百器徒然袋 風(小説)

ページ名:百器徒然袋 風_小説_

登録日:2011/06/12(日) 17:05:54
更新日:2023/08/11 Fri 10:08:29NEW!
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小説 妖怪シリーズ 百鬼夜行シリーズ 京極夏彦 指ぬきグローブ 画図百鬼夜行 鳥山石燕 薔薇十字探偵の項目 抱腹絶倒 探偵小説 探偵の小説 百器徒然袋シリーズ 五徳猫 雲外鏡 面霊気 偽名だらけの小説 ←もはや誰が誰だか 榎さん無双 榎木津幹麿降臨 エチオピヤ人のマスカマダ・カマスカス君 にゃんこ



「わははははははは、にゃんこ参上だッ」





百器徒然袋ひゃっきつれづれぶくろかぜ



京極夏彦の小説作品。
妖怪シリーズ」の外伝作品で、前回の『百器徒然袋 雨』に続く、
薔薇十字探偵こと榎木津礼二郎を世界の中心に置き、「僕」こと本島※※を語り部として描かれた通快探偵小説である。
小説現代増刊号「メフィスト」に『五徳猫』『面霊気』が、e-NOVELSにて『雲外鏡』(週刊アスキーにも掲載)が掲載、配信された後に、
04年に「講談社ノベルス」から新書版が刊行。
現在は文庫版も存在する。
前作と纏めてラジオドラマ化もされているが、ここでは原作のみの紹介に止どめる。




【概要】


前作『百器徒然袋 雨』に続く、「妖怪シリーズ」のレギュラーキャラクターを中心としたコメディ調の作品。
榎木津礼二郎を潰そうとする「ある人物」との戦いが主軸だが、作品全体に論点その物が“ズレている”事による、奇妙なおかしさが満ちているのが特徴である。




【三つの物語】



◎五徳猫 薔薇十字探偵の慨然




●五徳猫



「ほら見ろ。右手を挙げているじゃないか」


……「僕」こと本島※※は、隣に住む幼馴染みの紙芝居描き近藤に訳の分からない理由で招き猫を買い与えた事に端を発する訳の分からない争いの末の訳の分からない懸けに負け“客寄せの左手”を挙げた招き猫の替わりに“金寄せの右手”を挙げた招き猫を招き猫発祥の元祖=豪徳寺にて自分の目で確認された「上」に買わされる羽目になったのだった。
……そして、全く偶然に居合わせた二人連れの女……と云うか、片方が発したある人物の名前に殆ど痙攣的に反応してしまったが故に……「金池郭」と「銀信閣」と云う二つの風俗店。
……引いては十年以上前から遡る小池家と信濃家の抗争に『鳴釜』『瓶長』『山颪』事件(勝手に名付けた)に関わった縁から、噂のある人物……探偵の榎木津礼二郎を引っ張り出す役目を担うことになってしまうのだった。


……「猫」が招くのは、人か福か……。




◎雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑




●雲外鏡



「お話は聞きましたよ皆さん。初めまして、私が神無月鏡太郎です……」


……人畜無害で凡庸な、しがない配線工事会社の図面引きでしかない「僕」が何故こんな目に遭わなければいけないのか……。
本島※※は勝手に名付けた前回の『五徳猫』事件で知り合った奈美木セツの新しい就職先を斡旋して貰う為の依頼の帰りに……破落戸(ゴロツキ)共に拉致された上に、古びた空きビルの一室に監禁されてしまうのだった。
……その窮地を自らを刺させると云うバカらしい演技に巻き込む事で救ってくれたのは「駿東」と名乗る破落戸を纏めていた初老の紳士……。
だが、その時の経緯を「京極堂」にて相談している内に漸く本島※※が異常に気付いた頃……。
本島※※は警視庁の刑事、青木文蔵から自分を助けてくれた初老の紳士……駿東三郎の他殺屍体が件の古びた空きビルで実際に発見された事を知らされるのだった。
そして、霊感探偵 神無月鏡太郎と榎木津の勝負の行方は!?


……「鏡」に映るのは、真実か?……それとも虚像か?……。




◎面霊気 薔薇十字探偵の疑惑




●面霊気



「ぼ、僕は嵌められたんです」(※益田龍一語る)



……前回のやっぱり勝手に名付けた『雲外鏡』事件から僅かに十日程後……。
「僕」こと本島※※が暫く榎木津礼二郎には会うまいとの誓いを立てていた師走の午後の静寂を破ったのは……隣に住む熊みたいな親友……近藤だった。
……立て続けに起きた近所の空き巣騒ぎ、そして「待古庵」を経由してやっぱり「榎木津探偵事務所」に行く羽目になった本島※※は、軽薄に軽薄を重ねた様な薄っぺらい探偵助手の益田龍一が目黒と池袋で起きた盗難事件の容疑者として疑われている事を知るのだった。
……何故だか近藤の家から出て来た「国宝級」かもしれない古びた面。
……何故だか榎木津礼二郎が執心する「鬼苛め」の儀式の詳細。
益田を呆気なく見捨てた筈の中禅寺秋彦は、何気ない会話から「事件」の目的に気付き、本島※※までもが既に罠に嵌められている事を看破するのだった。


……そして「面」が呼んだ事態は、二人の「神」の降臨により思わぬ結末を迎える……。




【主要登場人物】



  • 益田龍一

「ワタシコメクイタイデス」
とことん軽薄な探偵助手。
……今回は予期せぬ罠に嵌まり、酷い目に遭う事に……。
いつの間にかエチオピヤ人にされてた。
別名:ナキヤマ、マスカマ、マスカマダ・カマスカス、コソドロ、犯罪男……etc


  • 安和寅吉

「馘だ馘」
益田の受難に何故だか嬉しそうな探偵事務所の世話役。


  • 青木文蔵

「相手が悪いよあんた」
一時は派出所に左遷されていたものの、大磯の事件(『邪魅の雫』)の功績からか、逸早く警視庁に戻った小芥子頭の童顔刑事。
本島※※と益田の二人を結果的に戦々恐々とさせる。
「薔薇十字団」では無いと言い張るが……。


  • 鳥口守彦

「蛇口は蛇ですな」
※↑今回の間違い。
カストリ雑誌「實録犯罪」の記者。


  • 中禅寺敦子

「罪……あると思うんですけど」
泣く子も黙る「稀譚月報」の記者。
いつも可愛い陰険な古本屋の妹。


  • 今川雅澄

「万人が望む姿なのです」
変な顔をした古物商「待古庵」の主人。
歳を重ねたら男前。
……何故だか今回は意地が悪いぞ。


  • 沼上蓮次

「鍛冶屋から化け猫を落とせばいいんすよ。退治する前に」
在野の妖怪研究家で中禅寺の友人。
たまたま居合わせた事で『五徳猫』事件に協力する。
……かなりノリの良い演技派。


  • 奈美木セツ

「悪いけどあたしはまだ生まれて二十年経ってないもの。昭和の子なの。それより本当に判って貰えたのかしらあたし達の関係」
……信濃家に仕えるメイドで自称「薄幸の美少女」……だが、本島※※らの評価は中華蕎麦屋の丼なんかに描かれている中国の子供。
かつては織作家に仕えていた(『絡新婦の理』以来の登場)。


「礼二郎、いつか必ずブチ殺すからな」
相変わらず麻布署に左遷中の四角い刑事。
榎木津礼二郎の親友を辞めるに辞めれない男。


「どうする榎さん。また……暴れるか?」
……やっぱりノリノリの古本屋。
どうもこの人はこっちが「地」らしい。
久々に仏頂面のレベルも更新された。


  • 近藤

「お主、何か最近性格変わらないか?」
本島※※の隣に住む紙芝居描き。
時代劇が好きでやや時代掛かった口調と所作を取る。
見ず知らずの筈の榎木津曰く、熊猫。


  • 本島※※

「え……えのきづぅ?」
今回も語り部を務める依頼下僕の図面引き。
通称は本権、金悟郎、五郎、文吉、馬之進、五十三次……etc
前回に引き続き、今回は下の名前がオチに使われている。
因みに正解は


本島俊夫

……である。


「にゃんこ」
……白面の貴公子にして腕力最強の超人探偵。
「世界で唯一」の探偵の中の探偵。
今回は寧ろ象徴、狂言回しとしての役割が強い。
……ラストにはなんと、噂の御父様(※榎木津幹麿元子爵)までもが登場。






【余談】


……言わなくたって気付くと思うが、前回から各話のタイトルが繋がっている。
※『憂鬱』→『鬱憤』→『憤慨』→『慨然』→『然疑』→『疑惑』


また、シリーズの時系列作品としては、現時点での最後期に当たる。


















榎「にゃんこ、にゃんこ、にゃんにゃんこ♪可愛いなあ……欲しいなあ……ツイキとか云うのをすればイイのか?……生憎と神は世界を創るが過去は振り返らないので、自分の行いをつらつらと記す様な下品な真似なんかしないのだ……!でもにゃんこは欲しいしぞぉ……ヤレ!……ああ違う!誤字があるぞぉ……右だ、左だ、真ん中だ……右だと云ってるだろうがこの愚か者が!」


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