TGV(高速列車)

ページ名:TGV_高速列車_

登録日:2018/05/01 (火) 16:40:51
更新日:2024/02/19 Mon 13:59:56NEW!
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フランス 高速鉄道 tgv 高速列車 車両 鉄道 標準軌 sncf 2階建車両 新幹線のライバル



TGV(テジェヴェ)とはフランス国鉄(SNCF)が運行する高速鉄道。名称はフランス語で高速列車を意味するle Train à Grande Vitesse(ル トラン アグランドゥ ヴィテス)の頭文字に由来する。
よくフランスの新幹線とも言われるが、新幹線とは似ているようで案外違う。


勇者特急マイトガインに登場するガードダイバーのレスキュー特急のモデル。



【新幹線と違う点】

  • 新幹線は全区間専用の線路を走る*1が、TGVは都市部では在来線に乗り入れる
  • 新幹線は編成全体の車両にモーターを装備する動力分散方式(電車式)だが、TGVは両側の先頭車に強力なモーターを装備する動力集中方式(機関車式)
  • 新幹線はいわゆるミニ新幹線以外は在来線の車両よりも大きめな車体だが、TGVは在来線と同じサイズ
  • 新幹線は営業運転と大差ない条件で高速記録を樹立*2し、軌道に対するダメージも小さかったが、TGVは営業運転とは大きく異なる特別に整備された車両、軌道で速度記録を樹立している。高速試験列車が通過した後の軌道はボロボロ


【営業運転開始まで】

フランスにおいて高速列車の計画が浮上したのは1960年代のこと。当初はホバークラフトのように、空気を吹き付けて車体を浮かび上がらせるアエロトランや磁石の引力・反発力を利用する磁気浮上鉄道が検討されたが、金がかかりすぎるとか、そもそも技術的に不安定とか色々な問題があったので結局普通の鉄道を選ぶこととなった。
最初は機関車にジェットエンジンの親戚であるガスタービンエンジンを積み、発電機を回してモーターを動かす方式が検討され、実際に試作車も作られたが、オイルショックの影響で石油価格が高騰したため量産車は発電所から供給される電気を架線に流し、パンタグラフで車両へ取り込む一般的な電化方式へ変更された。
1981年9月にパリとリヨンを結ぶ路線が開通し、最高速度260km/hでの営業運転を開始。営業最高速度260km/hは新幹線を大きく上回り、世界中の注目を集めた。



【TGVネットワーク】

TGVはフランスの首都であるパリを中心に、フランス国内の主要都市同士や地続きになっているドイツ・イタリア・スイス・ベルギー・スペインへ、更にドーバー海峡をトンネルで超えてイギリスへも乗り入れている。
また、ドイツの高速列車であるICE、スペインの高速列車AVE、フランス・ベルギーなどが共同運行するタリスなどもフランス国内へ乗り入れており、国際列車を中心に乗車前に保安検査を行うことがある。



【TGVの車両】

TGVは基本的に両側に強力なモーターを装備した機関車を連結し、中間車はモーターなどの動力設備を持たない客車となっている。客車は台車が連結器の役割を果たす連接車となっている。
フランスは全体的に地形がつるぺた、もとい平らなのでトンネルが少ない上、国土も広いので日本の新幹線のように複雑な先頭形状を採用していない。


  • TGV Sud-Est(テジェヴェ シュド・エスト)

初代TGV。最高速度は270km/hで、一部は300km/h。機関車のノーズ部分には密着連結器が装備されており、2編成を連結して多客時にも対応できる。客車は8両。
客車は日本のグリーン車に相当する一等車、普通車に相当する二等車、二等車とバーが一緒になった合造車で構成される。
車体塗装はデビュー時はオレンジ色、現在は銀色と青。初期の塗装はプラレールで製品化されている。(絶版)
制御方式はサイリスタ位相制御。日本でも100系新幹線などで使われている制御方式である。


  • TGV Atlantique(テジェヴェ アトランティーク)

大西洋線の開業時に増備された車両。最高速度は300km/h。
交流25,000V50Hzと直流1,500Vの両方に対応し、空車時の編成重量は444トン。客車は10両。
シュド・エストよりもモーター性能がパワーアップしたのと、大西洋線が全体的に緩い線形なので客車の両数が増えた。
客車の構成はシュド・エストと同じで、カラーリングは当初から銀色と青。


  • TGV Réseau(テジェヴェ レゾ)

北線の開業時に増備された車両。フランス国内だけの運用に限らず、ベルギーやイタリアへの国際列車への使用も考えて設計された。
客車はアトランティークに比べて2両少なくなっている。客室の構成はシュド・エストから変わらない。
韓国高速鉄道KTXのベースにもなった。
Réseauはフランス語でネットワークを意味し、発音はレゾ。


  • TGV TMST

イギリス国鉄クラス373ユーロスターのフランス側の名称。長いドーバー海峡トンネルを通過するため、万が一の火災発生時にトンネルを抜けて乗客・乗務員が脱出するまで持ちこたえられる耐火性を持たせ、イギリスの車両限界に対応するサイズへの縮小、交流25,000V、直流3,000Vに加えてロンドン周辺のサードレール方式*3に対応させている。
客車は18両のものと14両のものがあり、18両タイプは客車を9両ずつに分割することが出来る。検査の時の利便性を考えたというわけではなく、ドーバートンネルで何かがあった時に逃げるための物だとか。
また、この車両は他のTGVの車両と違い、主電動機が同期電動機*4ではなく誘導電動機*5となっている。


  • TGV Duplex(テジェヴェ デュプレックス)

今までのTGVは客車が全て平屋だったのに対し、デュプレックスは客車が全車両2階建てとなっているのが大きな特徴。
平屋タイプの定員が350人前後なのに対し、デュプレックスは516人を確保。もちろん2編成を連結して運行できるので、連結時には定員が1000人を超えるが、2編成併結時の定員はE4系MAXが世界一である。
客室の構成が変わり、一等車、二等車と全室バー車の3種類で構成されるようになった。
デュープレックスは原型のタイプとレゾ編成から動力車を転用したレゾデュプレックス、動力車のVVVFインバータの素子がIGBTとなったDasye、ドイツへの乗り入れに対応したEuroDuplexが存在する。


  • TGV POS

東ヨーロッパ線を経由してドイツ・スイスへの乗り入れを可能としたタイプ。
POSタイプのうち、機関車の384003・384004号車は鉄輪式の鉄道で世界最速である574.8 km/hを記録している。


  • TGV La Poste

シュド・エストを基本にした高速郵便列車。機関車の仕様は旅客車と同じなのでシュド・エストの機関車が不足してもうどうにもならねぇ!って時にはシュド・エストの牽引をLa Posteの機関車が行った事がある。


  • AGV

現行のTGVの後継機として位置付けられている車両。最大の特徴はTGVシリーズ初の動力分散方式、つまり電車方式を採用した点である。イタリアでNTV社がフランス国内に先駆けて営業運転に投入した。


  • TGV001

開業前に製造された試作車。量産車と異なり、機関車にガスタービンエンジンと発電機を装備し、発電した電気でモーターを回していた。
ストラスブール駅北方2.5kmに位置する車両基地付近とテリトワール・ド・ベルフォール県の東の郊外に機関車が1両ずつ保存されている。



【時速500kmへの挑戦】

2007年4月3日、開業前の東ヨーロッパ線の一部区間を高速運転に適するよう架線電圧を交流31,000Vに昇圧、架線の引張力を40キロニュートンに引き上げ、ポイントを固定するなどの整備を行い、車両も機関車の車輪直径を拡大し、客車にもモーターを取り付け、機関車のモーターも強力なものに換装、風防カバーを取り付けるなどの特別な整備を行い、最高速度574.8km/hを記録した。
無論この速度記録は鉄車輪と鉄のレールの組み合わせによる鉄道における世界最速なのではあるのだが、走行試験が終わった後のレールは試験列車の凄まじい振動でボロボロになっていたという。安全性をガン無視してとりあえずこれだけのスピードを出せるという記録を作りたかったらしい。
なお、TGVが最速記録を樹立しておよそ8年後、今度はJR東海がリニア中央新幹線山梨実験線で安全性を十分考慮した上で603km/hの速度記録を樹立したことをここに記しておく*6



【TGVの路線】

TGVは都市部では在来線に乗り入れる。この在来線区間でも時速160km/h~200km/hで走行が可能だが、特にTGVが高速運転を行う専用線区間はLGVと呼ばれ、320km/hでの走行を考慮した設計がされている。
例えば曲線の半径は在来線に比べて緩く取られており、レールを支えるバラストもアツモリィ!厚く盛られ、レールも在来線よりも重い物を使用、トンネル断面は大きく取られている。
だが勾配に関しては在来線よりもキツく作られている。これは高速線区間を列車の中でも特に勾配に弱い貨物列車の通過を制限しているため。
基本的に全区間複線で左側通行だが、非常時には複線の片側を使用中止にして単線での運行が可能。JR桜島線や関門トンネルと同じ。
電化方式は交流25,000V50Hz。これは東北・上越・北海道新幹線と北陸新幹線の一部区間と同じ。高速線区間では列車のパンタグラフは進行方向後ろ側の車両のみ使用する。



【TGVのライバル】

TGVのライバルはほぼ飛行機である。フランスは人口分布が日本とは異なり、国内に点在する都市共同体同士を結ぶ航空路線が発達しているため、TGVもその需要を取り込もうとしているため。



【TGVの輸出車】

世界各国の高速鉄道需要に対応するため、TGVは世界各国に売り込みが行われている。スペインの「AVE」などTGVと相互直通運転を行う路線のみならず、アジア、アフリカ、南北アメリカなどほぼ世界中でTGVベースの高速列車が導入、もしくは導入が予定されている。
なお、下記に紹介する路線以外にもアルゼンチンに導入が計画されている。


尚、時折「一部」の日本国内の鉄道ファンから、新幹線ではなくTGVのシステムを採用する事に対し「フランスは宣伝が上手いだけ」や「速度記録にしろ海外への売り込みにしろフランスの自尊心を保つためだけにやっている自己満足」などの非ぬ指摘が挙がる事があるが、
そもそも最終的にどちらかを採用するかは「採用する国」が決めることであり、その場合は自国の実情に見合った方を選んでいるだけである。そしてその結果「TGV方式を選択する」という決断を下す国のほうが多かっただけなのだ。
そもそも新幹線は超高密度輸送の需要がある一方で地盤が弱く、さらに自然災害も多い日本という国を前提にしたシステムであり、それ故「超高コスト・超ハイリターン」とも言える特性である。
需要さえあれば通勤電車並みの本数で16両編成の列車を動かすだけの容量はあるが、その一方で「在来線から切り離されたクローズドシステム」であり、導入する場合は線路だけでなく駅、電気設備、信号設備、予約システムなど、まさに「鉄道システム一式をまるごと新造する」必要があり、その分導入コストが半端ないのである。
一方のTGVシステムは在来線との互換性が高いため、極論すれば新しく作るのは高速新線(日本風に言えば新幹線区間)と電気設備だけで済むので、新幹線と比べると安上がりになる(信号システムもATSの延長線上と言われている)。
鉄道施設で一番コストがかかる「駅」は既存のものを流用しても構わないのだ。
その一方で列車密度は新幹線と比べて高くできないという弱点も確かにある。でも、そもそも都市間の高速列車で通勤電車並みの本数走らせなければいけない新幹線(というか日本)の需要のほうが変態、もとい特殊なのだ。10両編成が30分おきに走ってればそれで十分間に合うという国も多い。
多くの国、はさすがに言いすぎだとしても、少なくともTGV方式を選んでいる国からすれば、極端な話「新幹線システムは自分たちにはちょっとばかりオーバースペック」と判断して、お手頃価格と輸送量のTGV方式を選んだだけである。
実際のところ、日本と輸送密度も土地の条件も近い台湾は新幹線方式を選んでいる。台湾の事情に合っていると判断したから新幹線を選んだのだ。
それはTGV方式を採用した国だってある意味同じだ。自分の国の事情にあった高速列車はTGVの方だと判断して、TGVシステムを輸入しているのだ。


  • KTX

韓国の高速鉄道。TGVの第3世代にあたるレゾをベースにしており、18両の客車を機関車2両でサンドイッチしている。本家TGVと異なり、山がちな地形でトンネルの多い韓国の実情に合わせ、車体の強化を行っている。また先頭部もゴツゴツとした印象から柔らかい印象を与えるものに変更されている。
座席のシートピッチが狭い上、一般車は回転すら不可能なために乗客からの評判が悪く、後ろ向きになる座席が割り当てられた場合は料金が割り引かれる。
一応第二世代の車両からそういった欠点は解消された。


  • アセラ・エクスプレス

アメリカの高速鉄道。ボストン~ニューヨーク~ワシントンD.C.の通称「北東回廊」と呼ばれる区間を走る。ただし全路線とも高規格の在来線区間を走るほか、一部の路線は最高速度が制限されている。
車両はTGVベースだが、アメリカの厳しい安全基準や海岸沿いを走るための対策などから独自の仕様になっている箇所が多い。
2000年12月に登場し、20年近く活躍した事で老朽化が進んでしまい、車体を更新するよりも新しい車両を導入する方が安上がりという判断から引退が決定。2020年代初頭には姿を消すことになっている。


  • タンジェ=カサブランカ高速鉄道

かつてフランスの領土だったアフリカ北部の国・モロッコに2018年開業予定の高速鉄道。地球海に面した都市・タンジェと大西洋沿いの都市・カサブランカを結び、ビジネス客を始め多数の需要を見込んでいる。
そのこともあり、2階建ての「TGV Duplex」と同タイプの車両が導入されることが決まっている。



追記・修正は最高時速500km/hを超えてからお願いします。


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  • マイトガインのガードダイバーの元ネタだっけ? -- 名無しさん (2018-05-01 17:21:50)
  • TGVの海外輸出について追記しました。項目作ってくれるのは嬉しいけど「TGVが輸出されたのは韓国だけ」というような嘘情報は書かないで欲しいです。 -- 名無しさん (2018-05-01 18:51:48)
  • まあ、車両メンテのコストもTGV形式じゃないとやばいよな・・・TGVは機関車2客車6以上だけど新幹線はその逆で制御付随車2電動車6以上だもんそりゃ売れねえって -- 名無しさん (2019-11-14 01:04:05)

#comment

*1 ただし、山形新幹線と秋田新幹線のようなミニ新幹線は在来線の線路も走る。その代わり車両サイズはフル規格用よりも小さくなる。
*2 300系:325.7km/h、400系:336km/hなど
*3 要は第三軌条方式。銀座線とか丸ノ内線のように走行用の線路の横に電気を流すためのレールを敷いたもの。
*4 回転子も磁石やコイルになっているタイプの交流モーター
*5 回転子が単なる金属塊の交流モーター
*6 とはいえ、鉄輪式と車輪のない浮上式の超電導リニアという走行条件が全く異なるため、単純比較は難しいか…。

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