ピエール・ド・フェルマー

ページ名:ピエール_ド_フェルマー

登録日:2016/12/17 (土) 17:30:00
更新日:2024/02/01 Thu 13:43:53NEW!
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数学 弁護士 数学者 フェルマーの最終定理 整数論 アマチュア アマチュア←数多の人間を叩き落とした 数論の父 ワンピースの冒頭ナレーションみたいな人 ピエール・ド・フェルマー フェルマー




Hanc marginis exiguitas non caperet.



ピエール・ド・フェルマー
生年:1607年?
死没:1665年 1月12日


ピエール・ド・フェルマーはフランスの法律家、弁護士、数学者。
本業は弁護士であるが余暇で嗜んでいた数学分野で様々な業績を残し、「数論の父」と称される。
彼が発案した後300年以上もの間解法が見つからず、無数の超一流数学者が挑んでは敗れていった伝説の証明問題「フェルマーの最終定理」を考案したことで知られている。



来歴

1607年(1608年説もあり)南フランスのボーモン=ド=ロマーニュに生誕。父は革商人のエドゥアールで、母は法律家一族の出身のマリー。
父エドゥアールはピエール生誕直後に起こった一揆騒動に巻き込まれ死亡。以後は母マリーが女手一つでピエールを育て上げる。
母の没後は母の家系を継いだことで弁護士の道を志す。兄のピエールも一応いたが彼は生後すぐに亡くなっている。


地方の学校で学んだ後トゥールーズで勉学に励み弁護士資格を取得。
1631年に同地にて請願委員に選出され、同年従姉妹のルイズ・ド・ロンと結婚した。


順調に実績を積んだフェルマーは1648年、トゥールーズ議会の勅撰委員に選出、高等院参与に就任。
以後フェルマーは没するまでその地位に留まり続け、終生トゥールーズから離れることはなかった。


1665年、58歳(57歳)で没。


人物

裕福な商家の生まれだったので幼少の頃より高度な教育を受け、語学や詩等の才能に秀でたインテリだったそうな。


同年代に生きた著名な学者にはデカルトやパスカル、ニュートン等がいる。
専門の学者であった彼らに対し、フェルマーはあくまでも弁護士・代議士が本業であり数学は趣味に過ぎないアマチュア数学者だった。


数学分野での業績ばかりが取り上げられがちだが、
晩年にはフェルマーの原理(光は進む際、いかなる場合も常に目的地点までの最短経路を通るという法則)を確立させるなど科学分野での業績もある。


数学とは無縁だったフェルマーを数学の世界へと誘ったのは古代ギリシアの数学者ディオファントスが著した数学書「算術」に出会ったことだった。
フェルマーは生涯これを愛読書とし、様々な数学的発見を余白に書き込んでいた。



フェルマー自身は数学で名をあげようという意識が薄かった*1ようで、自身が発見した命題はメモ書き程度で済ませて、証明方法をちゃんと書き残さなかった。
あげく、手紙などで交流のあった学者に自分が証明した問題を送り付けて、解けるかどうかを試すという趣味があった。
もちろんこの時も自分の証明なんかつけないから送りつけられたほうは相当イラッと来て、デカルトはフェルマーのことを「大法螺ふき」と呼んだとか。


こんな調子なので、顕著な業績を残しながらも殆ど学術関係の著書を遺しておらず、その研究過程には結構謎が多かったりする。



しかしフェルマーの死後、「算術」への書き込みは息子のクレマンによって著書にまとめられ出版され、世に放たれることとなる。
これらの書き込みには48個の命題があり、数学上の難問として後の世の多くの数学者の頭を悩ませた。
しかし、年月を経ると命題のうちフェルマーが「証明できた」と書いてあったものは証明され、命題だけが書いてあったものは否定されていった。



ただ1つの命題を除いて



そして、この証明も否定もされなかった最後の命題こそが後に伝説となる数学的命題「フェルマーの最終定理」である。




フェルマーの最終定理


3以上の自然数「n」について、x^n + y^n = z^n となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない。
「私はこの定理について真に驚くべき証明を見つけたが、それを書くにはこの余白は狭すぎる


噛み砕いて言うと、例えば『ある数の三乗』+『ある数の三乗』が他の数の三乗になることは絶対にない。
そして3よりも大きい自然数でも同じように絶対にならない、という定理。


ちなみに
この「n」が1の場合は普通の自然数同士の和の計算で、2の場合もとても簡単。学校で教わる『ピタゴラスの定理』『三平方の定理』である。
例えばx=3,y=4,z=5で、9+16=25。


なのだが、これが3以上になると途端に当てはまる自然数が見つからなくなる。
見つからないのはそんな組み合わせは存在しないからだ、そして自分はそれを証明できたけど余白がないから書けないぜ!……というフェルマーの主張。
余白があっても書かなかっただろ! いい加減にしろ!


何しろピタゴラスの定理を超シンプルに変形しただけなので、一見簡単そうに見えて実のところ果てしなく難しい。
フェルマーの死後100年くらいは「nが3の場合と4の場合には成り立つな。」くらいのレベルだったという。
ちなみに後述するようにn=4の場合を示したのはフェルマー本人である。
n=3を証明したのは数学の大巨人レオンハルト・オイラーだったりする(なお、彼がフェルマー予想を発展させたオイラー予想は正しくなかったことが判明している)。



実は指数法則を用いることで、nの条件を狭めることができる。


例えばn=15の場合は、


x^15+y^15=z^15


に対して、指数法則を用いて(x^5)^3+(y^5)^3=(z^5)^3としてやるとx^5.y^5.z^5はどれも自然数なので新たにX.Y.Zと置き直せて、


X^3+Y^3=Z^3


となる。つまりn=3の場合のフェルマーの最終定理が示せればこういうパターンの式もないことになり、n=15についてもフェルマーの最終定理が成り立つことが分かる。


これらによってnは4と3以上の素数の場合を考えればいいのだが、
「個々の数について考えよう。」という考えのもとで19世紀半ばまでに示されたのはn=5の場合とn=7の場合について*2のみである。


同じ19世紀中に今度は「もっと大きな範囲で包括的に証明に取り組もう」という考えで、
100以下の全ての素数、及び100以上についてもある特定の条件(複雑なので記載しない)を満たす素数については成り立つ事が示されたが、
やはり全ての素数に対する完全な証明には至らなかった。コンピュータをもってしても400万くらいまでは成り立つことしかわからなかった。


この問題がどれ程難しいのかがよく分かるだろう。


最終的に世界中の天才数学者が350年以上かけ、
当時最先端の数学定理やフェルマーの死後に開拓された新たな数学分野の知見を総動員して、
ようやくアンドリュー・ワイルズによって1994年に完全な解明に漕ぎ着け、1995年に正しい証明として認められて、問題そのものに終止符が打たれた。
ちなみにワイルズは1993年に証明を発表していたが、その内容内に欠陥が見つかったため修正にさらに時間を費やしている*3
その論文のページ数は(イントロダクション等込みで)なんと129枚



無論、フェルマー存命当時の数学界の知識では到底解明出来るものではなく、
よってフェルマーが想定していた解法は正しくない、もしくは自身が証明したn=4の場合の証明が他でも適用できると勘違いしたとする見方が現在は一般的である。
仮に余白がたっぷりあったとしてもこれでは書ききれなかった事だろう。


もちろん、「当時レベルの数学でも実は解けるのでは?」と研究している人もいるとか。



余談だが証明に成功したワイルズが数学者になったきっかけは10歳の頃に図書館でフェルマー予想と出会い、
「フェルマーの最終定理を解いてみよう」と思ったからであった。


その後、大学では教授のジョン・コーツの指示で当時はフェルマーの最終定理とは異なる分野を研究していたのだが*4
その研究分野の中で出た課題の解決がそのままフェルマーの最終定理の証明に繋がっていくことになった*5


自分の分野の研究がかつて憧れた問題の解決に役に立つことになるとは、なんとも運命的な話である。



フェルマーの遺産

先述の通り、フェルマーは愛読書としていた、ディオファントスの「算術」に多くの書き込みを残し、
その中でも主要な48の書き込みは本人が証明方法を省いたこともあり数学上の難問となり多くの数学者の興味を引いた。


意外なことにその数式の殆どは二次方程式など中学レベルの数学でも理解できる内容になっており、一見すると至極簡単なように見える。
しかしこれらは単純に数値を代入して解を求めればはい終わりというものではない。
凡そ考えうる数学上全ての可能性に対しいついかなる場合もこの法則が適用できるということを完璧に証明しなければならないのだ。
「数」は無限に存在するため、「理論上あり得ない」ということを明らかにしないと例外が存在しうる可能性を排除することは不可能なのである。


フェルマー予想が特にそうだったが、理解するのは簡単だが証明は難しいというこれらの書き込みから数学者になった人物は数多い。
なぜなら数学の未解決の問題の大多数は、問題自体が難解な用語を用いなければ表現できないものであるから。
用語を知らないと定理の主張の時点で言葉遊びにしか見えない問題やΣ等の数学記号が予想に組み込まれている問題と比べれば、
中学から高校の数学知識があれば言いたいことは理解できるこれらの書き込みは数学者への入り口にはぴったりだったと言えるだろう。


半面、数学に人生をかけられる根っからの数学者以外ものめり込ませたという面では多くの人間を叩き落とした悪魔の予想と言えるかもしれないが……*6




以下はフェルマーが遺した書き込みの一部を紹介する。


  • [01番目の書きこみ] 

ピタゴラスの定理:直角三角形の3つの辺をx, y, z(zが最大とする)とすると、x^2+y^2=z^2が成り立つ。
このとき、満たす整数は、x=p^2-q^2, y=2pq, z=p^2+q^2(p, qはp>qとなる自然数)ですべて表すことができる。
例:p=2, q=1のときx=3, y=4, z=5
そこで本題:a-d, a, a+d(a, dは整数)という3つの整数をつくる。そうすると、p=a+d, q=a-dと代入して作った直角三角形は必ず
[直角三角形の面積]=(a-d)× a×( a+d)× d
となる。

少し長めだが、最初の書き込みなので書いた。具体的に数字をいれてみよう。
例:a=3, d=1のとき、p=4, q=2→x=8, y=6, z=10, このとき直角三角形の面積は8×6×1/2=24で(a-d)× a×( a+d)× d=(3-1)× 3×( 3+1)× 1=2×3×4×1に等しくなる。
証明は簡単。


  • [02番目の書きこみ]

x^n+y^n=z^n (nは3以上の整数)を満たす正の整数x, y, zは存在しない。

これこそ、人類の歴史上でも最強クラスの難問《フェルマーの最終定理》
n=3とn=4*7の場合の証明はがんばれば高校生にも理解できる。我こそはという人は挑戦してみてね。


  • [03番目の書きこみ]

ある整数a, bの3乗の和を、別の数(有理数でもよい)x, yの3乗の和としてあらわせ。

つまり、
a^3+b^3=x^3+y^3
を満たすx, yを求めるということである。


  • [07番目の書きこみ]

4n+1(nは整数)であらわされる素数はすべて、2つの整数の2乗の和であらわすことができる。
また、4n+3(nは整数)であらわされる素数は2つの整数の2乗の和で決してあらわすことができない。

例:17=16+1、29=25+4、37=36+1、……


2平方数定理とも呼ばれる。18世紀最大の天才オイラーが証明した。
実はこの命題が成り立つことにより、4n+1という形をした素数はガウス整数と言われるある特殊な数の集合の中では2つ以上の(±1などの自明な数を除いた)ガウス整数の積に分解できるようになり、
素数ではなくなってしまう
一方、4n+3の方はガウス整数内でも素数になることが分かっている。


ちなみに2は4n+1でも4n+3でもない形の唯一の素数だが、1+1となるため、2つの整数の2乗の和で表すことができる。


  • [18番目の書きこみ]

すべての整数は、3つの3角数、4つの4角数、5つの5角数、そしてk個のk角数の和であらわすことができる。ただし整数に0を含む。

k角数とは
1/2×n{2+(k-2)(n-1)}  (nは整数で「k角数のn番目」という意味)
で表すことができる数字である。4角数はk=4なのでn^2となる。
例(4角数の場合)
5=1+4+0+0
6=1+1+4+0
7=1+1+1+4
8=4+4+0+0
9=4+4+1+0
10=4+4+1+1
……


k=4の場合、4平方数定理と呼ばれ、オイラーが挑戦したが完全に証明しきれず、弟子のラグランジュが1770年に証明した。
一般的なk角数の場合は、最終定理の歴史にも出てくるコーシーが1813年に完全解決した。
ちなみにフェルマーの書きこみの中で最後から2番目に解決された問題である。


  • [23番目の書きこみ]

ある直角三角形と同じ面積をもつ別の直角三角形を無限に作れるか? ただし、3つの辺は有理数でないといけない。


  • [25番目の書きこみ]

3で割りきれるが9でわりきれない数は、2つの整数の2乗の和ではあらわせない。また、2つの有理数の2乗の和でもあらわせない。


  • [33番目の書きこみ]

2つの4乗数の和は2乗数にはならない。


要するにx^4+y^4=z^2となる非自明な整数の組(x,y,z)は存在しないということである。


この時zが平方数、つまり整数wによってz=w^2と書ける数だった場合、上記の式は
x^4+y^4=z^2=(w^2)^2=w^4


となり、フェルマーの最終定理のn=4の場合になる。


つまりこの命題が解ければフェルマーの最終定理のn=4の場合を示せる。


  • [40番目の書きこみ]

直角三角形の辺をx, y, z(zが最大)とする。このとき、x-1/2×xyが有理数の平方数a^2、y-1/2×xyも有理数の平方数b^2となるx, y, zを求める方法を考えよ。


  • [41番目の書きこみ]

直角三角形の辺をx, y, z(zが最大)とする。このとき、z-1/2×xyが有理数の平方数a^2、x-1/2×xyも有理数の平方数b^2となるx, y, zを求める方法を考えよ。


  • [42番目の書きこみ]

ある整数x, yで


x^2+2=y^3


を満たすx, yは、x=±5, y=3の2組しか存在しない。


  • [45番目の書きこみ]

3つの辺が有理数からなる直角三角形の面積は、決して有理数の3乗にはならない。







フェルマーの最終定理も難問だが、先に証明されていた47の定理も何れ劣らぬ難問揃い。
我こそはと思う人は自力での証明に挑戦してみてもいいかもしれない。





参考文献:「フェルマーを読む」(1986年、足立恒雄、日本評論社)





偉大な数学者Fの人類への貢献をすべて書くには、この記事は短すぎる。
追記修正が必要である。


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  • 肝心のフェルマー本人の来歴やフェルマーの最終定理について殆ど触れられてないのは如何なものか -- 名無しさん (2016-12-17 18:46:14)
  • 何がしたいんだこの項目。プラグインや構文もなくて読みづらい。「こんなこと知ってる俺かっけー」としか思えん。 -- 名無しさん (2016-12-17 19:36:15)
  • いくらなんでもひどいので来歴や逸話について加筆中。少々お待ちを。 -- 名無しさん (2016-12-17 20:21:10)
  • どうだ、多少は読みやすくなつたらう? -- 名無しさん (2016-12-17 21:55:12)
  • ↑乙 難しくて問題がわからないわ -- 名無しさん (2016-12-18 11:54:14)
  • サイモン・シンのフェルマーの最終定理読んだけど数学苦手な文系の俺でもめっちゃ面白かった。 -- 名無しさん (2016-12-23 02:06:51)
  • 冒頭に日本語訳を併記しようかと思ったが余白が足りないからやめよう -- 名無しさん (2018-11-02 13:49:29)
  • ABC予想関連の話題のおかげで、フェルマーの最終定理がトレンド入りしてて驚いた。350年で129枚が数ページで証明できるってそりゃすごいわ、と素人ながらに感心してたけど -- 名無しさん (2020-04-03 19:47:52)
  • 議員としては有能かつ公平な人間で権力争いに興味がなかったことから敵はほとんどいなかったらしい。肉体的にも健康そのもので当時としてはかなり長生きしてる。 -- 名無しさん (2020-04-03 20:03:30)
  • あっちゃんのYouTubeチャンネルでワンピースのゴールド・ロジャーに例えられててつい笑ってしまった…w -- 名無しさん (2020-05-06 22:42:23)
  • 01番目の書き込みの中で「p=a+d, q=a-dと代入して作った直角三角形は」とある部分の代入については「p=a, q=dと代入」が正しいかと存じます -- 名無しさん (2022-08-04 23:23:43)
  • このころに数学の研究をしていた人はだいたい本業があってかたわらに数学やって人が多いくらいに数学の位置づけが低い時代 -- 名無しさん (2022-08-04 23:25:28)
  • 数学が苦手な自分にとって遥か彼方の世界の人。 -- 名無しさん (2023-09-27 19:12:37)

#comment

*1 そもそも彼の本業は上述したようにあくまで弁護士であり、数学それ自体は余暇に行っていたものとされている。
*2 ただしn=7についての証明過程としてn=14の場合が先に証明されている。
*3 本人曰く「夢じゃないかと思うような素晴らしい証明」が頭に浮かんだとのことで、それが研究当初放棄した岩沢理論によるアプローチを可能にするという発見であった。図らずも本人がかつて教授の手によって選んだ道によって理論の欠陥は修正された。
*4 数学者のピークは短いため教授がワイルズに、今まで数々の天才が挑み敗れていった解けるかどうかもわからないフェルマー予想を数学者として一番いい時期に挑ませるのは危険と判断したためらしい。これは教授がワイルズの才能を認めていたのが大きな理由だが、まさかこの選択が結果的にワイルズがフェルマー予想を解くきっかけになるのだから人生は分からない。
*5 谷山・志村予想とフライ曲線という共に楕円曲線に関わるものであり、後者が成り立てばフェルマー予想は間違っていることが、前者を証明すればフェルマー予想も証明できることが明らかになっていた。
*6 証明したワイルズですら7年もの月日を費やし、その間はフェルマー予想を解こうとしていることを知っている家族以外の評価は以前と比べてガタ落ちしてるし
*7 この場合の証明をしたのはフェルマー自身で、彼はこの時用いた方法を他の場合にも適用出来ると考えたというのが上記の「真に驚く証明」なのではないかという説もある。

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