aklib_story_この炎が照らす先_FC-6_知る者はなし_戦闘後

ページ名:aklib_story_この炎が照らす先_FC-6_知る者はなし_戦闘後

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この炎が照らす先_FC-6_知る者はなし_戦闘後

ヴィクトリアとダブリンの双方に追われるリードは、自らに問う。どこへ逃げるのか? 同時に、森の奥深くに逃げ延びたターラーの流民たちは、ためらうことなく振り返って彼女を助けに戻る。


[監視兵] 貴様が何を考えているかはわかっている。だがいくら貴様が喚いたところで、我々の注意を逸らすことはできない。

[セルモン] 本当か? あっちから喧嘩が始まったような音が聴こえるが、応援に行かなくていいのか?

[監視兵] 黙れ!

[セルモン] ハッ、アタシに向かって怒鳴るんじゃねぇ、ヴィクトリア人!

[セルモン] うぐっ──!

[監視兵] 静かにしろ、さもないと頭蓋骨が粉々になるぞ。

[セルモン] ヴィクトリア人め……アンタら何様のつもりだ?

[監視兵] あまり図に乗るなよ、ターラー人。俺は貴様らに対する偏見や恨みはない。せいぜい哀れに思う程度だ。

[監視兵] 貴様らは政治勢力に利用されているだけ。公爵の駒にすぎない。

[監視兵] 礼儀として、我々は貴様らに友好的にしてやっているが、流民どもがここで死のうがどうしようが、我々に何の損失ももたらすことはないと知っておけ。

[監視兵] ……命令が来たか?

[監視兵] もし支援が必要であれば、隊長の命に従い、先にここにいる者たちを始末する。

[特別行動隊兵士] ターゲットは第一隊の方向へと逃亡中。第一第二隊は追跡を継続、他の者は撤退。

[特別行動隊兵士] 彼女たちに合流の機会を与え、一気に捕らえる。

[バグパイプ] リード、どうやってあの調査官から逃げてきたの? チェンちゃんとちょうど助けに行くところだったんだべ!

[リード] ……

[バグパイプ] ほら、ぼうっとしてないで行くべ。

[バグパイプ] こっちの方が人は少ないから、何とかして包囲を突破しよう!

[リード] ……他の人たちは……まだ森の方にいるの?

[バグパイプ] 多分ね。まずはなんとか突破して、それから助けに行こう!

[チェン] ──狙撃手か?

[特別行動隊兵士] 貴様ら本当に逃げられると思っているのか?

[チェン] この狙撃手たちは、今まで手を出さずに潜んでいたようだ。

[チェン] まだ他にも隠れている、数は不明だ。

[チェン] これだけ多くの精鋭に出迎えてもらえるとは、光栄だな。

[バグパイプ] どれだけいたって、一人ずつ倒していくだけだよ。

[リード] いえ……待って、バグパイプ。

[リード] 彼らには、私たち以外のターゲットがいる……

[バグパイプ] えっ? ……言われてみれば確かに。うちらのことはそんなに気に留めてないみたいだし……召集されたみたいに別の場所へ向かってる。

[チェン] ……動きが迅速だ。恐らく予定されていた作戦だろう。現状はあえて私たちに突破口を残しているのかもしれない。

[バグパイプ] でも、こんな荒野に他のターゲットなんているのかな……

[特別行動隊兵士] 敵武装部隊出現!

[特別行動隊兵士] 爆弾投擲準備、おとり小隊に警戒せよ。

[バグパイプ] ……

闇夜の中から姿を現わした部隊は、ヒロック郡の通りに現れた亡霊と全く同じだった。

バグパイプは破城矛を握り締めた。

[バグパイプ] ……ダブリン。

[特別行動隊兵士] 敵方の指揮官を特定しました、あなたのご想像通りです。

[フィッシャー] 赤鉄親衛隊隊長……彼がダブリンの一員として、あのドラコを救出しに来たのですか?

[フィッシャー] ……私の推測通りですね。

[フィッシャー] 事は二人の大公爵の表立った衝突に発展する可能性がありますが、あの鉄公爵が求めている戦場は、恐らくトレント郡の都市内部……彼らが今、闇雲に突き進んでくることはないでしょう。

[フィッシャー] 引き続き、状況をうかがいますよ。

[ダブリン兵士] ターゲット発見、捕縛を優先……

[ダブリン兵士] うっ……!

[バグパイプ] 下がって。

[ダブリン兵士] その武器……ヴィクトリアの軍人か? まさか彼女のそばにヴィクトリアの軍人がいるとは。

[バグパイプ] えっ、何を驚いてるの? ここはヴィクトリアの軍人だらけだよ。

[ダブリン兵士] この三人を分断しろ! ターゲット以外にこだわる必要はない!

[ダブリン兵士] ──ターゲットはすでに我々の支配下にある。第三隊はターゲットを連れて撤退!

[バグパイプ] ターゲットって……もしかして、リードのこと?

[リード] うっ……!

[アルモニ] 久しぶりね、ラフシニー……私たち、旧友同士の間柄っていうことでいいのかしら?

[アルモニ] そう警戒しないで落ち着いて。久しぶりに会った友人に、暴力的なやり方で挨拶するのは、あなたもきっと嫌いでしょ?

[リード] ……

[アルモニ] 残念だわ、あなた本当だったら逃げることができたのに。

[アルモニ] リーダーはあなたの逃避行を黙認していたのよ。

[リード] ……私を連れて行くつもり?

[リード] でも私は戻らないよ。あそこにはもう私の居場所はないから。

[リード] いや、あそこに……居場所なんてあったこともない。

[アルモニ] そうね。あなたは自分の、「影」としての身分が嫌いだし、自らの嘘によって集めた人たちを信じてもいない。

[アルモニ] でもあなた、ダブリン以外にどこに行けるっていうの? ドラコとして、どこに身を置こうというのかしら?

[リード] 私は……

[アルモニ] ラフシニー、可哀想なラフシニー……ほんとは私、心からあなたに同情してるのよ。

[アルモニ] だってあなた、創作された詩や派手で中身のない文字について語る時だけは、私にたくさんお話ししてくれるじゃない、まるで本当の旧友みたいに。

[アルモニ] もし思うままに生きられるなら、あなたは詩人のように昔ながらの野原を歩き回ったり、狭く古い家に閉じこもって毎日読書や書写をして暮らしたりしたいんでしょう……素晴らしい夢よね。

[アルモニ] だとすれば、あの艦船での生活は、満足のいくものだったはずよ。どうしておとなしく隠れていなかったのかしら?

[リード] ……リーダーは知っていたんでしょう?

[リード] あの野心家たちの陰謀によって、ヒロック郡で多くの罪なき民間人が殺された。あの人はそれを……とっくに知っていたんでしょう?

[アルモニ] 彼女のことを一番理解してるのはあなたでしょ、どうしてわざわざ私に確認するのよ?

[アルモニ] もし彼らがヒロック郡での混乱の中で死んでなければ、リーダーが自ら手を下していたでしょうね。

[アルモニ] ほんと残念だわ。例えば「雄弁家」たちも、つまらない企みなんてせずにヒロック郡でおとなしく命令を実行していれば、リーダーのそばでもっと生きられたのに。

[アルモニ] マンドラゴラだって、ロンディニウムでリーダーに言われたことをやり遂げ、「スパイ」を連れ帰っていれば、下水道のそばで悲惨な死を遂げたりせずに済んだのに。

[アルモニ] ……そしてあなたも。自分の運命から逃げて、身を隠していれば、こうやってダブリンに連れ帰られることなんてなかったのに。

[リード] ……

逃げなくては。

でもどこへ?

[アルモニ] 先にあなたを見つけたのが私で、今こうして猶予をあげていることを喜んだらどうかしら。

[アルモニ] もし今あなたの目の前に立っているのが「将校」だったとしたら、あなたが迷った瞬間に殺されてたはずだから。

[リード] ……ダブリンはただ私をまた「影」にしたいだけでしょう。私はもうあんな生活に戻りたくないの……

灰燼の中で槍を振る方が、血の通った肉体を貫くよりも、はるかに容易だろう。

[バグパイプ] そりゃ──! これできっともう起き上がれないはず!

[バグパイプ] リード、そっちはどう──

[リード] ……見ないで。

アーツを使う時、リードはいつも目を瞑る。

しかしバグパイプは瞬きもしなかった。そして彼女は、槍の先で燃え上がる炎を見て、ふと思い出した。

そういえばヒロック郡で彼女に似た姿を見たのではなかったか? 広場の彫像の下に立ち、炎に焼かれた通りと無数の人の生死を冷ややかに見つめていた――あのダブリンの術師を。

バグパイプはOutcastを、ロドスを信じていた……だからあの時自分の見た一瞬の光景を信じようとしなかった。

[バグパイプ] おめーさんは……

[チェン] バグパイプ、そっちの様子はどうだ? ダブリンと諜報部門の連中を引き寄せられるか?

[バグパイプ] え?

[バグパイプ] うん、大丈夫!

[バグパイプ] あっ、リードは連れて行かせないよ! どいて!

[バグパイプ] ……

攻防の合間、彼女は息継ぎをしながら再び無意識に振り返った。

視界を覆う霧が、彼女とリードとの間を遮った。

[フィッシャー] 総員、霧に乗じて戦場に切り込みますよ。

[ダブリン兵士] アーツだ! 警戒態勢、陣形を圧縮!

[ダブリン兵士] 敵の方向を再確認!

[ダブリン兵士] あっ、「将校」様、おいでになられましたか……はい、あとの指揮はお任せします……

[リード] ……

彼女は逃げ出したかった。霧に与えられたチャンスを生かし、場の混乱に乗じて逃げ出す策略なら熟知していた。彼女になら、ただ槍を振り、炎を操るだけでそれができるのだ。

しかしその後は?

彼女はダブリンの「リーダー」だ。

彼女はダブリンの炎の体現者。無数の土地を焼き払い、多くの命を奪い取ってきた。

彼女は自らの声で虚構の約束を口にした、演説の中で何度も何度も自分がターラー人の時代をもたらすと公言した。

[特別行動隊兵士] 第一隊は直接突入、ターゲットの負傷は恐れなくていい!

[特別行動隊兵士] ドラコは頑丈だ。数ヶ所程度の傷では死にはせん!

彼女は一人のドラコだ。

両親はこの血統のために、祭日の大雪の夜に死んだ。彼女と姉はいくつかの都市を転々とし、かつての王朝の再興という野心を抱く政治屋に、成長のシナリオを押し付けられた。

彼女の炎は持って生まれたもの。それは今でも内臓に焼けるような痛みを与える。

一体どこに逃げれば、その運命から逃れられるのだろうか?

彼女はかつてロドスの病室で目覚め、ベッドのフレームにもたれて本を読んだ。その文字の中にはヴィクトリアの美しい平和があり、ターラーの悠々たる牧歌があった。

だが一方で、傷を負った仲間たちが病室の窓の外を次々と通り過ぎていった。

たとえ目を閉じようとも、目蓋にはあの都市の廃墟が映る。彼女は救い出された。だが多くの人がそこで死んだのだ。

[監視兵] やるぞ、隊長が命令を下した。

[監視兵] こいつらを片付けた後、ダブリンの奴らも始末しに行く。

[監視兵] 心配するな、ターラー人。手早く済ませてやる。

[セルモン] ──

[ヴェン] ふぅ……危なかった……

[セルモン] ハッ、ヴェン! 信じてたぜ!

[監視兵] ──どこから現れた?

[ヴェン] うっ……!

[ヴェン] ……ほら、手伝って! 助けてくれってば!

[セルモン] 立て! 立てる奴は全員立て!

[セルモン] 手を縛られてるだけだろ、こっちは大勢いるんだ! 向こうの兵士はたった三人だぞ、それに負傷してる。アタシたちなら勝てる!

[興奮したターラーの流民] よ、よし! やるぞ!

[怒ったターラーの流民] あの日と同じだ! 俺たちは村に巡回に来たヴィクトリア兵どもを倒したんだ、こいつらだってやれる!

[セルモン] おい、ヴェン、アンタどうやって抜け出したんだ?

[ヴェン] ああ……あっちの物陰でリードさんの様子を見てたんだが、誰も見てないうちに、こっそり石で縄を切ってね……

[ヴェン] ハァ……今思うと恐ろしいよ。もし私が戻るのがあとほんの少しでも遅かったら、今頃どうなってたことやら。

[セルモン] そんなことよりアタシの縄を解いてくれ。それから他の奴らもだ、早く。

[セルモン] このいけ好かないヴィクトリア野郎をがっつり懲らしめてやらねぇとな。

[セルモン] アタシらが利用されてる? 哀れだと?

[セルモン] アタシはな、この体の傷や、拭った血と涙よりも確かなものなんて知らねぇんだ。

[セルモン] ターラー人のことをあれこれと勝手に言いやがって──アンタ一体何様のつもりだ?

[監視兵] 隊長に報告! 人質が暴走──

[監視兵] うっ──

[モラン] ──多分倒れましたよね? すみません、よく見えなくて。

[セルモン] ハッ、なかなかやるじゃねぇか!

[セルモン] まだ縛られてる奴は? このヴィクトリア人の刀で切ってやるよ。

[セルモン] 急げ、さっきこいつが報告してやがった。

[セルモン] ファーガル、兵士が追ってきてねぇか確認してくれ。ヴェン、アンタは怪我人を支えるのを手伝ってくれ。

[セルモン] 行くぞ、動ける奴は先に行け!

逃げ出したターラー人たちは、よろめきながら手探りで進み、森のさらに奥深くへと走っていく。

彼らは故郷から逃れ、あのぬかるんだ土地から逃れてきたが、どれだけ速く走れば戦火と死を振り切れるのか誰にもわからなかった。

この闇夜から抜け出せば、安らぎの故郷を再建することができるのだろうか?

[ターラーの流民] なぁヴェン、お前は字が書けるだろ。俺たちが落ち着ける日が来たら代わりに手紙を書いてくれないか? 家族に俺はまだ生きてるって知らせなきゃならないんだ。

[ヴェン] わ、わかったよ……

[ターラーの流民] ニワトコ酒を作るって約束しただろ、酒造りに必要なものをお前が市場から揃えてきてくれ。

[ヴェン] ああ、覚えておく。帳簿がなくたって覚えておくよ。

そして、彼らは示し合わせたように歩みを止めた。

誰かがそっと口笛を吹いた。

ターラー人には言葉にできないたくさんのことがある。彼らは言葉が見つからない時、歌うしかない。

酒の入っていないグラスを、ここにいない最愛の者を想って歌う。

[ヴェン] ……セルモン。

[セルモン] わかってる。

[ヴェン] ……奴らが戦っているのを見た。ダブリンの人たちも来ていたよ。彼らはみんなリードさんを捕まえようとしていたんだ。

[ヴェン] バグパイプさんとチェンさんが手伝ってるけど、彼女たち三人じゃ足りないんじゃないか?

[モラン] 焦げ臭い……あっちの煙がすごく濃いですね、恐らくは薪がうまく燃えていないのでしょう。

[ターラーの流民] 俺たちも紛れ込めるかもしれない、そうだろ、セルモン?

[セルモン] 行くぞ。ヴィクトリア人の刀、そこら辺に転がってる武器、何でもいい、全部持て。

……アタシたちはどこまで逃げれば、ターラー人の運命から逃れられる?

[ターラーの流民] 俺たちはさっきも兵士たちを倒したんだ、何も怖くねぇ!

[ターラーの流民] 俺たちは戦いに行くわけじゃない。奴らを殺す必要はない、リードたちを救えればそれでいい!

[セルモン] モラン、見えるか? もしあの火じゃ暗すぎるってんなら、アタシが手を引いてやる!

煙がますます濃くなり、熱がどんどん近づく。

木々は燃え、命は消えゆく。

彼らの名を呼ぶ者などいない。

彼らの夢を尋ねる者など──彼らは今、夢見た生活とは反対方向へ向かっているのではないかと問いかける者などいない。

彼らは目の前にある唯一の火に向かって駆け出してゆく。

[リード] ……

[リード] ……「リード」。みんなが私を呼んでいる?

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