ICと超自然的解釈

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ICと超自然的解釈

ICの捉え方の中には、神や霊魂など超自然的なものとの交流の表れとして理解しようとする立場もある。ICを超能力と関連させた本も存在する(荻洲照之訳『子供はみんな超能力者』)。

 

しかしこれは現在では否定されている。富田(2002)によれば、ICがしばしば子どもの憧れや願いを反映していたり、ときに身代わり役になったりするなど、子どもにとって極めて都合の良い存在である場合が多いためだという。

 

親の捉え方

特に、親が超自然的な解釈をすることがある。

 

例えば富田ら(2015)は、Taylorらはインドのヒンドゥー教徒の親たちとアメリカのキリスト教根本主義者の親たちによる次のようなICの解釈を紹介していると述べている。

 

インドでは空想の友達の事例はほとんど報告されないが,それとよく似た現象として子どもによる前世の記憶の事例がしばしば報告されている。インドの親たちは子どもによる前世の記憶を真実として受け止め,子どもが7歳に達するまでは前世の記憶を鮮明に思い出せるように積極的に手助けする。しかし,子どもが7歳を過ぎてもなお前世の自分と通信している場合には,親たちはそれまでとは逆に,子どもが過去の自分に執着し過ぎて現在の自分を推し進めていくことを怠るのではないかと心配し,むしろ前世の記憶など存在しないのだと子どもに教えるようになるという。

 

アメリカのキリスト教根本主義者のコミュニティに住む親たちの中には,空想の友達を悪魔の使いとして解釈し,子どもが空想の友達との遊びを始めた場合には,辞めるように強く促すことが報告されている。そうした親たちは,空想的存在が登場する物語さえも,「真実のかけらもない嘘」として遠ざけようとするという。

 

しかし、このような親のもとであっても、子どもはICをつくり出し、一緒に遊ぶという。

 

また、富田ら(2015)は日本の親に対して調査を行っている。

幼児期には肯定的な解釈が多いが、児童期になると否定的な解釈をする割合が多い。超自然的な解釈は幼児期の子どものICに多い。

 

幼児期において否定的態度が示される場合には,神や霊魂など異界との交流を疑うような超自然的解釈が児童期と比べて多く見られた。このことは,自然物にも意識や魂が宿るとするアニミズム思想や超自然的な領域から人間に対して警告を与える存在と考えられている妖怪についての伝説が,我が国において古くから信じられてきたという文化的背景も影響しているかもしれない。加えて,「7歳までは神のうち」という言葉にも見られるように,我が国では古くから七五三をはじめ儀礼上でも子どもは神霊に近く,神霊に保護される存在であると考えられており,故に幼児期では超自然的解釈が多く見られたと考えられる。

 

児童期に空想の友達を持つことは,一般的に認知されている発達過程から逸脱する行為であり,子どもの中で何らかの不適応が生じているのではないかという懸念や心配が,空想の友達に対する親の否定的態度へとつながったものと考えられる。さらに興味深いこととして,否定的態度の中でも,空想の友達の出現を子どもの精神的な病気や異常の表れとして解釈するような精神病理学的解釈が,児童期には幼児期と比べて多く見られた。

 

参考文献・引用文献

  • 富田昌平・本藤沙也香 『子どもの空想の友達に対する親の態度』 心理科学 36(1), 40-53, 2015.
  • 富田昌平 『子どもの空想の友達に関する文献展望』 山口芸術短期大学研究紀要 34, 19−36, 2002.
  • 麻生武 『想像の遊び友達 その多様性と現実性』 相愛女子短期大学研究論集 36, 3-32, 1989.

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