登録日:2018/10/14 Sun 12:31:27
更新日:2024/03/26 Tue 11:19:56NEW!
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諸星大二郎 中国 犬肉 動物虐待 漫画 諸怪志異 狗屠王 吏部尚書 月刊コミコミ
狗屠王(くとおう)は、諸星大二郎の漫画『諸怪志異』のエピソードの一つ。
単行本では『諸怪志異』のシリーズに纏められてはいるのだが、厳密にいうとこのエピソードは当初から『諸怪志異』として書かれたものではなく、
元々「月刊コミコミ」(白泉社)1984年6月号に読切漫画として掲載された作品であり(『諸怪志異』は「週刊漫画アクション」(双葉社)で80年代後半に連載)、
後年の単行本収録に際して『諸怪志異』の一篇扱いになったという経緯を持つ。
登場人物
- 王
髭面の男性。普通の犬をまるで人間のように二足歩行で芸をさせる術を使い、日銭を稼いでいる。
術をかけた犬を使い終わった後に必ず殺すことから狗屠王(くとおう)の異名で呼ばれている。
本作の語り部でもあり、若い頃にとある道士と出会ったことを発端とする物語を旦那に話すこととなる。
食事に関しては割と意地汚い。
- 道士
数年前に王が出会った道士で、彼に犬を操る術を伝授した。名前は董玄子。
その際にとある凶行を行ったことで、術により栄達を我が物とするが、後に彼自身の身の破滅にも繋がる事に……
- 旦那
王を邸宅に招いて彼の術を観覧した男性。恐らくそれなりに高い立場の人間であると思われる。
本人曰く、若い頃は苦労したらしい。
- 小僧
王が雇っている少年。犬を捕まえるのが上手いらしく、去年頃から使われているとのこと。
術をかけた犬を屠殺する仕事もしている。
エピソード解説
舞台は昔の中国、とある屋敷の中庭……そこで、奇妙な光景が繰り広げられていた。
一見すると何の変哲もない犬、それがまるで人間のように二本足で立ち、芸をしていたのだ。
その光景を、2人の男性が卓につきながら眺めていた。
座っていた男性の内、身分の高そうな旦那は、近所から捕まえさせてきた野良犬が、軽々と芸をしている目の前の光景にただ驚くばかり。
そしてともに卓につく髭面の男……王は、頭を垂れて、自身にできるのは恥ずかしながらこの術だけだと謙遜する。
曰く、何年も前に誰とも知らない怪しげな道士から、この術を教わったのだそうだ。
当の道士とはどんな人物だったのか、興味津々の旦那に対し、王は術を手にするまでの経緯を語り始めた。
王が術を手にする前……当時、彼は博打うちと付き合ったり、こそ泥の仲間に入ったりしながら、流れ者として各地を放浪していた。
そんなある日、暑さを避けて街道を離れた林の中へぶらりと入ったところ、異様な光景に出くわした。
なんと、一人の道士が、一匹の犬を人間のごとくヒョコヒョコと二足歩行させ、焚き木の準備をさせているではないか。
薪を集めさせ、かまどを作らせ、火を起こさせ……とてもではないが、普通の犬ができる芸当とは思えない。
王が道士に、大した芸を仕込んだもんだと話しかけると、当の道士はこの光景を見られたことをあまり快く思ってなさそうな顔で振り返る。
とはいえ見られたのなら仕方ないと言うと、道士は先ほどまで歩かせていた犬の首を刎ねて殺し、その首を鍋の中に叩き落とした。
驚く王に対し、道士はこの犬は先ほど捕まえた野良で、煮て食おうと思ってその準備を自分自身にさせていたところだったと話す。
曰く、子供だましの術に過ぎないのだそうだ。
共に犬鍋を囲む王と道士だったが、王はどのような修行をすれば先の犬を操る術を使えるのか興味津々だった。
道士は、特定の薬を餌に混ぜて犬に食わせた後、簡単な呪文だけで誰にでも可能だと返す。
王は自分にもその薬を分けてくれないかと道士に懇願するが、道士は流石に困り顔だ。
とはいえ、一時とはいえ同じ釜の飯を食った間柄、道士は自分の仕事を手伝うことを条件に薬の譲渡を承諾する。
道士曰く、近場に一軒家があり、今夜そこは身重の女房と、老婆の2人だけになるとのことだが……
その夜、当の家に侵入した2人は、老婆を縛りあげ、腹の膨れた女房を拉致する。
森の中に連れ出した女房を一糸纏わぬ姿にし、道士は王に女房を暴れないよう抑えさせると、
小刀を取り出し、その腹を掻っ捌いて殺し、中の胎児を取り出すという暴挙を敢行したのだ。
流石の王も、道士のあまりの凶行を目の前にし、恐れ戦く他なかった……
道士曰く、これから彼が使う術には五ヶ月の男の胎児が必要不可欠であり、それを用いて栄達を思いのままにするのが狙いだそうだ。
王に対し、自分の弟子になれば舎人くらいには出世できると誘うが、王は拒んで約束の薬を要求。
道士は一度薬を使った犬は必ず殺すように王に厳命し、薬を譲渡。王は「あばよ!人殺し道士!」と捨て台詞を吐いて去っていった……
何はともあれ、こうして犬を操る術を手に入れた王は、野良犬に芸をさせて見物人から日銭を稼ぐ日々を送る事となった。
犬の芸は中々の評判で、術を見せた後に必ず犬を殺すことから「狗屠王」の異名でも呼ばれるようになったのだという。
ここまで話したところで、旦那は王に対し、今まで術を使った犬は全て殺してしまったのかと尋ねる。
すると王曰く、一匹だけ殺さず仕舞いのがいたとのことで、何でも薬の節約を考えて一匹の犬を使い回そうと考えていたところ、
その夜の内に縛っていた縄を自分で解いて逃げてしまったのだそうだ。
王は、美味そうな白犬だったのに惜しい事をしたと、当時の事を振り返る。
王は今日もまた、先ほどまで芸をさせていた野良犬を始末するよう、一人の小僧に命令する。
曰く、犬を捕まえるのが上手い少年なので、去年から雇っているのだそうだ。
そして、旦那が所用で席を立ったと見るや、誰も見てないのをいいことに王は意地汚く食事をガツガツ食いこむ。
すぐさま戻ってきた旦那に対して恥ずかしそうな表情を見せる王、旦那は例の道士とは金輪際なのかと尋ねたところ、
王は薬をもらってから何年もした頃に都の大通りで見かけ、それからの話を語り始めた。
都の大通りを歩いていた王が偶然目にしたもの……それは、豪勢な馬車に乗った、かつての道士の姿だった。
通行人曰く、彼は吏部尚書の董玄子で、今に左僕射にもならんという異例の出世を遂げているとのことだ。
風の噂では、怪しげな術で太子に取り入ったという話も流れているそうだが……
道士が本当に術によって栄達を我が物にせんとしているという事実を前に、王も驚愕を隠せない。
それに引き換え、手伝った自分は犬の芸で日銭を稼ぐだけということに勝手に腹を立てた王は、
例の件をネタに金を強請ってやろうと道士の住居へと足を運ぶことを決意する。
……が、邸宅に辿り着いた王が耳にしたのは、当の道士がその日の内に急死してしまったという情報であった。
調べに来た役人が、道士が普段から大切に持っていた箱の中から五ヶ月くらいの胎児のミイラを見つけたという話も流布され、
人々は「いやはやとんだ吏部尚書だぜ」と話し合っていた。
ふと、人々の喧騒から離れた王は、小道にしゃがみこんで、ただひたすらに震えている老人の姿が目につく。
王が何をしているのかと尋ねると、老人は自分の見た怪異のことを王に話した。
曰く……「道士の邸宅の塀の上を、血塗れの胎児を抱いた、腹に穴の開いた女が駆け抜けていった」と。
と、いきさつを一通り話したところで、王と旦那のいる部屋に、煮え滾った鍋を持った人影が入る。
旦那曰く、先ほど席を外したのは、先の犬を料理するよう命じていたのだそうだ。
ふと、旦那は「ときに術を使った犬を殺さないでおくとどうなるのでしょうね?」と王に尋ねる。
王も前例がないため答えあぐねていると、人影は「こうなるのじゃないですか?」と言って鍋を机の上に置いた。
そこで料理されていたのは……先ほど犬を始末しにいった小僧だった。
驚いた王が人影の方を振り向くと、そこにいたのは……先ほどまで芸をしていた犬が、人間の服を着て立っていた。
驚愕している王の目の前で、旦那の顔もまた、人間のものから一匹の犬のものへと変化するのだった。
「おぼえてませんか狗屠王さん 私があの時のうまそうな白犬ですよ」
二匹の犬が王を見下ろす場面で物語は終わるため、彼のその後の運命は定かではないが、
術を使った犬を殺さなかった場合の結末として「調理された人間」が提示された以上、恐らく王もまた……
「時に、このWikiにおける追記・修正のルールを破って荒らし行為をするとどうなるのでしょうね?」
「さあ……あっしにもどうなるのか……」
「こうなるのじゃないですか?」
ドン!!
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