登録日:2020/07/22 Wed 11:52:00
更新日:2024/05/20 Mon 13:18:27NEW!
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ナショナルジオグラフィックチャンネル 事実は小説より奇なり フィクションじゃないのかよ!騙された! 飛行機 事故 一覧項目 人災 大惨事 所要時間30分以上の項目 所要時間60分以上の項目 所要時間90分以上の項目 メーデー メーデー! 所要時間120分以上の項目 メーデー!:航空機事故の真実と真相 フィクションであって欲しかった
This is a true story. It is based on official reports and eyewitness accounts.
これは、調査報告書、目撃証言等に基づいて再現された、真実のストーリーです。
【概要】
この項目は、ドキュメンタリー番組『メーデー!:航空機事故の真実と真相』で取り扱われた事故の一部を抜粋した項目である。
航空機事故を取り扱う長寿番組故か、取り扱われる内容は多岐に渡り、中にはフィクションにしか見えない様な案件も存在する。
以下の事故紹介は発生年度順ではなく放映順の紹介である事に留意されたし。
念押ししておくが、すべて公式記録、関係者の証言を元にした実話である。
なお記録が残っておらず推測による補完があったり、場合によっては番組冒頭に「脚色があります」と出たりする事もあるが、基本は実話である。
【番組内で取り扱われた日本に関係する事件・事故】
数多くの航空事故を扱っているため当然日本が関係する事故もある。
ここでは日本で発生(不時着先が日本国内の場合も含む)或いは日本の航空会社で起きた事件・事故を紹介する。
日本航空123便墜落事故
第3期第3話「御巣鷹の尾根」(原題:OUT OF CONTROL)/第21期第3話「PRESSURE POINT」
※事故内容
1985年8月12日発生。
羽田空港から伊丹空港に向かっていた747SRが伊豆半島上空に差し掛かったところ、
1978年に自損事故を起こした際の修理にミスがあった事が原因で耐久性の落ちていた圧力隔壁が突如損壊し、垂直尾翼と補助動力装置が脱落し油圧系統を全喪失*1。
搭乗クルーは、
- 機長は総飛行時間12,000時間を超え、運行部門教官を務めていた元海上自衛官の高濱雅己氏*2
- 副操縦士は総飛行時間約4,000時間で、機長昇格試験中(訓練の為、機長席に着席)DC-8の機長資格も持っていた
- 機関士も総飛行時間約10,000時間でエンジニア部門の教官
というベテラン・優秀なパイロットが揃っていたが、必死の奮闘も虚しく群馬県の高天原山に墜落。
乗員乗客524名中520名が死亡。生存率1%未満となる単独機としては世界最悪の犠牲者を出した墜落事故となった。
なお、墜落直後は他にも生きている人がいたとの生存者の証言もあるが、日没後の原生林地帯の山地に加えて激しい火災で空から近づけない悪条件が重なった上に情報の錯綜もあり、
本格的な救助活動は事故から12時間以上経過した翌朝になってしまい、救助が来るまでの間にそのほとんどが亡くなってしまったという。
最終的な生存者4名は墜落のショックで分離し、火災を免れた後部席にいた人の一部である。
ただ事故の状況下でシミュレーター実験をするとほぼ例外なく失敗して123便を超える大惨事になるという結果が出ており、むしろ4人の生還者が出たのが奇跡と言える状況でもある。
著名な事故であるほか、初回版の放送から時間が経過したため2023年にリメイク版が放映された。初回版と異なり機内の様子が史実に近くなっている他、最後の最後に右にバンクしていたという新しい事実も公開。よりによって最後は運にも見放されたという無情さが浮き彫りになった。
事故から15年後に、本来は公開されない事故発生時のボイスレコーダーの詳細な内容がリークされた事で日本国内ではこの時の機長の会話や客室の様子が分かっている。
それと比べるとVTRでは尾翼が吹き飛んだ後に減圧が起きて客室内がパニックに陥るなどやや脚色が強めであるが、初回版制作当時の当時の英語圏の制作チームには、事故に関する情報が少なかったのかもしれない。
また、一部のシーンは実際の映像に再現VTRをコラ画像の様にハメるというシュールな斬新な方法が取られている。
なお、米軍横田基地との交信を再現したVTRでは何故か後ろの壁にレーガン大統領の写真が飾られていてやたら目立っているが、これはアメリカの視聴者に事故の年代を分かりやすく伝える為の配慮と思われる。
完全日本語訳されているため少し聞き取りにくいが、日本人管制官の日本人訛り英語がやたらリアルという評判。*3
墜落した123便が飛んでいた羽田 - 大阪線は、他社も含めて普段からビジネス客を中心に利用客の多いドル箱路線だが、
この日はお盆という事もあり*4、多くの観光客や帰省客が搭乗していてほぼ満席の状態で、著名人も搭乗していた。
その中でも歌手の坂本九は、普段は事故を起こした日本航空(JAL)ではなく全日空(ANA)を利用しており、この時もANAを利用するつもりだったが、
ANAの席が取れず、移動先のホテルもチケットを手配できなかった事で仕方なく123便を利用して事故に遭うという、不運としか言い様のない顛末であった。
また、ハウス食品や阪神タイガースは社長が犠牲になっている。阪神はこの件で一時首位から陥落するも、最終的にはリーグ優勝を果たした事は有名。
10月16日、渡真利克則が掴み優勝が決まったウイニングボールは、故人に優勝を報告するため霊前に手向けられた。
ちなみに、大抵の事故と異なり異常発生から墜落までに時間的猶予があったため、死を覚悟して遺書をしたためた乗員・乗客もおり、これで身元が判明した遺体もある。
検索すれば実際の遺書が見られるほか、番組内でも一部紹介されているが、遺族に向けて感謝やこれからの人生の幸福を祈る言葉を綴った、胸を衝く様なものもあれば、
「冷静だ」と他の乗客の遺書で称されているスチュワーデスが、乗客の前では見せない死への恐怖を綴ったものもあるので、読む場合は心の準備をお勧めする。
逆に、色々な要因で本来123便に乗る予定が変更されて難を逃れた人も少なくなく、
など後に芸能界に多大な影響を持つ人も多かったのである。
特に仕事が早く終わり1本早い便に乗れた為に難を逃れた明石家さんまはこの事故にショックを受け、
以降、東京 - 大阪間の移動には飛行機ではなく東海道新幹線を必ず使う様になった。
更に言えば、阪神タイガースの選手やコーチなども事故機材が使用された福岡→羽田の便に搭乗していた。
阪神が球団社長を失い、更に一歩間違えば選手まで事故に巻き込まれていた事は球界に衝撃を与え、一時期JALの利用が忌避された他、
「新幹線で移動できるならば新幹線で移動、やむなく飛行機移動をする場合でもチームを2つに分けて新幹線と飛行機、または別の便の飛行機に分乗させる」という不文律が出来た。
この影響は各方面にも影響し、当時JALが賞品を提供していたクイズ番組「アップダウンクイズ」(毎日放送)も同年10月で打ち切りに追い込まれている*5。
事故後、JALではより新しい747-300SRや747-400Dなどの導入により1994年までに同型機の747SRは姿を消した*6。
一方ANAでは引き続き主力機材として活躍し、国際線にも投入されながら*72006年まで運用された。
伊丹空港ではこの747SR引退から少し後に運用ルールの変更により4発機の定期運用が出来なくなっている。
なおJALでは事故の教訓として、羽田空港の整備地区に日本航空安全啓発センターを開設し(最寄り駅は東京モノレール羽田空港線・新整備場駅)、事故機のブラックボックスなどを展示している。
また、JALが長年提供しているラジオ番組「JET STREAM」(TOKYO FM)は、毎年8月12日前後の放送分は広告の出稿を行っていない。
経営破綻までは空席案内の電話番号を0120-747-123としていた。
あまりにも凄惨な事故のため、事故直後は関係者や更には事故死したクルーの遺族にも激しい誹謗中傷が向けられたが、
事故調査によりクルーは絶望的な状況下でも最善を尽くしていた事が判明し、後に民間航空としては最高位の栄誉であるポラリス賞を贈られている。
また、本来ならすぐ墜落してもおかしくなかった*8状態から、30分間エンジン推力のみで飛び続けた事は航空業界に大きな影響を与えた。
この事故をきっかけにエンジン推力だけでの飛行方法の研究が進められ、後のアクシデント発生時にも命を救った事例がある。
また、日本の航空機事故としては特異な事故であった事から、陰謀論のネタにされている。
その内容は「米軍機がミサイルで当該機を撃墜させた」「生存者を自衛隊員が火炎放射器でとどめを刺した」など、再検証するまでもない極めて稚拙なものであるが、事故の風化に反比例して、SNSのコミュニティやYouTube動画によるエコーチェンバーで、陰謀論を固く信じている者が一定数出てきてしまっている。
遺族や日本航空OBOG(自称含む)も陰謀論に加担し、多くの書籍を出版しているため、史料も玉石混淆の様相を呈している。
個人的な興味から事故について深く知りたい方は史料がファクトベースによって書かれているか留意されたい。
フィリピン航空434便爆破事件
第3期第5話「機内の爆弾」(原題:BOMB ON BOARD)
※事故内容
1994年12月11日発生。
新東京国際空港(現:成田国際空港)に向かっていたフィリピン航空434便が沖縄県付近を飛行中、テロリストにより座席下に仕掛けられた爆弾が突如爆発。その座席にいた日本人男性が即死し、周囲の乗客10名が負傷した。
機体は操縦系統を損傷したものの、エンジン推力によるコントロールが行われ、無事那覇空港に着陸した。
ちなみに爆弾の仕掛けられた座席に犠牲者の男性が座っていなかったり、事故機に改修が施されて座席と燃料タンクの対応位置がズレていなければ更に大きな被害を受けていたとされており、男性には不運だったとしか言えないが全体を見れば運が良かったとも言える。
犯行は国際的テロリスト集団「アルカイダ」によるもので、「ボジンカ計画」と呼ばれる航空機爆破計画の予行演習*9として行われたものだった。
その後諜報機関によりボジンカ計画自体は阻止できたが、アルカイダは2001年に「アメリカ同時多発テロ事件(9.11)」を引き起こすのであった。
ちなみに事件の舞台となったボーイング747-283Bは貨物用に改造され、2007年まで使われたほか、当該便であるPR434便は現在でも事件当時と同じ*10セブー成田間で大きな時間変更もなく運行を続けている。
成田空港手荷物爆発事件
第5期第7話「持ち込まれた小型爆弾」(原題:EXPLOSIVE EVIDENCE)
※事故内容
1985年6月23日発生。別名「カナダ太平洋航空機手荷物爆発事件」。
トロントからバンクーバー経由で成田に到着したカナダ太平洋航空*113便の荷分け作業中、手荷物が突如爆発し、地上スタッフ6名が死傷。
当初は成田空港に反対する過激派の犯行と思われていたが、実際はインドのシク教過激派テロリストによる犯行で、同一犯によりほぼ同タイミングにエア・インディア182便爆破事件が発生している*12。
空港で爆発した爆弾も成田からバンコクを経由してボンベイに向かうエア・インディア301便を標的としており、301便に積み替えられる予定だった手荷物に仕掛けられていた。
番組でもこの2つの事件・事故は同一エピソードで紹介されている。というかむしろメインはAI182便の方なのだが
ちなみにこちらの爆弾が積み込み前に爆発した原因は、番組中では衝撃を受けたはずみで爆発したのではないかと推測されていたが、
実際は日本がサマータイム制度を導入していない事を犯人が把握しておらず、タイマー設定を間違えた事が原因だと言う説が主力である。
何故か調査に兵庫県警が出張っている*13。このせいで日本での事故が扱われる度に兵庫県警を呼ぶコメントが発生する事に。
また、この事件の影響もあってか同年のJL123便事故の際にも爆発物によるテロの可能性を最初に疑ったと後の回で語られている。
フェデックス80便着陸失敗事故
第12期第5話「DEATH AT NARITA」
※事故内容
2009年3月23日発生。
中国の広州国際空港から離陸したフェデックス80便が、成田空港への着陸を行った際に、パイロットエラーや機体の構造上の問題などの要因が重なり着陸に失敗し、ひっくり返って炎上。
パイロットは両方死亡(貨物機のため他の乗客乗員はいなかった)、成田空港では就航以来初となる死亡事故となった。
日本の運輸安全委員会「JTSB」が初登場。テンプレめいた日本表現が無くなっているほか、名刺を渡すシーンがやけにリアルとの評。でも盆栽は置いてある
下記の中華航空140便墜落事故以来、多くの定点カメラが設置されていた空港で発生したため事故発生の瞬間が映像や写真で記録された事故の一つでもある。
チャイナエアライン120便炎上事故
第14期第4話「沖縄での炎上事故」(原題:DEADLY DETAIL)
※事故内容
2007年8月20日発生。那覇空港に着陸したチャイナエアライン120便から着陸直後に火の手が上がった。
激しい爆発を伴い機体は最終的に全焼したものの、乗員の迅速な緊急脱出の指示と乗客同士の連携もあり2分未満で乗客全員が脱出。乗員も乗客の脱出を確認後に脱出し、死者重傷者は出なかった。この中で副操縦士は脱出中に爆風で地面に叩きつけられたが、なんとほぼ無傷で普通に走って事故機から待避している。ある意味異能生存体
2008年に組織改編で誕生したJTSB(国土交通省運輸安全委員会)の前身である「ARAIC(航空・鉄道事故調査委員会)」が登場している。
事故の原因は翼内部のボルトが整備不良で外れ、燃料タンクに突き刺さっての燃料漏れであるが、そのボルトは手探りでしか整備できない場所にあるため整備ミスが起き易く、そもそもボルトをとめる穴がねじ頭やナットよりも大きいためワッシャー*14で引っかけてどうにか繋ぎ留めている状態だったという控えめにいっても意味不明な構造上の問題があった。
このあまりに衝撃的な事故原因に整備士への同情と設計者へのツッコミが溢れた。
また、インタビューで調査官がワッシャーで繋ぎとめる構造について手品師の様な手捌きかつとてもわかりやすい実演で説明しているのも印象的。
ちなみに脱出中の機内ではある乗客が手荷物棚を指差して座りっぱなしであり、メーデー民からも早く脱出しろと非難の声が上がったが、実はそこには松葉杖が入っておりこの乗客は足が不自由だった事が判明。多数のメーデー民が謝罪コメントをする事になった。
中華航空140便墜落事故
第16期第9話「名古屋空港の悲劇」(原題:DEADLY GO ROUND)
※事故内容
1994年4月26日発生。名古屋(小牧)空港へ着陸しようとしていた中華航空140便が着陸進入を諦め復航しようとしたが、急上昇した後失速、墜落した。
この事故により日本人154名を含む264名が犠牲となり、生存者はわずか7名。
中華航空史上最悪・日本の航空史上2番目・当該機のエアバスA300の事故としては史上3番目の犠牲者数を出す墜落事故となった。
直接の事故原因は副操縦士が誤って復航モードを作動させてしまい、これが解除されないまま着陸進入を試みたパイロットエラーによるものだが、復航モードの作動表示が見づらい配置だったりそもそも復航モードの解除が非常にやりにくい(上にそれに関係したトラブルが既に発生していた)と機体側にも大きな問題があった。
更に中華航空も中華航空でA300のシミュレーターを自前で持っていなかったり、エアバスがA300の操縦トラブルに関する改善勧告を出したにも関わらず改修を行っていなかったりといった問題が発覚。一応シミュレーター訓練自体はバンコク(恐らくタイ国際航空の物を借りていたと思われる)で行っていたものの、シミュレーターと実機で挙動が違うという致命的な問題により、訓練通りに対応しても復航モードは解除できないという理不尽さが明らかになった。
この事故の翌年に中華航空は日本での呼称を英名の「チャイナエアライン」に変更しているが、これは香港返還に伴う中国からの圧力によるものであり事故とは無関係。事実未だに「中華航空」の名称も併記されている他、中国語での呼称は変更されていない。同時に塗装も現在もトレードマークとなっている台湾の国花である梅のものに変更されている。
なおチャイナエアラインは以後4年おきに大事故を起こす嫌なジンクス(華航四年大限)を抱え、「危険な航空会社」という印象を持たれる様になってしまう。
この事故の様子は偶然TVの定点カメラで撮影されており、以後空港の定点カメラ設置が進む要因になった。おそらく英語に翻訳した尺に合わせた為と思われるが、最後のインタビューが日本語版だと途中で切れて終わってしまう。
【番組内で取り扱われた犠牲者無しの事故】
数多くの航空事故を取り扱っている本番組ではあるが、そのどれもが多くの犠牲者を出した悲惨な事故というわけではなく、
中には優秀な搭乗員やクルーの賢明な努力によって危機的状況から犠牲者を出す事なく生還した事故も少なくない。
このパターンでは機体の損傷が軽微な事が多く、調査がスムーズに進みやすい事から、その分事故パートに多くの尺が当てられる事が多い。
また、犠牲者が出なかった事で心象的に軽くなるのか、他系統の事故よりも視聴者の発言も軽くなる傾向にある。
以下はその一例として紹介する。
ブリティッシュ・エアウェイズ5390便不時着事故
第2期第1話「突風」(原題:BLOW OUT)
※事故内容
1990年6月10日発生。
コクピット正面の風防ガラスが吹き飛び、シートベルトを外していた機長が機外に吹き飛ばされたが、副操縦士の懸命な操縦でサウサンプトン空港へと不時着を果たした。
機長は足が操縦桿に引っ掛かったため完全に放り出される惨事は免れていたものの、高高度の低酸素・低温に生身で晒されていた事から周りからは完全に死んだものとして扱われていたのだが、
- 僅かに意識が残っていた事故直後に比較的酸素の多い機体側に身体を向ける事ができた
- 乗務員達が迅速な対応で必死に機長の足を押さえ続けた(最悪機長を離す事も考えはしたが、仮に吸い出されたら機長はそのまま左エンジンに吸い込まれ、更に重大な故障の発生が予測されたため。
バードストライクならぬキャプテンストライクの危機であった) - 副操縦士が迅速に機体を降下させて酸素濃度を回復させる*15ファインプレーをしつつ着陸も素早く成功させる事ができた
といった幸運が重なり、機長を含めて全員生還を果たした。その後に機長は5ヶ月で現場復帰して定年まで勤めた事から、メーデー民達からは異能生存体扱いされている。
原因は当日に交換された風防ガラスを止めるボルトの規格違い。
しかも交換前のボルトもたまたま長さが足りていただけで規格外であり、加えて交換後の物はわずかに短かった事で今回の事故へと至った。
根本的な原因としてはバーミンガム国際空港では許容範囲を明らかにオーバーした仕事量をどうにかすべく、マニュアルを無視した整備が横行していた事が誤ったボルトの使用という事態を招いていた。
その他、メーデー民からは機長が外に放りだされた事を示すために頻繁に用いられている外に放り出された機長がやたら大きくなっている雑なCG映像がネタにされている。
再現ドラマも、どう考えても機長が助からないだろうと思わせておいてからインタビュー映像を流すというメーデーにしては珍しく視聴者のミスリードを誘う演出もある。
この前例のない事故であったが、2018年5月14日…まさかのこの事故が前例となる四川航空8633便不時着事故が発生。
この事故でも突然コックピットの右側の窓が割れ、急激に機内の気圧が下がり、副操縦士の上半身が機体から吸い出されてしまった。
不幸中の幸いというべきか、こちらの事故でも負傷者は出たものの死者は出ず(今回の副操縦士は上記の機長と違いシートベルトを着用しているタイミングであり、飛行中に自力で復帰する事が出来た)、2019年に映画化され『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』というタイトルで公開された。
メーデーでも第21期第6話で取り扱われている。
DHL貨物便撃墜事件
第3期第2話「バグダッド上空」(原題:ATTACK OVER BAGHDAD)
※事故内容
2003年11月22日発生。
バグダッドを飛びたったばかりのDHL便にイラクのテロリストが発射した対空ミサイルが左翼に被弾し油圧を全喪失。
しかしその後エンジン推力のみで空港まで引き返し、想定以上の着陸速度で滑走路を横に外れて砂漠に突っ込んだものの着陸に成功。避難の際にも一騒動*16あったが全員無事に生還している。
ちょうど次の回にあたる日本航空123便墜落事故が同様に油圧系統を喪失した状態で30分飛び続けた事、下記のユナイテッド航空232便不時着事故でも同様の事が行われた事で研究が進められており、クルーも両事故の教訓を踏まえて抜群の連携を行った事が功を奏した。
JL123→UA232→この事件という様に見ると、最悪に近い状態に対応する技術がいかに培われたがよく分かるだろう。これら2つの前例はこの回で実際のボイスレコーダーの音声付きで取り上げられている。
ちなみにテロリストがミサイルを発射する瞬間のシーンは、フランスのジャーナリストの手によって撮影されており、実際の映像も流れている。
後にこのジャーナリストらは「撮影をしながらなぜ攻撃を止めなかったのか」と批判されたが「自動小銃で武装したテロリストたちに囲まれている中で止める事など出来なかった」と釈明をしている。
フェデックス705便ハイジャック未遂事件
第3期第4話「流血の操縦室」(原題:SUICIDE ATTACK)
※事故内容
1994年4月7日発生。
離陸20分後にハイジャックされかけたが、クルーの必死の奮闘の末ハイジャック犯を無力化し、空港まで引き返した。
クルーは全員パイロットを引退せざるを得ない程の重傷を負ったが、死者はいなかった。
フェデックスという会社は貨物便を運行する会社である。つまり貨物機でハイジャックが発生したのだ。
実は犯人はフェデックスの航空機関士で、デッドヘッドでこの便に乗っていた。
この航空機関士は履歴書に虚偽情報を記載したために本社に呼び出される予定であり、解雇されて人生が終わる前にハイジャックして本社ビルに突っ込もうと計画していた。
貨物機ならハイジャックを疑われないと考え自らに生命保険をかけ、検死結果で事故死と騙せるよう武器に鈍器を選ぶなど周到に準備をして事故死する事で家族に莫大な保険金を払わせようとしていたのである。
更に証拠を残さない様、離陸前にCVRのスイッチをオフにしていたが、幸いクルーが気づいて再起動させており犯行の様子はすべて記録される事になった。
犯人は裁判で心神耗弱を主張したが、前述のCVRの内容が決め手となり終身刑が言い渡された。
ちなみに犯人は当初、女性2名を含むクルーを襲撃する予定であったが、土壇場で男性3人のクルーに変更になった上に、クルーの中にいた元軍人(後述の通り攻撃機操縦手だった)を相手にする羽目になっており、本来のクルーであれば目的を完遂していたものと思われる。
また犯人を無力化するのにあのDC-10も一躍買っている。副操縦士(この時頭蓋骨にかなり大きな穴が開き半身が麻痺している状態だった)は元海軍の攻撃機操縦士だった事でその操縦テクニックをDC-10で実行。140度背面飛行からマッハ0.8(時速約1000km)以上での急降下というトンでも操縦であり流石に民間機仕様のDC-10の耐久力の限界を超えているはずだが、見事にアクロバット飛行に耐えてみせた。DC-10の頑丈な機体が功を奏した例である。
再現VTRでは殴ったりつかみ合ったりと流血を含む壮絶な暴力シーンが多く、血だらけの満身創痍になったクルーの死闘が描かれており、メーデーの数あるエピソードの中でも屈指の異色回となっている。
なにせ着陸したDC-10に救急隊と警察が踏み込んでみると副操縦士の超絶機動の中殴り合いをし続けたことで床も壁も天井も一面血塗れの惨状になっていたのだから。
ブリティッシュ・エアウェイズ9便エンジン故障事故
第4期第2話「謎の白い光」(原題:FALLING FROM THE SKY)
※事故内容
1982年6月24日発生。
ロンドンから計4箇所を経由してニュージーランド・オークランドへ向かう長距離便BA9便で起こった。
マレーシアから次の経由地オーストラリア・パースへのフライトの途中、インドネシア上空で謎の光に包まれた事から始まった。
この光は「セントエルモの火」と呼ばれ、本来は雷雲に遭遇したときに出るものだが、この日は雷雲は無く、気象レーダーにも何も映っていない。
その後、機内にオゾン臭が漂い始めたが、電気系統も含めて機内火災はない。そうしているうちに4つあるエンジン全てが停止した。
緊急連絡を取ろうとしても雑音がひどく、ジャカルタの管制には通じない。
だが懸命な努力が奏功し、エンジンは4つ全て再始動。途中でエンジンが一基再び停止し、コクピットの窓は何故か端の数cm以外は外を見る事ができないほど曇っており、にも関わらずジャカルタ空港はグライドパスが故障していたため、殆ど外部が見えないのに手動で着陸しなければならないなどのトラブルに見舞われたものの、どうにかジャカルタに緊急着陸する事が出来た。
翌日に改めて機体を確認してみると、エンジンが大きなダメージを受け、塗装も剥がれ落ちて窓は細かな傷だらけで擦りガラスの様になっていた。窓が曇って見えたのはこのためだった。
全ての原因は、火山だった。1980年代初頭に大規模な噴火を繰り返していたガルングン火山の噴煙に遭遇。
エンジンに吸い込まれた火山灰が熱で融けてガラス状の固体となり排気管を詰まらせエンジンを止めてしまった。そして
- 機内に漂ったオゾン臭も火山の噴煙
- 「セントエルモの火」や通信障害
- 塗装の剥離や窓の傷
も全て火山灰と機体との摩擦によるものであった。しかも気象レーダーは乾燥した火山灰を感知出来ない為、火山の噴煙を避ける事は出来なかった。
幸い、エンジンが止まった事でエンジン内部の温度が下がり、高度も火山灰が立ち込めていない地点まで落ちた事で、詰まっていた火山灰が剥がれ落ちて再始動に繋がった。
当初クルーは自分達の操縦に何かミスがあったではと苦悩していたが、むしろクルーは最善の行動を取っていた事が証明され、その活躍をエリザベス女王をはじめとする多くの人々に讃えられる事になった。
1989年にもKLMオランダ航空がアラスカを飛行中、火山の噴煙に遭遇しエンジン4機全て一時的に停止した事故が起きている。BA9便とKLM機の火山遭遇をきっかけに、航空路火山灰情報センターが東京を含む世界9箇所に設置され、火山の情報提供の整備などが行われていった。
2010年にアイスランドで発生した火山噴火では、火山灰が拡大した欧州のほぼ全域で飛行禁止措置が取られ、世界的な混乱が生じた。
このニュースを報じる際、BA9便事故を代表的な前例として取り上げた他、ナショナルジオグラフィックチャンネルも2010年4月の再放送スケジュールを急遽変更した。
ちなみにインタビューに応じた乗客の一人の顔立ちががビートたけしこと北野武にあまりに似ていることから、メーデー民からピトー管をもじって”ピトーたけし”と呼ばれている。
中華航空006便急降下事故
第4期第6話「太平洋上空でのパニック」(原題:PANIC OVER THE PACIFIC)
※事故内容
1985年2月19日発生。
台湾を飛び立ちサンフランシスコまであと少しという所で機関士がエンジン操作ミスをやらかして推力バランスが崩れ、機体が傾いて失速し急降下。
更には全員が長時間の操縦で判断力が鈍っており自動操縦について誤認したため異常な角度も人工水平儀の故障と誤認、最大5Gの負荷に晒され機体がダメージを受けてゆく。
が、雲を超えて海面が見えた事で機長が高度を把握しあと40秒で海面激突という所でリカバリに成功。
損傷の深刻さから当初の目的地のロサンゼルスを諦めサンフランシスコ国際空港に辿り着き、重傷人は出してしまったものの犠牲者無しで切り抜ける事ができた。
再現映像ではコクピットが垂直に傾いてパニック状態になったり機体が錐もみ状態で人が天井にぶつかるといういかにも助からない大惨事が映し出されていたにも関わらず、事故を知らない初見者は最終的に犠牲者0というオチに( ゚д゚)となった人も。
上記の通り乗員が疲労で判断力が低下した所で事故が起きた為テンパっており、証言と物証が食い違う事案が起きて事故調査は難航し、全員生存事件としては珍しく検証パートが長引いた。
一歩間違えば下記の様な人為的ミスによる大惨事になりかねなかった本件であるが、奮闘した結果持ち直した事からナレーターや調査員も「ミスは誰にでもある。そのうえで彼らは無事乗客を送り届けたのだから大したものだ。一番頑張ったのはあちこち損傷しながらもバラバラにならず持ちこたえた機体だけど」と苦笑いしながらも乗員達を擁護している。
盛大なやらかしと神操縦をたった数分で両方やった回ということもあり、メーデー民的にはマッチポンプ回と言われている。
エアカナダ143便滑空事故
第5期第2話「不運の先に待つ奇跡」(原題:MIRACLE FLIGHT)
ピアソン機長の登場回だが、何より「もう助からないぞ」の和訳が有名な事故。
※事故内容
1983年7月23日発生。
上空での燃料切れによってエンジンが2基とも停止。原因は給油係員がキロとポンドを間違えて給油した事によるガス欠。
一応機体にも燃料の入りを確認できる装置はあったが事故当時は故障しており、搭乗員はキロとポンドの計算を行う訓練もしておらず確認する術がなかった。
機長と副操縦士のCRMが正常に機能し、機長がグライダーの操縦経験が豊富だった事、副操縦士が不時着地点に土地勘があった事で、現地の滑走路を自転車で走っていた子供達*17を危うく轢きかけるトラブルに見舞われながらも無事不時着に成功。皮肉にも前輪を展開できない不具合が起きていた事が子供達を轢かずに済んだ要因となった。
管制官も不測の事態に対し適切な対応をし、また不時着地点の人達もレース事故用の消火器を持って駆け付けるなど迅速な手助けもあって、脱出時に多少の負傷者が出たものの犠牲者は無かった。
ハリウッド映画ばりのトラブルの連続をハリウッド映画並に有能なクルーと関係者の尽力で奇跡的に全員生還させた事故でもある。
123便のシミュレーター実験の例と同様、実際に事故の状況下でシミュレーター実験をすると、例外なく着陸に失敗するという結果が出た。
余談として番組中では取り上げられていないが、メーデーを受けて当初降りる予定だった空港から整備士が不時着地点へ車で向かったがこちらもガス欠に陥り辿り着けなかった。
この事故のせいで燃料切れが起こると「ヤーポンか?」と言われる事に(なお事故が起きた当時、カナダはヤード・ポンド法からメートル法への移行を進めていた)。
不時着に成功した143便は不時着地点であるカナダ空軍ギムリー基地跡地に因んで、この事故と共有という形ではあるが『ギムリー・グライダー』という栄光の通称が贈られた。
そして事故後2日後に色んな意味で今度こそ無事に燃料補給を完了して復帰し、その後も旅客機として2008年まで飛び続けた。
引退後のフェリーフライトには機長を含めた関係者が招待され、事故機は飛行可能機材としてなぜか自動車オークションで売り出されたが買い手が付かなかったため部品取りになった。
余談だが部品取りになった後に胴体のスキンを利用した記念のプレーンタグが販売されていた事がある。
ブリティッシュ・エアウェイズ38便事故
第8期第2話「THE HEATHROW ENIGMA」
※事故内容
2008年1月17日発生。ヒースロー空港まであと少しというロンドン上空で突風に対処しオートスロットルを噴かした直後にB777が突然推力を喪失。このままでは失速して市街地に墜落し大惨事になるという緊急事態に、機長は操縦は副操縦士に任せつつとっさの判断で降下速度が上がるというリスクを覚悟でフラップを操作して揚力の確保に努める。その結果当機はハウンズロー上空や空港端のアンテナの上を辛うじて通り過ぎ滑走路脇の芝生に不時着。車輪が機体からもげ燃料タンクに穴が開くなどの全損状態になったが、一人が重傷を負うなど47名が怪我を負っただけで済み全員が生還できた。
乗員乗客も全員生還し機体も壊れはしたものの燃えずに原形をほぼとどめて残っていたため証拠はすぐ見つかるだろうと思われたが、調査官の予想に反し調査は意外に難航。様々な仮説が上がってはすぐに否定されるという試行錯誤が繰り返される。そして氷がどこかで詰まって燃焼しなくなった可能性を考慮し始めたが、事故機が経験した温度で試してみてもパイプは完全には詰まらない。
そして苦戦しているうちに今度はデルタ航空18便が高高度で似た様な不都合を起こす。この時は高度に余裕があったためにエンジンを数秒間アイドリングさせて対処し事なきを得た。そしてこの経験から”パイプ内に氷ができてる状態でスロットルを通常以上に噴かすとパイプ内の氷が一気にFOHE(燃料/オイル熱交換器)に溜まり詰まってしまう。しかもB777のFOHEは仕様が裏目に出て氷が解けづらい”という不都合が判明し改善される。
また、報告書では38便にはDL18便と違い着陸寸前だったため立て直す猶予が残されておらず、機長の判断は大惨事を回避する最善策だった事も明記。同機のクルー達は英雄となりセーフティーメダルが授与された。
スカンジナビア航空751便墜落事故
第8期第3話「PILOT BETRAYED」
離陸時の「ローテート」を「回転」と誤訳したことで有名な事故。
※事故内容
1991年12月27日発生。
原因は豪雪の中行った翼の除雪が不十分で、事故機のエンジンが翼よりも後方にあるMD-81であったために上昇時に翼から剥がれた雪と氷がエンジンに吸い込まれてしまい故障が発生。
この時機長が事故発生時のマニュアル通り出力を下げたにも関わらず機体が勝手に出力を上げエンジンが完全に壊れ墜落。この勝手に出力を上げる仕組みは上昇中に出力低下した場合自動的に作動するシステムで、製造元が航空会社に伝えていなかった。
墜落の衝撃で機体は大破。しかし搭乗員達および同乗していた非番パイロットの奮闘と、また墜落した森の松の木と雪で覆われた地面にある程度墜落の衝撃が緩和されたことも手伝い、重傷者は出たものの奇跡的に死者は一人も出なかった。再現映像でもわかる通り機体の胴体は大きく3つに破断しており、この規模の破損で死者が出なかったことは極めて稀。実際に機長はメーデーのインタビューで「自分は世界一幸運な機長だと思った」と当時を振り返っている。
そして機長を除くクルーも再び現場に復帰したが、機長だけは事故をきっかけに機械不信に陥ってしまい、復帰を断念し引退していたことがメーデー出演で判明。
犠牲者を出さずヒーローと称えられ、パイロットとして空を愛した機長が、走馬灯の様に流れる輝くばかりのパイロットとしての思い出の写真の数々と共に引退した事を「これでよかったんです」と締めくくる救われない後日談から有能回なのに鬱回と言われている。なお前述の様に回転回でもある
USエアウェイズ1549便不時着水事故
第9期第1話「ハドソン川の奇跡」(原題:HUDSON RIVER RUNWAY)
ご存じトム・ハンクス主演の映画にもなった事故。
※事故内容
2009年1月15日発生。
両エンジンがバードストライクにより停止したが、機長の迅速な判断と副操縦士の的確なサポートにより、川への不時着水に成功。離陸から着水までたった5分8秒の出来事であった。
離陸直後で高度、速度共に低かった事、着水方向と川の流れが一致していたことも幸いし機体の損傷も最小で済んだため乗客も全員脱出に成功。
街中で消防局なども近かったため救助も迅速でカナダガン4匹を除く全員が生還した。
映画ではこの後事故調査委員会から厳しい取り調べを受けているが、実際は型通りのものでメーデーでもその通りに描写されており、むしろCRMや操縦技術に関しては手放しで称賛されている。*18
一応「本当に着水以外の方法は無かったのか?(空港まで戻れなかったのか)」という検証が行われたが、機長の判断に要する時間を考慮すると引き返すのは不可能だったと結論付けられた。
仮に戻るなら異常事態発生直後にチェックリストを無視して即空港に引き返すという無茶苦茶な対応となり現実的ではなく、
それどころか下手に空港に戻ろうとしていれば通勤ラッシュの市街地に墜落の可能性もあり得たのだから*19。
この機の乗客の中には日本人会社員が二人おり、映画化の際には、主演のトム・ハンクスの来日記者会見や試写会にも招かれている。
なお、博物館となっている空母イントレピッドの前で救助活動が行われた為、「屋外展示されているコンコルドの前で救助される1549便」という、えらくシュールな記録映像が残っている。
ノースウエスト航空85便緊急着陸事故
第9期第7話「TURNING POINT」
※事故内容
2002年10月9日発生。
デトロイトから成田へ向かっていたノースウエスト航空85便がベーリング海上空を飛行中、突如方向舵の制御が効かなくなるトラブルが発生。
緊急事態にコックピットクルーと交代のクルー全員で操縦・無線交信・エンジン操作・マニュアルのチェック・客室への連絡などを分担して機体を動かし、トラブル発生から2時間後にアンカレッジ国際空港に無事に着陸した。
CRMの完璧な運用例の一つとされる。
原因はヨーダンパー用のアクチュエーター…ではなくそれを納めている筐体が破損したためにアクチュエーターが正常に動作をしなくなったという世にも珍しい部品ではなく容れ物がぶっ壊れたという事故。
さすがに想定外の事故ではあったのだが、747シリーズはフェイルセーフとして方向舵を上下2分割するという設計だったために今回のケースでも辛うじて操縦不能にはならなかった。
筐体が破損した原因は不明。事故機はボーイング747-400シリーズの1号機であり納入前から試験飛行にも使われるなど事故時の飛行時間は累計50,000時間を超えるほどであったため勤続疲労金属疲労が疑われているが、ついに証拠は見つからず、メーデーとしては珍しい「最終的な故障原因が不明(但し解決・改善策は見つかっている)」という迷宮入り回になっている。
その後の事故機はノースウエスト航空及び後の合併先のデルタ航空で2015年まで現役を続けた後、現在は飛行時間50,000時間超の大ベテラン400シリーズの1号機ということもありアトランタのデルタ航空博物館にて保存されている。2017年の一般公開開始日には当時のクルー4人全員が招かれ、デルタ航空(アトランタ本社・日本支社)のプレスリリースでも紹介された。
また、成田空港の近くにある航空科学博物館には、納入前に試験飛行を行っていた頃のボーイングカラーを纏った同機の1/8可動式模型が展示され、別室に設けられたコックピットで操縦体験が行える(当日予約制)。
当該便はデルタ航空に継承され、現在はDL275便として運航されている。何の因果か、このデトロイト - 東京線が米国旅客航空会社の日本向け定期路線で最後の747運用路線だった。2020年以降はデルタ航空の東京拠点変更に伴い羽田発着に変更され、機材もA350にて運用されている。
不時着への挑戦時の「バックミラーを付けたら1000ドルやるぞ」というジョークから”バックミラー回”とも呼ばれ、ほかのメーデー民によりバックミラーを搦めたコメントが呟かれることになる。
タカ航空110便緊急着陸事故
第9期第12話「NOWHERE TO LAND」
隻眼の英雄、ダルダーノ機長の登場回。
※事故内容
1988年5月24日発生。
嵐の中着陸態勢に入った737のエンジンが突如として停止。原因は開発元が想定していなかった事態で大量の雹を吸い込んだ事によるエンジン破壊。
一度は運河への着水を検討するも副操縦士がそばの堤防への着陸を提案し機長も受諾、無事着陸に成功した。
当該機は完全な状態を保っていたため(現場に来た調査員が「こんな事故機体見た事ねえ(意訳)」と思わず呟く程)現地で捜査が行われていたが、機体の重さで徐々に堤防に沈み始めたため近くの空港へ移そうと現場でエンジンを修理して飛ばした。誰が呼んだか不時離陸。
この事故の後、ボーイング社は737型機のエンジンを設計変更し、大量の雹の吸入にも耐えられるよう改良したため、番組に出演したナンスは「そんな事故はもうありません」と断言していた。
しかしその14年後……
リーブ・アリューシャン航空8便緊急着陸事故
第10期第1話「FIGHT FOR CONTROL」
筋肉式操縦の回。
※事故内容
1983年6月8日発生。飛行中に第4エンジンのプロペラが突如として外れ胴体下部を直撃。
急減圧と共にエンジンの制御ケーブルが切断され出力の制御が出来なくなり、更に操縦の制御用ケーブルも客室の床と機体フレームの間に挟まれ手動操縦が困難に陥った(自動操縦は油圧で動かしていたので有効)。
しかし機長と副操縦士が操縦桿を渾身の力で操作してわずかながら機体の制御を可能にさせ、その後も力ずくで操縦桿を押したり引いたりした事でフレームがケーブルに削られたため、ケーブルを動かせるだけの隙間が出来てついに手動操縦が回復した。
だがエンジンの制御が出来なかったため、着陸は接地と同時に全エンジンを緊急停止と非常ブレーキの使用で機体をなんとか停止させた。
この「力技で手動操縦を回復させた」といった内容から、メーデー民に「筋肉式操縦」と呼ばれる事になった。*20
そして見事な決断*21と操縦を見せて乗員乗客の命を守り切り、最後の仕事としてネクタイを締めて制服を着直し、帽子を被ってドヤ顔で地上へ降り立った機長達をリーブ・アリューシャン航空は「お前らはイカレた真のプロだ」と称賛したのであった。副操縦士「今の放送できるかな?」
長年ボイスレコーダーを聴いて来たデニス・グロッシ調査官も「35年間で沢山のボイスレコーダーを聴きましたが、リーブ8便のクルーほど素晴らしいクルーはいませんでした」と手放しで称賛している。
この様に着陸までは間違いなくドシリアスなのに、着陸後の展開やインタビューを受けた副操縦士の言動が筋肉式操縦なんかよりもやたらとギャグっぽいのが特徴。誰も死ななかった事故なので思う存分笑おう。
なお海に落下したプロペラは回収できず、残念ながら外れた原因についてはわからず仕舞いとなった。ところで、次のシアトル便はいつ?
また、事故機はその後修復され、2020年の時点で森林火災消防機として未だ現役。なお、2020年8月に消火活動中に木に接触したが何事もなく帰還したとか。
アメリカ海洋大気庁P-3エンジン喪失事故
第11期第6話「INTO THE EYE OF THE STORM」
※事故内容
1989年9月15日発生。台風を調査中の観測機が台風に突入したところ、突如エンジンの一つが火を噴いて破損。
墜落は免れたものの、そのまま台風の目の中に閉じ込められてしまう。
加えてよりにもよって破損したエンジンと同じ翼についていた別のエンジンのプロペラに取り付けられていたパーツが外れかかり、エンジンに吸い込まれそうになるという不運に見舞われたものの、乗員達と救援に駆け付けた空軍C-130輸送機の奮闘によって無事脱出に成功。
直接の原因はセンサーの故障で起きた異常燃焼によるエンジン火災だが、
故障したレーダーの修理に時間を取られて突入地点の危険性を正確に観測できなかった点も指摘されている。
台風の迫力のある描写、乗員達の軽妙な会話、事故機と空軍機が見せる超絶アクロバット飛行など、
全体的にいつものメーデーとは違う空気が漂っており(そもそも尺の半分以上が事故発生前のパート)、メーデー民からは「ハリウッドでやれ」と言われる事に。
なお作中では省略されているが同乗した研究者達は緊急事態に遭遇しお通夜状態…かと思いきや「こんなタイフーンの調査出来てラッキーw」「死ぬかもしれんけどデータ収集やめらんねぇwww」と非常にハイテンションにデータ収集に励んでいたという…やっぱハリウッドでやれ。*22なお、救援に駆け付けた空軍の皆様は通夜状態になっていた。
カンタス航空32便エンジン爆発事故
第11期第10話「TITANIC IN THE SKY(空飛ぶタイタニック)」
※事故内容
2010年11月4日発生。
エンジンの製造元であるロールス・ロイスで組み立てに使用された部品の一部が不良品だったという、現場では対策のしようが無いアクシデントにより第2エンジンが爆発。
機長が試験中だったためパイロットが5人も搭乗しており、一番少ない者で約8,000時間、査察機長に至っては約22,000時間*23とベテラン揃いだった。そのためメーデー民には廃人ギルドと呼ばれた
彼らが抜群の有能さと連携を発揮できたおかげで無事に着陸し、死傷者0で済んでいる。
この機長らの連携能力とエンジンが爆発して電気系統にトラブルが起きてる機体でコントロールチェックを始める機長のクソ度胸*24には調査官達も「素晴らしい」と感嘆したが、機長は「自分の力ではなく、安全性の向上を目指し共有した航空産業の勝利である」と謙遜している。機長が着陸完了時に「シンガポールへようこそ!」と言ったり*25、副操縦士が着陸後に周囲の安全を確保した消防隊に「協力ありがとう、またよろしく!」と言ったり茶目っ気を見せたりもしている
事故後カンタス航空は即座に同型機の運行停止を発表・実行し、ATSB(オーストラリア運輸安全局)とロールス・ロイスが原因を解明。
その後、ATSBは調査結果を公表し、32便と同型機のうち搭載エンジンも同じ物を運用している各国の航空会社に注意喚起した。
これを受けて該当する20機に緊急検査が行われたところ、総数80基のエンジンの内4割以上にも及ぶ34基に同様の欠陥が見つかり、即日運行停止を発表したカンタスCEOの判断の速さも称賛された。さすカン。
メーデーでは触れられなかったが、本来ならばこの様なアクシデントにどう対応するかも試験の範疇で試験官は手を貸さない規則だった。
しかしわんこエラー異様な数のエラー警告が発生する非常事態だったため規則を破って手助けしている。
キャセイパシフィック航空780便事故
第17期第1話「DEADLY DESCENT」
※事故内容
2010年4月13日発生。
飛行中にエンジンが停止し、1年前の「ハドソン川の奇跡」の事例から機長は海面への着水を検討するが、咄嗟の機転でエンジン推力をゆっくり上げたところ推力が回復したため、当初の予定通り空港への着陸を決断。
しかし今度は着陸前に推力の調整が不可能になり、やむを得ず強行着陸。脱出時に負傷者を出すものの死者は無かった。
機長は最初に己の操縦で着水できるか自信が持てなかった*26が、着陸の際に見せた操縦は再現ドラマでは副操縦士が「お見事です」と称賛し、事故調査官達も「訓練の範疇を越える事を成功させた」「素晴らしい技能」「称賛されるべき人材」と大絶賛*27。事故から4年後に副操縦士共々ポラリス賞を授与されている。
原因は給油地の燃料施設の工事が杜撰で燃料が汚染されていた為。そのせいでエンジンが制御不具合を起こし停止、回復後に推力の調整が不可能になったのも汚染燃料が固まり弁が閉じなくなった為であった。
香港国際空港という世界的な国際空港に着陸したため実際に事故機が接地から停止するまでの映像が定点カメラに記録されている。なお、機長達からパンやメーデーを受け取って空港側の準備を整えた管制官の女性が何故か物凄く色気がある描写になっている。
アメリカン・インターナショナル航空808便墜落事故
第17期第4話「BORDERLINE TACTICS」
ストロボ機長の回。
※事故内容
1993年8月18日発生。
グアンタナモ基地における難しい着陸をその必要がないにも関わらずあえてやろうとしたところ、旋回時の角度が急すぎて揚力を失い墜落。しかしコックピット部分が分離したためこの部分は炎上せずクルーは全員重傷を負ったが生還した。
最初はパイロットの過失が疑われており、実際にCVRを確認すると機長が機体が失速しかけているのに目印となるストロボを探すのに固執し続け、他のクルーも失速を強く指摘していなかった。
しかし、この余りにひどいCRMに疑問を持った調査官が勤務記録を調べたところ全員が睡眠不足だった事が発覚。
ほぼ24時間勤務で、機長に至っては72時間中たった15時間しか睡眠時間が取れておらず*28、更に貨物機故に夜間飛行だらけで生活習慣も乱れ体内時計も狂っていた。
ベテラン揃い*29とは思えぬほどCRMが滅茶苦茶だったのはこれによるストレスが原因で、またグアンタナモ基地は安全な着陸方法があるにも関わらず「いっちょ難しい方行ってみるか」となったのも深夜テンション的なノリであったと思われる。
更に機長がずっと探していたストロボは壊れており、他のクルーがストロボだと思った物は光に反射したトタン屋根だった。しかもそのストロボ故障は管制官に報告されていなかった(=壊れている事を知る術は無かった)という駄目押し付き。
当初の予想とメーデー民の掌がどんどんひっくり返されていくドンデン返し回であり、「2周目で意味がわかる」回と評判。
ちなみに幸運にも生還したクルーのうち、機長は背中の怪我でパイロットを引退したが、航空機関士は回復後機長になり、副操縦士は片脚を失いながらも現役に復帰した後にNTSBの調査官になっている。
機長の「疲れている時は注意してください」という言葉が印象深い回である。
コンチネンタル航空1404便離陸失敗事故
第17期第7話「RUNWAY RUNOFF」
ロッキーおろしの回。
※事故内容
2008年12月20日発生。離陸時に横風を受けた機体が滑走路を外れて暴走。
機長の必死のリカバーも空しく機体は土手に乗り上げて大破・炎上したものの、土手に乗り上げていたおかげで漏れた燃料が土手の下へ流れ落ちて大爆発を起こさずに済み、逆に乗員乗客は土手の上へ上った事で全員無事脱出に成功した。
当時の気象状況は数値上では十分離陸可能と見られていたが、実は空港の観測機器が瞬間最大風速ではなく平均値を表示する仕様だったため風速が過小報告されており、実際には機体が耐えられる限界を大幅に超える40ノット(秒速20.58m)以上もの強風が断続的に吹いていた。
なお過去のデータから計算したところ、ここまで強い横風に遭遇する可能性は宝くじに当たるよりも低い。
そのため、パイロット2人も雲の流れのあまりの速さを見て風速の報告に違和感を抱いていたものの、最終的に離陸を決行してしまった。
また、上記の機長が行ったリカバーも「方向舵を操作したが効かなかった*30→咄嗟に自動車の様に前輪を右に向ける」という操作をしてしまったため、逆に止まらなくなってしまった。
ちなみに原因となった風が現場近くのロッキー山脈から吹き下ろす風だった事から、メーデー民からは六甲おろしに引っ掛けて「ロッキーおろし」と呼ばれている。
また、この事故に遭遇した乗客の中には人生で2度目の航空機事故に遭遇した者もいる。2回も航空機事故に遭って運が悪いのか、2回とも生き延びて運がいいのかよくわからない。*31
その他、メーデーでは語られていないが非番中のコンチネンタル航空のパイロットが乗客として搭乗しており、他の乗客の脱出に協力している。
ローガンエアー6780便事故
第19期第01話「NORTH SEA NIGHTMARE」
※事故内容
2014年12月15日発生。
アバディーン空港を飛び立ったサーブ2000がサンバラ空港に着陸しようとした所、機内に球電が発生するほどの落雷に見舞われる。すると急に操縦桿が重くなり更には緊急トリム機能が作動せず機体がどんどん降下していった。
が、あと7秒で墜落というところで機長のスロットルも導入した懸命のリカバリ操作が何故か効を奏して何とか上昇に転じ操縦が回復。けが人なしでアバディーン空港に引き返す事ができた。
AAIBが調査してみると、総飛行時間は5,780時間の機長が長年乗り継いできたサーブ340の癖で落雷後のリカバリに対処しようとしたところ、機体構造は似ているが143時間と乗り始めて間もないサーブ2000の方は落雷を受けても電源が生きているなら自動操縦が解除されない上に、操縦桿やトリムスイッチを操作しても自動操縦が解除されないという特異な仕様のため暫く自動操縦との齟齬が続き機体バランスを崩してしまった事が判明。しかも、自動操縦の解除状態の表示が非常に分かりにくい(文字の色が緑から白に変わるだけ)という問題もあった。
また、落雷に見舞われた後、機体は完全に正常な状態で、自動操縦を解除するという単純な操作を行えば通常の手動操縦を行えた。しかし驚愕反応とストレスの影響で機長は即座に操縦桿を操作してしまった。*32機長が即座に手動操縦を行わなかった場合、自動操縦との相反する入力が回避され、遙かに安全に飛行できた可能性があった。あやうく認知バイアスで悲劇が起きるところだったのである。
なお、機長のリカバリ操作が何故か功を奏して上昇に転じる事ができたと上記したが、この原因はこのタイミングで自動操縦のデータにバグが起きて整合性を取れなくなり、自動操縦が解除されてしまったため。諦めの悪さが最後の最後で幸運をもたらす形となった。
ちなみに、副操縦士は35歳の女性で総飛行時間は1000時間以上あったもののサーブ2000は260時間しか経験しておらず、実質的な素人同士コンビであった。340と2000は共通部分が多いとはいえよくもまぁ立て直せたもんである。
なにげに、当事故はメーデーシリーズで取り上げた事故では”アロハ航空243便事故”以来の"女性操縦士が死亡せずに済んだ航空事故"であり、シリーズで初めて"女性操縦士が操縦した飛行機で全員が生還した航空事故"でもある。これは女性操縦士側に非がある訳でなく、マニュアルの不備やブラック企業などに巻き込まれての悲劇が多いためである。
1991年アメリカ空軍KC-135エンジン脱落事故
第19期第7話「MISSION DISASTER」
※事故内容
1991年2月6日発生。湾岸戦争の作戦に参加していた空中給油機KC-135が前を飛んでいた同型機の後方乱気流に巻き込まれ左主翼のエンジン2機が脱落。
左に90度以上傾いた数秒後には右に90度傾くと言う強烈な乱気流に陥り、エンジンを脱落して油圧にダメージを受け、
着陸装置にも被害を被ったものの幸いにも手動で展開可能だった事から満載だった燃料を投棄した後出発した空港に引き返す事に。
着陸の際残ったエンジンの逆噴射装置作動させたら制御不能になりかける事態こそ起こったものの何とか無事に停止し、乗員4名は無傷で生還。
その後の調査で右主翼のエンジンも脱落する寸前だった事が判明しており、あと少し衝撃が強かったり立て直すのが遅れたりしていたら完全にグライダーと化していたという。
ちなみに同型機のエンジンが2機脱落しても無事に着陸出来た事例はこれが初であり、抜群の連携を見せた乗員は全員アメリカ軍より殊勲飛行十字章*33を与えられた。
また、完全に火事場の馬鹿力が発動していた様で、その後乗員が同一状況をシミュレーターで再現してみた所、一度も着陸に成功する事が出来なかった。
なお、乗員達はエンジンが2機脱落して半壊した愛機の姿にもう飛ばすことができないのかと落胆していたが、損傷具合を見たボーイングのエンジニアが修理できると断言して事故機も無事修復。その後13年間飛び続けた。
2008年アンダーセン空軍基地B-2墜落事故
第20期第3話「STEALTH BOMBER DOWN」
※事故内容
2008年2月23日発生。ちなみに推定損失14億米ドルというのは史上最も損失の大きい墜落事故である。
”スピリットオブサウスカロライナ”号に続いてアンダーセン基地を離陸しようとしたステルス爆撃機B-2”スピリットオブカンザス”号が機首上げを起こし失速。そのまま滑走路脇に墜落し炎上したが、パイロットは間一髪で脱出し大けがを負いながらも生き延びた。
しかし、B-2に何らかの欠陥があると戦略にも影響するため米軍はB-52で代行運用しながら事故調査にあたる。
調査開始からしばらくしてFCSのセンサーの値が間違った値を示しコンピューターに機首下げを誤解させていた事が判明。生存していた乗組員の証言からB-2を飛ばす為のセンサーがフライト前に異常を起こしそれを整備士に調整してもらった後、滑走中にもマスター警告を一瞬出していた事を知る。だが、すぐに警告が消えたため乗組員も異常が解決されたと判断し、離陸後の機首上げに見舞われたのである。
B-2はステルス性の維持を優先した特異な形状の機体であるが故に、通常の飛行機と比べて機体の空力特性がお世辞にも良いとは言えず、それを補うためオートパイロットでない時もセンサーの判断により飛行姿勢を調整する仕様なので仕方がない部分があった。
そして外部状況を調べてみたところ、事故機の目的地であるホワイトマン基地に大雪が降り着陸できない状況だったためほぼ一日遅延しその間B-2を格納できる倉庫がなく外に駐機するしかないアンダーセン基地で豪雨に見舞われた事がわかった。それを元にセンサーに水をかけてみたところ結露により違った数値を示してしまう事が判明。
更に、この機体のセンサーにはピトーヒーターというセンサーを温めたり乾かす装置があったのだが、システムの穴を知る由もない乗組員や整備士はセンサーの調整>ピトーヒーターの作動という手順を踏んだため一度調整したセンサーがヒーターの始動により水分が抜かれた事で再びずれた事に気が付かずに事故につながってしまった。実は2年ほど前でのグアムでの作戦でセンサーの不都合が起こった時「ピトーヒーターでセンサーの結露を除く>センサーの調整をし直す」という湿気の多い場所での対策そのものは見出されていたのだが、あまりに限定的過ぎてそれがマニュアルに記載されておらず対策を知っている整備士と知らない整備士がいたのである。
原因判明後はこの様なエラーが起きないようマニュアルやシステムが改良され、晴れてB-2は運用が再開された。
ちなみに乗組員は間一髪脱出したと述べたが、あとコンマ1秒でも脱出が遅ければ助からなかった。ギリギリまで足掻いた上で自分達の命は守り切ったという事で、結果的に大損失を出したもののその行動を称賛される事になった。
トランスエア・サービス671便エンジン脱落事故
第20期第4話「DOUBLR TROUBLE」
※事故内容
1992年3月31日発生。
ナイジェリアで使う油田掘削装置を詰め込んでルクセンブルク・フィンデル空港を離陸したトランスエア・サービスのB707が、32,000フィートまで上昇した所で突然乱気流に見舞われ轟音が鳴り響き機体が傾きかける。ひっくり返りそうだった機長が筋力でなんとか機体を制御し、その間にチェックリストや無線送信を担当していた副操縦士が窓の外を見ると第四エンジン、そしてやや遅れて第三エンジンももげている事を発見。墜落するかもしれないという最悪の事態を想定していた副操縦士は全滅しても証拠が残る可能性をかけてその様子をカメラで写真に収める。
上昇時にトランスポンダの電力を第4エンジンが担当していたためトランスポンダが切れ一時期迷子になる、エンジンが取れ損傷した場所の電線が切れたため不時着するために高度を下げ速度を落としたら右翼で火災が起こる、不時着の際に空港周辺が悪天候という厄満状態の同機だったが、機長の腕力による筋力操縦とクルーの連携が功を奏し、乗員全員と積み荷は無事にプロヴァンス空軍基地に着陸できた。
無くなった二基のエンジンの行方を追ったところ事故翌日にそれらが割と近い場所で見つかり、更にはエンジンが衝突した跡が見つかった事から、脱落した第三エンジンが第四エンジンにぶつかったと判明。今回のインタビューに出演した件の副操縦士も「事故直後は激しく揺れたのでシートベルトを強固な5点式にせざるを得ず最初は第三エンジンまで見る余裕がなかった」とエンジンストライクが起こった可能性に納得した。
そして第三エンジンを調べたところ、エンジン固定用のパイロンのうち一つが金属疲労で脆くなっており、風速40メートルの強風を横から受け限界がきて破損、支えが減少した事で連鎖的に残りのパイロンも破損して脱落した事が判明。
更に機材を調べてみると同機は1964年4月から長年複数の航空会社で旅客機として運用されていたがここ最近は海岸近くの倉庫で保管され一部の部品が腐食しており、そうとは知らないトランスエア・サービスが事業を立ち上げる際に貨物機として購入したものだった。当時のFAAの耐空改善命令に基づいた整備点検マニュアルではこの亀裂を見つけるには不十分であり、更には上記の第19期第七話の様にB707や同機を給油機に改装したKC135で犠牲者は出なかったもののエンジンが脱落する事例が相次いだため、NTSBはFAAに対空改善命令を更に厳重にするよう勧告する事になった。
なお、翼の片方が炎に包まれながら着陸に挑むという構図は奇しくも第19期第9話のプロップエア420便墜落事故でも起こっており、あちらはもう少しで全員助かるかもしれないという着陸寸前で翼が折れてバランスを崩し乗員乗客全員が犠牲となる悲劇となったため、思わずそれを思い出してハラハラする視聴者もいた模様。
トランス・ワールド航空841便急降下事故
第20期第6話「TERROR OVER MICHIGAN」
※事故内容
1979年4月4日発生
夜半にJFK国際空港を飛び立ちセントポール空港に向かったB727が、ミシガン州上空で揺れた後突如制御を喪失。突然右に傾きバランスを崩して6Gという荷重を受け錐もみ状態で落下してゆく。
が、着陸装置を操作する事で落下速度を落とし墜落まであと数秒というところで何とか機体を水平に戻す事に成功。夜間飛行だったが月が出ていたため空間を把握できた乗務員は油圧やラダーの故障を抱えながらも機体を制御し、デトロイトメトロ空港にフラップなしで着陸に成功。数名が打撲を負った程度で済んだ。
が、翌日からNTSBが調査を開始すると徐々に不穏な空気が立ち込める。7番のスラットが故障もしていないのに上空で出ており損傷して脱落した事が判明したのである。壊れた時に70Gもの荷重がかかった痕跡を見出した調査官が他の操縦士に質問してみたところ「飛行中にブレーカーを切って手動にすれば非公認だがフラップを操作できる。それにより燃料が節約できる」という裏技を聞く。更には機長がCVRを上書きして痕跡を消しており、一気にきな臭い空気が漂い始める。
そこで、隠滅ができないFDRの方を探すと横転前に13秒程度の振動がみられた事から、実験機で異常振動の再現を試みた所、フラップとスラットが同時展開されると同様の振動が出る事を確認。更に、上記のブレーカー操作でフラップを出した状態からブレーカーを再び入れるとスラットも出てしまう事が判明した。どうやら同便は、機関士が食事トレー片付けの為にコクピットから離れた際に残り二人がブレーカーを不正操作し、そうとは知らない機関士がブレーカーを再起動したためフラップと連動してスラットも出てしまい、風圧に耐えきれなくなった7番スラットとピンがひん曲がって格納できなくなりバランスを崩したらしい。だが、このピンが荷重を受け続け折れた結果、7番スラットがもげてほぼ左右対称になり、何とか制御を取り戻せたというオチだった模様。
以上の様に機関士に隠れて不正な操作をやってその事を告げずに一時的に連携を乱して危機に陥らせてしまったため、ナレーターから操縦技術は称賛された同便の機長は視聴者から「腕はたつが、裏技をやって自ら危険を招きあまつさえ隠ぺいしようとしていた。」事で手のひら返しで心象をいささか下げてしまった*34。全員生存回としては若干後味の悪いオチとなった。クルーのミスで墜落しかけたもののクルーの奮闘で全員生還を成し遂げた中華航空006便急降下事故やエアカナダ143便滑空事故は意図的な不正は行っていなかったためにクルー達が擁護されているのとは対照的である。
なお、この回は普段のメーデーとは異なり、生還した機長がFAAの職員にフライトの様子を語りだすという形式で始まる。
余談だが再現VTRで機関士を演じた俳優が、テネリフェ空港衝突事故のザンテン機長役の俳優と同じだったため、そちらの意味でもメーデー民は盛り上がっていた。今回は悪くないと言うか完全なとばっちりを受けてる役柄だったが
【ミスの内容が酷すぎる。とんでもない事故原因】
番組では様々な事故原因が扱われているが、中には明らかに常軌を逸した人為的ミスによる事故も存在する。
ナレーターも調査員も毒舌になりやすいのも特徴。
エチオピア航空961便ハイジャック墜落事件
第3期第10話「ハイジャック犯への罠」(原題:AFRICAN HIJACK)
※事故内容
1996年11月23日発生。
エチオピアからコートジボワールへ向かう飛行機が3人組にハイジャックされたが、なんとハイジャック犯がオーストラリア行きを要求。
この便は途中ケニアのナイロビを経由するため燃料をあまり積んでおらず不可能だと機長は主張する*35が、犯人は機体の最大航続距離的には可能だからという理由で嘘だと決めつけ、燃料補給まで拒否された結果少ない燃料でインド洋超えとかいう無理ゲーをせざるを得なくなった。
かなり大まかな距離計算でもエチオピアからケニアまで約1100㎞、コートジボワールまで約5100㎞に対し、オーストラリアまでは最短でも10000㎞以上。行ける訳がない。
最大航続距離だけ見て「機体を軽くする為に目的地まで必要な燃料しか載せない」という現実を知らなかった事から、犯人達は「スペック厨」と言われる事に。
当然ながら途中で燃料が尽き、空港も犯人と争ったせいで見失った結果不時着水する事になった。
着水時に機体が傾いていたため着水と同時にバラバラになり、犯人全員を含めた123名が死亡、生存者は機長ら52名に留まった。
番組では軽く触れられている程度だが、犯人達はテロリストを名乗る*36割にお粗末な犯行*37であり、警察の調べでは反政府組織との関係性を得る事は出来なかった。
メーデーに関係ない一部メディアからは爆弾は偽物、オーストラリアに行けば何かを変えられるという甘い願望を抱いた若者の短絡的犯行という報道をされたが、犯人が全員死亡した今となっては真相を知る術はない。おそらくその報道の通りだろうとメーデー民は踏んでいる
なお乗客の一部は救命胴衣を機内で膨らませたために脱出できずに亡くなっている。
機体が水没し浸水したため非常口から脱出するには一度潜水する必要があったのだが、膨らんだ救命胴衣では潜る事も脱ぐ事もできず、機内で天井に押し付けられる形になってしまった。
現在飛行機の注意ビデオ等の中で「救命胴衣は脱出後に使用する様に」と説明されるのはこうした事故を防ぐためである。
着水箇所が海水浴場付近だったためその瞬間が岸辺にいた海水浴客により撮影されている。そのせいで水上着陸の話になるとよく映像が流れる。
余談だが、1983年にはに似たような事件としてバルカン・ブルガリア航空013便ハイジャック事件(第21期8話)が起きている。
この時もハイジャック犯がブルガリアの国内線にウィーン行きを要求していたが、この時は犯行時刻が夜中だった事もあり、街全体の明かりを消して本来の目的地周辺をウィーンだと言い張るという力技で無事着陸する事が出来た。着陸後に乗り込んだ税関職員の変装が雑だったためバレたが。
アメリカン航空96便貨物ドア破損事故/トルコ航空DC-10パリ墜落事故
第5期第3話「キャビンの穴」(原題:BEHIND CLOSED DOORS)
※事故内容
この回はいつものメーデーとは異なり、事故や事故調査よりも、事故を招くきっかけとなったマクドネル・ダグラス社製旅客機%%にして欠陥機の代名詞%%DC-10にまつわる一連のスキャンダルに焦点が当てられた作りとなっている。そのためメーデーでも珍しく1話で2つの事故を取り扱っており、2つとも全く同じ原因で起きている。
警告はないが地味にグロ回なので視聴時には注意。
- アメリカン航空96便貨物ドア破損事故
1972年6月12日発生。
不具合により閉鎖が不完全の貨物室ドアが機体の上昇に伴う気圧差の変化に耐え切れず引きちぎられ、急減圧が起きた結果後部座席の床も破壊され、その下にあったコントロールラインが破損。
この時は後述の事故より損害がマシだった事と、マコーミック機長の優れた操縦により、奇跡的に不時着に成功。機内が空いていた為に乗客・乗員も損害部より手前に移動でき、貨物室から落下した遺体入り棺桶を除けば途中で行方不明になる者もおらず、全員が生還した。
こちらの時点で既に事故原因が判明済みで、改善勧告も行っており、その時点でちゃんと改善されていれば後のトルコ航空の事故は防げたはずである。
- トルコ航空DC-10パリ墜落事故
1974年3月3日発生。
同様に貨物室ドアが吹き飛び、コントロールラインが全損、完全に制御不能になり墜落。
346名もの犠牲者を出した当時世界最悪の事故であり、現在でも史上4番目(単独機事故としてはJL123便に継ぐ2番目)に犠牲者が多い事故としても知られる。
前者の検証が終わっていきなり2つ目が始まる*38のだが、その際のナレーションが物悲しい。
犠牲者に50名近い日本人も含まれており、いずれも就職内定者で研修旅行中に犠牲となった。
この事故の調査にはアメリカン航空の事故を担当したNTSB捜査官がBEAに協力しており、貨物ドアが見つかり原因が同じである可能性が浮上すると、ジャーナリストに情報をリークし、BEAにもアメリカン航空の事故調査の結果を共有。
実際に全く同じである事が証明され、次は何故貨物ドアの改善が行われなかったかを調査すると、FAAはDC-10の耐空性改善命令を出さず、代わりにマクドネル・ダグラスとの間に紳士協定を結んだというとんでもない事実が発覚。
そしてMDの改善策は不十分*39であり、更にはそうした小手先の改善策すら行われてない機材すら存在し、トルコ航空の事故の当該機はそうだった。
こんな醜態で訴訟大国アメリカで何も起きないはずが無く、裁判沙汰に。
裁判の為の資料集めのため、自分達の忠告を握りつぶされた事に激怒したNTSBの調査官の友人であるジャーナリストは資料保管庫の鍵をある人物から貰った上で夜中に忍び込み、資料漁りを敢行*40。そこで貨物室ドアの製造元社員による、アメリカン航空の事故の数週間後に書かれたドアに欠陥があるという指摘と改善勧告のメモが見つかり、更に裁判中にはMDはDC-10の開発時点でこの不具合を把握していたという話まで出てくる始末だった。
なお、作中では語られていないが当該機は元々全日空向けに造られた機体が、発注キャンセルによりトルコ航空に格安で流されたという経緯がある。
いわゆる「ロッキード事件」によるものであり、その事件に絡む某元首相に言及するコメントも出てきたりする。
アダム航空574便墜落事故
第6期第7話「THE PLANE THAT VANISHED」
※事故内容
2007年1月1日発生。
慣性航法装置(IRS)の不具合により進路を外れて嵐の中に突っ込み、完全に乗機の位置を見失う。
IRSの再起動中に計器が一部止まる間パイロットが水平に保つ様に操作しなければならないのだが、IRSの対処で注意散漫のパイロットはどちらも自動操縦が解除された事に気付かず機体が右に傾き始める。その状態で操縦桿を引いたためそのまま急降下・空中分解した。
この事故は事故そのものよりもアダム航空の体質の酷さが話題になる。
- 自社の機材が重大事故を起こしたにも拘わらず機体の回収費用の負担を拒否
- 7ヶ月経ってようやく作業費用を一部負担する事になったが、1週間分しか費用を出さない*41
- 事故機が11か月前にもIRSの不具合で進路を逸脱し3時間の漂流の末本来の航路から500km離れた場所に緊急着陸というインシデントを起こしていた
- 事故機はIRSの不具合が3ヶ月で100件以上も報告されていたが、きちんと修理せず交換と簡単な清掃だけで適当にテストしてメンテナンスを終わらせていた
- パイロットの不適切な操作が事故原因の一つだが、後の調査でそもそもパイロット全員が適切な操作に関する訓練を受けていない事が発覚
- 会社側もパイロットの訓練プログラムについてよく分かっていない
あまりの醜態によりインドネシアの航空会社ほぼ全てが欧州域内への乗り入れ禁止措置を食らう*42事になったが、アダム航空はその後も2007年2月17日にKI172便が、2008年3月10日にはKI292便がそれぞれ重大事故を起こす。3年間で4回も重大事故やインシデントを起こすという安全性をゴミ箱に投げ捨てたかの様なアダム航空の体制には流石の航空当局も堪忍袋の緒が切れ、2008年3月19日に運航停止命令が出された。
墜落地点のスラウェシ島沖ではKI574便とほぼ同時期にフェリーも難破しており、一時はこれが574便だという誤報が流れる事となったほか、再現映像でIRSを清掃している整備士が息を機械に吹きかけるというファミコンみたいな通常はあり得ないがアダム航空なら本当にやってそうな整備をしている事がネタになっている。
また、地味に「真水」の説明が出てくる回でもある。
クロスエア3597便墜落事故
第8期第1話「COCKPIT FAILURE」
ご存知ルッツ機長登場回。
※事故内容
2001年11月24日発生。
吹雪の中着陸態勢に入ったにもかかわらず計器類を無視して目視による着陸を試み、滑走路を視認する前に最低降下高度を下回った事で手前の丘に墜落。
事故現場から見つかった残骸から計器が一つ逆さまに取り付けられたパネルや現場の丘がなぜか載っていない地図が見つかる、''管制塔のスーパーバイザーがスーパーバイバイザー勝手に帰宅する''など早速妙な点が出てきたのだが、ブラックボックスを調べると
- やたらと降下率が大きい
- 空港の6マイル手前を最後に距離計を見た形跡がない
- 機長が自分の操作を全部声に出している
- 滑走路が見えていないのに最低降下高度を下回る
という様にパイロットの行動が明らかにおかしかった。
パイロット歴が長く訓練教官を務めた経験を持つ機長にしてはあまりにも初歩的なミスだったため機長の経歴が調べられたが、過去に様々なやらかしをしたとんでもない人物であった事が発覚。
あまりの酷さに事故原因が機長にある事が判明した途端にナレーターも
- 急に「ルッツ」と呼び捨てる
- 「どういう訳か彼を雇います」と言う
など辛辣になっている。
挙句の果ては「無能ともいえるルッツ」とド直球なコメントまで出る始末であった。
事故調査官からも当然ながらボロクソな評価で、「彼は是非とも欲しい人材ではないはず」「私なら絶対に彼の推薦状は書いたりしない」と言われている。
しかも前者は発言までに少し間があり、明らかにオブラートに包んだ言い方である。
ダンスユニットの「パッションフルーツ」のメンバー3人組のうち2人も犠牲になったが、彼女達が機内で煩かったために本来の前方の座席から後方へと移り、結果的に事故から生還できた乗客もいたりする。
ちなみにルッツは全行動を実況放送していたため、ブラックボックスの解明という点では役立っていたりする。頼むから操縦に集中してほしかった。
リナーテ空港事故
第9期第13話「THE INVISIBLE PLANE」
※事故内容
2001年10月8日発生。
濃霧のリナーテ空港で迷子になったセスナ機が滑走路に迷い込み、離陸滑走中のスカンジナビア航空686便と衝突。両機の乗員乗客全員と地上作業員の4人が死亡する大惨事となった。
当初はセスナ機側のミスが疑われたが、調査を進めるにつれて空港側の不備が明らかになっていく。
標識は伸びきった雑草に隠れて見えず、誘導路上のサインも塗装が剥げて読み辛く、更に管制官は「メイン誘導路」など曖昧な表現で指示を出していた為にセスナ機は本来入るべきR5ではなくR6誘導路に侵入してしまった。
しかも管制官との会話でセスナ機のパイロットが報告したS4という表示は地図に載っておらず、管制官自身も何の事か知らないのにパイロットに問い質しもせず、誰もセスナ機の現在位置を把握していなかった。
ちなみに事故調査官の調査によりS4表示はR6誘導路上に確かに存在する事が判明している。
更に、当空港では以下の様に凄まじい問題の数々が起こっていた。
- 地上レーダーは数年前に機材を一新したが、なぜか購入した新しい機材を設置しておらず、全く使われていなかった(番組中でも、これを振り返った調査官が「無意味です」と呆れ返っていた)
- 誤侵入防止用の対物センサーは''「人や動物が通っただけで作動してしまう」という理由でスイッチを切られていた''。
- これらの要因のため滑走路への誤侵入が毎週の様に発生。
- 事故の前日にも間違えてR6に入ってしまった機が危うく他機と衝突しかけるという当事故に酷似した事案が発生(この日は晴れていたので衝突前に回避できた)。
そもそも、空港職員は事故の発生に全く気付いておらず、686便は事故発生から3分、セスナ機に至っては26分もの間放置状態が続いた。
このため、犠牲者の一部(セスナ機のパイロットなど)は事故直後はまだ生きていたにも関わらず火災により焼死してしまった。
これらの惨状から、調査官達は「全ての責任は空港にある」と断言し、ナレーションも「(パイロット達は) 空港側の怠慢の犠牲になった」と空港の管理体制を批難。
一方でこのために上記の対応を行った管制官が責任を問われて有罪判決を受けてしまった事には調査官も「この事故の最後の犠牲者」と同情していた。
メーデー民の間でもリナーテ空港はコンゴーニャス空港に並ぶ欠陥空港の代名詞*43の様に扱われており、空港側の不手際が事故の一因になった事例(後述のデトロイト空港衝突事故など)ではリナーテ空港の名が挙げられる事も多い。
サンタバーバラ航空518便墜落事故
第10期第12話「28 SECONDS TO SURVIVE」
※事故内容
2008年2月21日発生。
機体の角度と方位を示す装置の起動に必要なたった28秒を我慢できず離陸した結果*44針路がおかしくなって墜落。
出発が遅れていたので機長らが遅れを取り戻そうとしたのだが、そもそも遅れの理由は機長らが空港のカフェで飲食をしていてうっかり遅刻したせいであった。
しかもこのエアライン、パイロット達が天文台の近くを通るショートカットルート(通称「天文台ルート」)を勝手に使用するのが常習化しており、今回もそちらのルートを通ろうとした結果、そのルートからも外れて山に激突。
アンデス山脈の山中という唯でさえ調査が困難な場所なのに、本来のルートどころか別ルート上ですら無い所で墜落したので調査が難航した。
マニュアル違反の裏マニュアルが常態化、遅れに慌てて離陸前の準備を怠るなど問題点が多く、ナレーションが三段落としの形で辛口に批判している。
エア・フロリダ90便墜落事故
第11期第4話「DISASTER ON THE POTOMAC(ポトマック川の惨事)」
「アンチアイス・オフの回」として有名な事故。
※事故内容
1982年1月13日発生。
翼に雪や氷が付着した状態で、更にセンサー異常にも気づかず計器を信じ離陸を決行した結果、速度も揚力も足りずポトマック川の橋に激突して墜落。
クルー(特に機長)のミスが多く、外は記録的な寒波だと言うのに離陸前のチェックでよりにもよってアンチアイス(防氷装置)をオフにするorオンにし忘れたというとんでもないミスから"アンチアイス・オフの回"として有名。
調査したところ機長は規則を無視した操縦を行う常習犯であり、会社からもその事で叱責を受ける問題人物であったと判明。このフライトでもアンチアイス・オフだけでなく前方にいたDC-9の排気熱で翼の上の雪や氷を溶かそうとするというマニュアルでもやるなと念を押されている危険行為を敢行する等、とにかく問題行為が多い(一時的に溶けこそするが、結局後方で再凍結してより危険な状態になる)。
『衝撃の瞬間』では滑走路への移動の際に逆噴射装置による後退(雪降ってなかろうが禁止行為)まで行った事も分かっており、これも墜落の要因となったと見られている。
フライトレコーダーにエンジン出力が記録されていなかったが、事故機であるB737はエンジン音がボイスレコーダーにも録音されるという特徴に着目し「ボイスレコーダーからエンジン音を切り取ってエンジン出力を計測する」という離れ業を見せている。*45
実機を使ったセンサーが異常な状態でのエンジン出力を再現した際もコクピット側にマイクを置いてエンジン音を録音し、事故機の音と比較して一致する事を確認している。
その調査結果から最終的に「離陸時すぐにエンジン出力を全開にしていれば墜落は免れただろう」と結論付けている。
副操縦士は離陸時には体感でエンジン出力が足りない事に気付いていたが機長がそれを無視しポトマック川に墜落したのだった。
なおインタビューで調査官は「ベテランは背中で感じるものだ」と語っている。機長に対する皮肉だろうか
インタビューを受けた生存者はこれらのパイロットの振る舞いを「彼らのせいでみんなが死んだなんて」と憤り、「恥知らず」と痛烈に非難した。
またメーデーでは語られていないがエア・フロリダは当時設立から日が浅く、規制緩和の波に乗って急拡大し定期国際路線にまで進出していたが、経営が不安定だった上に競合他社との競争の波に晒されていた*46。
そこにこの事故が決定打となり急速に経営が悪化、事故から2年後の1984年に倒産した。
なおクルーの駄目さ加減とは対照的に救助活動に勇敢な人物が多く登場する。
生存者の救出に駆け付けた公園警察のヘリパイロットが川スレッスレの高度でホバリングしながらスライド移動し、クルーは命綱も付けずにスキッドの上に立って生存者を抱え上げるというそれぞれ神業を見せており後にポラリス賞と大統領自由勲章が贈られている。*47*48
他にも
- 墜落の際は生存したもののコード等が絡まって抜け出す事ができず、命綱を他の生存者に渡し続けて力尽きた乗客
- 救助の途中に命綱を手放してしまった生存者を救うために氷が張っていた真冬のポトマック川(水温が0~1℃)へと飛び込んでいった男性2人(内1人は政府関係者)
など多くの勇敢な人物が登場。
生存者を救出した政府関係者は議会で満場の拍手と共にその勇気を当時の合衆国大統領だったロナルド・レーガンから称えられ、力尽きた乗客はその偉業と祈念を込めて事故が起きた橋にその名が与えられ、故郷では小学校の名前にもなっているのだとか。また上記の救助ヘリ乗員と共に大統領自由勲章が授与されている。
2008年メキシコ内務省チャーター機墜落事故
第12期第8話「政府チャーター機 暗殺疑惑」(原題:INNER CITY CARNAGE)
※事故内容
2008年11月4日発生。
前方を飛ぶボーイング767から発生した後方乱気流に巻き込まれて操縦不能に陥り、金融街のど真ん中に墜落。
しかしパイロットの操縦内容に迂闊な点、拙い点が目立ち、腑に落ちなかった調査官がCVRを調査したところ、
なんとパイロットの両名が高度設定の入力方法を知らなかったという怪しいやり取りをしていた事が判明。
不審さを感じ、更に経歴を調べた結果
- 両名の資格証明書にはサインがなく、必要書類も揃ってなかった(再現映像によると顔写真すら貼られていなかった模様)
- インストラクターのサインもなく、訓練が行われた形跡は皆無
- パイロット学校に問い合わせたところ、機長が受けたとされる訓練のほとんどが実際には実施されていなかった
- もう一人の機長は自称「リアジェット45訓練チームのメンバー兼インストラクター」という肩書だったがまったくのデタラメ
という事実が明らかになり、信じられない事にパイロットが二人とも経歴詐称かつ無免許であった事が発覚。総集編においてはナレーションから「開いた口が塞がりません」と吐き捨てられた。
なお当該フライトは政府機関専用のチャーター便。この機体はこの機体でフライトレコーダーが事故の2年前に壊れてそのままになっていたというブツである
搭乗していた新進気鋭の内務大臣は麻薬戦争の指揮をとっていたため、発生当初は暗殺かと大きく騒がれた。無免許操縦とどちらがマシだったのか。
その後メキシコ政府は両パイロットの偽の訓練書類を発行したとして、二つのパイロット学校を営業停止にした。
マンクス2 7100便着陸失敗事故
第12期第9話「マンクス2 霧の7100便」(原題:3RD TIME UNLUCKY)
※事故内容
2011年2月10日発生。未熟な上に過労気味のクルーが整備不良の飛行機を悪天候の中で着陸させようとして墜落。
いざ調査してみると
- パイロットを新人同士で組ませる違法行為(そもそも修めるべき訓練を終えてないので実質無免許に等しい)
- CAがおらず、パイロットが客室整備や客室案内等の周辺作業まで担当
- おまけに航空会社は実際にはチケット業者であり航空会社としては実態のないペーパーカンパニーで航空機も整備も外注
- この機体は昼は旅客機、夜は貨物機と酷使されていたのだが不具合どころか部品の消耗すら整備日誌に一切記録されていない(「絶対故障しない飛行機なのか?」)
- 機体はスペインの航空会社が銀行からリースされたものの又借りリレー
- 「パイロットを雇ったのはおたくじゃない!?」
など最終的に複雑怪奇な会社関係が明るみになり「タマネギの皮を剥く様に」問題が次々と出てきて調査官を唖然とさせた。
事故から約2年後の2012年の年末にマンクス2は倒産した。よく2年保ったな
余談だが中盤ナビゲーションライトに関して「右翼は緑、左翼は赤で飛行機の進行方法をほかの飛行機から確認できるのです」と説明が入るのだが間違ったことは言っていないのに別の意味で『右翼は緑』『左翼は赤』と捉えてしまい笑えない笑いを生ずるメーデー民が続出した。
トランス・コロラド航空2286便墜落事故
第14期第6話「DANGEROUS APPROACH」
※事故内容
1988年1月19日発生。
悪天候下で通常よりも難しい着陸進入を、経歴が不合格だらけのお世辞にも優秀とはいえない副操縦士ととある事情で睡眠不足及び過労状態の機長という最悪のコンビが行った結果、急降下して手前の山に激突。
副操縦士の飲酒だの、能力不足だの、機長の過労や睡眠不足なんだのが事故原因として浮かんでは消えていったが、その流れを変えたのはたった一つのリーク電話。
それもせっかちな所以外は人格も操縦能力も周囲から絶賛されていた機長がその実コカインを使用していた事、事故の前夜も婚約者と徹夜でコカインパーティーをしていた事が判明、立証されると事故調査委員会もトランス・コロラド航空も視聴者も世間も大騒ぎとなった。
飲酒運転で逮捕された前歴があったが、飲酒を我慢して翌日の操縦に備えていた副操縦士はこの後の再現ドラマ内では能力不足をボロクソに叩かれるにもかかわらず、インタビューに応じた調査官からは「彼はプロのパイロットとして頑張っていた」とフォローされており、
逆説的にまったくフォローされなかった機長は能力が高くてもプロではないと調査官から見なされた事に。当たり前だ。途中、リーク電話一つで一変する空気の話の流れ、機長の婚約者が薄暗くなった部屋でスポットライトに当てられてカメラの方を向き、事故前日コカインをやっていた事を明かすという明らかにいつものメーデーとは空気が違うサスペンスなシーンがある
ジャーマンウイングス9525便墜落事故
第14期第7話「MURDER IN THE SKIES」
ルビッツ副操縦士の回。
※事故内容
2015年3月24日発生。
トイレ休憩のため退出した機長を締め出したルビッツが管制官の呼びかけすらも無視して猛スピードでアルプスの山中に突っ込み日本人乗客2名を含む飛行機と乗員乗客150名ごと無理心中。
9.11を教訓に導入された「操縦室から退出すると中から許可がない限り入れない仕組み」が裏目に出てしまったもので、コックピットの常時2人制が各国で検討されたほか、「医療の守秘義務と大勢の命を預かるパイロット」の問題が提起された。
また、本件の2年前の2013年11月29日に同様の航空事故が発生していた事が第18期第9話「LAMモザンビーク航空470便」(原題:COCKPIT KILLER)にて明かされた(こちらは家庭内の不幸を抱えた機長がトイレ休憩に立った副操縦士を締め出し、飛行機と乗客ごと無理心中)。
この時点で操縦室側から締め出せる仕組みの問題やパイロットのメンタルケア、操縦室に常時2名以上残していない場合の問題が判明していたにも関わらずアフリカで起きた航空事故だったために先進国のマスコミは注目せず航空機業界からもこの問題を無視されてしまい、ジャーマンウイングス9525便の墜落が起きた事で注目を集めてようやく改善に動いていた事が後日談として語られ、
- 「ジャーマンウイングスの事故はまるでLAMの事故の内容を事細かに調べたかの様に同じ状況だった」
- 「LAMの時点で航空機業界が問題に注目し、改善していればジャーマンウイングスの事故は防げたかもしれない」
とインタビューで調査官を嘆かせていた。
番組中では建物がしょぼいBEAが映るシーンが3回あり、うち2回はそれぞれ「エッフェル塔→凱旋門→BEA」「凱旋門とシャンゼリゼ通り→パリの街並み→BEA」と順番に映りまるで三段オチの様な扱いだったためメーデー民にネタにされた。
事故の内容が上記の通りのため鬱回の癒やしなどとも言われている。
インドネシア・エアアジア8501便墜落事故
第14期第9話「DEADLY SOLUTION」
※事故内容
2014年12月28日発生。
物理的な故障から警報が繰り返し誤作動する様になった(無視しても問題なかった)システム*49を黙らせるために、
機長が見様見真似でコンピューターの電源を切る裏技を実行した*50。
当然ながら他の重要システムまで軒並み停止してオートパイロットが機能しなくなり、結果バランスを失ってしまう。
この裏技は事故の3日前に整備士が機長の前で実践していた手法だったが、整備士はコンピューターの仕組みに精通しており、その時は地上だったため問題にならなかった。また再現ドラマ内では整備士は機長に「異常が出た時はこれをやればいいのか」と聞かれているが、一瞬黙り込んで「ECAM*51(に表示される指示)に従う事ですね」と暗にこの手法をやらないよう忠告している。この機長の言動に嫌な予感がしていたのか、事故を知った整備士が非常に慌てた様子で調査官に連絡してきたと思しき場面*52がある。
クルー達は何とかリカバリーを試みたものの、ただでさえパニックに陥って平衡感覚を失っていた所に、機長が指示を言い間違えた*53うえに交代にも失敗した事で二人の操縦に矛盾が生じて相殺されてしまい、結局回復には至らず墜落。
原因から墜落に至るまでどこを取ってもツッコミ所しかなく、この回のクルー達はメーデー民からWボナン扱いされている。
ノースウエスト・エアリンク5719便墜落事故
第15期第1話「KILLER ATTITUDE」
ファリッツ機長登場回。
※事故内容
1993年12月1日発生。
着陸進入中に最低降下高度を下回ったために墜落。
高度の報告は副操縦士が担当するにも関わらず、一切高度をファリッツ機長に伝えなかったため、副操縦士の未熟さが疑われたが、
彼は新人ではあったものの成績優秀者だったため不自然さを感じた調査官が更に調べたところ、
機長が人物録にも書いた通り異常なまでに沸点が低いパワハラ野郎だった事が判明。
この日も副操縦士の些細なミスを徹底的に責めたてて委縮させており、意見する事を許さない状況を作っていた。
「俺の指示が出た時だけ情報を伝えろ」と言っている場面もある。(作中では指摘されていないが副操縦士はそれに従った形である)
その沸点の低さには調査官もドン引きし副操縦士に同情していた。
同じく気の弱い副操縦士と有能とは言えない上にパワハラ野郎の機長を組ませた結果操縦を誤り墜落事故を起こした例には第18期10話「ケニア航空507便」(原題:STORMY COCKPIT)がある。
こちらのクルーは副操縦士も未熟だったため、メーデー民には「ファリッツとボナンが組んだ」とか言われている。
LAPA 3142便離陸失敗事故
第15期第9話「DEADLY DISCUSSIONS」
別名「最低回」。
※事故内容
1999年8月31日発生。
離陸の際にフラップを出し忘れて揚力が得られず、滑走路の先にあった道路を横切って車を巻き込んだ挙句、産業ガスの工場に激突。
乗員乗客65人と地上の2人が死亡し、少なくとも40人が負傷。何人かは重傷を負う惨事となる。
アルゼンチンで発生した事故としては、2番目に死者が多い大事故である。
あまりに初歩的なミスではあるが、同じ原因の事故は第7期第2話「ノースウエスト航空255便」(原題:COCKPIT CHAOS)やこの後の第16期第3話「デルタ航空1141便」(原題:DEADLY DISTRACTION)など、メーデーでは複数回取り上げられており、特にデルタ航空1141便は状況がこの事故とよく似ている。
しかし同様の事故の中でもとりわけこの回が挙げられるのは、コクピット内での様子があまりにも酷すぎる事が大きい。
- ステライル・コクピットという、エンジン始動後は高度10000ft以下を飛行中及び地上走行中には操縦と関係ない話をしてはならないという決まりがあるにも拘らず、機長と副操縦士とCAが離陸直前のおよそ30分間、勤務に1ミリも関係しないお喋りを続ける
- 離陸直前なのにチェックリストが見当たらない。この時点で既に離陸中止レベルの事態だが、当たり前の様にチェックリスト無しで離陸準備を始める。当然チェックは適当で、結果フラップ出しを項目ごと丸々すっ飛ばす。
- しかもコックピットで回し喫煙*54。当然ながら禁則行為で、ナレーター曰く「決定的な破廉恥行為」。
- フラップが降りていないと警報が鳴るも、機長も副操縦士も意味を分かっていない。というか警報に対して慌てる様子すらない*55。
- 挙句に警告が大音量で30秒以上鳴り続けても「何の警報か分からん、問題はないな」とひたすらガン無視して離陸を強行。*56
- V1(離陸決心速度)どころかV2(安全離陸速度)さえも超えた後に逆噴射して止まろうとする*57。
どこを見ても問題しかなく、あのFND三大パイロットの時ですらちゃんと判断ができていた人物が周りに一人はいたのにこの回ではクルー全員が無能という厄満状態。
また、機長も副操縦士も経歴を調べると欠点の指摘で埋め尽くされており、技量も低かった事が伺える。
しかも「チェックリストがない(客席の安全のしおりもない)」「例によって事業の急速な拡大により統制を取り切れてない」等、会社もまた酷い事が分かる。
更にメーデーでは取り上げられていないが、機長は後に免許失効による無免許操縦が発覚している。
''普通なら絶対に起こり得ない、純度100%の人災と言える''。一応、飛べない状態でも離陸滑走ができてしまう機体側の問題も報告書で指摘はされているが、そもそも警報を無視して離陸を強行する様な奴を想定しろという方が無理であろう。
番組でもこれらの問題が明らかになるにつれ、
- 調査官達がCVRの内容のあまりの酷さに時間経過で白目をむいたりびっくりしてレコーダーの方に振り向いたり驚きと呆れですごい顔をする
- ナレーターと調査官はそこから毒舌モードに移行して「根本的な疑問が生じます。なぜこの2人は旅客機のパイロットになれたのでしょうか」とド直球な辛口ナレーションを皮切りに機長達を罵倒
- なんとか生還したものの同乗していた友人達を喪った被害者*58は事故原因を知って激怒、その後の裁判で証言台に立ち涙ながらにLAPAへの怒りを訴える様子が描かれる
など関係者達がいつにも増して辛口になっていく様子を見せられ視聴者は唖然とした。
なお、この事故により訴訟を起こされたLAPAは実刑判決こそ逃れた(ここまでは番組内で語られている)ものの、事故発生の4年後の2003年に倒産。
あまりの醜態に、この回は無能回を通り越して最低回と言われており、この時のLAPAのクルーはメーデー民からそもそもパイロットとして扱われていない。
「調査官たちは、昇進以上に、そもそもなぜ彼が、LAPAに就職できたのかが不思議でした」
また、メーデーでは語られていないが後日談として”LAPA航空の元オーナー夫妻が搭乗した小型機がオーナーの操縦ミスで墜落し夫妻が死亡し付近が火災で炎上した”という事故が起こっている。どこまではた迷惑なオーナーなんだ。
ファイン・エア101便墜落事故
第17期第5話「DEADLY PITCH」
※事故内容
1997年8月7日発生。
貨物の重量が後方に偏っていたため、離陸直後に機体が傾いてしまい、推力を失って墜落。
機長がメーデー名物あまり優秀なパイロットとは言えない人物だった事から一時は機長のミスが疑われたが、
実際には予定されていた機体の整備が遅れた為に急遽事故機を使う事になり、サイズ違いの機体に貨物を収めようと現場の担当者達が勝手に配置変更したのが原因。
おまけにそれを誰もクルーに報告せず、クルーは危険に気づかず離陸してしまった。
この時点で機長達が助かる方法は全くなかった。
こうみると担当者達の責任に見えるが、実際は当時のファイン・エアはまともな貨積訓練を社員に施しておらず、日常的に過積載が繰り返され、機体がバランスを崩すトラブルも度々起こっていたという、文字通りいつどの機体が墜落してもおかしくないロシアンルーレット状態だった事が当事者のパイロット達による内部告発で明らかになっている。
また、事故調査チームも貨物担当者から固定具のネット等の本来入れるべき重量を除いた虚偽の情報を渡されており、「調査チームは騙されている」と匿名の告発が行われている。
これらの事実について調査官は「ファイン・エアはちっともファインではありません」とインタビューで語っている。誰うま
それでも調査委員はこの反省を元に会社を立て直す事を願っていたが、それは叶わず後にファイン・エア社は子会社に吸収されるという斬新な形で解散する事になる。
なお、実は事故機と元々予定されていた機体は共に、日本航空で運航されていた機体であり、JALを退役した後に貨物機に改造されたという経緯がある。
また、この事故のデータは後にエメリー・ワールドワイド17便墜落事故(後述)の調査の際に比較対象として使われている。
アエロフロート・ノルド821便墜落事故
第17期第8話「LETHAL LIMITS」
メーデー史上に残る迷言「何を?俺だってできない」が爆誕した回。
※事故内容
2008年9月14日発生。
B737の操縦経験が未熟だったクルーが空間識失調に陥り墜落。この事故には
- スロットルの不具合で左右のエンジン推力がアンバランスになっていた。
- その様な状況で操縦する技術が副操縦士にも機長にも不足していた。
- 加えて「機長はB737はシミュレーター訓練の時点で苦手」「副操縦士は機長以上に不得手」と、組み合わせ自体に問題があった。
- そもそも機長も副操縦士も経歴その物は長くても、機長は機体の構造が全然違うロシア製の飛行機、副操縦士は農業用の複葉機がメインで、B737に関しては揃って新人同然だった。
- 更に訓練もまともに行われておらず、機長に至っては英語で書かれたマニュアルを読めていたかさえ怪しいレベル。
- 操縦桿の操作中に自動操縦を意図せず切ってしまい、副操縦士が最も苦手とする「推力がアンバランスな機体」の操縦を強いられてしまった。
- 姿勢指示器の表示方法が東側(ソ連・ロシア系)と西側(欧米系)の機材で違うため混乱した
- 東側の機材では機体を示すマークが傾き、西側の機材では背景の地平線が傾くため、慣れていない機材だと実際とは逆に傾いていると錯覚を起こす危険がある。この事自体が何度か事故の原因となっている。
と様々な要因があった*59が、機長にも相当な問題があった。
土壇場で機長の職務から逃げようとした上に、最後まで操縦したがらなかった理由が酔っ払っていた為だったという事実が発覚。
乗客の一人から「今から離陸するが機長のアナウンスが酔っている様で怖い」というショートメールが送信されており、実際ボイスレコーダに録音されていた機内アナウンス内容は20分と20時間を言い間違える、午後と午前を間違える等滅茶苦茶*60で調査官を震え上がらせた。
管制官は指示に従わない事故機を心配して「クルーは大丈夫ですか?」と聞いていた*61が、皮肉にもこの事故の本質をズバリ言い当てた事になる。
事故の内容も過去に放送された事例を多く踏襲していたため、メーデー民からは「数え役満」「メーデー欲張りセット」などと揶揄されている。調査官・ナレーターともに毒舌が光る回でもある。
なお、本事故が取り上げられた総集編のCMでは本事故の機長の引きつった顔が映ったその下に「正気じゃない」という字幕が出る。誰がうまいこと編集しろっつった*62
ラミア航空2933便墜落事故
第17期第9話「FOOTBALL TRAGEDY」
※事故内容
2016年11月28日発生。
機長が航路分ギリギリの燃料しか積まず(法令違反*63)、途中での給油もしなかった結果、空港手前で渋滞に巻き込まれ燃料切れで墜落。
また上記以外にも
- 機体は過積載疑惑
- 燃料切れがバレるとまずいので緊急事態なのにわざとメーデーを出さない。混雑待ちの空中待機を指示された時でさえ何も報告せず慌てたそぶりも見せない
- 結局、緊急事態を告げたのは墜落直前で、管制官の指示を無視して逆旋回し突如降下を強行(危うく他機と衝突しかかってもいる)
- 一方、わざわざ上空で着陸態勢(ギア引き出し・フラップ下げ)をとった為、空気抵抗が増えて高度も下がり、普通なら滑空でも飛び越えられるはずの山に激突
といった耳を疑う様な手順無視の数々が判明。「ラミアは最低のパイロット」*64
しかも何故かCVRが道中半ばで切れている。調査官は「不意の故障で切れたのか、それとも独断で切ったのか」と言葉を濁しているが、ナンスは実質機長らが切ったものと扱っている。
これらが次々発覚した事でメーデー民も事故調査官も呆れ返り、ナンスに至っては番組内でも明らかにキレ気味で喋ってたり。
なお人員・会社関係も散々。
- パイロットの評価は正副とも「緊急事態における対処に問題あり」
- 機長は元軍人だが、奨学金による専門訓練まで途中ですっ飛ばして勝手に退役(自称)しており、ボリビア空軍と裁判中だった*65
- そもそも機長がラミア航空の経営者の一人
- 当時のラミア航空は財務状況最悪+機体はろくに整備されず賃金も未払い続きというハイパーブラック状態
- 今回の運行計画も何度も再提出している。機の国籍に関してブラジルの法律に抵触していた様だが、仮にも南米の会社なのに、南米最大の国ブラジルへの対応力がこれである…
ちなみに事故機にはブラジルのプロサッカーチーム「シャペコエンセ」のチームメンバーや記者がコパ・スダメリカーナ2016年大会の決勝会場に向かうために乗っており、選手3人(1人は右脚切断の重傷、もう1人は復帰を断念して監督就任、残る1人のみ現役続行)、記者・乗員・技術者各1人を除く全員が犠牲になった。
この中にはJリーグでプレーした選手や、かつてのヴィッセル神戸の監督なども含まれており、また新戦力としてリストアップされていた選手もいた。
この様な背景があった事もあり、担当した管制官はマスコミの好き勝手な報道によってバッシングを受けるという散々な目に遭っている。
大量の選手を失ったシャペコエンセだが、相手チーム「アトレティコ・ナシオナル」が試合を辞退した事で大会優勝を果たし、生還した3人の選手にトロフィーが渡された。
その後、シャペコエンセは他のチームから選手を受け入れてなんとか再建し、2017年4月にはレコパ・スダメリカーナ2017年大会で改めてアトレティコ・ナシオナルと対戦し*66、2017年8月には日本でのスルガ銀行杯*67で浦和レッズと対戦している。
メーデーでは触れられていないが、アトレティコ・ナシオナルはその行動を称えられてコパ・スダメリカーナ100周年を記念したフェアプレー賞とFIFAフェアプレー賞を授与されている。
また、決勝当夜には決勝が行われるはずだったスタジアムで追悼集会を行うなどの対応をした事をシャペコエンセのファンからも感謝されており、皮肉にもこの事故がきっかけで両チームは友好関係にあるとか。
なお、この事故を受けてブラジルでは映画「ハドソン川の奇跡」の公開が延期された。
エグゼクフライト1526便墜落事故
第19期第2話「Playing Catch Up」
※事故内容
2015年11月10日発生。
チャーター便としてアクロンに向かっていたBAE125が空港に着陸しようとしたところ、突然失速をしてバランスを崩しアパートに墜落、付近に火災も起きた。事故当時アパートには人はおらず地上の人は巻き込まれなかったが、乗員2名乗客7名全員が犠牲に。
事故現場を調査してみるとフライトマニュアルから重量計算で色々と記入漏れが判明。計算してみたところ重量バランスに影響が出る程ではないが、管理がずさんだという疑惑が出てくる。
そして記録を取り出せたCVRから着陸のチェックリストをそっちのけで飛行機の操縦で口論していた事、そのため降下のタイミングが遅れその後急に高度を下げバランスを崩した事がわかり、一気にパイロットの資質に疑惑が生じ始める。
すると、機長と副操縦士は会社からの指示で睡眠時間に影響が出かねないほど仕事をさせられており、更には機長も副操縦士も訓練を真面目に受けていない傾向にあり両人とも前に勤務していた航空会社を解雇されていた事が判明。
更に調査を進めてみたところ、エグゼクフライトはCRMの訓練が杜撰でマニュアルがあまりに薄っぺらい、熱意はあるだけで碌に航空技術を持っていないパイロット達をとにかく雇うなど管理があまりにも杜撰なことが発覚し、上記の過重労働疑惑も相まって調査官を大いにあきれさせた。
インタビューに応じたかつてエグゼクフライトに勤務していたパイロットは「二人とも良いパイロットだった。飛ぶ情熱があった。」等彼らに同情的な発言をしていたが、上記の訓練への不真面目さや「ダメダメダメダメだぁ~~~~~~~!!!」というリズミカルな絶叫など重大局面でのパニックぶりから視聴者からはルッツ扱いされ、ダブルルッツ呼ばわりされている。
ライオンエアー610便墜落事故
第19期第4話「GROUNDED:BOEINGMAX8」
DC10と並ぶ欠陥機と酷評されたB737-MAXの回。
※事故内容
2018年10月29日発生。
離陸直後にいきなり原因不明のスティックシェイカーが発生。加えて対気速度計や高度計も不一致という警告もおき更には操縦桿が何故かパイロットに逆らい機首下げをしようとして中々機首が上がらない。
とうとう機体は急降下し始めジャワ海に墜落、乗員乗客全員が死亡。死者189名は今現在のB737シリーズでも最悪の犠牲者数である。
整備記録を調べてみたところ事故機は仰角センサーを交換していたが、JT43便で同様に対気速度や高度が不一致をしながらやはり機体が操縦士に逆らって勝手に機首下げをしていた事が判明。どうやら取り付けに失敗してセンサーに不都合が発生していた模様。
この時はたまたま居合わせた3人目がスタビライザートリムの異常に気づき電源を遮断する事で何とか機首下げは回避された。が、機体はそのまま異常を抱えたままジャカルタまで飛行、更にその時の対処を報告していなかったため610便は機体に異常を抱え対策を知らないままフライトに臨む羽目になってしまった。
そしてボーイングの技術者を呼び寄せて問い質してみたところ、B737MAXは燃費向上の機種改良を行った結果機種上げ癖が付いた事から、MCASという機首上げを防ぐシステムが導入されたものの、なんと訓練にかかるコストを省略するためにMCASはパイロットの操作とは無関係でパイロットの取り扱いは(B737NGと)変わらないと主張し、FAAから耐空証明を貰っていた事が発覚。
パイロットが取り扱う事がない想定のため飛行マニュアルにもMCASの存在は載せられておらず、更にMCASは両側のセンサーではなく片側のセンサーの挙動にのみ依存するというフェイルセーフという概念を無視したものだった。
ボーイングは極めて稀な条件でMCASが動作すると説明していたが、610便の事故機においてはセンサーの整備不良により条件を満たしていた。更にマニュアル外の内容なので乗員が適切な操作を確実にできる保証もなかった。
事故後、緊急でMCASへの対応法がパイロットに伝えられたものの、事故から僅か4か月後、同じくMAXを使用したエチオピア航空302便がまたもMCASを原因とする事故で墜落。これにはライオンエアー担当の調査官も愕然とせざるを得なかった。
なお、ボーイングはMCASへの対応は平均的なパイロットなら可能と皮算用してFAAに報告していた。要はいずれの事故においても原因は自分達でなくパイロットにあるという事である。
しかしたった4ヶ月で同じ原因で墜落した機材の耐空証明とボーイングの言い訳が信用されるはずもなく、世界的にB737MAXは運行停止となった。
勿論販売実績もまったく伸びず、MAXを導入しようとしていた各社がこぞって導入を延期したりB737NGやエアバスA320の導入に切り替えるという動きが加速。
その中でもA320-neoはMAXの仮想敵と言ってもいい存在だったが、MAXからの乗り換え導入もあってこちらは日本でも導入実績のある機材としてシェアを伸ばしていったのは皮肉としか言い様がない。実はこちらもエンジントラブルが発覚しているのは内緒
フラッグシップ航空3379便墜落事故
第20期第9話「TURBOPROP TERROR」
※事故内容
1994年12月13日発生。
悪天候の空港への着陸進入をやり直すため復航しようとしたところ失速して墜落。
管制官との交信後に空港への最終侵入経路を突如外れたことからCVRの内容が調べられると、機長がイグニッションライトが点灯したと発言していた事が判明。
機長はこの点灯によりエンジン出力が低下していると思い込んでいたが、CVRと他機のエンジンを比較したところ、実際にはエンジンには全く異常がなかった。
メーカーによればエンジントルクが低い状態でプロペラの回転数を上げる事でライトが点灯する仕様で、運航には特に支障がない。しかし機長はエンジンの様子を全く確認する事なく、片側のエンジン出力だけを最大にし、更に片エンジン時の復航の原則(着陸ギアは格納しフラップ角度を上げる)に反して着陸ギアもフラップも出しっぱなしで復航を行った為に墜落した事が、同様の状況を再現したテストフライトで判明。つまり機長の誤った操作により、全く異常がなかった飛行機を飛べない状況にした事になる。
この様なミスを起こした機長の経歴を調べてみたところ、
- 想定外の事象への反応が遅れる
- 一緒に飛んだ副操縦士からクレームが相次ぐ
- 機長の以前の勤務先でも「気が散りやすい」「予想不可能」等と酷評され、「緊急事態で視野が狭い」ともきちんと記されている
- トドメに以前の勤務先からは上述の理由で解雇要求が出ている
とあのルッツや危険着陸の常習犯だったファリッツ未満のパイロットとしてありえない事実が判明。NTSBの調査官も「安全ではないという理由で解雇を要求されるパイロットなど見た事ない」と言う始末で、「乗客を運んではいけない」「機長の資格を与えてはいけない」と断じられた。
副操縦士は今回初めて機長と組んだ上にベース勤務地が機長と異なり、機長の悪評を知らなかった事で適切なサポートも出来なかった。相当な若手だっただけにかなり不憫である。
また、フラッグシップ航空は以前の勤務先から機長の悪評について情報収集していなかった。
実はこの様なパイロットの経歴の共有不足が原因の事故は幾度か起きており、その度にNTSBは改善勧告を出しているのだが、今回の事故で再びNTSBは同様の改善勧告を行う事に。しかしそれでもあまり状況は改善せず、事故の生存者の主導で航空会社がパイロットの経歴情報を要求できる法案が定められた事でようやく改善に向かうことになった。
あまりの経歴の酷さ故この機長はさっそく「若ルッツ」などと呼ばれる様になっており、ナレーターもルッツ回の様に急に機長を呼び捨てにしながら調査官達と一緒にド直球の毒舌を連発している。
余談だが、生存者の女性や救助に向かった消防隊員が共に「アドレナリンが出た」と発言しているため「アドレナリン回」と言われる事もある。
アトラス航空3591便墜落事故
第21期第9話「Delivery To Disaster 」
※事故内容
2019年2月23日発生。
空間識失調を発症した副操縦士が機体が失速していると誤認して操縦桿を押し続けた結果、急降下して沼地に墜落。
実際には機体は失速どころか副操縦士が誤って起動させた着陸復航モードによって加速していたのだが、
丁度管制官と交信中だった機長とパニックに陥っていた副操縦士は着陸復航モードに気付く事が出来なかった。
おまけに土壇場で事態に気が付いた機長が慌てて操縦桿を引いたのに対し、気が付かなかった副操縦士は押し続けたためお馴染みの押し合いが発生し、回復には至らなかった。
とてもプロのパイロットとは思えない初歩的なミスのオンパレードに疑問を感じた調査官が副操縦士の過去を調べたところ、悲惨な訓練記録や試験結果が次々と露呈。
更に過去にも9年間に渡って同じことを繰り返しながら6社を転々としていたうえ、その経歴を改竄・隠蔽してアトラス航空に入社していたというとんでもない事実が発覚。
あまりの醜態に歴戦の調査官達にすら「これほど無能なのは見たことない」「こんなに下手くそなのに何故最大手の貨物航空会社に入社できたんだ?」と呆れられていた。
なお、今回は本編開始直後から当該機の副操縦士が様々な航空会社でテストや操縦などで失敗を繰り返し解雇されている描写がされており、更にはインタビューに応じた複数の調査官から彼がパイロットに向いていないと酷評されていたことから、当事故が副操縦士の資質不足が原因であるということは見慣れた視聴者なら一発でわかる構成となっており、視聴者の関心は「どうやってアトラス航空に入社しやらかしてしまったのか」に向けられていた。
【こんなことで事故が…特に印象深い(?)事故原因】
番組の性質上、時としてとんでもない事故原因が扱われる。
ここではそんな衝撃的な事故を紹介する。
上述のほどではないにしろ機内クルーや地上スタッフがやらかしたものもあれば、
ハイジャック事件やJAL123便事故の様に対応困難な無理ゲーとしか言い様がないものも。
また、たまに救助や調査が神がかっているパターンもある。
スイス航空111便墜落事故
第1期第3話「機内火災」(原題:FIRE ON BOARD)
※事故内容
1998年9月2日発生。
離陸して程なくして異臭が漂い始め更には煙が立ち込め始める。異変に気付いた乗員はACCに緊急を打診して最寄りの空港に着陸しようとするが、およそ10分後には火災の影響で自動操縦が作動しなくなりその直後に通信が途絶えてしまう。
そして更に数分後に同機はノバスコシア州沿岸に墜落、乗員を含む229人全員が犠牲となった。
事故後数年に渡る調査により判明した原因は、ファーストクラスの電気配線の不備により発生した火花が可燃性だった絶縁体に引火し瞬く間に111便の操縦系統を焼き払ってしまったというもの。
更には発生場所には火災発生を検知する装置は設けられておらず、ピンポイントに操縦系統だけを焼き払い客室には火事の兆候すら見せなかったため、クルーは原因を知る由もなかった。
また、異常対応のチェック項目が多く、マニュアルに従いチェックリスト通りに対応するとタイムオーバーになるというとんでもない罠まである始末。
本便は機長・副操縦士共に長年飛行機に慣れ親しんできたベテランであったが、この様な悪条件下では手の施しようが無かった。回収された姿勢指示器と対気速度計により判明した事実によると海面に墜落した時には時速550kmでほとんど逆さま状態だったそうで、遺体は殆ど木っ端微塵であり身元確認作業はこれ以上にないほど困難を極めた。
この事故までスイス航空は事故は1979年の着陸失敗事故、墜落事故では1963年以来事故を起こしておらず、スイスを代表する優良企業としてブランドを確立していたためセレブに愛用されていたが、
事故により著名人やその親族が犠牲になり、航空事故による初の美術品損失でピカソの作品が失われるという人・物で大きな損失を出してしまった。
スイス航空は航空連合の結成失敗*68や経営拡大戦略の失敗*69で打撃を受けていたが事故によって損害賠償とイメージダウンで大打撃、更には2001年に起きたアメリカ同時多発テロのあおりを受けて事実上倒産。ルッツの所子会社のクロスエアに吸収合併されスイスインターナショナルエアラインズとなった。
該当回は、
- 操縦士達の必死の消火作業を嘲笑うかの様な火の手や爆発
- 破滅から逃れられないと悟った乗客達の悲痛な表情
- 制御不能に陥ったジェット機がまっしぐらに海面に突っ込み爆散する場面
と、鬱場面てんこ盛りのトラウマ回である。
ユーバーリンゲン空中衝突事故
第2期第5話「空中衝突」(原題:MID-AIR COLLISION)
※事故内容
2002年7月1日発生。多くの子供を乗せた旅客機が貨物便と空中衝突し墜落。
様々な要因があったが、決定的だったのは片方は管制官の指示に従い、一方は空中衝突防止装置(TCAS)の指示に従った事が原因。
この事故以降、管制官とTCASの指示で食い違った場合後者を優先する事が定められた。
前年の2001年には日本で日航機同士で同様の食い違いによるニアミス事故が発生していたが、当時は管制官のミスの方が取り沙汰されてしまい、教訓が活かされる事はなかった。(同様に以前の軽い事故の教訓が活かされないまま重大事故につながった事例は幾つかある)
なお、この事故で家族を失った建築士が元管制官を刺殺する事件が起こっている(ここまでは放送範囲に入っている)。この遺族のその後を巡るアレコレがあるが、それはメーデーとは関係ないので控えよう。
アエロフロート航空593便墜落事故
第3期第9話「コックピット内の子供」(原題:KID IN THE COCKPIT)
児童操縦回。
※事故内容
1994年3月23日発生。
機長が息子に操縦桿を握らせたところ、偶然「自動操縦中に操縦桿を30秒以上操作し続けると自動操縦の一部が解除される」という隠しコマンドを実行してしまい、自動操縦が切れた事に気づかないまま操縦桿を傾け続けた結果立て直しが効かなくなり墜落。
当時としてはそう珍しい事ではなかったとはいえ、子供をコックピットに入れ、更には操縦桿まで握らせてしまったという行動の迂闊さに目が行きがちだが、
実際のところ隠しコマンドが事故機のパイロット含め誰も認識していないものだった事、そして自動操縦の一部解除時に何のアラートも鳴らないせいでパイロットが事態を把握できなかった事など、機体側の不備も原因としてはかなり大きい。
とはいえやはり短時間ながら子供が操縦桿を握り、機体を動かしてしまったというインパクトは大きく、数ある事故原因の中でもかなり特徴的なものとしてたびたびメーデー民の間で話題に挙がる。
通称「児童操縦」。
ユナイテッド航空585便墜落事故/USエアー427便墜落事故/イーストウインド航空517便急傾斜事故
第4期第5話「737型機に潜む危険」(原題:HIDDEN DANGER)
※事故内容
総集編以外では珍しく1話で3つの事故を取り扱っている回で、全てB737が持つ共通の原因で発生している。
- ユナイテッド航空585便墜落事故
1991年3月3日発生。
着陸アプローチ中に突如機体が右に傾き回転、わずか10秒後に墜落。乗員乗客25名全員が死亡。
乱気流の影響などが検証され、手掛かりを求めてコパ航空201便墜落事故*70にトム・ハウター調査官を派遣するなどしたが墜落原因を断定する事はできなかった。結局1992年12月に提出された報告書には「未解決」と記され、NTSBの設立以来4件目の未解決事故となった。
しかし下記のUSエアー427便墜落事故が発生したため、調査が再開された。
- USエアー427便墜落事故
1994年9月8日発生。
着陸アプローチ中に突如機体が左に傾き回転、墜落。乗員乗客132名全員が死亡。
主任調査官はトム・ハウター氏。ユナイテッド航空585便と同じく調査が難航し、事故調査期間はNTSB史上最長の4年半に及んだ。ハウター氏は「3度目の事故が発生し、公聴会で吊し上げられる」悪夢を見たという。悪夢を見た人
そして実際に3度目の事故が発生したが、その事故が調査の突破口となった。
- イーストウインド航空517便急傾斜事故
1996年6月9日発生。着陸アプローチ中に突如機体が右に大きく傾き、左のラダーペダルを踏んでも反応しない状態に陥った。30秒近く悪戦苦闘しているうちに突如水平に戻ったが、機器をチェックしていると再び右に傾き、30秒近く操作を受け付けない状態になった後で水平に戻った。
クルーはメーデーを発信したが、幸い3度目は発生しなかったため、無事滑走路に着陸した。
この事故で完全な状態の事故機と、何よりクルーの証言を得られたため、調査が大きく前進した。
調査の結果、B737の方向舵には一定の条件下で「ラダーハードオーバー」と「ラダーリバーサル」という2種類の不具合が発生する可能性がある事が判明した。
前者は方向舵を制御するサーボバルブが固着する事で方向舵が一方向に固定され、後者はバルブが逆に動く事で方向舵がクルーの意図とは逆方向に動くというもの。どちらも通常の対処法では解決できない致命的状況に陥る。
最終的にボーイング社は関係するバルブを再設計したうえで全数交換を実施した。(ただ、アエロフロート821便事故の回では「交換は航空会社次第でした」と説明されている)
同時に各航空会社はラダーハードオーバーやラダーリバーサルが発生した場合の対処法を訓練に追加している。
なおこれらの不具合は「発生しても機体に証拠が残らない」ため、他の事故でも事故機がB737かつ機体に異常が見られない場合にこれらの不具合が疑われる事がある。(シルクエアー185便事故、アエロフロート821便事故など)
なお、番組では言及されていないものの、これらの不具合により生じる現象がアメリカン航空587便墜落事故の原因となった訓練と酷似しており、かつその訓練で教えられている対処法であればこの不具合に対処できるのではないかという推測*71から、視聴者からはこの事故が587便の事故の遠因となった可能性が指摘されている。587便の副操縦士が問題の訓練を受けたのは1994年より前なので、実際には無関係と考えられるが。
ヘリオス航空522便墜落事故
第4期第10話「ゴースト」(原題:GHOST PLANE)
悲劇のヒーロー、客室乗務員プロドロモウ登場回。
※事故内容
2005年8月14日発生。
整備士が与圧チェックで与圧スイッチを手動モードにしたまま機体を降りてしまい、乗組員も見逃したまま飛行を続けてしまった。途中で警告音が鳴るも他の警告と同じ音のため聞き逃されてしまう。
このため上空で乗客・乗員の殆どが酸欠で意識を失い*72、燃料切れの末に墜落。
かつてダイバーや特殊部隊の経験があり鍛えられていた客室乗務員プロドロモウが異常に気付いてコクピットまでたどり着き奮闘する*73も、通信機から発信したメーデーは周波数違いで届く事がなく、監視に来た空軍機に合図を送るのが精一杯で墜落を回避する事は出来なかった。
なおギリシャ政府はこの時ハイジャックによるテロの可能性も考え、あと5分飛行を続けていたらアテネ市街地への墜落を避ける為にやむを得ず撃墜命令を下すつもりであったという。
この件やそれに関連した不手際*74により致命的なイメージ悪化を受けたヘリオス航空は経営難に陥り、他社に営業権を譲渡する等して何とか存続を図ろうとするも、その譲渡した航空会社も90日間の営業停止を発表した事でリース契約に基づいた債務請求、そしてキプロス政府からの追徴課税の支払いを迫られるも到底応じる事が出来なかった結果、預金口座を凍結させられた事がトドメとなり無期限の事業停止に追い込まれた。
該当機を追跡していた空軍機2機の目の前で墜落した*75こともあり、鬱回の1つと言われる。
南アフリカ航空295便墜落事故
第5期第4話「謎の炎」(原題:MYSTERY FIRE)
※事故内容
1987年11月28日発生。
台湾からモーリシャスを経由してヨハネスブルグを目指す途中のB747-200Bコンビの貨物室で火災が発生。クルーの懸命な対処も虚しく、モーリシャス沖のインド洋へと墜落し、乗客・乗員全員の159人が犠牲となった。
インド洋の深海からサルベージ船によってCVR及び機体の一部が引き揚げられ、「貨物室に積み込まれたコンピュータ機材から火災が発生、電気系統が焼き切られ機体が操縦不能となった」のが事故原因とされた。
一方で当時の南アフリカの政治情勢から事故機には密輸中の武器が積み込まれていたのではないかという見解もあり、現在に至るまで真相は分かっていない。
事故機にはアフリカ沖で操業中の漁船の交代要員やエンジニア、製鉄会社・商社の従業員・駐在員に加えて試合と新婚旅行のために南アフリカへ向かっていたハル薗田夫妻など47人の日本人が搭乗していた。
ハル薗田へ事故便の航空券を渡したジャイアント馬場は強い自責の念に駆られ、メモリアルセレモニーでは遺影を前にして号泣し絶句したという。
なお、機体の一部を探す際にはこんな海底に潜る事は普通はないということで、何故か一緒にいた海洋生物学者が新種の海洋生物を発見していた。何便乗してんねん
イースタン航空401便墜落事故
第5期第9話「注意散漫」(原題:FATAL DISTRACTION)
※事故内容
1972年12月29日発生。
クルー全員が故障した表示灯(降着装置を下ろした際に前脚がロックされた事を示すもの)*76の修理作業に没頭するあまり、機長が誤って自動操縦を解除してしまった事に誰も気づかずそのまま高度が下がって墜落。
わずか12ドルの電球1つにこだわって墜落した事と、乗客を救助したカエル漁の漁師が人気。
機体の問題ではなくコックピット内の人間関係が起こした事故*77であり、CRMの典型的な失敗例としても取り上げられている。
また事故機の無事だった部品は別の同型機に流用されたが、流用した機体には事故死したクルーの幽霊が目撃され、「霊が皆を守ろうとしている」と噂されたとか。メーデー民に「電球見に来ただけじゃね?」とつっこまれたのは言うまでもあるまい。
なお、終盤で事故の教訓が活かされなかった結果の後日談としてテネリフェの悲劇が発生する。
チャイナエアライン611便空中分解事故
第6期第1話「SHATTERED IN SECONDS」
ポテト回。
※事故内容
2002年5月25日発生。
香港国際空港へ向け飛行中、突如機体が空中分解しそのまま墜落。
事故機は勤続22年8ヶ月、飛行時間は64000時間オーバーという大ベテランで、既に定期運用からは外れこの日は臨時で運用に入ったものの折り返し便がチャイナエアラインでのラストフライトとなる予定だった老兵中の老兵だった。
中台対立の影響や直近で起きたシベリア航空機撃墜事件の影響もあってミサイル撃墜や爆弾テロ説が疑われた他、トランス・ワールド航空800便事故(下記)との類似点があったため調査の初期段階では同様の原因だろうという推測で調査が進められた。
しかし、不当に埠頭に引き上げられた燃料タンクが回収された事でTWA800便とは原因が異なる事が発覚し調査が一旦行き詰まってしまった。
転機となったのは集められた残骸の一つに冶金学者が違和感を覚えた事。破断面の特徴から金属疲労が原因と判明。
そして更なる調査から、金属疲労の原因が過去の尻もち事故の際の修理ミスだと分かる。この事故は22年前に起きたもので、その際、マニュアル通り修理せず、損傷が残ったまま補強材を張り付ける形で修理した結果、22年間のフライト中に徐々に古傷が広がり今回の事故に繋がったと結論付けられた。あまりにも既視感を感じる事故原因
整備時にも目視では発見困難で、直前に確立された老朽機に関する新たな整備計画については時期的に間に合わなかった。
機影が突如4つに分かれそのまま消えたという実際の証言に加え、爆発も炎上もなく分解したという調査結果に合わせてまるで割れるかの様に飛行機がバラバラになるというなかなかホラーな再現映像が流れる事と「ポーテート!」という掛け声でミサイルが発射される映像が流れる事で有名。
華航四年大限の一つに数えられる事故だが、幸いチャイナエアラインはこの事故以降犠牲者を出しておらず、上述のCI120便を最後に機体の損壊事故も起こしていない。
ニューデリー空中衝突事故
第6期第4話「CRASH COURSE」
ドゥッタ管制官登場回。
※事故内容
1996年11月12日発生。
離陸直後のサウジアラビア航空763便のB747に着陸侵入中のカザフスタン航空1907便のIl76が衝突して双方墜落。世界で3番目に死者数を出した航空事故であり、史上最悪の空中衝突事故である。
地味に再現CGでの衝突の仕方が実際のものと異なる。
現場入りした調査官は「あんな酷い事故は見た事がない」と語った上で、その様子の詳細は「何と言うか……やはり無理です」と口にすら出せなかった。
空港が軍との共用で使える空域が少なかった事、空港レーダーが1次レーダー止まり、両機ともにTCASを積んでいなかった事も事故原因の一つとされているが、直接の事故原因は1907便のクルーが管制官の「14000ftに763便がいるので15000ftを飛行せよ」という指示を「15000ftに763便がいるので14000ftを飛行せよ」と取り違えたというものだった。
1907便の機長と副操縦士は英語が苦手な上に、英語のわかる通信士も状況を把握した時点では翻訳して指示していなかった。途中でようやくミスを指摘し上昇に転じたが、逆にそれで衝突してしまった。
この事には付近を飛行中に事故を目撃してドゥッタ管制官に連絡したアメリカ空軍パイロットも「確かにTCASはなかったが、本来有り得ない事故であの日空に散った人達は不運だったとしか言いようがない」「ただ運命というか、5分先に飛んでいるのが自分でなくてよかった」と語っている。
世界有数の悲劇的事故を扱った回だが、ドゥッタ管制官の聖人ぶり*78のおかげで「そこまで辛い回」ではないと評判。
あと最後のスタッフロール時のBGMがなぜかインド映画調とも言われる。
チュニインター1153便不時着水事故
第6期第6話「DITCH THE PLANE」
※事故内容
2005年8月6日発生。
燃料が残り少ない事に誰も気付かぬまま離陸してしまい、飛行中に燃料切れを起こして墜落。
事故機のATR72はATR42をやや大型に改装した機種であり、それぞれ対応している燃料計が異なるのだが、型番の数字4桁のうち2桁以外は接続部分の規格に至るまでまったく同じという非常に紛らわしい物だった。そのため故障した燃料計の交換の際に間違った方が取り付けられ(整備記録に記載された型番から発覚)、燃料計の表示が実際の残量よりも多く表示されていたのがそもそもの原因だった。
また、機長も燃料計の表示だけで既に燃料が給油されているものと誤認してしまい、本来なら給油後には必ず確認しなければならない伝票のチェックを怠っていた*79事から、後に整備士と共に事故の責任を問われて有罪判決を受けている。
なお、この回ではインタビューに答えた生存者が珍しく着水前に救命胴衣を膨らませるというNG行動をとっており*80、その結果一緒に膨らませた恋人が死んで自分だけ生き残る結果になってしまった事から、メーデー民に「無能生存体」と呼ばれている。そのくせインタビューではNG行動を反省した様子もなく*81いけしゃあしゃあと生存者代表として機長達を非難している事にもにょったメーデー民も多かった。なんでこいつをインタビューに呼んだ
ロサンゼルス国際空港地上衝突事故
第7期第4話「CLEARED FOR DISASTER」
※事故内容
1991年2月1日発生。
USエアー1493便が夜間のロサンゼルス国際空港に着陸する際、管制ミスでまだプロペラ機が待機していた滑走路に侵入してしまい、プロペラ機をひき潰しながら進路上にあった建物に激突。
当時のロサンゼルス国際空港は、
- 慢性的な人員不足
- 照明の配置が悪く、管制塔から滑走路の一部が見えなくなる
- 地上レーダーが老朽化によってまともに稼働しなくなった
- 以上の問題が上層部に報告されていたのに放置されていた
という重大な問題を幾つも抱えており、結果管制官は滑走路の状況を直接確認できないまま4機の飛行機をほぼ同時に捌くという曲芸レベルの業務を要求され、その過程で交信してきた機を取り違えたのが全ての原因だった。
特に地上レーダーは3年も前から改修の話が持ち上がっていたのに、事故当日に至っても計画の見通しすら立っていなかったという凄まじい有様である。
エールアンテール148便墜落事故
第7期第7話「DOOMED TO FAIL」
※事故内容
1992年1月20日発生。
着陸の際にスイッチを入れ間違え、「降下角度3.3°(毎分降下率240m)」のつもりで入力した「-33」をUIが「毎分降下率3300ft(≒1km)」と判断。
加えて入力の瞬間0.5秒間程の乱気流が吹いた為に、エアバスお得意の「隠しコマンド」が降下角を倍加して実行(これがなければ上述のミスでも墜落しなかった)。
ミスに気づけず急降下して(副操縦士のタイミングが悪すぎた進言等も加わり)、本来なら越えられるはずの山に墜落。
この解析は火災の熱で伸びてしまったテープの磁気を、特殊かつ最新の顕微鏡を使って目視で読み出すと言うデジタルなアナログ作業により判明している。*82
おまけにエアバスA320の特性故に墜落を防ぐ為の最後の砦である地上接近警報装置は誤報が頻発して気に食わないため標準装備から外され、本機には搭載されていなかったという想像だにしない事態にはメーデー民も事故調査委員も度肝を抜かれた。
違法でこそないが、結果として最後の安全装置を奪ってしまった事に変わりはなく、事故調査委員も「地上接近警報装置はいかなる理由があっても搭載しなければなりません。例外はありません」と苦言を呈している。
なお、この事故では警察が「BEAに回収させるとブラックボックスが改竄される」という理由でブラックボックスの回収を妨害しており、警察からBEAの事故調査能力が全く信用されていない事が伺える場面がある。
この回の中で警察の不信の理由は明かされないが、これは同じシーズンの数話前のエピソードである第7期第3話「エールフランス296便」(原題:PILOT VS PLANE)の内容*83がその説明になるためと思われる。
当然ながら(時としてBEAと協力し合うこともある)調査に協力したNTSBの調査官はこの状況に唖然とした。
コルガン・エア3407便墜落事故
第8期第4話「DEAD TIRED」
※事故内容
2009年2月12日発生。失速警報が鳴った際、機長が操縦桿を引いてしまい墜落。
原因も含めて直接の事故原因はボナンに近く、あちらはピトー管の凍結だが、こちらは着氷した場合に備えて警報を早めた事が原因。また、副操縦士がフラップを上げた事で更に揚力を失ってしまった。他にも着陸時に無駄話をしておりミスを誘発し易くなっていた。
プロのパイロットとは思えない稚拙なミスだったが調べると航空会社がブラック企業だったため、クルーが完全な過労状態にあり重大ミスにつながったと判明。
恐らくコクピットでの無駄話もいわゆる深夜テンション状態だった為と推測される。
ぶっちゃけ過労とCRMの失敗はありふれすぎているのだが、特にひどい例である。
どんだけひどいかというと、
- 給与はバス運転手未満
- 薄給で勤務地に合わせて仮住まいを確保する余裕がなく、会社の貨物機で数千キロに及ぶ大陸横断レベルの長距離出勤を強いられる
- 当然ホテルに泊まる余裕もないので、禁止されているはずのオフィスでの仮眠が常態化
という惨状。
当初は視聴者もクルー批判が多かったが、最後の最後で航空会社のブラックぶりが判明すると一転して同情の声が大きくなったのは言うまでもない。
なおこの回の日本語版タイトルは「コンチネンタル航空3407便」だが、コンチネンタル航空はコルガン・エアに運行委託を行っていただけであり、完全なとばっちりである。
TAM航空3054便オーバーラン事故
第9期第2話「DISASTER RUNWAY」
※事故内容
2007年7月17日。
世界でも屈指の難関空港と悪名高いコンゴーニャス空港で発生。雨に濡れた35L滑走路に着陸したA320が減速に失敗しオーバーラン、ガソリンスタンドに突っ込み大火災を起こしてしまう。
乗員乗客187名全員に加えてガソリンスタンドにいた12名も犠牲になってしまった。
主な原因は「大型ジェット旅客機用としてはあまりに短すぎる上に整地が不十分で水はけが悪い」という悪条件たっぷりな35L滑走路の問題で、前日にも雨に濡れた滑走路で別の機体がスリップ事故を起こしかけていた。
更に当該機は逆噴射装置の片方が使用不可能という故障を抱えたまま運用されていた。パイロットは本来とは別の停止のさせ方を覚えていたものの(実際、数日前に雨が降っていない時にコンゴーニャスに降りた時は着陸に成功している)、短い滑走路に加えて雨による視界不良・環境不良で精神的プレッシャーを抱えてしまい操作を誤ってしまったのである。
ヒューマンエラー要素こそあるものの、調査官も「こんな悪条件では誰だって失敗してしまうだろう」と漏らしていた。
コンゴーニャス空港は1919年から航空機の離発着に使用されていた小高い丘を1936年に空港として本格的に運用し始めたもので、南アメリカでは歴史ある空港である。
しかし航空輸送に伴い周辺が都市として発展した結果、空港近くまで住宅街に囲まれてしまい改修・延長が難しくなってしまった。
2本ある滑走路は35Lでも1940mで35Rに至っては1435mしかなく、これではボーイング777の様な大型ジェット旅客機はおろかボーイング767クラスの一部中型旅客機も厳しい。
一部では航空機運用環境の悪さや相次ぐ事故やトラブルも憂慮し廃止する意見も噴出しているが、近年開催されたスポーツイベントにより需要が増加した事によりそれも難しいというジレンマに陥っている。
コンゴーニャス空港はメーデー民はおろか航空関係者にすら世界屈指の難所空港としてその悪名を轟かせている。
番組内での生前の機長の「35L・・・35L・・・35L・・・」というエコー付きの心の声が何ともいえない不気味さを誘う。
コンチネンタル・エクスプレス航空2574便墜落事故
第9期第5話「BREAKUP OVER TEXAS」
※事故内容
1991年9月11日発生。
整備チームの引き継ぎミスでネジを締め忘れたまま離陸した結果、飛行中に重要部品がもげて「スペースシャトルみたいに」*84急降下して墜落。
検査官が善意だったとはいえ、勝手に作業を手伝った挙句*85、報告も報告書も残さなかったため、ネジが抜けている事に誰も気づかなかったのが原因であった。
なお、検査官も整備チームの面々も報告書を残す重要性を理解しておらず、「面倒くさいから書かなくて当然」程度にしか思っていなかった。
ボイスレコーダーには、突然の悲鳴の後は警報音が鳴るだけで会話が何も記録されていない。降下が急激過ぎてパイロットも気絶してしまい、立て直しどころか操縦すらできていなかった可能性も推測されている。
英国欧州航空609便墜落事故
第9期第6話「ミュンヘンの悲劇」(原題:MUNICH AIR DISASTER)
※事故内容
1958年2月6日発生。メーデーでも珍しい、調査官が明確に捏造を行った回。
離陸の際速度が足りず、2度の中止を経て3度目でどうにか滑走路を飛び出すも、そのまま空中で失速し向かいにあった建物に激突。
イングランドのフットボールチーム「マンチェスター・ユナイテッド」の選手8名を含む乗員乗客の約半数が犠牲になった。
原因は滑走路上に残った雪だったが、除雪を怠った空港の責任を問われるのを嫌った当時の西ドイツ政府と調査官が翼の着氷が原因と発表、着氷を見逃したとして機長に全ての責任を擦り付けてしまう。
しかし関係者の10年に渡る調査により着氷説を否定する証拠や握りつぶされていた証言が次々と見つかり、ついに着氷説その物が物理的に成立しなかった事が証明される。
まさにミステリーさながらの大逆転劇が繰り広げられた。しかし西ドイツ政府や機長をクビにした英国欧州航空は最後まで自分達の非を認めなかった
なお、調査に尽力した機長の妻がブリストル大学で女性としては初めて薬学・物理学・数学において首席で卒業した才女だったという事が娘の口からシレっと語られている。
ナイジェリア航空2120便墜落事故
第9期第10話「DESERT INFERNO」
※事故内容
1991年7月11日発生。
離陸滑走中に破裂音がしたものの、加速ができているため離陸を決行。しかし離陸後まもなく機内気圧が低下、管制に報告して高度維持を要請する。
ところがこの時管制は同時に別便からも同様の報告を受けて混乱してしまい、対応が遅れてしまった。*86
その間にもスポイラー故障、車輪故障、油圧喪失、機体後部火災…と次々と問題が発生。
クルーの必死の操縦でなんとか着陸滑走路と正対するも、着陸のためランディングギアを出した所で爆発。滑走路の手前3km付近に墜落、炎上し、乗員乗客261名全員が死亡。
事故調査官が現場捜索中に風で流されていた整備記録は2種類のペンで記載され改ざんの形跡があった。*87
これを元に調査したところ、タイヤの空気圧が不足していたにも関わらず、遅れを嫌ったプロジェクトマネージャの判断で運行継続を決定していた事実が判明。
当該機は最初の空気圧不足の報告から7回も離着陸を行っていたが、この日ついに運が尽きた。
この空港は高温でかつ滑走路まで5kmと言う長い誘導路があり、この移動中にタイヤが劣化したと推測される。
離陸滑走中に破裂してランディングギアの金属部分が滑走路と接触し摩擦熱で発火、更にそれを格納してしまったため機体各所に燃え広がったものと結論付けられた。
着陸目前で急に爆発したのは、酸欠状態だったギアの格納庫が開いた事で新鮮な酸素を得て爆発的な燃焼が発生するバックドラフトが発生したと思われる。
空中で炎上した事故機は墜落現場の18km手前から既に物が脱落し始めており、中には乗客の遺体もあったという…。
なお空気圧不足を知り充填用の窒素を入手しようとしたエンジニアも、それを制止して運行を決めたプロジェクトマネージャも同便に搭乗し命を落としている。
当該機はカナダのネーションエアと言う会社が運用を行ってナイジェリア航空にリースしていたが、同社は事故以降1機も飛ばすことなく1993年5月に倒産した。
実は事故機は元日本航空の機材で、ファイン・エア101便事故に関係する2機と同時期に導入・運用されていたものだった。
この回のもう1つの問題点としてどう見ても笑える状況ではないのに笑わせようとしてくる番組側の編集もネタになっている。
機内火災での壮絶な状況をアンドリュー・マッキントッシュは「地獄のようだったでしょう」と解説したが若干微笑んでいたのに加え言い方がゲスっぽかったため直後の「乗客が落ちていきます」共々(ゲス顔)だの(愉悦)だの末尾につけられてメーデー民のおもちゃにされてしまっている。
また終盤で事故発生から墜落までをまとめた再現映像において当該機が墜落した直後、多数の死体袋が映るシーンがあるが同時に流れてきた音楽が「ゥウワァァァ...終わった\(^o^)/」という空耳であったため多くの視聴者を爆笑させてしまった。
もう一度言うが背景に映っているのは多数の死体袋である。決して笑っていい場面ではない。
パシフィック・サウスウエスト航空1771便墜落事故
第9期第11話「I'm the Problem」
※事故内容
1987年12月7日発生。故意に墜落が引き起こされた航空犯罪であるため、PSA1771便事件とも呼ばれる。
ロサンゼルス発サンフランシスコ行きのパシフィック・サウスウエスト航空1771便のクルーから「機内で銃声が聞こえた」と管制に突如として連絡が入り、その直後に墜落。機体は搭乗者諸共粉々になった。
調査開始直後にかろうじて回収できたコクピットボイスレコーダーに犯人のものと思われる声と複数の銃声が録音されていた事からNTSBとFBIは本件が事故というより航空犯罪であると断定。メーデーでは珍しくFBIが捜査の中心となる。
墜落現場から回収された破損した44マグナム*88、そのトリガー部分に残った指の組織から採取した指紋、発見されたボイスレコーダーに残された音声、それらを照らし合わせて調査したところ、パシフィック・サウスウエストの親会社であるUSエアウェイズに不満を持つ元従業員の男(デイビッド・バーク)が、捜査線上に浮上した。
バークは機内を掃除する清掃員として働いていたが、逮捕歴もある素行の悪い人間であり、機内販売の釣銭用の小口現金を盗んだ証拠を押さえられ、解雇を言い渡されていた。解雇された事に逆上したバークは、まだ返却していなかった社員証を悪用して手荷物検査をすり抜け、拳銃を機内に持ち込み、自身に解雇を言い渡した飛行機通勤をしている上司を射殺した。
銃声が聞こえたパイロットは管制に連絡。異常事態に気付いたCAがコックピットに入り、パイロットに「問題が発生した」と伝えたが、バークはそのCAも射殺し、「どんな問題だ?」と聞き返すパイロットに「俺が問題だ!」(I'm the Ploblem!)と答え、パイロット達も射殺した後、操縦桿を前に倒して墜落を図り、乗客もろとも心中した。
911以前にもこのような事件は起きていたが、十分な対策がなされなかったために世界最悪のハイジャック事件を防げなかったのはやりきれないと言う他ない。
ユナイテッド航空232便不時着事故
第9期第14話「SIOUX CITY FIREBALL」
※事故内容
1989年7月19日発生。
デンバーからシカゴにかけて飛行中のユナイテッド航空232便のDC-10の第2エンジンが突如爆発し、油圧系統が全喪失。
パイロットは上述の日本航空123便事故の際に行われた、エンジン推力だけでの飛行方法を実行。たまたま乗客としてDC-10の訓練教官だった人物が乗っており、彼がシミュレーターでエンジン推力だけでの操縦訓練を行っていた奇跡もあった。
彼の助けも借りて何とかスーシティの空港までたどり着いたが、最後の最後で横風に煽られて機体が傾き着陸失敗・大破炎上した。
最終的に乗員・乗客296名のうち112名が犠牲になり、機長は多くの犠牲者を出した事に病室で涙したが、むしろ全滅するところだったのが乗員・乗客の6割を生還させたという評価が正しく、こちらもCRMの成功例の一つとされている。*89
原因は製造時に紛れていた不純物によりファンディスクが金属疲労を起こして破断、その破片が油圧パイプを損傷させたというものだった。
ファンディスクは事故前にも点検されており、ユナイテッド航空の点検基準そのものに問題はなかったが、実際には点検時に既に起きていたはずの亀裂が見逃されてしまっていた。
また、こういった事態に備えて油圧系統を3つに分けていたのに、後部エンジン付近に3つの油圧パイプが集中する箇所があったという設計のせいでもある。
この事故を受け、エンジン推力のみでの飛行についての研究が更に進み、後のフィリピン航空434便爆破事件・DHL機撃墜事件の際に活かされている。
シンガポール航空006便墜落事故
第10期第3話「TYPHOON TAKEOFF」
※事故内容
2000年10月31日発生。
離陸時に2本ある滑走路の左右を間違えて重機に激突。沖縄県在住の日本人男性を含む83名が死亡。
- 工事中の方の滑走路も灯火がつきっ放し
- レーダーがなく管制塔からは滑走路・誘導路上の飛行機は目視確認するしかない
など空港側の不手際も指摘されているが、クルーが台風の中で無理に出発しようとして焦った結果重大な見落としをした事が主要因とされている。
シンガポール航空にとってはハイジャック事件でハイジャック犯が死亡した以外では1947年創業以来初の死亡事故となってしまったが、この事故以降死亡事故は起こしておらず怪我人を出した事故もない。
ちなみにこの事故のあと空港にはきちんとレーダーが設置されているが、そのレーダーに映る便名は何の因果か上述のチャイナエアライン611便である。
シーズン19では、「真っ暗になっていた(=指示されたのとは明らかに異なる)はずの滑走路に誤侵入。長さが足りず離陸失敗」という本事故に類似した事例が紹介された。(但し、上記のコルガン・エア回で別の便名(親会社の名前)で紹介はされていた)
また、2017年にはサンフランシスコ国際空港でエア・カナダ759便が着陸時に誘導路へ誤侵入しかけ、待機中だった国際便4機の頭上をかすめるインシデントがあった。
この件はサンフランシスコ国際空港では28L/Rの平行滑走路があり、28Rへ着陸する759便の進入前に28Lが閉鎖されており灯火が消灯していた。
このため灯火が点灯していた28Rを28Lと、平行誘導路を28Rと誤認したものとされる。4機+759便の乗客は合計1000名以上。しかも遠距離便のため4機とも燃料満載。
もし事故に発展していれば5機による地上衝突に発展し、テネリフェの倍近い犠牲者を出す史上最悪の航空機事故になっていたかもしれない。
が、離陸待ち先頭の機長が759便が誘導路に進入しかかっていることに気付き管制に連絡、管制が素早く759便に着陸復行を指示し、759便もおかしいと思っていたのかすぐに着陸復行を行い事なきを得た。
アメリカン航空191便墜落事故
第10期第7話「CATASTROPHE AT O'HARE」
※事故内容
1979年5月25日発生。
オヘア国際空港を離陸直後のアメリカン航空のDC-10の第一エンジンがパイロンごと突如分離。そのまま機体は左に大きく傾き墜落。
現在でも9.11を除いたアメリカ史上最悪の航空事故である。
パイロン分離の原因は、エンジンの着脱が推奨手順だと手間も時間がかかるため、時間短縮のためにフォークリフト等を用いてパイロンごと着脱する非公式の方法を用いた結果パイロンに破損が生じたためであり、事故時に外れた第一エンジンについてはちょうど8週間前にメンテナンスをしていたばかりだった。
また、エンジンがパイロンもろとも分離した事で電源だけでなく左翼の油圧も喪失し離陸直後に急失速した上に、電源喪失により失速警報装置が作動しなかったためパイロットには失速していると分からず、エンジン喪失時のマニュアルの手順通りに機首上げを行った事で事態がより悪化してしまった。
事故が起きるその瞬間を撮影した非常に有名な2枚の写真があり、調査においても役に立っている。
上述のトルコ航空の事故からわずか5年でまたしてもDC-10が事故を起こしたため、事故後DC-10は全世界で飛行停止を食らった。結局直接的な原因は整備の問題だったのだが、そもそも推奨手順だとアホほど時間がかかる上に難易度も高かった*90のである意味では設計上の欠陥である。またかい
なお、全世界のDC-10が飛行停止していた事が功を奏し、緊急点検の結果、飛行を再開する前に同様の破損が存在するDC-10を6機見つける事ができた。
また、この機材にはコクピットの様子をモニターで見せる機能があったが、その機能のせいでまさに墜落するその瞬間を乗客に見せるというとんでもない事態になっていた可能性*91があったため、同様の機能はしばらくオミットされてしまった。
エールフランス447便墜落事故
第10期第13話「AIR FRANCE 447: VANISHED」
ボナン副操縦士登場回。
※事故内容
2009年6月1日発生。
ピトー管凍結から失速警報が鳴るも、ボナンが操縦桿を引き続けた事で本当に失速してしまいそのまま墜落。
本来失速時は機首を下げて、下降する勢いで加速させるのが基本である。実際もう一人の副操縦士は失速回復の基本である機首下げをおこなったもののボナンが引き続けた事でその操作が相殺されてしまい回復できなかった。
機長はベテランだったが交代で休憩に入っており、その間にコクピット内で誰が主導権を握るか混乱していたのも事故の一因とされる。
休憩から戻った機長はボナンに操縦桿を引かない様に言ったものの墜落の直前であり回復する猶予は残っていなかった。
当初高度が上がらない原因がわからなかった機長が、ボナンの「ずっと目一杯引いています!」と言う発言を聞いた時の表情とピント切り替え演出が何気に秀逸。
事故機のA330では商業運行開始後では初めての事故であり、レーダーの届かない大西洋のど真ん中で墜落した事もありブラックボックスの発見が難航。
捜索に2年の歳月と莫大な費用が投じられたが、そこまでして突き止めた事故原因があまりにも初歩的なものであった事は調査官達を唖然とさせた。
アメリカン航空587便墜落事故
第11期第5話「QUEENS CATASTROPHE」
※事故内容
2001年11月12日発生。
前方にいたJAL機から発生した後方乱気流に対して、現実離れした訓練を受けた副操縦士が方向舵(ラダー)を過剰操作し、その動きに耐え切れなくなった垂直尾翼が折れて住宅街に墜落。
件の訓練では乱気流で機体が最大90度に傾くという現実ではありえないシミュレーションを行っていた(通常は5度程度しか傾かない)。更にシミュレーターは訓練の効果を上げるために操作をしてもすぐには反応しない様に設定されていた。
この様な現実離れしたシミュレーションが作成されたのは、当時B737のラダーハードオーバー現象とラダーリバーサル現象*92が解明されておらず、それらによって起きた事故が後方乱気流によるものと推定されていた事が原因ともいわれている。
9.11からわずか2か月後の事故だったので、テロ再びかと大騒ぎとなっており、爆発物等による事件ではない事が分かるまではFBIも調査に参加している。
また犠牲者の中には9.11の時に世界貿易センタービルで働いており、ビル崩壊から辛くも生存したにもかかわらず事故に巻き込まれたという不運な乗客もいる。また、この事故を担当した調査官は現地に駆け付けた際にそこには祖父母が眠る教会がある事に気付く一幕もあった。
ヴァリグ・ブラジル航空254便墜落事故
第12期第3話「VANISHING ACT」
※事故内容
1989年9月3日発生。
自動操縦装置が制度変更に対応していない旧型だったために休暇明けで説明を聞いていなかった機長が混乱し、27.0°を意味する指示書の0270を自動操縦のセット時に270°と取り違え誤った方角に一直線。
明らかにおかしい状態にも関わらず機長らも管制も気づかず、おかしい事に気づいた乗客の訴えも客室乗務員からは「機長に任せれば問題ない」とスルーされ、結局燃料切れになるまで飛び続けて墜落。
当初乗客を生還させた英雄と称えられた機長はその後マスコミから「サッカーの試合をラジオで聞いていたのではないか*93」と報道されて一気にバッシングに遭い、
そのせいで事故調査官が機長らに事情聴取を行おうとしても「機長達に責任を押し付けようとしている」と操縦士協会の妨害に遭う羽目になっている。そこまでして庇ったのに原因の一端は間違いなく機長だわ、副操縦士はそれを知るや否や「自分は悪くない」と機長に責任を押し付けようとするわで、操縦士協会は馬鹿を見た形である。
生存者の「後部座席に移動しクッションをかき集めて体を覆っている乗客がいた」との証言に「メーデー民がいる!」と話題になった。
上記の表記を見ての通り、指示書の表示は小数点が付いていないという大変紛らわしい表記だったので、事故の反省を踏まえて後の指示書では小数点表記がされる様になった。最初からすべきことだと思うが、印刷機器の都合によるものだったのだろうか。
コンコルド墜落事故
第12期第7話「エールフランス4590便コンコルド炎上」(原題:CONCORDE - UP IN FLAMES)
※事故内容
2000年7月25日発生。
離陸する際滑走路に落ちていた金属片を踏んでタイヤがパンクし、吹き飛んだ破片の直撃で燃料タンクが破損して機体が炎上。
すでにV1を超えていたため離陸中止出来ず、そのまま上昇したが推力を失って進行方向にあったホテルに激突。
メーデーでは触れられていないが、『衝撃の瞬間』で同事故を取り上げた回では座席の肘掛が燃えたままガソリンスタンドへと落下していた事も明かされている。ガソリンに引火する様な落下位置ではなかったのが不幸中の幸いである。
原因となった金属片は直前に離陸したコンチネンタル航空のDC-10の物だったが、非正規のパーツだったうえに整備ミスまで重なったためパーツを交換して僅か16日で外れてしまっていた。なおコンチネンタルは最後まで過失を否定し続け、裁判でも無罪になった。
事故の約1年後にコンコルドは運航を再開したが、事故の影響と直前の9.11の煽りを受け収益が上がらなくなり、その後2003年に運航を停止し全機が退役した。1969年の初飛行以来最初で最後の墜落事故となった。
ファーストエア6560便墜落事故
第12期第10話「DEATH IN THE ARCTIC」
「フィクションかよ!騙された!」および「メーデーよくばりセット」の回。
※事故内容
2011年8月20日、北極圏にて発生。
機長が誤って自動操縦を解除してしまった上に方位磁石の調整を頻繁に行わなかったため*94に航空路が右にずれている事に気づかず、滑走路に着陸しようとして空港の側にある丘に墜落。
副操縦士は異常に気付いて18回も警告していたのだが経験が浅かったためか墜落の直前まで強い警告ができず、また機長も墜落直前まで警告の悉くを「大丈夫だ」と楽観視し続けたのも墜落の原因となった。
一方で現地ではたまたまカナダ軍が墜落事故を想定したフィクション軍事演習を行っていた*95ため、救助や調査に関しては異様な幸運に恵まれている。
- カナダ軍の他沿岸警備隊・地元消防団・医療関係者・TSB(
テレビ信州カナダ運輸安全委員会)・アメリカ海軍が参加する大規模な訓練だった。 - 訓練で使用する極寒地帯救助に必要な食料や衣料品といった必需品も潤沢に用意していた。
- 現地のカナダ軍が墜落事故発生の報を演習部隊に連絡。現地は昼間でも気温が氷点下に近く、迅速な救助が必要だったのだが、事故発生から僅か20分で救助隊が事故現場に到着し、3人の乗客を発見・救助した。
- 軍事演習に協力するために移動中だった事故調査官も一報を受けて事故発生から1時間後に現地入りし調査を開始。
何故かカナダ軍に「TSBですね?」と訊ねられた際の調査官の態度が無茶苦茶悪い - 元々空港にレーダーは無かったが、カナダ軍が演習用に一時的にレーダーを設置していたため事故機の動きを追う事ができた。
とあまりにも事故に対する備えが万全だった事からメーデーよくばりセットと呼ばれている。
また、エンディングが事故に対する嘆きや怒り・反省ではなく、生存者の中で最年少の少女が妹を失った悲しみに負けず明るさを取り戻し、共に生還した地質学者の女性がそれを暖かく見守っているという希望の残る後日談で〆られるという珍しい回。*96
エル・アル航空1862便墜落事故
第13期第3話「HIGH RISE CATASTROPHE」
※事故内容
1992年10月4日発生。
貨物と会社関係者の婚約者である女性の乗客一人を乗せたB747が、スキポール空港を離陸直後に突如右側のエンジン二基がエンジン喪失を起こし、更には油圧もごっそりやられてしまう。
ベテランのパイロットは機体を立て直そうと上空で悪戦苦闘していたが、空港に着陸させようと減速させた所で失速を起こし奮戦空しく機体を右側に傾けながら落下。そしてコントロールを失った機体はよりにもよってベイルメルメール地区の11階建ての高層アパートに墜落し、搭乗者全員とアパートの住人39人が亡くなってしまった*97。
実は数か月前にも中華航空(現チャイナエアライン)358便の貨物B747も墜落しており、欠陥の可能性も懸念される。
人が大勢住んでいた住宅街という墜落した場所が場所だけに、住民の精神を配慮して瓦礫は近くのゴミ捨て場に移送されてしまった。
其のため事故は迷宮入りしかねなかったが、近くのホーイ湖で釣りをしていた休暇中の警官が「エンジンが二つも湖に墜ちた」と衝撃的な目撃証言をする。それをもとに湖を捜索したところ、証言通りエンジン二基が発見された。メーデーでは珍しく目撃証言が事故原因の特定に大きく貢献した。「エンジン喪失」とは通常は単に機能停止を指すのだが、この事故では文字通りエンジンそのものを失っていた事になる。また、湖の捜索で前縁フラップも見つかった事から油圧もホーイ湖付近でやられた模様。
そしてエンジンの破損状態から”第三エンジンが翼から取れて斜め右方向に流れ第四エンジンに激突して翼からもいでしまう”というバードストライクならぬエンジンストライクが起こっていた事が判明。
これにより調査範囲が絞られ、第三エンジンを固定していたヒューズピンの金属疲労が原因と判明した。上述の358便もピンの欠陥によるエンジン喪失であった。
たった一つのヒューズピンが金属疲労で破損した事による大惨事に、再現ドラマでは調査官が「これ一つで、43人か…」と悲しげに吐き捨てるのであった。
事故後、例のアパートは取り壊され慰霊碑を建てられ、毎年10月4日には慰霊祭が執り行われる様になった。この日は慰霊碑上空では飛ぶのを控える様になっている。
UPS航空6便墜落事故
第13期第4話「FATAL DELIVERY」
※事故内容
2010年9月3日発生。
積荷が突如発火して空中で火災が発生、複数の管制塔や近くを飛んでいた他の飛行機の協力のもと着陸させようと試みるものの失敗して墜落。
当初管制官は事故機が飛んでいた近くのドーハ国際空港に降りるよう提案したのだが、機長は離陸したドバイ国際空港の方が施設が整っている事から引き返す事を提案。遠回りを決断したこの判断が結果的に墜落の一因になったと思われる。
- ドバイまで引き返す間に炎で内部機構がやられて手動操縦は機能停止
- 充満する煙で外はおろか手元の計器すら視認困難
- 無線も周波数を操作できないため通信は他の機を経由しての中継頼り
- 炎で機長の酸素マスクの酸素供給システムも破壊されて呼吸できなくなり、「予備の酸素マスクを取ってくる」と
死亡フラグを立てて操縦席を離れて案の定未帰還
というあまりにも絶望的な状況に陥り、更にはドバイ管制塔→バーレーン管制塔→周辺機→事故機と伝言ゲームをせざるを得なかった事で情報の伝達の遅れや欠落が発生し、滑走路への進入に何度も失敗してしまった。
それでもなお関係者のほぼ全員が諦めずに連携して機体を着陸させようと奮闘したものの叶わなかった物悲しさから、ヘリオス航空522便のケースと並ぶ鬱回として知られている。
事故機の墜落を察して呆然としながらも「…次は?」と指示を求める周辺機のパイロットとそれに「…レーダーから消えた」と答える管制官の絶望のやり取りを最後に関係者達のその後は一切語られず、インタビューにも応じていないが、彼らと遺族の心の平穏を祈るのみである。
しかし、それでも最後まであがき続けた管制官達の連携と副操縦士の奮闘は決して無駄には終わらず、住宅地への墜落を避けたのは副操縦士の操縦によるものだと調査官達も評している。
尚、積荷の正体は、リチウム電池だった。
メーデーでは触れられていないが1年後、同じくリチウム電池を積んだアシアナ航空の貨物便も積荷の火災が原因で墜落する事故が起きている。これ以降、リチウム電池の航空輸送に対する規制が厳格化される事になる。
また、UPS航空もこの悲劇を重く受け止め、防火機構の強化や片手で3秒で取り出し可能な*98フルフェイス型の酸素マスク、計器と窓の周りを覆う事で煙に巻かれても計器と窓を確認可能にするエアバックの実装などの対策を調査報告が出る前から実施している。
アトランティック・サウスイースト航空2311便墜落事故
第13期第9話「STEEP IMPACT」
※事故内容
1991年4月5日発生。
小型機の事故であったが犠牲者に著名な宇宙飛行士や元上院議員が含まれていた事もあり話題となった。
原因はプロペラの安全装置が一定条件下では働かず(室内の実験室内では正常に働いたが、外の環境の実機では機能しなかった)、その結果として危険な角度に曲がってしまうという製造元も予想外の出来事で、それが着陸前に発生した為に回復する猶予もなく墜落したのであった。
この回もナレーターの毒舌ぶりが披露され、パイロットが懸命に回復を試みるも「無駄でした。」とばっさり切り捨てた。
更に事故を担当した調査官のトム・ハウターはプロペラに問題があるとみてブラジルまで実験に赴くも、当初は想定した事態が起きなかったためナレーターに「ブラジルまで失脚しに来たのでしょうか。」と辛辣なことを言われている。そのせいでメーデー民から「ブラジルに失脚しに行った人」と呼ばれている。なお、総集編で取り上げられた時は尺の都合で毒舌の数々はなかったことにされた。
ちなみに、トム・ハウター氏はこの事故の最終報告を出した約2年半後に前述のUSエアー427便墜落事故の調査を担当する事になって悪夢を見る事になる。
TAM航空402便離陸失敗事故
第13期第10話「CARNAGE IN SAO PAULO」
※事故内容
1996年10月31日、コンゴーニャス空港で発生。
センサーの故障が原因で離陸中に第2エンジンの逆噴射装置が作動し、機体が右に傾いて住宅街に墜落。乗員乗客95名全員と地上の4名が死亡、多数の負傷者が発生した。但し、平日の昼間に発生したため、これでも地上の犠牲者は事故直後の予想よりも少なかった*99。
機体には逆噴射装置が誤って空中で作動した場合、そのエンジンのスロットルを自動でアイドルにするという安全装置が搭載されていたのだが、安全装置が作動した事を知らせる警報は搭載されておらず、しかも空中で逆噴射装置が作動するケースは10億時間に1回と見積もられていたため、訓練の必要性について問い合わせたTAM航空は製造元から「滅多に起きないので訓練不要」との回答を受けてこの安全装置についての訓練を実施していなかった。
そのため、パイロット達には第2エンジンのスロットルレバーがいきなりアイドルになった事と、機体が右に傾いている事しか分からず、「第2エンジンがアイドルになったために右に傾いている」と認識してしまった*100。
当然副操縦士は機長の指示通りに第2エンジンの出力を上げようとして安全装置に阻まれたが、逆噴射装置が数回開け閉めを繰り返したために安全装置がOFFになる瞬間が発生してしまい、スロットルレバーを全力で押し続けていた副操縦士は第2エンジンの出力をフルパワーにしたうえ、再びONになった安全装置がスロットルレバーを戻そうとする力にも打ち勝って出力を維持する事に成功してしまった。
その結果、第1エンジンがフルパワー、第2エンジンがフルリバースになった機体は経験豊富な機長でも立て直せるはずがなく、墜落してしまった。
「副操縦士が全力でスロットルレバーを押し、安全装置のワイヤーのコネクタを分離させる形で打ち勝った」という事で、リーブ・アリューシャン航空8便の事故とは逆に「筋肉が無ければ助かった」と言われている。
とはいえ仕様上は287kgf、実験では400kgfまで耐えられるコネクタだったので、実際には筋力というより骨格で支えていたものと思われるが。
サンジェット航空チャーター機墜落事故
第14期第1話「自家用ジェットの悲劇」(原題:DEADLY SILENCE)
※事故内容
1999年10月25日発生。「1999年リアジェット35墜落事故」とも。
飛行中の急な減圧でクルーが意識を失い、自動操縦で上空を1時間以上さ迷った末に燃料切れで墜落。
一時は市街地への墜落が危惧されたが、不幸中の幸いで機体は誰も居ない畑に墜落し、巻き添えによる人的被害は無かった。
チャーター主はプロゴルファーのペイン・スチュワート一行で、この事故により命を落とした。
事故は墜落前からテレビニュース等で報道されており、一時は市街地墜落前に戦闘機で撃墜する案まで考えられていた。
NTSBも早期からこの事態をモニターしており「墜落してもいないのに墜落地点への出張の準備をし、墜落までを見守る」という奇妙で悲しい経験をしたと担当調査官が語っている。
減圧その物の原因は特定できなかった一方で、減圧で警報が鳴った際の対応マニュアルが「『減圧原因を一通り分析してから酸素マスクを着けろ』という優先順位が明らかにおかしい代物で、マニュアルに従うと酸素マスク装着に行き着く前に酸素不足で失神する*101」というあまりにも本末転倒な欠陥を抱えていた事が発覚、調査官達を激怒させた。
アメリカン航空77便テロ事件
第14期第2話「9.11:ペンタゴンへの攻撃」(原題:9/11: THE PENTAGON ATTACK)
※事故内容
2001年9月11日発生。
かの有名なアメリカ同時多発テロ事件のうちの1つで、比較的マイナーなペンタゴンに突っ込んだ方の事件であり、日本どころか世界中の航空業界の常識を一瞬のうちに塗り替えた事件でもある。
事件の概要は様々な所で話題になっているので説明するまでもないだろう。非常に有名なハイジャックという事もあり他の回とはだいぶ毛色が異なるのが特徴。
この事件の際は国家非常事態宣言が出され、すべての民間機が地上に降り立った。もちろんこれはアメリカ史上初である。
番組には当日土壇場で77便から変更し助かった人も出演している。
テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故
第14期第3話「ボーイング747の衝突事故」(原題:DISASTER AT TENERIFE)
別名「テネリフェの悲劇」「テネリフェの惨事」。メーデー民的には残念機長ことザンテン機長や「あのバカ来やがった!」が有名。
※事故内容
1977年3月27日発生。
パンナムとKLMのボーイング747機同士が衝突し583名が亡くなった大事故であり、2020年現在において史上最悪の犠牲者を出した航空事故である。
複合的な要因が事故を引き起こしたとされており、その犠牲者数と補償の問題から何が致命的だったかは各国で意見が分かれているものの、主な要因として
- テネリフェ空港は滑走路が一本しかない地方空港だが、この日はテロの影響で近隣の空港が閉鎖されており多数のダイバートがあったため大混雑していた。更に事故の直前に霧が発生し、滑走路の状況がよく見えなくなった。
- パンナム機が指定された誘導路から出なかった。指定された誘導路は148度の急転回が2回も必要で、747では転回するのが困難だったため(調査官曰く「これ無理だろ」)、それよりも出やすい一つ先の誘導路から出ようとした。しかし余りに難しい指示をされたので、パンナムは管制官のミスと思い報告しなかった。
- KLM側の機長(ザンテン機長)がオランダの法律による勤務時間制限(免許取り消し処分もあり得る厳しいもの)が迫っていた事もあり焦っていた。
- また、彼はシミュレーター訓練の教官を長く務めており、訓練ではパイロットへの指導と合わせて管制官役も兼任していた。このためトレーニング症候群に陥っており、全てが思い通りになると思い込んでしまっていた。
- KLM機が管制承認(飛行計画についての承認)を離陸承認と誤解して滑走を始め、機長が機関士の意見を無視した。機関士はパンナム機が滑走路から出ていないと認識していた*102が、機長は出たと判断し滑走を続けた。
- 管制塔が交信の際に管制用語ではない「OK」や、管制承認で使用するべきではない「Take-off」*103を使っていた。
- 管制官はKLM機に待機する様に指示を出したものの、同じタイミングでパンナム機が管制塔と通信しようとした*104事で混線してしまい、雑音となってKLM機にその指示が聞こえなかった*105。
- この不完全だった通信により、管制塔「KLMは待機している」・パンナム「タクシー中であるとの警告が伝わった」・KLM「パンナムは退避し、離陸許可が出た」と三者それぞれが安全な状態にあると誤認してしまった。
等が挙げられる。
三者全員がやらかしてしまった訳だが、
最終的に調査官達は管制官の離陸承認を得ずに勝手に離陸を敢行した「ファン・ザンテンが悪い」と特にザンテン機長の行いが最大の原因だったと見なし、最終的にはKLM側が過失を認めた。
余談だが、事故機であるKLMの747は1973年に起きたドバイ日航機ハイジャック事件で爆破された日本航空の747(JA8109)の残骸から尾翼などの一部部品をKLMの機体に流用されていた。
一方のパンナム機は747の商用初飛行に使われた機体であり初期中の初期機を喪失する事になってしまった。
ガルーダ・インドネシア航空421便不時着事故
第14期第8話「RIVER RUNWAY」
第9期第12話「タカ航空110便」と同じ原因で起きた、事実上の後日談。もう同じ事故は起こらないと断言してたナンスェ……
※事故内容
2002年1月16日発生。
規格外の超大型積乱雲(レーダーが機能不全を起こすレベル)に入り込んでしまった事で、タカ航空110便緊急着陸事故の教訓を得て改良されたエンジンに想定降雨量の更に2倍もの雹雨*106が入り込み、両エンジンが停止。
更に機体のバッテリーが破損していたためエンジン再起動テストの度に電圧が下がっていき、電圧が足りなくなった結果嵐の中で電力も喪失。滑空状態で落ちていく絶体絶命の状況に。
しかしクルーの尽力によりジャワ島・ソロ川への不時着水に成功。
乗客乗員60人の内乗客は全員無事であったが、客室乗務員1名が着水時のショックで亡くなった。
残念ながら犠牲者が出ているためこちら側の分類となったものの、メーデー民からは犠牲者無しの事故例と同等の扱いを受けている。
この回は危機に直面した機長や乗客が(文字通り)神に縋る思いで祈りを捧げる場面が多く描かれ*107、事故後にも不時着を成功させた機長が「神に導かれた」と称賛を受けていたことから、メーデー民からは二重の意味で「神回」と呼ばれている。
なお、ガルーダ・インドネシア航空はこの5年前にはガルーダ・インドネシア航空152便墜落事故(第15期第5話「LETHAL TURN」)を起こし、更に5年後にガルーダ・インドネシア航空200便墜落事故(第13期第8話「FATAL FOCUS」)を起こしたため、後者の事故の後に一時EUへの乗り入れを禁止される程のバッシングを受ける事になった。他二つはともかくこの事故は想定外の雹雨とバッテリーの整備不良が原因であり、クルー側の奮闘で乗客乗員をほぼ生還させたためとんだとばっちりと言わざるを得ない
幸い、ガルーダ・インドネシア航空200便墜落事故の後にパイロットの訓練不足やパイロットへの報奨制度*108を改善して以降は事故を起こしていない。
マレーシア航空370便墜落事故
オリジナル版第14期第11話「WHAT HAPPENED TO MALAYSIAN 370?」/番外編3 第6話「コックピットの殺人者」(原題:KILLER IN THE COCKPIT?)
※事故内容
2014年3月8日発生。
現在もブラックボックスも乗客の持ち物も乗員乗客も何も見つからず、それどころかどこで墜落したかすらも判明していない未解決事故である。
メーデーでは最後の交信後に地上に航空機の位置を知らせるシステムが意図的に切られ、その後数時間レーダー網を掻い潜りながら西に飛行していた事から、機長が意図的にこれらの行動を行いその後墜落させたとする説を唱えているがコレも確証はない。
日本人犠牲者はいなかったが、マレーシア政府の要請を受けて航空・海上自衛隊や海上保安庁からも人員を派遣し捜索活動が行われるも空振りに終わった。その為か国内でも長いこと大きく報道されていた。
現在は民間の海洋調査会社に海底調査を委託して捜索が続けられている。
マレーシア航空はこの4か月後にウクライナで撃墜事件*109にも見舞われその影響で経営が大きく傾き現在も厳しい状況が続いている。
この回はメーデーでも珍しく日本では未放送回であったが他の故意に墜落させた事故共々総集編で紹介された。
中国国際航空129便墜落事故
第15期第3話「TURNING POINT」
※事故内容
2002年4月15日発生。台湾の航空会社である「中華航空(チャイナエアライン)」とよく間違われるが、こちらは「エア・チャイナ」の名前で知られる中国の航空会社である。
悪天候の中釜山の金海国際空港への着陸進入を誤り、付近の丘陵地帯に墜落。
直前に機首上げしてたため機体後方はある程度原型を残しており、後方にいた乗客を中心に乗客35名と機長と客室乗務員1人が生還した。
事故当時は悪天候だったため、南側進入ではなく周回して北側進入する様に管制官は指示していたが、周回進入時の旋回が遅いうえに速度が速すぎると明らかに手順通りに飛行していなかった。
基本的なミスだったためパイロットの経歴が調べられたが、副操縦士は事故機のB767の乗務を開始して2ヶ月と新人だったが、機長は6000時間の飛行歴のあるベテランだった。
しかし、機長は金海国際空港での周回進入経験がなく、シミュレーターにおける周回訓練回数も十分とは言えなかった事が判明。そこからボイスレコーダーを聞くと、互いに手順がよく分かっていなかったためか着陸進入時のブリーフィングを飛ばすというミスが発覚。
その後はある程度手順通りに進めていたが、周回進入タイミングの計測中に操縦を交代し、計測担当がいなくなって周回すべきタイミングを誤るという更なるミスをしてしまう。以降は互いの役割分担が曖昧となったため両者ともに混乱し続けており、これが致命的になってしまった。
この便には中国ツアーの韓国人一行が乗っており、ツアーの添乗員がホテルにパスポートを忘れて取りに帰るという大ポカをやらかして当日ファーストクラスにアップグレードする予定が後方のエコノミークラスになってしまうという失態を犯してしまう。しかしその結果ツアー客の9割が生還したというパッションフルーツ現象みたいな怪我の功名ともいうべき出来事が起きていた。
トランスワールド航空800便墜落事故
第15期第4話「EXPLOSIVE PROOF」
※事故内容
1996年7月17日発生。離陸直後に突如機体が爆発し空中分解、なす術もなく墜落。
空港付近で発生したため、すぐ近くを飛んでいた数便が事故の瞬間を目撃している。映画の元ネタにもなった、比較的著名な事故である。
丁度アトランタオリンピックの時期であり、あまりに突然の出来事だったために当初は米軍による誤射やテロ攻撃を疑われ(実際に犯行声明も送られている)、FBIも同時に調査に入った結果、
- テロ説を早々に否定し燃料タンクの爆発説を推すNTSB
- 証拠が見つかったとしてテロ説を推すFBI
とで捜査方針が対立した。
また、マスコミが目撃者のミサイルを見たという発言を報じた事で世情はテロ説が大勢を占め、NTSB的には相当な逆風の中での捜査となった。
このためバラバラになった機体を組み立て直すという荒業でNTSBは燃料タンクの爆発が事故原因と立証した。
爆発の原因はエアコンの室外ユニットが燃料タンクの付近にあったためタンクが異常加熱し燃料が気化、配線系統が経年劣化していた事で飛行中にショートし、更に低圧線と高圧線が一緒にまとめられていた為にサージ電流が発生しセンサーが爆発したものだった。
事故機の状況とされる場面を再現して実際に飛行したり、爆破実験を行ったりとこの回のNTSBは命がけな場面が目立つ。
ちなみにテロの物証とされた物は事故の数日前に実施された事故機を使用した爆発物捜索訓練の際に仕掛けられた物の残留物で、ミサイルと思われたものは空中分解している機体、送られてきた犯行声明は事故に便乗したいたずらだったとされる。
トランスアジア航空235便墜落事故
第15期第7話「CAUGHT ON TAPE」
※事故内容
2015年2月4日発生。
離陸直後のまだ高度が上がっていない状態で推力を失い、市街地のビルに激突してもおかしくない高度で滑空、最終的に高速道路(とそこを走っていたタクシー)をかすめながら運河に墜落した。
高速道路を走行していた車のドライブレコーダーに墜落前の数秒間が記録されており、鼻先数十mを墜落していく飛行機の衝撃的な映像は世界的にもニュース等で取り上げられたので覚えている人は居るだろう。
プロペラ機だったためこの映像により左翼側の第1エンジンが回転力低下を起こしていた事が判明している。
当初は市街地を避けて運河を墜落地点に選んだ機長を英雄視する向きもあったのだが…。
最終的な原因は二つあり、
- 右翼側の第2エンジンでトルクセンサーが回路の故障により、回転力低下と誤検知してプロペラをフェザー状態*110に変え、ちゃんと回転しているにも関わらず推力を得られなくなった。
- この主警報を受けた機長が操縦をマニュアルに変え、第1エンジンのスロットルをゼロにした。それを知った調査官は「正気じゃない」とドン引きしている。
本事故を取り扱った総集編のCM内でこの場面が映った際には本編とは違い日本語訳されていない関係で字幕が出てくるためやたら目に留まる。ついでに上記の通りこの字幕が出たままアエロフロート・ノルド821便墜落事故の機長の顔が映る。
これらにより機体は完全に推力を失い、フェザー状態の右翼側と異なり空気抵抗が大きくなった左翼側が下がる形で墜落した。乗客53名と乗員5名が搭乗していたが、パイロット3名を含む43名が死亡し15名が重軽傷を負った。
事前の検定では機長は緊急事態の適正が懸念されると言う結果が残っており、ディスプレイにトラブル発生が表示されていた第1/第2エンジンを誤認してしまったとみられる。
更に疑り深い性格だった為自動操縦を信じられずに手動操縦に切り替えた様だが、本機はプロペラ機としては当時最新鋭の機材であり、
後のシミュレーションでは同様の状態(第2エンジンオートフェザー)に陥った時、仮にパイロットが何も操作せず自動操縦任せにしたとしても、優秀な自動操縦により安全高度まで上がれたと判明している。
また第1エンジンのスロットルを下げる際も本来の手順では副操縦士のチェックが必要だがそれも行っておらず、副操縦士がチェックを促しても別の作業を優先して流してしまっている。疑り深いとは一体
なお、この回の中では触れられていないが、そもそもトランスアジア航空のパイロットは手順を無視した操縦が常態化していた事が判明している。
気が付いた時には第1エンジンは停止してしまっており即時の再始動は不可能。機長が「違う方を止めてしまった…?」との発言を残した時には全てが手遅れであった。
この1年前の2014年にもトランスアジア航空はトランスアジア航空222便着陸失敗事故(第16期第2話「BLOWN AWAY」)を起こしており、パイロットの過労による操縦ミスが原因と調査チームは見ていたのだが、皮肉にもトランスアジア航空235便墜落事故の発生により過労の原因である急速な業務拡大が判明し、事故の原因に辿り着いている。*111
そして2年連続で航空事故を起こしてしまったトランスアジア航空は経営が悪化し、翌2016年に運航停止・会社解散に追い込まれた。
エメリー・ワールドワイド17便墜落事故
第16期第1話「NUTS AND BOLTS」
※事故内容
2000年2月16日発生。
整備ミスで内部機構が壊れて右側の水平尾翼が上昇状態で固定されてしまい、離陸直後にコントロールを失って墜落。
調査に際してクルーの同僚が声の判別のために調査官と同意の上とは言えCVRに記録された同僚達の最期のやり取りを3日間に渡って延々聞かされ続けるという拷問の様な体験*112をしており、「今も彼らの最後の叫びが耳から離れない」と語るなど鬱回の一つとされる。
この様な体験をすると聞き取りを行った関係者はパイロットを続けられなくなる事すらあるため、協力を求めた調査官も事前に本当に聞くのか確認を取っており、すべてのやり取りの聞き取りを終わった後には落胆するクルーの同僚に「クルーは精一杯やった…あれが運命だったんです」と言うしかなく、「自分を大切にしてくれ」と気遣っている。一方で、貨物機にもかかわらず服装にも気を使う副操縦士(通称:服装重視)、妙にキャラが立っている事故調査官、「三流のトップ」という誉めてるんだかけなしてるんだかわからない発言*113等、シリアスな笑いがそこかしこに見られる事からネタ回の一つともされる。
CVRに残されていたクルーの「荷崩れを起こした」という発言から積み荷の荷崩れが原因だったファイン・エア101便墜落事故のデータと比較される事になり、その結果積み荷は関係ない事を突き止める場面もある。
エメリー・ワールドワイドは創業50年の歴史ある航空貨物会社だが、実の所は整備の質が悪くパイロット達からも「いつか事故が出て誰か死ぬ」と危惧されており、それを知った調査官からも「自分の知っているエメリー・ワールドワイドとは違う」と落胆された。
エメリー・ワールドワイドは死亡事故を起こしたのはこれが初めてだという弁解を行ったが、そんな言い訳が通用する訳もなく敢え無く運航停止へ追い込まれ、後にUPS航空に買収された。
なお、知人の最期のやり取りをCVRから聞く羽目になったというエピソードは他にガルーダ・インドネシア航空152便墜落事故(第15期第5話「LETHAL TURN」)でも取り上げられているが、こちらはよりにもよって調査を担当した事故調査官がクルー達の友人だった。しかもこの事故は原因の一端はクルーにもあったため、自ら死んだ友人のミスを暴かざるを得なくなるというこちらも拷問の様な体験をする羽目になっている。
スホーイ・スーパージェット100の墜落事故
第16期第5話「DEADLY DISPLAY」
※事故内容
2012年5月9日発生。
デモフライト中の機長が機体の宣伝に夢中になるあまり方位の入力を間違えて方向転換に失敗し、濃い雲で視界が利かずミスに気づけないまま誤った方位に突き進んで山腹に激突。
機体に搭載された最新鋭の対地接近警報はちゃんと作動していたが、近くに山がある事自体を知らなかった*114機長が警報の誤作動と勘違いして切ってしまっていた。
ちなみにこの警報装置、直前に機長自身が性能をアピールしていたブツであり、自分が宣伝した機体を信じていれば事故を回避できていたというオチがついている。。
また、管制側には事故機の登録がSSJ100ではなく誤って軍用機Su-30として登録されており、当該機が降下許可を求めた際には進路の先に軍の飛行訓練空域があったため、民間機なら場所的にあり得ない低空飛行も訓練飛行だと誤解され見逃された。
更に事故当日の管制は人手不足のため、担当管制官は一人で10件以上の管制を同時にこなしつつアシスタントとスーパーバイザーの代役も務めるブラック状態になっており事故機を見失ってしまった。
機長はこの事故以外では経歴に全く不備がなく「そんな乱暴な操縦をするとは思えない」と評される程の人物だったため、
同僚からは「こんな形で仲間を失ったのが本当に悲しい」「彼らが最後に何を思ったのかわからないが、せめて思う余裕すらなかったと思いたい」と悼まれている。
リノ・エアレース墜落事故
第17期第2話「DEATH RACE」
※事故内容
2011年9月16日発生。
アメリカ、ネバダ州リノで開催されていたエアレースで、競技飛行中のP-51ムスタング戦闘機の改造機「ギャロッピング・ゴースト」が飛行中に制御を失い、急上昇後に反転し降下、高速で観客席に墜落。
パイロット含む11名が死亡、負傷者多数というリノ・エアレース史上最悪の墜落事故になった。最近の事故であり、エア・レース中に起きた事もあって事故映像等は動画投稿サイトでも多く確認できる。
原因は固定ボルトの破損による左昇降舵のトリム・タブ脱落。このボルトは26年以上使用されており、ロックナットのゴムが経年劣化で緩んだ事で振動が発生、ボルトに金属疲労の亀裂が生じ、ついにレース中に脱落してしまった。
また、古い飛行機である当機は度重なる改造を施されていたものの、大規模改造後も碌にテストしていなかった。そんな状態で多数の観客がいる会場の上空を飛ぶという危険な行為は番組内でも厳しく指摘されている。(きちんとテストしていたチームもいる事はエンディングで語られている)
第二次大戦中の戦闘機、エア・レースという舞台、個人所有機の事故調査というメーデーとしては異色の回であり、「安全啓発の為に会場に来ていたNTSBの調査官のわずか100メートル手前で事故が発生、事故直後から数分で調査を開始する」という稀なエピソードが語られている。
また、犠牲になったパイロットのライバルでもあり親友で、元宇宙飛行士の経歴を持つエアレーサーの男性が事故調査に協力している。
再現VTRでテーブルに足乗っけて会話する行儀が悪い事故調査官、北海道の大通り公園にしか見えないアメリカの街並みが映るなどメーデー民のネタ的な要素でも印象深い回となった。
またスタッフロールの最後に「In Memory of Douglas Bladwin Crosbie」と字幕が映るが、これは2018年に亡くなった番組プロデューサーを指している。
なお、この時はなんとか存続したリノ・エアレースだった(この事は番組中で語られている)が、結局2023年大会を以て終了。(航空ショーとしては存続する模様)
そしてあろう事か、その有終の美を語る2023年大会のレース後に飛行機同士の衝突事故が発生しパイロット2人が死亡という最悪の形で幕を閉じる事になってしまった。
タロム航空371便墜落事故
第17期第6話「FATAL CLIMB」
※事故内容
1995年3月31日発生。
左スロットルが勝手にアイドリングに戻ってしまう不具合に起因する機体の傾きを副操縦士が立て直せなかったことで墜落。
事故原因は副操縦士のパイロットエラーには違いないものの、調査により判明したのは
- 不具合の発生は不規則的で、地上では再現できないため原因が解明できず、製造元も根本的な解決が出来ないまま即席の対処法(スロットルレバーを手で押さえる)の周知に留まっていた。
- 事故当日は機長がレバーを押さえる担当になっていたが、離陸直後に急病で倒れ、手を離してしまう*115。
- 副操縦士が動揺している間にスロットルの不具合が発現、機体が左へ傾き始める。
- 目の前で倒れた機長と壊れたオートスロットルの問題が同時に起きた事で副操縦士は混乱し、空間識失調に陥ってしまった。またこれらの出来事がよりにもよって左旋回中に発生したことも事態を急速に悪化させる要因となった。
- 更にこの日は曇りで視界が悪く、傾斜角170度に達した機体が急降下して高度2000ftを切るまで副操縦士は機体の危機的な状況に気づけなかった。*116
- 上記の出来事が立て続けに起きた結果、副操縦士が機長の異常に気付いてから僅か33秒で墜落する事となり、高度が下がり始めてから墜落までの時間はたったの19秒、当時の状況的に副操縦士が機体の致命的な状況に気付いてから墜落までは最大でも僅か3秒だった。つまり倒れた機長に「大丈夫か」と声を掛けている間にもう立て直しが出来なくなった。
という、副操縦士のせいだと言うには余りにも不幸かつ過酷な状況であった。
最終報告書に添付されたブラックボックスのデータより抜粋。原本では世界標準時表記だが、ここでは現地時間で記載している。
ナレーションの通り、一連の出来事はあっという間に起きたのである。
09:07:06 ローテート
(この間48秒)
09:07:54 機長がフラップを格納
09:07:58 副操縦士がスラット格納を指示(最後の正常シークエンス)
09:08:02 副操縦士が機長に呼びかける
09:08:03 機長の声(弱々しい)
09:08:08 機長のうめき声(これ以降、機長の音声なし)
09:08:16 最高高度(4627ft)に到達、高度が低下し始める
09:08:32 高度2000ftを切る
09:08:35 墜落(これは番組でも映っている)
「1分間……それで終わった」
再現ドラマではこの事実に事故調査官達が通夜状態になってしまい、副操縦士が対応できなかった事についてインタビュアーは「彼は優秀な人物だったが、大きな問題を二つ同時に抱えてしまった」と語り、
ナレーションも原因の1つ*117として副操縦士のパイロットエラーを挙げた上で「しかし、やむを得なかったと思われます」と擁護している。また視聴者からも「無理ゲー」と評されるなど、副操縦士への同情の声が多く上がった。
なお、原因の一つとなった不具合については製造元のエアバスが補修に努め、9か月後には不具合の解消方法を記した作業指示書を通知、更に1年後には補修が義務化されてその後不具合が再発する事はなくなった。
ユナイテッド・エクスプレス6291便墜落事故
第17期第12話「SLAM DUNK」
※事故内容
1994年1月7日発生。
夜中に5人の乗客を乗せて飛んでいたジェットストリーム 41が空港手前で急降下着陸をしようとしたところパイロットが状況を飲み込めずに失速させてしまい墜落した。
機体から火の手が上がり全滅してもおかしくない状況だったが、家族三人で乗っていた台湾人のうちの父親がパニック映画の主人公の如き活躍をみせて機体後方の亀裂をこじ開け、妻子と共に何とか脱出成功。この3名だけが生還した。
原因は試験に落ちがちでイライラしがちな機長と入社して間もなく機体にも不慣れな新米パイロットを組ませた事。当然ながらCRMが機能せず、その上機体の使用に慣れていなかったため、対気速度が落ちた事に対して適切な対処が取れず失速させてしまった。こういうシフトを組んでしまったユナイテッド・エクスプレスの過失も重いとされた。
一方上述の生き残った家族から「シートベルトのバックルがなかなか外れなかった」という指摘があり、調べてみたところ強く引いたままでは緩まないというベルトの欠点が発見され改善される事になった。家族の危機を前に火事場のバカ力を発揮し共に脱出成功した父親が、思いがけない改善をもたらしたのである。
パキスタン国際航空268便墜落事故
第18期第1話「KATHMANDU DECENT」
※事故内容
1992年9月28日発生。ヒマラヤ山脈にかかる雲海の中を本来のルートより低い高度で飛んでしまい、進路上にあった山肌に激突。
現場が標高2200メートルの高さにある急斜面という現地人ですら調査どころか移動するだけでも難儀する場所だったうえ、運悪くマイクの故障でボイスレコーダーからパイロットのやり取りが抜け落ちてしまったため調査が難航した。
最終的な結論は、
- 現場付近を降下して空港に着陸するルートは非常に複雑だった。
- 降下ルートを記したチャートは文字が小さいうえに乱雑で、どの高度がどの地点に対応しているのかパッと見わかりにくかった。
- コックピットにはチャートを留めるクリップボードが無く*118、角度的に見えにくい位置にチャートを置かざるを得なかった。
以上の3つの悪条件が重なった結果、機長がチャートを手に取って確認する際に誤ってチャートの一部を指で隠してしまい、最初の高度を誤認、これによりチャートが一段階ずつずれてしまったが、クルー達は複雑な降下手順に追われて計器を確認する余裕がなく、高度の矛盾を見過ごしてしまった、という物。その結果、最初の高度を誤認してからわずか3分で墜落する事になった。
また、当時のトリブバン国際空港にはレーダーが設置されていなかったため、管制官はクルーから報告された高度と実際の高度の食い違いを指摘できなかった。
ちなみに何故か調査の過程で生じた仮説のイメージ映像が通常の再現映像並に力が入っており、クルー役の俳優は結論含めて実に3パターンもの墜落の光景を演じる事となった。
また、本事故の約2か月前には同じくトリブバン国際空港にてタイ国際航空311便墜落事故が発生しており、同事故を扱った第15期第10話「タイ国際航空311便」(原題:THE LOST PLANE)の事実上の後日談に当たる…というより同時進行で人手が足りなかった事が明かされており、同じ調査官が掛け持ちで両事故を調査していた。掛け持ちした調査官役の俳優も続投しているあと再放送も多いので視聴者的にもそれがとても分かりやすい。
ちなみにそちらはそちらで標高3400メートルのほぼ垂直に切り立った崖というとんでもない場所に激突したためこの事故以上に調査が難航しており、現場に向かう途中で調査官の一人が高山病で亡くなるという二次災害まで起きている。
なお、トリブバン国際空港のレーダー未設置問題はこの事故でも原因の一つとなっている。どちらの事故調査報告書でもレーダーの設置を勧告しており、1998年9月にレーダー管制業務が開始された。
ウエスト・エア・スウェーデン294便墜落事故
第18期第2話「IMPOSSIBLE PITCH」
※事故内容
2016年1月8日発生。
機長側の計器にだけ間違った情報が表示されるトラブルが飛行中に発生。
内訳はピッチ・ロール・ヨー・対地速度。つまりXYZ軸と速度という、飛行に必要な情報の殆どが誤った状態。
機長と副操縦士の間で現状認識が食い違ったまま、間違った計器基準で鳴り響く警報に対処しようとした結果、本当にバランスを崩してしまい地面に真っ逆さまに墜落。
事故機には機長側と副操縦士側の計器が食い違った場合に警告が表示されるシステムが搭載されていたのだが、たった4秒表示されただけで緊急用の表示モードに上書きされてしまったため、クルーにはその警告を分析するどころか気づく時間すら与えられなかった。
更にこの便は夜行便であり、運悪くメモの確認のためにコックピット内の照明を点灯している最中に誤表示が発生したため、ガラスの反射等で外が見づらくなっており、街灯りや地平線などで自機の姿勢を把握する事も難しかった。
ユニー航空873便火災事故
第18期第3話「EXPLOSIVE TOUCHDOWN」
※事故内容
1999年8月24日発生。
機体習熟の為に副操縦士が操縦していたがうまく行かず、機体が揺れた為結局機長が引き継いで無難に着陸させた。
すると程なく客室の手荷物棚から爆音と共に炎が吹き上がり着陸滑走状態の機内はパニックに襲われた。それでもクルーの奮闘のおかげで乗員乗客は脱出に成功し、死者は台湾人の男性「古金池」氏一人のみで済んだ。
ちなみにこの古金池、かつて台湾の陸上スター選手として活躍したアスリート「古金水」氏の兄である。
……が、調査員が焼けた残骸を調査したところ、機内に持ち込み禁止のハズのガソリンが入った漂白剤のボトルと剥き出しのコードが付いたバイク用のバッテリーが発見される。
更にそれに基づいて手荷物検査の映像を調べた結果、2本の漂白剤の容器を含む手荷物を持っていたのが古金水だと判明、手荷物係の安全対策が不十分だったためすり抜けてしまった事が明らかになった*119。
事故だと思ったら有名人がやらかした事件疑惑が浮上する予想の斜め上の展開となってしまう。
気を取り直して密封したボックスの中にバッテリーと気化したガソリンを仕込んで揺らす実験をしてみたところ、やはり爆発が起き、この二つが火災原因と判明した。訓練中の副操縦士にはとんだとばっちりであったが、乱気流にもまれて機体が揺れた時に空中爆発が起こると全滅もあり得た為、不幸中の幸いだったともいえる。
刑事責任を問われた古金水の方はというと、一審では懲役10年が言い渡されたがその後不服を申し立て裁判を繰り返して、最終的に推定無罪という事で無罪を勝ち取るも2016年に白血病で死去。今となっては罪を兄に擦り付けて誤魔化したのか兄のやらかしに巻き込まれてしまった*120のか、はたまた彼の荷物は本当に漂白剤で容器にガソリンを仕込んだ謎の人物が別にいる*121のかは永遠にわからないであろう。
ちなみにユニー航空及び親会社のエバー航空は、この事故以外では死者を出す事故は起こしておらず(この事故にしても半分以上は空港職員の怠慢のとばっちり)、エバー航空は様々な航空会社審査機構から世界トップ10にランクインする優良航空会社と高い評価を得ている。
デトロイト空港衝突事故
第18期第4話「TAXIWAY TURMOIL」
※事故内容
1990年12月3日発生。
霧が立ち込めるデトロイト空港の滑走路上でノースウエスト航空1482便のDC-9が立ち往生しており、そこに離陸滑走中のNW299便がやってきて衝突。
1482便の機体を299便の主翼が切り裂く様な形になったが、幸い299便はまだV1前で離陸中止でき乗員・乗客とも無傷。犠牲者は1482便の8人に留まった。
この回では事故に関わるほぼ全員がミスをしている。
- 空港の誘導路のある交差点は案内標識に欠陥があり、検証班による検証時にすら視界良好にもかかわらず曲がるのに失敗した。
- 管制側は1482便が滑走路にいる事がわかっていたにも関わらず299便の離陸を止められなかった。地上管制は全機に警告を発したのだが、299便は既に出発準備で出発管制に切り替えており、しかも出発管制官は警告しなかった。
- 出発管制官が警告を出さなかった理由は、299便が離陸したと思いこんでいたからだが、299便はまだチェックリストを終えておらず、更に霧が濃くて離陸を迷っていた(つまりチェックリストを済ませる前に離陸許可を貰っていた)。
- 299便は滑走路の視程が濃霧で規定以下になっていたにも関わらず離陸を強行した。
- 1482便側の副操縦士には虚言癖があり、機長にはデトロイト空港に慣れていると発言していたが、実際にはほとんどタキシング経験はなかった。
- そのくせ事故後は「機長は誤解していただけだ」と責任を押し付けようとして事故調査官には初っ端から自信過剰で生意気とボロクソに言われる。
おまけに「自分は元空軍の中佐で戦闘機で2回脱出の経験がある」と機長に自慢したものの、調査官の中に元軍人がいたため即座に「戦場で2回も脱出してる中佐なんてどこの英雄だ?」と経歴詐称を見抜かれている。実際には元少佐で脱出経験も無かった。 - 機長はベテランだったとはいえブランク明け、副操縦士はDC-9の操縦経験が浅いなどクルーの組み合わせにも問題がある始末。
- 加えて副操縦士は仮採用であり、上記の自慢も「機長に媚を売っていたのでは?」と調査官に推測されている。また機長が温厚で気の強くない人物だった事もあり徐々に権威の逆転も起きた。最終的にデトロイトのタキシングに不慣れな副操縦士が先導した結果道に迷い1482便は滑走路で立ち往生した。
- 事故後機長は「パイロットは私の人生です」と言い残して引退する羽目になっており、調査官から「この機長は個人的には好感の持てる人物だと感じたが、機長としての権限を行使しなかったために自らの職務を破滅させてしまった」と評された。
副操縦士も退職に追い込まれたがその後消防士になったらしい。大丈夫?その消防士不吉すぎない?
様々な問題がありそれらすべてを見落とした事で起きた、調査官に言わせれば「ヒーローが一人もいなかった」事故であり、「現場猫回」と言われる事もある。
ついでに何故かナレーターまで事故機の名前を言い間違えるというミスをしており、前述の検証時の誤進入も合わせて「文字通り登場人物ほぼ全員がミスをした回」と言われる事も。
余談であるが、今エピソードに出演した元NTSB事故調査官、リチャード・ロドリゲス氏の最後の出演回である。(2020年2月27日逝去)
サウスウエスト航空1380便エンジン爆発事故
第19期第5話「CABIN CATASTROPHE」
伝説級の女性パイロットが登場する「女傑回」
※事故内容
2018年4月17日発生。
ラガーディア空港を離陸したB737が、上空9800m辺りで突然左エンジントラブルと急減圧を起こす。一旦傾いた機体を水平に戻し異常なエンジンの出力を下げて酸素マスクが要らない高度まで下げた所で操縦士達はCAの報告から女性の乗客が窓が割れ急減圧で外に吸い出された事を知る。
操縦士達が計算して吸い出された乗客を中に戻せる速度まで減速させ何とか傷だらけの乗客を収容。乗り合わせていた消防士ら一部の乗客が吸い出された乗客の手当てに尽力する一方で、機長達はアンバランスなエンジン出力やフラップを駆使してなんとかフィラデルフィア国際空港に緊急着陸できた。残念ながら吸い出された女性は心肺停止の後亡くなってしまったが、他の乗客は犠牲にならずに済んだ。
緊急着陸した後左エンジンを調べてみると、ファンブレードが金属疲労で破断しカウルに当たった事でエンジンが破裂し、破片がキャビンの窓や翼等に損傷を与えていた事が判明。
当機は2012年のオーバーホール時に蛍光染料による目視点検をパスしていたが、破断した部分を電子顕微鏡で観察したところ2012年よりも前に金属疲労が始まっていた事が判明。既存の点検法の限界により破断を見つける事が出来なかったのだ。
そこで、航空当局はより最新鋭の検査である超音波探傷試験を全機に行う事を推奨、これにより潜在的なひび割れブレードが23枚見つかった。
事故機を担当した乗務員達と犠牲となった乗客の救出作業に尽力した乗客は後に当時の大統領ドナルド・トランプに賞賛される。
なお、この機の機長を担当した元海軍少佐は史上初のF/A-18の女性パイロットで湾岸戦争時にはアグレッサー教官として参加し様々な勲章を貰い、その後も消防用飛行機や旅客機を長年飛ばしてきた歴戦の女性操縦士で、ナレーションからも「普通のパイロットではない」と紹介される程であった。
USバングラ航空211便着陸失敗事故
第19期第6話「MELTDOWN OVER KATHMANDU」
※事故内容
2018年3月12日発生。
トリブバン国際空港にて、滑走路を見失ったBS211便があわや管制塔に激突しかける迷走飛行をした末に滑走路を逸脱して大破。
管制塔の指示ミス等の要因もあったが、CVRによれば悪天候で滑走路が視認できていないにもかかわらず復航もせず、警報も無視して強行着陸に及ぼうとしていた事が判明。更にコックピットで喫煙したり、ステライル・コックピットを破ったりと問題行動も次々に発覚した。
これだけなら某最低回にそっくりだが、離陸直前の会話を調べたところ機長は地上スタッフに激怒したり急に泣き出したりと明らかに精神状態が不安定であり、発言から睡眠不足なども疑われる状態であった。
そこで機長の経歴を調べると過去に鬱病により空軍を退役していた事が判明。その後寛解して旅客機のパイロットとして勤務する様になったのだが、USバングラ航空はメンタルヘルスについての項目が自己申告だったため、機長の病歴を見抜けなかった。
機長本人の発言から考えると教官を務めていた頃の教え子から誹謗中傷を受けた事が精神状態が悪化した原因と考えられ、このままではいけないと3ヶ月後に退職する旨を伝えてはいたのだが、生活費を稼ぐため残りの期間は飛ぶ事を選んだ結果悲劇に繋がってしまった。
ちなみに副操縦士は入社して1年の女性パイロットであったが、機長からも気遣われており、精神不安定な機長へのケアを試みたりとこの手の事故にしては珍しく儒教的要素は抑えめだったりする。
上述のものも含め、第19期は女性操縦士が関わる回が3件とかなり多く取り上げられている。
インディペンデント航空1851便墜落事故
第21期第2話「Mixed Signals」
※事故内容
1989年2月8日発生。
現時点でポルトガル史上最悪の航空機事故である。
そもそもの原因は、副操縦士が管制官の指示した高度を聞き間違え、かつ偶然にも副操縦士と管制官が同時に喋ってしまったため、お互いの声が打ち消されて、間違いが起きたことに気づかなかった事。
しかし問題は、その間違いに気付くチャンスをことごとく無駄にした事である。
そもそも、その場で管制官が副操縦士に復唱を求めれば、すぐに間違いを訂正できた。
しかし管制官はこの時研修中の新人であり、ミスを犯しても仕方がない立場ではあった。
教官役の管制官もついていたのだが、よりにもよって肝心なタイミングで席を外すという失態を犯してしまった。
また、副操縦士や機長がおかしな設定高度に気付けば事故は避けられた。
だが、2人とも必要以上にリラックスして乗務していた上、着陸寸前まで私語を繰り返すと、ステライルコクピットルールが全く守られていなかった。
結果として、間違いに気付ける人間が4人もいながら、偶然と不注意で全員ことごとく見逃すという最悪の事態になってしまう。
更に、管制官が気圧を間違えて伝えた事が決定的に事態を悪化させたのだが、状況的に通常あり得ない数値だったにも関わらず、こちらも誰も気づかなかった(副操縦士は一応疑問を呈したが、機長に一蹴されてしまう)。
とどめに、地面に近づきすぎという警報が鳴ったにも関わらず、この会社では普段から正常に操縦しても警報が鳴るシステムで訓練していた為、今回も誤作動だと思われてしまう。
最初のきっかけは不可抗力だったにせよ、その後その間違いに気付くチャンスをことごとく潰してしまったという、正に悪い事が重なり続けた結果の悲劇だった。
シドニー・シープレーンズDHC-2墜落事故
第21シーズン第7話「Dream Flight Disaster」
※事故内容
2017年12月31日、オーストラリアのニューサウスウェールズ州で発生。
コンパス・グループのCEOだったリチャード・カズンズ氏とその家族5名を乗せ、休暇先のコテージ・ポイントからシドニーに戻ろうとしてたシドニー・シープレーンズ所属のDHC-2ビーバーが、コテージ・ポイント離陸直後に突如機首が下がり、そのままエルサレム湾という河の狭い水路の水面に墜落。パイロット含む6名全員が死亡。
残骸はすぐさま回収され、乗客の一人のカメラのデータが何とか復旧できたため飛行経路や機体状況はすぐさま解明できたのだが、航空経路は本来のそれとはずれているものの機体は正常でパイロットも経験や勤務態度や健康が問題なかったため、2年近くも調査が進まなかった。
が、ATSBが中間報告をまとめていた際ある人が「一酸化炭素中毒の可能性はありませんか?」と指摘してから謎が解け始める。
火災の形跡がなかったため薬物やアルコール濃度の方は調べた調査官も失念していたのだが、かろうじて残された操縦士の血液サンプルを調べた結果、血液中に脳の判断に悪影響の出る11%以上の一酸化炭素があった事が判明。『一酸化炭素中毒による操縦士の判断力の低下』が現実味を帯びたため改めて機材を調べたところ、エンジンのシリンダーに長期間の亀裂が見つかり、さらには客室とエンジンの間にある防火壁のボルト3本の欠落が発見される。
さらに操縦士の当日のスケジュールを調べたところ、新年前ということもあり大忙しだったため彼は遊覧飛行や他機の進路確保のタキシングの為かなりの時間該当機に搭乗していた事が判明。タキシング時は換気のため扉を開けていたという写真も発見されテストしてみたところやはり一酸化炭素が中毒レベルに上昇する事が裏付けられた。
また、当該機には一酸化炭素検知器も搭載されていたが音は鳴らず、パイロットが色を確認する方式で、信頼性に欠けるものであった。
なお、シドニー・シープレーンズの契約した整備会社の整備状況を調べたところ、似たような整備の欠陥は複数発見された。
【関連記事】
大韓航空機撃墜事件:第7期第5話「TARGET IS DESTROYED」で取り上げられた。
追記・修正は事故の解明により空の旅がまた一つ安全になった事と、もう二度とこんな事故が繰り返されない事を願いながらお願いします。
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▷ コメント欄
- 取り合えず膨大すぎて読みづらかったので分割して見ました。かなり雑なのはすいません -- 名無しさん (2020-07-22 11:53:23)
- ラパ航空3142便のはある意味故意に落とすより酷い -- 名無しさん (2020-07-22 13:18:34)
- ↑自分、初見でうわぁって声出したのLAPAぐらいだ -- 名無しさん (2020-07-22 16:06:19)
- 編集終わりました。分割しても項目内容多いですねえ -- 名無しさん (2020-07-22 16:10:22)
- ↑もういっそ、元項目にあった時と同様に折りたたんじゃってもいいのかも -- 名無しさん (2020-07-22 16:20:42)
- タロム航空の副操縦士気の毒すぎる… -- 名無しさん (2020-07-23 08:24:28)
- 123便は例えるならアクセルとブレーキのみで踏ん張ってたという -- 名無しさん (2020-07-23 09:07:40)
- ヒマラヤだがどっかで超能力的な力で証拠見つけたのってなんの回だったっけ? -- 名無しさん (2020-07-24 01:00:50)
- ↑タイ国際航空311便墜落事故やね -- 名無しさん (2020-07-24 08:58:04)
- ユナイテッド航空232便不時着事故は油圧系統全喪失だけど、日本航空123便墜落事故はそれに加えて垂直尾翼もないという。 -- 名無しさん (2020-08-07 02:00:49)
- ↑2 あれ番組中では周辺住民が墜落に気付いたけど通信手段持ってなかったから情報の到着に時間かかったって話だったけど -- 名無しさん (2020-08-14 01:18:48)
- ↑ って、墜落現場の情報の到着の場面じゃなくて何故か遺族が回路基板の事を聞きに来てその下からブラックボックスが見つかった場面の事だったか。余計な事言って申し訳ない -- 名無しさん (2020-08-14 01:30:03)
- メーデーの項目をきっかけに日航機事故について自分でも調べたりこの夏に出た関係者談話も読んだりしたけど乗組員は皆最善を尽くしていただけにホント辛いな。個別項目化されてもいいくらいにインパクトある。事故記録が活かされて後に命を救った事例があることが救いだわ。 -- 名無しさん (2020-08-16 15:18:20)
- 「大韓航空機撃墜事件」も取り上げられているのだから、記事にリンク張ればいいのに。 -- 名無しさん (2020-09-02 00:49:18)
- 今日の夜中のメーデーの再放送がタロム航空→UPS航空という視聴者を鬱にしたいとしか思えない順番で担当者出てこいとツッコミたくなった… -- 名無しさん (2020-09-10 18:05:20)
- これ編集がおかしくなってる? それとも自分の表示がバグってる? -- 名無しさん (2020-09-10 23:30:38)
- ↑編集ミスっぽい。とりあえず修正。 -- 名無しさん (2020-09-10 23:41:11)
- ふと思ったんだけど、日本関係の事故の項目は日本で起きたものと日本の航空会社が起こしたものに絞って列記した方が読者もイメージしやすいし項目もすっきりして見やすくなるんじゃないかな?もし反対無ければ編集したいんだけどどう? -- 名無しさん (2020-09-15 02:50:30)
- トランスワールド航空800便墜落事故のテロの物証とされたものって、訓練に使用したときの残留物じゃなかったっけ?番組中ではそんなようなことを言ってたと思うんだが。 -- 名無しさん (2020-09-22 01:28:45)
- ↑2 個人的には異論なし -- 名無しさん (2020-10-07 11:53:52)
- 注釈多すぎない?大した内容が無いようなのはただのカッコ書きにするかバッサリカットした方がいい気が -- 名無しさん (2020-10-13 01:22:56)
- 「ポトマック川の惨事」、この内容道徳の教科書に載ってたわ。思い出した……2人のヒーローに焦点が当たってたけど、こんな話だったんか。 -- 名無しさん (2020-12-17 17:03:25)
- UPS航空6便墜落事故編は観たが、ほんと皆死ぬ物狂いで最期まで頑張ってたのがね…つらい… -- 名無しさん (2020-12-18 12:22:46)
- ↑5今更だがトランスワールド航空800便墜落事故のテロの物証が訓練に使用したときの残留物って言ってたの、メーデーじゃなくて衝撃の瞬間の方だったわ。同じ事件扱ってるとごっちゃになるよね。 -- 名無しさん (2020-12-29 04:38:02)
- ルッツ機長が「無能」と言われるのは残当ではあるが、ヤクキメてトンだり問題はないなとかこれ以下のパイロットも結構いるのに彼だけ特段ボロクソ言われるのはある種のライン的な扱いなんだろうか これ以下はパイロットとして無能どころか問題外しかいない的な -- 名無しさん (2021-01-09 21:31:01)
- 無能扱いしたら無能に失礼な連中の宝庫だからな……>ルッツより下 -- 名無しさん (2021-01-09 22:30:01)
- TBSの「世界衝撃映像100連発」って番組でよく飛行機事故の話やってるけど、大抵「メーデーで見た」って感想になる。 -- 名無しさん (2021-02-15 23:07:20)
- いつの間にか100分軽く超えるとはなぁ… -- 名無しさん (2021-07-05 21:10:12)
- 取り合えず見やすいよう格納式にしてみました。見やすくなったかな? -- 名無しさん (2021-07-05 22:19:37)
- 格納式にすると検索できなくなって困るよね。 -- 名無しさん (2021-07-10 01:34:14)
- ルッツ、ボナン、ザンテンは無能機長シリーズの中でも実は弱い方だからな、それより下は犯罪者や無免許レベルだったりするし3人は特に名前が独り歩きしてる感じある、構成上の都合もあるが複合要因による引き金の一つでしかない場合もあるし、なんだかなって気分になるよ -- 名無しさん (2021-08-20 16:24:58)
- 「三流のトップ」この部分が取り消し線と被ってるせいでぱっと見「二流のトップ」に見える。その後の意味を考えるとそこまでは意味は変わらないからいいけど -- 名無しさん (2021-08-20 16:52:07)
- 機長やめてください!はまだないらしいね -- 名無しさん (2021-08-20 16:58:05)
- 流石に日本製ラジカセが時限爆弾の偽装に使われたパンアメリカン航空103便爆破事件(ロッカビー事件)までは日本に関係する事件・事故にはならないらしい。 -- 名無しさん (2021-08-23 04:04:58)
- ↑このページでの日本に関係する事件・事故の基準は「日本で発生(不時着先が日本国内の場合も含む)或いは日本の航空会社で起きた事件・事故」だからね。最初期の基準だと間違いなく日本関係に含まれてた(最初期の項はこのページにある「日本」という単語が出てくる事故は片っ端から日本関連の事故・事件に入れられてた) -- 名無しさん (2021-08-23 04:22:02)
- ブリティッシュ・エアウェイズってここに書かれてないブリティッシュ・エアウェイズ38便事故も合わせると3回犠牲者無しを取り上げられてるのか。なんか凄いな。 -- 名無しさん (2021-08-28 17:17:46)
- 読み進めてくうちに気分が落ち込むので、特に意図した配置でなければ犠牲者無しの(救いのある)話を最後に置いてもらえると助かる -- 名無しさん (2021-08-30 11:20:10)
- ↑2逆にトランスアジアは1年もしないうちに立て続けに事件を起こして倒産したので、”ダメな格安航空会社の典型”と見なされてそう・・・ -- 名無しさん (2021-09-09 08:39:07)
- 遂に19期の事故が。ナショジオで放送されるのいつだろうなぁ… -- 名無しさん (2021-09-27 17:10:43)
- アエロフロート・ノルド821便墜落事故のとファーストエア6560便墜落事故で「メーデーよくばりセット」の欲張りの内容が全く違うのが趣深い。 -- 名無しさん (2021-11-17 00:10:44)
- エアバス隠しコマンド大杉問題。どう役立てるつもりで仕込んだんだよ… -- 名無しさん (2021-11-18 10:28:58)
- ↑なんか面白そうだし… -- 名無しさん (2021-12-13 10:32:10)
- ザンテンとボナンは無能というよりも一つのミスが全て悪い方向に突き抜けたのが大きな原因だし、ザンテンは純粋に無能なだけでパイロットの職務はまっとうしてるわけで、アエロの薬中とかLAPAの何かもう色々終わってる連中に比べると100倍マシよ -- 名無しさん (2022-01-02 17:48:15)
- 拳銃によるパイロット射殺無差別殺人回と、MCAS回は(DC10の貨物ドア欠陥と同じく)ミスの内容が酷すぎる回にしたほうがいいかな? -- 名無しさん (2022-01-26 18:04:37)
- 22日の更新箇所が23日昼の更新によって先祖返りしていたので、再修正しました。 -- 名無しさん (2022-03-23 21:10:55)
- もうそろそろ全員生存回は独立した記事にした方がいいかな?衝撃の瞬間と違いわりとストレス少なく見ることができる回もあるということで -- 名無しさん (2022-09-02 18:11:20)
- ちょいちょいスティックシェイカーの意味がわかってないパイロットが出てくるけど、滅多に遭遇する事態じゃないから忘れちゃうんだろうか。 -- 名無しさん (2022-09-06 00:49:33)
- 四川航空8633便不時着事故が放送されるらしいな -- 名無しさん (2023-03-28 15:29:18)
- 「逆噴射」は原因が機長の精神疾患だから、番組も取り上げるのを憚ってるのかも -- 名無しさん (2023-04-29 14:41:40)
- ↑片桐機長が今現在も生きているから憚ってるかもしれない(TWA841便急降下事故は収録されたのが機長の没後) -- 名無しさん (2023-04-29 15:19:07)
- 信じられないかもしれないが、ナショナルジオグラフィックの親会社はなんと世界的な企業のディズニーなんです。 -- 名無しさん (2023-09-12 20:36:55)
- どうやら今年のリノ・エアレース中(「9月に」「リノで」「50年以上の歴史を持つ航空ショーで」「レース中に」なので多分確定)に衝突事故が起きてしまったっぽい。観客に被害は出なかったっぽいが、今度こそリノ・エアレースが死ぬんじゃないかこれ…? -- 名無しさん (2023-09-18 22:37:04)
- ↑今更だけど、もともと2023年大会でリノ・エアレースが終了だったのか。それにしてもなんて幕の下ろし方だ…… -- 名無しさん (2023-10-30 03:14:00)
- 文字数限界要対策 -- 名無しさん (2023-12-30 16:52:06)
- 日本で洒落にならない事故が起きたわ -- 名無しさん (2024-01-02 18:28:17)
- ↑そちらの事故に関しては乗っていた乗客は全員脱出したという事。ただぶつかった海上保安庁の飛行機は昨日起きた能登半島地震に合わせた任務に向かっていこうとしていた模様。岸田さんがプッシュ作戦を指示していたが…… -- 名無しさん (2024-01-02 19:21:18)
- ↑海上保安庁の飛行機に乗っていた6人、1人は脱出したが2人は死亡、機長も重体らしい。岸田首相が能登半島の被災地にプッシュでスピード重視で運べと指示した事と、空港関係者がアフターコロナで人手不足が相次ぎ最近ちょっとした事故が増えているとNHKのニュースで前放送していたから多分それも影響していると思う。この事故の能登半島地震の三次的災害じゃないか? -- 名無しさん (2024-01-02 20:18:41)
- 何にしてもここで取り上げられない限り関係ない話だし、情報がまとまるまで憶測で話すのはよしたほうがいい -- 名無しさん (2024-01-02 20:38:49)
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*1 当時の通信音声では、123便からこの旨を聞いた管制官が一瞬絶句しており、それだけ危機的状況である事が窺える。*2 元軍人ではあるものの民間でのパイロット歴が遥かに長いため他の事故でも見られる元軍人パイロットとは異なる。
*3 ちなみに、実際には緊急事態に陥った機長の精神的負担を慮った管制官が途中から母国語である日本語を使うように促した事で、以降の通信は例外的に日本語でのやり取りとなっている。
*4 日本人からすれば常識だが英語圏の国では馴染みのない風習である事から、第21期では「日本ではお盆」という話題が出た際にお盆とは一体どういうものなのかという解説が入った。
*5 実際には事故前の1983年頃から視聴率が低迷し、野球や特番による休止が頻発するなどいつ打ち切りになってもおかしくない状況であった。
*6 日本国内で運用された機体は離着陸回数が多いため経年劣化により状態が良くない機体が多く、退役後はスクラップになるケースが多いが、JALの747SRは最長でも機齢20年で退役したためスペースシャトル輸送機など転属した機体も多い。
*7 なおANA保有機の内2機はより高出力なエンジンに換装して航続距離を延長したり、機内設備を変更するなどした本格的な国際線仕様機に改造され、成田-ホノルル線や成田-シドニー線といった中長距離国際線に投入された。
*8 事実後述のトルコ航空の事故では離陸上昇中に油圧全喪失に陥りクルーは成すすべもなく墜落している。
*9 本番では成田やソウル、シンガポールなど東アジア及び東南アジア各地の7空港からアメリカへ向かう航空機11機・乗客4000人を標的とし、この事件で使われた爆弾の10倍の威力を持つ爆弾が使われる予定だったという
*10 事件当時はマニラ発セブ経由だったが、マニラーセブ間の運行はなくなっている。
*11 当時のカナダ第二位の航空会社。後にカナディアン航空と名を改めた後にエア・カナダに合併された。
*12 当時のインドではヒンドゥー教徒とシク教徒の対立が激化しており、事件の1年前にシク教過激派を排除すべくインド政府軍がシク教の聖地・黄金寺院を攻撃する「黄金寺院事件」が発生。攻撃そのものは目的を達するなど軍事的には成功したが、報復としてシク教過激派テロリストが当事件等の同時多発テロを引き起こした他、攻撃を命じたインディラ・ガンディー首相がシク教徒のボディーガードに暗殺されるといった事件も起きた。
*13 再現VTRの捜査シーンで、現場保全用の立ち入り禁止テープがなぜか兵庫県警のものだった事に由来。テープが上下逆向きに張られているおまけ付き。
*14 座金。ボルトとナットと共によくある穴の空いた円形のアレ。本来の使用目的はナットの緩み防止や部材の保護。
*15 機体が古く、酸素マスクが乗客の数より少なかったために必要な操作だった。
*16 不発弾の埋まっている地帯に突っ込み、下手をすると乗員が不発弾で爆死する危険があったため、消防車の通った轍を歩いて機体から離れた
*17 副操縦士の知らない間に基地跡地はカーレース会場になっており、よりにもよって当日はレースが行われて大勢の観客がレース終了後もキャンプを楽しむために現地に残っていた。またエンジンが停止していたのでエンジン音もせず、現地の人々は不時着まで
*18 あろうことか、映画の方はそんな内容にも関わらずNTSB調査官を実名で出そうとする暴挙に出ようとしたが、機長が「実際の彼らはそんな対応しなかったのに不公平だ」と猛反対して無事実名表示は阻止されたとか。残念でもないし当然。
*19 ちなみに、映画の冒頭は機長がまさにそうなった悪夢を見る場面から始まる。
*20 こう書くとギャグっぽく感じられるが、クルー達が必死にもがいた末の結果なので調査官はその時のクルーの心境に同情していた。
*21 一度着陸直前に不可能と判断して中断した。調査官からは「直前で問題に気付いても着陸したがるのがパイロットの心理で、ここで一度中断出来た機長は凄い」と称賛されている。
*22 第5期第1話「SLAMMED TO THE GROUND」でも終盤に事故機墜落の原因となったマイクロバースト探知のテストのために観測機がマイクロバーストに突っ込みナレーターからも「命を懸けて何千人もの命を救うのです」と評されたが、インタビューに応じた関係者が「実験は大変だったが、結果が出るのが楽しみだった」「最初は不安だったが段々マイクロバーストを見つけるのが楽しくなった」と言っているのでこの手の研究者がハイテンションでデータ収集に取り組むのはよくある事らしい。
*23 パイロットにとって飛行時間20,000時間は一つの目標とされているものの到達できるパイロットは世界的に見ても一握りしかいない
*24 意味もなくコントロールチェックを行った訳ではなく、故障した機体の操縦限界を測る事で着陸に伴うトラブルを最小限に抑える事ができた。
*25 これだけ聞くと普通の挨拶だが、出発空港に緊急着陸したのでジョークである
*26 インタビューで「着陸の方が着水より100万倍楽」とも言っている。波が大荒れの海面への着水となるため、ハドソン川よりも更に難易度が高くなると判断したのも理由の一つ。
*27 Wikipediaでは機長が自分にも同じ事をこなせるのかと真っ先に意識したサレンバーガー機長に匹敵する人物だと記載されている。
*28 事故が起きたのは午後5時頃だが、その日の朝に追加勤務を言い渡された時点で、全員15時間近く起きており、機長は直近の48時間で7時間しか寝ていなかった。
*29 各クルーの総飛行時間が、航空機関士が5000時間、副操縦士が15000時間、機長に至っては20000時間以上もあり、なおかつ評判も上々という、全員が非の打ち所のない経歴の持ち主だった。特に機長はナレーションから「超」ベテランと呼ばれ、破格の扱いを受けている。
*30 実際には効果があったが、突風が強すぎてリカバリーしきれなかったために効いていないと錯覚してしまった
*31 本人も「ありえないですよね」と自嘲している。さもありなん。
*32 ボイスレコーダーのデータに操縦中の内容が残されていなかったため、確認こそできなかったが自動操縦を伝える警報音は通常通り鳴っていたと考えられており、機長も副操縦士も認知バイアスにより気づかなかったと見られている。
*33 古くは大西洋無着陸飛行を初めて成功させたチャールズ・リンドバーグ等が受賞している
*34 但し本人は「着陸後にセキュリティの関係上毎度CVRを消しているが、事故時にやったかは覚えていない」と否定している。また、パイロットらの証言は物証と食い違っており報告書で大部分無視されてはいるがブレーカーの不正操作についてはほぼ状況証拠のため処分はされなかった。
*35 ちなみにこの機長がハイジャック事件に巻き込まれたのは本件で3度目である、そのため不本意な形ではあるが「ハイジャック慣れ」しており犯人に対し冷静に対応していた。当時のアフリカ情勢があったとはいえ不運としか言いようがない
*36 秘密警察に拘束され拷問を受けていた・オーストラリアに支援者がいると機長に話している
*37 犯行人数を水増ししたが速攻でバレる。凶器は現地調達の消防用の斧と、本物かも確証が持てない爆弾のみ。機長もこの爆弾は偽物だろうと思ってはいたが万が一を心配し口に出せなかった
*38 総集編では先に2つ目の事故が取り上げられ、後から最初の事故が取り上げられた。
*39 ドアに覗き穴が付けられ、数ヶ所に英語で注意書きが貼られた。しかし、殆どの荷物係は覗き穴の意味がわかっておらず、トルコ航空の事故の荷物係は英語が読めなかった。
*40 当然ながらアウト寄りのグレー。
*41 何とかブラックボックスは1週間以内に見つけられたが、機体の残骸は殆ど回収できなかった。
*42 フラッグ・キャリアのガルーダ・インドネシア航空はこの時はセーフだったが、この事故の僅か2ヶ月後にGA200便墜落事故(第13期8話)が起きたため結局ブラックリスト入りしてしまった。
*43 あちらは主に立地の問題で危険になっているのに対し、こちらは経営陣や職員の怠慢により危険になっている点が異なる
*44 航空関連の統計を取っているFlight Stats社の基準では、15分未満のズレであれば定時としてカウントされており、実際の運航でも数分程度のズレは定刻として案内される。
*45 インタビューでは「この事故でしかこの方法は使った事がない」と語っている。エンジン音の変化からエンジン出力の変化を推測するケースは時々あるが、音から出力値を推測したケースは他に紹介されていない。
*46 経営拡大を主導した社長がパンアメリカン航空の社長に転じ、以降は短期間で経営陣が何回も変わっていた。加えてそのパンアメリカン航空に値下げ攻勢を仕掛けてられている。
*47 ちなみに駆け付けたヘリは公園警察の救急の小型ヘリコプター。命綱もヘリのクルーが即席で作るなど万全の救助体制ではなかったが、パイロット達はそれでも自分達に与えられた使命を果たすために駆け付け、諦めかけていた生存者達を勇気づけている。またこの事件とヘリの活躍がきっかけで首都ワシントンの危機管理体制は大きく見直される事となる。
*48 救助隊のボートも駆けつけるはずだったのだが、氷が張っていたため近寄る事ができなかった。
*49 調査官には「外した方がマシ」とすら言われた。
*50 調査官曰く例外を除いて「空中でコンピューターの電源を切る事は絶対やってはいけない事」とのこと。当たり前である。
*51 電子式集中化航空機モニター
*52 再現ドラマ内では調査官が「もっとゆっくり、最初から説明してください」と整備士と思われる電話の相手を宥めている。
*53 「(操縦桿を)押し下げろ」もしくは「(機首を)下げろ」と言うべきところを「引き下げろ」と言ってしまったため、副操縦士は混乱してしまい最後まで操縦桿を引き続けていた。
*54 明言されていないが直接煙草を回してもらえなかったCAが煙草から出ている煙を吸って満足する描写があり、普通の煙草ではなく大麻もしくはマリファナだった可能性が高い。
*55 CVR音声では一応副操縦士が推力と速度をチェックした様子はあるが、フラップは完全に忘れられていた。
*56 デルタ航空をはじめ同様の事例では警報に問題があってそもそも鳴らなかったか、気付いた&理解はしたが対処できなかった、精神不安定で気付かなかったというケースばかり。正常な精神状態で鳴っている警報(しかも軽微な警報ではなくマスターコーションである)を無視したのは本件位である
*57 離陸決心速度の名の通り、ここまで加速したら滑走路上で止まり切れないのでもう後戻りはできない。V1後にエンジンが片方吹っ飛ぼうがDC-10の落とし物を踏もうがもう離陸するしかないのである。中止するならV1前に警報が鳴った時点でなければならず、それを無視したこのクルーはその点でも論外。
*58 気道熱傷を含め全身に60%もの大火傷を負っていた。死亡ラインが30%なので本当に奇跡的である
*59 ちなみに他の要因が大き過ぎたためか直接の原因としては取り上げられていないが、当日のスケジュールが過密気味だった事から疲労が溜まっていた可能性もある。実際冒頭で機長と副操縦士が過密なスケジュールを愚痴る場面がある。
*60 吹き替えでは「おつくろぎくらさい」などと翻訳されていた
*61 もちろんハイジャックを警戒しての発言である
*62 この字幕は直前に登場するトランスアジア航空235便墜落事故の調査官の台詞で本事故とは全く無関係。が、直後に本事故の機長の顔を映したのは間違いなく意図的なものであろう。
*63 法的には目的地までの燃料だけでなく、非常事態を見越して多めに給油しなければならない。つまり今回は法に則っていない訳で、ナンスも「これは明らかに犯罪行為です」と憤っている。
*64 第19期第6話におけるUSバングラ航空211便着陸失敗事故の機長の台詞。当然だがこのラミア氏は機長と対立していた同僚のことでラミア航空とは無関係。
*65 当時の防衛相によると「キロガ機長もそうだが、(ラミア社に勤めている)他の5人もボリビア空軍を退役している法的根拠はない。」とのこと
*66 コパ・スダメリカーナ優勝チームとコパ・リベルタドーレス優勝チームの対戦で、アトレティコ・ナシオナルは事故発生時点でコパ・リベルタドーレス2016年大会を制していた
*67 コパ・スダメリカーナ優勝チームとJリーグ杯優勝チームの対戦
*68 スイス航空は最初、オーストリア航空・KLMオランダ航空・スカンジナビア航空の3社と「アルカザール」と呼ばれる航空連合を結成しようとするが、各社間で折り合いがつかず頓挫。次にデルタ航空・シンガポール航空と包括提携を結ぶ事で航空連合「グローバル・エクセレンス」をスタートさせたが、当のスイス航空を含む3社とも別の航空連合に加盟する航空各社と提携を始めてしまったため、これも事実上空中分解してしまう。最終的に後述する「ハンター戦略」で資本提携した航空会社などと自社のマイレージサービス「クオリフライヤー」を発展させる形で航空連合「クオリフライヤーグループ」を発足させ、その盟主に収まった
*69 「ハンター戦略」と呼ばれるもの。これは他社との提携ではなく出資や買収でシェア拡大を狙うというものだったが、そうして傘下に収めた航空会社の多くは業績が悪く、スイス航空本体の経営に打撃を与える事となった
*70 第12期第4話「SIDESWIPED」で紹介された事故。1992年6月6日発生。事故原因は585便の事故とは関係がなく、姿勢指示器の電線の損傷と、その問題に対処するためのスイッチの仕様がシミュレータと実機とで異なるという問題に起因する操作ミスだった。
*71 これらの不具合のために追加された訓練の内容は説明されていないので、訓練内容が一致しているかどうかは不明。
*72 管制官に呼び出されたエンジニアが与圧スイッチが自動になっているかクルーに質問していたが、既に酸欠状態にあった機長はその指示を理解できなかった。
*73 但し彼自身も副操縦士に酸素マスクを付けた後に一度コクピットを出て行くという不可解な行動を取っており、酸欠状態の影響が出ていたと見られている。
*74 事故発生から約6時間程経っても乗員・乗客の名簿を公表せず、それに激怒した被害者家族の一部が事務所に入ろうとして小競り合いになり負傷者を出す等。
*75 再現映像では墜落の瞬間に空軍機のパイロットが目を伏せてヘルメットのゴーグルを下げるというやるせない心情を描いた描写が挟まれている。このパイロットは調査官の要請に応じて再現飛行を行った際に再現機の横を飛び、自分が見た人物が客室乗務員だった事を証明している。
*76 これが光っていない=前輪が出ていない可能性があったため、着陸を中断していた。ここまでの判断は正しかったのだが……。
*77 但し「管制側が別のトラブルに忙殺されていた」「当時の管制の職務としてコクピット側への高度の確認がなかった」「自動操縦が操縦桿を押しただけで解除される事をパイロットに周知されていなかった」事も原因ではある。
*78 とは言うものの、事故が起きて自分のミスかもしれないと思った際の心境を「家族が遠くへ行ってしまう気がした」と語り、マスコミに犯人扱いされた事に参って調査官が無実を証明してくれた事に心底安心したとも語っており、かなりのトラウマになっている事も窺える。
*79 一応機長も伝票が見当たらない事は認識していたが、その後の対応は管制塔に丸投げしていた。
*80 更にシートベルトも「墜落の衝撃で外れなくなるかもしれない」と考えて外した。
*81 これは単に尺がなかっただけかもしれないが。
*82 当然磁気データは「0と1で表される2進数」であり、1KBのデータですら8048桁に及ぶ。1秒のデータを抜き出すのに1日がかりと言う気の遠くなる作業である。
*83 BEAが調査の結果、パイロットの責任と判断したが、パイロット側はそれに反論し、独自に調べた結果ブラックボックスが回収時と解析時の写真を比較すると後者の方が古ぼけている様に見えたため、改竄を疑われた。
*84 副操縦士の発言。本人は単に速めの速度で降下する事への冗談として言ったのだが、皮肉にもこの発言の直後に事故が起きた。
*85 調査官からはそもそも検査官が職務の範疇を越えた対応をした事も批難されている。
*86 番組中では管制がかなり混乱した様子が描かれるが、一応事故報告書では事故機の帰還可能性には影響なかったと結論されている。後述するが実際離陸した時点で生還はほぼ絶望的であった。
*87 当然これほどの火災事故なので殆どの紙類は燃えてしまっており、しかも「残骸から見つけた」ではなく「風で流されていた」との言い回しから、実際は内部告発の可能性がある
*88 最強の拳銃として名高い大口径の拳銃
*89 一方で航空業界では緊急着陸時の乳幼児の安全基準がなく、客室乗務員はユナイテッド航空の規定に従って「床に寝かせて毛布で包み、親が押さえつける」事を指示するしかなかった結果、不時着時に宙に投げ出されてしまった乳幼児が出ており、最終的に乳幼児4名中1名が亡くなっている。その指示をした客室乗務員はその後乳幼児用の座席を航空機に用意する運動に身を投じている。
*90 推奨手順通りにエンジンとパイロンを分離するには多数の接合部を外す必要があり、同時に外す非公式手順に比べて難易度が高い上に工数にして200時間もの差があった。
*91 電源が喪失していた以上モニターも機能していなかった可能性もあるが、乗員乗客が全員死亡しているため真相は不明。
*92 第4期第5話「HIDDEN DANGER」で放送された3件の事故の原因。これらの事故の最終報告が出されたのは1999年~2001年。副操縦士が問題の訓練を受けたのは、前回同じ操作をした7年前よりも更に前である。
*93 実際に管制については本当にラジオでサッカーの試合を聞いており、注意力散漫だったとされる。
*94 北極圏を飛行する機材は北極と北磁極のズレによる影響を受けやすくコンパスがずれる事が多い
*95 その為本当に墜落事故が起こったと知らされた際に演習部隊は完全に一瞬呆気に取られ、演習に協力していた調査官も「これは演習にリアリティを持たせるための演出なのか?」と疑ってしまうシーンがある
*96 一方でインタビューに応じた生還者の関係者が少女の親ではなく親戚のおじさんという辺りに娘を一人失った遺族のやりきれなさが伺える。
*97 アパートの倒壊規模から当初は数百人の犠牲者が出たと推測されたが、出かけていた人が多かったため予想よりは犠牲者数は少なかった
*98 機長が操縦席を立たざるを得なかったのは操縦席から予備の酸素マスクまで手が届かなかったためである。
*99 インタビューに応じた地元住民の両親は裏に抜け道を作っておいたため火災から逃れることができ、無事に息子と再会できた
*100 加えて、離陸滑走中にオートスロットルの故障が発生しており、手動に切り替えていたものの「オートスロットルの異常のためにアイドルになった」という先入観を持ってしまっていた。
*101 酸欠は自覚症状が出にくいうえに思考力が著しく低下するため、当事者の判断任せだと手遅れになりやすい。
*102 管制塔とパンナム機との「滑走路を空けたら報告せよ」「OK。滑走路を空けたら報告する」の交信はKLM機にも聞こえていた
*103 現在のルールでは実際に離陸を許可する時とそれを取り消す時にしか使ってはいけない。
*104 管制塔がKLM機に「OK」と言った後2秒間無言になったので、交信が終了したと誤認したため。また、直前の管制塔とKLM機との交信が離陸承認にも聞こえる内容だったので、急いで現状を伝える必要があった。
*105 KLM機の「離陸します」に対して管制官の「OK…離陸スタンバイ、また呼びます。」の「OK」だけが聞こえた。パンナム機の発信は「まだ滑走路に居る」と言うものであり、どちらか一方でも完全な形で通じていれば悲劇は防げた可能性があった
*106 あまりの雹の量に、対地接近警報が地面と誤認して警報を鳴らす程だった
*107 再現ドラマやインタビューでは「まだ死にたくない、家族の元へ帰らせてくれ」「乗客を救う力を与えてくれ」と死に物狂いで祈る様子が語られている。特に機長はインタビューでこの事を思い返した際に今にも号泣しそうなほど表情を崩しており、覚悟を決めた後は「着水する時は恐怖など感じなかった」と語る一方でエンジンが両方停止した時の出来事がトラウマになっている事が伺える。
*108 一例としてかつては燃料を節約したパイロットの報奨を出しており、無理な操縦を行う温床になると見なされ廃止など。
*109 こちらもメーデーの第16期4話「DEADLY AIRSPACE」で取り上げられている
*110 回転しなくなったプロペラの空気抵抗を軽減する為にブレードを進行方向と水平にする機能
*111 パイロット達の手順を無視した操縦についてはこの回で語られている。
*112 しかもCVRの最初に記録されていたのは同僚達の日常のやり取りだったため、思わず笑みを浮かべてしまうという生々しい場面がある。
*113 空耳ではないかとも言われるが、直後に「エメリーは大手とは違う」と話が続くため、「三流のトップ」で正しいと思われる。
*114 事前のブリーフィングでは伝達ミスで山の存在が伝えられず、地図にも何故か件の山が記載されていなかった。
*115 以後、機長の音声は一切なく、この時に死亡してしまった可能性すらある。また、健康診断では機長は健康だったとされており、兆候は全くなかったと思われる。
*116 事故調査に協力したタロム航空の指導教官はインタビューで「せめて晴れていれば…」と嘆いている。
*117 「スロットル不具合」「機長の急病」と並ぶ3大原因としている
*118 大抵は操縦桿の中央にクリップがある
*119 其の検査官は殺虫剤の缶やキャンプ用の燃料ガス缶までは没収したが漂白剤の中身がガソリンだという可能性までは見抜けなかった。当時の規定でも中身を確認すべきだったのだが…
*120 とはいえその場合もスプレー缶という可燃物を持ち込もうとした時点で兄の手荷物に不審を抱くべきではあった
*121 何せバッテリーの方は完全に空港の監視映像に映っていなかったのだ。機内に持ち込まれた漂白剤の容器が古金水の2本だけとは限らない
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