登録日:2015/11/25 Wed 09:38:17
更新日:2024/01/16 Tue 13:06:14NEW!
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映画 湾岸戦争 名作 コメディ 誘拐 スティーヴ・ブシェミ コーエン兄弟 ヒッピー ビッグ・リボウスキ
■ビッグ・リボウスキ
『ビッグ・リボウスキ(英:The Big Lebowski)』は98年に公開された米映画。
監督、脚本は『ファーゴ(96年)』『オー!ブラザー(00)』『ノー・カントリー(07)』等で知られるコーエン兄弟。
公開時は批評家に酷評された挙げ句、興行収益も挙げられずに不人気、失敗作と呼ばれたが、後にビデオ版の発売に伴い根強い信者を獲得。
現在では“コーエン兄弟の最高傑作”と声を大にして叫ばれる等、カルト的名作、コメディ映画の傑作として紹介される場合も多い。
【概要】
コーエン兄弟お得意の「誘拐」をテーマにしたコメディ作品。
作品構造の解説として、アニヲタ的には『仮面ライダーW』にて主人公の相棒の名前として引用されていた事でも知られる、探偵フィリップ・マーロウを生んだレイモンド・チャンドラー作品に代表される“古き良きハードボイルド探偵小説(作品)”へのオマージュと、それらのパロディとも呼べる世界観や物語の作り方が挙げられる。
元々はコーエン兄弟がプロとして活動する以前から温めていたアイディアであり、メジャーデビュー作品である『バートンフィンク(94年)』の製作と同時期には本作の脚本も完成していたと云う。
……しかし、当時のコーエン兄弟では資金面や知名度の点から“自分達の理想のキャスト”を揃えられない事から製作を断念。
つまりは、コーエン兄弟にとっても先延ばしにされていた念願の企画が数年越しに実現出来た、正に“夢の作品”と呼べる映画であった。
……また、グッドマンやタトゥーロらコーエン兄弟作品常連の個性派に混じり本作の主演を務めた、燻し銀の演技派俳優ジェフ・ブリッジズも「初めて脚本を読んだ時、自分はデュードを演じる為に生まれて来たんだと感じた」……と、語る程の熱の入れようであったと云う。
……しかし、そうしたスタッフやキャストの思い入れに反し、公開当時は前作『ファーゴ』でのアカデミー主演女優賞の獲得と興行的成功により、コーエン兄弟への業界の注目が(良くも悪くも)集まっていた時期だった事もあってか、
『ファーゴ』の再来を期待した批評家連中からは“まったく方向性の違う本作”はこぞって酷評を受ける結果となってしまったと云う。
……その煽りを受けた面もあるのか、興行収入も芳しくなく、辛うじて製作費を回収する程度で早々に公開終了。
……この時点では『ビッグ・リボウスキ』は単なる失敗作として、忘れられてしまっていた可能性があった。
……だが、そうした評価を今日までに覆す契機となったのが、レンタルによるビデオソフトでの試聴の普及である。
当時の米国では、金の掛からない娯楽として“若者達が週末になると各々がビデオソフトを持ち寄り夜通し映画鑑賞する家庭版オールナイトシアター”が流行していた。
……そして『ビッグ・リボウスキ』は、懐かしネタを大量に含む“オッサン向け映画”にもかかわらず、何故か十代を中心とした若い世代に憧れめいた共感を呼び、人気の高まりと共に“改めて映画の内容と作り込みが評価”される様になっていったのである。
そして、02年には現在まで続く「リボウスキ・フェスティバル」なるファンジンが初開催(※年一回ペース、会場は不定)。
このファンジンでは、登場人物のコスプレをした参加者達が汚い言葉(※映画内の台詞)を口にしつつ、ホワイトロシアンを飲みながら夜通しボウリングと『ビッグ・リボウスキ』鑑賞に興じるのだとか(笑)。
そして、11年にはBlue-ray版の発売を記念した主要キャスト(ブリッジズ、ムーア、グッドマン、ブシェミ、タトゥーロ)に作曲担当のTボーン-バーネットを加えた“リュニオン”が開催。
集まったファンが熱狂的な盛り上がりを見せたのは勿論、ブリッジズは当時の髪型を再現して登場する程の気合いの入りようだった(※余りに盛り上がり過ぎてブリッジズがマナーの悪い観客を諫める一幕も)。
……尚、生みの親のコーエン兄弟は同様のファンジンには一度も参加した事が無いらしく、ファンからは残念がられているとの事。
【物語】
―90年代初頭、パパブッシュが湾岸戦争を行っていた頃のLA。
ぐうたらなヒッピー崩れの“デュード”は、ある夜“身に覚えの無い借金の返済”を理由に、二人組のチンピラに脅迫された挙げ句に“いい感じに統一していた家具”の中でも、特に大事にしていた“お気に入りの敷物”に小便をされてしまうのだった。
……結局、借金していたのは自分と同姓同名の大富豪ジェフ・リボウスキの妻であり、自分は無関係である事が判ったものの、納得のいかないデュードは悪友ウォルターの入れ知恵もあり、件の大富豪“ビッグ”リボウスキに敷物の弁償をお願いしてみる事に。
……同じ名前の大富豪との“商談”は失敗に終わったが、大富豪の尊大な態度に腹を立てたデュードは、まんまと“新しい敷物をせしめてやる事”には成功。
意気揚々と引き上げようとしていたデュードだったが、そこで件の借金の当事者である“ビッグ”リボウスキの“若い後妻”であるバニーと邂逅するのだった。
……彼女とのやり取りに妙な違和感を感じるも、この時には後々に自分が“とんでもないトラブル”に巻き込まれていく事など、夢にも思っていなかったデュードだったのだが……。
【登場人物】
※吹き替えは旧版
■“デュード”ジェフリー・リボウスキ
演:ジェフ・ブリッジズ/声:山路和弘
四十過ぎのヒッピー崩れのぐうたら男。
仕事もせずに毎日を無為に過ごしているが、長年の趣味であるボウリングに“だけ”は心血を注いでいる。
ホワイト・ロシアン(ウォッカをカルーアと牛乳(生クリーム)で割ったカクテル)を愛飲しており、この映画のファンも当然の様に好物である。
他にもマリファナを常用し、CCR(クリーデンス)のカセットを聞き、太極拳を嗜む……等、何処かしら懐かしい“60年代的ヒッピームーブメント”に未だに浸っている。
本名は上記の通りだが、自らは“デュード(イケてる奴)”を名乗り、仲間にもそう呼ばせている。
■ウォルター・ソブチャク
演:ジョン・グッドマン/声:玄田哲章
ハンガリー系移民で、デュードの悪友にしてボウリング仲間。
ベトナム帰還兵。
平和主義者のデュードとは話が合わない部分も……と云うか“話が合う奴が居るのか?”と云う位にマトモじゃない奴。
ベトナム戦争に参加した事を誇りにしており、携帯している銃を衝動的に他人に突きつけたりと、かなりの危険人物。
作中で起きる“殆どのトラブルの原因”であり、デュードの頭痛の種。
5年も前に別れた先妻への未練がたらたらで、彼女が再婚したにもかかわらず、未だに彼女との結婚を機に改宗したユダヤ教徒のままで、現在も彼女と同じシナゴーグ(ユダヤ教会)に通い、彼女からは好いように扱われている。
※故に、金曜日の安息日(シャバット=サバト)には絶対に働きたくない、動かないとゴネる。
極度のドイツ嫌い。
■“ドニー”セオドア・ドナルド・カラボッソス
演:スティーヴ・ブシェミ/声:小杉十郎太
デュードのボウリング仲間で元サーファー。
気弱でタイミングが悪く、何か言おうとしたり話に入ろうとする度にウォルターに遮られてしまう可哀想な人(ウォルターの癇に障る為)。
※ブシェミは前作『ファーゴ』での饒舌な役柄の反動から、今回の真逆のキャラクターを割り当てられたとの事。
尚、ブシェミはこの役について「誰がこんな役をやりたがるの?」と思った反面、役作りの中でドニーのキャラクターを気に入り、件のリュニオンの際には「ドニーはウォルターの頭の中にだけ存在している人間かも知れないwww」と発言して会場を爆笑させている。
■モード・リボウスキ
演:ジュリアン・ムーア/声:土井美加
“ビッグ”リボウスキと先妻の娘で前衛芸術家。
父親を嫌っている。
父親と共に理事を務める“リボウスキ財団(貧民相の子供達用の奨学資金制度を運営する非営利団体)”の運営資金がバニーの身の代金として使われた事を知り、受け渡しの当事者であるデュードに回収を依頼して来る。
前衛芸術家らしく(?)、奇妙な友人が多い。
■ジーザス・クインターナ
演:ジョン・タトゥーロ/声:井上倫宏
凄腕だが、色々な意味でやり過ぎ感(笑)漂うアマチュアボウラー。
特に物語には絡まないのだが、余りのインパクトからか何故かメインキャスト扱い。
ショタ専の同性愛者で、過去に“少年へのおっ広げ(局部露出)を犯した性犯罪者”として“厳重に監視されている”身分である。
■ジェフリー・リボウスキ
演:デビッド・ハトルストン/声:有川宏
作中で“ビッグ”リボウスキと呼ばれている大富豪。
下半身が不自由(※本人曰わく朝鮮戦争で傷めた)で、電動式の車椅子に乗っている。
尊大で常に他者を見下しており、一見すると“豪奢に見える”オフィスの所々にも、精一杯自尊心を満たそうとする様子が窺える。
■バニー・リボウスキ
声:高橋理恵子
“ビッグ”リボウスキの後妻。
金目当てで結婚したが目論見が外れ、街中から借金しているムチムチの金髪娘。
物語の中盤にて誘拐されてしまうが……。
■ブラント
演:フィリップ・シーモア・ホフマン
常に慇懃(無礼)な“ビッグ”リボウスキの秘書。
一癖も二癖もある主人や奥様に付き従う。
■ウーリ・コンコル
ニヒリスト集団のリーダー格。
ミュージシャン崩れで“カール・ファンガス”の芸名でポルノ映画に出演していた。
バニーとはポルノ映画で知り合った仲。
彼女と仲間(の中の人)にエイミー・マンとレッチリのフリーと、ガチのミュージシャンが交じっている。
尚、彼らの組んでいたバンド「アウトバーン」のモチーフは「クラフトワーク」である。
■ジャッキー・トリホーン
ポルノ業界にその人ありと言われる、名プロデューサーにして実業家。
金融業も行っており、バニーの借金の件でデュードを襲ったウー達の雇い主。
ヤクザの大親分みたいな人物で、多大な献金により、街(マリブ)の名士として地元警察からも絶大な信頼を得ている。
■ダ・フィーノ
私立探偵。
クヌートンなる人物の依頼により、ある娘の行方を探している。
■異邦人(ストレンジャー)
物語の語り部。
デュードを見守っている謎多き人物(?)。
コーエン兄弟作品ではお馴染みの、人の視点を越えた守護天使的なキャラクターである。
【余談】
※日本版ソフトには映画公開時に発売されたビデオを元にした旧版(VHS、DVD)と、11年に製作された新版(DVD、Blu-ray)があるが“旧版を知るファンからは新版の字幕、吹き替え共”に評判が悪い…事で有名。
原作のテンポを損なわずに視聴したいのなら、是非とも旧版を購入する事をお勧めする。
※ボウリングは、米国では“イケてない人々”の娯楽として親しまれている。
大衆文化と云う意味では各国共通なのだが。
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