キタサンブラック(競走馬)

ページ名:キタサンブラック_競走馬_

登録日:2022/03/24 Thu 00:51:02
更新日:2024/06/18 Tue 11:42:53NEW!
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そして、みんなの愛馬になった。





キタサンブラックKitasan Blackは、日本の元競走馬、種牡馬。
2010年代中盤の日本競馬を代表する名馬であり、JRA顕彰馬にも選出された。


ウマ娘 プリティーダービー』におけるキタサンブラックはこちら→キタサンブラック(ウマ娘 プリティーダービー)





【データ】


生誕:2012年3月10日
父:ブラックタイド
母:シュガーハート
母父:サクラバクシンオー
調教師:清水久詞
馬主:大野商事
生産者:ヤナガワ牧場
産地:日高町
セリ取引価格: -
主戦騎手:北村宏司→武豊
獲得賞金:18億7,684万円
通算成績:20戦12勝[12-2-4-2]
主な勝鞍:15'菊花賞、16'-17'天皇賞(春)、16'ジャパンカップ、17'大阪杯・'天皇賞(秋)・有馬記念
受賞歴:JRA顕彰馬、16'-17'JRA年度代表馬・JRA最優秀4歳以上牡馬



【誕生】


2012年3月10日生まれの牡馬。
父ブラックタイド、母シュガーハート、母父サクラバクシンオーという血統である。
多少なりとも競走馬の血統について知識を持った人間であるなら、たぶんこう思うことだろう。
「うーん、ちょっと微妙かもしれん」と。


……さすがにあんまりなので、順番に解説していく。


父のブラックタイドは競走成績22戦3勝。主な勝ち鞍は2004年のスプリングS(G2)である。
皐月賞16着の後に屈腱炎を発症し、そのまま2年間休養。復帰後は勝利を挙げることなく引退した。
競馬界には掃いて捨てるほどいる「未完の大器」の1頭に過ぎず、本来なら種牡馬になれるような実績ではない。


そんなブラックタイドが種牡馬入りできたのは、ひとえにその血統のおかげであった。
サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘア、母父アルザオ。
そう、彼は無敗でクラシック三冠を制した不世出の名馬にして大種牡馬、“英雄”ディープインパクトの全兄*1なのである。
競走馬としてはあまり結果を残せなかったが、なにせ血統はディープインパクトと全く同じ
それが安く種付けできるとなったら、資金繰りの厳しい中小牧場からはきっと引く手あまたになる。
端的に言えば、弟のコネで種牡馬入りできたのが彼なのだった。なんとも散文的な事情だが、これもまた競馬である。
ただし彼の名誉の為にフォローしておくと、彼自身も皐月賞前、もっと言えば屈腱炎に罹る前はクラシック候補の一頭として大いに注目を集めていた馬ではあり、全弟の威光に胡座をかいていただけの馬ではない。
種牡馬としてもキタサンブラック含め5頭のグレードホースを輩出しており、十分に優秀と言える部類の馬だろう。


母のシュガーハートは未出走馬。
デビュー前調教でのいい動きもあって少なくともキタサンブラックのデビュー時よりは注目はされていた。
が、デビュー前に屈腱炎を発症してしまったため、レースに出ることすらなく繁殖入りしている。
母父のサクラバクシンオーはスプリント路線で大活躍した歴史的名馬であり、ここに関しては間違いなく評価できるバックグラウンドといえるだろう。


父は名馬の代用品。母は未出走。
母父は超一流のスプリンターであり種牡馬としても一流だったが……当然のようにスプリンターばかり出すことで有名であった。
ブラックタイドについても、初年度産駒のテイエムイナズマがデイリー杯2歳S(京都芝1600m)を勝つなど
弟よりは短距離向きの産駒を出す傾向を見せていた。
これではさすがに日本競馬の王道路線―――3歳クラシックでの活躍は望みにくい。
こうした血統背景を持つ「シュガーハートの2012」*2は、牧場関係者にこそ「体つきが良い」「素軽い走りをする」と評価されていたものの、
世間的な注目度はゼロに等しく、期待馬とはとても言えない立ち位置であった。


……しかし、そんな「シュガーハートの2012」を見初めたひとりの馬主がいた。
馬を見るなり「自分と顔が同じ二枚目」「顔と目が男前」とべた褒めし、その場で購入を決めたのである。
2つ目の言い分どっかで聞いたことあるな


馬主の名は大野穣
その目利きが競馬界を変えることになるなどと、当時誰が思っただろうか。



【馬主:大野穣について】


さて、ここからはちょっと趣を変え、先述した馬主の経歴について記述することとしたい。
いやだって、この人に触れとかんと項目が成り立たんし……


1936年、北海道にて誕生。
「NHKのど自慢」への出場をきっかけにプロの歌手を志し、高校を中退して上京する。
流し*3での仕事ぶりがレコード会社重役の目に留まり、作曲家・船村徹の門下からデビューを果たした。
デビューシングルこそ放送禁止不発に終わったものの、セカンドシングルの「なみだ船」がミリオンセラーの大ヒット。
その後も「函館の女」「与作」「まつり」といったヒット曲を連発し、演歌界の大御所としての地位を見事確立したのである。


その芸名は、北島三郎
そう、あのサブちゃんである。紅白のトリを数多く務め、おじゃる丸のOPも歌ったあのサブちゃんなのである。


サブちゃん馬主なんてやってたんだ、とこの記事を読んで初めて知ったという人もいることだろう。
ええやってたんです、50年以上。


馬主業というのはまあ本当に大変なもので、並大抵の資金力では続かない。
中央競馬の場合、安い馬でもお値段数百万円、それを1年維持するのにまた数百万円である。(地方ならさすがにもっとお安い。)
そのうえ、お金をいっぱい出せばレースで勝てるかというとそんな世界でもない。
10年続けてG1どころか重賞のひとつも勝てない、なんてのはザラにあるのだ。
サブちゃんに馬主としての印象が薄いのは、50年以上続けてなお大きなレースを勝てていないという切ない事情の表れでもあった。
相当気合の入った競馬ファンであっても、この時点ならキタサンチャンネル(2001年ニュージーランドトロフィー1着)とキタサンヒボタン(2001年ファンタジーステークス1着)の2頭を思い浮かべるのがせいぜいだったのではなかろうか。
そんなこんなで積み上がった含み損は実にビル2棟分。……ファンからしても、よくぞ馬主を続けてくださいましたという感じである。*4
ちなみに光栄の競馬シミュレーションゲーム「ウイニングポスト」シリーズ初期の作品では、サブちゃんを捩ったと思われる宮島一郎という馬主の持つ念願の大物G1馬「ミヤワンローズ」なんて馬が登場していたりする*5




そんなサブちゃんと半世紀の付き合いを持ち、名馬を生産すべく頑張ってきたのが、「シュガーハートの2012」を生産したヤナガワ牧場である。
ヤナガワ牧場は1967年、獣医であった梁川正雄氏とその子息の正克氏によって創業。
1989年に中央重賞初勝利を成し遂げ、2007年にはサンライズバッカスでフェブラリーステークスを制し初の中央G1制覇を果たす。
その後は一時低迷したのだが、ダートの王者コパノリッキーを出したことで完全復活。
日高の有力牧場としてファンにもその名を知られる存在となった。


ヤナガワ牧場は馬産の研究・開発にも余念がなく、海外への遠征や外部血統の導入など大変な努力を行っていた。
シュガーハートの母、オトメゴコロもそうした経緯で大手牧場から購入された馬である。
オトメゴコロ自身はシュガーハート1頭を産んだだけで他界してしまったが、シュガーハートが幸い牝馬だったことで血は繋がった。
そうした牧場の努力の結晶ともいえる仔がサブちゃんの手に渡り、レースを走ることになったのである。
お値段350万円*6で。


350万円。
これは正直かなりお安い。中央競馬を走る競走馬としては最安レベルと言える。
安馬の代名詞であるタマモクロスでさえ500万だったと書けば、どれだけ破格のお値段か実感できるのではなかろうか。
即決購入だったとか馴染みの馬主だったとかいう事情を差し引いても、馬に対する期待感の具合が察せられるところである。


……ともかく、「シュガーハートの2012」はサブちゃんの所有馬となり、冠名+父馬の名前で「キタサンブラック」と名付けられた。
ちなみに馬主としての名義である「大野商事」はサブちゃんの個人事務所「北島音楽事務所」の法人名義である。


350万円から這い上がる、男の道の始まりであった。



【大器堂々】


幼駒のうちはわりあい小柄で、走りも軽かったキタサンブラック。
しかし1歳を迎えて以降はぐんぐん成長し、見違えるほどの雄大な馬体に育った。
2歳になると栗東トレセン・清水久詞調教師のもとに預けられ、さらにビシバシ鍛錬を積む。
馬体はいっそうデカくなり、デビュー時の馬体重はなんと510kgに達した。
黒みを帯びた鹿毛の巨体は相当なインパクトがあり、世間では漫画「北斗の拳」に登場するラオウの持ち馬と合わせ、
「リアル黒王号」とも呼ばれていたらしい。
既にナムラコクオーってのがいるんですが……


これだけの大型馬となれば、当然デビューは遅れる。
2歳のうちには仕上がらず、初戦は2015年1月31日東京5Rの3歳新馬戦*7。1月最終週の東京の新馬戦といえばトウショウボーイ、グリーングラス、シービークインのデビュー戦となった新馬戦が1番有名だろう。
唯一の関西馬として出走したこのレースで3番人気に推されると、大外からの差し切りを決めて1馬身1/4差の快勝。デビュー戦を見事勝利で飾る。
次戦は2月22日東京7Rの3歳500万以下条件。9番人気の低評価だったが、大逃げを打ったマイネルポルトゥスを2番手から追走すると、直線半ばからハナを奪い3馬身差の圧勝。
2着は6番人気、3着も11番人気。上位人気馬は総崩れという大荒れの展開となった。


キタサンブラックは勢いそのままに皐月賞トライアル・スプリングSに出走。
番手から直線粘り込みを図り、共同通信杯勝ち馬リアルスティールと朝日杯FS勝ち馬ダノンプラチナを退けて勝利。
父との親子制覇を果たすとともに、皐月賞への優先出走権を獲得した。
年明けデビューからまさかまさかの3連勝、クラシックへの殴り込み決定である。


……だが、ここでひとつの問題が生じる。
キタサンブラックは前述の通りの大型馬、ファンも関係者も「まあ春には間に合わんだろう」と思っていた。
そもそもが母父サクラバクシンオー、競走馬としての本線は当然スプリントである。
ぶっちゃけてしまえば、クラシック登録*8なんてしてなかったのだった。おお、これでは皐月賞に出られない……。


しかし、そこは男サブちゃん。
追加登録の費用200万円を気前よく払い、愛馬のクラシック出走を実現させたのだった。
ありがとう サブちゃん ありがとう オグリキャップ


迎えた夢の舞台、春のクラシック。
日の出の勢いで成り上がった安馬は、ここで無情な現実を突きつけられることとなる。



【波乱万丈】


春のクラシック一冠目、皐月賞。
当日の1番人気は弥生賞勝ち馬サトノクラウン、2番人気は前述の共同通信杯勝ち馬リアルスティールとなった。
キタサンブラックは単勝9.7倍の4番人気。直接対決で下した相手より下の評価である。
……実際馬券を買っていた側からすればまあそうなるよな、という感じではあるが、陣営は内心悔しい思いをしていたことだろう。


もっとも、人気で結果が決まるならレースなどする必要はないのである。
ゲートが開くと、キタサンブラックは道中を2番手で軽快に追走。粘るクラリティスカイを直線捉え、同期の優駿14頭を従えての先頭に立つ。
しかし、そこに外からやってきたのがリアルスティール。先行策から直線押し出す堂々の競馬で脚を伸ばし、前を征くキタサンブラックに並びかける。


日高の成り上がりか。
それとも名門牧場のエリートか。
人々が固唾を呑んで見守った勝負の行方は、思いもよらぬ方向に転がった。


「外からドゥラメンテ!!!」


この年にJRAジョッキーとしてデビューしたイタリアの名手を背に乗せたある一頭の馬が4角最内からドリフトの如く外に持ち出し、失速しながら進路を確保。
そこから猛然と加速し、叩き合うキタサンブラックとリアルスティールを並ぶ間もなく抜き去る。
文字通りの桁違い、次元違いの末脚で2頭を引き剥がし、1馬身1/2の差をつけてゴールイン。


皐月賞を勝ったのは3番人気、ドゥラメンテ
父キングカメハメハ、母アドマイヤグルーヴ、母父サンデーサイレンス。
名門社台グループの歴史そのものとも言える血統から繰り出された、名前の通りの暴力的な末脚。
あまりにも凄まじい勝ちっぷりにファンは驚愕し、実況アナも「これほどまでに強いのか!?」と絶叫した。


キタサンブラックはよく粘ったものの、リアルスティールにもかわされて3着。
人気よりは上にきた、とポジティブに捉えることはできるが、勝ち馬との差は歴然と言っていい結果であった。
それでも馬券内は確保し、ダービー優先出走権も得たので追加登録料さえ払えば出走可能である。キタサンブラックの次走はクラシック二冠目、日本ダービーとなることが決まった。


迎えた競馬の祭典、日本ダービー。
1番人気は皐月賞馬ドゥラメンテ。単勝オッズは1.9倍である。
ダービーで単勝1倍台などそうそうあることではない。ファンの注目は誰が勝つかではなく、ドゥラメンテがどう勝つかという点に集まっていた。
キタサンブラックは皐月賞からさらに評価を落とし、単勝20.7倍の6番人気。脚質も距離適性もダービーには合わないというのが、この時点での冷静なファンの評価だった。


レースが始まると、キタサンブラックはいつものように番手先行。同じく先行すると思われたリアルスティールは後方待機となった。
……まあ後者については今でもぶつくさ言われている騎乗ではあるのだが、実際のところは「万に一つ、ドゥラメンテがかかって*9潰れてくれることを願った」のではないかと思う。
前に行ったところで目標にされてぶっ差されるのはわかりきってるわけだし……。


それでも奇跡は起こらず、坂の途中で早くもドゥラメンテが先頭。
キタサンブラックはいかにも苦しく、直線ずるずると後退。
リアルスティールも追いすがることすら叶わず、ダービーの栄光はドゥラメンテの頭上に輝いた。


ドゥラメンテ、クラシック二冠達成。
9年ぶりとなる春二冠馬の誕生に府中が沸く中、キタサンブラックは14着に沈没。
キタサンブラックの春は、怪物の猛撃に叩き伏せられる形で幕を閉じたのであった。


このダービーでドゥラメンテが得たレースレーティングは121。あのディープインパクトやオルフェーヴルよりも上である。
まだ3歳ではあるが、競馬界の玉座はドゥラメンテのもとに渡ったと皆が認識していた。
この桁違いの怪物にどう抗い、どう勝つか?
キタサンブラックはそういう現実と向き合い、戦っていくことを宿命づけられたのである。
だが……



【男の勝負】


ダービーから1ヶ月後。
社台グループお抱えの愛馬会法人―――サンデーサラブレッドクラブ*10より、衝撃的な発表が成された。


ドゥラメンテ、両前脚を骨折。
致命的な重傷でこそなかったものの、全治は半年以上先とされ、秋以降のローテは白紙となったのである。


王者が不在となったことで、競馬界の勢力図は一気に混沌としたものとなった。
キタサンブラック陣営は最後のクラシック、菊花賞への挑戦を決め、トライアルのセントライト記念に出走。
ここをいつもの番手追走から勝利し、菊花賞本番を迎える。


菊花賞当日。
キタサンブラックは単勝13.4倍の5番人気となった。
なんぼなんでも人気なさすぎだろと言いたくなるが、なにせ母父サクラバクシンオー、馬体重は530kgである。
キングヘイローの項に詳しいが、馬体はどこからどう見ても短いところ向き。
実際に府中2400mのダービーで沈没しているし、淀3000mなんてもつわきゃないと思われてたのだった。
セントライト記念は中山2200m、これを勝ったところでなんの参考にもならんだろという話*11である。
下手すると二桁人気にならなかっただけ御の字まであった。


……もっとも、こうした意見に異を唱える勢力も存在した。
今度はサクラバクシンオーの項を読んでいただきたいのだが、実は彼の血統自体は由緒正しき中長距離馬
距離がもたなかったのは頭バクシン真面目すぎて手抜きができなかったからゆえで、資質自体は中長距離向きだったはず、あるいは隔世遺伝する可能性もあるはずだ、との理屈である。


見た目どおりのスプリンターか、はたまた血統どおりのステイヤーか。
ファンと血統マニアたちの熱い視線を受けつつ、キタサンブラックは菊花賞のゲートに馬体を収めた。


レースが始まると、キタサンブラックは5番手を追走。
道中では一時順位を落とすも、直線猛然と追い込んで先頭に肉薄。
最後はリアルスティールの追撃をクビ差抑えて勝利。クラシック最後の一冠を手にし、オーナーのサブちゃんに初のG1タイトルをもたらした。



「祭りだ!淀は祭りだ!キタサン祭りだ!
キタサンブラックか!?リアルスティールか!?
北島三郎の夢が届いたか!?」

(吉原功兼アナ)



馬体重530kgは歴代菊花賞馬でも最高値。まさしく規格外の勝利である。
サブちゃんはかねてより「ここで勝てれば『まつり』を歌う」と公言しており、そのとおりにウィナーズサークルで同曲を熱唱した。
超有名歌手の粋なパフォーマンスにファンは沸き返り、その様子はニュースでも大きく取り上げられた。


3歳の締めは有馬記念を選択。
この有馬記念はGⅠ6勝を挙げた芦毛の暴れん坊・白いのゴールドシップのラストランとなり、例年にも増して多くの注目を集めていた。
キタサンブラックの主戦だった北村宏司騎手が怪我で療養中だったことと、ゴールドシップの鞍上が以前の主戦騎手だった内田博幸騎手に戻ったことが重なり、
キタサンブラックにはこの年ゴールドシップの主戦騎手を務めていた横山典弘騎手が騎乗。
ファン投票3位に選出され、レース当日は4番人気。1番人気はもちろんゴールドシップ。
レースは同期のリアファルと逃げで進めるも、2周目3〜4コーナーでリアファルは故障発症して失速する中粘ってはいたが最後の直線でゴールドアクターとサウンズオブアースに交わされ3着。
ゴールドシップは捲りが及ばなかったのか、はたまた燃え尽きてしまったのか8着。
まずは菊花賞馬としての実力を証明し、年明けからの古馬戦線に臨むこととなった。


なお、レース後にはゴールドシップの引退式が行なわれたのだが、記念撮影を嫌がったのかゴネにゴネる。
観戦していたサブちゃんが急遽「まつり」を披露し、間を持たせるという一幕もあった。
ゴルシさぁ……



【男の未練】


明けて2016年。
キタサンブラック陣営は新たな主戦騎手として言わずと知れたトップジョッキー・武豊を迎え入れ、産経大阪杯から始動。
ここを2着とし、春の大目標、天皇賞(春)に出走する。
当日はゴールドアクターに続く2番人気。打倒ドゥラメンテを狙うキタサンブラックにとっては絶対に落とせないレースであった。


キタサンブラックは有馬記念同様にハナを奪い、最初の1000mを1分1秒というスローペースで逃げてスタミナを温存。
直線粘り込みを図り、単勝13番人気の伏兵・カレンミロティック*12と熾烈な叩き合いを演じる。
一時は交わされるもド根性で差し返し、2頭もつれてのゴールイン。
写真判定の結果、ハナ差4cmでキタサンブラックが勝利。春の盾を掴み取り、打倒ドゥラメンテの1番手として堂々名乗りを上げた。


……そして、ここから遡ること2ヶ月。
ドゥラメンテが待望の復帰を果たし、始動戦の中山記念を勝利。
次走のドバイシーマクラシックではレース前の落鉄*13もあって2着に敗れたが、トラブルの中で2着に突っ込んだことはむしろ順調な回復ぶりをアピールするものであった。


迎えた春のグランプリ、宝塚記念。
キタサンブラックは国内王者の称号を引っ提げ、ドバイ帰りのドゥラメンテに三度挑むこととなった。
当日の1番人気はドゥラメンテ。単勝1.9倍。
キタサンブラックは単勝5.0倍の2番人気に推され、決戦のスタートを切った。


……ここでキタサンブラックに大きな誤算が生じる。
首尾よくハナを切ったはいいものの、ワンアンドオンリーとトーホウジャッカルがしつこく後方を追走。
うまくペースを落とせず、前半1000mを59.1秒というハイペースで逃げることになってしまう。
キタサンブラックの本領はスローに落としての逃げ先行、この展開はいかにも分が悪い。
ファンが天を仰ぐ中、キタサンブラックは先頭で4角を回り、最後の直線へと突入した。


キタサンブラックにとっては最悪とも言える展開。
だがしかし、彼の闘志は萎えていなかった。天才武豊の檄に応え、すべてを絞り出すかのように脚を伸ばす。
荒れた馬場が響いてか、ドゥラメンテの脚にいつもの切れがない。残り100mで未だ先頭はキタサンブラック。
挑戦者の根性か。それとも怪物の末脚か。
人々が固唾を呑んで見守った勝負の行方は、再び思いもよらぬ方向に転がった。


ハイペースを見越し、我慢の後方待機。
4角一気の押し上げから外に出し、豪快な末脚で前を捉える。
やってきたのは単勝8番人気の牝馬、マリアライト。
蛯名正義騎手乾坤一擲の追い込みが炸裂し、キタサンブラックをクビだけ差し切ったところがゴール板だった。


キタサンブラックはドゥラメンテにもハナ差差され、3着入線。怪物の打倒は惜しくも成らなかった。
しかし、その怪物も人気薄の牝馬に不覚を取ったのである。
競馬というのはかくも難しい、そう思わずにはいられないレースであった。


……そしてレース後、まさかの事態が起こる。


ドゥラメンテの鞍上、ミルコ・デムーロ騎手が馬場内で下馬。
馬に異変があった場合を除き、後検量前の下馬は認められていない*14
その場にいた誰もが事態を察し、それが最悪のものでないことを天に願った。


幸いにしてその願いは通じ、ドゥラメンテの命が失われることはなかった。
しかしレース後の検査において、複数の靭帯や腱が損傷していることが判明。
キタサンブラックが追い続け、ついに勝てなかった怪物の身体は、この時点ですでにボロボロになっていたのだった。
6月29日、ドゥラメンテ引退。
競馬界を蹂躙した怪物は、その真価を発揮せぬままターフを去ることになってしまった。


怪物が去ってなお、季節は巡る。
キタサンブラックは秋の緒戦京都大賞典を制し、日本馬の総大将としてジャパンカップに出走。
G1で1番人気に推されたのはこの時が初めてであった。*15
レースでは得意のスロー逃げを決め、サウンズオブアースに2馬身1/2の差をつけて勝利。
府中2400mを逃げて勝つのは並大抵のことではない。
キタサンブラックはここにきて完全に本格化し、見事競馬界の頂点へと駆け上がったのである。


年内最後のレースとなった有馬記念。
ファン投票では2位の菊花賞馬サトノダイヤモンドに2万票近く差をつけての1位に選出されたが、
馬券の方は僅差でサトノダイヤモンドに1番人気を譲る。
レースはマルターズアポジーを見ながらの番手で進め、直線粘り込みの態勢に移行。
手ごたえは申し分なし、これは勝てる!……と思った瞬間、サトノダイヤモンド渾身の末脚が炸裂。クビ差差し切られ2着に敗れた。
サブちゃんはレース前に「勝っても負けても歌う」と公言しており、暮れの中山にまつりの熱唱が響いた。


この年のG1を2勝し、1年を通じて出走レース全ての馬券に絡んだ安定感が評価され、キタサンブラックは年度代表馬と最優秀4歳以上牡馬のタイトルを獲得。
……とはいえ、ドゥラメンテには結局先着できなかったわけであるし、サトノダイヤモンドへのリベンジも果たさねばならない。
誰もが認める真の王者となるべく、キタサンブラックは二度目の古馬戦線を戦うことになった。



【俺がやらなきゃ誰がやる】


正念場となった2017年。
キタサンブラックはこの年からG1に昇格した産経大阪杯改め「大阪杯」を緒戦とし、先行策から直線抜け出しての勝利を飾る。


実のところ、この勝利は相当に大きな価値があった。
キタサンブラックの本領が「スロー逃げ」なのは前述したとおりだが、この戦法には大きな弱点がある。
他の逃げ馬に競りかけてこられると、うまくペースを落とせず共倒れになってしまうのである。
実際キタサンブラック自身も前年の宝塚記念でこの負けパターンに嵌り、脚が鈍ったところを差される憂き目に遭っている。
しかしこの大阪杯、キタサンブラックは番手よりさらに後ろでレースを進め、直線差し切るという技巧をやってのけた。
他の馬からすると、これは本当に絶望的としか言いようがない。
逃げるキタサンブラックに競りかけて潰しにいっても、あっさり前を譲られ先行策に切り替えられる。
結局競りかけにいった馬だけがスタミナを浪費する羽目になるわけで、逃げるとわかっていても手出しができない。
他馬の介入すら許さない逃げ。キタサンブラック必勝の競馬は、ここに完成を見たのであった。


次走は天皇賞(春)。
ここには阪神大賞典を快勝したサトノダイヤモンドも出走してきており、早くもリベンジの機会を得ることになった。
キタサンブラックは堂々の1番人気。しかし、1番人気で春天を勝った最後の馬はあのディープインパクト(2006年)である。
秋から春への引っ越しを果たした「天皇賞の魔物」をも相手取り、キタサンブラックは連覇に向けてのスタートを切った。


レースはヤマカツライデンが破滅的ハイペースでかっ飛ばす展開となり、キタサンブラックは2番手を追走。
……もっとも、ヤマカツライデン自身は人気薄のオープン馬に過ぎず、実質的に馬群を引っ張っているのは番手のキタサンブラックであった。
レースラップに注目してみると、残り600mまではハナを切っていたヤマカツライデンのものが残っているのだが、
キタサンブラックはその後ろで1ハロンあたり12.1秒のペースを13回刻み続ける驚異の走りを披露。
まったく緩むことのない2600mという地獄の消耗戦を演出し、バテたヤマカツライデンをかわして直線に突入。
あがり3Fを35.3秒の全体4位タイでまとめ、シュヴァルグランとサトノダイヤモンドの猛追を凌ぎ切って勝利。
掲示板に表示されたのはレコードの赤い文字。そのタイム、3分12秒5
ディープインパクトの神話的レコード3分13秒4を0.9秒も更新し、史上4頭目の天皇賞(春)連覇に自ら花を添えてみせた。*16
殊勲の鞍上、武豊は通算8つ目の春の盾。なにかがおかしい
サトノダイヤモンドへのリベンジを果たし、王者の地位を盤石なものとする。


そこから2ヵ月空けての宝塚記念。
ファン投票は堂々の1位。単勝オッズも1.4倍の1番人気。
サトノダイヤモンドは凱旋門賞挑戦のため不在となり、この年から創設された春古馬三冠*17が早々に達成されるのか!?とファンは沸き立っていた。
しかしレースでは直線まったく伸びがなく、なんと9着大敗
1着は香港ヴァーズ勝ち馬のサトノクラウン。同門サトノダイヤモンドの仇を取る大仕事をやってのけた。
この結果には陣営もファンも困惑。かねてより検討されていた凱旋門賞への出走*18も断念され、秋は国内に専念することが決まった。
ついでに春古馬三冠なんか挑むもんじゃないと認識された


秋は天皇賞(秋)から始動。
しかしレース直前に台風22号が接近。重軽傷者22名を出し、各種建造物にも甚大な被害が出たことで、レース中止すら取り沙汰される有様であった。
幸いにして開催は叶ったものの、当日は案の定グチャグチャの不良馬場。
宝塚記念の負け方が不可解だったこともあり、単勝オッズは荒れ馬場の覇者サトノクラウンに迫られるところまで上昇していた。
……そしてこのレース、キタサンブラックはあらゆる意味でファンの想像を超えたパフォーマンスを披露する。


スタートでゲートに突進し、まさかの出遅れ。道中は後方から進めることになってしまう。
これは万事休すか……と思いきや、荒れ放題の内ラチ沿いから徐々に位置を押し上げ、直線ついに先頭。
馬場の中央に持ち出してスパートをかけ、サトノクラウンの追撃をクビ差振り切って勝利。
鞍上の武豊は通算6つ目の秋の盾。だからおかしいってこの人
天才騎手渾身の騎乗にファンは大喝采を送り、同時に凱旋門賞遠征*19が果たされなかったことを嘆いたのだった。


この勝利により獲得賞金がディープインパクトを超え、JRA通算2位にランクイン。
同年の天皇賞連覇は史上5頭目*20であり、春天は最速・秋天は最遅レコードで勝利するという珍記録も達成した。


次走はジェンティルドンナ以来の連覇を狙ってのジャパンカップ。
しかし残り200mからまったく伸びず、シュヴァルグランとレイデオロに交わされての3着。
あのレースの後じゃそりゃこうなるよ!とファンは嘆いた。
レース中の落鉄がなければとの声もあったが、これも競馬だと落胆はしなかった武豊。
この秋の大目標にして引退レース―――有馬記念に向けて、着々と準備を進めていった。



【ありがとう キタサンブラック】


3度目の出走となった有馬記念。
キタサンブラック最後の雄姿を見届けるべく多くの観客が詰めかけ、単勝オッズは1.9倍の1番人気。
この頃にはもう競馬界の枠を超えた知名度を獲得しており、「サブちゃんのすごい強い馬が走る」というニュースは
競馬に興味のない人々からも注目を集めることとなっていた。


ゲートが開くと、キタサンブラックはいつも通りにハナを切ってレースの主導権を奪取。
得意のスローペースに持ち込み、直線力強く脚を伸ばす。
追いすがるシュヴァルグランやスワーヴリチャードらを凌ぎきり、引退レースを堂々の勝利で飾った。



「これが!男の!引き際だあああああ!!!

キタサンブラックゥゥゥゥゥゥ!!!

中山競馬場、すべての人が拍手を送ります!!!」


(アオシマバクシンオー青嶋達也アナ)



G1競走7勝は史上6頭目。鞍上の武豊は有馬記念3勝目*21*22
12R終了後にはお別れのセレモニーが開催され、サブちゃんが「まつり」を熱唱。
もはや社会現象となった「キタサン祭り」は、ここでひとまずの幕を下ろすこととなった。
だからユタカに歌わせるなとあれほど


年を跨いだ1月7日、京都競馬場にて引退式を挙行。
最初は「今日はキタサンブラックが主役ですので、まつりの熱唱はございません」とアナウンスがあったのだが、大勢のファンが集まったことを受けて撤回。
アカペラの「まつり」が響く中、キタサンブラックは第二の馬生へと旅立っていったのだった。
サブちゃんはやっぱし漢だった。


G1競走7勝という記録はシンボリルドルフテイエムオペラオーディープインパクトウオッカジェンティルドンナと並び、
2020年にアーモンドアイに抜かれるまで当時1位タイであった。
獲得賞金は18億7684万3000円となり、テイエムオペラオーを抜いて獲得賞金額1位の座も手に入れた*23
G1競走4勝の活躍が評価され、年度代表馬と最優秀4歳以上牡馬のタイトルを2年連続で獲得。
通算戦績は20戦12勝(12-2-4-2)。ダービー14着と宝塚記念9着を除けばすべてで複勝圏内に入るという、安定感の塊のような馬であった。
現役中も故障することなく3年間を駆け抜けており、過酷な春/秋古馬三冠にも果敢に挑むタフさを見せた。
実績に加え、無事之名馬の言葉をも体現したと言えよう。


そして2020年、JRA史上34頭目となる顕彰馬入りが決定。
実は2019年にも候補に入っていたのだが、必要な票数に5票届かず涙を呑んでいた。
記者投票はこれだからさぁ……



【終着駅は始発駅】


引退後は社台スタリオンステーションにて堂々と種牡馬入り。そのネームバリューから当然人気を集めた。
しかしながら、ディープインパクトの全兄という父馬の血統が種付け候補を限定すること、そんなパッとしない出自から調教で強くなったイメージ、
晩成のステイヤー*24という種牡馬としては特大の地雷要素持ち……と難点は山ほどあったため、種牡馬としての活躍は疑問視する層も多く、
ふっかけ気味だった当初の種付け料500万円はみるみる降下し、一時は300万円まで値下がりした。*25


ところがキタサンブラックの産駒は初年度から高い勝ち上がり率を見せ、G1馬も輩出、好パフォーマンスを続けて評価は一転うなぎ上りとなり、社台グループの新たな主力候補と目されるほどに。
種付け料も2022年は元の500万円まで持ち直し、2023年は倍の1000万円に増額、2024年にはなんと2000万円と2年続けて倍増で国内最高額となった。
種付け料の上昇は相手の牝馬の質が上がることにもつながるため、今後どのような産駒が生まれてくるのか注目したいところである。


現状の傾向としては印象に反して仕上がりの早い馬が多い一方、背腰の甘さによって本領を発揮できない産駒も見受けられる。
なお、4世代目まで生誕した中に1頭も栗毛の馬は産まれていないため、父ブラックタイドや叔父のディープインパクト同様ホモ鹿毛なようだ。*26
初年度産駒は2023年現在の時点でまだ4歳なので、古馬になってからも活躍できるのかという点は未知数。
気性の難しさ故に当たり外れも大きく、3歳(それも特に秋以降)に強くなる傾向があるドゥラメンテ産駒とは対になっている感もある。
ただどちらにも共通するのは、初年度産駒から早速G1馬を輩出する好スタートを切ったということ。
残念ながらドゥラメンテは5世代の産駒のみを残して2021年に病で早逝してしまったが、今後しばらくはトップ戦線で凌ぎを削り合う姿が見られることだろう。
ライバル関係は時代を超え、これからもつながっていくのだ。


以下は2023年12月時点で重賞を勝利した産駒。


初年度産駒

イクイノックス

2023年時点の代表産駒。馬名は天文学用語の「分点」*27で、父と母の名*28の中間という意味合いが込められている。
母父は2000年高松宮記念覇者のキングヘイロー。血統表にはその他にもキングヘイローの父にして1980年代ヨーロッパ最強馬として名高いダンシングブレーヴ、90年代の日本でブライアンズタイム・サンデーサイレンスと共に輸入種牡馬御三家を形成したトニービンといった名馬が名を連ねている。
父と同数とはいかなかったがG1を6勝……どころかG1を6連勝し、想像を超え続けるパフォーマンスで2022年秋~2023年秋の競馬界を席巻して駆け抜けた。父の種牡馬価値をとんでもないことにした主犯格功労馬
黒鹿毛の馬体に映える太い流星がトレードマークだがその形状のために付いたあだ名が「エクレア」
詳しくは項目参照。


ガイアフォース

9月に新馬戦でデビューするも2着に終わり、その後怪我などもあり未勝利戦を制したのは翌年の3月*29だった。
しかし小倉での国東特別をレコード勝ちし、菊花賞の前哨戦セントライト記念(G2)を制し父子制覇を成し遂げる。
前走成績で菊花賞では1番人気に推されたが、出負けから馬群に包まれたことで消耗してしまったのか、はたまた距離の壁に阻まれたのか見せ場を作ることが出来ずアスクビクターモアの8着に敗れ、同G1親子初制覇はイクイノックスに譲ることとなった。
明け4歳初戦はアメリカJCCを選択。単勝1.8倍と抜けた1番人気に支持されるもノースブリッジの5着と人気に応えられず。
これを受けて陣営はマイル路線への転向を選択。4月の読売マイラーズCに出走し、G1馬シュネルマイスターとタイム差なしの2着に大善戦。
確かな手応えを掴んだ陣営はそのまま安田記念へ。結果ここでも初のマイルG1で4着好走。先着された3頭が既にマイルG1での勝利経験があったメンバーだったことを考えれば大健闘だったと言えるだろう。
秋は天皇賞(秋)を目標にオールカマーを前哨戦に出走、一時先頭を走るタイトルホルダーに迫るも2000mを越えると徐々に余力を失い5着。
本命の天皇賞(秋)では先頭を走るジャックドールの番手でレースを進めるもハイペースの流れで最後は苦しくなり後続に交わされ5着に敗れた*30
次走にチャレンジカップを選択するも重賞の常連ボッケリーニやダービー4着馬など暮れのG3にしては結構メンツも揃う中1番人気を背負うも6着に敗れ、まさかの秋シーズン未勝利になってしまった。
2024はフェブラリーステークスから始動。血統的に母父クロフネなのでダートは悪くなさそうだが同父同世代ののウィルソンテソーロを筆頭に強敵が揃いで注目が集まる中、初ダートかつGⅠとしては初の2着というダート路線に期待の持てる結果となった。


ウィルソンテソーロ

ドバイWCを勝ったウシュバテソーロと同じ了徳寺健二ホールディングスが所有する一頭。
先述のイクイノックスの新馬戦で6着。転厩等もあり2戦目は3歳6月の東京、3戦目は7月の福島未勝利戦に出走するもどちらも掲示板外、とここまでは掃いて捨てる程いる未勝利馬の1頭に過ぎなかった。
転機となったのは8月暮れの新潟競馬。ここ2戦で騎乗した戸崎騎手の進言もあり、残り開催3日で未勝利戦がなくなるという瀬戸際でダート路線に転向すると1.8秒もの大差をつける激走を見せつけ才能開花。破竹の4連勝(うち3戦で上がり最速)でわずか4カ月半にして未勝利馬からオープン馬へと成り上がった
その後はオープン競走初戦の名古屋城Sこそ5着に敗れたものの、ハンデ制のダートグレード競走であるかきつばた記念(JpnIII)で全日本2歳優駿の勝ち馬ドライスタウトをハナ差競り落とし、産駒としてのダート重賞初制覇を達成。
次走は帝王賞(JpnI)を予定するも去年の東京大賞典はもっと賞金低くても出れたのに今年の帝王賞の出走ボーダーが異様な事になっていた為除外。*31マーキュリーカップへと向かう事に。
そしてマーキュリーカップではいつもの捲り逃げを仕掛けたテリオスベル*32に惑わされずに先行競馬から残り200mで抜け出すとそのまま4馬身ちぎり捨てて交流重賞連勝となった。
なおボーダー状況から見ると交流G1出走にはまだまだ話にならない程足りない模様*33
白山大賞典でも1番人気に支持され5番手でレースを進め最後は逃げるメイショウフンジンを交わし重賞(JpnIII)3連勝を達成した。
次走はJBCクラシックを予定するも南関東3冠馬『ミックファイア』が出走予定だったこともあり出走回避が続出、更にミックファイアも調子が戻らず出走回避で初のG1級挑戦はゲート割れ。
いつも通り番手でレースを進めたが最後は伸び脚を欠き連勝数は3でストップ。しかし、大井はこの開催からダートの質を変更しており、スプリントを地方馬が勝つなど結構波乱が起きていた、と言い訳はまだできるものであった。
次走にチャンピオンズカップを選択。鞍上はこのレースから原優介に乗り替わり。しかし前走と原?誰だそれ?という状況から単勝92倍の12番人気。
レースは後方待機からの大外ズドンを敢行、レモンポップにこそ届かなかったものの2着に食い込みキタサンブラック産駒初のダートG1連対となった。1番人気が勝ったのに馬連万馬券、三連単は190万超の大荒れに。
またこの馬もG1初連対は差し競馬であった
これで本賞金を加算できたので東京大賞典に出走できる...と陣営は安心していたのだが、事前登録の時点でウシュバテソーロとミックファイアが名を連ねていたため、中央、地方を問わず回避馬が続出。結局またゲート割れの9頭立て。おかげで賞金の問題を気にするまでもなくゲートインできた。
レースは誰もハナを切ろうとしないのを見るや、前走と打って変わって逃げの手を打ち、馬群を引っ張ることに。これはJBCで最終直線までに前に位置取れなかった反省を活かしたものだったと思われる。そしてそのまま最終直線を先頭で迎え、2番手集団の手応えが怪しくなりあわや2強共倒れの大金星な場面を作るも、最後は後方から差し脚を伸ばしたウシュバテソーロに交わされて2着。結局テソーロ2頭のワンツーという結果で、2023シーズンを終えた。
しかし、これは前残りのレースでしっかり差し脚を伸ばしたウシュバが強すぎたという他なく、逃げ粘ったウィルソンも、パフォーマンスの高さや脚質の自在性など、存分にポテンシャルを見せつけた格好。5歳シーズンもウシュバと共にダート界を盛り上げてくれることだろう。
ちなみに2024年の始動戦は招待が来ればサウジカップと表明していたものの、招待状が来るのが難しいことから、フェブラリーSに決定。こっちは流石に賞金で突っぱねられるとは考えにくいし


2年目産駒

ソールオリエンス

2頭目のGⅠ馬。馬名はラテン語で「朝日」の意で、母・スキア(古代ギリシャ語で「影」「日陰」の意)から連想したもの。
2頭目のG1ホースにして皐月賞を制し、イクイノックスが叶わなかったクラシック勝利を父にプレゼントした。
詳しくは項目を参照。


ラヴェル

7月の小倉の新馬戦でデビューすると、出遅れで後方からレースを進め差し切って勝利。
成長放牧に出された後はアルテミスステークスに出走、新馬戦で驚異的な末脚を見せたリバティアイランドの圧倒的人気もあり3番手評価。
レースでは再び出遅れ後方からレースを進め最後の直線で後方から差し切り、進路選択に手間取りスパートが遅れたリバティアイランドの猛追も振り切り勝利、キタサン産駒初の重賞牝馬となった。
次走は阪神JFを選択し4番人気に支持されるも3度目、しかも大外枠は全馬盛大に出遅れてしまい11着に敗れた。
3歳ではぶっつけでクラシック本番の桜花賞に臨むがまたも大外枠の17番枠。最終直線での不利もあり、またも11着(単勝10番人気)に敗戦。
しかしオークスでは一転して最内の1番枠を引き当て、強気の先行策から直線で一時は先頭を奪う激走。最後は一杯になったが、10番人気ながら4着と善戦した。
秋は前哨戦のローズSから復帰し2番人気に推されるも14着、秋華賞でも11着に終わった。


スキルヴィング

管理調教師はイクイノックスと同じく木村哲也調教師。
2歳10月の東京新馬戦こそタイム差なしの2着と惜敗するも、11月に2戦目の東京未勝利戦は上がり3ハロン33秒2(最速)で難なく勝ち上がる。
放牧の後は明け3歳初戦のゆりかもめ賞に出走し、これまた34秒0の上がり最速でちぎり捨てて0.5秒差の楽勝。
皐月賞戦線には向かわず、休養の後にダービートライアルの青葉賞に出走。4角11番手から直線だけで前方の全馬をゴボウ抜きし、またまた上がり最速(34秒1)で3連勝&重賞初制覇、ダービーへの切符を手にした。
なお、ここまで全レースでクリストフ・ルメールが手綱を執っており、ダービー本番でも継続騎乗が実現する見込み。
「青葉賞組はダービーを勝てない」というジンクスをも打ち破ることができるかが注目された。


迎えたダービーでは同じキタサン産駒のソールオリエンスが実質一強状態だったがそれに次ぐ4.5倍の2番人気に推される。
レースではいつも通り後方からレースを進め最終直線まで脚を貯めた…はずが最終直線でも反応がなく、ルメールも追うのをやめ、結果大差で最下位(17位)入線*34
異変を感じたルメールも入線後に下馬して誘導しようとするも、当のスキルヴィングは不自然な挙動を見せた直後1コーナーの内ラチ沿いで前のめりになり転倒、以後一切動かなくなってしまった。*35
この事態に関係者も集まってくるが、その後も全く反応がなく馬運車が到着した後幕を張る形で馬運車に運ばれた。*36
ファンは無事であることを願ったものの、数時間後にJRAにより急性心不全でこの世を去ったことが発表された。こうして、将来を嘱望されたであろう2023年の青葉賞馬は、僅か3歳という短い生涯を東京競馬場で閉じ、天へと駆けていった*37


ダービーで2番人気に支持された馬のあまりに突然の最期にファンが嘆き悲しみ、また「青葉賞組はダービーを勝てない」というジンクスも非常に後味が悪い形で継続することとなった。
このダービーを制したのはタスティエーラであることは先述したが、その馬主のキャロットファームはスキルヴィングの馬主でもあった。キャロットファームにとっては、所有馬からダービー馬誕生と同時に重賞馬を失うという、幸運と不幸が同時に起きた複雑な結果となっている。
レース後、木村調教師は「馬は一生懸命に走り、頑張ってくれました。おそらく長く苦しまずに天に旅立ったのだと思います。期待の大きな馬で、ダービーだけでなく、この先もと思っていただけにとても残念ですし、胸が苦しいですが、天国で幸せに過ごしてくれることを心から願っています」と述べた他、
ルメールも自身の公式Instagramを更新し「今日、Skilfing*38を失ったことは残念です。素敵な馬で、みんなに惜しまれるでしょう」と投稿し、それぞれ哀悼の意を示している*39
なお、関係者によると所属厩舎が位置している美浦トレーニングセンターにおいて供養が執り行われたという。




……とまあ、キタサンブラック産駒の有力馬はまるでドゥラメンテのように後方から切れ味で差し切るタイプが多い、と思いきや突如逃げや先行を行い好走したりとむしろ脚質自在の気を見せている
これにはファンのみならず日本最大手の競馬関連サイト「netkeiba」も首をかしげている。*40*41
なんにせよ、キタサンブラックの種牡馬生活はまだ始まったばかり。今後はどんな産駒を輩出しターフを盛り上げてくれるのか、ますますの活躍に期待がかかる。


【創作作品での登場】

お祭り大好き、元気で明るい人情家なウマ娘。「まつり」ということで勝負服も法被風のほか、カードイベントではそれらしき演歌を歌う一幕も。
髪飾りは桜をあしらったものとなっているが、これは母父サクラバクシンオーだからか。
アニメ第2期で主人公トウカイテイオーのファンの子供という役どころで登場し、最終回で成長後の姿が登場すると共に正式にキャラクターとして仲間入りした。


諸々の描写から正式登場時のバージョンは中学1年生という設定だと思われるのだが、なにぶん堂々たる体躯で知られるキタサンブラックであるため高身長で発育良好。アニメの幼女バージョンはせいぜい140cm台の小ささだったのが急にこの姿になったため成長しすぎだろと話題に*42
親友はサトノダイヤモンドという、競馬ファン間で「言うほどか?」と意見が分かれがちな設定も特徴である。後に同期・関連ウマ娘が増えて交友も広がったので気にすることでもなくなっているが。


そして2023年放映のアニメ第3期では主人公を務める。
放映直前にサプライズとしてサブちゃん本人から手紙が届いているほか、最終話放送直前には再びサブちゃんからビデオレターが届き、大晦日と元日に公開されたCMではまさかのご本人が登場した*43仕事は選んでくれ*44


菊花賞から引退有馬までほぼ一貫して黒潮組の若頭・黒として任侠編シリーズの主役を張っている。
深衝組の鋼(リアルスティール)とは兄弟の盃を交わした仲である他、金亀組の荒(ドゥラメンテ)や丸十組の冠(サトノクラウン)、心叫組の偉(シュヴァルグラン)達とはライバル関係にある。
また、引退後はかつてのライバルの遺児である録(タイトルホルダー)の元を訪れて発破をかける一幕も。


【余談】


長らく活躍馬に恵まれなかったサブちゃんだったが、キタサンブラックの大活躍を受け、ラストランの有馬記念に併せて
楽曲「ありがとう キタサンブラック」*45をリリース。
50年以上も馬主を続けてようやく名馬に巡り会えた流れはファンからも美談として受け止められ、「競馬の神様から北島三郎への贈り物」なんて言われ方もしている。
ビル2棟分の含み損も半分くらいは取り返したとか。それでも半分だけなのか……


また、キタサンブラックの活躍によってブラックタイド産駒の価格も高騰。
全弟に至っては1億越えの高額で落札されている。
サンデーサイレンスの血統が、ディープインパクトではなくブラックタイドから繋がる未来もあるのかもしれない。
今後も要注目である。


2023年時点で11歳となったキタサンブラックであるが、放牧地では自身で決めた箇所からダッシュを繰り返す『自主練』に励むなど自己管理を徹底しており、
今なお現役競走馬にも劣らない馬体を維持している。
そのストイックさたるや、関係者からも「何度か追い切りすれば現役復帰できる」と評されるほどである。
隣になった競走馬が釣られて一緒に走る流れも多いことから、ダイエット目的で近くの放牧地にいかせることもあるとかないとか……。



追記・修正は、「まつり」を歌いながらお願いします。


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  • お馬さん知らない自分でも知ってるくらい有名かつ強い馬なのに最初そんな安かったのか。 -- 名無しさん (2022-03-24 00:58:01)
  • あのディープインパクトの甥っ子なのに -- 名無しさん (2022-03-24 01:54:03)
  • データだけ見てもキタサン以前の父産駒見るとG1馬0・中央重賞馬たった3頭だしなあ。三冠馬絡みを見るとむしろ歴史上一番成功した三冠馬の親戚だぞ多分。 -- 名無しさん (2022-03-24 18:16:29)
  • 最高馬体重540kgという重量級ではあるが屈指の体高172cmという長身により随分スラリとした印象を与える。 -- 名無しさん (2022-04-10 08:53:20)
  • 虚弱の牝馬に種付けが多かったからか産駒の故障が結構目立つことに。 -- 名無しさん (2022-09-20 11:27:58)
  • イクイノックス秋天おめでとう!一番人気の呪いまで解くとは恐れ入った -- 名無しさん (2022-10-30 20:02:53)
  • 血統上はサンデーサイレンスにせよダンシングブレーヴにせよ末脚ぶった斬りと勝負根性に定評があるのでキタサンブラックが外れ値だったと見る事も出来る。……アレですかバクシン因子なんですか -- 名無しさん (2023-01-22 10:46:53)
  • ちょい次元違うなイクイノックス。 -- 名無しさん (2023-03-26 01:29:13)
  • ドゥラメンテのケガが無かったら菊花賞はどっちが勝っていたのかな?史実通りキタサンブラックが勝ったのか。それともドゥラメンテが三冠を達成していたのか。 -- 名無しさん (2023-03-27 21:26:09)
  • 今さらながらイクイノックスの走り見てきたけどあれなんやねん…マルゼンとかサイレンスとかそこら辺の領域まで行けるレベルなんじゃねえかこれ… -- 名無しさん (2023-04-10 02:05:28)
  • 桜花賞がドゥラメンテなら皐月賞はキタサンブラックだ -- 名無しさん (2023-04-16 16:43:04)
  • イクイノックスにしろソールオリエンスにしろ産駒が走ってない「様子見」のタイミングで配合してこうも結果を出しちゃうんだもんなあ そう遠くないうちにリーディングサイアーまで上り詰めてしまいそう -- 名無しさん (2023-04-16 19:38:10)
  • 最近こそ手慣れたけども体格のデカさと優しさから種付時には牝馬に遠慮しすぎて失敗してたという -- 名無しさん (2023-04-18 16:19:13)
  • サブちゃん馬主引退か...長い間お疲れ様だ -- 名無しさん (2023-05-08 23:26:02)
  • スキルヴィング…涙 -- 名無しさん (2023-05-28 17:00:40)
  • ↑辛えなぁ...スズカやライスの惨劇を目の前で見た人の気持ちが理解できたよ... -- 名無しさん (2023-05-28 18:45:56)
  • 速報 イクイノックス、追い込みもできる(宝塚記念勝利 -- 名無しさん (2023-06-25 17:17:58)
  • イクイノックスに勝てる馬なんているのか? -- 名無しさん (2023-06-25 19:50:21)
  • 令和のマヤノトップガン(脚質的な意味で -- 名無しさん (2023-06-25 21:57:05)
  • 追い込みやがったぞイクイノックス。ここまで活躍すると単独化も考えたい所ではあるよな。 -- 名無しさん (2023-06-25 23:25:42)
  • イクイノックス、流石世界一って感じの走りでしたね。もう比較対象がルドルフディープ級の歴史的名馬になりはじめてる気がします。欲を言えば彼らさえも超えて日本最強馬論争に終止符を打ってほしいくらいですな。 -- 名無しさん (2023-06-25 23:35:20)
  • 15年菊花賞の上位3頭は500kg越えの巨漢馬ばかりやったな -- 名無しさん (2023-06-27 13:23:04)
  • 今年のセレクトセールで億超え産駒が3頭、他合わせて6頭が約10億で落札されるというフィーバー中 -- 名無しさん (2023-07-11 15:45:11)
  • イクイノックス秋天出るか...おドウとの決着を付けられるかな -- 名無しさん (2023-09-19 12:59:33)
  • 将来的に種付け量がディープ並みになりそうだとかの噂が -- 名無しさん (2023-11-29 23:28:01)
  • ブラックタイド「もう引退で良いよね、ワシ…」 -- 名無しさん (2023-12-03 23:45:25)
  • 母父サクラバクシンオーだし皐月賞3着日本ダービー14着だったら普通に考えたら短距離馬だしダービー14着で長距離に見切りを付けて菊花賞に出走せず短距離路線に転向するルートもあったのかな -- 名無しさん (2024-02-03 08:13:28)
  • ウィルソンテソーロといいガイアフォースといい初年度産駒も全体的に当たりなのね。イクイノックスとかいう上振れのバグがノイズになるけど -- 名無しさん (2024-02-18 18:23:24)
  • 弟のシュガークンが青葉賞勝ってダービーへ。 -- 名無しさん (2024-05-11 20:01:06)
  • 注目株がまた出てきたらしいね… -- 名無しさん (2024-06-11 21:12:03)

#comment(striction)

*1 ある競走馬から見て、母と父を同じくする兄弟・姉妹関係にある競走馬のこと(弟であれば「全弟」、姉であれば「全姉」、妹であれば「全妹」)。競走馬は「母が同じであること」を兄弟(姉妹)である条件としているため、父が同じであれば兄弟として扱わない(もし父が同じ競走馬を兄弟として扱えば、例えば1000頭を優に超えるサンデーサイレンス産駒が全部兄弟という途方もない事態になってしまう)。ちなみに「ある競走馬から見て母のみが同じ競走馬」であれば「半兄(半弟)・半姉(半妹)」と呼ぶ。
*2 「シュガーハートが2012年に産んだ仔」の意。まだ競走馬としての登録名が決まっていない馬は便宜的にこのような呼ばれ方をする。
*3 楽器を持って繁華街の店を回り、客のリクエストに応えて演奏したり歌ったりする仕事。昔の演歌歌手には流し出身の人も多かったそうな。
*4 とはいえ、サブちゃん自身は「愛着ある地元北海道の馬産を応援したい」という志の元に馬主業を続けており、損得は度外視して中小の生産者から送り出された地味血統やセリ値の安い馬を積極的に購入していた。そのおかげで社台・ノーザン旋風が吹き荒れる中を存続できた牧場や血統も少なくなかったはずで、ある意味長きにわたって競馬界そのものを下支えしてくれた功労者とも言える。
*5 現行作品では別馬主の馬に変わり、冠名を改め「ユリノローズ」として登場している。
*6 星海社新書『アイドルホース列伝 1970-2021』より。
*7 鞍上は後藤浩輝。しかしこの約1ヶ月後、彼は他界してしまう
*8 五大クラシック競走に出るために必要となる特別な登録。1レースあたり40万円という他のGIレースより更に高額な費用がかかる上に2歳秋頃・3歳1月頃・当該競走2週前の3回全ての登録を完了しなければならないため、適性外の短距離馬や完成に時間のかかる大型馬の場合は行わないことも多い。
*9 馬が騎手の指示に反抗して前に行きたがり、スタミナを無用に消耗すること。ドゥラメンテ自身気性に問題があることは明らかだったので、2400mへの適性を疑う声もそこそこあった。
*10 クラブ法人としての名前は「サンデーレーシング」。
*11 実際セントライト記念勝ち馬の菊花賞実績は悪く、この時点で最後の菊花賞勝ち馬は1984年のシンボリルドルフであった。出走に限ってもなお2001年のマンハッタンカフェまで遡るほど。
*12 ウマ娘にもなっているカレンチャンと同じオーナーの競走馬。G1勝利こそないものの(それでもGⅡ金鯱賞を勝利した重賞ホースでもある)、この天皇賞などG1で度々穴を開けていた
*13 蹄に装着した蹄鉄が外れてしまうトラブル。レース前の発生なら通常打ち直しになるのだが、装蹄をやり直す際にドゥラメンテが暴れたため裸足で発走することになってしまった。
*14 もっとも、デムーロ騎手には「それを承知の上で」エイシンフラッシュのアレをやったという前科があるのだが。
*15 と言うかそもそも京都大賞典まで1番人気で出走した事がなかった
*16 1991年・92年メジロマックイーン、2000年・01年テイエムオペラオー、2013年・14年フェノーメノ。
*17 大阪杯のGⅠ昇格によって創設された、春の古馬中長距離GⅠ3レース(大阪杯・天皇賞(春)・宝塚記念)の総称。これらを同一年内に制覇すれば褒賞金が与えられる。
*18 渡仏に関してはサブちゃん(当時80歳)の体調も懸案事項だったという情報もある。
*19 この年はシャンティイ開催の重馬場だったが、キタサンブラックならチャンスはあったとの声は未だに根強い。
*20 これ以前はタマモクロス・スペシャルウィーク・テイエムオペラオー・メイショウサムソンが連覇している
*21 1990年オグリキャップ、2006年ディープインパクト。いずれも引退レースなのがなんとも武豊らしい。
*22 なお、この日は有馬記念以外の全レースについて騎乗依頼を断っていた。それだけキタサンブラックで勝つことに専念していたことの証左でもあり、それに理解を示した各陣営にも感謝の意を表していた。
*23 現在は2020年引退のアーモンドアイと2023年引退のイクイノックスに抜かれ3位。なお国内戦に限定すると1位
*24 ファン感情はさておき、ホースマンの間ではクラシック競走が最重要視されており、ある程度の早熟性(早枯れに非ず)が求められる。また、長距離路線は世界規模で需要が低下し続けており、中にはマイルやスプリントといった短距離路線が主流の国すら存在する。
*25 もっとも、初年度産駒デビュー前の値下がりはどの種牡馬でも見られるもので、あのディープインパクトでさえも例外ではなかったのだが。
*26 ホモ鹿毛とはいえ広義での鹿毛以外の産駒が生まれないわけではなく、芦毛の産駒は母親の毛色に依存し、青毛と青鹿毛の産駒はホモ鹿毛とはまた別の遺伝子が問題になる模様。なおキタサンブラックは初年度産駒のブラックブロッサムなど青毛の産駒が生まれるタイプのようで、逆に現役時代にしのぎを削ったサトノダイヤモンドは種牡馬になって数年が経った2023年でもなお青鹿毛の産駒さえ居ないので、彼はほぼ鹿毛の産駒しか生まれないタイプのホモ鹿毛であると思われる。
*27 昼と夜の長さがほぼ等しくなる時(日本で言う所の春分の日・秋分の日)のこと。ちなみにイクイノックスの誕生日は3月23日で、春分の日(3月20日もしくは21日)から少しズレている。
*28 父のキタサン「ブラック(英語で黒)」、母のシャトー「ブランシュ(フランス語で「白」)」。
*29 なお新馬戦の1着馬は後にダービー馬となったドウデュース
*30 尚、ガイアフォースの走破タイムは2019年のアーモンドアイと同じ勝ちタイム1分56秒2。むしろあのペースで番手追走してこのタイムで掲示板入りしてるのは充分凄いことなのだが。
*31 最上位格が数頭回避していても1億以上稼がないと話にもならないクラスであった
*32 逃げないと話にならない逃げ馬なのに致命的にスタートダッシュが効かない為、道中で強引に押し上げて逃げ込みを図る戦法を得意とする
*33 現状で賞金ボーダーに関係する収得賞金が約1億少々だが、最上位格数頭回避している帝王賞ボーダーは1億2000万前後
*34 この2023年日本ダービーは本来フルゲート18頭立てのレースだったが、スタートで17番ドゥラエレーデ(ドゥラメンテ産駒で2022年ホープフルステークス優勝馬、ダービーでは8番人気)が大きく躓いた結果鞍上の坂井瑠星騎手が落馬してしまい、競走中止となった。なおドゥラエレーデはカラ馬となるもその後レースでは他馬にそれほど迷惑をかけることなく無事2400mを完走し、坂井騎手と共に人馬とも無事であることがアナウンスされている。
*35 この一部始終を収めた動画(https://www.youtube.com/watch?v=K8is2PCx5QAなど)が多数記録されているが、これを見ると倒れた直後は脚を上げるなど僅かに動きがあったが下がった後はピクリとも動かなくなっている。なおこれらの動画を視聴する際は自己責任で視聴すること。
*36 一般的にターフ上で幕を張る場合は予後不良になるケースが殆どのため、察しのいいファンはこの時点でどうなったかを理解していた。関係者も厩務員と思わしきスーツ姿の男性が幕を張られるまでスキルヴィングに寄り添い、ルメール騎手も木村調教師に抱きかかえられながら共にその様子を見守り、次走も騎乗予定があったため項垂れながら係員に誘導されてその場を後にしている。
*37 余談だが、スキルヴィングの由来は北欧神話の主神・オーディンの別称で「高座につくもの」の意味である。
*38 スキルヴィングの英語表記。
*39 他にもキャロットファームによると、ファンからスキルヴィングの追悼の意を示す電話も寄せられたという。
*40 https://twitter.com/netkeiba/status/1614522396161241090?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1614522396161241090%7Ctwgr%5E436bc202d8e087d18bdb4c5d887912b9b813a32d%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fbbs.animanch.com%2Fboard%2F1488284%2F
*41 ただし先述の通りミドルペースの好位追走から直線抜け出し押し切りの横綱相撲で勝利した「大阪杯」、向こう正面中間~3角~4角にかけて劣悪環境のインコースを突いて10頭近くをゴボウ抜きする左回り版ゴルシワープともいうべき荒業を披露した「天皇賞(秋)」等と、キタサンブラック自身はやろうと思えば逃げ以外の戦法もこなせる馬であったことは結果が証明している。
*42 「あまりに一気に大きくなりすぎて逆に大成を危ぶまれた」史実のエピソードに準じていると思われる
*43 しかし、運の悪いことにその元日の夕方に能登で大地震が発生。自粛措置のためCMは放送中止となってしまった
*44 近年は高齢により表舞台に立つ頻度が明らかに減っている中のことであるため、むしろ「選んだ結果がこれだよ!」とも言えるか。
*45 上記項目名の元ネタも当然この曲である。

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