登録日:2022/08/04 Thu 20:18:16
更新日:2024/06/25 Tue 13:50:52NEW!
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『テロール教授の怪しい授業』とは、日本の漫画作品である。
原作はカルロ・ゼン、漫画は石田点。
2018年からモーニングにて連載開始、途中でWebコミックであるDモーニングに移ったが、2022年、全4巻で完結した。
概要
テロリズムやカルト宗教・マルチ商法・陰謀論などにはまる人々に見られる「過激化」。
これについて、馬場大学のティム・ローレンツ教授からそのゼミの教え子たちが学んでいくと言うストーリー。
オウム真理教やISILなどの実例をベースに、テロリストやカルト宗教という存在について一般に抱かれているイメージが間違っていること、そして特に異常でもない一般の人達がいかに彼らにはまり込み、過激化していくかに触れていく。
その方法論として、カルト宗教やテロリストたちの勧誘の真似をしたり、テロリストの思考実験を学生たちにさせながら。
あらすじ
今年から大学に通うべく上京してきたとある男子学生は、人でごった返す馬場大学の入学式に来ていた。
ものすごい新歓の嵐をなんとか抜けた彼だが、いかにも胡散臭い「ボランティアサークル」から声をかけられる。
別の人達がそのサークルを追い払ってくれたのだが、その彼らも何かに誘おうとしてきた。
その彼らを止めたのは、いかにも濃い風貌の外国人教授、ティム・ローレンツだった。
ティム教授はその学生…佐藤を自身の運営するローレンツゼミの新入生相談会に誘う。
新入生相談会・ゼミオリエンテーションを経てローレンツゼミを選んだ佐藤を含む学生たちに、ティム教授は衝撃的な一言を放つ。
「こ の テロリストどもめー!!!」
学生たちを「有望なテロリスト予備軍」としてテロリズムや暴力や過激化を学ぶ彼のゼミが始まった。
登場人物
教員
- ティム・ローレンツ
顔から言動に至るまで滅茶苦茶濃い馬場大学*1の教授。
米国出身で金髪碧眼。日本語は全く問題ない。ただし学生のドン引きを日本語が難しいせいにすることはある。
専門は安全保障で、前職は「つまらない仕事」(本人談)だが、米国機密情報を扱ったこともあるらしい。
テロリストやカルトの手口を実演しながらローレンツゼミの学生たちを指導していく。
彼が学生たちをゼミに勧誘した方法自体が、他ならぬテロリストの勧誘の手口であり、その勧誘に引っかかった学生たちだからこそ、「テロリスト予備軍」なのである。
超のつくドーナッツ大好き人間で、ドーナッツをネタに話を進めることもしょっちゅう。
なおブラック企業研修をゼミ合宿として体験したりする*2ので、ゼミの就職率は大分いいらしい。
彼の濃さについて行けるかが本作への評価の一つの鍵になるだろう。
なお題名のテロール教授とは彼のことだが、作中でテロール教授と呼ばれたことは一度もない。
- 川島倖子
ティム教授のTA*3。大学院生。
基本的にはおだやか・しとやかな性格で色々濃すぎるティム教授と学生たちの緩衝材でもある。実は野心家であることもほのめかされている。
- 井下浩二
必修科目である政治学の教授。
ティム教授に振り回されつつも色々協力する。
ローレンツゼミの学生
- 佐藤光一
冒頭で勧誘されていた大学生。だが存在感が一番薄いのもたぶん彼。
政治専攻。ティム教授曰く「猫毛」。
地方から上京してきた。気弱でマイペースなため、自分を変えることを望んでいる。
- 澤村香子
ゼミの学生では紅一点。
気が弱くて引っ込み思案な性格。
- 秋川浩二
政治学専攻。意識高め・自意識過剰。
積極的に考え発言していく姿勢はあるが、所詮はまだまだ学生さんであるため裏は十分に取れていないことが多い。
- 村河順平
社会学地域研究の学生。ローレンツゼミの幹事でもある。
きっちり・真面目な学生。
しかし彼がカルト化した父親に対して採った方法は、真面目さ故ではあるのだが最もやってはいけない方法だった。
- 白川秀郎
経済学専攻。ふわふわとしたメガネくん。あまり考えなく振舞っているが、要領のよい現代っ子。
SNS情報から就職率につられてこのゼミに入ってきた。真面目な村河や秋川とは良くも悪くも対照的。
他4人とは大分視点が異なるが、勘はいいのか発言は割と鋭いことが多い。
その他
- 山村
警備会社「講談警備保障」の人。
東京オリンピックなどで警備を担当。
と見せかけて…
- 村河の父親
厳格で真っ当な公務員だったが、ネトウヨの運営するブログにはまってしまった。
それだけでなく、ブログに書いてあった通り「反日」とされた弁護士に大量に懲戒請求*4を行って、弁護士に逆に提訴されそうになる。
妻や息子は心配しているが、本人は裁判を迎え撃つと鼻息荒い。
- 遠崎茜
馬場大学の学生で、語学のクラスで白川の友人の女の子。
フェアトレード商品購入者たちを応援する組織に白川を勧誘するが…??
作中で学生に出された主な課題
- 写真7枚のうち、テロリストは誰だ?
- 学生でごった返す大学にテロリストの根っこがいる。発見してみよう!
- 東京オリンピックを舞台にしたテロで、「ドーナッツに対する世界的支持」を呼び起こそう!
- 少数精鋭のテロ組織がどんな人材を欲しがるか、考えてみよう!
- 近年最も重大な脅威をもたらしたテロリスト集団を育成する施設を白昼堂々・学費ゼロ・護衛付きで運営し、テロリスト育成に最も貢献した国はどこだ!?
- 「テロリスト坂本龍馬」を地域おこしの素材としてプレゼンしてみよう!
これらはほんの一部。
何故そうであるのかは、ちゃんと本作を読んでみよう。
『テロリストについてメディアを通じて学習したことは控えめに言ってもゴミ』
『カルト テロその他危ない団体からは逃げるのが一番』
『下手くそな勧誘活動をするカルトサークルの真の目的は、勧誘者の退路を断つこと』
『テロリストは下っ端まで含めて高い教育水準・生活水準の者が多い』
『テロリズムは普通とは違う視点で見れば極められた合理的手段である』
『「テロリストと自分たちは全く似ていない」「過激化した個人はビョーキであり自分は彼らのようにはならない」
と思い込む人ほど簡単に過激化する』
『脱過激化に銀の弾丸はない。過激化した当人が自分で気づく必要がある』
『思想傾向を問わず、テロ組織が欲しがる新人は、「一緒に働きたい奴」である』
『人間が間違えを認めることは非常に難しい。しかしできないことでもない』
『人は、解決策を現実の問題に合わせるべきなのに、現実の問題を解決策に合わせようとしてしまう』
『依存先をたくさん持っておこう』
『生活はとても大事なことは、テロリストも一般市民も同じ。
それを支えるお金の話を汚いことだという感覚だけは身につけてはいけない』
余談
「漫画として面白いか」は人を選ぶ面もあるが、テロリズム・カルト宗教・陰謀論・マルチ商法などの用いる手口に切り込んだ作品としてはかなりの知名度があり、現実でもそうした社会問題が発生する度に引用されることも少なくない。
ただし、本作を読んだからといって、「本作をマスターした自分は変な思想にハマって過激になることはない」なんてことは決してない。
そういう「自分だけは大丈夫!!」という思考を最も厳しく戒めているのも、また本作なのである。
「自分はwiki籠りみたいにならない」「wiki籠りは自分と違う」
そういう変な思い込みがある人間ほどかえって簡単に追記・修正しちゃうんですアニヲタwikiは。
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※項目作成相談スレの意見より、この項目はコメント欄を撤去した状態で作成しています。
*1 モデルは早稲田大学と原作者が明言している。本部キャンパスが新宿区高田馬場にあるためだろう。*2 洗脳の手口である一方、ビジネスマナーなども確かに学べる合宿ではあるし、よく見ると原作では「ブラック企業の研修」とは一言も言っていない。
*3 大学教授の学生向けゼミや講義をアシスタントする役。
*4 弁護士としての処分を求めること。なお、ネトウヨのブログの煽動から特定の弁護士に大量の懲戒請求が行われた事件は実際にも起きており、著作に当たって懲戒請求された弁護士も取材されている。
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