電撃コラボレーション MW号の悲劇

ページ名:電撃コラボレーション MW号の悲劇

登録日:2012/07/06(金) 00:30:37
更新日:2023/11/20 Mon 11:06:33NEW!
所要時間:約 7 分で読めます



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電撃文庫 びんかんサラリーマン 渡瀬草一郎 三雲岳斗 時雨沢恵一 有沢まみず 成田良悟 藤原祐 谷川流 大ダコ おかゆまさき 近藤信義 在原竹広 岩田洋季 コラボレーション ボコタ エナミカツミ




午後9時。非常ベルが鳴った…。




2008年に発売された、電撃文庫15周年企画として雑誌に掲載された作品群を一挙収録した文庫本。
沈みゆく豪華客船を舞台に「タコ」「電撃」「30」というワードを取り入れることを条件に、ぞれぞれの作家の物語が展開されていく。
主な掲載誌は「電撃hp volume.30」であり、その他として公式海賊本である「電撃h」「電撃p」収録分も掲載。


イラストは一部例外を除きエナミカツミ。作者名義は“電撃文庫記念企画”。


いわゆるパニックものを背景としてそれぞれの作家により他作家の設定も借りたりしつつ各々の物語が展開されていき、成田良悟によってひとつにまとめ上げられている。
(成田の手による物語収束はこれ以外の電撃コラボレーションでも毎度行われている。)


ちなみに後半以降にはメタ発言やギャグ補正の強い作品が集中している。
パニックものが背景なだけに、一般人が四苦八苦してる作品の集中した前半作品群との雰囲気落差が激しい。



【共通ワード】
◆MW(ミレニアムワンダー)号
本作の舞台となる豪華客船。南洋を航海中、何らかの要因により沈没。その沈みゆくまでの時間が物語の主な舞台となっている。


◆マーダーオクト
今回の舞台となる海域の主である大蛸。3年前に豪華客船を襲撃したことでそれ以来人間の味をしめている。
本来この時期には現れないはずだったのだが、台風の影響により浮上しMW号を襲撃する。


◆魔法のランプ
荒神(あらじん)率いる500人の乗組員からなる海賊団。後ろ暗い金の搾取と、荒事の極力回避(とはいえ武力自体はそれなりにある)によって着実に警察の目を逃れている。
その手法は一般人として大量の乗組員を船に紛れ込ませ乗客に気付かれないまま密かに操舵室を制圧し、親会社の不正な裏金を強請り取るというもの。ちなみに船員は番号呼び。
実は荒事回避に関しては、本人は認めていないが海賊にあるまじき超お人好しツンデレ船長な荒神が最大要因。 



【収録作品】
◆MW号だよ!びんかんサラリーマン!

  • おかゆまさき

撲殺天使ドクロちゃん作中よりびんかんサラリーマンMW号にまさかの登場。こちらはカラー口絵用の描き下ろしであり、後方に雑誌掲載された本編(?)が収録されている。
紅潮した同僚の南さんの口絵にハアハアしながらページをめくると、次に待ち受けているのはタコに吸い付かれ涎垂らしてビクンビクンしている敏感さんの誰得トラップ。
もちろんカラー。ちなみにこの作品だけはエナミカツミではなくとりしもがイラストを担当している。


◆残酷劇

  • 渡瀬草一郎

MW号内のバー“ぐらんぎにょる”に心を閉ざし人形のように佇み続ける少女エリハ。紹介で彼女に話しかけ続けるという“家庭教師”のアルバイトを請け負った少年春斗。
変化の兆しを見せる気配すら感じられなかった二人の関係は、MW号の悲劇の中で大きく動き始めていく。


◆DIVE TO BLUE

  • 三雲岳斗

憧れの白石さんを救うため、己の限界な腹具合と戦いながら主人公は脱出のために奔走する。
作者曰く「誰が何と言おうとホラー」。どう見ても下ネタ全開疾走ストーリーです。本当にありがとうございました。 


◆MW号専用掲示板「ウィー・アー・オン・ボード!」

  • 時雨沢恵一

船に載らなかった面子が掲示板に集う中で船内からログインした“鈴木”から船旅のレポが綴られるも、次第にその内容は狂乱めいたものへと変わっていく。
MW号日本語サイトの公式掲示板上で行われているチャットという形で文章が綴られている作品。時雨沢らしい後味の悪さも特徴。


◆万年すだれ禿係長小保多喜八郎の冒険

  • 有沢まみず

うだつの上がらない不運な人生を送り続けてとうとう会社もリストラ。MW号で自分の生死の決断を賭け臨んだギャンブルにもボロ負けし、死を決意した矢先に起こったMW号の悲劇。
騒乱の中で偶然出会ってしまった母とはぐれた少女を救うため、小保多喜八郎、一世一代の大冒険が幕を開ける。


◆蟻塚と500人の海賊

  • 成田良悟

電撃hp volume.30掲載時にトリを飾った作品。
マーダーオクト襲撃の中、圧倒的身体能力を持つ殺人鬼の少年蟻塚の殺人宣言を前に勢いで乗員全員守る前言をしてしまったお人好し海賊船長荒神。
こうして蟻塚VS海賊団魔法のランプVSマーダーオクトにより乗客に余計混乱をもたらしつつも、乗員たちを助けるための荒神の闘いが始まる。
自身の物語を描く一方で前4作を全て拾って救出と救済を行った作品。そのため、あらかじめ良質なバッドエンドぶち壊し注意報が扉部分に書かれている。


◆Les Avebtures 〜冒険者たち〜

  • 近藤信義

MW号の悲劇より3ヶ月。ネット上で行われた胡散臭い大蛸退治メンバーの募集。
その企画者である“ネモ”と半信半疑ながらも招集に応じた主人公の“ネット・ランド”そして“国籍不明の女性”。
三者三様の想いを抱え、ボロ船ひとつとわずかな人材でマーダーオクト退治へと一行は乗り出していく。


◆HERO

  • 藤原祐

テツオこと“鉄人人間三十号”は圧倒的な戦力と機能を保有する機械の体を持ちながらも、引きヲタとしてそれを持て余していた。
MW号でもいつもと変わらぬPCにかじりつき妹に軽蔑される時間を過ごしていたが、マーダーオクトという恐怖に遭遇し…
ここから一気に色々な補正が入ったキャラの登場する作品群となる。掲載作の中では特にパロディ多めな作品。


◆内藤君と水野君の場合

  • 在原竹広

不条理なまでに「なんでもあり」な作品。「電撃hp」で読んだから何が起こるか分かってたりとか、頭銃で撃ち抜かれても特に理由もなく平気だったり。
先の出来事を把握しズレたアクションを起こそうとする内藤君と、振り回されつつもその滅茶苦茶な行動についていく水野君の掛け合いが中心。


◆Sisterhood

  • 岩田洋季

姉が勝手に連れこんだ愛猫を助け出されなければ三日日干しの刑を言い渡された亜美。
泣く泣く騒乱のMW号の中で“魔法のランプ”乗組員である凱旋門さん(勝手に命名)の協力を得てマーダーオクトを相手取ることとなる。
こちらは不条理というか理不尽さの強めな作風。マーダーオクトを平然と投げ飛ばす姉などかなり補正が効いている。


◆MW号の命題

  • 谷川流

MW号は何故沈まなければならなかったのか。基督教太陽暦が過去のものとなった遥かな未来、多くの学者たちの間で交わされる命題。
大蛸、儀式によって召喚された古代邪神、海賊、物語を生み出すための自沈、潜水艦による雷撃、多くの所説に分かれ未だ明確な回答が出ていない。


◆『魔法のランプ』航海日誌

  • 成田良悟

2話目の参加。こちらは描き下ろしであり、ここまでの全話総括と次への繋ぎとなっている作品。蟻塚と500人の海賊とは違ってこの作品自体に明確なストーリーは存在していない。
海賊団員たちの伝聞により、MW号でいったい何が何故起こっていたのかがギャグ補正の効いていたエピソードも込みで回答されている。


◆応答せよ!びんかんサラリーマン!

  • おかかゆまさき

2話目…というかこの場合はこちらがメイン。
混乱に乗じて同僚の南さんに不埒なことを働こうとしている悪漢から彼女を守るため、敏拳(敏感すぎる故の不可抗力な反射反応)によりビクンビクンしながら撃退。




以下ネタバレ
  • 502号

「魔法のランプ航海日誌」にて今回の事件を機に“魔法のランプ”に拾われ加入した502人目の海賊団員の少女。初出は谷川流の「MW号の命題」。
命題にて最も愛する姉を生贄に古代邪神の召喚儀式を行うも、“私”により眉間を打ち抜かれて失敗に終わる。自身はあらかじめ蘇生術を施していたことで生き延びた。
その後航海日誌にて海賊団員となった彼女が語るには、この儀式の失敗が原因であらゆる可能性を孕んだ世界線がMW号を基点に一時的に交差を起こしてしまったとのこと。
これにってあらゆる事象が混在し、ある者の世界ではありえない現状がその者の目前で発生し、また因果律を読むことの出来る世界にいる者は先の展開を知ることができていた。 




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