aklib_story_将進酒_IW-7_混乱_戦闘後

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将進酒_IW-7_混乱_戦闘後

一人山の中で酒杯を探すリーがニェンと遭遇し、その後追ってきたズオも合流した。ニェンは三人を連れ、崩壊したはずの尋日峰に着き、そこで東屋を見つけるのだった。


[リー] ……どこへ行っちまったんだ……

[器鬼] グォッ!

[リー] おっと。

[リー] あっちの木の股の方か……またよく分からないのも集まって来てるし……

[器鬼] グォ……

[リー] ……ははっ、こいつはどうやって取ろうかねぇ……

黒石。

万物には皆それぞれの意というものがある。これらの器鬼の性質は元となった器物の「意」と相通ずる。

では、私の静寂を乱すのは……

あの絵巻を弄び筆を振るう妹か、それとも一字千金、人の生死を思いのまま決める妹か。

またあるいは……

彼が碁石を置いた雑音かな?

[リー?] ……どけ。

[器鬼] ――!

[器鬼] ヴゥ――ヴヴゥ!

[リー?] ……

[ニェン] ……久しぶりだな。

[リー] ……ん? あなたは確か……ロドスの……

[ニェン] あぁ、リーだったか。

[ニェン] 久しぶりだな、何でわざわざ龍門から尚蜀に?

[街の青年] 兄貴、番頭が刀を持って行ったのは、誰かとやり合うじゃないんですか?

[客桟の店員] さぁな。

[街の青年] 俺たち若いのは番頭が刀を振るのを見たことないんですよ。でも当たり前ですよね、店があんなにあって、その上がりだけで十分尚蜀に足場を築くことができるんですから。

[街の青年] 番頭が刀を振る姿ってどんな感じなんです?

[客桟の店員] 番頭はここ数年、ほとんど刀を振っていない。正直なとこ、あの人が持った刃物は包丁くらいだろう。

[客桟の店員] 昔の血生臭い日々からじゃ考えられないくらい、番頭は平和な使い方しかしてねぇ。

[街の青年] ……江湖を引退した感じなんですかね? だったら刀を持って何をしに行ったんですか?

[客桟の店員] 野菜を切りに行ったんだろ。あんだけ長い間野菜しか切ってないしもうそれしかできないさ。

[街の青年] つまらないですね。

[客桟の店員] そりゃそうだろう。逆にこれで刀が前より冴えてたら驚きだ。

[山の担夫] 鈍ったかと思ったが、そうでもないのか! どうやらここ数年ただ店主をやってただけじゃないらしいな!

[テイ] ……いや、私は確かに刀を握ったことがなかった。

[テイ] 店のために算盤を弾くのに慣れて、平凡な生活を送るのにかかりきりだった……この霜刀が、いまだにこれほど手になじむとは思っていなかった。

[テイ] まったく予想外だよ。

[山の担夫] ……この場で相対するのが、ぬるま湯に頭まで浸かって煮え切らないテイ・チンユエであれば、勝とうが負けようが無意味だと思っていたが。

[山の担夫] どうやらこれは天意のようだ。

[ドゥ] ――何が天意よ! じじいがカッコつけてんじゃないわよ。ただあんたが一方的に恨みを晴らしたいだけでしょうが!

[山の担夫] くっ……!

[テイ] ヤオイェ、手を出すな! 早くあの龍門人を追って酒杯を探せ!

[ドゥ] 父さん、跳ねっ返りの娘がそんなの聞くと思うの――

[ドゥ] うっ!

[山の担夫] こうなるだろうと思ったよ。

[テイ] ……この子を殴ったのは初めてだ。

[テイ] お前、後悔することになるぞ。

[ズオ・ラウ] ……タイホーさん。テイさんに加勢しに行ってください。

[タイホー] 公子は?

[ズオ・ラウ] 私は酒杯を探しに行きます。この件は早急に片づけなければ。

[ウユウ] 待て!

[タイホー] させん!

[ウユウ] ううっ、少しは手加減していただけませんかね。これ以上破壊されたら下山できませんよ?

[タイホー] 無駄なあがきを。

[ウユウ] 恩人様! ここは私が引き受けますので、恩人様はリー兄さんの助太刀に向かってください! その少年の好きなようにさせてはなりません!

[クルース] わかったぁ! ウユウくんも気を付けてぇ!

[ウユウ] あまり人を追い詰めない方がいい。お役人相手だから手を出せないだけで――

[タイホー] ……役人?

[タイホー] 我は恩人に頼まれて、私人としてズオ公子に同行している。気にせずかかってくればいい。

[タイホー] 来い! 廉家の継承者、純粋に武人として、腕比べといこう。

[ウユウ] ……ではお言葉に甘えて!

[ズオ・ラウ] ……ん?

[ズオ・ラウ] 雨?

[町民] ……雨が降ってきた?

[町民] 天気予報では今日は晴れって言ってたのに。

[茶館の店員] お客さん雨が降ってきましたよ。中へ入らなくていいんですか?

[リャン・シュン] ……いいんだ。

[茶館の店員] 雨の景色を鑑賞したいのですか? 雅なことをなさる、ではのちほど傘を持ってきますね……

[茶館の店員] 一緒におられた船頭さんは?

[リャン・シュン] 山を登りに行った。

[茶館の店員] 今からですか? 空が暗くなったら下りてこられませんよ。

[リャン・シュン] ああ。

[リャン・シュン] 彼に面倒をかけたのだ。

[ズオ・ラウ] ……! あの龍門人!

[ズオ・ラウ] 器鬼が彼を取り囲んでいる……? 待て、彼のそばにいる者は……

[ニェン] おぉ。また新しい客が来たみてーだな。

[ズオ・ラウ] ……ニェン!

[ニェン] オメーもこの酒杯を奪いに来たのか?

[リー] ……ふぅ。予想してたよりも、ちーとばかり人が少なくなったようですね。

[ズオ・ラウ] 炎国司歳台持燭人ズオ・ラウ、太傅の親筆を預かり、シーと黒い酒杯の行方を調査しに来ました。

[器鬼] グォッ……グォッ……

[リー] ……こいつら、あなた方二人を怖がってるみたいですねぇ。

[ニェン] 私を怖がるのは当然だ。だがこのガキを怖がるとは……

[ニェン] オメーは何持ってんだ?

[ズオ・ラウ] 鋭いですね。

[ニェン] フン……そうか……あのジジイが言ってた通りだな。

[ニェン] それでリーはどうしてこの件と関わってんだ?

[リー] ニェンさん、そいつはちーと話が長くなります……

[リー] ですがロドスの方々をこの件に巻き込んじまったのは、本当に申し訳ないと思ってます。

[ニェン] 構わねーさ。クルースとラヴァが、もしこの程度のことすら乗り越えられねーなら、アイツらが最後まで見届けるのなんて無理だろうからな。

[リー] ……はぁ、ニェンさんはほんと変わりませんねぇ……

[ニェン] ここ数日、私たちはあのおっかないジジイにガミガミ言われてさんざんな目に遭ったんだ。だが色々と情報も入ってきた。

[ニェン] 司歳台と礼部のごたごたについてもな。おいガキんちょ、オメーらそんなに急いで……私たちを消したいのか?

[ズオ・ラウ] ……

[ニェン] 私が勝手にシーの奴を引きこもってた巣穴から引っぱり出したこと以外に、きっと何か理由があんだろ?

[ニェン] 言ってみろよ? 筋が通ってんなら、気が変わって、オメーらの力になってやるかもしんねーぜ?

[ズオ・ラウ] あなたとは関係ありません。

[ズオ・ラウ] ですがあなたが自ら姿を現してくれたのなら、ちょうどいい……

[ズオ・ラウ] 彼女はどこにいるんですか?

[ニェン] ……誰のこと言ってんだ?

[ズオ・ラウ] とぼけないでください!

[ニェン] ならオメーら、登る山間違えてんぞ。

[ズオ・ラウ] 何だと?

[ニェン] アイツは山頂だ。この雲海が見える山々の中で最も高い峰のな。

[ニェン] オメーらはその頂上には登ったのか?

[ズオ・ラウ] ……忘水坪には何もありません。そこらの山道と同じです。

[ニェン] へえ。

[ズオ・ラウ] ――! その酒杯に触るな――!

おや……ニェンちゃんかな?

久しぶりだね。

[ズオ・ラウ] ――

[クルース] な、なにが起きたのぉ?

[ニェン] この瞬間におけるこの場所こそ、尚蜀の山々で最も高い場所だ。

[クルース] 「最も高い場所」の話をする時、普通「この瞬間における」って前置きは付けないと思うよぉ。

[ニェン] 美しい景色のある場所が山頂なんだよ。

[ニェン] 物理的な意味における「最も高い」に何の意味があるんだ。ここに椅子を置いたら、もっと高くなんだろ?

[リー] ……この場所……おれは確かに……

[ニェン] 夢で見たことあるか?

[リー] ニェンさんはやっぱり何か知ってるんですね。

[ニェン] ったりめーだろ。オメーはな、この酒杯と一緒にいる時間が長すぎたんだよ。

[ニェン] こいつの秘密は普通の人間なら気付かねーだろうが、司歳台にしろオメーにしろ不注意がすぎんだよ……

[ニェン] ……それとも、これもオメーの考えか……?

[クルース] ニェンさん?

[ニェン] いや。私のことはひとまずいい……そっちのガキんちょは何か言いたそうだな?

[ズオ・ラウ] ……まず、あなた方にはシーが山を離れた理由について説明を求めます。

[ズオ・ラウ] クルースお姉さんはあなたをロドスの一員だと見なしています。そうなると、ここにいる三名は、皆さん全員ロドスの関係者ということになります。

[ズオ・ラウ] あなた方の回答、および今回の件の結果次第では……私は朝廷に上書し、厳粛にこの件に対応するでしょう。

[クルース] うっ……!

[ニェン] シーを引っぱり出したのは私の判断で、ロドスはただ私の個人的依頼を引き受けただけだ。この答えで満足か?

[ズオ・ラウ] いいえ。面会、通信、会話などは当然のこと、あなた方十二名の一挙手一投足すべてが司歳台を動かす重大事項であることを、知らないわけないでしょう?

[ニェン] ほう、若いのに口は達者じゃねぇか……

[ニェン] 司歳台の今のボスは誰だ? 私の知り合いか?

[ズオ・ラウ] ……あなたが長い間ふらついている間に、人の世は幾度かその様相を変えていますよ。

[ニェン] そいつは残念だ。

[ズオ・ラウ] シーはどこですか? リィンは?

[ズオ・ラウ] あなたたち三人は尚蜀に集まり、何をするつもりですか? この酒杯には……どんな秘密が隠されているのですか?

[ニェン] 酒杯はオメーらが人に頼んで龍門から運ばせたんだろーが。なんで私たちのせいにしようとしてんだよ?

[ズオ・ラウ] 我々司歳台が、こうして酒杯を手に入れようとしている意味をご存知でしょう。

[ニェン] ――当然だろ。この中には、私たちの二番目の兄さんの、意識が一部閉じ込められてるからな。

[ズオ・ラウ] ……よくご存知ですね。これでもうあなた方は無知を装って責を免れることはできなくなりました。

[リー] おれは別に無知なふりをするつもりはありませんよ……リャンの奴は確かに何も教えてくれませんでしたがね。

[クルース] ……あはは、ここまで来てロドスは何も知らないよぉなんて言ってもちょっと無理があるかなぁ?

[ニェン] そうだな、オメーは被害者だしな。

[リー] おれがですかい?

[ニェン] 私もさっき気付いたところだ。それにしてもオメーら司歳台ときたらよ、やることねぇから長年無駄にうだうだ研究してたくせに、まだ結論は出ねーのかよ。

[ズオ・ラウ] 巨獣は己の身を分け、独立した人格を持つ代理人とすることができるだけでなく、自らの意識を媒介の中に保存し生き長らえることもできる……

[ズオ・ラウ] ……ですが、あなたたち代理人まで同じことができるとは思ってもみませんでした。まるでウルサスのマトリョーシカのようだ。

[ニェン] 私らだってできるかどうかは知らねーさ……あの兄貴が新しく考え出したんじゃねーか。

[ニェン] 百八十一個の黒石を揃えるためとか、そんなとこだろう。

[ズオ・ラウ] ……彼は気が狂わないのですか?

[ニェン] もう狂ってんだろ。そもそもアイツはこの国の都に閉じ込められてんだ、オメーらは会えないわけじゃねーし、それくらい知ってるだろうに。

[ズオ・ラウ] 彼と会うのは、何よりの禁忌です。

[ニェン] 司歳台はこんなに色々しでかしてんのに、まだ禁忌なんか気にすんのかよ?

[ズオ・ラウ] シーは? あなたがシーを連れ出した目的はなんですか。二人で尚蜀へ来たのはなんのためですか?

[ニェン] ……一つ考えがあんだ。

[ズオ・ラウ] 記録によれば、あなたはいつも多くの考えがあるようですが。

[ニェン] へぇ……私のことよくわかってんじゃねーか?

[クルース] (こっちを見たぁ……)

[リー] ……

[ニェン] 私はな……

[ニェン] ……どうにかしてアレをぶっ殺してーんだよ。

雨。

春の細雨。

水路を行く船頭が、今は高い山頂を歩く。

[船頭] ……まもなく日暮れか。

[船頭] はぁ……山を登るのも下りるのも、私のような老いぼれには厳しいな……

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