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更新日:2024/02/08 Thu 13:41:35NEW!
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殺生石 傾国の美女 妖狐 真の邪悪 絶対悪 純粋悪 日本三大妖怪 アニヲタ妖怪シリーズ 妖怪 大妖怪 外道 腐れ外道 悪女 狐 化け狐 九尾の狐 白面金毛九尾の狐 ラスボス ヒロイン アンチヒロイン ダークヒロイン 悪役 玉藻の前 インド 中国 伝承 何故かなかなか立たなかった項目 地球上に生きていてはいけない生物 邪悪 所要時間30分以上の項目 太公望 栃木県 白面の者 妲己 華陽夫人 鳥羽上皇 那須野 絵本三国妖婦伝
夫れ太極の一理 陰陽の両儀と別れてより。
天あれば地あり、暑あれば寒あり、男あれば女あり、
善あれば悪あり、吉あれば凶あり。
されば乾坤開闢 呂律の気は清みて軽きは昇つて天となり、
濁りて重きは降りて地と成り、中和の霊気大となれり。
其の大気禽獣となる時に、不正の陰気凝って一箇の狐となるあり。
開闢より以来、年数を経て終に姿を変じ、
全身金色に化して面は白く九ツの尾あり。
名つけて白面金毛九尾の狐といへり。
元来邪悪妖気の生ずる所ゆへ世の人民を殺し盡し魔界となさんとす。
― 「絵本三国妖婦伝」(高井蘭山)より
「白面金毛九尾の狐」(以下、『白面金毛』)とは、
その名の通り白い顔と金色の毛並を持ち九つに裂けた尻尾を持つ魔性の狐のことである。
好んで美女に化けその国の権力者に取り入り、彼らを操って国を傾けたという。
鈴鹿山の大嶽丸、大江山の酒呑童子らとならぶ日本における三大妖怪の一体であり、
日本すべての妖魔悪鬼の中でも最も強大かつ邪悪な存在。
- 目次
【概要】
「白面金毛九尾」と称される狐は元々、江戸後期の読本作者高井蘭山の著作、『絵本三国妖婦伝』に登場する妖怪である。
高井蘭山は玉藻前をはじめとした妖狐・悪女譚をモチーフに妖婦伝を書きあげた。
そしてその妖狐悪女らをモデルにして作り上げたのが白面金毛という大妖怪なのである。
彼女のモデルとなった妖狐や悪女については後述の解説を参照してほしい。
作中における白面金毛は、齢千年とも言われ妖艶な美女への変化をはじめとした数々の妖術を操る古狐である。
妖術だけではなく古今東西神羅万象に関する知識、人を惹きつけるための作法礼法と、
人を誑し込み骨抜きにするあらゆる手練手管を併せ持っている。
○外見・性格
白面金毛九尾の狐は、その名の通り金色の毛並と白い顔、九本の尾を持っている狐である。
体の大きさは子牛ほどもあると表現され、身の丈7尺*1、尻尾まで入れると1丈5尺*2にもなるという。
女に化ければ天下の美女となり、時の帝に感嘆させたほど。
また「この世の邪念・妖気そのものである」と表現される彼女は[[この上なく邪悪で残忍な性格の持ち主>吐き気を催す邪悪]]。
「人を殺し尽くしこの世を魔界とする」という目的があるとされてはいるが、
作中の表現を見る限り、特に目的意識もなにも関係なくあきらかに人を殺すことを楽しんでいる。
しかもただ殺すだけでなくいかに苦痛を与えむごたらしく殺すかということに腐心し、それを眺めて楽しむのだ。
なので国の王をたぶらかし権力を握ったが最後、その国には想像を絶する地獄絵図が現出する。
また人を堕落させることも好み、自分の夫らを自分と同じように死と殺しを好むような人間に仕立て上げたり、
周りの人たちに恐怖や憎しみをふりまき、互いに恐れあい憎しみあい殺しあうように仕向けてほくそえむことも多い。
○能力
白面金毛の能力としてあがるのが、まず第一に変化術をはじめとした妖術。
第二に古今東西あらゆる分野における卓越した知識。
第三にそれらを駆使し人の心を意のままに操る人心掌握術だろう。
●妖術
彼女が操る妖術としては、美しい女性に化ける変化術が有名。
絶世の美女と化し、男を容易にたぶらかすのだ。
もちろん男性や子供、赤ん坊に化けることも可能。
また特定個人の姿に変化することも、あるいは特定の人間を殺して中に入ることでなりかわってしまうこともある。
人ではなく岩や風や炎など無機物に変化することもできるらしい。
これにより、消えたり現れたりと巧みに姿をくらまし幻惑する。
また危機が迫った時毒気を吐き出す巨大な石「殺生石」に変化したが、
これはどうやら最後の手段であるらしく、一度変じたが最後そこから狐に戻ったり生まれ変わったりすることはできないらしい(後述)。
それから人に幻を見せる幻術や、人の心を捕らえてしまう魅惑術なども用いることが出来る。
これらはその身に危機が迫った時に使うことが多く、黒雲の幻を巻き起こして追っ手を撒いたり、
自分を討とうとするものを魅了し手出しできなくさせたりしてしまうなどして身を守る。
●知識
長年生きてきた彼女は、ありとあらゆる分野における知識をその頭に蓄えている。
その知識は歴史・仏道・神道はもちろん医術といった実学、
詩や短歌・歌や楽器といった文学・芸術の分野までさまざま。
さらに彼女は弁論術にも長けており、膨大な知識の中から適切な語句を瞬時に選び取り、
それを堂々たる態度の元でよどむことなくすらすらと口にすることが出来る。
専門家でさえ、自分の専門分野で言い負かされてしまうほどである。
●人心掌握術
彼女の最も恐ろしい能力で、彼女を象徴している能力でもある。
他の能力は妖術も知識も全て、これを補助する手段にすぎない。
彼女は標的とした人物にとってもっとも愛される姿に変化する。
子供のいない夫婦の前で赤子に化けたり、権力者の男性の前では女性に化けたり自由自在である。
さらにその姿のみならず、言動も所作もなにもかもその人物から愛されるものを選び取ることが可能。
彼女に魅入られてしまったが最後、その誘惑をはねのける手段は皆無と言っても等しい。
そして彼女は自分を失うことを相手に恐れさせ、その心を自由自在に操るのだ。
彼女の力をもってすれば赤子の自身を拾わせ十二分な保護のもと育てさせることも、
時の権力者にとり入り、彼らに悪政を行わせるばかりか残虐な行動に駆り立てることもたやすい。
●その他
恐るべき能力を持つ彼女だが直接の戦いは決して得意ではなく、人ひとり殺すくらいならなんとでもなるが武装した多数の人々相手にはとてもかなわない。
なので正体を暴かれてからはあっけなく追い払われ討ちとられてしまうことが多い。
殺すのもそう難しくはなく、普通の人間が普通の武器で殺すことも可能。
殺すよりむしろ正体を暴く方が難しく、神仏の加護に頼るほかないことが多い。
しかしたとえ殺されてしまっても、他の人間の体を使うなどしてふたたび再生してくることもできる。
物語の中では何度となく討たれてもそのたびに蘇り、再び世を魔界にせんと暗躍した。
ただやはりある程度の期間をおかないと再生することはできない。
また殺生石と化してしまった後は、生まれ変わることができなくなってしまった様子。
あと正体を暴かれてしまうと、心をつかんでいた相手でもあっさりと離れていってしまう。
狐でも魔物でもいい、というところまで魅了させるのはさすがに無理らしい。その人がケモナーだとか人外も好きだとかいう場合は不明
それから彼女に魅入られるとあっという間に生命力を失い病んでいってしまうが、
これは単に病気にさせているだけなのか生命力を吸い取っているのかは不明。
○略歴
西暦 | 所在国 | 王朝名など | 化身の名 | 概要 |
---|---|---|---|---|
紀元前20世紀~∞? | 不明 | ― | なし | 誕生? 妲己の時点で「齢千年の狐」と言及されている。 |
紀元前11世紀ころ | 中国 | 殷 | 寿羊 | 少女を喰い殺してなりかわり紂王の妾に。名を妲己と改める |
妲己 | 武王に討伐され、天竺へと逃れる。 | |||
紀元前9世紀ころ | 周 | 褒姒 | 数々の怪異とともに誕生。老夫婦に拾われ宮廷に献上される。 | |
紀元前8世紀ころ | 周の幽王の寵愛を得て、暴政をはたらかせる。 | |||
伯服 | 反乱がおき、周が滅亡。褒姒はわが子に化け脱出。 | |||
紀元前5世紀ごろ? | 天竺 | 摩訶陀国 | 華陽夫人 | 殷から逃れ出現。この地の王子斑足太子を惑わせる |
正体を見抜かれ北へと逃げ去る。 | ||||
734年 | 中国 | 唐 | 若藻 | 吉備真備の船に同乗。 |
735年 | 日本 | 奈良時代 | 来日、姿を隠す。 | |
736年以降 | およそ370年にわたり潜伏。 | |||
1098年 | 平安時代 | 藻 | 赤子の姿で武士に拾われる。藻と命名。 | |
1104年 | 和歌の才を見出され宮中入り。 | |||
1120年3月 | 高陽殿で体から光を放つ。玉藻前と改名。後鳥羽上皇の寵愛を受ける。 | |||
同年5月 | 玉藻前 | 安倍泰親と対峙、論戦で圧倒。 | ||
同年9月 | 安倍泰親に正体を暴かれ退散。那須野へと逃亡。 | |||
1123年 | 討伐軍が那須野にさしむけられる。 | |||
1137年 | 討伐軍に討たれる直前、毒石へとその身を変ずる。 | |||
1166年以降 | 平安~鎌倉時代 | 殺生石 | 朝廷から何度となく僧侶が派遣されるが、そのことごとくを毒殺。 | |
建長年間 (1249~56) | 鎌倉時代 | 玄翁和尚により殺生石が粉砕される。 |
【伝承】
白面金毛は中国・インド・日本の三カ国を渡り歩き、それぞれの国で時の王を誑かし
暴虐をはたらかせたり悪政を行わせたりして民を大いに苦しめたとされる。
ここではそれら全てのエピソードを網羅している「絵本三国妖婦伝」をベースに、
脚色や私見をまじえて彼女の経歴をその化身ごとに紹介していく。なので正確な記述でないことは了解されたし。
ただ殷→天竺(摩訶陀国)→周という彼女の経路については時系列がおかしなことになっている*3が、これはあくまで原典準拠のものである。
○誕生
彼女がいつどこで誕生したかに関しては、あまりはっきりとは記されていない。
妲己の時点で齢千年の古狐とされているが、この「千年」というのは
実年齢ではなく比喩的表現なのだろう。
少なくとも本記事冒頭の誕生時の描写を見る限りさらに古くから、
それこそ天地開闢のすぐ後に生まれ落ちていてもまったく不思議ではない。
― はじめ、この世にはなにもなかった。すべてがひとつだった。
けれどそのひとつはいつしか、陰のものと陽のもの、ふたつにわかたれていった。
澄みわたって軽いものは上に昇って天となり、
濁って重いものは下に降りて地となった。
そしてそのはざま、ただなかに、あらゆる命を産む大きな霊気が生じていった。
その霊気が獣たちを産むとき、不浄の陰気だけがよりあつまり、一匹の狐が産まれた。
その狐は齢を経て、ついに白面金毛九尾の狐に変じた。
邪悪・妖気そのものである彼女は、人々を鏖にしこの世を魔界と成さんとするという ―
○妲己の章
●寿羊から妲己へ
彼女が最初に人間たちの前に姿を現したのは、実在が確認されているもののなかでは
中国で最も古い王朝殷においてである。
初代の湯王が夏王朝を倒してから28代の帝、紂王の治世のころ。冀州に寿羊という16歳になる少女がいた。
容姿端麗にして音楽書道をたしなみ、また評判の働き者でもあり世に並ぶものない乙女と噂されていた。
この評判を聞きつけた紂王は後宮に迎えようと寿羊の親蘇護をたずねるが、娘を王の妾にすることを忍びなく思った蘇護はこれを断る。
怒った紂王は名臣西伯候姫昌に命じ、蘇護のもとに軍勢を指し向ける。
しかし西伯候は軍勢で蘇護を脅すことをよしとせず、使者を送って交渉を行った。
蘇護は紂王への恐れと西伯候の誠実さの前に、泣く泣く寿羊を差し出す。
寿羊は父、そして紂王より遣わされた武士や腰元らとともに一路都へと向かう。
そして道中で宿に泊まった折のこと。
寿羊の部屋に一陣の怪しき風が吹きこみ、灯火を吹き消した。
腰元のひとりが寿羊を守るため妖しき気配に立ち向かう。
しかし彼女は、たちまちのうちに何者かに蹴り殺されてしまった。
あくる朝、寿羊の部屋にいた腰元の一人がいなくなっている。
寿羊に聞いたところ「夜半に怪しい気配がして、灯火が消えた」と答えた。
辺りを探したところ、近隣の草むらの中で腰元の遺体が見つかる。
一行は大いに怪しみ、すぐにその地を出立した。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
昨晩、寿羊の部屋に忍びこんだ何者かは彼女の精と血を吸いつくし、
抜け殻となった体に入りこみ乗っ取ったのだ。
それこそが、徳によって治められる大国殷を滅ぼさんと乗りこんできた
白面金毛九尾の狐だったのである。
都に着いた寿羊を一目見た紂王は、たちまちその美しさの虜になってしまった。
王は寿羊の名を妲己と改めさせ、政務を投げ捨てて彼女におぼれたのである。
●殷の紂王
紂王はもともとは大国殷の王にふさわしく聡明にして勇敢、大小数多くの国を束ね万民の尊敬を集める主君であったと伝えられる。
しかし寿羊を見初めたときから、あきらかに様子がおかしくなりはじめた。
そして彼女を妲己として迎え入れたときには、酒色におぼれる暗君と化していた。
紂王は王宮内に楼閣をつくり、妲己とともにその中で楽師らをはべらせ
臣下のたびかさなる諌めにも関わらず出てくることは無かったのである。
南山の道士雲中子は、殷の王宮を禍々しい気配が覆い尽くしているのを感じ取る。
宝鏡照魔鏡で王宮を映し見てみると、それは千歳にならんという妖狐の姿をしていた。
雲中子はただちに都に赴き進言するが、それを耳にした妲己は紂王にこう囁く。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
紂王は雲中子の進言を伝えた役人を斬らせ「妖しき妄言を広めようとするものはこうなる」
という詔を発した。これにより臣下たちはもはや何も言おうとはしなくなった。
それでも皇后が紂王を諌めるが、妲己は皇后を奸臣費仲とともに死に追いやる。
皇后は楼閣から突き落とされ、ついに妲己が皇后にまで登りつめた。
紂王は妲己に請われるがまま王宮内に庭園を造り、池には酒を満たし干し肉を林のように吊るして毎晩酒宴にふけった*4。
また些細なことで人々を処刑し、ついにはそれを楽しむようにさえなった。
中で炭をおこし真っ赤に熱せられた銅柱に人を抱きつかせてあぶり殺す「焙烙の刑」、
地面に穴を掘って蛇や毒虫の類を敷き詰めておき、裸に剥いた女性を放りこむ「蔓盆の刑」。
これらの残酷な刑罰を微罪に対しても執行し、それを眺めて楽しむという有様だった。
またあるとき妲己は十数人の妊婦を紂王の前に集めてこう言った。
「この女らのお腹の子が男の子か女の子か当てて進ぜましょう」
妲己は全員の赤子の性別を予想すると、たちまち全員の腹を裂いてそれを確かめさせた。
彼女の予想はことごとく的中しており、夫妻はこれを見て手を叩き笑いあったという。
●西伯候姫昌
紂王は国内に圧政をしき、自身たちの浪費を民からの重税や労役でもって賄っていた。
さらにそれを払えない者には上記のような残虐な刑罰で報いた。
そんな王の暴虐を前に、ついに殷の民が国を捨てて逃げ散りはじめる。
国を捨てた民を名臣西伯候は自らの領土である周の地に迎え入れ、彼らの生活を支えていた。
ここに至り、西伯候はじめとした家臣や紂王の息子たちが王の前に集まり一身を賭して紂王を諌めようとする。
しかし紂王はもはやその諌めをまったく耳に入れようとはしなかった。
それでも剛毅をもってなる西伯候が重ねて諌言を行う。
これに対し妲己は王をそそのかし西伯候を捕らえさせる。
それに憤った西伯候の息子伯邑考は紂王と妲己の前でこう訴える。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
妲己は彼に向かいこう語りかける。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
伯邑考は仰せのままにと一曲奏でてみせる。
それを前に妲己はこうあざわらった。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
伯邑考は激怒し妲己の顔に唾を吐きかけ、その不実をののしる。
紂王はこれを見てたちまち伯邑考を斬り捨ててしまった。
その死体を前にして、妲己は薄く笑ってこう言った。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
紂王は妲己の勧めのまま、1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。父である西伯候に送り届けこう伝える。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
西伯候は煩悶したが、自分を信じ救いを求めて集まってきた人民たちのために心を殺してこれを喰らう。
紂王は言葉通り西伯候を許し、彼を解き放つ。
それを聞いた人民たちは怒りに打ち震え、続々と西伯候のもとに集った。
その勢力はついには国内の人口の3分の2近くに膨れ上がるのである。
●周の武王
国内の反紂王勢を糾合した西伯候は、志半ばにして97歳で亡くなる。
しかし西伯候は軍師呂子牙に息子である姫発を託した。
そして息子にも、病床からこう言い渡す。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
呂子牙こそ、西伯候にその名を与えられた名軍師太公望であった。
姫発は周の武王を名乗り、太公望とともに殷へと進軍する。
妲己は幻術で反乱軍を足止めしようとするが、呂子牙により術をことごとく破られる。
こうなると疲弊しきっていた殷の軍に反乱軍を押しとどめる力はなかった。
武王の軍勢はたちまちのうちに殷の都へ攻め入り、奸臣費仲、そして紂王を討ちはたす*5。
さらに武王は妲己を捕らえ処刑しようとした。
しかし妲己が艶然と笑いかけると、どの処刑人たちも彼女に手を出せなくなってしまった。
そこで呂子牙が雲中子に与えられた照魔鏡で白面金毛の正体を暴く。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
狐の姿となった妲己は黒雲をかきおこし、そこに紛れて逃げ去ろうとした。
そこにすかさず宝剣が投げつけられ、地面に打ち落とされた白面金毛をさらに雷が撃ちすえる。
さしもの妖狐の体も3つに砕け、その死骸は瓶に詰められ土中深くに埋められた。
こうして殷王朝は倒れ、新たに周王朝が打ち建てられたのである。
しかし白面金毛は敗れこそしたが、徳高き紂王を堕落させ、殷王朝の名を貶め、これらを滅ぼすことには成功したのだ。
○華陽夫人の章
●斑足太子
はるか西の天竺、摩訶陀国には斑足太子という王子がいた。
獅子の血を引き、名の通り足にまだらの模様があったというこの王子は、
獅子の勇敢さと文学と音楽を愛する穏やかな心をあわせ持つ青年であった。
ある日その王子が得意の笛を吹いていたとき、異国の服を来た美しい女性が現われる。
女性は笛に合わせて歌い、王子はその歌声に魅せられた。
女性は自分のことを殷の紂王に仕えていた官女だと名乗る。
国を滅ぼさんと攻めこんできた武王に、慰み者にされんとしたところを逃れてきたと。
哀れに思った斑足太子は彼女を連れ帰り召使いとした。
しかし斑足太子はたちまちのうちにその女性の色香におぼれてしまう。
この女性こそ、武王に追われ殷から逃げのびてきた白面金毛の化身だったのである。
●華陽夫人
連れ帰った女性に身も心も蕩かされた斑足太子は、彼女を華陽夫人と名付け妻にした。
そして公務も勉学も投げ捨て、夜となく昼となく酒色に耽るようになってしまう。
王子の臣下や勉学の師が彼を諌めるが、その場では聞き入れるもののついに華陽夫人を遠ざけることは無かった。
逆に斑足太子は進言を行う臣下を冷遇したり放逐したりして遠ざけてしまうようになった。
特に年若く名臣との誉れ高い鷓岳叉に対して、華陽夫人はこう斑足太子に耳打ちした。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
太子は疑うことも無くこの言葉を信じ、いずれ鷓岳叉を断罪せんと心に決めた。
王子は堕落の一途をたどり、民をことにつけて断罪し、処刑されるさまを夫人とともに眺めて喜ぶようになってしまう。
父王の命でさえ、彼の心を改めさせることはできなくなっていた。
そんなある日、斑足太子はお供とともに外出中、花園の中で一匹の狐が眠っているのを見かける。
太子が矢を狐に射かけると、その矢に額をかすめられた狐は一目散にやぶの中へ逃げていった。
王子が王宮に帰ってみると、華陽夫人が頭に布を巻き床に臥せっている。
彼女いわく、武王に追われた時のことを思い返し、頭が痛むようになってしまったという。
その痛みは王宮の典医たちがよってたかって診ても、まるで快方には至らなかった。
思いつめた太子は、国一番の名医を呼ぶこととしたのである。
●耆婆
王子は床に臥せった夫人のために、国一番の医者を王宮に迎える。
その者こそ釈迦の病を治したという当世一の名医耆婆 *6であった。
華陽夫人のかたわらに立った耆婆は、手始めに彼女の脈をとる。
しかしどうも様子がおかしい。耆婆は大いに驚いた様子でしきりと首をひねっていた。
耆婆は別室に移り人払いをし、太子にこう告げる。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
斑足太子は大いに驚き、華陽夫人に事の次第を問う。
夫人はあわてず騒がずこう答えた。
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斑足太子は怒り、耆婆を呼び寄せる。
太子のもとに出向いた華陽夫人は、耆婆を見るなりこう言い放つ。
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耆婆はおどろきあきれ、そんなものがあるなら出してみよと言うが
夫人はあざけり笑いこう言った。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
その後耆婆は専門の医術の話になっても、
正確極まりない医学の知識をとうとうと述べる彼女を言い負かすことができなかった。
耆婆は大いに面目を潰され、王宮を後にする。
しかしその後、彼の夢枕に天人が立ちこう告げたのである。
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●鷓岳叉
耆婆は夢のお告げに従い金鳳山へと旅立ち、厳しい旅路の果てについに薬王樹の枝を手にする。
摩訶陀国へと戻った耆婆は鷓岳叉らと密会し、華陽夫人…いや、太子を惑わす古狐を退治するための策を巡らせた。
鷓岳叉ら重臣たちは王宮へ出向き、太子に重ねて夫人を遠ざけるよう進言する。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
業を煮やした太子は兵に命じ彼らを捕らえさせる。
しかしその隙に耆婆が華陽夫人の前に立ちあらわれ、薬王樹の枝を振りかざした。
夫人は身を震わせ、たちまち白面金毛九尾の狐と化す。
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白面金毛が北へ向かって飛び去った後、斑足太子は憑き物が落ちたように立ち直った。
太子は耆婆や鷓岳叉らに伏して詫び、以後彼らを以前にも増して厚遇することで名誉を回復させ、
正道をもって国や民のために尽くしたという。
こうして天竺は白面金毛の脅威を退けた。
しかしこの件にて白面金毛の悪名は広く知れ渡り、中国全土、さらには遠く日本の人々までもを恐れさせるようになったのである。
○褒姒の章
●周の宣王
ここで舞台は時をさかのぼり、中国の周王朝に移る。
殷の紂王を倒した武王によって創建された周王朝は、時を経て12代目の宣王の時代になってもその名を天下に響かせ、国内を安らかに治めていた。
しかし王はある日、都の子供らが手を打ってこう歌っているのを耳にする。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
これを不吉に思った宣王は、臣下たちに歌の意味を聞く。
すると一人の臣が、これは白面金毛の復活の兆しであると言上した。
王はただちに宮中の女性のなかで怪しい者はいないか調べさせる。
すると先王の時代から仕えていた女官のひとりが、18年もの間妊娠した末にひとりの女児を産み落としたという。
詳しく話を聞くと、先王の命によって白面金毛が封じられた塚が暴かれたとき、
そこからにわかに湧き出した泡を浴びたところ男に触れてもいないのに子供が出来てしまったという。
しかし、その子は不浄の子としてすでに王宮の堀に投げこんだということだった。
宣王は胸をなでおろし、歌の中の「山桑の弓と矢を売る人」を探させる。
果たして該当するものが見つかった。それは長安の都に住む夫婦だった。
王はただちに妻の方を斬り殺し、災いの芽を摘んだ。
狐の化身は女性とされていたため夫の方は許され、ほうほうの体で都を落ちのびていった。
その際に立ち寄った林の中で、泣いている赤ん坊を見つけた。
男はその赤子を哀れに思い、拾って大切に育てたという。
●褒姒
時は流れ、13代目の幽王の治世。
幽王は暗愚な王で、苦言を申し立てる者を遠ざけ自分に逆らわず追従する者のみを側に置いていた。
その王のもとに、ひとりの美しい少女が捧げられる。
この女性こそ、あの時林の中で拾われ育てられた赤子だった。
女性は褒姒と名付けられ、幽王の側に仕えた。
幽王は彼女の美しさに骨抜きにされ、彼女を皇后とする。
王は褒姒を大いに寵愛したが、一つだけ気がかりなことがあった。
それは、彼女が決して笑わないことであった。
あるとき幽王はふと思い立ち、危急の際にあげるとされていた狼煙を平時に上げてみる(ミスだったというものもある)。
たちまち領内中から諸侯が集まってきたが、来たところで何の変事も無く右往左往するばかりであった。
この有様を見て、褒姒ははじめてにこりと微笑んだのである。
味を占めた幽王はその後も幾度にも渡り偽の狼煙を上げ、慌てふためく諸侯の姿を褒姒に見せた。
しかしある日、西方の異民族が大挙して都に押し寄せてくる。
ここに至って幽王はあわてて狼煙を焚くが、もはややってくる諸侯はひとりもいなかった。
たちまち異民族の軍勢は都に押し寄せ、王を斬り殺した。
さらに軍勢は幽王を狂わせた元凶である悪しき狐を除くため褒姒をはじめとした宮中の女性を皆殺しにした。
ここに至ってようやく諸侯たちが駆けつけ、異民族の軍を追い払う。
さらに諸侯らは新しい王を立てて乱を収め、どうにか国内に平穏を取り戻す。
この乱の中、かろうじて生き残った褒姒の息子伯服は、敵の追っ手を逃れなんとか落ちのびていった。
だが人里を離れた伯服は、たちまち美しい夫人と化した。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
褒姒と化した白面金毛は、かつて自分を討ち取った周王朝を滅ぼし復讐を果たした*8。
しかし自分に対しての対策は徹底されており、世を魔界に変えるという大望は果たせなかった。
化身となる女性は徹底的に除かれ、それをかいくぐって国を乱してもたちまちのうちに建てなおされてしまう。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
そうして、妖狐はいずことへもなく行方をくらましたのである。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
○玉藻前の章
●若藻
それから千年以上の時を経て、唐の時代。
日本から遣わされた吉備真備が、いままさに日本に帰ろうとしていたときのこと。
皇帝から賜った船に乗り出港してから二日後、船内に30歳前ほどの夫人がいるのを発見する。
吉備真備は驚き、なぜ無断で乗りこんだのか女を問いただす。
女は玄宗皇帝の臣下の娘若藻と名乗った。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
吉備真備は情けをかけ、彼女を日本まで連れていく。
しかし日本に着いたところ、若藻はいずこかへと消え失せてしまった。
彼女はやはり白面金毛の化身であり、これより長きにわたって日本に潜りこんで息を潜め、
世を魔界と成すという自分の大願を果たすため時勢をひたすらに待ち続けるのである。
●藻
若藻が吉備真備とともに日本に渡ってから、およそ370年後。
白面金毛は再び赤子に化け、武士の家に拾われていった。
武士はどこの誰の子とも知れぬ赤子に「根なし草」……「藻」と名を付け、大切に育てた。
7年後、藻は美しく利発な少女に成長する。
彼女はその和歌の才を見出され、宮中に迎えられることとなった。
●玉藻前
それから10年。
鳥羽院が位につき、藻は美しい女官に成長していた。
そしてこのころには、すでに藻は鳥羽院の手つきとなっていた。
院があまりに藻を寵愛したため、臣下は眉をひそめたという。
そんな折、高陽殿での宴において怪事が起きる。
宴の席で藻の体から光が放たれ、夜半の薄暗い殿中がまるで昼のような明るさになったという。
周囲の人々はこの変異を恐れ何らかの凶兆ではないかと言上するが、
院は怪しみもせず藻のような才媛であればこのようなこともあろうと取り合わない。
院はこの時から藻に玉藻前の名を与え、ますます彼女を寵愛するようになった。
しかしそれからまもなく院は体調を崩し、全身を走る苦痛に七転八倒するまでになってしまう。
医術も祈祷も効果がなく、みるかげもなくやせ衰えていってしまった。
●安倍泰親
この異変の後ろに妖狐の存在があるのに気づいたのは、宮中の陰陽頭安倍泰親であった。
彼は高陽殿の変事より玉藻前を怪しみ、易術によって彼女の正体を見抜いたのである。
彼はそれを院に伝えるため参内し、玉藻前と対峙する。
横たわる院のかたわらに美しく着飾って座し、まるで皇后のごとく振る舞う玉藻前に対し
泰親は「わが易術により、院の病は邪悪な獣によるものと明らかになったのでございます」と申し伝える。
玉藻前はあでやかに笑い、悠然と答えた。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
泰親は激昂し「正法に不思議なしと申す。高陽殿の怪異をなんとお考えか、どこの誰の胤ともわからぬ者が!」と彼女を弾劾する。
しかし玉藻前はいささかも動ぜず無くこう答える。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
泰親は立て板に水を流すような玉藻前の言説に一言たりとも言い返すことができず、
すごすごとその場を辞するしかなかった。
院は泰親の無礼と不明に怒り、彼を閉門に処する。
それでも泰親は玉藻前の正体に疑念を感じ、精進潔斎して院の平癒を願い祈祷を行い続けた。
●鳴弦の法
寝食を忘れ院の病を癒さんと、そして玉藻前の正体を暴かんと祈祷を続ける泰親。
身も心も疲れ果て、意識がもうろうとしたところで不思議な夢を見る。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
これぞ安倍家の守護者、加茂大明神の神託であった。
泰親が閉門の身でありながら自分のために祈祷を行っていることを知った鳥羽院は、
怒りをおさめ祈祷が成就したならば宮中へ来るよう命ずる。
そして玉藻前に、自分に代わって泰親に会うようにと伝えた。
玉藻前は平然とその勅を受け、泰親を清涼殿にて出迎える。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
そう言い放ち席を立とうとした玉藻前を、静かに泰親が制する。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
玉藻前はついに返答に窮し、その場に座す。
泰親はおもむろに弓を取りだし、弓をつがえぬままそれを引き…
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
「おのれがあぁぁぁぁっ!!!」
玉藻前は顔色を失いわなわなと震え、血走った眼で泰親をにらみつけた。
にわかに空がかき曇り、雷鳴が鳴り響く。
みるみる内にその姿は白面金毛九尾の本性を現し、闇の中へ飛び去っていった。
○殺生石の章
●殺生石
白面金毛の正体が暴かれ宮中を追い払われたあと、鳥羽院の病はたちまち快癒した。
院は泰親を誉め称えるが、それでも白面金毛はまだ滅びたわけではない。
飛び去った妖狐は那須野の地に降り立ち、怪異をなすようになっていたのだ。
那須野の人々は白面に惑わされ、何人もの民が餌食になったという。
ただちに三浦介義明、千葉介常胤、上総介広常を将軍に、陰陽師・安部泰親を軍師として討伐軍が結成され派遣された。
しかし藪へ影へ闇へと逃れ走りながら妖術を使ってくる白面金毛を捕らえるのは困難を極める。
それでも討伐軍は犬相手に騎射をするなど訓練を重ね*9、次第に妖狐を追いつめていく*10。
追い立てられた妖狐が隠れたとおぼしき草原を焼き払うと、現れたのは子牛ほどもある巨大な古狐だった。
大狐は兵馬を跳びこえつかみ殺し逃れようとするが、ついに三浦介の弓が白面金毛を射捕らえる。
もんどりうって倒れたところに上総介が剛力で槍を突き立て、さしもの妖狐も動きを完全に止められてしまう。
そこに兵士が集まってきて顔といわず身といわず、よってたかって滅多切りにした。
しかしとどめをささんとするその瞬間、白面金毛の体は巨大な石と化した。
すると奇怪なことに、彼女に寄り集まって斬りつけていた兵たちがたちまちバタバタと倒れてしまう。
さしもの軍勢もこれには手出しできず、その場を引くよりほかになかった。
その後も、その石は那須野で毒気をまき散らしつづけた。石は狐に戻ったり動いたりすることこそ無かったが、
知らずに近づく人や獣をたちまちその毒気で餌食とし、石の周囲は死体と白骨で満ちた。
泰親も将軍たちも手の出しようが無く、立て札を立て接近を禁ずるよりほかになかった。
地元の人間たちは大いに恐れ、この石を1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。と呼ぶようになったのである。
●玄翁和尚
それから年月がたち、時の帝たちは殺生石を除かんとして数々の名僧や祈祷師を派遣した。
しかしそのことごとくが毒気に当てられ、石を打ち壊すどころか生きて帰ることもままならなかった。
そこを訪れたのが、法華寺の僧玄翁和尚である。
和尚は同行しようとした弟子たちを退け、ひとり殺生石のもとへと向かう。
玄翁和尚は払子と数珠を手に経文を唱えながら歩を進めるが、
たちまち毒気の風が吹きつけ着ているものがずたずたに破り裂かれてしまう。
けれども御仏の加護か和尚の体には毒気は及ばず、ついに殺生石と向かい合う。
玄翁和尚はひときわ通る声で、殺生石に向けて呼びかけた。
― 嗚石霊石霊
魔則有法済
執魂無所帰
即今汝念底
すると絶えず吹き付けていた毒気の風がやみ、忽然と妙齢の、妖しいほどに美しい女性が現われる。
和尚はさてはこれがかの妖狐の化身かと身構え、迷うな執着するな成仏せよと一喝する。
しかし、女性は何をするでもなく、和尚に静かに語りかけてきた。
「いまさら隠し立てはせぬ。わらわこそ玉藻前……
唐天竺で悪逆の限りを尽くした白面金毛九尾の狐ぞ」
「わらわはいままで生まれかわり死にかわり、世を魔界に化さんとしてきた。
人民鳥獣を害し、国を傾け、この身より生ずる恨み憎しみのままに幾星霜 ……」
「……御坊よ。 こんなわらわでも、仏のみもとへゆけるのかや?
この恨み憎しみ、修羅の輪廻から解き放たれ、浄土とやらへゆけるのかや?」
和尚は、声高に経を唱えてそれに答える。
人畜悉皆宇宙塵
端的不逢劫外春
本来面目有何所
無位心印磨不磷
玉藻前の幻は静かに手を合わせてこうべを垂れ、その場から消え去った。
和尚はそれを見届けると気合一閃、殺生石を打つ。
「石に精あり水に音あり風は太虚にわたる、喝!」
殺生石は大きく二つに割れ砕け、破片とともに西めがけて飛んでいった。*11
玄翁和尚は破片で地蔵菩薩を彫り、鎌倉に安置した。
その像はその後京へと移され、あらたかな霊験を発揮したという。
こうして三国にわたって猛威を巻き起こした白面金毛九尾の狐は、西方の浄土へと旅立っていったのである。
【解説】
この項目では「白面金毛九尾の狐」について、その成り立ちや背景、現代創作での展開などについて説明する。
それぞれの詳しい内容についてはこちらも参照してほしい。
○九尾の狐について
獣が年を経て化けるという説は、中国の伝承の影響が大きい。
狐もその例にもれず、 50年生きると*12女性に化けることが出来るようになると言われた。
さらに100年生きると美女や巫女、男性に化けられるようになる上に天眼通*13を身につける。
1000年を経れば天に通ずるようになり、体毛は金色に輝き尾は9本に裂ける。
そして日月の宮殿にて天帝に仕える、狐の最高位である天狐となるのである。
これが「九尾の狐」というキャラクターの始原である。
しかし天狐はもはや天界の住人なので、人と積極的にかかわることは無い。
むしろ出現すればよいことが起こる兆しとされる瑞獣として知られている。
なので九尾の狐は、本来人間に害をなす存在ではなかった。
けれど、最終的には神に等しい存在となる化け狐も、 その過程では人を惑わすこともあった。
すべての狐が仙狐を目指すわけでもなく、邪悪な化け狐も当然存在した。
仙孤を目指す狐も、修行法のひとつに 「人間と交わって精気を吸い取る」 というものがあったため、
特に下位の狐はよく男の精気を狙って女性に化けて近づいてきたのである。
この性質から、化け狐はよく女性と、しかも男を手玉に取る悪女と結び付けられた。
さらにそれを発展させ殷王朝の妲己など極めつけの悪女、いわゆる「傾国の美女」 と呼ばれるような女性が
しばしば最上位の悪狐と……すなわち 「悪しき九尾の狐」 とされたのである。
そのイメージは日本にも伝わり妲己のほかにも周王朝の褒姒、そして玉藻前のモデルとなったと言われる
鳥羽帝の皇后美福門院といった多くの悪女が狐の化身とされた。
それらすべての伝承が日本において習合され、さらに斑足太子から着想を得て華陽夫人のエピソードが作られ
そこに那須野の殺生石の伝承も加えられて、大妖怪「白面金毛九尾の狐」として結実した のである。
なお上記の通り「九尾の狐」自体は単一の存在ではないので、白面金毛以外にも著名な九尾狐は存在する。
代表的なところでは南総里見八犬伝に登場する政木狐など。
○現代の創作における白面金毛九尾の狐
前述した通り、単なる「九尾の狐」であれば、邪悪な存在でも固有の存在でもない。
なので善性の狐として登場することもあるし、実力も低くはないまでもそれなりの扱いをされることが多い。
しかしこれが「白面金毛九尾の狐」あるいはその化身たる
「妲己」「華陽夫人」「褒姒」「玉藻前」らになると、ほぼ例外なく凶悪強大な存在として扱われる。
その存在感の大きさといい、スケールの大きな伝承といい、とても凡百のキャラクターとしておさまる存在ではないのである。
原典では決して高くはない戦闘力もきわめて強力であるという描写になることが多く、
出現するや否やその場の雰囲気を一気に凍り付かせ、作品自体をも我が物としてしまいかねない強烈な個性を発揮する。
●白面の者(うしおととら)
現代日本の創作文化における「白面金毛九尾の狐」のキャラクターを決定づけた存在。
日本中の妖怪をすべて集めても歯が立たないほどの実力と、生命あるものすべてをもてあそびゴミクズのように扱う凶悪さをあわせもつ
当作にとどまらず近代日本の漫画作品全体の中でもその「格」において最強最大の悪役のひとり。
狐と呼ぶには異様な姿をしているが、このデザインは『山海経』にあらわれる九尾の狐(?)をベースにしていると思われる。
この妖怪は、諸国を荒らした狐との関係は不明だが、尾ばかりか首まで9つあり、虎の爪を持ち、赤ん坊のように鳴くという。漫画作中でよく「おぎゃあああ」と鳴いているのはこういうワケ。
あと、この作品には上記の伝承内の登場人物やエピソードが多数引用されている。
興味のある人は本作と「絵本三国妖婦伝」を読み比べてみてほしい。
詳しくは個別項目を参照されたし。
●羽衣狐(ぬらりひょんの孫)
外見は黒いセーラー服を来た少女だが、その実齢1000年を超える古狐。
京都一帯を勢力圏とする魑魅魍魎「京妖怪」を束ねる大妖怪である。
息子に安倍晴明を持つため「葛ノ葉」の要素も入っているが、
9本の尻尾を持ちその性格は極めて残虐で冷酷と、やはり白面金毛をベースにしたキャラクター。
人の体を依代として転生を繰り返し、闇の子たる鵺を産み落として
この世を妖怪が跳梁跋扈する闇の世界へと変貌させんとしている。
なお白面金毛が登場するその他の作品はこちらを参照されたし。
○物語の背景についての私見
●白面金毛と安倍家の対決について
物語のクライマックスである、日本での対決。
大妖怪白面金毛九尾の狐を迎え撃ったのは、日本の陰陽師安倍泰親である。
恐るべき力を持った妖怪と、神仏の加護を受け敢然と立ちむかう人間との戦いであるが
見方を変えればこれは狐同士の対決であったとも取れるのだ。
安倍泰親は代々朝廷で陰陽頭を務めてきた安倍家の五代目当主である。
初代の当主は、かの名高い安倍晴明。
安倍晴明の出生に関しては有名な伝説があり、なんと彼は狐の子であったというのだ。
伝承によると彼の母は信太の森の稲荷神社の遣いである狐、「葛ノ葉」であった。
狐の正体を知られ去っていく母を追って信太の森にたどりついた童子丸(晴明の幼名)は、
稲荷神から母に託された宝具を受け取り陰陽師への第一歩を踏み出すのである。
この伝説を下敷きにして考えれば、安倍家は[[稲荷神>お稲荷さま]]の眷族とも言える立場になる。
実際のところはどうであったのかは定かではないが、少なくともこの伝説を踏まえて考えれば
玉藻前と安倍泰親との戦いは、白面金毛と稲荷神の代理戦争であったということになる。
それはすなわち中国の悪しき狐と日本の善なる狐の対決であったのだ。
中国における化け狐は天狐のようなごく一部の例外を除き、基本的には獰猛な魔物であった。
これは仏教における「野干」(ジャッカルのこと)がルーツであると言われている。
この悪しき化け狐のイメージは仏教とともにインドから中国を経て、日本に伝来した。
しかし、日本では狐はもともと神の遣いだった。
稲作の大敵であるネズミを追い払う狐は、稲荷神の遣いとして信仰の対象になっていたのである。
その善なるイメージは大国から渡来した先進的な思想でさえも崩すことはできず、
日本の狐は善なる存在として、お稲荷さまとともに日本中に広がっていったのである。
1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。
と考えると、史実と物語がちょうど符合するようで面白い。
ただ、日本においても狐の悪しきイメージは完全には払拭されず
お稲荷さまの裏に隠れてひそかに日本中に伝播していったのではあるが。
これもまた、白面金毛の妄執のなせるわざだったのだろうか……?*14
●「亡国の王」「傾国の美女」について
白面金毛九尾の狐の物語は、権力を持った男の哀れさを描いたものである。
女に騙されどれほど愚かしくなろう残虐非道になろうと誰にも止めてもらえず、
自分が治めていた国とともに破滅へとひた走っていく様は憐れみを誘う。
現実においても殷の紂王にしろ周の幽王にしろ、暗愚であると伝えられている。
ただ実際のところ王朝の最後の王と言うものは、その行状が必要以上に悪く伝えられがちなのだ。
これは春秋時代の時点ですでに、孔子の弟子子貢によって言及されている。
王と言う存在そのものが国の美点も汚点もかぶせられやすいことはもちろん、
亡国の王は次代の王朝が自分たちを正当化するために、ことされに悪く言われやすいのだ。
そうでなくとも国の滅亡を目前として平常心でいられる人間はそうはいない。
国と命運をともにする王であればなおのことである。
これは彼らの妻と言われる「傾国の美女」たちについても同じことである。
彼女らはその多くが実在が不確かだったりそもそも最初から創作であったりする。
彼女らは亡国の原因を国とともに滅んだ王やその国を直接滅ぼした国、
そして国が滅んだ後も次の国で生き続ける民らの代わりに引き受けてくれる
都合のいい存在であったのである。
亡国の王にしろ傾国の美女にしろ、あくまで物語の中の存在として見るべきだろう。
実際はえてして、彼ら彼女らを隠れ蓑にしている人物がいるものだ。
ただやはり、権力や色香というものは人を惹きつけ狂わせる恐るべき甘美な毒だということは確か。
歴史をひもとくまでもなく、身近ででもそれらで身を持ち崩した人など珍しくもないだろう。
それでもなお言えることは、それらに惑わされるのはやはり本人の責任でもあるということ。
人であれば誰しも男性であっても女性であっても、自分の権力や美貌で誰かを思いのままに操りたいと心の隅で願うことはある。
しかしその毒に心を冒されてしまえば、行きつく先は暴君か妖狐しかない。
特に男性は、もし権力をもってしまったなら、このことは心しておくべきことだろう。
あなたが惑わされたりしなければ、目の前の女性はただの女性であるにすぎないのだから。
彼女らを妖狐にしてしまうのは、ひとえに惑わされてしまう男性の弱さなのである。
貴賤美色に心を蕩わるものは家をうしなひ身を亡ぼす。
古往のみにあらず、今来の美人、たとへ其の性妖狐の変ずるにあらずとも、
男子昏迷せば何ぞ妖狐にあらずとせん。
これを鏡として少しく修身齋家の端ともならば、
奇怪の談も咎むべきに、しもあらざるかと聊か弁じて筆をとどめぬ。
― 「絵本三国妖婦伝」(高井蘭山)より
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▷ コメント欄
- ボリュームがヤバい。最近の狐狸記事は読みごたえがあって本当に楽しいな -- 名無しさん (2017-07-15 17:44:40)
- 読 -- 名無しさん (2017-07-15 19:33:19)
- 山怪経の頃は単なる野狐みたいな扱いだったんだっけか。昔の中国では狐の尻尾が多く見えてたのか実際にそうだったのか。 -- 名無しさん (2017-07-15 20:11:39)
- 白面の者が陰気の集合って言うのを知ってすごいと思ったが、実際に伝承でもそんな感じだったのか -- 名無しさん (2017-07-15 20:39:14)
- ↑三国妖婦伝はけっこう読みやすいので、機会があればぜひご一読を。戦闘力ではともかく、邪悪さにおいては白面の者含めたどの九尾の狐の中でも原典の彼女がぶっちぎりだと思ってます。 -- ページ作成者 (2017-07-15 21:12:26)
- ↑2 山海経:南山経だとそうですね。大荒東経だと、天下がやすらかであるときに現れる獣だとされています。 -- ページ作成者 (2017-07-15 21:29:37)
- ちょっとご意見お聞かせください。 「白面金毛九尾の狐」をモチーフとした近年の日本の創作キャラクターで、「白面の者」とその存在感と邪悪さで並べる存在って誰かいますか? 今のところ羽衣狐が候補ですが、他に誰かいれば。 -- ページ作成者 (2017-07-15 21:42:18)
- 「白面金毛」ではなく、「白面金剛」九尾だったからイヅナママンはセーフだな!…まぁモチーフはそれなんだろうけど -- 名無しさん (2017-07-16 00:00:44)
- あくまで出展としては「三国を荒らしまわったという設定の日本起源の妖怪」でいいのよね? -- 名無しさん (2017-07-16 10:50:38)
- さすが白面のプロフィール -- 名無しさん (2017-07-16 13:39:40)
- 殺生石は那須の観光地。普通に見に行ける。 -- 名無しさん (2017-07-16 14:15:05)
- 藤田先生はまさにこいつを画に描いた。愛する者を蹂躙、赤子うんぬんもここからか。 -- 名無しさん (2017-07-16 15:00:15)
- ↑4 そうです。 日本含めた各国の妖婦伝その他が日本で習合されたのが「三国妖婦伝」であり「白面金毛九尾の狐」です。 -- ページ作成者 (2017-07-16 21:26:39)
- >悪しき狐VS善なる狐 -- 名無しさん (2017-07-17 11:02:51)
- ↑3、5 シャガクシャの名もここからですね。 他にもいろいろ符合することがあるので、機会があればぜひ原典もご一読を。 -- ページ作成者 (2017-07-17 18:59:07)
- 確かに晴明の母の伝説を考えれば、人間との愛を持った狐(陽)vs愛を利用し、人間にあらゆる地獄を見せようとする邪悪な狐(陰)の戦いとも。 -- 名無しさん (2017-07-17 23:28:55)
- 能力のところが金毛白面になってる -- 名無しさん (2017-07-19 11:19:50)
- 当時ケモナーがいたら追い出されずにえらいことになってたかもな -- 名無しさん (2017-07-27 13:11:51)
- コヤンスカヤの正体はタマモヴィッチ(アサシン玉藻)ではなくこっちだと思う。ヴィッチの方は影武者って感じで -- 名無しさん (2018-05-20 01:19:19)
- QBの狐「僕と契約して、魔法昏君になってよ!」ってネタを見たときは吹いた -- 名無しさん (2018-05-26 00:03:28)
- 白面金毛って名前なのに人間態がブロンドの白人なのを見たことが無い。いや当然ではあるけど語感めっちゃそれなのに -- 名無しさん (2018-09-24 06:26:12)
- 記事作成者には頭が下がるけど、いかんせん色文字と太字が多すぎて読みにくい。あと元ネタを解説してる記事のタグに初っ端から「Fate」「サーヴァント」ってどうなん? -- 名無しさん (2018-10-17 23:09:20)
- ケモナー蔓延る今の世の中の場合、ヘタに完全に人間に化けるより狐耳だの尻尾だのを出していた方が人を魅了できるかも…w あるいは人になど化けずにキツネのままでもいいかもしれんw -- 名無しさん (2019-03-01 18:51:58)
- 空狐は天狐より偉いとか、そういう適当な内容だろうと思って開いたらえらいこだわりのある記事で驚いた。普通にwikiより詳しいな。ルビも丁寧だし、色彩にまで気を使ってるし、投票入れざるをえない。 -- 名無しさん (2019-04-25 19:33:05)
- 菊地秀行先生の「魔界都市ブルース:夜叉姫伝」の敵「姫」は妲己末喜褒姒そのものだけど白面金毛九尾の狐になった事はないから違うかな… -- 名無しさん (2019-09-23 12:53:17)
- 今更だけど遂に鬼太郎のアニメでも登場したね。人間体はめっちゃエロいお姉さんだった… -- 名無しさん (2019-11-09 02:48:23)
- 更新しました。タグは改行すると無効になるので気をつけてください -- 名無しさん (2020-03-28 02:21:02)
- なんだっけか、追い詰められて蝉に化けて木に捕まってやり過ごそうとしたら、泉に本来の姿が写っててすぐバレたって話なかったっけ -- 名無しさん (2021-04-29 21:27:58)
- グリム童話「奥様きつねの結婚」と言う話にも九尾の狐が出てくる。しかしこちらはオスなうえにでは無いみたい -- 名無しさん (2021-10-13 20:04:02)
- 殺生石の現物が割れたとの報が…… -- 名無しさん (2022-03-05 19:15:14)
- ↑時期は不明だが調査によると自然にパックリいっちゃったらしい。だから余計不気味だけど… -- 名無しさん (2022-03-06 14:07:04)
- とうとう九尾狐復活か 玄翁用意せにゃ -- 名無しさん (2022-03-06 19:24:11)
- ↑玄翁の逸話を信じるならあれもうただの石やで。狐の方は成仏しちゃった訳で -- 名無しさん (2022-03-06 19:40:51)
- シャドバのウェルサ編にも九尾の狐のははさまが出ていたけど9-4=5のさんすうすらわからないほど頭が悪いうえに分身より弱いせいで分身に狐火で焼かれて食われるで扱いが酷かった -- 名無しさん (2022-06-22 13:35:48)
- 殺生石が割れた日、実は羽田からモスクワ行きの最終便が飛んでたらしいのでたぶんロシアに渡ったのではないだろうか。 -- 名無しさん (2022-12-23 01:28:57)
- さいきん殺生石の周りでイノシシ8頭死んでたらしいし、意外に律儀に殺生石のあたりに戻って縄張り作ってイノシシ食ってんのかもしれん -- 名無しさん (2022-12-23 01:34:14)
- ↑2 最終的に玄翁に救われて成仏したという逸話を無視してまで、そういう妄想につなげるのはちょっと……。峰守ひろかずさんもtwitterで発言されてたけど、世相と絡めて不謹慎なこと言うのはやめた方が -- 名無しさん (2023-01-17 22:50:41)
- ↑でもそれも過去の伝承をもとにした創作やん。新しい創作作ってもええやん。 -- 名無しさん (2023-01-27 17:37:26)
- ↑現在進行形で被害者が出ている現実の戦争を創作のネタにして楽しむのは、さすがにいいとはいえないと思います。だからこそ妖怪もの書いてる作家の峰守さんも、戦争を面白がる不謹慎な発想に苦言を呈されたのでは。 -- 名無しさん (2023-02-02 22:38:52)
- 殺生石の正体は濃度が高い硫黄化合物?説がある -- 名無しさん (2023-05-20 07:21:09)
- 魔界都市ブルースの「姫」は、うしとらの白面とも割と正面からやり合えるレベルのばけもんである。なんせ菊地秀行時空のラスボスなもので。 -- 名無しさん (2023-05-20 07:27:11)
- 英傑大戦に玉藻前と晴明が同時に追加され出てきた -- 名無しさん (2023-05-26 00:51:40)
- 玉藻前を退治した話って安倍晴明ではなく5代くらい後の話なんだよね、鳥羽上皇だから当たり前だけど。あと九尾の狐が悪者化したのは射干が伝わったからなんだけど、実は中国に生息していないジャッカルのことだったりする。 -- 名無しさん (2023-10-22 02:19:28)
- ↑正確には陰陽師がやったのは退治ではなく正体看破で、実際の退治は三浦介義明達のような武士達です。 -- 名無しさん (2023-10-26 22:34:07)
#comment
*2 4.5メートル
*3 歴史学上では殷の滅亡は紀元前1052年、周の幽王の在位は紀元前781年から紀元前771年、マガダ国は建国の時期は紀元前700年前後と推測され滅亡は紀元前381年
*4 「酒池肉林」の語源とされる
*5 実際には紂王は敵の手にかかる・捕虜となることを良しとせず自殺したとされる
*6 耆婆:Jīvaka(ジーヴァカ)。悪瘡が生じた阿闍世王に対し、治療のため仏門に帰依するよう進言した逸話で有名。
*7 薬王樹:枇杷の別名。
*8 この時点で崩壊状態に陥ったのは西周であり、新たに建てられた東周が東西の争いを制して新たな周となり500年ほど続く。これを期に春秋時代へと移行するが、春秋時代以降の周は往時とは比すべくもないほど没落した
*9 いわゆる「犬追物」。この時期ころに発祥したと言われる。
*10 この際に三浦介の夢枕に玉藻前が立ったという伝承もある。玉藻前は三浦介に兵を退けば守護者になるともちかけるが、三浦介はこれを妖狐が追いこまれている証ととらえ一気呵成に攻め立てついに白面金毛を討ち取る。しかし妖狐の誘いを蹴った三浦介は、子々孫々まで祟られることになったという
*11 この伝承により大型の金槌を「玄翁」と呼ぶようになったと言われる
*12 仙人としての試験に合格し然るべき修行を積むと、とも言われる。立派な仙人となるのに、動物は1000年の修行が必要なのだ。
*13 一切の物事を見通す神通力
*14 元より日本の原始的な神々は善神・悪神と二分化されるものではなく、恵みをもたらすこともあれば度々荒ぶることもあるので、むしろ「善なる狐」のほうが後から広まったイメージかもしれない。
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