要因

ページ名:要因(子ども)

ICをつくり出す状況

早期のIC研究では以下の状況でICがつくり出されるとされた。

  • きょうだいが生まれたとき
  • 両親や養育者と死別したとき
  • 両親が離婚したとき
  • 友人を失ったとき
  • 不仲な両親に育てられた
  • 一人っ子で遊び相手がいなかった

子どもがICをつくり出すのは、孤独や寂しさ、絶望感、暗闇、未知への恐怖心などへ対処する一つの方法とされる。

Nageraによれば、子どもの未熟な自我が、その限られた能力では対処できないような現実問題に直面したときにICをつくり出すという。ICがいることで現実の状況を耐えやすいものにして精神の平衡を保ち、症状形成や退行を防ぐ。

 

しかし、全ての子どもが孤独感や自分自身の弱さからICをつくるわけではない。

毎日楽しげに活動し、両親とも仲良く話す、積極的で社交的な子どももいる。一種の仲間付き合いだという考えもある。

 

子どもはICといることで現実世界との接触が強化される。

 

ICをつくり出す理由

Taylorは、子どもがICをつくり出す理由を9つまとめている。

  1. 楽しさと仲間の獲得
  2. 孤独への対処
  3. 有能感や自尊感情の経験
  4. 現実の生活での制限や限界を超えること
  5. 非難・責任の回避
  6. 恐怖への対処
  7. 他者とのコミュニケーションの手段
  8. 心的外傷に対する反応
  9. 興味深いあるいは重要な出来事や人物を処理する方法

 

親の働きかけ

また、森口ら(2014)は、親子を対象に縦断調査を行っている。

6か月時点において子どもの心に対する働きかけが多い親を持つ子どもは,そうではない子どもよりも,空想の友だちを持つ可能性が高いことが示されました。また,養育態度については,子どもの自主性を尊重する傾向が強い親の子どもは,そうではない子どもよりも,空想の友だちを持ちやすいことも示されました。 これらの結果は,親の子どもへの言葉がけや養育態度などが空想の友だちの生成に影響を及ぼすことを示しています。

 

ICの生成メカニズム

森口(2014)は、ICが出現するメカニズムについてまとめている。

子どもが一人で遊ぶ時間があることは必須要件であろう。テレビを見る時間は少なく,きょうだいがいないか,養育者が下のきょうだいに長い時間を費やすような環境が必要である。次に,養育態度も重要であろう。子どもの心に対して働きかけつつ,子どもの行動にはあまり干渉せずに,自由に遊ばせるような養育態度が第二の必須要件である。養育者が子どもの心に対して働きかけると,子どもの社会的認知能力の発達は促進される。特に,養育者の乳児の心への働きかけは,ある種の空想的な心のやりとりを含むため,養育者にこの傾向が強いと,乳児は同様に社会的認知能力を発達させる。実際には心がないぬいぐるみや人形などのモノに対して生物学的特性や心理学的特性を帰属させ,POが生成される。また,過剰な社会的認知能力は,目に見えない他者の検出を促し,IFが生成される。

POとは物体の擬人化であり、ぬいぐるみや人形に心を見出すことである。また、ここでのIFは「Invisible Friend」の略であり、POに対し「目に見えない」ICを指す。

 

続けて、森口は以下のように述べている。

そして,このような生成が,ナラティブを紡ぐ能力を持つことで,一貫したストーリーになることが重要である。一時的にPOに心を読み込んだり,IFを生成したりするのではなく,それらの友達が日常的に継続し,一貫したストーリーになるために,ナラティブスキルが重要な役割を果たしている。もちろん,ある種の空想傾向の強さは必須だろうし,視覚像や聴覚像を生成する能力も必須かもしれない。これらの認知的・環境的な要件がそろったときに空想の友達は生成されるのではないだろうか。

 

参考文献・引用文献

  • 山岸明子 『子どもにとって「想像上の仲間」がもつ発達心理学的意義 6つの文学作品をめぐって』 順天堂保健看護研究 5, 41-52, 2017.
  • 森口佑介・本島優子・篠原郁子・登藤直弥 『子どもの空想の友だちの形成メカニズムの解明』 山形大学報道資料, 2014.
  • 森口佑介 『空想の友達 子どもの特徴と生成メカニズム』 心理学評論 57(4), 529-539, 2014.
  • 大矢大 『想像上の仲間imaginary companionという現象 解離性同一性障害における交代人格との異同』 思春期青年期精神医学 18(1), 63-81, 2008.

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