機能

ページ名:機能(子ども)

Nageraは1969年にICの機能と役割をまとめている。これらをまとめて「願望充足的」だとしている。

 

大矢(2008)より引用する。

1)超自我の補助機能

超自我が十分に確立していない年少の子どもは,両親による外的なコントロールを必要とする.ICは,超自我が十分に確立されるまでの間,外的なコントロールとのギャップを橋渡しする.すでに確立した超自我を持つ年長の子どもの場合,ある特定の欲求不満や葛藤状況で,ICは短期間超自我を支える補助機能を果たす.

2)受け入れがたくなった衝動の発散のための手段

上記の反対のことで,内在化された超自我の禁止あるいは両親の禁止のために,自分自身の中に受け入れがたくなった衝動をICという形で具現化する.

3)スケイプゴート

現実の困難さを乗り越えるために,子どもの悪いことや否定的な衝動のすべてを引き受けさせられる役割を担うものとしてICを頻繁に利用する.

4)全能感を遷延させる試み

幼児が母親との分離を意識し始めると,その全能の力が自分ではなく親にあるのだという事実を受け入れることが必要になってくる.統制力と全能の力をもつICを作り出すことで,全能感を保持し,母親からの分離やそれによる無力感を否認し,攻撃衝動をコントロールし,能動的で自発的な自己を現わそうととする.

5)原始的な自我理想の人格化

親から拒絶されていると感じている子どもは,良い子で,賢くて,強くて,清潔で,攻撃性を示さない愛らしいICを作り出す.

6)孤独感や無視され拒絶されている感じを埋めるもの

子どもが孤独感を抱いたり,無視されたり,拒絶されていると感じることが,最もICを作り出す動機付けになる.忠実で信頼しうるICを作り出すことで,その寂しさを埋めようとする.そして適切な現実の友人ができることにより,ICが消失することが多い.

7)退行や症状形成の回避

深刻なストレスがICを作り出し,ICが子どもの退行や症状形成を回避する。

 

ICがいることは豊かな知性と想像力を示すものともされる。

また、子どもにとって発達促進的な役割を持つ。この場合は、子どもとICは仲間関係であるか、支配従属的な関係であるとされる。迫害的関係ではない。

 

ICは子どもの発達を促進する健康的な現象である。一般的には病気の症状でも将来の病気の発症を示唆するものでもないとされる。

 

参考文献・引用文献

  • 大矢大 『想像上の仲間imaginary companionという現象 解離性同一性障害における交代人格との異同』 思春期青年期精神医学 18(1), 63-81, 2008.
  • 澤たか子・大饗広之・阿比留烈・古橋忠晃 『青年期にみられるImaginary Companionについて』 精神神経学雑誌 104(3), 210-220, 2002.

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