登録日:2021/10/11(月) 19:10:04
更新日:2024/06/06 Thu 13:45:45NEW!
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ある者には天使。
またある者には悪魔。
「ピンヘッド」とは、スプラッター映画の金字塔とも言われる名作『ヘルレイザー』及び、ヘルレイザーシリーズに登場するセノバイト(魔道士)。
同シリーズを象徴する存在であり、ヘルレイザーシリーズ全作において登場している他、セノバイトのリーダーとしてカルト的な人気を誇る。
ヘルレイザーを語る上で欠かせない存在であり、後続の様々な作品(後述)に影響を与えた偉大な魔道士。
ファンからは『ピン様』『おピン』などの愛称で親しまれている(?)。
外見と人物
その名の通り、頭全体に釘を刺している他、SM要素を漂わせるボンデージ衣装に身を包んだ異常な風貌の男性。
このボンデージ衣装はなんと直接肌に縫い付けている。
ヘルレイザーシリーズにおいて登場する異界の存在『セノバイト』の一員であり、同作に登場するキーアイテム、『ルマルシャンの箱』というパズルボックスを解くと異界から召喚される形で現世へと現れる。
ルマルシャンの箱は『解くと究極の快楽を得ることが出来る。』といういわく付き(?)の箱で、この箱を解いてしまうと上述の通りセノバイトを召喚してしまうことになる。
セノバイト的には究極の快楽=快楽の源にある苦痛となんとも達観した考えを持っており、ピンヘッドもその1人。
簡単に言うと箱を解くことは即ち、未来永劫のSMプレイを求めていると解釈され、セノバイト達によって異界に連れ去られ、その通り未来永劫拷問に科されることとなる。なお誰かの指示で強制的に箱を解かされた場合などは見逃してくれる、親切な魔道士でもある。
この永遠のSMプレイの最中、ごく稀にドMとしての才能を開花させる人物がおり、開花させると自ら身体に苦痛を課してなんと見事セノバイトの『仲間入り』することができる。
能力
魔導士のリーダーということもあって虚空から『フックの付いた鎖』を無数に召喚する能力を持っており、この鎖で箱を解いた人物を捕獲、異界で永遠に拷問している。
一度現界すればどこに逃げようが鎖を召喚して襲って来るため、何らかの取引材料を握っていない限り、目を付けられたら詰みに近い。
初代の作中では箱を解いた『ヘルレイザー』前半の主人公フランク・コットンを鎖で仕留めて異界へ連れ去った他、物語後半で現世へと復活したフランクを無数の鎖で捕縛、その肉体を破壊して異界へ再び連れ去っている。
続編においてもこの鎖を使用しており、特にスプラッター描写が激しくなっている近年の作品では鎖を放つ描写が生々しく、とてもグロい。
各作品において
『ヘルレイザー』
記念すべきピンヘッドのデビュー作。本作ではまだ『ピンヘッド』と言う名前ではなく『Lead cenobite(筆頭修道士)』という名前でキャスティングされている。
序盤にて箱を解いてしまった前半の主人公フランク・コットンの肉体を鎖で破壊して異界へと連れ去っている。
登場するシーンも非常に短く、中盤にて後半の主人公カースティ・コットンが興味本位でルマルシャンの箱を解いた際にチャタラー、フィメール、バターボールら3人のセノバイトと共に異界から現世へと現れる。
この際、カースティはフランクが異界から逃げたこと*1をピンヘッドへ伝え、カースティは間一髪でセノバイト達から見逃されたものの、ピンヘッドは『もし嘘をついたら…お前の魂を引き裂いてやる。』と言っている。
物語終盤で再登場し、カースティを殺そうとしたフランク*2の前に3人のセノバイト達と共に現れ、カースティを殺そうとした寸前にフランクを無数の鎖で拘束し、その肉体を破壊して異界へ再び連れ去る。
これで終わりか…と思われたが、案の定カースティを逃がす気など全く無く、他の3人のセノバイト達と共にカースティを追い詰める。
しかしカースティはとっさの起点でルマルシャンの箱を逆に解き、ピンヘッド達はカースティを捕獲できずに異界へと送り返されてしまった。
『ヘルレイザー2』
正統な続編。正式名称は『ヘルバウンド・ヘルレイザー2』。ようやく本作で『ピンヘッド』という名前が付いた。
前作は『異界の門が開かれた。』というコンセプトだったが、今作では『異界』に焦点が当てられており、セノバイト達とその上位の存在『リヴァイアサン』が住まう異界の世界観が視聴者に映る。*3
前作の主人公カースティ、そして前作にも登場したチャタラー、フィメール、バターボールら他のセノバイト達と共に物語中盤にて登場。
ルマルシャンの箱と異界について研究するDr.チャナード*4そして異界へと再び身を投げる決意をしたカースティの三つ巴の物語となる。
物語終盤において、異界の王リヴァイアサンへの生贄となったDr.チャナードがその醜悪な性格を認められ、なんとセノバイト化してしまい、それから逃げるカースティ達だったが、逃げた先の部屋でピンヘッド達も再登場。
ピンヘッドは再びカースティに『究極の快楽』を迫るが、カースティはピンヘッドへ1枚の写真を見せ、ピンヘッド達セノバイトらは何かを思い出すのであった。
その正体はカースティ達と同じ普通の人間。
元々はエリオット・スペンサーというイギリス陸軍大尉であった。
ww1に従軍した後、PTSDを患ってしまったエリオットは人生に絶望し、ルマルシャンの箱を解いてしまった。
冒頭の箱を解く謎の人物、それこそがまさに人間時代のピンヘッド、エリオット・スペンサー大尉である。
そして拷問されていくうちにドMとしての才能を開花させたエリオットは、セノバイトへと変化し、『ピンヘッド』となった。
全てを思い出したピンヘッド(と、いつもの3人のセノバイト)はカースティ達を逃がす為にDr.チャナードと戦うも、フィメールは首を貫かれて即死、バターボールも胸に攻撃をくらって即死し、チャタラーも胴体を貫通させられて即死してしまった。*5
ピンヘッドは鎖を召喚して応戦するものの、人間としての記憶を取り戻した影響か、魔導士としての能力が弱まってしまい、Dr.チャナードの攻撃を受け、人間の姿へと戻る。
そしてカースティ達の方へ向かって逃げるように催促した直後、Dr.チャナードによって首を切られて死亡してしまった。
こうして魔道士ピンヘッドは死んだ…と思われていたが、物語最終盤においてルマルシャンの箱を解いたとある引越し業者が鎖で拘束されるシーンがある他、異界から召喚された木柱にピンヘッドの顔が映し出されていた…。
未公開シーンではカースティ達が逃げた先の病院で現れ、フィメールと共にピンヘッドは手術服を着ているという謎にシュールなシーンがある。
『ヘルレイザー3』
さらなる続編。本作から劇中キャラにも『ピンヘッド』の名前で呼ばれるようになり、作中世界でも公式の名称となった。
副題は『Hell on Earth』で、地獄から解き放たれたピンヘッドが地上に地獄を齎していく。
前作でエリオットの魂が解放されたことにより、今作では『善の亡霊エリオット』と『悪の怪物ピンヘッド』の2つに分離してしまっている。
善と悪が分離したことで地獄の法則をガン無視できるようになったピンヘッドは例のフック付き鎖をフル活用して大量の人間を虐殺。エリオットは主人公ジョーイの夢に亡霊として現れ、暴走するピンヘッドを地獄に送り返すべく彼女の協力を求める。
原作者のクライヴ・バーカーがストーリー制作から外れたためか今作のピンヘッドはテンションが高く、商業的と批判を受ける事も多いが死者数はシリーズ随一。
また今作では死んでしまった3人のセノバイト達に代わって新しいセノバイト達が登場するものの、如何せん影が薄い。前作のセノバイト三人衆は殆ど突っ立っているだけで攻撃描写がほぼないのだが、本作のセノバイトは攻撃方法が根性焼きだったりCDブーメランだったり逆に小物感が強くなっている。
『ヘルレイザー4』
さらなる続編の続編。
なんと舞台は22世紀というぶっ飛んだ設定となっている。レプリコーン4、ジェイソンXといいホラー迷走期である。
本作ではキーアイテム、『ルマルシャンの箱』にスポットライトが当てられており、箱の出自と箱を作った玩具職人の一族とセノバイト達の戦いがメインとなる。
また新しいセノバイトも登場し、ピンヘッドよりも異界での位が上であるアンジェリークという女性のセノバイトが登場する。
本作のピンヘッドは非常に良く喋る他、自分の言葉に心酔しているシーンが多々見られる。
『ヘルレイザー・ゲート・オブ・インフェルノ』
シリーズ5作目。原題では付いたり付かなかったりしていたナンバリングが今作から完全に外された。
前作『ヘルレイザー4』までは、主人公と魔道士ピンヘッドとの対決がストーリーの軸であったが、本作以後のシリーズ作品は、ピンヘッドを狂言回しとして主人公の心の闇をめぐるストーリー展開となっており、スプラッターというよりもサスペンスに近い作風へ変わっている。
『ヘルレイザー・リターン・オブ・ナイトメア』
シリーズ6作目。1と2の主人公、カースティが再登場。
カースティの数年後の姿が描かれるが、主人公はカースティの夫トレバー。
この時代においてもピンヘッドはお気に入りなのか『究極の快楽』を体験させようと執拗にカースティを狙っている。
また時代が2000年代に入ったからか、鎖の演出などが非常に凝っている。
『ヘルレイザー・ワールド・オブ・ペイン』
シリーズ7作目。舞台は欧州ルーマニアで、4で描かれたルマルシャン一族の当代の子孫が登場。先祖が成し遂げられなかったセノバイトの使役を目論む。
結果はお察しだが、ルマルシャンの血統が22世紀まで続くことは4で確定しているので多分分家が居たのだろう。
『ヘルレイザー・ヘルワールド』
『ヘルワールド』というゲームに没頭する青年たちの物語。
青年たちが開催したパーティに参加していた人物達が次々とセノバイト達によって異界に連れ去られ、そして最後にピンヘッドが登場する。
ルマルシャンの箱とピンヘッドは劇中のゲーム『ヘルワールド』にも登場している。簡単に言うとゲームが現実になったようなもの。
本作で長らくピンヘッドを演じたダグ・ブラッドレイがピンヘッド役を引退。その勇姿を目に焼き付けよう。
『ヘルレイザー・レベレーション』
シリーズ9作目だが、事実上リブート作であり1作目のリメイク。制作会社が版権契約更新のために作った映画と言われており*6、ピンヘッド役のダグ・ブラッドレイが難色を示して降板。代役としてステファン・スミス・コリンズがピンヘッド役を務めた。
ストーリーはほぼ1作目と同じだが、生皮を全て剥いだ後に釘で新しい皮膚を留めたセノバイト『偽ピンヘッド』が登場する。
『ヘルレイザー・ジャッジメント』
日本では公開されていない作品。地獄の世界観にスポットが当てられておりヘルレイザー2のリメイクにあたる作品であるが、前作が不評過ぎてキャストが出演を拒否したため、ピンヘッド役は再度変わってポール・T・テイラーが務めた。
本作からサスペンスをやめてスプラッター路線へ再び帰還している。
『ヘルレイザー(リブート版)』
再リブート作品。本作最大の特徴はピンヘッドが女性的になっていること。
原作小説でピンヘッドに相当するセノバイトは性別が曖昧に描写されているため、ある意味原作に最も忠実なピンヘッドと言える。それもあってか、今作でピンヘッド役を務めるジェイミー・クレイトンはトランスジェンダー女優、つまり元男性の女性である。
ほか旧作の特徴であった黒いレザーやラテックスのスーツを着ておらず、剥げた皮膚が垂れ下がったような白基調のスーツを着用している。
余談
他作品への影響
そのインパクトのあるビジュアルのおかげで漫画『HUNTER×HUNTER』のゾルディック家の長男イルミの容貌に影響を与えていたり、『キャビン』(2012年)にもパロディと思しきキャラが登場している。
また、ピンヘッドの下僕である魔道士チャタラーは『バイオハザード』シリーズのクリーチャー、ネメシスのモデルとされている。
その他
- セノバイト達が着ているSM衣装風のボンテージファッションは、原作者兼監督のクライヴ・バーカーが映画制作時に実際にSMクラブへ立ち寄って、着想を得たらしい。
- 1986年の原作小説『The Hellbound Heart』におけるセノバイトのリーダー役は映画初代と同じく名前が無く、Hell Priest(地獄の司祭)と呼ばれている。
- 『ピンヘッド』という名前は1作目の撮影スタッフがセノバイトの識別のために付けたあだ名が元ネタ。
- 原作者のクライヴ・バーカーはピンヘッドという名前を「ダサすぎ」と嫌っており、2015年の続編小説『The Scarlet Gospels』ではHell Priestが『ピンヘッド』と呼ばれてキレるシーンまで書いている。
- 1から8のヘルワールドまで長らくピンヘッドを演じたダグ・ブラッドレイは、原作者兼1作目の監督であるクライヴ・バーカーの親友である。
- シリーズを追うごとに当然中の人は歳をとるものだが、ピンヘッド(というかヘルレイザー自体)は特殊メイクに力がいれられており、何年経っても全く老けないピンヘッドの様子が動画になっている。
- ちなみにセノバイト役はチョイ役だわ特殊メイクで長時間拘束されるわで非常に不人気だったらしく、ダグ・ブラッドレイも最初は人間の役でオーディションを打診していた。
まさかの。
なんとまさかの2021年9月に有名なアクションホラーゲームである、『Dead by Daylight』にキラー(殺人鬼)側として参戦。
原作通り『ルマルシャンの箱』がキーアイテムになる他、ピンヘッドの能力は案の定フック付きの鎖である。この鎖、当てるのが非常に難しい。
メメント・モリは1作目でフランクにやったように、生存者を無数の鎖で拘束して異界へ連れ去る…というもの。キラーのメメント・モリで唯一生存者の死体が残らない。
儀式という快楽を長引かせるためかパークは遅延に特化しておりいずれも優秀で、フックに効果を付与する『苦悶のフック』は後にシリーズ化した。流石はフックの第一人者。
またアドオンはヘルレイザー(1作目)に登場した人物やピンヘッド縁の物が元ネタとなっている。
詳細はDead by Daylightを参照。
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▷ コメント欄
- シリーズの顔になるだけあってクールなデザインだよね。好き。 -- 名無しさん (2021-10-11 22:31:51)
- 直接肌に縫いつけてるってなんかエシディシみたい -- 名無しさん (2021-10-12 00:26:33)
- 名前知らなかったから針山男みたいな呼び方してたなぁ -- 名無しさん (2021-10-12 00:27:50)
- ベルセルクのゴッドハンドのアイディアになったんだっけか -- 名無しさん (2021-10-22 03:57:45)
- 日本のHORROR美少女で女体化した後に本家で女ピンヘッドが出たのが驚いた -- 名無しさん (2022-09-28 14:10:15)
- アギトのカラスのアンノウン・クロウロードの一人(コルウス・クロッキオ)もこいつが隠しモチーフ -- 名無しさん (2023-01-18 09:30:16)
- リブート版のコンセプトアートでピンヘッドの全身が描かれてるけど、下半身の皮膚が剥がれてスカートになってて足が筋肉剥き出しになってて痛々しい -- 名無しさん (2023-08-18 11:09:13)
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*2 フランクはカースティの父ラリーにすり変わっており、それを知ってしまったカースティを殺そうとした。ついでに言うとラリーはフランクの兄弟。つまりカースティから見てフランクは叔父にあたる。
*3 セノバイト達が住まう異界とは、迷宮のような世界であり、その最奥に異界の王たるリヴァイアサンが鎮座している。
*4 以前から異界について研究しており、前作において異界へ連れ去られたが、現世へ復活したカースティの義母ジュリアに手を貸す形で異界へ行くこととなる。
*5 この際、セノバイト達は人間の姿に戻っている。フィメールは金髪美女、バターボールは肥満体の男性、チャタラーはなんと''美少年''である。
*6 ざっくり解説すると、版権というものは買い取っても期間内に使わなければ更新契約が必要になるのである。人気作品ほどクソな外伝やゲーム化が多いのはこういった制度のせいでコンスタントに作られ続けるのも一因とされる。
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