登録日:2016/03/20 Sun 13:18:32
更新日:2024/01/22 Mon 13:34:17NEW!
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諸星大二郎 漫画 不定期連載 シリーズ項目 怒々山博士 ナンセンスギャグ
怒々山博士シリーズとは、諸星大二郎による怒々山博士を主役とした短編漫画シリーズである。
【概要】
『西遊妖猿伝』『妖怪ハンター』『諸怪志異』といったシリーズに代表される伝記大作的な漫画家として有名な一方、『栞と紙魚子』シリーズに代表されるどことなく「ずれた」趣のあるナンセンスギャグ作品の書き手としても知られている作家・諸星大二郎による、怒々山博士をメインにした短編漫画の連作。
ただし連作といっても短い期間内に集中連載される類のものではなく、数年あるいは十数年くらいの間を開けて不定期に発表されるシリーズであるため、単行本に纏まってない作品の掲載誌を買い逃してしまうと向こう数年はやきもきさせられてしまうことも。
諸星氏は「天崩れ落つる日」後書きにて、本シリーズを「気軽に時たま書いていたもので、それだけに中途半端でとりとめのない感じ。時々、こういった馬鹿馬鹿しい衝動が出てくるので、その受け皿にはこういう馬鹿馬鹿しいキャラクターがうってつけなんでしょう」という旨の言葉で評している。
単行本には諸星氏の短編集に作品が散発的に収録されることもあるが、シリーズがまとまって読めるのは1997年刊行の「天崩れ落つる日」(集英社)と2010年刊行の「諸星大二郎ナンセンスギャグ漫画集 (珍)の巻」(JIVE)。
この内、「天崩れ落つる日」は刊行までに発表されたシリーズを全て収録、「(珍)の巻」はそれに加えて『聖書を掘る』のエピソードが単行本初収録されている。
2017年に刊行された「諸星大二郎劇場 第1集 雨の日はお化けがいるから」(小学館)にはこれまで未収録だった『謎の遺跡』『巨石遺構』の2編が新たに収録され、
2018年刊行のムック本「文藝別冊 総特集 諸星大二郎 大増補新版」(河出書房新社)にて『砂漠を行く』『珍面犬』『宇宙からの訪問者』が収録。
これにて、全ての怒々山博士シリーズ作品が一通り単行本収録が叶う事となった。
この他、2013年刊行のムック本「文藝別冊 総特集 高橋葉介」(河出書房新社)に寄稿された2ページ漫画にも、諸星大二郎作品のキャラクター達に混じって怒々山博士が登場している。
【シリーズ紹介】
並びは作品の初出順。
◇ど次元世界物語
少年アクション1975年12月号No.9(双葉社)に掲載。怒々山博士シリーズの第一作で、初出タイトルは「ど次元くん」。
我々が存在するこの世界とはまた別に存在する「なにげなく、ふと存在する世界」、“ど次元の世界”。
ど次元の研究に一生をかける怒々山博士とその助手は、異常なまでにドジかつ物忘れの多い少年・林元太を利用し、彼と共にど次元の世界へと踏み込む。
そこに待っていたのは、作者がいい加減に「なにげなく、ふと書いた」異様な世界だった。
◇逆立猿人
漫画アクション増刊「スーパーフィクション・スペシャル」(1981年・双葉社)に掲載。
人類誕生の謎を追う怒々山博士と助手の林元太は、人類史のミッシングリンクを埋める化石ホモ・アベコベを求めて「入らずの山」に入山。
そこで博士らは奇妙な姿をした原始人「逆立ち猿人」と遭遇、山から逃れようとするが……
「天崩れ落つる日」収録版では物語のオチに併せた特殊な演出がされているが、「(珍)の巻」収録版ではそれがオミットされているのが少々残念なところ。
◇陽はまた昇る
月刊少年チャンピオン1982年7月号(秋田書店)に掲載。初出タイトルは「扁虫類太陽目」。
ある日、とある田舎の畑に小さな隕石が落下。それと時期を同じくし、「光る牛」や「光る夢遊病少年」が近辺で目撃される怪現象が発生。
隕石の送り主に合うため田舎まで赴いた怒々山博士と林元太は、たまたま光る少年を目撃したことから事件の調査を行うが、そんな彼らの前に「巨大な光る怪物」が出現し……
◇怪談 竜の足跡
アニメージュ1990年4月号付録「ミニミニ漫画大行進」(徳間書店)に掲載。シリーズ最短の3ページ短編である。
怒々山博士率いる探検隊はアフリカ奥地で奇怪な動物の足跡を発見。村や町を破壊しつつどこまでも続く足跡、その正体は……
◇怒々山博士 聖書を掘る
本とコンピューター1998年秋号(大日本印刷)掲載。
怒々山博士と林元太は聖書に隠された真実を探るべく、世界各地でノアの箱舟・バベルの塔・聖櫃(アーク)の発掘作業を行う。そして明らかとなった歴史の真実とは。
◇怒々山博士 砂漠を行く
ビジネスジャンプ2006年1月27日増刊号「ビージャンこん・27」(集英社)に掲載。
人跡未踏の地・鳥取砂丘……もとい、トトーリ砂漠を訪れた怒々山博士は、伝説の生き物「テークテーク」の謎に挑む。
◇怒々山博士と謎の遺跡
ビジネスジャンプ2006年3月27日増刊号「ビージャンこん・28」(集英社)に掲載。
ジャングルを探検中に謎の遺跡を発見した怒々山博士と林元太。探索を試みるも、一行は遺跡の門番と遭遇する。
◇怒々山博士と巨石遺構
ビジネスジャンプ2006年5月26日増刊号「ビージャンこん・29」(集英社)に掲載。
怒々山博士と林元太は日本のとある山中にあるという謎の巨石遺構をついに発見。
日本の巨人伝説と巨石文化の関連を立証すべく、怒々山博士は遺構の謎に挑む。
◇怒々山博士と珍面犬
ビジネスジャンプ2006年7月25日増刊号「ビージャンこん・30」(集英社)に掲載。
論文の執筆に勤しむ怒々山博士はテレビの放送で、自身とそっくりな顔をした「珍面犬」が世間を賑わしている事を知る。
◇怒々山博士と宇宙からの訪問者
ビジネスジャンプ2008年1月25日増刊号「ビージャンこん・39」(集英社)に掲載。
ある夜の二時半、怒々山博士宅にUFOが飛来、その中から宇宙人が現れる。
【主な登場人物】
◆怒々山博士(どどやま -)
本シリーズの実質的な主人公。ハゲ頭に顎鬚がチャームポイントの初老の男性で、『逆立猿人』以降は眼鏡を掛けるようになった。
ど次元、逆立ち猿人、宇宙からの飛来物、その他諸々と世界に潜む不可思議を求めて研究に人生を費やす人物……と書けばカッコイイが、その実態は相当奇矯な人物。
ハゲ頭の反射光を「叡知の光」として照らし出したり、ど次元から脱出する為に行った“まともなこと”がふんどし一丁で「トーモロコシガホウサクダヨ~♪」と踊りだすことだったり、逆立猿人の仕掛罠に拾い食いであっさり捕まったり、逆立猿人の真似が恐ろしいまでになりきっていたり(挙句ラストには……)、聴取に赴いた家のスキヤキに平然と手を付けたり、アメリカのスペース・ラブの実験の一つとして「巨大なネズミ取りを宇宙にしかけてエイリアンを捕える」計画を提案する……など奇行は枚挙に暇がないが、実際には周囲の人間・現象がことごとく(林君も含め)ほぼ変なものだらけという作品なので、むしろ怒々山博士が割と普通人に見えてしまうことも少なくない。
『陽はまた昇る』では自分の偉業を写真付きで世界中に報道されることが夢だったと語るなど、人間らしい俗っぽさも兼ね備えている。
初登場の『ど次元世界物語』では「少女マンガ家と劇画家とギャグマンガ家の合作キャラクター」と評される程のインパクトある顔つきだったが、以降は割と普通の顔立ちになった。
後述するテークテークに珍面犬と、妙に人外の生物に懐かれる傾向にある。
◆林元太(はやし げんた)
本作のレギュラー。
初登場の『ど次元世界物語』ではど立大三元中学校・一年リーチ組に通う中学生として登場。人一倍ドジかつ忘れっぽい・慌てん坊・酷い勘違い癖の持ち主で、作中でも「教室の廊下側の窓の内外を間違える」「昇り階段を間違えて降ってしまう」と妙に器用な勘違いを披露している。そのドジっぷりから怒々山博士に着目され、ど次元の世界へ踏み込む鍵にされた。
『逆立猿人』以降は怒々山博士の助手を務める純朴な青年として登場するが、性格の奇矯さは変わらず……どころか、怪物に追いかけられてる真っ最中に冗談を言う、他人の畑に生ってる大根を勝手に取ろうとする、天体望遠鏡の中に寝床を構える、怒々山共々聴取先の家のスキヤキに手を付けるなど、変人っぷりが増している感がある。
『珍面犬』『宇宙からの訪問者』によると、怒々山博士の邸宅に一緒に住み着いている模様。
◆助手(初期)
『ど次元世界物語』にのみ登場した怒々山博士の助手。投身の低い赤ん坊のような姿をしているが普通に喋れる。彼も博士に負けず奇矯なところはあり、異界であるど次元世界にタクシーを拾って博士らと合流する一幕も。
出演作はこれ一本のみだが、後の単行本「天崩れ落つる日」や「(珍)の巻」でも書下ろしのワンカットで怒々山や林共々書かれている。
◆逆立ち猿人
『逆立猿人』に登場。日本某所「入らずの山」の山奥に隠れ住んでいた原始人の末裔で、その名の通り常に逆立の姿をしている。
怒々山曰く、人類の祖先が直立猿人に進化したのは道具を使うための必要性に迫られた説が有力だが、ならば手足双方で物を掴めるオランウータンの如く、足で道具を使うようになった類人猿が逆立ちして歩くようになったものとのこと。
かつては巨大な像を作るほどの文明を持っていたようだが、そのスタイル故に猿人間の戦争で股間を狙われ易く、インポが多い故に繁栄できず文明は滅び去っている。
山上と平地を行き来する四足歩行の大型類人猿「じーぜる猿人」を馬のように使役する。
◆光る怪物
『陽はまた昇る』に登場。宇宙から飛来した小型隕石に付着していた未知の寄生生物で、電気などのエネルギーを吸収して自身の質量に変換する性質を有する。
地球上では畑の野菜についていたサナダムシの卵に寄生。その後は野菜を食べた牛、牛肉を食べた少年と宿主を転々とし、その間に宿主たちには発光現象を引き起こしていた。病院で虫くだしで体外に排出された後はし尿処理場の動力を食べて一機に成長、更に発電所を襲って怪獣並みの超巨大サナダムシに変貌。高層ビル街を荒らしまわるわ、自衛隊を返り討ちにするわの暴れっぷりを見せたが、最後は怒々山博士のしかけたネズミ捕りに引っ掛か……らなかったため、強引に引っ掛けられて無人スペース・シャトルで太陽に投棄された。
しかし、その後は太陽の質量そのものと同化していき、ラストシーンでは……
◆足跡怪獣アシアトゴン
『怪談 竜の足跡』に登場。アフリカの部族に「千年に一度だけ出現する竜」として伝わる怪獣で、その肩書通り足跡しか存在せず、実体を持っていない。
しかし怪獣らしく破壊活動はしっかりしており、半径数百kmにわたってアフリカ中の街や村を破壊しつくし、その足跡は最初に発見されたものと繋がって一周していた。
ちなみに同作者の『栞と紙魚子』シリーズの一篇「足跡追って」では本作とほぼ同様のネタを扱っている。
◆テークテーク
『怒々山博士 砂漠を行く』に登場。鳥取砂丘……もといトトーリ砂漠に生息する未知の生物。
見た目は「脚を生やした樹木」といった外見で、根っ子代わりの脚でテクテク歩き、砂漠で湧いたり消えたりする水たまりを追って、群生でさながらオアシスを形成する。
怒々山博士が水をあげて助けた若木の一個体が博士に懐いたが、テークテークは砂漠以外の地では生きられないため、博士達は砂漠に定住しながら研究を続ける事になった。
◆珍面犬
『怒々山博士と珍面犬』『怒々山博士と宇宙からの訪問者』に登場。
世間を賑わせている怒々山博士そっくりの風貌をした人面犬で、このせいで街に繰り出した博士は珍面犬に間違われる羽目になってしまった。
その後、博士と遭遇し、結果的にマスコミから助ける形になったことで怒々山博士に懐き、彼の邸宅に住み着いた。
人間の言語らしき言葉も話すが、博士たちに骨を埋めるための穴を掘らせるよう仕向けるなど、基本的に横着。
宇宙人が怒々山博士邸に訪れた時には骨付き肉で懐柔されるなど、番犬としては全く役に立っていない。
◆宇宙人
『怒々山博士と宇宙からの訪問者』に登場。
怒々山博士邸に突如飛来したUFOから現れたグレイタイプの宇宙人だが、その目的は金銭目当てのコソ泥。
ツイキ・シュウセイモホウサクダヨ~♪
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