スペシャルウィーク(競走馬)

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登録日:2021/09/02 Thu 18:47:36
更新日:2024/06/03 Mon 13:49:56NEW!
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王道を歩み続ける強さ。


ヒーロー列伝No.46より



スペシャルウィークSpecial Week(1995年5月2日~2018年4月27日)とは、日本の元競走馬、種牡馬。
いわゆる黄金世代として知られる1998年クラシック世代の一角として、数多くのライバルたちと熱戦を繰り広げた“日本総大将”。


ウマ娘 プリティーダービー』におけるスペシャルウィークはこちらへ→スペシャルウィーク(ウマ娘 プリティーダービー)


血統

父は言わずと知れたサンデーサイレンス。アメリカ2冠を制し、売却先の日本で種牡馬として大活躍した名馬である。
母キャンペンガールはデビュー前の怪我により未出走に終わったが、父はマルゼンスキー、母は日本を代表する牝系であるシラオキ系という良血。
なお、ゲーム「ウイニングポスト」シリーズの7以降では史実馬を所有することができ、成績いかんでは史実ではできなかった殿堂入りを果たすことができる。
そこでは彼の専用の称号として「ベストサイアーの結晶」と言う称号がある。
前述した通り父はサンデーサイレンス、母父にマルゼンスキー、さらに母母父にはヒンドスタン。
連綿と続く日本の名牝系シラオキと歴代のリーディングサイアーとの組み合わせと言う血統面での日本競馬の結晶ともいうべきであろう。
生産は中小牧場、母は当時軽視されていた在来牝系、父は既に名種牡馬として名を挙げており、母の父はダービー不出走に涙した持ち込みの名血と、エリートと雑草が混じったような血統背景で、スペシャルウィークへの期待は当然高かった。


誕生、そして人間と過ごした幼少期

1995年5月2日、紋別の日高大洋牧場にて誕生…したのだが、誕生までが難儀であった。
前年12月ごろからキャンペンガールは疝痛で苦しんでおり、このころには手の施しようがないほど悪化。
5月2日には今までにないほど苦しみだしたため、牧場スタッフ総出で仔馬を取り出した。
乳母馬の気性がやや荒っぽかったため、木を使ったやぐらのようなもので固定して乳をやっていたという。
スペシャルウィーク誕生の5日後、キャンペンガールは死去。
乳母馬の気性も安定しなかったため、人間の手をかけて育てられた。
乳母馬本馬は乳やりを通して慣れたのかそれなりに親子らしくなっていったが、早めの離乳期で別れることになった。
母馬よりむしろ人間の手に依るこうした経験から、スペシャルウィークは凶暴さに定評があるサンデーサイレンスの産駒でありながら、非常に人懐っこい馬になったという。
逆に他の馬と触れ合うことは少なかったようだ。ぼっちとかいうな


1歳になって馴致、要するに競走馬になるための訓練が実施されたのだが、普通の馬が嫌がるこれをスペシャルウィークは苦とはしなかった。幼いころから人間慣れしていた彼ならではのエピソードである。
また、日高大トレーニングセンターでの育成中、ニュージーランド人の女性スタッフ、プライス・ティナ氏がこの馬に大変ほれ込み、他の馬の管理がおろそかになるほど手間をかけて世話をしていたという。白井寿昭調教師(通称白井最強)の意向でスペシャルウィークがノーザンファーム空港牧場に旅立つことが決まったときは涙ながらに抗議したほどだったとか。
調教中では、全力でなくとも目標タイムより早く走ってみせ、素質をうかがわせた。


なお、このノーザンファーム空港牧場には、数か月前まである海外産の素質馬が滞在していた。
産駒の代に至るまで争い続けた最大のライバル、グラスワンダーである。


デビューとクラシックでの活躍

1997年11月26日、武豊を背に阪神競馬場でデビュー、1番人気にこたえて難なく快勝した。
翌年は条件戦白梅賞に出走。楽勝かと思われたが、14番人気の地方馬アサヒクリークにハナ差破れ2着。この時の鞍上だった武幸四郎騎手は豊の弟だったのだが、兄にに「きさらぎ賞が使えなくなったらどうする」と怒られたそうな。
思えばこの時が、日本競馬の歴史でもかなりの強豪でありながら、単なる名馬というだけではくくり切れない、やらかしに定評がある面白みのある人気馬として愛されたスペシャルウィークの始まりだったのだろうか。


幸いきさらぎ賞の抽選には通り、3馬身つけて完勝。続く弥生賞でも有力馬セイウンスカイ、超良血馬キングヘイローに勝利し、皐月賞でも注目された。
が、皐月賞本番では馬場状態と不利な大外枠に泣かされ、逃げるセイウンスカイの力走の前に3着に終わる。それでも2着のキングヘイローとともにクラシック3強の一角を形成し、日本ダービーでは1番人気に推される。


ところで、彼の鞍上であった天才ジョッキー、武豊には「ダービーを勝てない」という妙なジンクスがあった。ほかのクラシックは完全制覇しているにもかかわらず、である。2年前のダンスインザダーク騎乗時には最も栄冠に近づいたが、フサイチコンコルドの音速の末脚の前に2着という悔しい結果に終わってしまっていた。
豊自身は感情のコントロールもプロに必要な資格の一つとして、マスコミの前では「日本ダービーは特別なレースではない」「いつか獲れると思っているから焦っていない」などと答えていた。
しかし、後に書いた自著『勝負師の極意』によると、本心は次のように思っていたという。


「自分の今まで積み重ねた勝利全てと引き換えにしてもいいと思うほど、ダービージョッキーの称号が欲しくて欲しくてたまらなかった」


迎えた日本ダービー、スペシャルウィークは福永騎手痛恨の騎乗ミスで沈むキングヘイローとうっかりそのペースに付き合ってしまったセイウンスカイを横目に最終直線で一気に抜け出す。


「間を割ってスペシャルウィークやってきた!」


「あっという間に!並ばない!並ばない!あっという間にかわした!」


坂の下で末脚を炸裂させ、あとは差を開いていく一方。


「夢をつかんだ武豊!」



「ついに夢をつかみました! 武豊スペシャルウィーク!」


終わってみれば歴代ダービーでも最高クラスの着差である5馬身差*1の圧勝。武豊は念願のダービー制覇を成し遂げ、5大クラシックはもとより史上二人目、キャリアわずか10年での8大競争完全制覇の名誉を得た。
余りの喜びのあまり、途中で鞭を落とし、彼にしては珍しい大きなガッツポーズをしたのは有名な話。



秋初戦の京都新聞杯は先行するキングヘイローを最終直線でかわしクビ差で抑え勝利。
が、1番人気に推された菊花賞ではやはり末脚を炸裂させながらもセイウンスカイと横山騎手のコンビの巧妙な逃げに敗れ2着に終わった。まあ、これに関しては相手が芝3000m世界レコードを叩き出したレースだったのでしょうがないかもしれない。
その後は、武豊の騎乗停止*2によって岡部幸雄騎手を鞍上に、1番人気でジャパンカップに出走するが、菊花賞の疲労と史上屈指の名馬である同期、エルコンドルパサーの実力阿寒湖さんの噛みつきの前に3着。有馬記念は回避してこの年を終えた。
この後エルコンは海外に行ってしまったため、これ以降スぺは一部から「でもエルコンより弱いんでしょ?」と言われ続けるハメになる


年末、本馬はあずかり知らぬことだが故郷の日高大洋牧場が火事に見舞われ、半姉のオースミキャンディ他多数の繁殖馬が焼死してしまうという悲しい出来事もあった。



栄光と転落の古馬時代

翌99年はアメリカジョッキークラブカップを初戦とした。
調教時の動きの悪さから、コンビとなったペリエ騎手は「Lazy(ズブい)。本当にダービー馬か?」と不安がったが、ここは楽勝。
ペリエ曰く「本当にダービー馬だった」
武豊に鞍上が戻った阪神大賞典では前年度の天皇賞馬メジロブライトを抑え勝利。
本番の天皇賞春。逃げきれず最終直線で沈むセイウンスカイを追い抜くと、ブライトの追い上げを寄せ付けず見事勝利してG12勝目を挙げる。


強敵エルコンドルパサーはフランスに遠征していたため、国内では流れが向いてきたかと思われたスペシャルウィーク。
が、一番人気に支持された宝塚記念では、得意とする先行競馬に持ち込むも道中巧みにマークし続けたグラスワンダーと的場騎手のコンビに最終直線で捕まえられ、初めて差し切り負けとなる3馬身差の完敗を喫してしまう。一応3着の阿寒湖ステイゴールドには7馬身を付けていたが。
この敗戦で凱旋門賞への挑戦は立ち消えに。しかも当時体調不良気味との情報が多かった上、前走安田記念ではまさかの敗戦を喫していたグラスワンダーに敗北したことで、余計グラスとの差を競馬ファンに感じさせてしまった。


秋初戦の京都大賞典にはキャリア最高体重の486キロで挑み、当然のように一番人気に支持されたが夏バテの影響が残っていたのかそれとも太り過ぎたのか、まさかの7着惨敗。勝者は夏の上がり馬として期待を受けたツルマルツヨシ。すでに勝利していたメジロブライトにすら先着を許す有様であった。
ちなみにこの時、スぺをマークしていたテイエムオペラオーも巻き添えを食らって3着になってたりする。若い時はこんな事もあるさ。


この2戦の敗戦の影響は大きく、「スペシャルは終わった」「相手が弱かっただけ」とファンから他の時代でもよくあったようにみなされることになってしまった。


逆襲の日本総大将

迎えた秋の天皇賞。前走の大敗と16キロもの大幅体重減が原因で、キャリア最低の4番人気にまで人気は落ち込んでしまう。


が、この体重減は決して体調悪化などではなく、計算されたものであった。
前走京都大賞典時の馬体重は486キロだったのに対し、快勝したダービーの時は468キロ。ならば、当時に近い体重で挑めば行ける、という白井調教師の策の元、スペシャルウィークは大幅に体を絞られた。結果、470キロと大幅にスリム化して挑むことになったのである。
加えて内枠という好条件、末脚を最大限発揮できる長い直線を有する東京競馬場、そして強敵エルコンもグラスも不在、鞍上は天皇賞に強いことに定評のある武豊。
のちにCMで「逆襲のラン」とも表現されたこのレースだが、実は負ける要素はほとんどなかったのだ。
結果、最終直線で外から一気にまた出てきたステイゴールドを差し切りレコード勝ち。見事タマモクロス以来となる春秋天皇賞連覇*3を達成した。白 井 最 強
なお、武騎手は勝利インタビューで「サイレンススズカが背中を押してくれた」と語った。
昨年、同じ舞台で武とサイレンススズカの霧散した夢を、スペシャルウィークはダービーに続いて叶えて見せたのだった。


その後はジャパンカップへ、日本馬の有力馬「日本総大将」として挑む。
このレースでは、2か国のダービーを制し先の凱旋門賞でエルコンドルパサーを破った世界最強馬モンジューの他、イギリスダービー馬ハイライズらの強豪も参戦。
モンジューに次ぐ2番人気に支持されたスペシャルウィークの馬体重は468キロと発表された。白井がパドックで武豊に「ダービーと同じ体重や。ユタカ、おめでとう」と言って送り出すほどの自信に満ちた仕上がりだった。
そして始まったレースでは後方待機で3角を迎えて上がり、4角以降の長い直線で末脚を放つ完璧な横綱相撲で見事勝利。日本勢によるリベンジを果たした。他の日本馬は5着以下だったことを顧みればまさに「総大将」の競馬であった。
もっともモンジューは凱旋門の疲労と遠征疲れで状態最悪だったうえ、慣れない日本の高速馬場での戦いを強いられる格好になっていたのだが…*4
なお、ジャパンカップ当日昼にはエルコンドルパサーの引退式が行われていた。これも運命か。


ラストランとなる有馬記念、ついにグラスワンダーと再戦する最後のチャンスが訪れた。
史上初の秋古馬三冠か、それともスピードシンボリ以来のグランプリ三連覇か。
レースは宝塚とは逆に、後位にいるグラスワンダーを最後方からスペシャルウィークがマークする形で進んでいく。
一番人気のグラスが抑えていたためか極端なスローペースで迎えた最終直線。2頭は内から延びてハナを取ろうとするテイエムオペラオーや最内で粘るツルマルツヨシと激しく競り合いつつも、わずかにかわす。


「やはり最後は最強の2頭だ!」


スペシャルウィークの追い上げはグラスワンダーに勢いで勝るが、グラスワンダーも意地を見せる。
最後はほぼ同時に入線した2頭だったが、スペシャルウィークが体勢有利。
的場騎手は敗北を、武騎手は勝利を確信し、スペシャルウィークはウイニングランを行った……




が、実際には首の上げ下げの4センチ差でグラスワンダーが判定勝ち*5
勘違いウイニングランという珍事が発生することになった。


グラスワンダーへのリベンジは失敗したものの、この年はG1を3勝、2着2回という素晴らしい戦績をあげ、年度代表馬に選出……
かと思いきや、国内で走っていないエルコンドルパサーが年度代表馬、スぺとグラスは特別賞受賞にとどまる。
確かに凱旋門賞2着は当時としては偉業だったとはいえ、国内でレースをしていないエルコンドルパサーの年度代表馬選出は当時から批判があった。白井調教師もその一人で「勝てなかったグラスワンダーに年度代表馬を持ってかれるのならまだ分かるが、国内走ってないエルコンが受賞するのは解せない。エルコンドルパサーこそ特別賞にするべきだ。」「凱旋門賞2着をJCの優勝より上と判断して『自国の競馬より他国の競馬の方が上』と宣言してしまったようなものだ」と口にしている。
ただ、G1二勝のグラス(あとエアジハードにあっさり負けた)とG1三勝だがグラスに全敗のスペでどっちを上とするか判断つきかねたというのはしょうがないかもしれない。
それでも獲得賞金額は史上1位…と思いきや、これも翌年の世紀末覇王に更新されてしまった。なんつー不憫な…
ついでにサンデーサイレンス産駒賞金額も秋古馬三冠*6ゼンノロブロイと例の衝撃に更新されることに。げに恐ろしきはサンデーの血…。


現役時代いろいろあったが、総合してみると、最強と言われた世代に生まれ、いまだに競馬界隈の中でも最強格とされるライバルたちと争いながらG1を4勝した実績はまごうことなき名馬と言える。しかも京都大賞典以外ではすべて3着以内と安定感も申し分ない。勝ちは多いがちょっとシルコレブロコレ感がある。
実力だけでなく、黒鹿毛のグッドルッキングホースとしても人気があり、秋天以外の全レースを1、2番人気で迎えている。だがステイゴールドなど人気薄の馬を2着にすることも多かったので、ダービー、秋天、ジャパンカップと3回も馬連万馬券を生産していたりする
そういうところ含め愛された馬であった。


こうした背景からか、「20世紀の名馬大投票」ではナリタブライアンに次ぐ2位となっている*7


種牡馬時代

白井最強に「元気でな、スペシャルくん」と涙ながらに見送られ、期待とともに社台にて種牡馬入りした彼だったが、ここで深刻な問題が。
彼、種付けが苦手だったのである。*8
始めるのにも時間がかかり、種付け中はすぐに牝馬に噛みつくので首あてがかかせず……スタッフに怒られる姿を見かけたという証言もある。
年200頭にも達する大量の種付けがどこまで影響したかは知らないが、幼いころの賢明でおとなしい姿はどこへやらついには若い馬や栗毛の馬*9を見るだけで威嚇し噛みつこうとしていた……なんて話も。これがサンデーの血脈……
なお、上記のエピソードの実際の程度は不明である。とはいえ同じく人懐っこいことで有名だったディープインパクトも種付けを繰り返すうちに人間不信の気配が出てきたようなので、やはり大量の種付けはかなりストレスになるのだろう。


彼個人の意思はともかく、スペシャルウィークは種牡馬としてはサンデー後継3強には及ばずともかなり活躍した。
中でも代表的な産駒は牝馬であったが彼女たちの活躍は凄まじかった。


  • シーザリオ

2年目産駒であるジャッパニィィィィィズ!!!! スーパースタァァァァァ!!!!2005年にオークスを制覇して産駒G1初勝利。さらにアメリカンオークス*10も制し、2つの国の女王になった。
これはクラシック馬、内国産馬の産駒による初の海外レース制覇、更には日本馬初のアメリカG1制覇となった。
主戦騎手であった福永祐一騎手は後に競走馬としての彼女を「自分が知る限り飛びぬけて強い牝馬」と称している。
歴史的快挙を挙げるも故障で早期引退を余儀なくされたが、彼女の本当の活躍は繁殖入りしてからだった。
なんとエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアとG1ホースを3頭も輩出。1年に数10頭、時には100頭以上の産駒が誕生する種牡馬ではなく、年に1頭しか産駒が誕生しない繁殖牝馬がこの結果を残すのは、驚異的というに他ならない。
また、エピファネイアの全妹であるロザリンドは、競走馬時代には1勝もできなかったが、繁殖入り後、オルフェーヴルとの間に設けたオーソリティがG2青葉賞やアルゼンチン共和国杯を連覇するなど活躍している。
残念ながら、シーザリオは2021年に19歳でこの世を去ってしまったが、産駒を12頭を生み、うち3頭ものG1ホースを輩出した彼女は「名牝の仔は走らない」という風潮を見事に払拭してみせた名牝であった。


なおその産駒の中でもシンボリクリスエス×シーザリオの最高傑作エピファネイアはディープインパクト亡き後の時代を担う期待種牡馬として三冠牝馬デアリングタクトや皐月賞馬エフフォーリアなどを輩出し大活躍中。
特にエフフォーリアはダービーは惜敗の2着だったが2021年の天皇賞秋では三冠馬コントレイルとマイルの女王グランアレグリアを制して勝利。さらに有馬記念ではグランプリレース3連覇中のクロノジェネシスを撃破。3歳の時点で古馬G1で2勝をあげ、名実ともにエフフォーリアが2021年の日本最強馬となった。2021年度JRA賞の選考でも圧倒的な得票率で選出され、エフフォーリアが年度代表馬を受賞した。*11
これが評価されエピファネイアの2022年の種付け料は1800万円に設定され、国内現役種牡馬の中で最高額になった。
2024年にはダノンデサイルが産駒で初めて日本ダービーを勝利。皐月賞ではゲートイン直前に右前肢跛行で競走除外となってしまうも、父を日本ダービーで破ったキズナの産駒である無敗皐月賞馬ジャスティンミラノを破った大金星となった。


リオンディーズは母と同じく3歳夏の故障が原因で無念の引退となってしまうも、ブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬入りして、初年度から芝ダート問わず重賞馬を輩出。2022年から種付け料がブリーダーズ・スタリオン・ステーション最高額の400万円になった。24年には初年度産駒のテーオーロイヤルが天皇賞春*12を勝利したことで半兄に続いてG1サイアーとなった。


サートゥルナーリアも社台スタリオンステーションで種牡馬入りして24年から初年度産駒がデビューしていくので、今のところ母系の血統表からスペシャルウィークの名が消えることはなさそうである。


  • ブエナビスタ

最高傑作と言えるビワハイジとの間の名牝、牝馬2冠を含むG1を6勝し、秋天とジャパンカップにて史上初の父娘制覇を達成。
4年連続でJRA賞最優秀牝馬を受賞、更には史上3頭目となるJRA賞4年連続受賞も果たしている。
獲得賞金は総額14億7886万9700円でこれは当時としてはウオッカの記録を更新し牝馬としては最高額であった。
素早い末脚、ほぼ全レースで1番人気、大半が3着以内と、いろいろと父似の馬であった。
でもエリ女でクイーンスプマンテとテイエムプリキュアにまとめて逃げ切られたり、グラスワンダー産駒のアーネストリーに宝塚で敗北したり、G1で7回も2着になったりとグランプリに限って勝てないという変な所も父と似ているところが見られた。
引退後は繁殖牝馬となったがなかなか有力な産駒を出せていない。ぶっちゃけシーザリオがおかしいだけだが



牝馬2頭の大活躍の一方、父系ではダートG1馬のゴルトブリッツ(帝王賞)とローマンレジェンド(東京大賞典)を輩出。
ダート系統な上ゴルトブリッツが急死してしまい、芝の代表牡馬は乗馬になったディープの被害者インティライミといった具合だったため、父系存続が不安視されていた。
そんな中120億円事件の元凶(推定)*13トーホウジャッカルが菊花賞を制覇して種牡馬入りしたことで多少は光明が見えた……が、いまだ状況は不透明。
ちなみにこのトーホウジャッカル、震災当日に生まれてダービーの前日にデビュー、勢いのまま菊花賞を芝3000世界レコード勝ちしたという父親以上にすごい経歴の持ち主。ルックスもイケメン(尾花栗毛)だ。
血統保護のためもあるが、G1未勝利ながら馬主*14のプッシュにより種牡馬入りし、初年度産駒が好走したリーチザクラウンが一時社台で繁用されていたこともある。その後再びアロースタッドに戻されたが*15
そして2022年、そのリーチザクラウン産駒のクラウンプライドがUAEダービーを勝利。直系がつながる希望がまた一つ見えてきた。


母父としてはシーザリオの仔の他、NHKマイルに勝利したクラリティスカイ、秋華賞とイギリスのナッソーステークスに勝利したディアドラ*16が代表的。BMSとしての活躍も期待できそうだ。



こうして種牡馬としても成功したスペシャルウィークは、2017年に種牡馬を引退し、生まれ故郷日高大洋牧場にて余生を送っていた。
しかし翌年、放牧中に腰を打ち、経過観察中に死去。享年23歳。
偶然にも、彼をモチーフとした「彼女」が主役のアニメの中で、「彼女」が彼と同じようにダービーを制した数日後のことであった。


顕彰馬をめぐるあれこれ

G14勝、大半のレースで上位入着と優れた戦績を誇り、人気も非常に高く、種牡馬としても成功したスペシャルウィーク。彼が顕彰馬の候補となったのも当然と言えば当然……だったが、エルコンドルパサーと票が割れまくってどちらも顕彰馬になれないという状態に。票数そのものはエルコンが毎年過半数の票を集めていたが、スぺも毎年3割くらいの得票数を集めていたため、4分の3以上の票が必要な選出ルール上顕彰馬になることができていなかった。
2014年にエルコンドルパサーが投票数が一人4頭までに増えたのでようやく顕彰馬入りしてチャンス到来!と思いきや、今度は龍王ロードカナロアと娘のブエナビスタに次ぐ3強の一角という状態に。まさかの父娘骨肉の争い。
2018年にカナロアが抜けたら抜けたでキタサンブラック(G17勝)やモーリス(G16勝)も選考に混ざってきたうえ、ブエナビスタの人気も高く、票数を集められないまま「引退20年以上で資格喪失」という規定によるタイムリミットの2020年に。ここでキタサンブラック*17が選出されたため、スペシャルウィークは除外されてしまった。
ちなみにそのブエナビスタもほぼ完全上位互換の戦績を挙げた貴婦人ジェンティルドンナが出てきたし、貴婦人が選ばれ父が除外されたらされたでコントレイルやらオジュウチョウサン*18やらも迫ってきているので顕彰馬入りの道は遠そうである。そんなとこまで父親に似なくても……
少し前まではアーモンドアイもいたが、こちらは候補入り初年で落選したことで記者たちがファンにボロカスに叩かれたことに懲りたのか翌年に選出されている。ただ代償なのか今度はコントレイルが僅か1票で弾かれる羽目に...


このことはファンから当然批判されており、記者投票という顕彰馬のシステムそのものの糾弾の根拠として使われることも。
まあ、確かに現在の基準だとG14勝は選出には厳しいかもしれなかったが。でもメジロマックイーントウカイテイオーも4勝なんだぞ*19
少なくとも、グランプリ3連覇を成し遂げたのに完全に忘れ去られたグラスワンダーよりはマシかもしれない。


創作作品での扱い

  • 『優駿たちの蹄跡』

13巻収録の『ティナの愛』に登場。
主に日高牧場時代が取り上げられており、ティナ氏との交流と絆に焦点が当てられた。
最後は親仔2代のダービー馬誕生を期待するナレーションで締められている。牝馬優駿(オークス)馬ならなんとか。
また、派生作である『優駿劇場』ではダービーでの一戦が取り上げられている。
うっかり先行したキングヘイローの暴走と力を温存するセイウンスカイの策略を受けて大混乱に陥る出走馬達を後目に、レースと関係ない事を考える作戦(?)で周囲に惑わされる事なく自らのペースを維持、見事に逆転勝利を飾った。
そしてその勢いで「来年のダービーも獲る」と宣言してセイウンスカイのツッコミを食らい、キングヘイローには「こんなアホに負けたのか」と嘆かれた。


まさかの腹黒キャラで登場。
属性過多な背景を利用して様々なファン層に対して取り入ったり、母親の死を相手の同情を買うのに利用したり*20、しまいには鞍上がバッティングしたアドマイヤベガにデマを吹き込んで回避させたり、とやりたい放題していた。
加えて本作では宝塚記念と京都大賞典での2連敗は秋の天皇賞での勝利を盛り上げるための仕込みというとんでもない設定になっている。
しかし、その秋の天皇賞で触れたタケユタカの思いに感銘を受けて改心し、以降は腹黒キャラを出す事もなく、正統派の競走馬としての道を歩む事となる。
またジャパンカップ直前には亡き兄サイレンススズカの名声と記憶が重圧となっていたラスカルスズカを叱咤しており、ある意味作中で一番成長したキャラ。
…そのせいでディープインパクト・タケペアが行く覇道に(シーザリオがタケ騎乗馬を下していた事もあり)嫉妬し日本ダービー時息子インティライミを押していたが、ダービー直前彼らと交流した事で一転しこのペア押しになる一幕もあった。
ちなみに本作は1998年後半連載休止していたため、同期G1馬の内グラスワンダー・エルコンドルパサー・セイウンスカイ・マイネルラヴ・ファレノプシスは勝ち鞍の一部が描写されない不運に見舞われており
他の同世代組も勝ち鞍時顔見せだけで終わるケースがしばしば見られたため、地味に勝ったレースで毎回ちゃんと出番が存在する1998年世代は彼くらいだったりする。


  • 『ひとすじの光』

小川哲の短編小説(単行本『嘘と正典』収録)にも登場。
かつて1999年京都大賞典を父と共に見に行った男性が、父から凡庸な馬を遺産として託されたことを切っ掛けに、スペシャルウィークの血脈と共に自分の過去や遺産馬の血統由来を振り返る話となっている。


ドラマチックな経歴が評価された事で看板キャラの一人に抜擢され、アニメ1期やコミカライズ版で主役を張る事となった。
肝心のアプリの配信が遅れに遅れたため、いざ配信された頃には話題性が薄れてしまっていたのはご愛敬。
詳しくは当該項目を参照。




追記・修正は諦めが本当の敵だと知っている人がよろしくお願いします。


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  • ウマ娘第1話放送終了後に亡くなったんだっけか -- 名無しさん (2021-09-02 19:35:27)
  • ↑ -- 名無しさん (2021-09-02 19:48:00)
  • 第五話ですね -- 名無しさん (2021-09-02 19:48:23)
  • 昔から物語の主人公のような生涯だか経歴だかと言われてたんだっけか -- 名無しさん (2021-09-02 20:38:52)
  • 言い方悪いが実力ならエルやグラスの方が強いのにこの二匹はスペの踏み台になってる感じがあって少し可哀想 -- 名無しさん (2021-09-02 21:49:35)
  • 名前の響き的に、海外受けは悪かったとかなんとか『Special Weak(とても弱い)』 -- 名無しさん (2021-09-02 22:20:42)
  • 種牡馬としてはフィリーサイアーだったと思うがシーザリオの父と言うだけで凄い。 -- 名無しさん (2021-09-03 02:41:23)
  • サンデーサイレンス「この子見てると子孫の気性が荒いのは育ちのせいで俺、悪くなくない?」 -- 名無しさん (2021-09-03 10:18:24)
  • エピファネイアは言わずもがな、エフフォーリアも特に事故とかなければ種牡馬入りするだろうし、キンカメの血統を持たず且つSSクロスを実現させられる日本競馬をまた一段上に向けてくれそうな血統だから、今後中央G1の出走馬の血統表ではほぼ確実に見る馬になるだろうなぁ。そういう意味じゃ、あの世代1番の代表馬なのかも。 -- 名無しさん (2021-09-03 10:44:01)
  • 某所のせいでところかまわず他馬に発情してるイメージしかない -- 名無しさん (2021-09-03 10:47:07)
  • 天皇賞連覇ならスーパークリーク以来では? -- 名無しさん (2021-09-03 15:29:48)
  • 種牡馬入り後の記述が削除されていたため復元しました -- 建て主 (2021-09-03 19:57:39)
  • ↑履歴よく見よう、その下の名無しさんも全部同じ人物だ -- 名無しさん (2021-09-03 21:17:03)
  • 何が起こってんだ? -- 名無しさん (2021-09-03 21:45:52)
  • グラスワンダーと初対決の時に、ステゴを7馬身置き去りにしていたとはいえ自身はグラスに3馬身差付けられて完敗したのは見返してみると馬体重がベスト(468)の時から12キロ重くなっていたのは結果論?(天春は476) -- 名無しさん (2021-09-04 19:22:52)
  • 報告のあった荒らしコメントを削除しました -- 名無しさん (2021-09-11 18:12:37)
  • エルはともかくグラスとは得意コースの違いと頑丈さがあるから明確にグラス上とは思わん -- 名無しさん (2021-09-19 13:24:32)
  • 栗毛嫌いに関してはグラスのような赤みがかった栗毛だけを嫌っていたんで馬としては珍しく赤を識別できていたんじゃないかって話がある(馬は基本的に赤色をほとんど認識できない) -- 名無しさん (2021-09-22 02:53:26)
  • 最後の有馬、結果として「競馬」には負けたもののレース内容では勝ってるのが惜しいというかなんというか…実際見てみると、例え2戦全敗でも「最強のライバル」と言って差し支えないのは紛れもない事実 -- 名無しさん (2022-02-05 23:16:33)
  • スペシャルウィークレベルで顕彰馬に選出されていないなら、同じように顕彰馬になれてもおかしくないはずなのに制度に泣かされた結果なれなかった馬って他にいるのかどうか? -- 名無しさん (2023-06-16 20:02:06)
  • 報告にあった荒らしコメントを削除。 -- 名無しさん (2024-02-20 01:00:27)

#comment(striction)

*1 ナリタブライアン、ディープインパクトと同等。グレード制移行後はメリーナイスの6馬身差が最大
*2 沈黙の日曜日の翌週、アドマイヤベガの新馬戦でやらかしてしまった。
*3 同年中の連覇に限らなければスーパークリーク以来
*4 モンジューは豊富なスタミナとパワーを持つ分速度で劣ることも多いサドラーズウェルズの産駒であり、日本のスピードと瞬発力を重視する馬場との相性は良くない
*5 数十枚に及ぶ判定写真のうち、ゴールの瞬間を写した1枚のみグラスが前に出ていたという。
*6 達成するとボーナス賞金が出る
*7 引退の翌年である2000年に行われた投票なのでこの周辺の世代が有利だったのもあるが
*8 下手だっただけなのか嫌いだったのかは諸説ある。
*9 グラスワンダーとお披露目式をした時はお互い威嚇するので隣に並べることもできなかったという。でもなぜかスクリーンヒーロー(グラスの代表産駒で栗毛)にはどうもしなかったとか
*10 合衆国最高格のオークスはダートのケンタッキーオークスであるが、芝では当時の最高格。
*11 投票数は祖父シンボリクリスエスが天皇賞・有馬を制して選ばれた時と同数で祖父と孫の戦績がほぼ同じで同票数だったことはちょっとした話題になった。
*12 同レースでは半兄エピファネイアの産駒ブローザホーンが2着であり、シーザリオの一族が上位の決着となった。
*13 トーホウジャッカルがゲート内で騒いでいたのをゴールドシップが威嚇したことが原因と言われている
*14 当初は父スペシャルウィークと同じ臼田浩義氏所有であったが、彼の馬主撤退に伴いスペのライバルであったセイウンスカイの馬主・西山氏に譲渡されている。
*15 ただし、アロースタッドに戻されて以後も毎年のように社台ファームなど社台系の繁殖牝馬が何頭かあてがわれている。後述のクラウンプライドが吉田一族の所有であることや、2022年の産駒が社台レースホースで募集馬になるなど、社台側から種牡馬として完全に見限られたというわけではないようだ。
*16 日本調教馬として出走地域と出走海外G1数の歴代最多記録を持つ
*17 ほぼ確定だと思われた前年に落ちていた。そういうとこやぞ
*18 父ステイゴールド。11歳までの長きに渡る現役生活で障害GⅠ9勝を挙げ、史上最多となる同一重賞5連覇(2016~2020年中山グランドジャンプ)、これまた史上最多となる計4回に及ぶJRA賞最優秀障害馬選出(2016~2018年、2021年)など数々の記録を打ち立てた「障害競走の絶対王者」。ちなみに顕彰馬候補入りは2024年から。
*19 当時は今よりG1少なかったし、連覇や二冠もあるので一概に言えないが
*20 もっとも、相手が共に父親が悲惨な境遇にあったキングヘイローとセイウンスカイであったため、逆に火をつけてしまう形になったが。

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