ベクトル(物理)

ページ名:ベクトル_物理_

登録日:2011/04/13(水) 13:02:42
更新日:2023/08/09 Wed 11:50:47NEW!
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物理 メデューサ ベクトル 指向性と嗜好性 一方通行 ←アクセラレータ jelly→ 物理学項目




「ところで、俺のコイツを見てくれ」


―――――→


「こいつをどう思う?」




「すごく…矢印です…」




【はじめに】


冒頭の矢印は「『右向き』に『全角6文字分の長さ』」という情報を持っている。


真っ直ぐ走行中の車の速度を同様に考えたとき、
「『前向き』に『時速50kmのスピード』」として上記の記述に当てはめることができる。


このように指向性を持つ物理量として扱えるものを、我々はまとめてベクトルと呼ぶ。


言葉として誰もが見聞きしたことはあるだろうが、ここ数年は某一方さん絡みでますます知名度を上げているかも(?)。


このベクトルという概念について、項目で改めて触れてみたい。




【ベクトルとスカラー】


身の回りの物理量(長さを示すメートルなど)には2種類がある。


1つは既に挙げたベクトルであり、残りをスカラーという。


◆ベクトル:向きを持つ物理量
例:速度、重力、電流など


◆スカラー:向きが無い物理量
例:速さ、質量、身長、金額など



ベクトルとして「速度」、
スカラーとして「速さ」というように、物理の世界では明確に区別して定義されている言葉もある。


ここから予想が付くだろうが、ベクトルから向きを取るとスカラーになる。


ただ身長や金額などのように、対応するベクトルが無いスカラーもある。


円やドルが「どこを向いた量なのか」なんて定義できないし。



実際に数式内で扱うときには、


速度の場合:
目指すゴールに対して逆方向に8m/sで走ると-8m/sとして扱う


速さの場合:
「大きさ」(絶対値ともいう)だけを扱うので、ベクトルの向きに関わらず常に8m/s


…とこんな感じになる。




【ベクトルの合成】


「複数のベクトルが同一の対象に働く場合、それらを足し合わせて一つの合成ベクトルとして扱える」という性質がある。


氷上を滑るカーリングの玉を例に挙げると、
横から押した時に元々の前向きの運動量に横向きの力が加わり、進路(運動の向き)が斜めに変わる感じ。



数字を絡めて別の例を紹介しよう。


例えばA君の手をFという力で引っ張るとき、


1)a子ちゃんとb子ちゃんが2人とも右に引くと、A君は2倍の力で右へ引っ張られる
2)a子ちゃんが右、b子ちゃんが左に手を引くと、A君は突っ張って動けない


ということが起こる。


常識で考えれば当たり前のことだが、これをベクトルで考えると次のようになる。
右向きをプラス方向とするなら、


1)
a+b
=F+F
=2F


2)
a+b
=F+(-F)
=0
(「+(-F)」は力が左向きの為こうなる)



2)は合成ベクトル(働く力の総和)がゼロになっており、A君はその場から動かないことが式から解る。


ただし両側から引っ張られている状況は変わらないので、A君は普通に痛がっていることだろう。



しかしこの状況、1)は両手に花のデート中だとして、
2)はもしかすると修羅場の真っ最中なのかもしれない…。




これまでの内容を一部含みつつ、話は変わる。


仮に物事に対する好感をプラス、嫌悪感をマイナスとする。


甘いものが大好きなら
―――――→


ワインはちょっと苦手なら
←―


これにより、人の嗜好をベクトルで表せる。


「何かの刺激に対しどう反応するか、またその度合いはどの程度か」という事になるが、蒼崎橙子のセリフに興味深いものがある。


曰く「人格というのは医学的に個人が外部からの刺激に反応し、それに対応する現象と表現される」との事。
たぶん似た事柄を示すのだろう。




ともかくこれを念頭に置き、真面目な学級委員的ヒロイン(A)とちょっとだらけた感のあるギャルゲー主人公(B)の恋愛模様を考えてみよう。



まずお互いをそこまで知らない序盤では、AはBに価値観の違いなどから反感を持つだろう。


お約束の展開で序盤はBが嫌われるイベントが続き、Aの心中にはベクトルaが発生する。


a:不真面目
←―――――


つまり、大嫌いであると認識する。



しかし様々なイベントを経て、少しずつ好感の持てる箇所をBの中に見出していくA。


b:困った所を助けてくれた
―→


c:実は照れ屋で優しい
――→



そしてBに対する合成ベクトルがプラスに傾く辺りが佳境となる。


「私、彼のことが好き…なの?」
みたいな。



そこに時おり、


d:今まで厳しく当たってきたのに、恥ずかしくて優しくなんかできない!
←――


といった嫌悪によらないマイナスのベクトルが生じることも。


いわゆるツンデレである。



…展開が安直で申し訳ないが、実際こういうパターンのギャルゲーもあるのではなかろうか。




実際の人間関係では、誰かに一旦嫌われるとそれを持ち直すのは思った以上に難しい。


しかしマイナスのベクトルも、スカラーに直せば関心の「大きさ」を示すバロメータに変わりはない。


初対面の相手に対しては、全くの無関心を取られるよりは、ほんの少し嫌われて印象を残すのもアリなのかも?


もちろん、責任は取れないが。




ちなみに言い方を変えるとベクターになったりする。



ここまで物理的(というよりも高校数学的)なベクトルについての説明を述べたが、現代数学的な意味でのベクトルについても少し補足しておく。
先程「向き」と「大きさ」のある量をベクトルと呼ぶと説明したが、これは数学的には誤りである。
数学的には、まず体と呼ばれる空間を定義し、次に体上のベクトル空間と呼ばれる空間を定義し、さらに体の元をスカラー、そのベクトル空間の元のことをベクトルと呼ぶ。
しかし、高校数学ではベクトル空間の概念が登場せず、また理系なら大学で学ぶ線形代数でも数学科以外の学生を対象とした講義ではほとんど行列を用いたユークリッド空間の話しか出てこないため、正しくベクトルという概念を理解している人は少ないと思われる。
恐らく大半の人は「ベクトルというのは矢印のことだ」などと思っているのではないだろうか。
とはいえ、厳密にベクトル空間について論じるのは結構難しく、それも仕方のないことかもしれない。
例として、スカラーa, bとベクトルv, wに対して
(1) (a + b)v = av + bv
(2) a(v + w) = av + aw
(3) 1v = v
が成り立つことは高校生でも知っているが、(1)と(2)の違いをきちんと説明できるだろうか?よく似ているが数学的には全く違う主張である。
(1)では両辺ともに「+」の記号が含まれるが、その違いについて説明できるだろうか?同じ記号を使っているが、この2つは違う意味で使われている。
(3)の等式の意味を説明できるだろうか?中学や高校では「1は省略して書かない」などと教わるが、それは厳密には正しくない。
こんなことをそこらの高校生相手に言ってもまともな返答を期待するほうが無理だろう。
高校数学で「「向き」と「大きさ」のある量をベクトルと呼ぶ」などと説明するのは数学的には誤りである一方、教育的には正しいのだろう。
きちんと数学的にベクトル空間を扱う方法を学びたい人は「線形代数学」などとタイトルに書いてある本で勉強することを勧める。



追記・修正お願いしま―――――→す。


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  • ベクトルというよりも幾何ベクトルだな 一般的なベクトル空間の方が面白いけどな -- 名無しさん (2015-12-28 23:48:42)

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