aklib_story_ウォルモンドの薄暮_TW-7_山脈の崩落_戦闘後

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ウォルモンドの薄暮_TW-7_山脈の崩落_戦闘後

街が三つの勢力によって混戦模様を挺する中、セベリンは持病に倒れる。グレースロートが発見した容疑者も既に死んでおり、手がかりはそこで途絶えた。それらの出来事は、フォリニックを動揺させるには十分だった。一方、決意を固めたマドロックは、ついにその真の力を見せつけようとする。


[カシャ] 早く、ここだよ!

[エアースカーペ] このあたりの痕跡は……ただの八つ当たりに見えるな。

[グレースロート] ……セベリンはこれを計画的な反乱だと考えている。だけど実際はどうかしら? 彼らは単純に、鬱憤を晴らすために暴力行為を働いているようにしか見えない。

[グレースロート] カシャ、何か見つけたの?

[カシャ] うん、でも、でも……

[カシャ] グレースロート姉さん早く来て、あたし……あたしにはなんて説明したらいいか……

[グレースロート] ……どうしたの?

[カシャ] 部屋の中に……

[グレースロート] あなたの目、赤くなってる……大丈夫よ、怖がらないで、自分を抑えて。エアースカーペ、外でこの子についていてあげて。周囲の暴徒にも引き続き警戒を。

[エアースカーペ] わかった。

[グレースロート] ……この中?

[グレースロート] (……ひどい有様ね、かなりの混戦だったみたい……うっ……これは……凍った死体?)

[グレースロート] (いやそれよりも、この人は――?)

[武装した感染者] ぐっ――! 医者が何のつもりだ!?

[武装した感染者] そのままどかなけりゃお前も殺すぞ!

[フォリニック] ……さっきあなたにかけた薬液は、揮発性の毒薬よ。

[武装した感染者] ああ!? お、お前……!

[武装した感染者] 毒薬ってなんだ! 早く言えよ! じゃなきゃお前を――お前を……お前を……ぐぅ……

[フォリニック] 苦しい?

[フォリニック] ビーダーマンの居場所を教えて。そうすれば解毒薬をあげる。そのままだと、幻覚と嘔吐で三時間は苦しむことになるわ。

[武装した感染者] この悪魔め……俺は……俺は知らねぇ……ビーダーマンなんか……俺はただ……貴族を……皆……殺しに……うう……

[フォリニック] ……残念ね。あなたたちはみんな刑務所行きよ。

[武装した感染者] うう……? きのこ? でかいきのこだ……なんだよ、なんできのこが動いてんだ、かっ、噛み付くな――

[タチヤナ] 憲兵長……負傷者がたくさんいます……! 角を曲がった先の商業街とマイバウム噴水広場は占拠されました……ですが、ドデカフォニー通りに集まっている人はそれ以上です……

[タチヤナ] 止められません!

[セベリン] ……最初の負傷者が出たときから、我々に止められるものなど、もうなかったのかもしれんな。

[セベリン] 私たちが迎える結果は二つに一つだ。投降するか、それとも部隊を編成して反撃に出るか。

[タチヤナ] ……どうされるおつもりですか?

[セベリン] 投降し支配権をレユニオンと反乱者たちに明け渡せば、我々は凍土の上で餓死することになるだろう。

[セベリン] そして住民たちを率いて反撃に出れば、共倒れになり多くが死ぬ。幸運にも生き延びた者も、いずれは凍土で餓死することになる。

[セベリン] ……あるいは……

[セベリン] ……

[セベリン] もし死傷者を生むことが避けられないとしても、一人でも多く生存――ゴホッ、ゴホゴホッ――

[セベリン] ぐっ……ゴホゴホッ、ゴホゴホゴホッ――

[タチヤナ] 憲兵長――伯父さん? 伯父さん!?

[タチヤナ] ――! 伯父さん、口から血が……!

[スズラン] すみません! どいてください! タチヤナさん!

[タチヤナ] 伯父さん――

[スズラン] 落ち着いて、呼吸を整えてください。肺の病変によって声を出せないんです、こんなときは……こんなときには……

[フォリニック] ――どうしたの?

[スズラン] セベリン憲兵長は、実は――いいえ……お願いします、フォリニックお姉さん。

[フォリニック] セベリンさん……そろそろ本当に、医者の言うことを聞いて禁煙すべきです。あなたの肺の病状は、検査なんてしなくてもわかるくらいにひどいんですから。

[フォリニック] 診察します……襟元を見せて――

[フォリニック] ちょっと! 動かないで!

[フォリニック] なっ……!

[フォリニック] あなたは……感染者だったんですか?

[タチヤナ] えっ!?

[フォリニック] ……これは鉱石病の症状です。源石結晶が肺から喉元に広がってる……喉の下の黒い粉末に見えるものは……体表に現れた源石結晶です。

[フォリニック] 体細胞が源石と融合し始めてる。だからあなたは健康に全く気を使わなかったんですか!?

[タチヤナ] まさかさっきの戦闘中に?

[フォリニック] いえ、これは初期症状でも急性病変でもありません。かなり前から感染していたはずです。

[フォリニック] 天災のときに……いや、それにしては病変が早すぎる……それよりももっと前に……

[セベリン] ゴホッ――ゴホゴホッ――!

[フォリニック] ……黒い血塊。スズラン、サンプルを採って。

[スズラン] わかりました! ごめんなさい、憲兵長。少し我慢してください。

[フォリニック] 病院は――この状況じゃ機能してないわね。チッ、まずは議事堂に運びましょう!

[セベリン] ――まだ、まだだ……ウォルモンドは、支柱となる憲兵長を、失うわけにはいかんのだ!

[フォリニック] 今は大丈夫……でもこのまま無理を続ければ、本当にウォルモンドから憲兵長がいなくなりますよ――

[セベリン] 君は――こんな状況では、医者らしく見えるな。

[セベリン] ゴホッ、ゴホゴホッ――

[セベリン] ぐっ、血を吐いたら楽に話せるようになった。ああ、無理などしてはいな……

[フォリニック] 黙ってて。

[セベリン] フォリニックさん、一つだけ願いを聞いてくれないか。

[フォリニック] 聞くだけなら。ですがあなたは絶対に議事堂まで連れて帰ります。スズラン、憲兵長を寝かせてあげて。タチヤナさん、私たちはセベリンさんを連れて帰ります。

[タチヤナ] わかりました、お願いします!

[セベリン] ……皆さん、どうか、ゴホゴホッ、私が感染者であることは秘密にしておいてくれ……

[セベリン] それから、私があの火災の犯人だと、公表しよう。私がウォルモンドに道を踏み外させた元凶だと……

[フォリニック] では、真犯人はどうなるんです?

[セベリン] ……構うものか。

[セベリン] ああ……そうすれば、そうすれば住民は、殺し合いの大義名分を失うだろう。

[セベリン] だが、それではまだ足りない……彼らを抑え込むだけの外力がなければ、彼らは次々に報復を繰り返すことだろう。

[セベリン] だからどうか……ロドスの力を貸してもらえないだろうか……今の私たちには、満足な報酬をお返しすることもできないが。

[セベリン] ウォルモンドがこの危機を乗り越えられたなら……必ず恩義に報いよう。

[フォリニック] ……私たちは慈善団体ではありません。

[セベリン] どうか!

[フォリニック] 万にも上る人口の街を救うなんて、私たちの任務の範疇も、アーミヤから与えられた権限も超えています。私にはロドスを代表して承諾する権限はありません。

[フォリニック] ……ですが、アントのために……「私たち」はウォルモンドを見捨てはしません。

[セベリン] ……ありがとう。

[フォリニック] すみません通してください、急患です――

[グレースロート] ……

[フォリニック] ……グレースロート? どうして一人で戻ってきたの?

[フォリニック] スズラン、セベリン憲兵長を上の客間に運んで……他の人に見つからないように。

[フォリニック] 残酷かもしれないけど、容態が落ち着いたらまた公衆の面前に立ってもらわないといけないから。

[スズラン] あ、はい! 任せてください!

[フォリニック] タチヤナさん……あなたは……

[タチヤナ] ……街のあちこちで暴動が起きています。今この瞬間も死傷者が出ているはずです。こんなところで座っているわけにはいきません。

[タチヤナ] 私は騒ぎに参加していない民兵を集めます。少なくとも……なんとかして暴動の規模を縮小しないと。

[フォリニック] わかりました、どうか気をつけて。

[タチヤナ] ――はい!

[フォリニック] ……これで話せるようになった? グレースロート。

[グレースロート] ええ、ビーダーマンを見つけた。

[フォリニック] ――!

[フォリニック] じゃあすぐにでも捕まえて、この暴動を鎮めて、それからアントの仇を――

[グレースロート] ――無理。

[グレースロート] 彼は死んでる。

[フォリニック] ……え?

[グレースロート] 私たちは座標B2の位置にある「蓄音機」の側で彼を見つけた。

[グレースロート] 彼の後頭部には明らかな外傷があり、周辺皮膚の表面には氷の結晶が残っていた。アーツで攻撃を受けた痕跡よ。

[グレースロート] 居合わせたオペレーターだけでは精確な判断はできなかったけど、他の死体の傷跡や血痕を見るに、少なくとも数時間前に、ビーダーマンは暴動で命を落としていた。

[グレースロート] 元凶だとされていたビーダーマンが死んでも、暴動は止まらない。それが何を意味するか、わかるでしょう。

[グレースロート] カシャとエアースカーペが彼の家を探ってる、予想通りなら――

[フォリニック] 待って……! 本当に死んだの?

[グレースロート] ……もう一度聞きたいの? そう、彼は死んだ。

[フォリニック] ……

[グレースロート] ……

フォリニックの笑顔が――ゆっくり凍りついていく。

アントの犠牲によって不安定に彷徨っていた彼女の心は、ビーダーマンを捕らえるという目標を得、活力を取り戻したはずだった。

煩雑な植民地問題や感染者問題、あるいは階級問題といった障害に躓くこともなく、いとも簡単に復讐すべき相手を知ったとき――

彼女は安堵していたのかもしれない。自らが目指すべき道が定まったことに。

でも今こんな状況の中で、再び凍りついた彼女のあの表情を……私はどうすればいいんだろう?

[エアースカーペ] ……やはり。

[カシャ] これは?

[エアースカーペ] 危機契約の作戦協議書だ……ビーダーマンは危機契約を結んだ天災トランスポーターだったようだ。

[エアースカーペ] つまり……まさか自分の死を含めて、全ては計画の内だったのか? どうなんだ、ビーダーマン……?

[カシャ] ……でも何のためにこんなことを? その危機なんとかってやつが黒幕なの?

[エアースカーペ] 天災で人々を死に至らしめるのは、彼らの行動理念に反する……危機契約機構がそんな馬鹿げたことをするはずはない……

[エアースカーペ] ……だがもし……反乱者を支持することで、より多くの人を生存させることが狙いだとしたら? でもなぜ……?

[カシャ] っていうか、それでホントにもっと多くの人を救えるの? グレースロート姉さんから聞いた感じ、今のウォルモンドはかなりひどいことになってるみたいだけど。

[エアースカーペ] ……危機契約自体は、ただのシステムに過ぎない。

[エアースカーペ] 問題は、危機契約を結んだトランスポーターだ。彼らの中には一部だが、道徳と常識を欠いた奴もいる。そういう奴らはただ「より多くの人を救う」ことしか考えない。

[エアースカーペ] ……ウォルモンドが天災に見舞われてしまった後、まさか……外部勢力の介入を目的に、火を放ったというのか……

[エアースカーペ] レオンハルトやロドスの他の天災トランスポーターたちが深く関わらなかったのは幸いと言うべきか……

[エアースカーペ] だが……いや……何かが……

[カシャ] エアース!

[エアースカーペ] どうした?

[カシャ] あそこを見て! あの楽器屋のところ! なんか変なものがある!

[エアースカーペ] 変なもの? あれは……山?

[エアースカーペ] 違う、岩の巨像が動いているのか……?

[カシャ] あのアーツは、まさか、前に街の外で会ったあいつが操ってるの?

[エアースカーペ] あの大きさ、一人のアーツで操れるはずが――急げ、フォリニックたちと合流するぞ!

[エアースカーペ] 普通の民兵たちでは、百戦錬磨の作戦小隊――サルカズの小隊なんて止められない!

[住民] 何? この揺れは一体?

[住民] ちょっと、またあの石像よ! 急いで! さっさと「蓄音機」を起動させて!

[武装した感染者] レユニオンが助太刀に来たぞ! やっとだ! 俺たちを解放するために!

[武装した感染者A] レユニオン万歳! 攻め込め! あの腐った貴族たちを追い出してやるんだ! 進め!

[武装した感染者B] ――レユニオン万歳!

[タチヤナ] ……他の人たちの撤退をカバーしつつ街の中心エリアへ戻り、「蓄音機」を作動させてください。くれぐれも気をつけて!

[住民] わかった!

[住民] タチヤナ、通りの端の……あれは?

[マドロック] ……止まれ、全体休め。

[サルカズ戦士] ああ……もうあと一歩のところまで来ている。

[マドロック] ……あと少しで、この街は破壊される。

[マドロック] そして、私たちの後ろには希望も命も残らない。感染者たちは声高らかに解放を求めているが、怒りと憎しみが解放されるだけだ。どこにでもある、汚れた進軍だ。

[サルカズ戦士] 俺は何でも構わない。ここまで来たなら、円満な結末なんて残されていないだろう。

[マドロック] これは最後のチャンスだ……私たちが最後の一歩を踏み出す前に、彼らに残された……

[サルカズ戦士] ……投降のチャンスか?

[マドロック] 違う……抗い、信念を示すチャンスだ。私たちと彼らが、それ以外の者たちを代表して……勝敗を決する。

[サルカズ戦士] 骨折り損だと思うが。あんたはいつでも、一番損な役回りを買って出る……

[サルカズ戦士] まあ良い、あんたの言う通りにしよう。

[マドロック] では――

[マドロック] ――沃土よ、巖よ、立ち上がれ。

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