矛盾都市TOKYO

ページ名:矛盾都市TOKYO

登録日:2015/10/12 (月) 16:45:01
更新日:2024/01/16 Tue 11:17:40NEW!
所要時間:約 17 分で読めます



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ライトノベル イラストノベル 川上稔 さとやす 都市シリーズ 矛盾都市tokyo 東京都 思い信じて打撃すれば、エネルギー保存の法則に従い、いかなるものも打撃力を受ける






じゃあ、僕が総長連合入れたら、僕を一度でいいから応援してくれ、それも心から。

じゃあ、私が総長連合入れたら、私を一度でいいから助けて頂戴ね、それも心から。


思い信じて打撃すれば、エネルギー保存の法則に従い、いかなるものの打撃力を受ける。


The 7th City
矛盾都市-ZENON CITY- TOKYO


矛盾都市TOKYO(ゼノン・シティ トーキョー)とは、川上稔の長編ライトノベルシリーズである”都市シリーズ”の一つ。
イラストは三作目の”風水都市香港”以降最新作に至るまで付き合いのあるさとやす氏。


尚、7th CITYとなっているものの、第一作”パンツァーポリス1935”と、
第六作”機甲都市伯林”が同じ都市の話であり1st CITYとして纏められているため、
都市シリーズとしては八作目にあたる(ゲーム版OSAKAも含めるなら九作目)。


都市シリーズ内においても少々特殊な立ち位置の作品であり、分類上はライトノベルではなくイラストノベル。
これは、元来アニメ調の挿絵を入れた作品が多く、
「漫画と小説の中間」とも言われるライトノベルより更にイラスト増し増しにしたモノであり、感覚的には絵本に近い。


その為か本自体も普通の文庫本よりデカく、むしろ単行本やゲームの攻略本あたりと並んだ方が違和感がない。
とはいえ、同じくイラストノベルな都市シリーズ作品である”創雅都市S.F”に比べると挿絵も少なく文章主体であるためそれよりはライトノベル寄り。


初出は電撃文庫発のライトノベル専門誌である電撃hpでの連載。
'01年02月発売のVolume.10から開始し'03年06月発売のVolume.24でフィナーレを迎えた。全十回。
前述したもう一つのイラストノベルである”創雅都市S.F”と掲載時期が被っていた時期があり、その際にはTOKYOとS.Fを交互に掲載していた。


現在は、作者による大幅な加筆修正と各回説明、絵師によるカラーページを加えた「総集編完全版」が通販限定で発売している。
(お求めはテンキーで。上記に書いてある”創雅都市S.F”も販売中だよ)
この「総集編完全版」は電撃文庫のイベント等でも販売している事も。


内容だけならこの「総集編完全版」を読めば問題ないが、完全版を謳いつつも実は電撃hp時代の作者解説「出張版DT」が載ってなかったりする。
しかもそちらの解説にも結構重要な事が書いてあったりもするため*1もし機会があればhp版も読んでみるといいかもしれない。



作風

基本的に1Pに収まるような短編というか掌編をいくつも重ねたような、
「掌編連作」とでも呼べるような構成になっており、どのページからでも読めるのが特徴。


同シリーズの倫敦や巴里、デトロイト等に代表されるように、
難解な設定で人を選ぶ作風が有名な同氏の作品であるが、
本作はそんな中でも特に人を選ぶ作風を持つことでファンのあいだでは有名。誰が言ったか奇書のたぐい。
その原因は大きく分けて「時系列」「世界観」「語り手」の三つにある。


まず時系列。
本作は「主人公の”僕”からアトランダムに引き出される記憶の回想」という形式をとっており、その為に時系列が完膚無きまでにバラバラにされている。
体育祭話の直後に文化祭の話があったり、高校時代の話の後に高校入学以前の話が来たりといった事がフツーに行われているのである。


ただ実際には、話毎に逐一状況説明を挟んでいるためそこまで混乱することは無く、
更に「総集編完全版」の場合には本編後に時系列表が用意されている為それを用いれば本当の時系列を知ることも容易い。


また、バラバラになっている時空列を正しく並べ直し、タイトルを読んでいくとある人物の語りになっている。
(この辺りは小説版激突のヘクセンナハトのタイトルにも似ている)
ちなみにシリーズ上の時系列で言うと、小説版OSAKAクライマックスの2か月後(エピローグの少し前)から始まり、後半ではゲーム版OSAKAと並行している。


次に世界観。
本作の舞台である「矛盾都市TOKYO」は都市シリーズ内においても屈指のトンデモ世界観を持つ。


それを端的に表しているのが、

星が地上に降りて舞って、風が電柱の上で歌を朗じ、思い信じて打撃すれば全てが打撃力を持つ、何もかもが完全でそれでいて不完全な街


という一文であろう。本作を未読の人にはよく解らないと思われるが実際にこんな感じの世界(というか都市)である。
まぁ世界観に関してはこの後もう少し詳しく記述するため、そちらを参照のこと。


最後に語り手。
主人公たる”僕”による一人称形式で進められる本作であるが、
その”僕”は所謂「信頼できない語り手」である事が作者により明言されている。
端的に言えば、本作には意図的に埋め込まれた「嘘」や「矛盾」が存在するのだ。


曰く「東京という都市の性格を考えたら本来いない筈の人や、起きるはずの無い事件が存在している」との事で、
そんな「矛盾」を探してみるのも本書の楽しみ方の一つであるが、その「矛盾」のせいで読み難さに拍車がかかっている事もまた事実である。


因みにこのあたりのくだり、電撃hpのおまけコーナーで触れられただけであり「総集編完全版」の方では一切書かれていない。


とまぁ色々とアレな部分ばかり記述してきたが、後書きにて作者自身がこの本の内容を「昔の俺達」と表している通り、
基本的には「フツーの青少年がバカやったり自己や人間関係に悩んだり」するだけの話であり、
その辺に覚えのある人ならばきっと何かしらの共感を持つ事ができるであろう。
これもまた一つの青春小説と呼べるんじゃないかなきっと。


あと今回はとっても薄いよ!(イラストノベルのため)



概要

都市シリーズは、多くの破滅と再生を繰り返した超遠未来の世界である”都市世界”の出来事を描いた作品群である。
そこは我々の世界と酷似した歴史を歩むものの、その中は、
人間以外の知性体である「異族」や巨大二足歩行兵器「」等といった我々の世界には存在しない異物が存在している。
(実際にはAHEAD前後で既に存在してるがその辺説明し始めると面倒なので割愛。詳しくは該当項目を参照のこと)。


本作もそんな”都市世界”の出来事を描いた作品の一つであり、その中でも(表題にもある通り)東京を舞台とした一作。


あらすじ

窓を開ければ夜風にタカられ、金具の海が津波を起こし、自動人形は時を奏でる。
あらゆる不条理が許容される矛盾と記憶で形作られた街――ここは矛盾都市TOKYO。


そんな東京で総長連合の副長を務める”僕”は「ある事件」を葬り去るため、自らの記憶を封印する事を決める。
”僕”が高校に入学し、副長を務めた1997年から1999年までの2年間の記憶を。


それは仲間たちとの記憶であり、”君”との記憶であり、
それ以外の十把一絡げの生徒たちとの記憶であり、風や星やその他諸々との記憶であり、
”君”の尻の記憶であり”令嬢”の尻の記憶であり”先生”の尻の記憶だ。


だが、記憶を封印するためにはそれらの記憶を一つ一つ思い出さなければならないらしい。
楽しい記憶も辛い記憶も、大切な記憶もそうでもない記憶も、真面目な記憶もエロい記憶もその全てを。


そして全てを思い出したとき、”僕”全ての記憶を失う。
再び誰かが”僕”を信じ、”僕”が”僕”の力を必要とするその時まで。


これはそんな、”僕”の記憶の物語。友人たちとバカやって、
本気で悩んで本気でぶつかって、そして本気でエロい事考えた、そんな日々の物語。



用語/設定

ここでは本作において使われている設定や用語について主要なもののみ簡潔に説明する。
尚、都市世界全体で使われている設定については冗長になるためここでは省く。
その辺について詳しく知りたい方はの項目を参照のこと。


○矛盾都市(ゼノン・シティ)TOKYO
本作の舞台となる都市。無論、現代の(我々の世界における)東京に相当する。
地名的には現在の東京とそう大差ないが地勢的にはかなり変化している。
主な変化は東側の地区。第二次世界大戦時に行われた東京大空白襲(誤字に非ず)の影響により、
三鷹以東の地区が陥没しており、その上に新たな地面を製造。これにより陥没した地区を「地下東京」、新たに作られた地区を「地上東京」と区別され呼ばれている。
ちなみに地上東京を流れる川越しに、夕日が地下東京にも届くそうな。


また東京大空白襲の影響はこれだけにとどまらず東京の中央部にあたる国立から三鷹の間の地面が消失し「東京大断層」と呼ばれる底の無い断層が形成されている。
そしてその断層の上では、戦争で使われた重騎の自爆による重力異常の後遺症から調布空港が空に浮いている
それ以外の地勢については言及されておらず、現代の東京とそう大差ないと思われる。
ちなみにリアルにおける電車はなぜか「エレクトレイン」と呼ばれている。



○矛盾力
TOKYOという都市の持つ都市理力。都市理力についてはここを参照。
本作の世界観を厄介にしている原因。この「矛盾力」を持つため、TOKYOは文字通り「なんでもあり」の世界となっている。
その一例としてよく挙げられるのが「擬人化」である。例えば夜に吹く「夜風」や、西から吹く「西風」。
それだけではなく、「音」や「気温」、更には*2「星」や「月」のような宇宙からの来客も擬人化されたアバターとしてこの都市には在るのだ。
また、一部のTOKYO住人は矛盾力を用いた「記動力」という力を振るうことが出来る。


○記動力
記動力とは、TOKYOの住人の一部が使う事のできる特殊能力である。
記動力はTOKYOの持つ矛盾の力を源泉として発動するものであるが、それ以外に関してはあまり多く語られてはいない。


ただ、作中の描写から、矛盾力同様に「なんでもあり」に近い性能を持つことは解っている。


例えば主人公の”僕”は「思い信じて打撃すれば、エネルギー保存の法則に従い、
いかなるものの打撃力を受ける」という記動力を持っているが、これは端的に言えばどんなものでも打撃する事のできる力である。


「打撃」という単純な力であるが、その「打撃」を及ぼす事の出来る範囲がとてつもなく広いのだ。
「人」や「物」は勿論、「未来に存在する矢」という現在に存在しないものや、
「重さ」や「風邪」のような形すら存在しないもの。
果ては「ラーメンの不味い部分」や「車の遅い部分」といったよく解らないものまで殴る事が出来る。


コレに代表されるように記動力は、とにかく効果範囲がとても広く、寧ろほぼ出来ないことはないとでも言えるような能力を発揮する。


因みに……というか当たり前の事ではあるが、起動力は一人ずつ違うものであり、一つとして同じものは無い。
ただ、効果の汎用性で言えばどれも似たようなものである。


なお2022年2月にウェブサイト『カクヨム』「川上稔がフリースタイルで何かやってます。」で公開されたコラム『『都市シリーズ全体』都市ごとに世界のルールが違う”都市世界”』によると、
TOKYOは「固有名称のない、あやふやな世界」なため、「記述することでルールを確定」する事で記動力を振るえるそうな。


また2022年12月・2023年1月に『カクヨム』で連載されたウェブ小説『無明の騎士』(現在は閲覧不可能)にも登場。
こっちでも効果や汎用性、東京人限定なのは本作と変わらないが、「流体操作技術の一つ」「世界のルールを一定期間(一回に付き「一節分」の時間)”書き換え”て、次に起こす行動を強化する」とされている。


○総長連合
作中の日本にある、学生のみで構成された学生向け自治防衛組織。初出は『OSAKA』から。
かつてWW2後の学生闘争期、大人を子供同士の争いに介入させないという意志から誕生した「番格制度」によるもので、各都市圏ごとに存在。
構成員は寺院がある自然豊かな「御山」で訓練と選抜試験を受け選ばれた精鋭達で、最強の戦力たる「総長」をトップにナンバー2武力の副長・副長補佐・特務・広報等からなる。
なお、由来は恐らく世界観的に遠い過去となる『境界線上のホライゾン』の同名組織だが、そっちの方では副長の方が最強で総長の方はリーダー力や成り行き等純武力は低めな面々もそこそこいたり。


○私立西秋川高等学校
主要人物たちが通う高校で、名前は第一記の挿絵から。
都市シリーズの高校らしく、女子寮が数百棟もあったり、体育祭に重騎ダイビングがあったり、学園祭が5日間ぶっ通しだったり。
近所に五日市線*3の「西秋留駅」(リアルでは後に秋川駅と改名)があるため、本作の主な舞台は現実で西秋留駅のある「あきる野市」(都市世界で市町村合併がされていないのなら秋川市*4)だと思われる。


○神田時館の自動人形
その名の通り東京は「神田時館」と呼ばれる時計台に存在する「時詠み」の女性型自動人形で、かつて英国より贈られた「BENDAUGHTER」のスペアパーツから創られている。
オリジナル及びサンフランシスコのBENDAUGHTERは単に時計台から時報の歌を詠うだけなのだが、なぜか神田時館の「彼女」は時虚遺伝詞にアクセス可能で、老朽化が深刻な作中では調子を悪くする度文字通り時間が乱れるエライ状況となっている。
そんな危うい存在ゆえか、国連から1999年に耐用期限を迎える際「廃棄」されるように命じられているが、度々「彼女」の調整を担当していた令嬢等それを惜しむ声も存在。
また星々の中でも男爵位を持つ「ケリー・パンサム彗星」にある理由から大切に思われており、「彼女」と「彼」、そしてそれを取り巻く諸々の勢力の動向が、本作後とんでもない事態へと繋がることに…。




登場人物

TOKYOに登場するキャラの内、主要なものだけを示す。
尚、TOKYOという都市はその性質上「本名を知る」事に意味があるため、登場人物は全て代名詞で呼称されている。


主人公にして語り部。東京圏総長連合の副長を務める。


遺伝詞的には飛場・竜二とか日坂・勝意あたりの系譜だが被害者ではなく加害者枠。
ややエロどころか割とオープンにエロ。どうも乳よりも尻派の模様。得意技はブラのホック外し。
学生による治安維持組織である「総長連合」のNo.2を務めるだけあって戦闘能力も高く、言葉より先に手が出ることもしばしば。
何故か彼だけ個別項目があるため詳しくはそちらで。


後にデトロイトのコラムで彼らしき人物がやったあることが書かれている。


  • ”君”

ヒロイン。東京圏総長連合の第一特務を務める女性。


”僕”の中学時代からの同級生。
”僕”とは悪友のような腐れ縁のような間柄。
その関係もあってか”僕”のボケやエロ行為に対してツッコミを入れる事が多い。
”先輩”に憧れを抱いており、”先輩”を追っかけて西秋川高校に入学する。
総長連合入りも”先輩”を追っかけてのこと。


遺伝詞的には恐らく新庄・運切の系譜……というかカラーページを見比べると顕著だが、キャラデザ的にも結構新庄とかぶっているところがある。


東京圏総長連合の第一特務を務めるものの、第一特務は基本的に諜報を専門としているため、戦闘力はそれ程高くない。
彼女の記動力である「言葉のやる気は熱量になる」も「他人を応援することで対象を強化する」能力であるため直接的な戦闘には向かない。
また、”僕”によれば、この記動力にしても滅多に使用されないらしい。実際、作中で彼女の記動力が使用されたのは二度のみであった。


(時系列的は)物語の途中から、大太郎という名の白狐の仔を飼う事になり、以降は殆ど常に大太郎を連れて歩いている。
実家は薬局。普通の医薬品から色物医薬品まで手広く扱っている。何も無い時は実家を手伝っている模様。


いい尻の持ち主その1。


  • ”先輩”

東京圏総長連合総長の男性。呼称の通り”僕”から見たら先輩にあたる。
白皙の美貌と長い黒髪が特徴的な長身の麗人。斬撃系の記動力を持つためか常に日本刀を所持している。


現総長連合で唯一の3年生。前述した通り”僕”や”君”の先輩であり、”君”にとっては想い人でもある。
極度の心配性で、常に何がしかの事を心配している。そして心配の種が他人の場合、
殆どは「心配しすぎて自分が斬り殺してしまわないか心配だ」という結論に落ち着く。
……こう書くと危ない人のようであるが、普段の言動は(極度の心配性であることを除き)冷静で穏やか。
何かの問題の際にも熟考の上に結論を出すことのできる大人物。
”僕”を始めとする総長連合の面々にも信頼を置かれている。


実は人間ではなく異族。
前述したように異族とは「人間以外の知性体」の総称であるが、
彼は異族の中でも吸血系の鬼族というものに該当する。要するに吸血鬼のようなもの。
その為種族的特性として、人間よりも長い八重歯を持つ。当然ながらこれは吸血用であるが、
吸血をしてしまったら否応無しに「同族」が増えるらしく、自ら進んで誰かを吸血しようとは思っていない様子。


記動力は「思い信じて斬撃すれば、いかなるものも分詞結合を砕かれて断ち割られる」というもの。
云わば”僕”の記動力の斬撃版みたいなもんである。


”僕”が記憶を失う事となった「ある事件」を起こした人物であるがその理由は……。


  • ”雪の字”

東京圏総長連合副長補佐の女性。形式上は”僕”の部下にあたる。
長い黒髪をポニーテールにした和装の少女。


やや堅物で融通のきかない性格。が、それが行き過ぎて天然ボケになることも。
記動力が斬撃系な事もあり、取り敢えず斬ってから考えようとする傾向にある。
父親は”大佐”と呼ばれる軍属の男性。
彼女の堅い性格は”大佐”から受け継がれたものなのかも知れない。
雪の字が進学先の高校を決めた理由は「寮があるから」、面談に来る父親を待ち受け刀を磨く等、どうやら彼女は父親に対し反発しているようだ。
”僕”とは一度、御山*5における副長の座をかけた試験で争った事があり、その為か”僕”の部下でありながら微妙に連携していない。
彼女自身、”僕”に対してはある種のわだかまりを持っている様子。


実は胸を病んでいる(病名は不明)。
御山での試験での敗因の一つに試験中に発作が起きた事があり、上記のわだかまりはその辺の事情も関係している模様。
因みにこの胸の病に関しては総長連合では”僕”しか知らない事実。


記動力は「女の触れたものは何でも武器となる」。
その名の通り彼女は自らの持ったものを(恐らくは剣系の)武器として扱う事が出来る。
作中においては、「筒状に丸めた紙」を武器とする事で「運命線」を断ち切ったり、
「大気」を武器とする事で風の刃を形成したり、「相手の拳」を握って武器とする事で自ら傷付けさせようとするという使い方をしていた。
またこれを応用することで、車をポケットに入れていたりもした。


  • ”大将”

関西から来た(名古屋弁も話せる)転校生。後に総長連合の第二特務となる。金髪リーゼントにグラサンをかけた青年。


ノリのいい性格の青年。総長連合員で唯一”僕”と同年代かつ同性ということもあり、”僕”が気楽に付き合える数少ない友人の一人。
その人あたりのいい性格から、総長の”先輩”や副長の”僕”が多忙なあいだ、彼らに変わって総長連合の指揮を取る事も。


実際、「ある事件」が起きた際には”僕”を始め、
総長連合のほぼ全ての人員がそちらに関係していたため、彼一人で他の全ての雑務をこなしていたらしい。


常に真っ赤なアメ車を乗り回しているがこれは記動力の為に必要なもの。
そんな彼の記動力は「加速は無限に重ねることができる」というもの。
車のギアを最大まで上げた状態で、ギアを一気に一速まで戻す事で「ギア最大の状態の一速」として扱う事が出来る。
これを無限に繰り返す事でどこまででも車を加速させる事が可能。
起動力の性質上、危急時における総長連合の足として使われる事が多い。


  • ”令嬢”

神罰都市・横浜からの転校生。後に総長連合の一員となる。緑髪の小柄な少女でメガネっ娘。
ちなみに作中での先輩発言からすると役職は広報らしい


控えめな態度で真面目さの目立つ少女であるが、川上作品のキャラという事でなかなか狡猾な側面も持つ。そしてボクっ娘
”令嬢”の呼称の通り横浜育ちのお嬢様であるらしいがそれ以上掘り下げられる事は無かった。
東京の方に転入してきたのも、横浜に何らかのわだかまりがあっての事らしい。


共鳴するものの性質は等しい」という記動力を持つ。
これは音の共鳴により多数のものの性質を等しくする能力であり、
作中においては「歪んだ線路の音」と「自分の奏でるまっすぐで淀みない音楽」を、
共鳴させる事で線路を真っ直ぐで張りのある状態へと戻したりといった使い方をしていた。


”君”同様、基本的には補佐役であり直接的な戦闘には参加しないが、
作者が「なにげにかなり万能な能力」と語っている通り、「音」さえあればどんなものにでも影響を及ぼす事が出来る為、戦闘以外の面で多様な活躍を見せてた。


いい尻の持ち主その2。


  • ”先生”

”僕”のクラスの担任。一応書いておくと伯林の”先生”とは別人。


川上作品で女性で先生と言えば大体が超有能か超ポンコツの二つに分かれるが、彼女もそんな例に漏れずポンコツな方の先生。
終わクロを読んでいる人であれば大樹先生な方の先生と言えばだいたい通じるか。
特技はチョークを変化球として投げること。


そんな彼女ではあるが教師という職に対しては真摯な姿勢で向き合っており、
そんな態度が周りの人々には好意的に受け入れられているため(失敗することも多いが)人望は篤い。
実際、普段は彼女を弄り倒して泣かせる事も多い”僕”も、彼女を「大人」として見ており、「ある事件」の際には(その事件の内容は伝えていないが)彼女に助言を求めていた。
彼女もまた、川上作品でよく見られる「子供を導く大人」の一人なのだ。


いい尻の持ち主その3。


  • ”博士”

科学部部長で”僕”の悪友。”僕”にしては珍しく、同世代でありながら総長連合と関係ない知人。
眼鏡に白衣のヒヒみたいな顔をした男。
ある日突然ラーメン食べてる”僕”に話しかけてきて、そのままなし崩し的に交友関係を持つこととなる。
”僕”の事自体は(その記動力を含め)出会う前から知っていた模様。


作中屈指のトラブルメーカー。作中で起こる事件の幾つかは彼の生み出した発明品やトンデモ理論、
あるいは余計な行動の結果であり、放置していれば世界が滅びるような自体も幾つかあったらしい。
実際その辺の問題は毎回総長連合が出張って解決して”博士”を殴り飛ばす事で収束するのであるが……それでも懲りずに新しい騒動を起こしては殴り飛ばされている。


ただ、技術力自体はあるらしく、”僕”が記憶を封じるために用いた器具を作ったのも彼であった。


  • ”小坊主”

体育祭チョイ前に総長連合の副長補佐となった1年B組所属の少年で、蹴りで発動する”僕”に似た記動力の持ち主。
…が、初っ端から先生へかくし芸「ブラホック外し」をした直後だった”僕”に蹴りつけるも「小坊主」と命名され、
一撃KOの上全裸校庭さらし者の刑執行という気の毒な目に遭ったため影が薄い(しかもこの後もう一回全裸の刑を喰らう)。
だがゲーム版OSAKAの主人公と”僕”が元同級生な事を知った後、彼にどこかの逃がし屋の口癖と似た発破をかける言葉を叩きつけた。




備考/その他

●実はこの矛盾都市TOKYOという作品、未完である。
いや、作品自体は完結している。ただこの作品、結局”僕”は記憶を失い、
”彼女”は目覚めず、”先輩”は死亡するというどちらかというとバッドエンド寄りの終わり方をしている他、幾つもの伏線や謎を残したまま終了する。


と、いうのもこの作品の続編として「長編版TOKYO」というものが存在し、
著者自身も「いずれ書かれる」とは言っているものの結局未だ発売していないのである。


本作の後書きにおいて作者自身、「自分には未だそれを書く実力が無い」と明かしているが、
そんな本作ももう十年以上前の作品であり、都市シリーズから入ったカワカミャー達にとって、


「長編版TOKYOマダー」


は一つの合言葉と化しつつある。長編版TOKYOマダー。


●因みに現時点における事実上の都市シリーズ最新作である電詞都市DTにおいて「次の都市は倫敦」と明言されており、
もし今都市シリーズが再会されたとしても長編版TOKYOまでの道のりはまだ長い。


●一応、長編版TOKYOの大まかなストーリー自体は明かされている。
この辺は本作の後書きや、ネット上でも色々な場所で見られるためここでは割愛。
一応DTは読んだけどTOKYOは読んでない、そしてあらすじも知らない人向けに言うとBABELでやろうとしたあれやそれやの原因になった事件のお話である。

+ ネタバレ-

2022年2月、川上稔25周年記念としてウェブサイト「カクヨム」の「川上稔がフリースタイルで何かやってます。」内にて、川上氏の過去作を『境界線上のホライゾン』キャラによる対話形式で振り返るコラムが掲載。
だがその中の「『都市シリーズ全体』都市ごとに世界のルールが違う”都市世界”」ラストにて、「”都市世界=CITYの現存記録”」からの引用という形で「(『長編版』の事態の結果)世界が壊れた」という衝撃の新事実が判明。
何でも、川上氏がこれから発表する新シリーズ世界観”LINKS”がCITY崩壊後の再生した世界であり、この後描かれるLINKS作品でそのあたりの詳細が分かるかも知れないそうだが…。
また2022年8月に川上氏の『神々のいない星で 僕と先輩の超能力00学園』メロンブックス上下巻連動特典冊子にて、都市世界がLINKS世界へと変わる切っ掛けになったTOKYO閉鎖後の「東京大解放」なる事変の名が登場。
…川上氏公式PIXIV FANBOX内のLINKS世界作品「主任さんと後輩君」にて、「かつて殆どの関係者や建物が情報ごと世界から除外され、存在情報が残った(生存)のが僅か36名の災厄『■■大解放』があった」なる情報があり、恐らくそれと同一と思われる。
ちなみに「主任さんと後輩君」時点で既に『■■大解放』の時子供だった人が社会人になるくらいの時間が経過しているそうな。




●本作を読みすすめて見れば解る事だが、作品内でのさとやす氏の絵柄の変化が非常に激しい。
都市シリーズの絵柄から終わクロの絵柄への変化が非常によくわかる。
その辺の変化の影響を最も受けたキャラクターは恐らく「雪の字」。
見比べると体つきの面でもかなり変化しているため一目には同一人物と解らないレベル。


●時期が被っていることもあって、ゲーム版OSAKAの話題が出る事が度々ある。
というか”僕”がゲーム版OSAKAの主人公の知人(一方的にであるが)。


●作者曰く「ブラ外しは瞬間的な握力勝負」との事でひょっとしてあんたやったことが(ry















寒いな、と思ったとき、僕は思わずに右腕を振っていた。


だが殴ったくらいで風がなくなるはずもない。


自分でも何でそんなことをしたのか解らず、そこにおかしみを感じて僕は小さく笑う。


ただなんとなく、風が殴られて揺れたように思えたんだが、錯覚だろうと僕は思い直す。


帰ろう。


僕のとりあえずは帰るべき場所へ。


to be continued……


追記・修正よろしくお願いします。


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  • 代理作成していただいてありがとうございます。氏のブラ外し、確か男どうしで練習した的なことをどっかで聞いた事あったと思ったんですかちょっと文章見つからなかったのでこういう形になりました。もし発言に覚えある方いらっしゃいましたら修正して頂ければ幸いです -- 名無しさん (2015-10-12 19:33:16)
  • 懐かしいな。初めて読んだ時は足穂の一千一秒物語を連想しながら読んだ -- 名無しさん (2015-10-14 19:41:11)
  • 作中の話なら、佐山・御言と佐山・薫が男同士で練習したってのは言ってたが -- 名無しさん (2020-02-20 22:53:04)
  • ここに来て急に「長編版」の先で大惨事が起こった事が判明。その後川上氏の次回作予定の新世界観「Links」に繋がるそうだが…。 -- 名無しさん (2022-02-21 00:23:53)

#comment

*1 都市世界の世界観全体に関する事も、本作TOKYOのギミックに関する事も
*2 本来、大天蓋に覆われている都市世界では不可能な筈の
*3 なお「国鉄」と冠されるため、都市世界では国鉄民営化は行われなかったと思われる。
*4 なお本作後に書かれた(時代的には本作よりはるか過去)『終わりのクロニクル』で主人公達が通う「尊秋多学院」も秋川市にあり、『境界線上のホライゾン』の「武蔵アリアダスト教導院」は秋川市が出来るのと同じ「奥多摩」に存在。ウェブ作品『神々のいない星で』で舞台となる学園都市は近所の立川市に作られている。
*5 総長連合志望の者がそれに相応しい力をつけるための修行場兼試験場

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