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ウォルモンドの薄暮_TW-S-2_一束の哀悼_戦闘後
火災の現場で、フォリニックとグレースロートは献花に来たマドロックと再び出会う。このウォルモンドでは、誰もが何かを止めようと足掻き、誰もが失敗したのだ。
[サルカズ戦士] マドロック、彼らは残りの逃亡者を捜索している。
[サルカズ戦士] ……逃亡者たちをわざと逃し、この山で自滅させるという選択もできたはずだがな。捕まえれば、逆に彼らの命を救うことになる。
[サルカズ戦士] 優しいのか残酷なのか、わからないな。
[マドロック] ……共に来なかった者たちは、もう私たちとは関係ない。
[マドロック] 私たちは、極力彼らの捜索を避けて進む。冬が来る前に、ここを離れる。
[マドロック] 急がなければ……もう、これほどまでに寒くなってきたのだから。
[サルカズ戦士] ここを離れて、どこへ行くんだ?
[サルカズ戦士] これだけ長く放浪してきて、結局どうするんだ? このままだと一生結果は出ないかもしれない。
[マドロック] ……では、故郷に帰ろう。
[マドロック] 帰って、静かな樹林を探して、そこで生き延びる。
[サルカズ戦士] 我々が望んだ戦いはどうする?
[マドロック] ……ひとまずは……生きることだけを考える。
[マドロック] 生き伸びるんだ。生きるために、私たちはこの大地に抗っているのだから。
[武装した感染者] ……さっき樹林と言ったな。それはどこだ? 故郷って何だ?
[マドロック] ――カズデル。我々の故郷へ。
[武装した感染者] えっ……
[武装した感染者] でも、俺たちは? 俺たちはサルカズじゃない、あそこは……
[マドロック] 君たちはもう、サルカズの仲間だ。
[マドロック] カズデル以外に、サルカズの居場所はない。そしてカズデルは、君たちをも受け入れる。
[マドロック] それは寛容さからではない。かの地はとうに……全てを失っているからだ。
[マドロック] カズデルは……都市の名ではない。国家の名とも言えない。ただの地域の呼び名に過ぎない。
[マドロック] その土地に、家を持つことを許されない亡命者たちが集っている。
[マドロック] あの場所は……全ての家なき者たちが帰る場所だ。根無し草たちの唯一の居場所……
[マドロック] そう、君たちの居場所だ。
[武装した感染者] ……ありがとう。
[武装した感染者] あのそこら中サルカズの感染者だらけのカズデルでなら、俺たちも逆に平和に暮らせるのかもしれないな……
[サルカズ戦士] リターニアが感染者に寛容なのは、血統やアーツの普及の副産物に過ぎない。彼らは本当にお前たちを受け入れるわけではない。
[サルカズ戦士] 災禍がリターニア人の偽善の仮面を剥ぎ取れば、初めに迫害を受けるのはやはり感染者だろう。
[武装した感染者] ……この繁栄した国は、鉱石病のことどころか、本当に悲惨な人たちが存在することすら忘れてしまっているのさ。
[武装した感染者] ウォルモンドのような悲劇は……貴族たちの気晴らしの道具にすぎない。投資家や宮廷芸術家の茶飲み話になるだけだ。
[武装した感染者] そんなの俺たちは……受け入れられない。受け入れたくもない。
[武装した感染者] 行くなら行こう。カズデルに、お前たちの故郷に行ってみよう。
[マドロック] ……ああ。
[サルカズ戦士] リターニアが何か手を出してくる可能性は?
[マドロック] ないとは言えない……事の経緯はどうあれ、破壊された街でサルカズの感染者が目撃されたとなれば、私たちが主犯とされるだろう。
[武装した感染者] セベリンは事の経緯を知ってるだろ。あいつが俺たちに罪を被せるのか?
[マドロック] 彼ならそうするだろう。
[武装した感染者] ……
[マドロック] ……それが彼のやり方だ。彼の知る情報をもとに、街への損害を最小限に留めようとするなら、そうするのが一番だ。
[武装した感染者] じゃあ俺たちは、本当にさっさとここから離れないとな。そうじゃなきゃリターニア当局の追手に見つかっちまう。
[マドロック] ああ、だからこそいち早くルートを……あれは……
[マドロック] すまない、少しだけ待っていてくれ。用事ができた……
[マドロック] すぐに戻る。
[グレースロート] ……
[フォリニック] ここにいたのね。
[グレースロート] フォリニック……
[フォリニック] いや、立ち上がらなくていいわ、近づかないから。
[フォリニック] ……人を待ってるのね?
[グレースロート] ええ。
[フォリニック] レユニオンの事件が起きたとき、私はロドス本艦にはいなかった……あなたはかなり変わったみたいね。
[フォリニック] 噂で聞いていたのと、随分印象が違う。
[グレースロート] 噂?
[フォリニック] 龍門でエリートオペレーターと組んで、色々解決したんでしょう?
[グレースロート] ……ああ、そこら中を血まみれにする馬鹿な暴れ猫とね。
[グレースロート] それに私たちには……何も解決できなかった。
[フォリニック] ……ありがとう。
[フォリニック] 改めて言いたかったの。もしリサちゃんとあなたがいなければ、今頃どうなっていたかわからない。
[グレースロート] ……
[フォリニック] ロドスも、セベリン憲兵長も、あのレユニオンだって、誰もこうなることは望んでなかったのに……
[フォリニック] みんなで悲劇を止めようとしたのに、悲劇は私たちのことなんて、ものともしてなかった。
[フォリニック] アントは……あの子は……
[グレースロート] 無理に思い出す必要はない、もう終わったことだから。
[グレースロート] ただ、死者が安らかに眠れるように祈ればいい。
[フォリニック] ……私たちは犯人を裁けなかっただけじゃなくて、アントが守ってきた街も守れなかった。
[フォリニック] アントは私を責めるわね。
[グレースロート] あなたが自分を責めるだけよ。アントは明るい人だったから。
[グレースロート] きっと、彼女はあなたの肩を叩きながら、泥酔するまで一緒に飲んでくれるわ。
[フォリニック] フフ……そうね、あなたたちも仲が良かったの?
[グレースロート] 私は彼女と泥酔するまで飲む「エリートオペレーター」のことをよく知ってるだけ。
[グレースロート] ……何もかも諦めてしまったのは、私たちだけじゃない。
[マドロック] ……
[グレースロート] やっぱり来たのね。
[マドロック] これは、摘みたての野花だ……
[グレースロート] 今の状況はわかっているでしょう。私たちの事後処理ももうすぐ終わる。ロドスはここを出発し、資源調達の援助を募る予定よ。
[グレースロート] だけどその頃には……
[マドロック] 誰も私たちの味方をする者はない、わかっている。
[マドロック] ……セベリンを責めたりはしない。彼がそう貴族に報告しないと、彼ら自身が苦しむことになる……
[マドロック] 私たちもいち早くここを離れる。ただ、ここには私の死んでいった仲間も眠っている……別れを告げずに去ることなどできない。
[フォリニック] ……感染者が八名。
[フォリニック] 今となっては、ウォルモンドの死者は「八名」の数百倍以上ね――
[マドロック] ……すまない。
[フォリニック] いや……あなたが悪いわけじゃない……責めてるわけじゃないわ。
[フォリニック] ただ、何がここまでの事態を招いたのか、振り返っていただけ。
[フォリニック] この大地は、善行に報いてくれるほど甘い存在じゃないってわかってるけど、でも……こんな内部崩壊はあまり見ないから。
[フォリニック] 扇動された怒りと復讐心が、全部を燃やし尽くすところだった……私自身も……
[グレースロート] まだ自分を責めてるの。
[フォリニック] いえ……もう冷静になったわ。ただ、私は「失敗した」わけじゃなくて、最初から「できなかった」んじゃないかと思って。
[フォリニック] これまでロドスに……ケルシー先生に教わってきたことが……できないなんて。
[マドロック] ――誰にもできない。
[マドロック] 私も同志の過ぎた行いを何度か止めたが……一度や二度では、彼らの復讐心を鎮めることはできなかった。
[マドロック] だからこそ……事態はこれほどまでに悪化した。
[フォリニック] ……
[グレースロート] これからどうするつもり? 「レユニオン」はまだ多くの人たちの目のかたきにされている。そのシンボルマークを捨てるべきだと思うけど。
[マドロック] その通りだ……だが「レユニオン」は滅びてはいない。その噂は、もうリターニアの感染者の間に広まっている。
[マドロック] 抗争の火種は、未だ潰えていない……たとえそれが、歪んでしまったものであっても。私たちにも、息を整える時間が必要だ。
[マドロック] 私の部隊には、戦士以外の者が多い。彼らの運命を勝手に決めることなどできない……彼らはただ、静かに暮らしたいだけかもしれないのだから。
[マドロック] そうだ……ロドス、ビッグボブという者を知っているか?
[フォリニック] ――知らない。
[フォリニック] もし何か関係ある人なら、資料を調べてみるけど。
[マドロック] いや、今回の件とは関係ない。ただの友人だ……
[フォリニック] レユニオンの? それともサルカズの?
[マドロック] ――レユニオンだ。彼は経験豊富な賞金稼ぎだ。
[マドロック] 彼は戦士ではない、だからレユニオンから抜けるだけの理由があった……今はきっと抑圧の渦から逃れ、クルビアの開拓団の中で居場所を見つけていることだろう。
[マドロック] ああ……思い出した、彼はホップを植えると言っていたな。
[フォリニック] えっ?
[マドロック] 君はホップという植物を見たことはあるか? 何に使うものか知っているか? ビールは、ホップからできていると聞いたが?
[フォリニック] ホップは素晴らしい植物よ……たしかその作用でビールの泡が生まれるとか……あ、あとは防腐作用もあるって聞いた気がする――
[フォリニック] ――いや、こんなの真剣に論議する必要はないでしょ。私も専門外だし。
[グレースロート] ……まあとにかく、良いものよ。
[マドロック] そうか……羨ましいな。
[マドロック] ホップ……泡……ビール……
[フォリニック] ……ちょっと、ビールにそんな思いを馳せないでよ。私たちはこれでも敵同士なんだから。
[グレースロート] 良くも悪くも立場が違うのは忘れないで。
[マドロック] ああ……すまない。
[マドロック] 私たちは、戦士だ。サルカズは、戦士なのだから。
[グレースロート] あなたの言動からはどうしても……戦士としての固い決意が感じられないけど。
[マドロック] 私たちに選択の余地はない。
[マドロック] もし私たちに何か要求や、実現すべき信念や、守らなければいけないものがあれば、私たちは戦う。戦うことしかできない。
[グレースロート] 問題の解決法は戦うだけじゃないでしょう。
[マドロック] では……犠牲になった私たちの仲間はどうする? 私たちが平和的主張をしていれば、あの悪人たちは家や住む街を用意してくれるのか?
[マドロック] それはないだろう。
[マドロック] 私たちは……戦い続けることしかできない……感染者の同胞たちを救うために。
[フォリニック] ……「感染者の同胞」。
[フォリニック] あなたたちに行き場所はあるの?
[マドロック] カズデル。
[フォリニック] カズデルは、良い場所とは言えないわ。
[マドロック] 私たちも、決して「良い」とは言えない集団だ。
[マドロック] それに本当の「良い」場所は、私たちなど受け入れない。
[グレースロート] カズデル以外に、もう一つ選択肢があるわ、マドロック。
[マドロック] ……今はまだ、できない。
[マドロック] 私の下にいるリターニア人も、サルカズも、それぞれの考えを持っている。
[マドロック] 恨みは消えてはいない。今は共に生きるという集団意識のおかげでまとまっているが、彼らはまだ、安易に人を信用することはできないだろう。
[グレースロート] ……残念ね。
[マドロック] ロドスのツバメよ、いつか再会することもあるかもしれない……感染者のために戦う君たちとは。
[グレースロート] ……私をそう呼んだレユニオンはあなたで二人目だわ。
[マドロック] ……そうか。
[マドロック] 私がここを去っても、私たちは敵同士のままだ。
[マドロック] そうでなければ、リターニアは君たちまで疑うだろう。
[マドロック] だからこそ……敵とは親しくしすぎない方が良い。
[マドロック] 私はただ花を供えに来ただけだ。そして花はもう供えた。私は……もう去ろう。
[マドロック] 君たちに幸あれ。
[フォリニック] ……
[グレースロート] 何か言いたいことがあれば、今のうちに聞くけど。
[フォリニック] ……いえ、もう何も。
[フォリニック] ただ、悪夢を見てたみたい。マドロックが去って、急に目が覚めた気がする。
[フォリニック] これでもう……終わり。
[グレースロート] 私は人を慰めるのは苦手だけど、でも――
[フォリニック] あなたの過去は知ってる。あなたに慰めてもらう立場なんかじゃないのに……ごめんなさい。
[グレースロート] ……悲しみを断ち切って進むしかない……それが良いこととは言えないけど、生き延びていくためには、ある種の妥協も必要だから。
[フォリニック] あなたはこんな感情を受け入れるのに、どれだけかかった?
[グレースロート] ……長かった。より多くのものを失うのに十分な長さだった。
[フォリニック] ……
[グレースロート] ……
[グレースロート] ……これからどうするの?
[フォリニック] ロドスに帰る。
[フォリニック] アントと……一緒に。
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