交代人格

ページ名:交代人格

交代人格とは

定義

大矢(2008)によれば、Kluftは交代人格を以下のように定義している。

堅固で持続的で確実な自己感覚および刺激に対する反応性に関して特徴的な整合性のある行動と感情のパターンのある存在である。それぞれには,ある種の機能,ある種の感情反応,その交代人格独自の意味のある生活史がある。

また、交代人格は解離性同一症の中心的な症状である。様々な交代人格が入れ替わり立ち替わり患者の行動を支配する。

平均して13.3~15.7の交代人格があるという。

人格システム

全ての交代人格と意識そして無意識を含めた心の全体を「人格システム」という。

交代人格や人格状態の断片などは、一人の独立した人間ではなく、あくまで人格システムの一部分であり、パズルの1ピースのような存在である。

交代人格の機能

大矢(2008)は、交代人格の機能について、外的世界に関するものと内的世界に関するものがあると言う。

外的世界に関するものは、患者が一人の人間として機能するのに必要な、仕事をする、家族を養うなどといった個別的な機能がある。

内的世界に関するものでは、心的外傷の記憶を担うこと、交代人格同士で情報を伝え合うことなどがある。

 

また、交代人格にはいくつか種類があるとも言われている。

例えば、迫害者人格はかつての虐待者を取り入れたものと考えることもできる。しかし同時に怒りと猜疑心によって患者を外敵から守り、新たな外傷体験から遠ざける役割もあるかもしれない。

保護者人格は外敵から患者を守ったり、迫害者人格や自傷人格の起こそうとする自己破壊行動を食い止めたりもする。

他にも様々な交代人格がみられる。患者の人生において重要な機能を果たし、独自の存在意義を持っている。

 

ICとの違い

ICと交代人格の違いを以下の表にまとめる。

  IC 交代人格

主な原因

生来の高い解離傾向

孤独や困難な成育環境

生来の高い解離傾向

虐待など圧倒的な心的外傷

想定される心的機序 解離,想像(葛藤解消的に),願望充足 解離
1人~数人 数人~数十人(中央値9人)
主人格との人格交代 なし(コントロール可能) あり(コントロール不可能)
健忘 なし あり(治療で消えうる)
治療 治療の必要はない.またはむしろ治療を促進するもの 生活に不適応を起こしている限りは適切な治療が必要
現れるきっかけ なし 明らかな引き金がある
現れる時期 はっきり言えない 明確に言うことができる
主体 主体は本人 主体になり得る
消失 消失するもの 消失しない(統合)

大矢大『想像上の仲間imaginary companionという現象-解離性同一性障害における交代人格との異同-』、是木明宏『解離の診断と留意点』より引用・作成

 

ICと交代人格は治療上区別されるべきものである。

また、交代人格は治療が進むと健忘がなくなり、ICと似た状態になる。

反対に、病的なICが交代人格のように振舞うこともあるが、ICが交代人格になるのかどうかは研究者によって意見が異なる。

 

参考文献・引用文献

  • 是木明宏 『解離の診断と留意点』 精神神経学雑誌 113(9), 897-905, 2011.
  • 大矢大 『想像上の仲間imaginary companionという現象 解離性同一性障害における交代人格との異同』 思春期青年期精神医学 18(1), 63-81, 2008.
  • 西村良二編・樋口輝彦監修 『解離性障害』 新興医学出版社, 2006.

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