aklib_story_ニアーライト_NL-5_世論の裏側_戦闘後

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ニアーライト_NL-5_世論の裏側_戦闘後

姿無きクロガネが見せた力の前に、ニアールは慎重にならざるを得なかった。そのさなか、「ラズライト」ロイが「無冑盟」のことを語り聞かせる。一方、感染者騎士たちは準備を整え、都市全体を麻痺させようとしていた。


[モニーク] ……なるほど。どうも不思議に思ってたのよね。あんたたちがどうして、そのまともに歩けもしないサルカズを連れ歩いてるのか……

[モニーク] そういうことだったの。

[ロイ] え~っとお……モニーク閣下? 俺にもわかるように言ってほしいんだけど~……

[モニーク] ……わかんないなら黙ってなさい。無駄に恥を晒さないで。

[マーガレット] ……無冑盟か。何用だ?

[ロイ] 実はさあ……まず、あんたに謝りたいことがあってな。

[ロイ] 今日、無冑盟がお宅のマリアを拉致した件なんだが――

[マーガレット] ――ッ!

[ロイ] ――お~っと、そう興奮すんなって。実際やったのは俺じゃないんだぜ?

[マーガレット] 卑劣な殺し屋が!

[ロイ] まあまあ……安心しろよ。マリアは今頃、無事に家まで帰ってるはずだ。俺らもこれ以上手出しする気はねーし……仮にそうせざるを得なくなっても、なるたけ不真面目に、適当にやるからさ。

[ロイ] な? 無冑盟だって、好きでこんなことしてるわけじゃない。金を稼ぐためにやってるだけなんだよ。たとえやりたくないことでも、上の連中が見てるとあっちゃしょうがない。だろ?

[シャイニング] ……ですが、あなたたちは感染者を襲っているでしょう。

[ロイ] それも上からの指示なんだ。現場の人間を責めないでくれよ。

[マーガレット] いかなる理由があろうとも、悪行は悪行だ。犯した罪の重さは変わらない。

[ロイ] ……ま、そいつは仰る通りだな。

[ロイ] だからこそ、こうして挨拶しにきたわけだが……

[マーガレット] 話すことなど何もない。――だが、そちらが仕掛けてくるのなら、いつでも受けて立とう。

[ロイ] お~、怖い怖い。そんなに凄まないで聞いてくれって。正直なこと言うと、俺たちは商業連合会の支配から逃れたいと思ってるんだ。

[マーガレット] ……何?

[ロイ] 今日ここに来たのも、それを打ち明けるためなんだよ。確かに、あんたとは対立関係にあるのが現状だ。今のところ、俺たちはまだ連合会側の人間だからな。

[ロイ] ――だが、個人的に平和協定を結ぶことはできないか、ってのが今回の提案なんだ。

[マーガレット] ……

[ロイ] 耀騎士。あんたとニアール家、そしてそのお連れさんたちと、「ロドス」。全部ひっくるめて、「あんたたち」には俺らの計画に干渉しないでもらいたい。

[ロイ] その見返りとして無冑盟側は、あんたの優勝を邪魔するようなことはしない。加えて、耀騎士の関係者には手出ししないと約束する。

[ナイチンゲール] ……感染者たちに関しては、どうなのですか?

[ロイ] ……悪いが、こっちも何でもできるってわけじゃねぇんだ。俺たちにとっては、連中も脅威の一つだしな。

[ロイ] とはいえ、ひとまずは安心してくれていいぜ。俺らからしても、今はあの感染者騎士たちが必要なわけだし――

[マーガレット] それはお前たちのスケープゴートとして、か?

[ロイ] ……

[マーガレット] であれば、その提案は望ましいとは言えんな、無冑盟。

[ロイ] ――なぁ、「無冑盟」って言葉。そもそも何だと思う?

[ロイ] 一つ、話をしようか。――昔、堕落した非道な貴族騎士に抵抗するために、地元の農民と従者たちが共謀して、腕利きの殺し屋たちを雇ったことがあった。

[ロイ] ところが、そいつらはなんと――全員ヘマをしちまったんだ。

[ロイ] それでどうなったかっつーと……反逆者は全員絞首刑。騎士は見せしめとしてそいつらを城に吊るしたらしい。領内の村人は怒りに声を上げることもできず、感情を抑え、抵抗を諦めるしかなかった。

[ロイ] しかし、そのあとのことだ。……ある射手が騎士殺しに志願した。その当時は、クランタ騎士の速度に弓で対応することなんざできないってのが一般論で、誰一人期待はしてなかったって話だが……

[ロイ] 翌朝、残虐な騎士の家族が、起き抜けに見たのは――突撃姿勢で仰向けになり、そのまま事切れた騎士の死体だった。そいつは長槍のようなもんで貫かれ、広場の地面へ磔にされていたんだ。

[ロイ] 人々が目をこらして見ると、突き刺さっていたのは長槍じゃなく、黒鉄でできた鋭い矢だったらしい。

[ロイ] この「クロガネ」ってのが史上最初の無冑盟でな。

[ロイ] まあ事実として、俺たちは雇われの身の殺し屋でしかない。そういう自覚はちゃーんと持ってるさ。――けどな……

[ロイ] 伝説ってのは、案外馬鹿にならねえんだぜ?

[シャイニング] ――ニアールさん! 上です!

耀騎士が天を仰ぎ見る。

薄暗い街灯の下、今夜は星が輝いて見えた。

刹那、一つの流星が幾度か瞬いた後、星々の軌道を抜け出して――

大地へと、まっすぐに降ってくる。

[マーガレット] ――矢か!?

[シャイニング] 斬り伏せましょう!

[マーガレット] わかった!

[ナイチンゲール] きゃっ……!?

[マーガレット] リズ、気を付けろ!

[シャイニング] (ニアールさんと私の二人がかりでも……あの矢を、斬れなかった……?)

[シャイニング] ……

[マーガレット] ……二人とも、なんともないか?

[ナイチンゲール] だ、大丈夫です……ですが、今のは一体……

マーガレットが黙って視線を向けた先には――

矛にも似た漆黒の矢が、音もなくコンクリートの地面へと沈み込んでいた。

[ロイ] ひゅう、やるねぇ……クロガネの矢に反応した上、あれを弾いた奴なんざ初めて見たよ。

[モニーク] ……

[ロイ] やっぱ耀騎士の剣は格が違うな。それに、そっちの聴罪師の姉ちゃんも大した腕前だ。あり得ないもんを拝ませてもらったよ。……にしても、矢が無機物でホントによかったぜ――

[ロイ] ――あれは魂の味か? サルカズ?

[ロイ] 聞いた話じゃ医者らしいが……その剣とアーツ、一体どこまで極めていやがるんだ?

[シャイニング] 無駄口を利くのはやめてください。……これがあなた方の言う「平和協定」なのですか?

[ロイ] おいおい、わかってんだろ? 今のはなにも、あんたらを殺すのが目的ってわけじゃねーんだ。でなきゃ、そこで座ってるサルカズなんて……とっくに死んでるぜ。

[ナイチンゲール] ……

[ロイ] さ~て――挨拶は以上だ。俺たちからのご提案について、よ~く考えてみてくれよ。

[モニーク] ……それと……さっきの矢で理解してほしいものね。これは、「お願い」なんかじゃないってことを。

[モニーク] ――「クロガネ」は全部で三人いる。

[モニーク] あんたたちはあの矢をいくつ防げるのかしらね。

[マーガレット] ――待て!

無冑盟の二つの影は、ネオンの光と月明かりの隙間へするりと溶けていった。

残ったのは耳をなでるジャズの音色だけだ。

[マーガレット] ……

[シャイニング] ……「クロガネ」というのは、黒曜石のような光沢を持つ、非常に重たい金属の名前ですね。

[シャイニング] あの矢は……その名の如き、漆黒の夜空から降ってきました。

[ナイチンゲール] 空から……ですか?

[マーガレット] ……ああ。

耀騎士が再び、天を仰ぎ見る。

輝く星の一つ一つが、今にも上から降り注いでくる黒い矢のようにも思えた。

[マーガレット] これは……はるか遠くから放たれた矢なのだろう。極端な放物線を描いていたことで、まるで空から降ってきたように見えたんだ。

[シャイニング] だとしたら、常軌を逸した腕前ですね。

[マーガレット] ……「クロガネ」、か。……あのよく喋る男が言っていた通り、彼らが無冑盟の始祖であるのなら……

[マーガレット] これほどの相手だ。今この瞬間も、我々の頭に狙いを定めているかもしれないな。

[シャイニング] 警戒を怠らないようにしなければ。何しろ、ここはカジミエーシュ……

[シャイニング] 彼らの罪の砦なのですから。

[代弁者マッキー] ……マルキェヴィッチ君。

[代弁者マルキェヴィッチ] ? どうかなさいましたか? マッキー様。

[代弁者マッキー] ……このところ随分と足取りが軽いようだが……いいことでもあったのかい?

[代弁者マルキェヴィッチ] ああ、いえ……そういうわけでは。ただ、自分のやるべきことを見つけたものですから。

[代弁者マッキー] やるべきこと、か……

[代弁者マッキー] 聞くところによると、君はロドス製薬と非常に親密な関係を築いているそうだね。先日も彼らのリーダーのために、ほかの企業との会談の場を手配していたらしいじゃないか。

[代弁者マルキェヴィッチ] ええ、そうですが……それが何か?

[代弁者マッキー] 知っての通り、感染者への世論はますます厳しくなってきている……これだけ圧力が強まれば、我々は何かしらの対応を取らなければならないんだ。

[代弁者マッキー] 他方で、ロドスは零号地における数少ない外部企業でありながら、監査会の強力なサポートを得ている会社だ。

[代弁者マッキー] ゆえに我々はこの企業に対して、真剣に向き合う必要がある。……実際、数名の常務取締役が今日、我々にロドスへの調査と……対処を命じてきた。

[代弁者マルキェヴィッチ] 「対処」……ですか?

[代弁者マッキー] ああ。……零号地には、外部の人間に知られてはいけない秘密がいくつか存在しているからな。

[代弁者マッキー] この件では、無冑盟を直接動かすことになる。「プラチナ」の指揮権も本件の責任者に再び委譲されるんだ。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……そんな、無冑盟まで……!?

[代弁者マッキー] だが……私から、理事会に提案しておいたよ。責任者を君に変更してほしい、とね。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……! マッキー様、ありがとうございます!

[代弁者マッキー] なに。このくらい、大したことじゃないさ。

[代弁者マッキー] 君とロドスのプライベートな交友関係が、この問題を少しでも簡単なものにしてくれるよう祈っているよ。カジミエーシュでビジネスを行う以上、ここのルールに従ってもらわないとならないからね。

[代弁者マルキェヴィッチ] はい、承知しております。

[代弁者マッキー] ……それから、もう一点。これは他言無用としてくれ。ほかに漏らせば危険を招く内容だ。現時点では、プラチナ及び大部分の無冑盟はまだこちらの管理下にあるとはいえ用心に越したことはない。

[代弁者マッキー] 実は、無冑盟内部で大きな問題が発生したんだ。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……!

[グラベル] ……ドクター。

[グラベル] またぼんやりしてたみたいね。退屈しちゃったのかしら~?

[グラベル] だけど最近の大騎士領は、感染者騎士への抗議行動が広がっちゃってるしねえ~……

[グラベル] こんな状況じゃなかったら~……あなたと一緒に、街をお散歩したいところなんだけど。

[ドクター選択肢1] アーミヤたちへの圧力に比べれば、大したことではない。

[グラベル] それは、そうでしょうけど~。

[グラベル] ずっと気になってたのよねぇ。あなたたちって、何のためにこの都市へやってきたの?

[ドクター選択肢1] 赤字に文句を言い続けるクロージャを何とかするためだ。

[グラベル] ……

[ドクター選択肢1] ニアールも言っていたんだ、カジミエーシュには助けを待つ人々が居ると。

[ドクター選択肢1] だから彼女に、どうするつもりか尋ねたんだ。

[ドクター選択肢1] その答えを聞いて、彼女をサポートすると決めた。それはアーミヤも同じだ。

[ドクター選択肢1] だから我々はここにきた。

[グラベル] ……そう意外な答えでもないわね。

[グラベル] 前は、そんなの単なる口実だと思ってたけどぉ……ねえ、耀騎士ってロドスでは高い地位にいたの? そこまでしてもらえるのは、そういうことなのかしら~?

[ドクター選択肢1] 地位という観点で考えたことはなかったな。

[ドクター選択肢2] 位などとは関係なく、ニアールを尊敬しているんだ。

[ドクター選択肢3] 彼女は我々の仲間だ。耀騎士として見たことはない。

[グラベル] ……最近のカジミエーシュ企業にも、フラットな組織運営をうたい文句にしてるところは多いのよねぇ。でも、実情としては下で働く労働者たちの警戒を解くために言ってるだけだったりするの。

[グラベル] だけど、ドクターがそう言うなら……言葉通りに受け取ってみようかしら~。

[グラベル] つまりそれって、たとえばあたしが今の仕事と掛け持ちでロドスに加わるとしたら……あなたと対等の立場になれるってことよね?

[グラベル] それってすっごく羨ましいわぁ。

[グラベル] 身分も地位も抜きにして、耀騎士を一人の「人」として扱った上で……彼女を尊敬してるってことでしょ~?

[グラベル] ロドスにはほかにも、あなたの尊敬を得ている人がいたりするのかしら? だとしたら、ちょっと興味が湧いてきちゃうわ~。

[グラベル] そう。仲間なのね。彼女を尊敬する騎士はたくさんいるわ。でも、その敬意の理由はたった二つしかないの。

[グラベル] 彼女が「ニアール」だから。あるいは、彼女が「耀騎士」だから。

[グラベル] だからカジミエーシュの騎士からしてみれば、あなたの答えはすっごく新鮮に感じるのよ~。

[グラベル] ……ねえ、ドクター。

[グラベル] あたしは、人身売買で売られて、このカジミエーシュにやってきて以来、他人のために身を捧げる覚悟を常に持ち続けるように、って大旦那様から教育されてきたの。

[グラベル] 言ってしまえば――今この瞬間にも、あなたのためなら死ねるってことよ? ふふっ。

[ドクター選択肢1] それは、君の護衛対象だからか?

[ドクター選択肢2] 監査会の命令があるからか?

[グラベル] 征戦騎士はそういうふうに訓練されるものだから、よ。

[グラベル] 耀騎士の行いが、あたしからすればちょっと現実味のない、遠くのことみたいに感じちゃうのもそのせいなのよ。

[グラベル] ……あなたは、他人の理想のための献身を、偉大なことだと思う?

[ドクター選択肢1] もちろん。

[ドクター選択肢2] ああ。

[グラベル] それじゃあ、その「他人の理想」もまた、別の他人のための献身にあるとしたら……献身に次ぐ献身の末に、何が得られるというの?

[ドクター選択肢1] 得られるのは、より美しい大地――

[ドクター選択肢1] ほんの少しだけでも、良い方へ進んだ未来だ。

[グラベル] ……

[グラベル] 甘い考え方ね。商業連合会を前に賢く立ち回っていた人の答えだとは思えないくらい……

[ドクター選択肢1] グラベル。君に伝えておきたいことがある。

[グラベル] なにかしら~?

[ドクター選択肢1] 命を懸けるに値する人と思われていないならそれでいい。

[グラベル] ……どうしてそんなことを言うの。あたしの忠誠心を疑って――

[ドクター選択肢1] もし値すると思ってくれるなら、我々のために生きてくれ。

[グラベル] ……

[ドクター選択肢1] 君は優秀な一騎士であり、ロドスのパートナーでもある。

[ドクター選択肢1] 君は、自由なんだ。

[ロイ] ……

[モニーク] 何? 考えごと?

[ロイ] ああ、いや。……クロガネが直接動くなんて、随分久しぶりだなあと思ってただけさ。

[モニーク] へえ。前回はいつだったの?

[ロイ] あれはまだお前がラズライトじゃなかった頃。先代プラチナが処刑された時のことだ。

[ロイ] そいつはセントーレアの師匠っつーか、まあそんな感じの奴でさ。

[ロイ] あの日は雨が降ってた。午後4時47分のことだったな……元々俺には、よその都市へ出張に行く予定があってさ。

[ロイ] ちなみに、当時のラズライトは俺一人だったんだが、そこへ突然プラチナが逃げた、即刻処理する必要があるって電話がきたんだ。

[モニーク] ……で? あんたは同僚を殺したわけ?

[ロイ] いいや? マジでやってたら、夢見が怖くて眠れなくなってただろうな。

[ロイ] あの時、俺たちは急いで現場に向かった。言われた場所は、建設途中でほっとかれてた廃墟だったんだけどさ……すると……ハハッ。

[ロイ] ついてみりゃ、三階全部が原型留めてなくってよ。でもって、裏切り者のほうは、胸に刺さったクロガネの矢で、壁の高いとこに磔にされてたんだ。

[ロイ] 現場検証は俺の専門じゃあないが、察するに、プラチナがビルから飛び降りて逃げようとした瞬間、空中であの矢に胸を貫かれて、そのまま壁に磔になった……ってな具合だろうな。

[ロイ] 俺はその壁の下から、奴を見上げるしかなかった。……ターゲットを愛して裏切りに走った結末がアレってのも、気の毒な話だ。

[ロイ] 真っ白な壁に縫い止められた、あの死に様は……まるで受難者みたいだったよ。

[モニーク] 自由だの理想だの、そんな言葉で騙されて無冑盟を裏切ったバカなんでしょ? そういう世間知らずの連中は、生きることの本質ってものを少しも理解してないんでしょうね。

[ロイ] ――おう、どうした?

[ロイ] へえ? ……あいつら、とうとう動き出したのか。

[モニーク] ……レッドパイン騎士団のこと?

[ロイ] ああ。あの連中、かなり慎重だったんだが……遂に痺れを切らしたらしい。

[ロイ] 最近じゃ、感染者への抗議デモなんかも起きてるしなあ。……にしても、笑えるぜ。こうなっちまうと誰が本当の犠牲者なんだかな。

[ロイ] っておい、ま~た電話かよ! めんどくせーな。

[ロイ] は~い、もしもーし――

[電話の声] ――なぜ、指定の座標通りに動かなかった?

[電話の声] 予定通り実行していれば、聴罪師と耀騎士に矢を防ぐ機会など与えず済んだというのに。

[ロイ] ……

[電話の声] 奴らが北を向くように誘導し、私の矢を視認させたな。

[電話の声] あれがなければ、あの車いすのサルカズくらいは確実に仕留めていたんだが。

[ロイ] アッハハ、何を仰ってるのやら――な~んて、ごまかしたところで無駄だよなあ。

[ロイ] まあ聞いてくれ。あれは現場の判断ってやつだよ、ボス。耀騎士みてえな頑固者は、一人身内を殺したところで、余計ブチギレて勢いづいちまうだけだからさ。

[電話の声] それも、悪くはない結果だ。耀騎士の理性を失わせることができるなら、な。

[ロイ] いやいや、そいつはちょっと危なすぎるって。……事後報告になっちまったのは、悪かったと思ってるぜ? けどな、こんくらいの脅しがちょうどいいんだよ。やりすぎは避けてほどほどに、な?

[ロイ] ここは俺を信じてくれ。耀騎士はあんたの計画を妨げることはない……っつか、そうだ。計画と言や、今どうなってんのか聞かせてもらえたりしねーかな?

[電話の声] ……理事会には、じきに気付かれるだろう。だが、問題はない。感染者たちがこの都市を麻痺させたその時……

[電話の声] 私自ら、残りの連絡役たちを始末する。

[電話の声] これよりのち、無冑盟上層部の正体を知る者が誰一人としていなくなるんだ。

[ユスティナ] ……配置についたよ。

[シェブチック] こちらも、聞こえている。

[グレイナティ] 準備完了。

[感染者騎士] よーし! 俺たちならできるっ!

[グレイナティ] ……いいか、ソーナ。相手が前回の事故を受けて、対策を立ててるかは我々には分からない。予備電源への切り替えが格段に速くなっているかもしれない。

[グレイナティ] だから絶対に……絶対に、油断するなよ。

[イヴォナ] ハハッ、大丈夫だっての! その分あたしが大暴れして、引きつけとけばいいんだろ?

[感染者騎士] ブチかまそうぜ、野鬃。無冑盟どもを片っ端からぶっ飛ばすんだ!

[イヴォナ] 当然! いつでも行けるぜ!

[ソーナ] まず、イヴォナが、無冑盟の巡回小隊に正面からぶつかる。

[ソーナ] その三十分後、カイちゃんがエネルギーエリアを襲撃する。何事もなければ、監査会の警備要員は「撤退」する手筈になってる。

[ソーナ] あとはあたしが連合会ビルに潜入して、必要なものを頂戴するだけ……簡単な話だわ。

[ソーナ] ……それじゃ、始めましょうか。

[トーランド] ……さーて。そうすると、お前さんがビルへ忍び込むところまでは手伝ってやれるが。

[トーランド] その先は、一人で頑張ってもらうことになるな。なんたって、通路を確保しといてくれる誰かさんが必要だろうし。

[ソーナ] ええ、それだけでも十分です。トーランドさん、ありがとうございます。

[トーランド] 礼には及ばんさ。だが、俺が言ったことは忘れてくれるなよ? ――お前さんたちの行動は、本人たちの想像以上の意味を持ってるんだからな。

[トーランド] みんなに見せてやろうじゃないか。ある都市の慟哭をまるごと、そのままな。

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