登録日: 2016/12/09 Fri 01:05:49
更新日:2024/02/01 Thu 13:41:36NEW!
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scp foundation safe euclid scp-jp scp財団 箱 認識災害 どうしてこうなった 暇を持て余した財団の大暴走 骨折り損 scp-938-jp ただの木箱 ←よって厳重に保管すべし 財団の本気 oruto 木箱 空箱
極秘厳重収容案件: SCP-938-JPに関する全ての情報はエリア-8199管理者、日本支部理事会、O5評議会によって管理されています。許可無くこれらの情報にアクセスした場合、財団は直ちにあなたの雇用を終了し、機動部隊があなたの拘束のために出動します。あなたがレベル4以上のセキュリティクリアランスを持つ場合、手順に従い資格を提示することで情報へのアクセスが可能です。この情報へのアクセス記録はあなたの職員コードと共にエリア-8199管理者へと送られます。
職員コード
Area:8199 Director
パスワード:********
第二次警告: この情報にアクセスするためには、エリア-8199管理者から与えられるパスコードと日本支部理事会からの認証が必要となります。コードを所有していない場合、正式な手順に則って申請を行い、認証を獲得してください。認証の偽造は日本支部理事会によって即時の終了措置を含む厳罰に処せられます。
職員コード
Area:8199 Director
パスワード:********
最終警告: SCP-938-JPに関する情報を閲覧した者には機密保持の義務が課せられます。今後SCP-938-JPに関する情報の漏洩が確認された場合、あなたにはエリア-8199管理者からの召集と尋問に応じる義務が生じ、同意なしでの拘留やクラスF記憶処理を受ける可能性があります。本件は最終認証の実行が確認された時点で同意したものとして扱われます。
職員コード
Area:8199 Director
パスワード:********
日本支部理事会より許諾を確認: 情報を開示します
SCP-938-JPはシェアード・ワールドSCP Foundation日本支部のオブジェクト(SCiP)。
概要…の前に
SCP-938-JPはページ冒頭のように、なんと三回も警告を受け、職員コードを入力しなくてはならない。
しかも即刻の解雇やクラスF記憶処理となにやら重大なペナルティづくしである。
しかし驚くのはまだ早い。このオブジェクトの特別収容プロトコルもまたとんでもない厳重さを誇る。
何と全文1582字という驚きの長さ。それも英語ではなく日本語の文章で、漢字かな混じりで「1582字」なのだ。
当然コピペしても読んでて疲れるので、適度に要約して箇条書きにしてしまおう。
- 機密性を維持するために時々引っ越しするよ
- 引っ越しするときに前のサイトの担当職員と移送した職員は全員特別な記憶処理を施すよ
- こいつが引っ越すときは専用のサイトを作るよ
- 全体の統括はエリア-8199の管理官に任せるよ
- 人事異動で新たな管理官が任命されたら前の人は特別な記憶処理を施すよ
- 万が一思い出したら更に一段階重い記憶処理を施すか、もしくはその場で終了するよ
- こいつの専用ロッカーは各施設の地下500mに建造されるよ
…ここまで書いてきただけでもなにかがおかしいレベルの収容方法である。
異常存在を守るのに異常存在まで配置した挙句、トラップの種類も多様、
そしてそれを乗り越えてさえ許可がないと開けられないロッカー。
現実改変者対策まで行われている。
おまけに知るだけでも大変やばいらしく関わった人は片っ端から記憶処理の嵐である。
…だがこれでもまだ特別収容プロトコル全体の2/5。
2/5である。
- 担当者は定期的にこいつがなくなったり傷ついてないかチェックするよ
これでようやく4/5(だいぶ端折った)。
ここまで見たらこのオブジェクトは相当危険なんだなって思うだろう。
だが次の一文が一気に理解を突き放す。
SCP-938-JPの収容は極めて優先度の低い事項です。
「極めて優先度の低い事項です」
極 め て 優 先 度 の 低 い 事 項 で す
ここまで関わる人がやたらめったら「失敗したら死ぬよ! 死ぬよ!」ばっかり言っておきながら、そんな命懸けの収容をする優先度は低いのだそうだ。
なら別にいいじゃんって思うのに、その次の文章はこれ。
もしSCP-938-JPに収容違反の危機が迫った場合、収容に関わる全ての施設は総力を挙げて阻止しなければなりません。
…わけがわからない。あれか、報告書を書いた人は誤字でもしたのか? SCP-586の地下くにいたのかもしれない*2。
いや、それならここだけ誤字るわけがない。
ともあれ、収容違反の危機が迫ったらプロトコル『ゲイリー・クエスト』が行われる。
ゲイリー・クエストの概要は以下のようなもの。
- エリア-8199の管理官は機動部隊6つの指揮権を得る
- 機動部隊は収容違反の原因となり得るあらゆる因子を排除する
- 排除しきれない時はエリア-8199の皆様ごと核弾頭で始末
…いやいや、優先度が低いんだろ? なんでそんなものの収容違反で核弾頭が出てくるんだ?
ともあれ、これが特別収容プロトコルの大雑把な要約である。
大雑把に要約してこの長さである。なんなのこれ。
ここまで読んだ人、お疲れ様でした。
ここまで読んだ人は思っただろう。きっとこんなオブジェクトはKeterだ、
いやKeterでもここまで厳重なのねえよ、もっと上の何かだよと。
だがこのオブジェクト、あろうことかオブジェクトクラスはSafeなのである。
いやまあ、確かに「収容できているなら」Safeかもしれない。だがここまで厳格にやってやっとSafeなんだろ? きっと大層危険なものなんだろうよ。
オブジェクト概要
SCP-938-JPは横11cm×縦7.5cm×高さ8cmの木製の箱です。中身は空です。
…以上。
補遺
流石にこれじゃあんまりである。
クソトカゲもアベルもされないあれだけの収容をしておいて、
収容人員はやたら命を懸けておいて、1582字も特別収容プロトコルを書いておいて、
オブジェクト概要はたった一行、44文字で終わりだなんて、
しかもただの木箱?
そのアンバランスさの答えは実は補遺を読むとわかる。
まずエージェント・水野の報告。エージェント・水野は世界オカルト連合がかつて管理していたと思われる施設の探索をした。
もちろんエージェント・水野以外にもたくさんの人員が投入された。
そして死者14名、重軽傷者27名、精神崩壊者6名と相当額の損失を出した末にこの木箱を回収した。
だがエージェント・水野はその木箱になんの異常性も認められなかった。
まあ異常物品である以上は目に見えないだけで異常性があるものもあるかもしれないが、同行していた研究者も同様の見解を出した。
そのため異常性はないか、あるいは失ったものと判断した。
…そのため最寄りのサイトに機動部隊の緊急出動と速やかな収容を要請した。
そのサイトにいた清松研究員はこの木箱を研究したが、「あらゆる点において、それはただの木箱だった」。
なんか異常物質が出てくるわけじゃない。触ってる間に材質が変わるわけもない。物が無限にいれられたりなんてこともない。
こんなんAnomalousアイテムにすら分類できないだろう、と清松研究員は報告した。収容する必要性がわからない。理解に苦しむ。
…よって直ちにSCPオブジェクトと認定し他のオブジェクトにも勝る収容体制下に置くべきであると報告した。
日本支部はこのオブジェクトの収容に関する予算を申請した。
O5のひとりは、「報告書をどうみてもただの木箱でしかないぞ、こんなんに金をかけろ? 馬鹿なのかお前ら?」と問うた。
財団は異常物品を保管するためになら金に糸目はつけないが、だからって無駄に浪費していいとは言ってないだろうと。
…よって申請を受理し、不要な予算と人員を直ちに配備されるだろうと伝えた。
菊池監査員は日本支部での不透明な予算フローに関して調査していた。
そしてその結果、とんでもない予算が消失した理由がはっきりした。
…よって問題はないと結論づけた。
エリア-8199管理官殿はここまでのこのオブジェクトに関する研究、収容に至るまでのここまでのやりとり、そして収容体制を見なおした。
そしてその結果、このオブジェクトの収容体制についてこのように考えた。
まずこのオブジェクトが収容違反する確率は全くありえない。
こいつはただの木箱。どこでもチェックインできるパスポートでもあるまいし、誰も欲しいとさえ思わない。
もし万が一そんな酔狂な奴がいてもこんなダンジョンを踏破できるやつは限られる。
そもそも機密保持すら万全で、財団外でこれを知りうることはほぼありえない。
そして財団は、可能な限りの「完璧な収容」を施した。
…それこそが問題なのであった。
よく考えて欲しい。最初にこのただの木箱が発見されたのは世界オカルト連合の施設だったな?
世界オカルト連合は異常物品は徹底破壊する団体である。
特性を鑑みてGOCが財団に依頼することならあるが、GOCが自分たち自身で収容なんて選択肢としてあろうはずもない。
そんな団体ですら、この物品の「収容」にとんでもない施設を用意していた。
GOCはまだ施設から自分たちが撤退することで異常性から抜けだしたのだろう。
だが保管フリークの巣である財団にこれが『収容』されてしまったことが悲劇の始まりだった。
SCP-938-JPはただの木箱である。ただの木箱にここまでの収容をする必要は本来ないはずである。
だがこのただの木箱は、「いかなる手段を持ってでも万全に収容しないといけないと結論させる」異常特性を有していた。
かつて図書館だったSCP-2602を知っているだろうか。
あの施設は、「かつて図書館だったはずの建物としてはおよそありえない条件が揃っている」故にかつて図書館だった建物であると結論付けられるのである。
あれと同じこと。つまり「こんなただの木箱の収容は絶対に要らないことが自明である」故に万全な収容をしなければならないと結論付けられるのである。
ただの木箱である、安全だってわかっているのに、「ゆえに」ちゃんと収容しなくちゃとなってしまう。
そう、この認識災害特性を除けばただの木箱でしかないオブジェクトは、収容を万全にすればするほど、かえって収容違反してしまうのだ。
財団が「このオブジェクトを収容する」のではなく、「このオブジェクトに収容させられている」のである。
すでにおびただしい予算、無意味に浪費した人材、そしてなにより本来の機能を停止してこのただの木箱を収容するためだけに改造されてしまった複数のサイト。
放置すればするだけ、「収容する」という収容違反は際限なく拡張されてしまう。
確かに収容して収容違反の危険もまったくないが、「収容違反の危険がない」という収容違反が現在形で起きてしまっているのでSafeなはずがない。
…よってこのただの木箱の正しい『収容』のため、オブジェクトクラスをEuclidへの変更と、本来の収容体制を構築するための追加予算を申請した。
補遺6: 収容中のSCP-938-JP表面に貼り付けられていたメモ用紙
誰か早くコレを収容違反してくれ。
SCP-938-JP - たからばこ
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CC BY-SA 3.0に基づく表示
SCP-938-JP - たからばこ
by oruto
http://ja.scp-wiki.net/scp-938-jp
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*2 SCP-586について記述すゑとき必ずひとつ以上の誤字が含まわる
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