病理

ページ名:病理(青年)

ICは病的なのか

ICが客観的な裏付けのない架空の存在であるにも関わらず、空想とははっきり区別される実在感を持ち、本人がそれと対話している…というのは、青年期においては病的とも呼べる。

 

しかしICは、本人はその架空性を意識しており、自己違和的でもなく、現実生活の障害になっているわけでもない。また、ICを治療の協力者とすることも可能である。

一方で、ICがいることで保たれていたバランスが崩れた結果、ICが本人の主体を奪い、本人の行為を支配することがある。そうなると明らかに病的なものとして扱われる。

ICは、有益に働く場合もあれば、深刻で危険なものに発展する可能性もある。

 

ICは何らかの幼児期の葛藤を原因として生じるケースが多いが、青年期以降に精神病質的な兆候を示す大人は、幼年期にICを持たなかったという場合が多いという。

 

どのような疾患でみられるか

解離性障害、転換性障害、適応障害、境界性パーソナリティー障害などでみられる。自閉スペクトラム症では異なった状態のものが報告されている。

 

治療の協力者

ICは治療対象というよりも、治療を促進するものとして援用することができるという。

 

澤(2009)は、以下のようにまとめている。

葛藤の言語化が困難な患者においては,ICの発現状況と発言内容を吟味することで葛藤の所在が明らかになり,洞察に導くことができる。また,治療が膠着した場合には,ICは患者の利益のために患者と治療者を結ぶ架け橋となることがある。ICは患者が自力で問題に対処できるようになると,廃用委縮的に消失するようである。

 

参考文献・引用文献

  • 澤たか子 『イマジナリーコンパニオン』 精神科治療学 24(8), 1013-1015, 2009.
  • 澤たか子・大饗広之・阿比留烈・古橋忠晃 『青年期にみられるImaginary Companionについて』 精神神経学雑誌 104(3), 210-220, 2002.
  • 富田昌平 『子どもの空想の友達に関する文献展望』 山口芸術短期大学研究紀要 34, 19-36, 2002.

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