タニノギムレット(競走馬)

ページ名:タニノギムレット_競走馬_

登録日:2023/06/21 Wed 03:09:00
更新日:2024/07/05 Fri 13:59:02NEW!
所要時間:約 9 分で読めます



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その切れ味に見る者すべてが酔いしれた


新世紀型ダービー馬



週刊100名馬 EX4 表紙より


タニノギムレットTanino Gimletは日本の元競走馬・種牡馬。
常識という名の埒を蹴り壊し、未踏の地平を駆け抜けた名馬である。


メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
タニノギムレット(ウマ娘 プリティーダービー)




【データ】


生誕:1999年05月04日(24歳)
父:ブライアンズタイム
母:タニノクリスタル
母父:クリスタルパレス
生国:日本
生産者:カントリー牧場
馬主:谷水雄三
調教師:松田国英(栗東)
主戦騎手:武豊
生涯戦績:8戦5勝[5-1-2-0]
獲得賞金:3億8601万円


主な勝鞍:02'東京優駿(GⅠ)、02'スプリングS(GⅡ)、02'アーリントンカップ(GⅢ)、02'シンザン記念(GⅢ)


【カントリー牧場の憂鬱】


さて、タニノギムレットについて語る前に、まずは彼の故郷───カントリー牧場の沿革について記すこととしたい。


1963年、実業家の谷水信夫氏によって創業。
その育成方針は、超ウルトラスパルタ調教の一言でおおよそ説明できる。
幼駒のうちから過酷な鍛錬を課し、ついていけない馬は容赦なく淘汰する。
過激を通り越して無謀とも言える手法は「谷水式ハードトレーニング」と揶揄され、信夫氏本人も「豚を持ってきても走るようにしろ」と嘯いていたという。
そうした中から1968年皐月賞馬のマーチス、同年日本ダービー馬のタニノハローモアが現れ、1970年にはタニノムーティエが皐月賞・日本ダービーの二冠を達成。
創業から10年足らずで日本競馬の頂点を極め、日高のトップブリーダーと評価されるに至ったのである。


……しかし、そんなカントリー牧場を突然の悲劇が襲う。
1972年、信夫氏が交通事故によって急死
牧場は長男の雄三氏に引き継がれたものの、タニノチカラが73年の天皇賞(秋)・74年の有馬記念を制して以降は長らく低迷し、重賞馬を散発的に出すのがやっとという状況になってしまった。
実のところ、そうなった原因自体ははっきりしており、改革を進言する関係者もいたそうなのだが……当時の雄三氏はそれを聞き入れず、
自らの方針を改めようとはしなかったのだという。


だが、待ちわびた転機がついにやってくる。
五冠馬シンザンを筆頭に多数の名馬、そして無数のホースマンを育て上げ、日本競馬の発展に多大な貢献を果たした偉大なる元調教師───武田文吾氏が牧場を訪れ、こう指摘した。


「馬が放牧地の外の草を食べたがっている。馬にかわいそうなことをしてはだめだ」


雄三氏は拡大路線を進め、繁殖牝馬の数を増やし続けていた。
結果として馬に摂られる栄養分が土の地力を上回り、土壌が痩せてまともな牧草が育たなくなってしまったのである。
そんな環境で馬が健全に育つはずもなく、低迷は半ば必然だったのだ。


天下の「タケブン」に言われては雄三氏も押し黙るほかなく、ついに経営方針を変更。
増えすぎた繁殖牝馬を整理し、痩せ細った土壌の改良を進め、外部血統の導入にも着手した。
カツラギエースのことは気にするな
そうした中で輸入された繁殖の1頭がタニノシーバードであり、
クリスタルパレスとの間に生まれた牝馬、タニノクリスタルはオープン馬となってクラシック出走を果たすなどなかなかの活躍を見せた。
最終的には40戦3勝という実績を残し、カントリー牧場で繁殖入り。
4番目の配合相手としてブライアンズタイムが選ばれ、1999年5月4日に無事鹿毛の牡馬が誕生。
冠名の「タニノ」にカクテルの一種「ギムレット」を合わせ、タニノギムレットと命名された。


タニノムーティエのダービー制覇から実に31年。
名門牧場復活の担い手、そして新たなる世紀の旗手として、タニノギムレットはターフを疾駆することになる。


【未踏の道へ】


ここからは例によってディープな話になる。


まずはこの記事を読んでくださっている皆様への質問から始めることとしたい。


「あなたが生産者なら、どんな馬を種牡馬にしたいですか?」


……漠然とした答えが許されるなら、「大レースで勝つ仔をバンバン出す馬」という話になるだろう。
仔は親に似る。目標となる大レースに勝ったことのある馬の仔であれば、同じレースを勝つ可能性は高いと想定できる。
そうした考えのもと、日本中央競馬会(JRA)はクラシックレース───最も権威のある繁殖選定競走として、以下の5つを規定している。


レース名対象施行条件開催時期(目安)
桜花賞3歳牝馬阪神1600m4月2週
皐月賞3歳牡馬・牝馬中山2000m4月3週
オークス3歳牝馬東京2400m5月3週
日本ダービー3歳牡馬・牝馬東京2400m5月4週
菊花賞3歳牡馬・牝馬京都3000m10月4週

選定競走たる定義により、これらのレースに勝った馬は繁殖としての価値を保証される。
つまるところ、クラシックレースを勝つ馬を生産することが馬産に携わる人々の一大目標となるわけである。
菊花賞はいらんとか言ったやつ厩舎裏な


……もう少し詳しく見ていこう。
クラシックレースのうち、菊花賞を除く4レースは3歳春の開催となっている。
一般的な競走馬は4~5歳で能力的に完成するとされているが、それよりもかなり早い段階で選定を行うということになる。
まあ考えてみれば当然で、馬というのはそこに存在するだけでかなりのお金がかかる。
「10歳まで走らせたら大きいところを勝てるかもしれません」と言われて、なるほど大したものですねと受け入れられる御大尽がどれだけいるのよという話である。
3歳春から能力を発揮できる「早熟性」───種牡馬にとっては不可欠な要素と言えるだろう。


また、クラシックの中にあっても一段上に置かれるレースが存在する。そう、日本ダービーである。
レース自体の権威もさることながら、2400mという距離も非常に価値が高い。
スピード、スタミナ、勝負根性、操縦性……どれが欠けても勝利はおぼつかない。
日本ダービーを勝つことは競走馬としての総合力の高さを示すことにほかならず、ゆえに2400mは日本の「チャンピオンディスタンス」とも評される。
2400mのレースを勝てるだけの「強さ」───種牡馬としては最大級のアピールポイントと言えるだろう。


早熟性と2400mへの適性。ここまではご納得いただけたと思う。
しかし、話はそう単純ではない。この2つを備えていれば万事OKということには残念ながらならない。
理由は日本競馬の競走体系にある。
クラシックレースは桜花賞以外中長距離の設定となっており、日本競馬が中長距離に重きを置いていることは見て取れる。
だが、クラシックレース以外のところを見てみると、スプリントやマイル───短距離のレースの方がずっと多いのだ。
考えてみれば、クラシックに出られる馬はほんの一握り。牝馬はともかく、牡馬の大半は種牡馬入りすることなどできない。
そうした馬はレースにたくさん出て賞金を稼ぐことが至上命題になるわけで、負担の少ない短距離レースが増えるのは自明の理である。
2400mに強いだけでは、種牡馬として潰しが効かないのだ。


短距離戦で求められるのは一にも二にもスピード。だがしかし、速すぎてスプリントに特化してしまうとそれはそれで潰しが効かない。
種牡馬としての使い勝手を求めるのであれば、もう少し長い距離───マイル近辺で結果を出せる速さが欲しい。


  • 3歳春から能力を発揮できる早熟性
  • 2400mのレースを勝てる強さ
  • マイルレースを勝てる速さ

……まあ、競馬にある程度でも馴染みのある人なら、きっとこう思うことだろう。「無理じゃね?」と。


早熟性はまだいい。問題は2400mとマイルの両立である。
距離が800mも違えば、レースの展開はもはや別物へと変貌する。2400mの馬がマイルレースに出てもまず流れについていくことができないし、逆なら早々に体力を使い果たし失速してしまうだろう。
そもそもとして、クラシックに牡馬の出られるマイルレースは設定されていない。資質を示す舞台がないのだ。
2歳GⅠの朝日杯フューチュリティステークスを使う選択肢もあるにはあるが、率直に言って時期が早すぎる。
クラシックと同一視することは間違ってもできないし、早熟を通り越した早枯れのレッテルを張られる事態にもなりかねない。この頃は中山1600mのクソコースだったし


では、上の条件をすべて兼ね備えた種牡馬を生み出すことは不可能なのか?
答えはである。クラシックでこそないが、3歳春に行われるマイルGⅠレースが日本競馬には存在している。


レース名対象施行条件開催時期(目安)
桜花賞3歳牝馬阪神1600m4月2週
皐月賞3歳牡馬・牝馬中山2000m4月3週
NHKマイルカップ3歳牡馬・牝馬東京1600m5月1週
オークス3歳牝馬東京2400m5月3週
日本ダービー3歳牡馬・牝馬東京2400m5月4週
菊花賞3歳牡馬・牝馬京都3000m10月4週

日本ダービーとNHKマイルカップを両獲りし、種牡馬としての価値を極限まで高める
そんな理想を追い求めた調教師───栗東・松田国英師のもとで、タニノギムレットは競走馬としてのキャリアをスタートすることになったのだった。


【祝杯をこの手に】


名門牧場の看板を背負い、栗東トレセンに乗り込んだタニノギムレット。
筋骨隆々の逞しい馬体は多くの人々の目を引き、競走馬としての成功を予感させた。
……しかし、ぶっちゃけどう見ても短距離かダートの馬だろという感じだったためか、デビュー戦は2歳8月の札幌ダート1000m。
ここを2着とし、冬までの休養に入ったのだが……予想外のアクシデントがタニノギムレットを襲う。


お馬さんのトレードマークにしてチャームポイント、しっぽの骨を折ってしまったのだ。


なんだしっぽかと思うかもしれないが、実のところ馬のしっぽはレースにおいて重要な役割を果たしている。
コーナーを曲がるとき、馬はしっぽを使ってバランスを取るのである。
それが使い物にならなくなったとなれば、競走馬としての大成はまず望めない。実際、予後が悪ければ競走生活から引退することも視野に入っていたらしい。
幸いにして骨折は完治し、無事レースへの復帰も叶ったのだが、後のことを考えれば冗談でなく競馬界の分岐点になりえた出来事だったと言えよう。


タニノギムレットは12月に復帰し、阪神芝1600mの未勝利戦を勝利。
年明けからはかの天才・武豊を鞍上に迎え、シンザン記念を勝って見事重賞馬となった。
元がダート1000mのデビューとは思えない出世ぶりだが、ブライアンズタイムの産駒はこういう馬体の見た目で計れない奴が多いのである。
続くアーリントンカップも3馬身半の差をつける圧勝。この調子でクラシックもいただき……というところで、またもトラブルが発生する。


武豊が落馬事故で骨盤を折り、乗り代わりを余儀なくされてしまったのだ。そっちも折れるんかい


替わった鞍上は未勝利戦でタッグを組んだ四位洋文騎手。
復活のコンビで臨んだ皐月賞トライアル・スプリングSは後方から豪快に追い込み、テレグノシスをクビ差差し切っての勝利を飾る。
未勝利から破竹の4連勝。誰もが認める世代のトップとして、タニノギムレットは堂々クラシックの一冠目・皐月賞に臨んだ。


……だがしかし、この時点でそこはかとなく暗雲は漂っていた。
鞍上を務める四位騎手、決して悪いジョッキーではない。むしろ騎乗技術については日本でも5指に入るくらいに優れたものを持ち、フェアプレー賞も複数回受賞している。
しているのだが……どうにも安全騎乗に走りがちで、大舞台での勝負強さに欠けるのである。
実際スプリングSは薄氷の差し切り勝ち。そんな余裕ぶっこいた乗り方で大丈夫か?と思ったファンもそれなりにいた。
そして、その不安は最悪の形で的中する。


迎えた皐月賞、タニノギムレットは4角一番外側を悠々と回し、自慢の末脚を爆発させる。
あがり3ハロン34秒8は出走馬の中でもトップだったが………ここは直線の短い中山競馬場である。
なにより、相手だって世代トップの実力者たちなのだ。こんな舐めたやり口を許すわけもない。
勝ったのは好位から抜け出した人気薄のノーリーズン。タニノギムレットは追い込み切れず3着に敗れ、四位騎手は「100m余分に走っていた」との非難を浴びた。残当


次走は当然日本ダービー……ではなく、なんとNHKマイルカップ
前述した通り、松田国英師は競走馬のセカンドライフ……繁殖生活を重視しており、特に牡馬については「早い時期から1600mと2400mの両方で結果を残し、種牡馬としての価値を高める」という考えを持っていた。
前年のクロフネに続き、タニノギムレットはNHKマイルカップと日本ダービーの連戦───通称「松国マツクニローテ」に挑むこととなったのである。


……もっとも、タニノギムレットの征く道の過酷さはクロフネの比ではない。
クロフネは毎日杯をステップに使い、十分な間隔を開けたうえでNHKマイルカップに臨んだ。
しかし、タニノギムレットは皐月賞を使ってしまっている
皐月賞からNHKマイルカップは中2週、そこから日本ダービーはまた中2週。無茶どころの騒ぎではない。
普通の馬主ならまず許可は出さない強行軍だったが……タニノギムレットの馬主はかの谷水雄三氏。スパルタの何たるかを知り尽くした日高の名門、カントリー牧場の主である。
急遽復帰した武豊を鞍上に戻し、世紀のスパルタタッグの挑戦が幕を上げた。


NHKマイルカップは単勝1.5倍の圧倒的1番人気。
しかし最終直線で因縁のテレグノシスが斜行。タニノギムレットは進路を塞がれる不利を受け、無念の3着入線。
20分にも及ぶ審議が行われたが結果は変わらず、武豊も珍しく激怒したという。こんなんばっかだなこの馬
それでも不利の中で3着に突っ込んだ事実は馬の評価につながり、マイルレースを勝てる速さを示すことは叶った。
残すは競馬の祭典、日本ダービー。世代の頂点に立ち、2400mのレースを勝てる強さを示すのみである。


続く日本ダービーでも1番人気。
皐月賞馬ノーリーズン、青葉賞を制したシンボリクリスエスを交えた3強ムードの中で、タニノギムレットは栄光へのスタートを切る。
レースでは後方待機からの末脚勝負を挑み、今度は不利を受けることなく疾走。内で競り合うシンボリクリスエスらを1馬身差し切り、見事ダービーの栄冠を掴んだ。


やっぱり強かったタニノギムレット!


今度こそ!


今度こそ!!


今度こそ!!!


1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。


(フジテレビ・アオシマバクシンオー青嶋達也アナ)


鞍上の武豊は1998年スペシャルウィーク、1999年アドマイヤベガに続くダービー3勝目。
前人未踏の過酷なローテーションではあったものの、関係者は「馬は絶好調だし心配することはほとんどない」「杉本さん*1本命だけが唯一心配だ」と口を揃えて語っていたという。


ダービー後は秋シーズンを見据え、北海道で休養を取る。
しかし帰厩してからの調教後に左前浅屈腱炎を発症。全治6か月と診断され、秋シーズンの出走が見込めなくなった。
関係者による協議の結果、復帰までの道のりが険しいこと、馬産地の期待もあることから引退が決定。
札幌競馬場で引退式が行われ、タニノギムレットの短くも濃い競走生活にピリオドが打たれた。


【引退後】


引退後は社台スタリオンステーションで種牡馬入り。ブライアンズタイムの後継として大いに期待され、総額13億円のシンジケートが組まれた。
産駒は2006年からデビューし、初年度からウオッカが阪神JFを制覇。
今後おそらく出ないであろう日本ダービーの父娘制覇をも成し遂げ、GⅠ競走7勝を挙げる歴史的名牝となった。
しかしその後はぽつぽつと重賞馬を送り出すもののGⅠを勝つ馬は出ず、2013年にレックススタッドへ移動し、2020年には種牡馬を引退。
一応重賞馬のクレスコグランドとハギノハイブリッドが後継種牡馬に選ばれたが、2頭とも超不人気から数年で引退→引退馬協会のフォスターホースとなったため、サイアーラインの継続は絶望的である。


種牡馬を引退した馬には基本的に去勢処置が行われるのだが、タニノギムレットは引退時点で既に高齢だったため、体への負担を考え去勢は行われなかった。
種牡馬引退後は日高の薔薇親父ファームYogiboヴェルサイユリゾートファームにて功労馬として繋養され、近年(2024年3月現在)緑内障で左目の視力を喪いながらも元気に余生を過ごしている。
最近では同牧場のアドマイヤジャパンやレディアイコと同様にyogiboのPR動画にも出演し、各所で話題となった。
ヴェルサイユリゾートファームには公式Twitterアカウントがあるため、皆様もそちらをフォローして「ギム爺」の様子を確認してみてはいかがだろうか?


なお、2023年2月18日にウイニングチケットが死去したため、現状(2023年7月現在)で存命最高齢のダービー馬となっている。


【創作作品での登場】


2022年5月5日の4thイベント横浜公演2日目において初公開。
史実での厩舎の方針からか「疾さ」を重視するマイルと「強さ」を重視する中距離両方に拘っており、実馬が左目だけ三白目だった事を反映してか(右目に)眼帯を着用している。
また重度の厨二病でもあり、だいたいの熟語にカタカナのルビが振られる大仰な言い回しを多用する。
アピールとして柵を蹴り壊す為に『破壊神』と呼ばれているようだが、これはモデル馬のタニノギムレット号も繋養されている牧場の放牧地の柵を事ある毎に蹴り壊す為、スタッフ公認で『破壊神』と呼ばれているのが元ネタ。


【余談】


松国ローテの功罪


松田国英師のもとで松国ローテに挑み、1つ以上の勝利を掴んだ牡馬は3頭存在する。
前述したクロフネとタニノギムレット、そして見事ローテを完遂したキングカメハメハである。
この3頭ともが種牡馬としてGⅠ馬を輩出しており、種牡馬の選定として揺るぎない成果を上げていることは疑いがない。
しかしこのローテーションはまだ完成しきっていない、あるいは成長途上の馬を短期間のうちに酷使するものにほかならず、故障のリスクがつきまとう
クロフネはダート転向後に才能を開花させたものの、屈腱炎を発症し古馬戦線に進むことなく引退。
キングカメハメハも同年の秋に屈腱炎を発症し、同じく引退に追い込まれた。
また、昆貢調教師のもとで松国ローテに挑み、史上2頭目のローテ完遂馬となったディープスカイはクラシックイヤーこそ無事に駆け抜けたものの、秋古馬戦線を前に屈腱炎を発症。
あの伝説の天皇賞(秋)以降バチバチのライバル関係であったウオッカへのリベンジを果たすことなく引退となってしまったため、このローテーションにかなりの批判が集まっているのも事実である。
一応ウオッカと同期のアサクサキングス(栗東・大久保龍志調教師)はタニノギムレットローテに宝塚記念を重ねる春GⅠ4連戦4連敗を経て菊花賞馬に輝き、5歳春にも重賞2勝を挙げたが…。
総じて「肯定はできないが否定もしづらい」という、なかなか評価が難しいローテーションとなっている。



ヴェルサイユの破壊神


…と、ここまでつらつら述べてきたが、近年彼の名前があらぬ方向で知られることとなった。
柵の破壊である。
ことあるごとに牧柵を蹴り壊すのである。
実際には牧柵に限らず、飼葉桶を嚙み砕き*2馬房の壁に大穴を開けるなど破壊の限りを尽くしたため、牧場スタッフから「破壊神」の異名を賜ることになった。
牧柵絡みのエピソードは枚挙に暇がなく、


  • 移動してきた初日だけで4本破壊*3
  • スタッフから「牧柵代も暗算できるようになった」と遠い目をされる
  • バースデードネーションでは「1本でも牧柵の資源が守れるように、誕生日をお祝いしたいと思います」と受付ページに書かれた上、彼の項だけ「牧柵基金」という追記あり
  • 破壊された牧柵の修繕資金調達のため、残骸を材料としたアクセサリーの販売が開始される
    しかも牧場スタッフは当初「一歩間違えれば命に関わる行為だから」という理由で残骸の商用利用に難色を示していたが、あまりにも壊されまくったためグッズ化に手を出さざるを得なくなってしまったというオマケ付き*4
  • 牧柵を蹴ってケガをする馬もいる中で、タニノギムレットはケガひとつせず狙って綺麗に蹴り壊す*5
    しかし2023年5月後半頃にケガをしたらしく、左脚にバンテージが巻かれることに*6
  • そもそも牧柵に近づけさせないために、牧柵近くに1本2万円もするグリーンコーンを6本も使った生垣が設置される
    ……も後日別の場所の柵が蹴り壊されたうえ、コーンが植えられた場所は木と木の間から時折ギムレットがひょっこり顔を出す面白スポットになる おいでよギムの森
  • 2022年に壊した柵の数がプロ野球の村上宗隆(東京ヤクルトスワローズ)選手のシーズンホームラン数*7とほぼ同じ
  • yogibo作製のアプリ「yogiboCMメーカー」や公式CMでの職業欄には元競走馬・破壊神と記載され視聴した人々の腹筋をも破壊する

などなど。
ついにはヘドバンしている映像にデスメタルの音楽を後付けした動画が公式で公開されるに至った。
彼の所業には隣の放牧地の後輩・ローズキングダム*8も恐怖していたようだが、最近はどうも感化されたのか、まれに柵を蹴り壊すようになったという。
ちなみにタニノギムレットはローズキングダムに感化されてぐいっぽ*9を覚えてしまった。


普段からこんな調子なのでさぞ気性が荒いのか……と思いたくなるが、
実際には柵や備品を壊す時以外はおとなしく、放牧地から脱走することもないのだという。脱走したら柵を破壊できないからね
牧場を訪れた見学者に対しても人懐っこい面を見せたりと親しまれている模様。


追記・修正は、牧柵を鮮やかに蹴り壊しながらお願いします。


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  • 引退後に人気者になるとは思わなかった -- 名無しさん (2023-06-21 07:39:53)
  • 現役時(悲願のダービー馬)・種牡馬時代(女傑ウオッカの父)・種牡馬引退後(破壊神)と年代によってキャラの方向性が違う変な親父 -- 名無しさん (2023-06-22 18:01:15)
  • 柵破壊したり壁蹴り壊したりしても大人しいの、こうすれば人間が来て構ってもらえると思ってる説あるの笑っちゃった -- 名無しさん (2023-07-08 18:33:01)
  • 目の治療してる時の眼帯姿がイケメン過ぎてわろた。風に棚引いてる鬣がまたかっこいいというw -- 名無しさん (2023-07-25 13:49:31)
  • 会いに行ってきたけど、去勢してないとは思えないレベルの落ち着きでびっくりした。自分から近寄ってきて写真撮らせてくれるし、頭のいい馬なんだなぁと。 -- 名無しさん (2023-08-02 20:38:14)
  • 見える場所に人か馬がいないとずっと嘶いてるレベルで寂しがり屋なんだとか -- 名無しさん (2023-08-03 03:20:58)
  • 今年二十本目の柵破壊だそーで -- 名無しさん (2023-09-18 19:36:41)
  • 去年に比べれば大人しくなったな -- 名無しさん (2023-09-18 20:25:54)
  • 2024年もさっそく破壊神を発揮しているようで何より -- 名無しさん (2024-01-02 18:20:55)
  • ノヴェリスト号、スイーズドリームス号も相次いで柵を破壊している模様 -- 名無しさん (2024-01-07 16:38:54)
  • ギム爺左目見えなくなってたんか... -- 名無しさん (2024-03-27 12:43:31)
  • 孫がGI制覇おめ -- 名無しさん (2024-05-12 16:47:45)
  • ↑しかも父方の祖父がダービーで競った相手のシンボリクリスエスという -- 名無しさん (2024-05-21 13:03:01)

#comment(striction)

*1 関西テレビのアナウンサー、杉本清。彼が本命に挙げた馬は何故か負けることが多かった。
*2 後にゴム製に変更。
*3 ギムレットの場合は自分から狙って蹴り壊しているらしいので、一種のライフワークとして柵破壊に勤しんでいる節が見受けられる。
*4 コロナ禍で客足が減っていたのと、ロシアのウクライナ侵攻により発生した「ウッドショック」による木材の価格上昇も後押しになってしまっている。
*5 一応ギムレットの放牧地の柵はケガをしないよう壊れやすい材木を使用している。
*6 「怪我をさせるのが怖いのなら柵の材質を変えるなりなんなりで壊れないようにすればいいんじゃないか」と思うかもしれないが、柵の材質を変えて蹴り壊せないようにすると、壊せないことで馬がストレスを溜めてしまったり、反動で脚の骨が折れたりと却って更なる怪我に繋がる可能性もある為、いっそ壊して貰った方がストレス発散にもなってよいらしい。サラブレッドというのは非常にデリケートなのである。
*7 56本。NPB単独2位の記録にして、この年に首位打者、最多本塁打、最多打点の三冠王を獲得。
*8 キングカメハメハ産駒。主な勝ち鞍は2009年朝日杯FS、2010年ジャパンカップ。「ローズ」の名の通り、ローザネイから始まる由緒正しい血統「薔薇一族」に連なる競走馬。
*9 齰癖とも。馬の悪癖の一つで、柵などの固定された物体を上顎の歯で咥え、これを支点として頭頭を曲げながら空気を飲み込む行動。消化器疾患と疝痛の原因になるので、癖になるのは好ましくない。

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