピソードでは宇宙警備隊の設立に際してウルトラマンタロウが「ウルトラ6兄弟」として加わっているのに対し、
こちらではエピローグでタロウが試験を通して宇宙警備隊に入隊した事が語られているなど、オムニバス作品ゆえか設定に若干の齟齬がある。



あらすじ


まだ……、ウルトラの国に、宇宙警備隊が結成されていなかった………… 遠い昔の物語……
暴力と、無法が… 暗黒世界を支配していた……


ウルトラの国、とある荒野にポツンと建っている一軒の住居。用事で外に出たウルトラの母は、家の傍に覚えのある人影を見かけた。
マントを羽織り、長槍を携えた彼こそは、彼女にとっても馴染み深いウルトラ族にして従弟……ウルトラセブン
武者修行より帰還した彼をウルトラの父共々出迎え、歓迎するが、セブンに息子のタロウは元気かと聞かれて顔を曇らせる。
彼女曰く、タロウはすっかり家に寄り付かなくなってしまったとのことだが……


そんな折、セブンを突如として一条の光線が狙い撃つ。
既の所でマントを翻し防御したセブンであったが、光線の主は何を隠そう……ウルトラマンタロウ
彼は数名もの不良仲間を引き連れ、崖の上に彼を見下ろすよう陣取っていた。
久しぶりの挨拶にしては乱暴ではないかと冷静に諭すセブンに対し、タロウはしてやったりと口元をニヤリとさせる。
……が、取り巻きたちが、勇士として名を馳せているウルトラセブンに対し、羨望の念を覗かせた事で露骨に機嫌を悪くし、
タロウはセブンを尻目にさっさと立ち去ってしまう。


そう、今の夫婦にとっての悩みの種は、一人息子であるタロウがすっかり不良そのものの振る舞いをするようになった事であった。
彼の乱暴な振る舞いに心配の念を隠せないウルトラの母であったが、ウルトラの父は今のタロウに何を言っても馬耳東風、
いずれ試練に直面し、それに彼が耐えるときが来るまで待つべきと母を慰めた。


父「自分の力にうぬぼれている今のあの子に、何をいっても理解はすまい……試練に耐えて、初めて真の強さを知るだろう。その時がくるまで待つのだ」


ある日、花が咲き誇る木の下で、修練に明け暮れるセブンの元に、タロウが取り巻きを引き連れて姿を見せる。
タロウはセブンに技比べの勝負を挑み、木の枝を花びら一枚も散らすことなく落とすと宣言。
自慢の必殺技・ストリウム光線を寸分違わず枝に命中させ、そして見事宣言通りのことをやってのけた。


それに続き、セブンはエメリウム光線を木の枝に発射。タロウとは違い、落下する枝からは花びらがボロボロと散ってしまった。
自身の勝利を確信したタロウは高笑いし、自分の方がセブンより優れてると吹聴し、取り巻きたちと共に帰ろうとするが……


タロウ「(ン!?)おぉっ…花びらが散っていく~!!」


タロウ達の前で、木に咲き誇っていた花が瞬時に散り、辺り一面に見事な花吹雪となって吹き荒れる。
この壮大な光景を前に、取り巻きたちが驚愕したのは勿論のこと、タロウもただ言葉を失い、花吹雪に魅入ってしまう。
そう、花びら一つ散らさず枝を落としたタロウに対し、セブンは逆に光線一つで木の全ての花びらを一つ残らず散らしたのだ
セブンとの技量の差をまざまざと痛感したタロウは、敗北を認めてその場に跪くほかなかった……



時を同じくし、ウルトラの父率いる「ウルトラ保安員」は、全宇宙に指名手配されている「スペース・バンディッツ」の勢力が
ウルトラの国・ウルトラヒルに潜伏していることを突き止め、夜明けと共に一網打尽に使用と作戦を練っていた。


……その会議を盗み聞きしていたのは、他でもないウルトラマンタロウ。
セブンとの技比べで実力の差を思い知りながらも、まだ自分自身への過信を拭いきれないタロウは、
父たちよりも先んじてウルトラヒルに向い、スペース・バンディッツを仕留めることで実力を証明しようと目論む。
かくして真夜中、ウルトラヒルの峡谷に到着したタロウだったが、人っ子一人の気配すらない静けさを前に違和感を抱く。
自分が敵の術中にはまってしまった事を悟った時には、既にスペース・バンディッツの大軍が彼を包囲していた後だった……


翌朝、スペース・バンディッツの討伐に出撃せんとするウルトラの父らのもとに、ウルトラの母が顔を青くして駆け込んできた。
彼女のもとに届けられた手紙の内容は、「囚われのタロウを殺されたくなければ全面降伏せよ」という旨のものであった。
流石の父も息子の大失態に憤りを隠せず、一同は大慌てで一から作戦の練り直しに取り掛かるが、
そんな中ウルトラセブンはただ一人、誰にも気づかれる事なくそっと席を外した。



その頃、ウルトラヒルではスペース・バンディッツたちが、十字架に磔にしたウルトラマンタロウを肴に酒宴を開いていた。
人質を得たことで既に勝利に酔いしれている無法者を前に、さしものタロウも自身の行いがもたらすであろう結果に戦慄し、
鎖から逃れようとするも、彼の力で拘束を破ることはできなかった。


スペース・バンディッツA「我らの勝利は目前だっ!! それもこれもおまえのおかげだぜっ!!」
スペース・バンディッツB「ウルトラの父も親孝行な息子をもったもんだぜっ!! バカ息子に乾杯だっ!!」
スペース・バンディッツC「これであの町もおれたちのものだ!! グヒヒヒ……」


そこに現れたのは、武者修行から帰った時と同じ、マントを羽織り長槍を携えた姿のウルトラセブン。
たった一人で自分達の軍勢に挑む無謀さを、スペース・バンディッツの首領は嘲笑。
彼が自分を助けに来てくれたのだと確信したタロウは、自分のことは気にせず逃げろと警告するが、
セブンはマントを脱ぐと、獲物を構えてスペース・バンディッツの軍勢に飛び込んでいった。
……そう、まるで本当の“戦い”というものを、タロウに教えようとしているかのように


セブン「タロウッ!! よく見ておけいっ!! これ・・が戦いというものだっ!!」


多勢に無勢という言葉すら意味を成さないかのように、セブンは得物を振るい、光線技を駆使し、敵の軍勢をあっという間に蹴散らす。
その際、倒された敵の血しぶきや、切り刻まれた肉片は、容赦なく囚われのタロウのもとへと降り注ぎ、
囚われの彼はそれを避けることすらできず盛大に浴びてしまい、苦悶する事となった。


一気に劣勢に陥ったスペース・バンディッツの首領は、タロウの首元に凶器を翳し、セブンに武器を捨てるよう恫喝する。
タロウを人質に取った卑劣なやり方に屈したか、セブンは長槍を地面に手放してしまう。
……かに見えて次の瞬間、セブンは即座にアイスラッガーを構えた。
首領は慌ててタロウの首筋に凶器をチラつかせるも、セブンは表情一つ変えることなくにじり寄ってゆく。


スペース・バンディッツ「き、聞こえねえのかっ!! こいつが死んでもいいのかっ!!」
セブン「かまわん………!!」


自分を攻撃すれば人質を殺すという首領の恫喝を、容赦なく一蹴したセブンの言葉にタロウは顔を蒼白にする。
次の瞬間、セブンはアイスラッガーを放ち、十字架に縛られたタロウもろとも、敵の首領を切り裂いた……











――――タロウはそう覚悟していたが、セブンのアイスラッガーが斬ったのはスペース・バンディッツの首領、
そして彼を縛っていた鎖だけであった。
タロウは自由の身になりながらも、その膝の震えは一向に止まることなく、そのまま地べたにへたり込んでしまう。
自分一人を助けるがために、単身敵の大軍に挑み、それらを全て討ち滅ぼした勇士ウルトラセブン。
対し、自身の力を過信した結果、このような無様な醜態を晒してしまった自分が如何に未熟者だったか……
この一件を通じて、タロウはそれを心底思い知らされてしまったのだ。


ウルトラセブンは、目の前に項垂れる若きウルトラ族を導くかのように、真の“強さ”の在り方を諭す。


セブン「タロウよ、戦いはあそびではないのだ……ただ力が強いというだけでは、真の強さではない……! お前が身も心も成長したその時まで……さらばだ!!」


そう言い残すと、セブンはウルトラヒルを去っていく。
その言葉が彼の心の奥底に届いたか、いつしかタロウは立ち上がるとセブンの名を叫び、彼の後を追った。
いつか、本当の意味で彼と肩を並べるウルトラ戦士になろう、まるでそう決意したかのように……


タロウ「! セブン――っ!!」



タロウが優秀な成績で、宇宙警備隊に入ったのはまだまだずっと先の事である―――







追記・修正はエメリウム光線で花びらを全て散らしてからお願いします。


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  • 実写漫画問わず多くの作品でこういう成長展開が丁寧に描かれる辺り、タロウはかなり美味しいポジションにいるよね -- 名無しさん (2016-06-13 20:52:22)
  • そのせいで未だに末っ子のイメージが抜けきらない… -- 名無しさん (2016-06-13 22:18:27)
  • メビウス「教官にもこんな時代が・・・」 -- 名無しさん (2016-06-14 19:11:19)
  • ウルトラ心臓があるからあのまま首斬っても平気とか思った奴はジープの刑 -- 名無しさん (2016-06-14 20:51:00)
  • STORY0の時もそうだが、タロウは本来優しさ寄りのウルトラマンなのに、漫画では何故か成長前は暴君寄りのキャラにされてしまう謎 -- 名無しさん (2016-06-14 21:18:32)
  • タロウって設定上スペックが高いからな。恵まれた身体能力を持つ未熟者と言ったら暴れん坊のイメージが強いんだろう。激伝では悟飯のイメージが混入してるせいもあって優しさ寄りだけど -- 名無しさん (2018-07-02 21:10:58)
  • 「本当の“戦い”というものを、タロウに教えようとしているかのように」の解説文でどこかのファクターを思いだした -- 名無しさん (2018-07-03 18:28:24)
  • ↑森次違いである。 …このエピソード、タロウをゼロに変えてもそんなに違和感がない気がする -- 名無しさん (2020-08-01 11:50:01)

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