賭博堕天録カイジ 和也編

ページ名:賭博堕天録カイジ 和也編

登録日:2019/12/27 (金) 01:48:06
更新日:2024/05/16 Thu 10:39:54NEW!
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一生に一度…!

奇跡の夜…!


今日がそうだろ…………!





賭博堕天録カイジ 和也編とは、福本伸行による漫画作品。



【概要】

週刊ヤングマガジンにて2009年27号から2012年11号まで連載。全10巻。


賭博堕天録カイジ』の続編。前作からしばらくの休養期間を経てから連載が開始された。
以前のシリーズは前作最終回から設定上は数ヶ月経過した状態で開始していたため、前作最終回から直接続く形で物語は開始されるパターンは地味に初。
実際な話、タイトルも堕天録のまま『和也編』と追加しただけなので、堕天録自体は全く完結していない。


前作は題材の難しさやシナリオの展開速度の鈍化もあって賛否分かれたが、本作も作品評価は前作以上に賛否が分かれた。


本作は前作までとは異なって全10巻で完結し、続編の『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』へと続く。
タイトルで「和也編」と銘打たれているが、実際は和也との最終決戦が描かれるのは次作に持ち越しとなった。
なお、本作は全10巻で終了した事でカイジシリーズの全13巻終了の法則が破られることになった。


【作風】

◯カイジがギャンブルの参加者ではない

本作のカイジにもギャンブルは関わるが、以前までとはギャンブル勝負のやり方が異なる。


勝負内容は、和也が用意したギャンブルを観覧し、その結果によってカイジと和也がどちらの主張が正しいのか決めるというゲームである。
つまり、カイジが用意されたギャンブルのプレイヤーとしては参加していない
結果としてカイジがギャンブルを行わずにシリーズが完結した初の例となった。
まあ、後のシリーズ作品にはそもそもギャンブルすらしなくなる作品も出てくる訳だが…。


和也との最終決戦が引き伸ばしにされたと解釈した読者も多く、シナリオの展開速度が遅いこともあって批判も出た。


◯作中作の登場

和也執筆の小説作品『愛よりも剣』、美心執筆の漫画作品『ループイカジくん』などの作中作が複数描かれる。
歪んだ世界観であるカイジシリーズの作中作がまともな内容のはずはなく、どこかしら毒のある要素を含んだ作品となっている。


◯破戒録以来の1シリーズで2つ以上でギャンブルの展開

「17歩」の1つで終わった前作とは異なり、1シリーズ内で再び複数のギャンブルが描かれる展開になった(「愛よりも剣」と「救出」の2つ)。
ただし、「愛よりも剣」は和也の小説(過去の実話)という形式での描写であり、カイジが何らかの形で関与して行われたギャンブルではない。


【あらすじ】

前作で村岡との変則二人麻雀「17歩」の勝負に勝利し、4億8000万円の大勝を収めたカイジ。


兵藤和尊の息子・和也から勝負を持ちかけられたカイジは、運の津波が来ている雰囲気を確信して決戦の場へと向かう。
しかし、決戦の前に人間を信じない和也の残虐なギャンブルプロデュースを聞かされ、更に和也の悪趣味な自作小説を読まされる。
和也に殺された人間を思って悲しみと正義感の怒りに震えるカイジだったが、精神的に揺さぶりをかけられていた。


だが、かつて自分を思いやった石田や地獄でもプライドを見せた利根川の存在を思い出し、和也の人間観を完全否定。
人間を信じない和也、信じるべき強い人間の存在を訴えるカイジ、両者の主張は真っ向から対立。


その対立する2人の理論はどちらが正しいのか、和也が用意したギャンブル・友情確認ゲーム「救出」にて確かめることとなった…。


【主な登場人物】

◇主要登場人物

CV:萩原聖人
演:藤原竜也
前作で村岡に勝利して得た4億8000万円を手にし、黙示録で散った仲間の仇討ちを理由*1にギャンブルジャンキー思考で和也との勝負に挑む。
和也の残虐非道な所業に怒りと悲しみを覚え、彼の訴えるネガティブで極端な人間論を否定する。
ギャンブル中毒は悪化しているが、本作でのかつての仲間や敵を想って優しく熱い人間論を訴える姿は主人公らしくカッコいい。


  • 兵藤和也

CV:山口勝平(パチンコ版)
前作でカイジに勝負を仕掛けてきた、兵藤和尊の息子であるサングラスをかけた青年。推定年齢18歳。
ギャンブル開始前、自身が主催する『和也プロデュース』なる残虐なギャンブルを紹介した。
小説家志望であることも明かし、自身の実体験を元にした小説も読ませるが、胸糞悪い内容故にカイジに酷評された。
人間の信頼や強さを信用しておらず、その点でカイジと口論に発展したため、勝負前に急遽友情確認ゲーム「救出」による人間実験を実施する。


狂気的なサディストだが、父親の威光から生じる人間関係による疑心暗鬼に悩む一面を垣間見せる。
10代男性らしい雰囲気の言動や態度を見せることも多く、父親と異なって部下に対する扱いも悪くない。


  • 光山

「救出」ゲームのプレイヤーの一人。経営者の中年男性で、チャンとマリオの雇い主。
帝愛グループ傘下の高利貸の多重債務者だったがB型肝炎が原因で臓器を売れずに地下送りになりそうだったが、和也に身柄を買われてチャンやマリオと共に「救出」ゲームに挑む。
ゲームでは絆を見せていたが最終的には和也の策略に陥り、本作の裏切り枠としてチャンやマリオを絶体絶命に追い込んだ。
裏切り後はそれまでの性格が一転、開き直ったのか人間性が残念な事になる。しかも24億脱出編の再登場時には…。


  • チャン

「救出」ゲームのプレイヤーの一人。光山に雇われていた中国人の青年。
光山の借金返済に協力しようとして、和也に光山やマリオと共に身柄を買い取られた。
中国の貧しい農村の家庭で次男として生まれたが、一人っ子政策の影響で無戸籍状態であり、10歳で親元を離れて劣悪な労働に身を置いていた。
やがて戸籍を購入する夢を持ったことで本を買い日本語を必死に学び、裏社会のルートで日本に来日した。


  • マリオ

「救出」ゲームのプレイヤーの一人。光山に雇われていたフィリピン人の青年。
光山の借金返済に協力しようとして、和也に光山やマリオと共に身柄を買い取られた。
母国のフィリピンではスモーキー・バレー出身であり、スカベンジャーとして少年時代を過ごしていた。
兄であるアントニオに関する悲劇がマリオの人生観を作り、「金なんてゴミだ!」と言い切るシーンもある。


  • 坂崎孝太郎

CV:二又一成
演:生瀬勝久
前作で新居に居候するカイジを追い出したかつての仲間。
一人酒でカイジを「悪魔」「人格破綻男」と散々な蔑称で呼ぶなど、居候していたとは言え人生の恩人に酷い感想を抱いている…間違っていないけど。
カイジが手切れ金の300万円を使い果たして帰還してくるのではないかと激しく恐れている。


CV:久保ユリカ(パチスロ版)
カイジに恋をしている坂崎の娘。自宅を追い出されたカイジを思って一筋の涙を流していた。
2000円~3000円程度のお小遣い(パチンコ代)を時々カイジに貢いでいることが判明する。
漫画を執筆している事も判明するが、その漫画はカイジとの関係性を元ネタにしたギャグ漫画だった。
美心はカイジの社会不適合者的な面も含めて好きらしいが、父親もそりゃあカイジ追い出すわという話である。
カイジが嫌々なのに美心のデートに付き合っていたのは、そういった計算や負い目があったからなのかもしれない。


  • 三好智広、前田

CV:遊佐浩二、梶雅人
前作で恩人のカイジを裏切って村岡に協力するが、その村岡の敗北で計画がおじゃんになった二人組。
村岡の愚痴に付き合われて帰れず、呆れながら心の中で殺意すら抱いていた。
その際の村岡は確かにとんでもなく呆れたくなるウザさだったのだが、元を辿れば三好達の自己責任である。
カイジの心中では安藤と同様の扱いとなり、トラウマ的存在になっている。


CV:木下浩之(パチンコ版)/中尾隆聖(パチスロ版)
前作でカイジに敗北し、土地や自宅含めて4億8000万円の大損害を受けてしまった人。
敗北後に三好や前田を愚痴に付き合わせ、あまりにもウザすぎる態度に彼らを呆れさせた。
自殺すると喚いているが、実際は挙動が激しすぎて全く自殺しそうな雰囲気ではなく、その点もツッコまれている。


◇回想での登場人物

  • アントニオ

マリオの兄。希望のない生活でも神を信じて生きていた。
ホセじいさんの隠し財産の存在を知るが、あえて負担にならぬようにホセじいさんと距離を置く。
その後、ホセじいさんを殺害しようとするペドロを止めようとするが、誤ってペドロを殺害した上にホセじいさんも死ぬ。
呆然自失となりながらも、彼らの死と向き合って弔おうとするが、ゴミの山の下敷きとなり死亡した。
死後、マリオはアントニオが金を自分に託していたことを知る。


  • ペドロ

マリオの故郷のスカベンジャーの青年。アントニオと対照的に気力がない。
隠し財産を知ると、一度も訪ねなかったホセじいさんの自宅を連日訪問するようになる。
アントニオに隠し財産が託されようとするのを知ると、ホセじいさんを激高して殺害するが、同時にアントニオに殺害された。
真相を知らない住民達からは、失踪したように見えたことからホセじいさんの金を奪って逃げたと推測された。


  • ホセじいさん

マリオの故郷のスカベンジャーの老人。バブル時代の日本で出稼ぎをしており、マリオ達にその思い出話を自慢していた。
マリオが日本語でコミュニケーション可能なのも、このホセじいさんに日本語を教えられたためである。
彼らに隠し財産を知られると、何かの縁だと思って他者に託すことを決意し、以前から自分に親切だったアントニオに譲ろうとする。
しかし、それを知ったペドロに殺害され、財産は最終的にマリオの元に巡ってきた。


  • マリオの母親

マリオとアントニオの母親。ホセじいさんに出稼ぎ資金を提供するようにアントニオと頼みに行った所で悲劇に直面する。


  • 不良連合J・F・K

J・F・K(ジャパン・不良・ケンカ同盟)なる、暴力団も一目おく構成員三名の半グレ集団。和也が同級生とキャバクラで宴会を開いている際に襲撃しに来た。
帝愛グループ総帥の息子である和也を誘拐して身代金を奪った後、和也を海に沈める計画を立てていた。
そこまで考えていてるのに誘拐対象の和也を特定する容姿の情報が曖昧だったが、和也の連れていた同級生やキャバ嬢が全員裏切って和也を売った。
そして和也を連れ去る途中で最終的には和也のボディガードをしている黒服によって形勢が逆転し、リンチされた。
しかし、J・F・Kに関する一連の出来事は和也の人間不信を加速させてトラウマの一つとなった。


CV:家中宏
演:光石研
カイジの回想でのみ登場。回想シーン面は電流鉄骨渡りでチケットをカイジ託した際のやり取り。
和也の人間論を聞いて安藤や三好を思い浮かべた直後にカイジが思い出し、和也の理論を否定する根拠となった。
死後も石田はカイジが人間不信にならないように支えてくれていると表現できる。


CV:白竜
演:香川照之
カイジの回想のみで登場。回想シーンはあの焼き土下座の場面。
地獄でも意地を貫き通した強い人間としてカイジが思い出し、それを思い出しながら話すカイジは泣いていた。
利根川は「悪魔」としてカイジの強いトラウマになっているが、同時にカイジの優しい人間観を確固たる物にしているようだ。
和也は石田や利根川の存在を理由にカイジが自身を否定している事を察したが、それは勘違いではないのかと指摘した。


◇作中作での登場人物

  • 組長

小説『愛よりも剣』の登場人物。暴力団の組長の高齢男性で、肌が汚いブサイク。
亜理沙を気に入って5000万で囲おうとするが、その金を違う若い男と共に駆け落ちによって奪われかける。
これに怒って2人を捕らえて拷問ゲームをさせ、最終的に2人を実質殺した。


この組長のモデルは和也本人。しかし、心境に関しては異なる模様。
一部のファンの間では、組長の容姿が和也というよりも父親に近い描写であることから、複雑な和也の心理を指摘する意見がある。


  • 亜理沙

小説『愛よりも剣』の登場人物。組長を裏切って駆け落ちを狙うが失敗に終わったホステスの女性。
性格は自己中心的で醜悪だが、愛よりも剣の提示されなかったルールに気が付くなど頭が回る点もある。
しかし、自己中心的で保身に走ったが故に最後の最後で達也の報復を受けて死亡した。
実在のモデルの女性が存在する。


  • 達也

小説『愛よりも剣』の登場人物。亜理沙と駆け落ちしたクラブのボーイ。
亜理沙よりも人間性はまだ優れているがヒーローとして自己陶酔している面があり、徐々に亜理沙に愛想を尽かした態度を取り始める。
最後は亜理沙に致命傷を受けるが、辛うじて残っていた最後の力で亜里沙を道連れにした。
実在のモデルの男性が存在する。


  • イカジくん

美心の漫画『ループイカジくん』の登場人物。モデルはカイジであり、デザインは元ネタそのまんま。
改心を恋人の女性(美心モデル)に決意するも、最後のおねだりとして金を貰ってパチンコで摩ってしまい、謝罪の絶叫をするという行動を繰り返す。






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  • ここ数日でカイジの記事が増えて嬉しいな。欲を言えば登場するギャンブルの解説も欲しいところ -- 名無しさん (2019-12-27 09:03:32)
  • 「いくら俺の親父が凄くても俺の小説を面白くすることは出来ない」とは言っていたが正直文才あるように感じないよな -- 名無しさん (2019-12-27 10:18:23)
  • ↑「文章はまだ稚拙」とかはまあ作中でもカイジ視点で言われてたし…たぶん地の文であろう「当たり前だっちゅーのこのクソ女」とか「女は死にませんでした」とかをあの坊ちゃんが書いてると思うと何か可愛い…可愛くない? -- 名無しさん (2019-12-27 10:48:56)
  • ↑でもカイジは「異様なほどの迫力ある」とも言ってる、リアリティと言うか実体験元にしてるからなんだろうけどな -- 名無しさん (2019-12-27 11:23:56)
  • でも実体験から書けるのは親父のおかげだよね… -- 名無しさん (2019-12-27 11:58:21)
  • まあキャバクラでの和也さんゲームの件には同情するわ -- 名無しさん (2019-12-27 15:28:21)
  • まあそもそも本名で出してる時点で、父親が知ったら勝手に後押ししそう -- 名無しさん (2019-12-28 17:06:30)
  • というか周りが絶対忖度するでしょ -- 名無しさん (2019-12-28 20:44:24)
  • あの父親なら全社員に買うように強制するやろなあ -- 名無しさん (2022-08-12 12:36:43)
  • カイジをギャンブル漫画として読んでる人には不評だろうけど人間の心理描写が好きな自分はめっちゃ面白い話 -- 名無しさん (2023-12-25 09:48:51)

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*1 和也は兵藤の息子であるため、その息子から搾り取れば供養になるだろうという理論

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